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特開2025-4981無線システム、無線システムのルート設定方法、無線機及び無線プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004981
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】無線システム、無線システムのルート設定方法、無線機及び無線プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/18 20090101AFI20250108BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20250108BHJP
【FI】
H04W84/18
H04W40/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104925
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】大江 英城
(72)【発明者】
【氏名】小畑 滋男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智雄
(72)【発明者】
【氏名】梯 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 博
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067BB27
5K067DD44
5K067EE12
5K067JJ11
(57)【要約】
【課題】通信環境に変化があった場合においても管理センタと各無線機とで通信できなくなってしまう可能性を減じることが可能な無線システム、無線システムのルート設定方法、無線機及び無線プログラムを提供する。
【解決手段】無線システム1は、N(Nは2以上の整数)台の無線機WDを備える。無線機WDは、第1及び第2処理を実行してルート設定を行う。第1処理はN台の無線機WDのそれぞれの通信品質の情報を共有し、最も通信品質が高い無線機WDを第1無線機WD1と決定する処理である。第2処理は、ルート設定すると問題となる無線機WDを除いたうえで、電界強度の値が最も高い無線機WDを、第n(nは1以上N-1以下の整数)無線機の送受信の相手となる第(n+1)無線機と決定すると共に、N台の無線機WDのうち第n及び第(n+1)無線機以外の無線機WDにも共有する処理である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線網と異なる通信網を介して外部装置と通信可能である第1無線機を含み、それぞれが前記無線網内の少なくとも1台の無線機と通信可能なN(Nは2以上の整数)台の無線機を備えた無線システムであって、
前記N台の無線機は、それぞれが、
前記外部装置との通信品質の値を取得可能な第1取得部と、
前記N台の無線機内における他の無線機との電界強度の値を取得可能な第2取得部と、
前記他の無線機のうち、前記第2取得部により取得された電界強度の値が所定値以上である無線機をルート構築可能な特定の無線機であると判断し、当該値が前記所定値より低い無線機をルート構築不可である不可無線機であると判断する判断部と、
前記N台の無線機間での通信ルートを設定するルート設定部と、を備え、
前記N台の無線機それぞれの前記ルート設定部は、前記N台の無線機それぞれの前記第1取得部により取得された通信品質の情報を共有し、最も通信品質が高い無線機を前記第1無線機と決定する第1処理を実行し、
第n(nは1以上N-1以下の整数)無線機の前記ルート設定部は、前記第1無線機から第(n-1)無線機までのうち存在するものを除き、前記第2取得部により取得された電界強度の値が最も高い無線機が前記判断部によって前記特定の無線機であると判断された場合に、前記第n無線機の送受信の相手となる第(n+1)無線機と決定すると共に、前記N台の無線機のうち前記第n及び前記第(n+1)無線機以外の無線機にも前記第(n+1)無線機の情報を共有する第2処理を実行して、
前記第1無線機から前記第(n+1)無線機までの多段の通信ルートにより無線通信を行う
ことを特徴とする無線システム。
【請求項2】
前記第n無線機の前記ルート設定部は、前記第2処理を実行した結果、前記第2取得部により取得された電界強度の値が最も高い無線機について、電界強度が前記所定値以上でない場合、前記第(n+1)無線機を決定せず、
前記第(n-1)無線機が存在する場合に前記第(n-1)無線機の前記ルート設定部は、前記第n無線機を除いたうえで、新たな第n無線機を決定し直す
ことを特徴とする請求項1に記載の無線システム。
【請求項3】
前記N台の無線機それぞれは、自己の前記判断部にて判断された不可無線機に至るルートの情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記N台の無線機の前記ルート設定部それぞれは、前記記憶部に記憶された前記ルートについて除いたうえで、送受信の相手先を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線システム。
【請求項4】
無線網と異なる通信網を介して外部装置と通信可能である第1無線機を含み、それぞれが前記無線網内の少なくとも1台の無線機と無線通信可能なN(Nは2以上の整数)台の無線機を備え、
前記N台の無線機は、それぞれが、
前記外部装置との通信品質の値を取得可能な第1取得部と、
前記N台の無線機内における他の無線機との電界強度の値を取得可能な第2取得部と、
前記他の無線機のうち、前記第2取得部により取得された電界強度の値が所定値以上である無線機をルート構築可能な特定の無線機であると判断し、当該値が前記所定値より低い無線機をルート構築不可である不可無線機であると判断する判断部と、
前記N台の無線機間での通信ルートを設定するルート設定部と、
を備えた無線システムの通信ルート決定方法であって、
前記N台の無線機それぞれの前記ルート設定部は、前記N台の無線機それぞれの前記第1取得部により取得された通信品質の情報を共有し、最も通信品質が高い無線機を前記第1無線機と決定する第1処理を実行し、
第n(nは1以上N-1以下の整数)無線機の前記ルート設定部は、前記第1無線機から第(n-1)無線機のうち存在するものを除き、前記第2取得部により取得された電界強度の値が最も高い無線機が前記判断部によって前記特定の無線機であると判断された場合に、前記第n無線機の送受信の相手となる第(n+1)無線機と決定すると共に、前記N台の無線機のうち前記第n及び前記第(n+1)無線機以外の無線機にも前記第(n+1)無線機の情報を共有する第2処理を実行して、
前記第1無線機から前記第(n+1)無線機までの多段の通信ルートにより無線通信を行う
ことを特徴とする無線システムの通信ルート決定方法。
【請求項5】
無線網と異なる通信網を介した外部装置との通信品質の値を取得可能な第1取得部と、
周辺の他の無線機との電界強度の値を取得可能な第2取得部と、
前記周辺の他の無線機のうち、前記第2取得部により取得された電界強度の値が所定値以上である無線機をルート構築可能な特定の無線機であると判断し、当該値が前記所定値より低い無線機をルート構築不可である不可無線機であると判断する判断部と、
前記周辺の他の無線機との通信ルートを設定するルート設定部と、を備え、
前記ルート設定部は、
自己、及び、前記周辺の他の無線機を含むN(Nは2以上の整数)台の無線機それぞれの前記第1取得部により取得された通信品質の情報を前記N台の無線機で共有し、前記N台の無線機のうち、最も通信品質が高い無線機を第1無線機と決定する第1処理を実行し、
自己が第n(nは1以上N-1以下の整数)無線機の前記ルート設定部である場合に、前記第1無線機から第(n-1)無線機のうち存在するものを除き、前記第2取得部により取得された電界強度の値が最も高い無線機が前記判断部によって前記特定の無線機であると判断されているときに、前記第n無線機の送受信の相手となる第(n+1)無線機と決定すると共に、前記N台の無線機のうち前記第n及び前記第(n+1)無線機以外の無線機にも前記第(n+1)無線機の情報を共有する第2処理を実行する
ことを特徴とする無線機。
【請求項6】
コンピュータを、請求項5に記載の無線機として機能させるための無線プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システム、無線システムのルート設定方法、無線機及び無線プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス、電気、水道等の検針値の情報を無線にて管理センタに送信する無線システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。この無線システムは、管理センタと通信可能なゲートウェイ無線機と、ゲートウェイ無線機と無線接続される複数の無線機とを備えている。ゲートウェイ無線機と複数の無線機とは、メッシュ型の無線網を構築している。無線網内の無線機は、検針値情報を他の無線機を介してゲートウェイ無線機に送信し、ゲートウェイ無線機は、その無線機の検針値情報を管理センタに送信する。また、この無線システムは、検針値情報の送信元となる無線機からゲートウェイ無線機に至る経路上の他の無線機が故障等した場合、メッシュ型の無線網を利用して別の無線機を経由することで、検針値情報をゲートウェイ無線機まで送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-63297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、無線機は電界強度の値が所定値以上となる無線機と通信可能であると判断し、電界強度の値が所定値よりも低い規定値以下となると無線機と通信不可であると判断するものがある。無線機は、他の無線機と通信不可と判断すると、特許文献1に記載のように別の無線機との無線経路を再構築するが、通信不可と判断するまでは通信可能と判断されている無線機と通信し続けることとなる。
【0005】
上記の如く無線機は、一度通信可能と判断された無線機との電界強度が規定値以下となるまでは、その無線機と通信し続けることとなる。特に、無線機は、電界強度の値が所定値以上であると判断した最初の無線機と通信可能と判断してしまうため、より電界強度の値が高い他の無線機があったとしても、その無線機と通信するわけではない。このような事情から、例えば無線機設置時においては電界強度の値が所定値以上であったが、その後無線機間に障害物が設置された場合等、電界強度が規定値以下とならないものの所定値未満で固定化されてしまうことがあった。そして、この場合には障害物を挟む無線機同士で通信ができなくなってしまい、一部の無線機について検針値情報を管理センタまで送信できなくなってしまう可能性があった。
【0006】
なお、この問題は検針値情報を管理センタに送信する場合に限らず、検針値以外の情報を管理センタに送信する場合や、管理センタから各無線機に情報送信する場合にも共通するものである。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、通信環境に変化があった場合においても管理センタと各無線機とで通信できなくなってしまう可能性を減じることが可能な無線システム、無線システムのルート設定方法、無線機及び無線プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線システムは、無線網と異なる通信網を介して外部装置と通信可能である第1無線機を含み、それぞれが前記無線網内の少なくとも1台の無線機と通信可能なN(Nは2以上の整数)台の無線機を備えた無線システムであって、前記N台の無線機は、それぞれが、前記外部装置との通信品質の値を取得可能な第1取得部と、前記N台の無線機内における他の無線機との電界強度の値を取得可能な第2取得部と、前記他の無線機のうち、前記第2取得部により取得された電界強度の値が所定値以上である無線機をルート構築可能な特定の無線機であると判断し、当該値が前記所定値より低い無線機をルート構築不可である不可無線機であると判断する判断部と、前記N台の無線機間での通信ルートを設定するルート設定部と、を備え、前記N台の無線機それぞれの前記ルート設定部は、前記N台の無線機それぞれの前記第1取得部により取得された通信品質の情報を共有し、最も通信品質が高い無線機を前記第1無線機と決定する第1処理を実行し、第n(nは1以上N-1以下の整数)無線機の前記ルート設定部は、前記第1無線機から第(n-1)無線機までのうち存在するものを除き、前記第2取得部により取得された電界強度の値が最も高い無線機が前記判断部によって前記特定の無線機であると判断された場合に、前記第n無線機の送受信の相手となる第(n+1)無線機と決定すると共に、前記N台の無線機のうち前記第n及び前記第(n+1)無線機以外の無線機にも前記第(n+1)無線機の情報を共有する第2処理を実行して、前記第1無線機から前記第(n+1)無線機までの多段の通信ルートにより無線通信を行う。
【0009】
また、本発明に係る無線システムのルート設定方法は、無線網と異なる通信網を介して外部装置と通信可能である第1無線機を含み、それぞれが前記無線網内の少なくとも1台の無線機と無線通信可能なN(Nは2以上の整数)台の無線機を備え、前記N台の無線機は、それぞれが、前記外部装置との通信品質の値を取得可能な第1取得部と、前記N台の無線機内における他の無線機との電界強度の値を取得可能な第2取得部と、前記他の無線機のうち、前記第2取得部により取得された電界強度の値が所定値以上である無線機をルート構築可能な特定の無線機であると判断し、当該値が前記所定値より低い無線機をルート構築不可である不可無線機であると判断する判断部と、前記N台の無線機間での通信ルートを設定するルート設定部と、を備えた無線システムの通信ルート決定方法であって、前記N台の無線機それぞれの前記ルート設定部は、前記N台の無線機それぞれの前記第1取得部により取得された通信品質の情報を共有し、最も通信品質が高い無線機を前記第1無線機と決定する第1処理を実行し、第n(nは1以上N-1以下の整数)無線機の前記ルート設定部は、前記第1無線機から第(n-1)無線機のうち存在するものを除き、前記第2取得部により取得された電界強度の値が最も高い無線機が前記判断部によって前記特定の無線機であると判断された場合に、前記第n無線機の送受信の相手となる第(n+1)無線機と決定すると共に、前記N台の無線機のうち前記第n及び前記第(n+1)無線機以外の無線機にも前記第(n+1)無線機の情報を共有する第2処理を実行して、前記第1無線機から前記第(n+1)無線機までの多段の通信ルートにより無線通信を行う。
【0010】
また、本発明に係る無線機は、無線網と異なる通信網を介した外部装置との通信品質の値を取得可能な第1取得部と、周辺の他の無線機との電界強度の値を取得可能な第2取得部と、前記周辺の他の無線機のうち、前記第2取得部により取得された電界強度の値が所定値以上である無線機をルート構築可能な特定の無線機であると判断し、当該値が前記所定値より低い無線機をルート構築不可である不可無線機であると判断する判断部と、前記周辺の他の無線機との通信ルートを設定するルート設定部と、を備え、前記ルート設定部は、自己、及び、前記周辺の他の無線機を含むN(Nは2以上の整数)台の無線機それぞれの前記第1取得部により取得された通信品質の情報を前記N台の無線機で共有し、前記N台の無線機のうち、最も通信品質が高い無線機を第1無線機と決定する第1処理を実行し、自己が第n(nは1以上N-1以下の整数)無線機の前記ルート設定部である場合に、前記第1無線機から第(n-1)無線機のうち存在するものを除き、前記第2取得部により取得された電界強度の値が最も高い無線機が前記判断部によって前記特定の無線機であると判断されているときに、前記第n無線機の送受信の相手となる第(n+1)無線機と決定すると共に、前記N台の無線機のうち前記第n及び前記第(n+1)無線機以外の無線機にも前記第(n+1)無線機の情報を共有する第2処理を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信環境に変化があった場合においても管理センタと各無線機とで通信できなくなってしまう可能性を減じることが可能な無線システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る無線システムを示す構成図である。
図2図1に示した複数の無線機それぞれの構成を示す機能ブロック図である。
図3】WAN品質値を示す図表である。
図4】第1無線機(無線機番号1)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
図5】第2無線機(無線機番号2)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
図6】第3無線機(無線機番号3)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
図7】第4無線機(無線機番号5)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
図8】第3無線機(無線機番号3)による第2処理の概要を示す第2の概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
図9】第4無線機(無線機番号4)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
図10】ルート設定完了後の無線接続状態を示すシステム図である。
図11】本実施形態に係る無線システムによるルート設定方法の詳細を示す第1のフローチャートである。
図12】本実施形態に係る無線システムによるルート設定方法の詳細を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る無線システムを示す構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る無線システム1は、複数の計測機器Mと、複数の無線機WDと、センタ側装置(外部装置)CAとを備えて構成されている。
【0015】
複数の計測機器Mは、需要者側に供給される燃料ガスの流量を計測するガスメータであって、例えば有線や端子直付方式によって各無線機WDに接続されている。なお、計測機器Mは、ガスメータに限らず、電気メータ、及び水道メータ等の他のエネルギーに関する計測を行う機器であってもよい。これらの計測機器Mは、自己に接続される無線機WDを利用してセンタ側装置CAと無線通信を行う。具体的に複数の計測機器Mは、無線機WDを通じて検針値情報等をセンタ側装置CAに送信したり、センタ側装置CAから無線機WDを通じて受信した制御信号に基づいて動作を実行したりする。計測機器Mがガスメータである場合、制御信号は、例えば遮断弁の開閉を指示する信号や、検針値情報を返信する旨の要求信号等である。
【0016】
複数の無線機WDは、複数の無線機WDによって構成される無線網NW内において、周辺の他の無線機WDと無線による情報の送受信が可能とされたものである。複数の無線機WDは、各無線網NW1~NW3のそれぞれにおいて、第1計測機器M1に接続される第1無線機WD1を有している。第1無線機WD1は、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格の通信網(無線網NWと異なる通信網)を通じてセンタ側装置CAと情報の送受信が可能とされている。
【0017】
また、複数の無線機WDのうち、第1無線機WD1を除く無線機WD2~WD5については、第1無線機WD1を介してセンタ側装置CAと情報の送受信が可能とされている。
より詳細に説明すると、例えば第1無線網NW1において、第2~第5無線機WD2~WD5は、同じ無線網NW1内の第1無線機WD1を通じてセンタ側装置CAと情報の送受信が可能とされている。また、第2無線網NW2においても第2及び第3無線機WD2,WD3は、同じ無線網NW2内の第1無線機WD1を通じてセンタ側装置CAと情報の送受信が可能とされている。第3無線網NW3も同様である。
【0018】
ここで、図1に示すように、本実施形態に係る複数の無線機WDは、メッシュ状の無線網を構築しておらず、直列的な(すなわち一列の)無線網NW1~NW3を構築している。従って、例えば第2無線網NW2の第3無線機WD3は、検針値情報を第2無線機WD2に送信し、第2無線機WD2を通じて第1無線機WD1に検針値情報を送信する。その後、第1無線機WD1が検針値情報をセンタ側装置CAに送信することとなる。特に、複数の無線機WDは、直列的な無線網NW1~NW3を構築しているため、センタ側装置CAまで検針値情報を無線送信する通信ルートは1つとされることとなる。よって、先述の第3無線機WD3については、第3無線機WD3から、第2無線機WD2及び第1無線機WD1の順に経由して、センタ側装置CAまで検針値情報を送信する1つのルートしかないこととなる。
【0019】
本実施形態に係る無線システム1は、以下に説明するように、電界強度の値(RSSI(Received Signal Strength Indication)値)に充分に配慮しながら意図的にこのような直列的な無線網NW1~NW3となるようにルート設定を行うことで、通信環境に変化があった場合においても管理センタと各無線機WDとで通信できなくなってしまう可能性を減じるようにしている。なお、上記では検針値情報の送信の様子について説明したが、他の情報を送信する場合も同様である。また、センタ側装置CAから各無線機WDに対して制御信号を送信する場合にも、1つのルートを利用して制御信号が各無線機WDまで到達することとなる。
【0020】
図2は、図1に示した複数の無線機WDそれぞれの構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、無線機WDは、外部の設定器等から無線機番号、ネットワーク番号、チャネル番号及びルート設定電文に関する情報を入力する。無線機番号は、自己を他の無線機WDと区別する番号である。ネットワーク番号及びチャネル番号は、自己がどの無線網NWに属するかを示す番号である。ルート設定電文は、ネットワーク番号及びチャネル番号が同じとなる他の無線機WD(すなわち同じ無線網NWの無線機WD)との多段の通信ルートを構築させる電文である。無線機WDは、ルート設定電文を受信することで、ルート設定の処理を実行することとなる。
【0021】
このような無線機WDは、第1取得部10と、第2取得部20と、判断部30と、ルート設定部40と、記憶部50と、通信部60とを備えている。
【0022】
第1取得部10は、センタ側装置CAとの通信品質の値を取得するものである。本実施形態において第1取得部10は、WAN(Wide Area Network)値を取得する。WAN値は、例えばスマートフォン等の通信端末内に搭載される電波強度の値を測定する機器と同様の構成を利用して実現することができる。
【0023】
第2取得部20は、例えばN(Nは2以上の整数)台の無線機WDにて無線網NWが構築される場合に、無線網NW内の他の無線機WDとのRSSI値(電界強度の値の一例)を取得するものである。具体的に第2取得部20は、無線LAN(Local Area Network)等の限られたエリア内のみで通信可能となる通信規格により無線通信する際の電界強度の値を取得する。一例を挙げると第1線網NW1(図1参照)は5台の無線機WDによって構成されている。これら5台の無線機WDそれぞれの第2取得部20は、自己を除く他の無線機WDとのRSSI値を取得することとなる。
【0024】
また、第2取得部20は、他の無線機WDとのRSSI値を取得すると、取得情報に基づいてRSSI値テーブルを作成し、記憶部50に記憶させる。
【0025】
判断部30は、他の無線機WDのうち、第2取得部20により取得されたRSSI値が所定値以上である無線機WDをルート構築可能な特定の無線機SWD(後述の図4参照)であると判断し、当該値が所定値より低い無線機WDをルート構築不可である不可無線機NWD(後述の図7参照)であると判断するものである。
【0026】
ルート設定部40は、自己及び自己と同じ無線網NW内の他の無線機WDからなるN台の無線機WD間での通信ルートを設定する処理を実行するものである。このルート設定部40は、各部10~30において得られた情報や、記憶部50に記憶される情報に基づいて、図1に示したように直列的にルート設定を行うものである。
【0027】
記憶部50は、本実施形態に係る各無線機WDを機能させるための無線プログラムを記憶したものである。また、記憶部50は、外部の設定器等から入力された無線機番号等についても記憶している。この記憶部50は、第1記憶部51と第2記憶部52とを備えている。
【0028】
第1記憶部51は、ルート設定を行う際に、ルート設定済みとなる無線機WDを示す構築済みリストを記憶したものである。第2記憶部52は、ルート設定を行う際に、ルート設定不可となるルートを示す探索済みリストを記憶したものである。
【0029】
通信部60は、直列的にルート設定が行われた後に、検針値情報の送受信や制御信号の送受信を行うものである。なお、記憶部50は、ルート設定部40により直列的なルート設定が行われた場合、そのルート(例えば自己の上位側(管理センタ側)の無線機WDや下位側の無線機WDの情報)を記憶する。
【0030】
次に、図3図10を参照して本実施形態に係る無線システム1によるルート設定方法の概要を説明する。なお、以下の説明において第1計測機器M1に接続される無線機WDの無線機番号が1であり、第2計測機器M2に接続される無線機WDの無線機番号が2である。同様に、第3計測機器M3に接続される無線機WDの無線機番号が3であり、第4計測機器M4に接続される無線機WDの無線機番号が4であり、第5計測機器M5に接続される無線機WDの無線機番号が5である。
【0031】
図3は、WAN品質値を示す図表である。まず、無線網NWを構築するN台(以下で5台を例とする)の無線機WDに対して、ルート設定電文が入力される。これにより、5台の無線機WDのそれぞれの第1取得部10がWAN品質値の情報を取得する。WAN品質値の情報は、図3に示すような情報として5台の無線機WDで共有される。
【0032】
ここで、WAN品質値の情報を共有する必要があることから、5台の無線機WDのそれぞれは、同じ無線網NWを構築予定の他の無線機WDの少なくとも1台とRSSI値が所定値以上となっている。仮に、RSSI値がどの無線機WDとも所定値以上とならない場合には、作業者が保有する端末にその旨の情報が表示される等、適切な処理が行われる。また、少なくとも1台の無線機WDとRSSI値が所定値以上となっていなくとも、例えば、センタ側装置CAが5台の無線機WDそれぞれからWAN品質値の情報を収集し、図3に示すようなテーブルを形成した後に、そのテーブルの情報を5台の無線機WDに送信するようにして、WAN品質値の情報を共有させてもよい。
【0033】
図3に示す例においては、無線機番号1の無線機WDのWAN品質値が最も高い。このため、5台の無線機WD1~WD5それぞれのルート設定部40は、無線機番号1の無線機WDを第1無線機WD1と決定する第1処理を実行する。これにより、まずセンタ側装置CAと無線接続される第1無線機WDが決定される。その後、第2処理が実行される。
【0034】
図4は、第1無線機WD1(無線機番号1)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
【0035】
次に、無線機番号1となる第1無線機WD1は、第2取得部20によって取得されたRSSI値から形成されるRSSI値テーブル(図4(a)参照)を自己の記憶部50から読み込む。このテーブルにおいては無線機番号2の無線機WDのRSSI値がα1で最も高くなっている。なお、α1は所定値よりも高く、無線機番号2の無線機WDは判断部30によって特定の無線機SWD(図4(c)参照)であると判断されている。
【0036】
よって、第1無線機WD1のルート設定部40は、無線機番号2の無線機WDを第2無線機WD2と決定する。また、これにより、第1記憶部51は、図4(b)に示すように、構築済みリストを「1」から「1-2」に変化させる。すなわち、第1記憶部51は、第1無線機WD1から第2無線機WD2まで構築済みであることから、それらの無線機番号を「1-2」として記憶させることとなる。なお、構築済みリストは、第1及び第2無線機WD1,WD2の第1記憶部51によって記憶されることはもちろんのこと、第1及び第2無線機WD1,WD2以外の無線機WDにも共有される。なお、以下の説明において構築済みリストは無線網NW内の全ての無線機WDに共有されることを前提に説明する。また、共有方法は、WAN品質値と同様である。
【0037】
図5は、第2無線機WD2(無線機番号2)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
【0038】
次に、無線機番号2となる第2無線機WD2は、第2取得部20によって取得されたRSSI値から形成されるRSSI値テーブル(図5(a)参照)を自己の記憶部50から読み込む。ここで、図5(b)に示すように、無線機番号1の第1無線機WD1と無線機番号2の第2無線機WD2とは構築済みリストに含まれるものである。よって、第2無線機WD2のルート設定部40は、無線機番号1の第1無線機WD1を除き、最もRSSI値が高い無線機WDを特定する。図5に示す例において、無線機番号3の無線機WDのRSSI値がβ2で最も高い。よって、第2無線機WD2のルート設定部40は、無線機番号3の無線機WDを第3無線機WD3と決定する。なお、β2は所定値よりも高く、無線機番号3の無線機WDは判断部30によって特定の無線機SWD(図5(c)参照)であると判断されている。
【0039】
また、これにより、第1記憶部51は、構築済みリストを「1-2」から「1-2-3」に変化させる。すなわち、第1記憶部51は、第1無線機WD1から第3無線機WD3まで構築済みであることから、それらの無線機番号を「1-2-3」として記憶させることとなる。
【0040】
図6は、第3無線機WD3(無線機番号3)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
【0041】
次に、無線機番号3となる第3無線機WD3は、第2取得部20によって取得されたRSSI値から形成されるRSSI値テーブル(図6(a)参照)を自己の記憶部50から読み込む。ここで、図6(b)に示すように、無線機番号1,2,3の第1~第3無線機WD1~WD3が構築済みリストに含まれている。よって、第3無線機WD3のルート設定部40は、無線機番号1の第1無線機WD1及び無線機番号2の第2無線機WD2を除き、最もRSSI値が高い無線機WDを特定する。図6に示す例において、無線機番号5の無線機WDのRSSI値がγ4で最も高い。よって、第3無線機WD2のルート設定部40は、無線機番号5の無線機WDを第4無線機WD4と決定する。なお、γ4は所定値よりも高く、無線機番号5の無線機WDは判断部30によって特定の無線機SWD(図6(c)参照)であると判断されている。
【0042】
また、これにより、第1記憶部51は、構築済みリストを「1-2-3」から「1-2-3-5」に変化させる。すなわち、第1記憶部51は、第1無線機WD1から第4無線機WD4まで構築済みであることから、それらの無線機番号を「1-2-3-5」として記憶させることとなる。
【0043】
図7は、第4無線機WD4(無線機番号5)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
【0044】
次に、無線機番号5となる第4無線機WD4は、第2取得部20によって取得されたRSSI値から形成されるRSSI値テーブル(図7(a)参照)を自己の記憶部50から読み込む。ここで、図7(b)に示すように、無線機番号1,2,3,5の第1~第4無線機WD1~WD4が構築済みリストに含まれている。よって、無線機番号5である第4無線機WD4のルート設定部40は、無線機番号1の第1無線機WD1、無線機番号2の第2無線機WD2及び無線機番号3の第3無線機WD3を除き、最もRSSI値が高い無線機WDを特定する。
【0045】
図7に示す例において、無線機番号4の無線機WDのRSSI値がδ4で最も高い。しかし、δ4は所定値よりも低く、無線機番号4の無線機WDは無線機番号5の第4無線機WD4の判断部30によって不可無線機NWD(図7(c)参照)であると判断されている。よって、第4無線機WD4のルート設定部40は、無線機番号4の無線機WDを第5無線機WD5と決定しない。さらに、無線機番号5の無線機WDから無線機番号4の無線機WDへの通信ルートの構築ができないことから、通信ルートの構築がNGであることを示す探索済み経路の情報(例えば「5-4」の情報)を第2記憶部52に記憶させる。そして、無線機番号5となる第4無線機WD4は、通信ルートの構築処理を第3無線機WD3に差し戻すこととなる。また、差し戻しにより第1記憶部51は、構築済みリストとして「1-2-3-5」という情報を「1-2-3」に変化させることとなる。なお、探索済みリストについても、構築済みリストと同様に、無線網NW内の全ての無線機WDにおいて共有される。
【0046】
図8は、第3無線機WD3(無線機番号3)による第2処理の概要を示す第2の概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
【0047】
差し戻し後において無線機番号3となる第3無線機WD3は、RSSI値テーブル(図8(a)参照)を自己の記憶部50から再度読み込む。ここで、図8(b)に示すように、無線機番号1,2,3の第1~第3無線機WD1~WD3が構築済みリストに含まれている。しかも、無線機番号が「5-4」となる通信ルートの構築が不可である。ここで、第3無線機WD3のルート設定部40は、無線機番号5の無線機WDを第4無線機WD4としてしまうと、探索済みリスト内の通信ルート(探索済み経路)を選択せざるを得なくなる。故に、無線機番号3である第3無線機WD3のルート設定部40は、無線機番号1の第1無線機WD1、無線機番号2の第2無線機WD2、及び無線機番号5の無線機WDを除き、最もRSSI値が高い無線機WDを特定する。図8に示す例において、無線機番号4の無線機WDのRSSI値がγ3で最も高い。よって、第1無線機WD1のルート設定部40は、無線機番号4の無線機WDを第4無線機WD4と決定し直す。なお、γ3は所定値よりも高く、無線機番号4の無線機WDは判断部30によって特定の無線機SWD(図8(c)参照)であると判断されている。
【0048】
また、これにより、第1記憶部51は、構築済みリストを「1-2-3」から「1-2-3-4」に変化させる。すなわち、第1記憶部51は、第1無線機WD1から第4無線機WD4まで構築済みであることから、それらの無線機番号を「1-2-3-4」として記憶させることとなる。
【0049】
図9は、第4無線機WD4(無線機番号4)による第2処理の概要を示す概略図であって、(a)はRSSI値テーブルを示し、(b)は構築済みリスト及び探索済みリストの変化を示し、(c)はルート設定の様子を示している。
【0050】
無線機番号4となる第4無線機WD4は、第2取得部20によって取得されたRSSI値から形成されるRSSI値テーブル(図9(a)参照)を自己の記憶部50から読み込む。ここで、図9(b)に示すように、無線機番号1,2,3,4の第1~第4無線機WD1~WD4が構築済みリストに含まれている。よって、無線機番号4である第4無線機WD4のルート設定部40は、無線機番号1の第1無線機WD1、無線機番号2の第2無線機WD2及び無線機番号3の第3無線機WD3を除き、最もRSSI値が高い無線機WDを特定する。
【0051】
図9に示す例において、無線機番号5の無線機WDのRSSI値がε4で最も高い。しかし、ε4は所定値よりも低く、無線機番号5の無線機WDは無線機番号4の第4無線機WD4の判断部30によって不可無線機NWD(図9(c)参照)であると判断されている。よって、第4無線機WD4のルート設定部40は、無線機番号5の無線機WDを第5無線機WD5と決定しない。さらに、無線機番号4の無線機WDから無線機番号5の無線機WDへの通信ルートの構築ができないことから、通信ルートの構築がNGであることを示す探索済み経路の情報(例えば「4-5」の情報)を第2記憶部52に記憶させる。そして、無線機番号4となる第4無線機WD4は、通信ルートの構築処理を第3無線機WD3に差し戻すこととなる。さらに、この時点において無線機番号が「5-4」「4-5」となる通信ルートの構築が不可である。よって、第3無線機WD3のルート設定部40は、無線機番号4,5の無線機WDのいずれを第4無線機WD4としたとしても、探索済みリスト内の通信ルートを選択せざるを得なくなる。故に、無線機番号3である第3無線機WD3のルート設定部40は、手詰まり状態となっていることから、通信ルートの構築処理をさらに第2無線機WD2に差し戻すこととなる。
【0052】
以上のように、複数の無線機WDは、上記の通信ルートの構築処理を行いながら通信ルートの構築を行う。すなわち、各無線機WDは、構築済みの無線機WDを除き、RSSI値が最も高い無線機WDを次の(下位側の)無線機WDとして決定する。また、RSSI値が最も高い無線機WDが不可無線機NWDである場合には、前の(上位側の)無線機WDに差し戻し、通信ルートの構築処理をやり直すこととなる。
【0053】
この結果、例えば図10に示すように直列的な通信ルートが構築されることとなる。図10は、ルート設定完了後の状態を示すシステム図である。図10に示すように、例えば無線機番号1の無線機WDが第1無線機WD1となり、無線機番号2の無線機WDが第2無線機WD2となり、無線機番号4の無線機WDが第3無線機WD3となる。また、無線機番号3の無線機WDが第4無線機WD4となり、無線機番号5の無線機WDが第5無線機WD5となる。
【0054】
次に、図11及び図12を参照して、本実施形態に係る無線システム1によるルート設定方法の詳細を説明する。図11及び図12は、本実施形態に係る無線システム1によるルート設定方法の詳細を示すフローチャートである。なお、図11及び図12に示すフローチャートは、無線網NW内の全ての無線機WDにおいて、情報が共有されながら実行されていくものである。
【0055】
まず、図11に示すように、同一の無線網NW内の複数の無線機WDについて、第1取得部10は、WAN品質値の情報を取得する(S1)。次に、ルート設定部40は、WAN品質値について基準を満たす無線機WDがあるかを判断する(S2)。WAN品質値について基準を満たす無線機WDがない場合(S2:NO)、各無線機WDのルート設定部40は、構築失敗と判断し(S3)、図11及び図12に示す処理は終了する。
【0056】
一方、WAN品質値について基準を満たす無線機WDがある場合(S2:YES)、各無線機WDのルート設定部40は、最もWAN品質値が高い無線機WDを第1無線機WD1に決定する(S4)。なお、ステップS1,S2,S4が第1処理に該当する。また、後述するステップS6以降が第2処理に該当する。
【0057】
その後、各無線機WDのルート設定部40は変数nを1とする(S5)。次いで、変数nが構築台数を超えたかを判断する(S6)。構築台数は、例えば図3図10に示した例において5台となっている。このような構築台数の情報は、例えばルート設定電文と共に入力されてもよいし、予め定められた値であってもよい。
【0058】
変数nが構築台数を超えていない場合(S6:NO)、未だ構築予定の台数に達していないといえ、各無線機WDのルート設定部40は変数nが0であるかを判断する(S7)。変数nが0である場合(S7:YES)、図3図10を参照して説明した差し戻しの結果、N=0まで戻ってしまったといえる。よって、各無線機WDのルート設定部40は、構築失敗と判断し(S3)、図11及び図12に示す処理は終了する。
【0059】
一方、変数nが0でない場合(S7:NO)、第n無線機WDnのルート設定部40は、記憶部50からRSSI値テーブルを読み込む(S8)。次いで、第n無線機WDnのルート設定部40は、RSSI値が最大となる無線機WDを第(n+1)無線機WD(n+1)に決定する(S9)。
【0060】
次に、第n無線機WDnのルート設定部40は、ステップS9において決定されたRSSI値が最大となる無線機WDが構築済みリスト内にあるかを判断する(図12:S10)。RSSI値が最大となる無線機WDが構築済みリスト内にない場合(S10:NO)、第n無線機WDnのルート設定部40は、自己からRSSI値最大の無線機WDへの通信ルートが接続不可のルートである探索済み経路に該当しているかを判断する(S11)。
【0061】
RSSI値が最大となる無線機WDが構築済みリスト内にある場合(S10:YES)、又は、当該通信ルートが探索済み経路に該当する場合(S11:YES)、第n無線機WDnのルート設定部40は、次にRSSI値が高い無線機WDがあるかを判断する(S12)。なお、ステップS11の処理では、このまま通信ルートが確定してしまうと、いずれ探索済み経路に該当してしまう場合にも「YES」と判断される。
【0062】
次にRSSI値が高い無線機WDがない場合(S12:NO)、各無線機WDのルート設定部40は、変数nをディクリメントする(S13)。その後、処理は図11のステップS7に移行する。なお、ディクリメントにあたっては、構築済みリストから第n無線機WDnの無線機番号が削除されることとなる。
【0063】
一方、次にRSSI値が高い無線機WDがある場合(S12:YES)、第n無線機WDnのルート設定部40は、次にRSSI値が高い無線機WDを新たな第(n+1)無線機WD(n+1)に決定する(S14)。その後、処理はステップS10に移行する。
【0064】
また、当該通信ルートが探索済み経路に該当しない場合(S11:NO)、第n無線機WDnのルート設定部40は、RSSI値テーブルに基づいて、RSSI値が所定値未満であるかを判断する(S15)。
【0065】
RSSI値が所定値未満である場合(S15:YES)、各無線機WDのルート設定部40は、第n無線機WDnから第(n+1)無線機WD(n+1)に至る通信ルートを探索済みリストに追加する(S16)。その後、各無線機WDのルート設定部40は、変数nをディクリメントし(S17)、処理は図11のステップS7に移行する。このディクリメント時においても、構築済みリストから第n無線機WDnの無線機番号が削除されることとなる。
【0066】
RSSI値が所定値未満でない場合(S15:NO)、各無線機WDのルート設定部40は、第(n+1)無線機WD(n+1)の無線機番号を構築済みリストに追加する(S18)。その後、各無線機WDのルート設定部40は、変数nをインクリメントし(S19)、処理は図11のステップS6に移行する。
【0067】
ここで、図11に示すように、変数nが構築台数を超えた場合(S6:YES)、構築予定の無線機WDの全てを使用して直列的な通信ルートが形成されたといえる。よって、各無線機WDのルート設定部40は、構築成功と判断し(S20)、図11及び図12に示す処理は終了する。
【0068】
このようにして、本実施形態に係る無線システム1、ルート設定方法及び無線機WDによれば、センタ側装置CAと最も通信品質が高い無線機WDが第1無線機WD1とされ、原則的に第1無線機WD1から順に電界強度が最も高い無線機WDが送受信相手として決定されていき、第1無線機WD1から第(n+1)無線機WD(n+1)まで多段に無線接続される。このため、N台の無線機WDは、それぞれが電界強度がより高い相手側と通信することが可能となり、通信環境が多少変化しても所定値以上の電界強度を確保し易い。従って、通信環境に変化があった場合においても管理センタと各無線機WDとで通信できなくなってしまう可能性を減じることが可能な無線システム1、ルート設定方法及び無線機WDを提供することができる。
【0069】
また、第n無線機WDnのルート設定部40は、第2処理を実行した結果、電界強度の値が最も高い無線機WDについて、電界強度の値が所定値以上でない場合、第(n+1)無線機WD(n+1)を決定せず、第(n-1)無線機WD(n-1)のルート設定部40は、新たな第n無線機WDnを決定し直す処理を実行する。このため、N台の無線機WDについて、最も高い電界強度で無線接続していく過程で、一部の無線機WDについて通信ルートの構築が不可となるとき、処理を戻して例えば2番目に電界強度が高い無線機WD等に決定し直すことで、不適切な通信ルートの構築を回避し易くすることができる。
【0070】
また、ルート設定部40は、第2記憶部52に記憶された不可無線機NWDに至るルートについて除いたうえで、送受信の相手先を決定するため、通信できないルートを対象に行われてしまう処理量の軽減につなげることができる。
【0071】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0072】
例えば、上記実施形態において無線網NWの構築台数が5台である場合を例に説明したが、特にこれに限らず、2~4台又は6台以上であってもよい。さらに、上記では、計測機器Mに対して無線機WDが有線又は端子接続方式で接続される旨を説明したが、これに限らず、計測機器Mに対して無線機WDが無線接続されていてもよい。加えて、無線機WDは、計測機器Mから離れた位置に設置されていてもよい。
【0073】
加えて、本実施形態においては、ステップS15においてRSSI値が所定値未満であるかが判断され、RSSI値が所定値未満である場合に該当のルートが探索済みリストに追加されている。しかし、これに限らず、例えば、RSSI値テーブルの作成時に、予めRSSI値が所定値未満であるかが判断され、RSSI値が所定値未満であるルートが事前に探索済みリストに追加されていてもよい。これにより、ステップS15~S17の処理の省略に寄与できるからである。
【符号の説明】
【0074】
1 :無線システム
10 :第1取得部
20 :第2取得部
30 :判断部
40 :ルート設定部
50 :記憶部
51 :第1記憶部
52 :第2記憶部
60 :通信部
CA :センタ側装置(外部装置)
M :計測機器
NW :無線網
S9 :ステップ
WD :無線機
WD1 :第1無線機
SWD :特定の無線機
NWD :不可無線機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12