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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004985
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20250108BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20250108BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J3/32
H02J7/00 B
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104935
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟津 悠介
(72)【発明者】
【氏名】野末 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】脇野 裕司
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503DA18
5G503EA05
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】蓄電池間の電位差が解消していなくても負荷装置へ向けて蓄電池の放電電力を供給することが可能な蓄電システムを提供する。
【解決手段】蓄電システム10Aの制御部12は、(1)充電を行うべき状況にあり、かつ蓄電池ユニット20a,20bに含まれる蓄電池22a,22bの電位差が予め定められた閾値よりも大きい場合に、低電位側の蓄電池(例えば、22a)に接続されたリレー21aのみをオン状態として該蓄電池22aを充電する第1電位差解消制御と、(2)充電を行うべきではない状況にあり、かつ電位差が閾値よりも大きい場合に、高電位側の蓄電池(例えば、22b)に接続されたリレー21bのみをオン状態として該蓄電池22bを放電させる第2電位差解消制御と、(3)電位差が閾値未満である場合に、リレー21a,21bをオン状態として蓄電池22a,22bを充電する、または放電させる通常時制御とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーコンディショナと、前記パワーコンディショナに接続された2つの蓄電池ユニットと、前記2つの蓄電池ユニットおよび前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備えた蓄電システムであって、
前記2つの蓄電池ユニットは、それぞれリレーおよび該リレーを介して前記パワーコンディショナに接続された蓄電池を含み、
前記制御部は、(1)前記蓄電池の充電を行うべき状況にあり、かつ前記2つの蓄電池ユニットに含まれる2つの蓄電池の電位差が予め定められた閾値よりも大きい場合に、低電位側の蓄電池に接続されたリレーのみをオン状態として該蓄電池を充電する第1電位差解消制御と、(2)前記蓄電池の充電を行うべきではない状況にあり、かつ前記電位差が前記閾値よりも大きい場合に、高電位側の蓄電池に接続されたリレーのみをオン状態として該蓄電池を放電させる第2電位差解消制御と、(3)前記電位差が前記閾値未満である場合に、両方のリレーをオン状態として両方の蓄電池を充電する、または放電させる通常時制御とを実行するよう構成されている
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記制御部は、(4)前記第1電位差解消制御の最中に停電が発生した場合に、低電位側の蓄電池に接続されたリレーをオフ状態とした後に高電位側の蓄電池に接続されたリレーをオン状態として高電位側の蓄電池を放電させる第1停電時制御と、(5)前記第2電位差解消制御の最中に停電が発生した場合に、そのまま高電位側の蓄電池を放電させる第2停電時制御とをさらに実行するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記制御部は、(6)前記第1および第2停電時制御の最中に前記電位差が前記閾値未満となった場合に、両方のリレーをオン状態として両方の蓄電池を放電させる通常時制御をさらに実行するよう構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記パワーコンディショナの一部である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記2つの蓄電池ユニットのそれぞれは、蓄電池管理部をさらに含み、
前記制御部は、前記蓄電池管理部から前記蓄電池の電位に関する情報を取得する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記2つの蓄電池ユニットのそれぞれは、蓄電池管理部をさらに含み、
前記制御部は、前記蓄電池管理部を介して前記リレーをオン/オフさせる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの蓄電池ユニットを備えた蓄電システムであって、特に、2つの蓄電池ユニットのうちの1つが増設されたものである蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、停電時に重要な負荷に必要な電力を供給する蓄電システムが知られている。このような蓄電システムの中には、蓄電池を増設することにより容量を拡張することが可能となっているものがある(例えば、特許文献1参照)。また、蓄電池の増設が可能な蓄電システムの中には、既設の蓄電池の電位と増設した蓄電池の電位との差に応じた大電流が蓄電池間に流れないように、増設作業後の起動時に低電位側の蓄電池のみに対して充電を行う電位差解消機能を備えたものがある。
【0003】
ここで、増設前に既設の蓄電池の電位と増設する蓄電池の電位とを揃えておくことは非常に難しい。既設の蓄電池の電位は、システムの運転状況に応じて刻一刻と変化し、増設する蓄電池の電位も、自然放電等により刻一刻と変化するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5279147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蓄電システムは、出願人の知る限り、電位差解消機能による電位差の解消が完了するまでの間、蓄電池を放電させて負荷装置に電力を供給することができなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、蓄電池間の電位差が解消していなくても負荷装置に向けて蓄電池の放電電力を供給することが可能な蓄電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓄電システムは、パワーコンディショナと、パワーコンディショナに接続された2つの蓄電池ユニットと、2つの蓄電池ユニットおよびパワーコンディショナを制御する制御部とを備えたものであって、2つの蓄電池ユニットは、それぞれリレーおよび該リレーを介してパワーコンディショナに接続された蓄電池を含み、制御部は、(1)蓄電池の充電を行うべき状況にあり、かつ2つの蓄電池ユニットに含まれる2つの蓄電池の電位差が予め定められた閾値よりも大きい場合に、低電位側の蓄電池に接続されたリレーのみをオン状態として該蓄電池を充電する第1電位差解消制御と、(2)蓄電池の充電を行うべきではない状況にあり、かつ電位差が閾値よりも大きい場合に、高電位側の蓄電池に接続されたリレーのみをオン状態として該蓄電池を放電させる第2電位差解消制御と、(3)電位差が閾値未満である場合に、両方のリレーをオン状態として両方の蓄電池を充電する、または放電させる通常時制御とを実行するよう構成されている、との構成を有している。
【0008】
上記蓄電システムは、充電を行うべき状況では低電位側の蓄電池を充電する第1電位差解消制御により電位差を解消し、充電を行うべきではない状況では高電位側の蓄電池を放電させる第2電位差解消制御により電位差を解消するよう構成されている。つまり、この蓄電システムでは、電位差を解消するための手段が低電位側の蓄電池の充電に限定されていない。このため、この蓄電システムによれば、蓄電池間の電位差が解消していなくても、系統連系時において負荷装置へ放電電力を供給でき、停電が起こった場合も同様に、負荷装置へ放電電力を供給することができる。
【0009】
上記蓄電システムの制御部は、(4)第1電位差解消制御の最中に停電が発生した場合に、低電位側の蓄電池に接続されたリレーをオフ状態とした後に高電位側の蓄電池に接続されたリレーをオン状態として高電位側の蓄電池を放電させる第1停電時制御と、(5)第2電位差解消制御の最中に停電が発生した場合に、そのまま高電位側の蓄電池を放電させる第2停電時制御とをさらに実行するよう構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1電位差解消制御の最中に停電が発生した場合に、高電位側の蓄電池の放電を開始することができる。また、この構成によれば、第2電位差解消制御の最中に停電が発生した場合に、途切れることなく高電位側の蓄電池の放電を継続することができる。
【0011】
上記蓄電システムの制御部は、(6)第1および第2停電時制御の最中に電位差が閾値未満となった場合に、両方のリレーをオン状態として両方の蓄電池を放電させる通常時制御をさらに実行するよう構成されていてもよい。
【0012】
上記蓄電システムの制御部は、パワーコンディショナの一部であってもよい。
【0013】
上記蓄電システムの2つの蓄電池ユニットのそれぞれが蓄電池管理部をさらに含んでいる場合、制御部は、蓄電池管理部から蓄電池の電位に関する情報を取得してもよい。
【0014】
上記蓄電システムの2つの蓄電池ユニットのそれぞれが蓄電池管理部をさらに含んでいる場合、制御部は、蓄電池管理部を介してリレーをオン/オフさせてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓄電池間の電位差が解消していなくても負荷装置に向けて蓄電池の放電電力を供給することが可能な蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施例に係る蓄電システムおよびその周辺の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施例に係る蓄電システムの動作を示すフロー図である。
図3】第1実施例に係る蓄電システムの動作(特に停電時の動作)を示すフロー図である。
図4】本発明の第2実施例に係る蓄電システムおよびその周辺の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る蓄電システムの第1実施例および第2実施例について説明する。
【0018】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る蓄電システム10Aを示す。蓄電システム10Aは、商用電力系統100において停電が起こったときに、商用電力系統100に代わって負荷装置103に必要な電力を供給することを主な目的としたもので、同図に示すように、解列用リレー101を介して商用電力系統100に接続された全負荷型の分電盤102に接続されている。分電盤102には、前述の負荷装置103も接続されている。
【0019】
蓄電システム10Aは、パワーコンディショナ11と、制御部12と、記憶部13と、既設蓄電池ユニット20aと、増設蓄電池ユニット20bとを備えている。
【0020】
パワーコンディショナ11は、分電盤102および負荷装置103に接続される交流側入出力端と、既設蓄電池ユニット20aおよび増設蓄電池ユニット20bに接続された直流側入出力端と、交流側入出力端に接続された双方向DC/AC変換部と、双方向DC/AC変換部および直流側入出力端の間に接続された双方向DC/DC変換部とを備えている。
【0021】
パワーコンディショナ11は、交流側入出力端に供給された交流電力(例えば、商用電力系統100から供給された商用交流電力)を適当な直流電力に変換して直流側入出力端から出力することができる。また、パワーコンディショナ11は、直流側入出力端に供給された直流電力(例えば、既設蓄電池ユニット20aを構成する蓄電池22aの放電電力)を商用交流電力相当の交流電力に変換して交流側入出力端から出力することもできる。
【0022】
既設蓄電池ユニット20aは、蓄電システム10Aに最初から備えられていたもので、リレー21aと、蓄電池22aと、BMS(Battery Management System)と呼ばれることがある蓄電池管理部23aとを備えている。
【0023】
リレー21aは、パワーコンディショナ11に接続された一端と、蓄電池22aに接続された他端とを有している。リレー21aは、蓄電池管理部23aの制御下でオン状態(導通)またはオフ状態(非導通)をとることができる。
【0024】
蓄電池22aは、リチウムイオン電池で構成されている。蓄電池22aは、単一の電池セルで構成されていてもよいし、2つ以上の電池セルを並列または直列に接続したものであってもよい。
【0025】
蓄電池管理部23aは、蓄電池22aの状態を常時監視する機能、蓄電池22aに異常が発生しているか否かを判定する機能、および判定の結果に従ってリレー21aをオン状態またはオフ状態に切り替える機能を有している。本実施例では、蓄電池管理部23aは、蓄電池22aのセル電圧やセル温度が正常範囲外となったときに、リレー21aをオン状態からオフ状態に切り替えることができる。
【0026】
また、蓄電池管理部23aは、蓄電池22aの状態に関する信号を定期的に、またはリクエストがあったときに制御部12に送信する機能を有している。本実施例では、蓄電池管理部23aは、制御部12からのリクエストに応じて蓄電池22aの電位に関する信号を制御部12に送信することができる。
【0027】
さらに、蓄電池管理部23aは、制御部12からの指示に従ってリレー21aをオン状態またはオフ状態に切り替える機能も有している。
【0028】
増設蓄電池ユニット20bは、蓄電システム10Aに後から備えられたもので、リレー21bと、蓄電池22bと、BMSと呼ばれることがある蓄電池管理部23bとを備えている。
【0029】
リレー21bは、リレー21aと同様、パワーコンディショナ11に接続された一端と、蓄電池22bに接続された他端とを有している。リレー21bは、蓄電池管理部23bの制御下でオン状態またはオフ状態をとることができる。
【0030】
蓄電池22bは、蓄電池22aと同様、リチウムイオン電池で構成されている。蓄電池22bは、単一の電池セルで構成されていてもよいし、2つ以上の電池セルを並列または直列に接続したものであってもよい。また、種別および蓄電池容量が蓄電池22aと異なっていてもよい。ただし、蓄電池22bおよび蓄電池22aは、定格動作電圧範囲が同一であることが好ましい。
【0031】
蓄電池管理部23bは、蓄電池管理部23aと同様、蓄電池22bの状態を常時監視する機能、蓄電池22bに異常が発生しているか否かを判定する機能、および判定の結果に従ってリレー21bをオン状態またはオフ状態に切り替える機能を有している。本実施例では、蓄電池管理部23bは、蓄電池22bのセル電圧やセル温度が正常範囲外となったときに、リレー21bをオン状態からオフ状態に切り替えることができる。
【0032】
また、蓄電池管理部23bは、蓄電池管理部23aと同様、蓄電池22bの状態に関する信号を定期的に、またはリクエストがあったときに制御部12に送信する機能を有している。本実施例では、蓄電池管理部23bは、制御部12からのリクエストに応じて蓄電池22bの電位に関する信号を制御部12に送信することができる。
【0033】
さらに、蓄電池管理部23bは、蓄電池管理部23aと同様、制御部12からの指示に従ってリレー22bをオン状態またはオフ状態に切り替える機能も有している。
【0034】
記憶部13は、蓄電システム10Aの動作に関するユーザ設定情報を格納している。本実施例では、ユーザ設定情報に、蓄電池22a,22bの充電を行うべき時間帯(例えば、深夜電力料金が適用される午後11時~翌午前7時)が含まれている。ユーザは、ユーザ設定情報を任意のタイミングで変更することができる。
【0035】
制御部12は、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等で構成されている。制御部12は、蓄電池管理部23a,23bから蓄電池22a,22bの電位に関する信号を受信することができる。また、制御部12は、受信した信号が示す蓄電池22a,22bの電位に基づいて、蓄電池管理部23a,23bにリレー21a,21bの状態を切り替えさせたり、パワーコンディショナ11の動作状態を変更したりすることができる。
【0036】
制御部12は、不図示の電圧計による検出の結果に基づいて、商用電力系統100において停電が起こったことを瞬時に把握することもできる。
【0037】
続いて、図2および図3を参照しながら、ユーザまたは作業員が蓄電システム10Aに増設蓄電池ユニット20bを接続し、その後、蓄電システム10Aを起動させたときの制御部12の動作について説明する。
【0038】
ステップS1において、制御部12は、蓄電池管理部23a,23bから蓄電池22a,22bの電位に関する信号を受信する。これに先立って、制御部12は、蓄電池管理部23a,23bに対して信号の送信をリクエストする。
【0039】
ステップS1に続くステップS2において、制御部12は、ステップS1において受信した信号が示す蓄電池22aの電位および蓄電池22bの電位の差(以下、単に「電位差」という)が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する。そして、判定の結果が“No”である場合、すなわち、電位差に応じて流れる電流が許容範囲内である場合は、ステップS18に進む。一方、判定の結果が“Yes”である場合、すなわち、電位差に応じて流れる電流が許容範囲外であり、電位差を解消する必要がある場合は、ステップS3に進む。なお、閾値は、蓄電池22aおよび蓄電池22bのうちの一方から他方に向かって流れる電流が許容できるものであるか否かに基づいて設定されたものである。
【0040】
ステップS18において、制御部12は、蓄電池管理部23a,23bを介して両方のリレー21a,21bをオン状態に切り替えて(元からオン状態である場合は、その状態を維持して)、蓄電池22a,22bを相互に接続する。そして、制御部12は、通常時制御を開始する。通常時制御には、停電が起こっていないときに、蓄電池22a,22bを同時並行的に充電する、または放電させることと、停電が起こっているときに、蓄電池22a,22bを同時並行的に放電させることとが含まれる。
【0041】
ステップS3において、制御部12は、パワーコンディショナ11の双方向DC/AC変換部および双方向DC/DC変換部を制御して、これらにおける電力変換動作を停止させることにより、蓄電池22a,22bの充放電を停止させる(元から停止している場合は、それを維持する)。
【0042】
ステップS3に続くステップS4において、制御部12は、蓄電池管理部23a,23bを介して両方のリレー21a,21bをオフ状態に切り替える(元からオフ状態である場合は、その状態を維持する)。
【0043】
ステップS4に続くステップS5において、制御部12は、蓄電池22a,22bの充電を行うべきか否かを判定する。より具体的には、制御部12は、現在時刻が記憶部13に格納されたユーザ設定情報が示す充電を行うべき時間帯(本実施例では、前述した通り、午後11時~翌午前7時)に含まれるか否かを判定する。そして、判定の結果が“Yes”である場合は、「第1電位差解消制御」により電位差を解消するためにステップS6に進み、判定の結果が“No”である場合は、「第2電位差解消制御」により電位差を解消するためにステップS12に進む。
【0044】
ステップS6において、制御部12は、既設蓄電池ユニット20aを構成する蓄電池22aの電位が増設蓄電池ユニット20bを構成する蓄電池22bの電位よりも低い場合は、「低電位ユニット」であるといえる既設蓄電池ユニット20aの蓄電池管理部23aを介してリレー21aのみをオン状態に切り替える。一方、制御部12は、増設蓄電池ユニット20bを構成する蓄電池22bの電位が既設蓄電池ユニット20aを構成する蓄電池22aの電位よりも低い場合は、「低電位ユニット」であるといえる増設蓄電池ユニット20bの蓄電池管理部23bを介してリレー21bのみをオン状態に切り替える。
【0045】
ステップS6に続くステップS7において、制御部12は、パワーコンディショナ11の双方向DC/AC変換部および双方向DC/DC変換部を制御して、パワーコンディショナ11に直流電力を出力させることにより、低電位ユニット(例えば、既設蓄電池ユニット20a。以下、この場合について説明する)の蓄電池22aを充電する。これにより、蓄電池22aの電位は上昇していく。
【0046】
ステップS7に続くステップS8において、制御部12は、ステップS5と同様の判定を行う。そして、判定の結果が“Yes”である場合は、引き続き第1電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS9に進み、判定の結果が“No”である場合は、第1電位差解消制御ではなく第2電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS3に戻る。
【0047】
ステップS9において、制御部12は、商用電力系統100において停電が起こっているか否かを判定する。そして、判定の結果が“Yes”である場合は、「第1停電時制御」により負荷装置103に必要な電力を供給しながら電位差を解消するためにステップS19に進み、判定の結果が“No”である場合は、引き続き第1電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS10に進む。
【0048】
ステップS10において、制御部12は、ステップS1と同様にして、蓄電池22a,22bの最新の電位を取得する。
【0049】
ステップS10に続くステップS11において、制御部12は、ステップS2と同様の判定を行う。そして、判定の結果が“No”である場合、すなわち、電位差に応じて流れる電流が許容範囲内である場合は、ステップS18に進む。一方、判定の結果が“Yes”である場合は、引き続き第1電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS7に戻る。
【0050】
制御部12は、ステップS8における判定の結果が“No”となるか、ステップS9における判定の結果が“Yes”となるか、ステップS11における判定の結果が“No”となるまで、第1電位差解消制御(低電位ユニットを構成する蓄電池22aの充電)を継続する。
【0051】
ステップS12において、制御部12は、増設蓄電池ユニット20bを構成する蓄電池22bの電位が既設蓄電池ユニット20aを構成する蓄電池22aの電位よりも高い場合は、「高電位ユニット」であるといえる増設蓄電池ユニット20bの蓄電池管理部23bを介してリレー21bのみをオン状態に切り替える。一方、制御部12は、既設蓄電池ユニット20aを構成する蓄電池22aの電位が増設蓄電池ユニット20bを構成する蓄電池22bの電位よりも高い場合は、「高電位ユニット」であるといえる既設蓄電池ユニット20aの蓄電池管理部23aを介してリレー21aのみをオン状態に切り替える。
【0052】
ステップS12に続くステップS13において、制御部12は、パワーコンディショナ11の双方向DC/AC変換部および双方向DC/DC変換部を制御して、パワーコンディショナ11に交流電力を出力させることにより、高電位ユニット(例えば、増設蓄電池ユニット20b。以下、この場合について説明する)の蓄電池22bを放電させる。これにより、蓄電池22bの電位は低下していく。
【0053】
なお、放電先が存在しない場合(例えば、負荷装置103が稼働していない場合)、制御部12は、蓄電池22bを放電させることなく待機する。待機中であっても、蓄電池22bの電位はパワーコンディショナ11に含まれる制御電源(不図示)への電力供給等により緩やかに低下していく。このため、待機中であっても、電位差は緩やかに解消していく。
【0054】
ステップS13に続くステップS14において、制御部12は、ステップS5と同様の判定を行う。そして、判定の結果が“No”である場合は、引き続き第2電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS15に進み、判定の結果が“Yes”である場合は、第2電位差解消制御ではなく第1電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS3に戻る。
【0055】
ステップS15において、制御部12は、ステップS9と同様の判定を行う。そして、判定の結果が“Yes”である場合は、「第2停電時制御」により負荷装置103に必要な電力を供給しながら電位差を解消するためにステップS22に進み、判定の結果が“No”である場合は、引き続き第2電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS16に進む。
【0056】
ステップS16において、制御部12は、ステップS1と同様にして、蓄電池22a,22bの最新の電位を取得する。
【0057】
ステップS16に続くステップS17において、制御部12は、ステップS2と同様の判定を行う。そして、判定の結果が“No”である場合、すなわち、電位差に応じて流れる電流が許容範囲内である場合は、ステップS18に進む。一方、判定の結果が“Yes”である場合は、引き続き第2電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS13に戻る。
【0058】
制御部12は、ステップS14における判定の結果が“Yes”となるか、ステップS15における判定の結果が“Yes”となるか、ステップS17における判定の結果が“No”となるまで、第2電位差解消制御(高電位ユニットを構成する蓄電池22bの放電)を継続する。
【0059】
第1電位差解消制御の最中に停電が起こった場合、すなわち、ステップS9の判定の結果が“Yes”であった場合に実行されるステップS19において、制御部12は、パワーコンディショナ11の双方向DC/AC変換部および双方向DC/DC変換部を制御して、パワーコンディショナ11からの直流電力の出力を停止させることにより、低電位ユニット(例えば、既設蓄電池ユニット20a。以下、この場合について説明する)を構成する蓄電池22aの充電を停止させる。
【0060】
ステップS19に続くステップS20において、制御部12は、低電位ユニットである既設蓄電池ユニット20aの蓄電池管理部23aを介してリレー21aをオフ状態に切り替える。
【0061】
ステップS20に続くステップS21において、制御部12は、高電位ユニットである増設蓄電池ユニット20bの蓄電池管理部23bを介してリレー21bをオン状態に切り替える。なお、ステップS21を実行するのは、ステップS20の後でなければならない。先にステップS21を実行すると、電位差が閾値を超えた状態で蓄電池22a,22bが相互に接続されてしまうからである。
【0062】
このように、第1電位差解消制御の最中に停電が起こった場合は、ステップS19,S20,S21を実行した後にステップS22が実行される。一方、第2電位差解消制御の最中に停電が起こった場合、すなわち、ステップS15の判定の結果が“Yes”であった場合は、図3から明らかなように、ステップS22が直ちに実行される。第2電位差解消制御中は、低電位ユニットである既設蓄電池ユニット20aのリレー21aは常にオフ状とされ、高電位ユニットである増設蓄電池ユニット20bのリレー21bは常にオン状態とされているからである。
【0063】
ステップS22において、制御部12は、ステップS9と同様の判定を行う。そして、判定の結果が“Yes”である場合は、引き続き第1停電時制御または第2停電時制御により負荷装置103に必要な電力を供給しながら電位差を解消するためにステップS23に進み、判定の結果が“No”である場合は、第1電位差解消制御または第2電位差解消制御により電位差を解消するためにステップS1に戻る。
【0064】
ステップS22に続くステップS23において、制御部12は、パワーコンディショナ11の双方向DC/AC変換部および双方向DC/DC変換部を制御して、パワーコンディショナ11に交流電力を出力させることにより、高電位ユニットである増設蓄電池ユニット20bの蓄電池22bを放電させる。これにより、負荷装置103に必要な電力が供給されるとともに、蓄電池22bの電位が低下していく(電位差が解消されていく)。
【0065】
ステップS23に続くステップS24において、制御部12は、ステップS1と同様にして、蓄電池22a,22bの最新の電位を取得する。
【0066】
ステップS24に続くステップS25において、制御部12は、ステップS2と同様の判定を行う。そして、判定の結果が“No”である場合、すなわち、電位差に応じて流れる電流が許容範囲内である場合は、ステップS18に進む。一方、判定の結果が“Yes”である場合は、引き続き第1停電時制御または第2停電時制御により負荷装置103に必要な電力を供給しながら電位差を解消するためにステップS22に戻る。
【0067】
制御部12は、ステップS22における判定の結果が“No”となるか、ステップS25における判定の結果が“No”となるまで、第1停電時制御または第2停電時制御を継続する。
【0068】
このように、本実施例に係る蓄電システム10Aは、充電を行うべき状況では低電位側の蓄電池を充電する第1電位差解消制御により電位差を解消し、充電を行うべきではない状況では高電位側の蓄電池を放電させる第2電位差解消制御により電位差を解消するよう構成されている。つまり、蓄電システム10Aでは、電位差を解消するための手段が低電位側の蓄電池の充電に限定されていない。このため、蓄電システム10Aによれば、蓄電池間の電位差が解消していなくても、例えば、商用電力系統において停電が起こった場合に、負荷装置103に向けて蓄電池の放電電力を供給することができる。
【0069】
[第2実施例]
図4に、本発明の第2実施例に係る蓄電システム10Bを示す。蓄電システム10Bは、制御部12がパワーコンディショナ11の一部である点で蓄電システム10Aと相違しているが、他の点では蓄電システム10Aと共通している。
【0070】
第1実施例と同様、制御部12は、MPU、DSP等で構成されている。制御部12は、蓄電池管理部23a,23bから蓄電池22a,22bの電位に関する信号を受信することができる。また、制御部12は、受信した信号が示す蓄電池22a,22bの電位に基づいて、蓄電池管理部23a,23bにリレー21a,21bの状態を切り替えさせたり、パワーコンディショナ11を構成する双方向DC/AC変換部および双方向DC/DC変換部の動作状態を変更したりすることができる。
【0071】
制御部12は、不図示の電圧計による検出の結果に基づいて、商用電力系統100において停電が起こったことを瞬時に把握することもできる。
【0072】
本実施例に係る蓄電システム10Bによれば、蓄電システム10Aと同じ作用効果が得られる。
【0073】
[変形例]
以上、本発明に係る蓄電システムの第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0074】
例えば、パワーコンディショナ11の内部/外部にある制御部12は、蓄電池管理部23a,23bを介さずに蓄電池22a,22bの電位を取得してもよい。また、制御部12は、蓄電池管理部23a,23bを介さずにリレー21a,21bの状態を切り替えてもよい。
【0075】
また、ステップS5,S8,S14において制御部12が参照するユーザ設定情報は、蓄電池22a,22bの放電を行うべき時間帯(例えば、負荷装置103の消費電力が大きくなると見込まれる時間帯)、および/または蓄電池22a,22bの充電を行うべき時間帯(例えば、安価な深夜電力を利用することが可能な時間帯)を含んでいてもよい。なお、充電時間帯でも放電時間帯でもない時間帯(不定時間帯という)が存在する場合、その時間帯については、ステップS5,S8,S14の判定の結果を“No”とすればよい。
【0076】
また、制御部12は、蓄電システム10A,10Bの動作に関するユーザ設定情報以外に基づいてステップS5,S8,S14の判定、すなわち、充電を行うべきか否かの判定を行ってもよい。例えば、制御部12は、停電時に備えて十分な蓄電池残量を確保しておくために低電位側の蓄電池(例えば、蓄電池22a)のSOCが80%未満である場合に、蓄電池22aに対して充電を行うべきとの判定をしてもよい。あるいは、制御部12は、蓄電システム10A,10Bに太陽光発電装置が内蔵または外付けされている場合は、この太陽光発電装置の余剰電力を考慮してステップS5,S8,S14の判定を行ってもよい。
【0077】
また、制御部12は、記憶部13に格納されたユーザ設定情報以外の情報に基づいてステップS5,S8,S14の判定を行ってもよい。例えば、制御部12は、不図示の上位機器(例えば、HEMS)から送信されてきた情報に基づいてステップS5,S8,S14の判定を行ってもよい。
【0078】
また、リレー21a,21bは、オン状態(導通)またはオフ状態(非導通)をとることができる任意の双方向のスイッチギアであってもよい。すなわち、本発明においては、用語「リレー」にリレー以外のスイッチギアが含まれる。
【0079】
また、蓄電池22a,22bは、リチウムイオン電池以外の電池であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10A,10B 蓄電システム
11 パワーコンディショナ
12 制御部
13 記憶部
20a 既設蓄電池ユニット
21a (既設蓄電池ユニットの)リレー
22a (既設蓄電池ユニットの)蓄電池
23a (既設蓄電池ユニットの)蓄電池管理部
20b 増設蓄電池ユニット
21b (増設蓄電池ユニットの)リレー
22b (増設蓄電池ユニットの)蓄電池
23b (増設蓄電池ユニットの)蓄電池管理部
100 商用電力系統
101 解列用リレー
102 分電盤
103 負荷装置
図1
図2
図3
図4