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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004997
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ガスケット装着用工具
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
F16J15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104955
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】赤松 淑子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 清華
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡美
(57)【要約】      (修正有)
【課題】配管同士の接続部のフランジ間のシール材として使用されるガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間に容易に装着ができるガスケット装着用工具を提供する。
【解決手段】第1挟持板2及び第2挟持板3並びにクランプ本体4を有し、クランプ本体4の上顎4aに第1挟持板2が配設され、クランプ本体4の下顎4bに第2挟持板3が配設され、ガスケットの外周面と接するガスケット接触面5aを側面に有し、ガスケットの厚さよりも小さい厚さを有するガスケット固定板5が第1挟持板2と第2挟持板3との間で第1挟持板2及び第2挟持板3の少なくとも一方に配設されており、フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが一致する円弧を描くフランジとの複数の接触点を側面に有し、当該接触点を有する側面がフランジの外周面と接触するようにフランジ接触部材7が第1挟持板2及び第2挟持板3の少なくとも一方の表面上に配設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管同士の接続部のフランジ間にガスケットを装着するためのガスケット装着用工具であって、
ガスケットを挟持するための第1挟持板および第2挟持板ならびにクランプ本体を有し、当該クランプ本体の上顎に第1挟持板が配設され、当該クランプ本体の下顎に第2挟持板が配設されており、
ガスケットの外周面と接するガスケット接触面を側面に有し、ガスケットの厚さよりも小さい厚さを有するガスケット固定板が、当該ガスケット固定板のガスケット接触面がガスケットと接触するように第1挟持板と第2挟持板との間で第1挟持板および第2挟持板の少なくとも一方に配設されており、
フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが一致する円弧を描くフランジとの複数の接触点を側面に有するフランジ接触部材が、当該接触点を有する側面がフランジの外周面と接触するように第1挟持板および第2挟持板の少なくとも一方の表面上に配設されていること
を特徴とするガスケット装着用工具。
【請求項2】
第1挟持板と第2挟持板との間隙を調整可能に第1挟持板がクランプ本体の上顎に配設され、第2挟持板がクランプ本体の下顎に配設されている請求項1に記載のガスケット装着用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット装着用工具に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、配管同士の接続部のフランジ間でシール材として使用されるガスケットを当該ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間に容易に装着させることができるガスケット装着用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、配管同士の接続部のフランジ間に装着したとき、当該フランジ間のシール性に優れていることから、火力発電所、原子力発電所、スチームタービン船の蒸気機関、石油精製ライン、石油化学工業のプロセスライン、熱媒体油ラインなどで使用される配管のフランジ同士を接続する際に広く用いられている。
【0003】
一般に配管のフランジ間でのガスケットの装着は、一方のフランジに配設されているボルト用貫通孔にボルトを挿入し、当該ボルトをガスケットのボルト用貫通孔に挿入し、当該ボルトを他方のフランジに配設されているボルト用貫通孔に挿入した後、当該ボルトの末端にナットを装着し、当該ナットを締め付けることによって行なわれている。
【0004】
しかし、各フランジおよびガスケットに配設されているボルト用貫通孔の孔径は、当該ボルト用貫通孔にボルトを容易に挿入するために当該ボルトの外径よりも大きいことから、フランジ間にガスケットを装着し、ボルトを締め付けたとき、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間にガスケットを装着させることが困難である。
【0005】
ガスケットを所定位置に正確に配置することができるガスケット位置決め治具として、少なくとも第1ガスケットをガスケット取付面の所定位置に取り付けるためのガスケット位置決め治具であって、前記第1ガスケットの長手方向に対して略直角方向である幅方向に延在する治具本体と、前記ガスケット取付面が形成してある取付部材に、前記治具本体を着脱自在に仮固定する仮固定手段と、前記治具本体から前記ガスケット取付面に向けて突出し、前記第1ガスケットにおける前記幅方向の第1側の位置を規制する第1位置決め用凸部と前記第1位置決め用凸部に対して前記幅方向に所定距離で離れて形成され、前記治具本体から前記ガスケット取付面に向けて突出し、前記第1ガスケットにおける前記幅方向の第2側の位置を規制する第2位置決め用凸部とを有するガスケット位置決め治具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、前記ガスケット位置決め治具を用いたとき、前記ガスケット位置決め治具が取り付けられている箇所でのみガスケットがフランジ間で固定されていることから、前記ガスケット位置決め治具が取り付けられている位置を回転軸としてフランジとガスケットがずれ動くことがあるため、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間に装着させることが困難である。また、前記ガスケット位置決め治具は、第1位置決め用凸部および第2位置決め用凸部に対応するガスケットに対してのみ使用することができることから、汎用性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3188884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、配管同士の接続部のフランジ間でシール材として使用されるガスケットを当該ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間に容易に装着させることができるガスケット装着用工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1) 配管同士の接続部のフランジ間にガスケットを装着するためのガスケット装着用工具であって、ガスケットを挟持するための第1挟持板および第2挟持板ならびにクランプ本体を有し、当該クランプ本体の上顎に第1挟持板が配設され、当該クランプ本体の下顎に第2挟持板が配設されており、ガスケットの外周面と接するガスケット接触面を側面に有し、ガスケットの厚さよりも小さい厚さを有するガスケット固定板が、当該ガスケット固定板のガスケット接触面がガスケットと接触するように第1挟持板と第2挟持板との間で第1挟持板および第2挟持板の少なくとも一方に配設されており、フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが一致する円弧を描くフランジとの複数の接触点を側面に有するフランジ接触部材が、当該接触点を有する側面がフランジの外周面と接触するように第1挟持板および第2挟持板の少なくとも一方の表面上に配設されていることを特徴とするガスケット装着用工具、および
(2) 第1挟持板と第2挟持板との間隙を調整可能に第1挟持板がクランプ本体の上顎に配設され、第2挟持板がクランプ本体の下顎に配設されている前記(1)に記載のガスケット装着用工具
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配管同士の接続部のフランジ間でシール材として使用されるガスケットを当該ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間に容易に装着させることができるガスケット装着用工具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のガスケット装着用工具の一実施態様を示す概略斜視図である。
図2】本発明のガスケット装着用工具に用いられている第1挟持板上にガスケット固定板が配設されているときの第1挟持板およびガスケット固定板の平面方向における概略説明図である。
図3】本発明のガスケット装着用工具に用いられているクランプ本体の上顎にフランジ接触部材が配設されているときの平面方向におけるクランプ本体およびフランジ接触部材の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のガスケット装着用工具は、前記したように、配管同士の接続部のフランジ間にガスケットを装着するためのガスケット装着用工具である。より具体的には、本発明のガスケット装着用工具は、配管の末端に接続部として形成されているフランジ間にガスケットを取り付けるための工具である。本発明のガスケット装着用工具の概念には、フランジ間にガスケットを取り付けるために使用されるガスケット取付具、ガスケット取付(設置)用治具、ガスケット保持具などが包含される。
【0013】
本発明のガスケット装着用工具は、ガスケットを挟持するための第1挟持板および第2挟持板、ならびにクランプ本体を有し、当該クランプ本体の上顎に第1挟持板が配設され、当該クランプ本体の下顎に第2挟持板が配設されており、ガスケットの外周面と接するガスケット接触面を側面に有し、ガスケットの厚さよりも小さい厚さを有するガスケット固定板が、当該ガスケット固定板のガスケット接触面がガスケットと接触するように第1挟持板と第2挟持板との間で第1挟持板および第2挟持板の少なくとも一方に配設されており、フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが一致する円弧を描くフランジとの複数の接触点を側面に有するフランジ接触部材が、当該接触点を有する側面がフランジの外周面と接触するように第1挟持板および第2挟持板の少なくとも一方の表面上に配設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のガスケット装着用工具は、前述の構成を有することから、配管同士の接続部のフランジ間でシール材として使用されるガスケットを、当該ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間に容易に装着させることができるという優れた効果を奏する。
【0015】
以下に、本発明のガスケット装着用工具を図面に基づいて説明するが、当該図面に記載の実施態様は、本発明のガスケット装着用工具の例示であるため、本発明は、当該実施態様のみによって限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明のガスケット装着用工具の一実施態様を示す概略斜視図である。図1に示されるように、本発明のガスケット装着用工具1は、ガスケット(図示せず)を挟持するための第1挟持板2および第2挟持板3、ならびにクランプ本体4を有する。
【0017】
第1挟持板2と第2挟持板3との間でガスケットが挟持される。第1挟持板2および第2挟持板3は、いずれも、樹脂、金属などで作製することができるが、ガスケットを挟持するときの機械的強度を保持する観点から、金属で作製されていることが好ましい。当該金属としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS347、SUS430などのステンレス鋼、鉄、銅、真鍮、アルミニウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。第1挟持板2および第2挟持板3のガスケットと接触する面には、ガスケットの保持力を高めるとともにガスケットの傷つきを防止するために、それぞれ、ゴムシート、エラストマーシートなどの弾性を有するシートが貼付されていてもよい。また、第1挟持板2および第2挟持板3の表面には、それぞれ、必要により亜鉛めっき、ニッケルめっきなどの金属めっきが施されていてもよい。
【0018】
クランプ本体4の上顎4aの下面には第1挟持板2が配設され、クランプ本体4の下顎4bの上面には第2挟持板が配設されている。
【0019】
クランプ本体4の大きさおよび形状は、任意であり、本発明は、クランプ本体4の大きさおよび形状によって限定されるものではない。また、クランプ本体4として、ハンドバイスプライヤー、例えば、カクタ(株)製、ハンドバイスNo.70などのハンドバイスプライヤーなどを用いることができる。本発明で使用されるクランプ本体4は、ハンドバイスプライヤーなどのプライヤーとは称呼が相違している。しかし、本発明に使用されるクランプ本体4と同様に上顎4aおよび下顎4bを配設することができ、上顎4aと下顎4bとの間でガスケットを挟持することができるものは、本発明に使用されるクランプ本体4の概念に包含される。
【0020】
図1に示されるガスケット装着用工具1では、第1挟持板2と第2挟持板3との間隙を調整可能に第1挟持板2がクランプ本体4の上顎4aの下面に配設され、第2挟持板3がクランプ本体4の下顎4bの上面に配設されている。
【0021】
第1挟持板2と第2挟持板3との間隙の調整は、図1に示されるガスケット装着用工具1では、昇降軸4cを用いて行なうことができる。昇降軸4cは、例えば、クランプ本体4の下部で垂直上方に延伸している基軸4dを回転軸として回転自在となるように、昇降軸4cの内部の空間に基軸4dを挿入することによって基軸4dに取り付けることができる。昇降軸4cの内周面(図示せず)および基軸4dの外周面(図示せず)にそれぞれ螺子溝を形成させておき、昇降軸4cと基軸4dとを螺子嵌合させ、昇降軸4cを回転させることにより、昇降軸4cを上昇させたり、下降させたりすることができる。
【0022】
図1に示される実施態様では、クランプ本体4が有する昇降軸4cを上昇させることによって第2挟持板3が上昇するので、第1挟持板2と第2挟持板3との間でガスケットが挟持されて固定される。クランプ本体4は、昇降軸4cを有するが、本発明は、ガスケットを挟持して固定するための手段によって限定されず、例えば、プライヤー、クリップなどを用いてフランジを第1挟持板2と第2挟持板3との間に挟持させて固定してもよい。
【0023】
第1挟持板2および第2挟持板3の幅Wおよび長さLは、使用されるガスケットの大きさおよびその質量などによって異なるので一概には決定することができないが、第1挟持板2と第2挟持板3との間でガスケットを堅固に掴持する観点から、第1挟持板2および第2挟持板3の幅Wは、それぞれ30~100mmであることが好ましく、第1挟持板2および第2挟持板3の長さLは、それぞれ30~120mmであることが好ましい。
【0024】
第1挟持板2および第2挟持板3の厚さ(図示せず)は、使用されるガスケットの大きさおよびその質量、第1挟持板2および第2挟持板3の材質などによって異なるので一概には決定することができないが、第1挟持板2と第2挟持板3との間でガスケットを堅固に掴持する観点から、1~5mmであることが好ましい。
【0025】
第1挟持板2および第2挟持板3は、例えば、ボルトなどの固定具、接着剤などを用いてそれぞれクランプ本体4の上顎4aおよび下顎4bに配設されていてもよく、溶接によってそれぞれクランプ本体4の上顎4aおよび下顎4bに配設されていてもよい。
【0026】
第1挟持板2と第2挟持板3との間にガスケット固定板5が配設されている。ガスケット固定板5は、樹脂、金属などで作製することができるが、ガスケットを挟持するときの機械的強度を保持する観点から、金属で作製されていることが好ましい。当該金属としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS347、SUS430などのステンレス鋼、鉄、銅、真鍮、アルミニウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ガスケット固定板5の表面には、必要により亜鉛めっき、ニッケルめっきなどの金属めっきが施されていてもよい。
【0027】
ガスケット固定板5は、その側面にガスケットの外周面と接するガスケット接触面5aを有する。ガスケット固定板5のガスケット接触面5aの形状は、特に限定されず、曲面であってもよく、凹凸面であってもよく、あるいは波型面であってもよい。ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを容易に一致させる観点から、ガスケット接触面5aとガスケットの外周面との接触点は、少なくとも2点であることが好ましく、2点または3点であることがより好ましく、3点であることがさらに好ましい。
【0028】
ガスケット固定板5とガスケットとの接触点を通って描かれる真円の中心軸は、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させる観点から、フランジの中心軸(図示せず)と一致するように調整される。
【0029】
ガスケット固定板5は、ガスケット固定板5のガスケット接触面5aがガスケットと接触するように第1挟持板2と第2挟持板3との間に配設されている。ガスケット固定板5は、第1挟持板2および第2挟持板3の少なくとも一方に配設される。したがって、ガスケット固定板5は、第1挟持板2のみに配設されていてもよく、第2挟持板3のみに配設されていてもよく、あるいは第1挟持板2および第2挟持板3の双方に配設されていてもよい。ガスケット固定板5は、例えば、ボルトなどの固定具、接着剤などを用いて第1挟持板2および/または第2挟持板3に固定されていてもよく、溶接によって第1挟持板2および/または第2挟持板3に固定されていてもよい。
【0030】
図2は、第1挟持板2上にガスケット固定板5が配設されているときの第1挟持板2およびガスケット固定板5の平面方向における概略説明図である。図2において、符号6は、ガスケットの仮想線である。ガスケットの仮想線6は、第1挟持板2およびガスケット固定板5の説明の便宜上で描かれている線であり、実際のガスケットの大きさを示すものではない。
【0031】
ガスケット固定板5のガスケット接触面5aは、ガスケット固定板5のガスケット6と接触する面に設けられている。図2に示されるガスケット固定板5のガスケット接触面5aは、点Pおよび点Qでガスケットの仮想線6と接触しているが、さらに他の接触点でガスケットの仮想線6と接触していてもよい。ガスケットの仮想線6と接触する点Pおよび点Qは、図2に示されるように、ガスケット固定板5の側端部5bよりも内側に存在していてもよく、ガスケット固定板5の側端部5bに存在していてもよい。
【0032】
第1挟持板2のガスケットが存在する側の端部(図2に向かって右端の端部)と、点Pおよび点Qとの間の距離Sは、使用されるガスケットの大きさ、質量などによって異なるので一概には決定することができない。距離Sは、ガスケットを強固に掴持するとともにガスケット装着用工具1の使用性を向上させる観点から、5~40mmであることが好ましい。
【0033】
図2に示される実施態様では、ガスケット固定板5が第1挟持板2上に配設されているときの例が示されているが、ガスケット固定板5が第2挟持板3上に配設されている場合および第1挟持板2上と第1挟持板2上との双方に配設されている場合のいずれの場合であっても、ガスケット固定板5が第1挟持板2上に配設されているときと同様の実施態様を有することが好ましい。
【0034】
ガスケット固定板5の厚さは、ガスケットを第1挟持板2と第2挟持板3との間で掴持する観点から、使用されるガスケットの厚さよりも小さい厚さを有する。ガスケット固定板5の厚さは、第1挟持板2、第1挟持板2、ガスケットの端部の表面粗さなどを考慮すると、ガスケットの厚さよりも0.1~0.5mm程度小さいことが好ましい。
【0035】
ガスケット固定板5が第1挟持板2および第2挟持板3の双方に配設されている場合、第1挟持板2に設けられているガスケット固定板5の厚さと第2挟持板3に設けられているガスケット固定板5の厚さとの和は、ガスケットを第1挟持板2と第2挟持板3との間で掴持する観点から、使用されるガスケットの厚さよりも小さくなるように調整される。第1挟持板2に設けられているガスケット固定板5の厚さと第2挟持板3に設けられているガスケット固定板5の厚さとの和は、第1挟持板2、第1挟持板2、ガスケットの端部の表面粗さなどを考慮すると、ガスケットの厚さよりも0.1~0.5mm程度小さいことが好ましい。
【0036】
本発明のガスケット装着用工具1においては、図1に示されるように、フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが一致する円弧を描くフランジとの複数の接触点を側面に有するフランジ接触部材7が、当該接触点を有する側面がフランジの外周面と接触するように第1挟持板2および第2挟持板3の少なくとも一方の表面上に配設されている。
【0037】
したがって、フランジ接触部材7は、第1挟持板2の表面上のみに配設されていてもよく、第2挟持板3の表面上のみに配設されていてもよく、あるいは第1挟持板2の表面上および第2挟持板3の表面上の双方に配設されていてもよい。本発明においては、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間にガスケットを容易に装着させる観点から、フランジ接触部材7が第1挟持板2の表面上および第2挟持板3の表面上の双方に配設されていることが好ましい。第1挟持板2の表面および第2挟持板3の表面は、それぞれ第1挟持板2が有する両面および第2挟持板3が有する両面のうちガスケット固定板5が存在している面とは反対側の面を意味する。
【0038】
また、フランジ接触部材7は、前述の第1挟持板2および第2挟持板3と同様に、クランプ本体4の上顎4aのみに配設されていてもよく、クランプ本体4の下顎4bのみに配設されていてもよく、あるいはクランプ本体4の上顎4aおよび下顎4bの双方に配設されていてもよい。
【0039】
図1に示されるガスケット装着用工具1では、フランジ接触部材7は、クランプ本体4の上顎4aおよび下顎4bの双方、すなわち第1挟持板2の表面上および第2挟持板3の表面上の双方に配設されている。フランジ接触部材7は、例えば、図1に示されるように、ボルト8などの固定具で上顎4aおよび/または下顎4bに固定されていてもよく、接着剤などを用いて上顎4aおよび/または下顎4bに固定されていてもよく、あるいは溶接によって上顎4aおよび/または下顎4bに固定されていてもよい。
【0040】
フランジ接触部材7は、配管のフランジ(図示せず)を保持する役割を有する。フランジ接触部材7は、フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが一致する円弧を描くフランジとの複数の接触点を側面に有することから、本発明のガスケット装着用工具1を用いることにより、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間に容易に装着させることができる。
【0041】
フランジ接触部材7は、樹脂、金属などで作製することができるが、ガスケットを挟持するときの機械的強度を保持する観点から、金属で作製されていることが好ましい。当該金属としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS347、SUS430などのステンレス鋼、鉄、銅、真鍮、アルミニウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。フランジ接触部材7の表面には、必要により亜鉛めっき、ニッケルめっきなどの金属めっきが施されていてもよい。
【0042】
フランジ接触部材7は、その側面にフランジの外周面と接するフランジ接触面7a,7bを有する。フランジ接触部材7のフランジ接触面7a,7bは、フランジ接触部材7の側面であって、フランジと接触する側に形成されている。フランジ接触部材7のフランジとの接触面(図示せず)には、フランジの傷つきを防止するために、ゴムシートなどの弾性を有するシートが貼付されていてもよい。
【0043】
フランジ接触部材7の平面形状は、図1に示されるような三日月状の形状の部分を有するものであってもよく、半円形の形状の部分を有するものであってもよく、四角形などの多角形状の形状の部分を有するものであってもよく、本発明は、フランジ接触部材7の形状によって限定されるものではない。また、フランジ接触部材7のフランジ接触面7a,7bの形状は、特に限定されず、曲面であってもよく、凹凸面であってもよく、あるいは波型面であってもよい。
【0044】
フランジ接触面7a,7bとフランジの外周面との接触点は、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを容易に一致させる観点から、少なくとも2点であることが好ましく、2点または3点であることがより好ましく、3点であることがさらに好ましい。
【0045】
フランジ接触面7a,7bとフランジとが接触する接触点を通って描かれる真円の中心軸は、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させる観点から、ガスケットの中心軸(図示せず)と一致するように調整される。
フランジ接触面7a,7bとフランジとが接触する接触点を通って描かれる真円の中心軸は、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させる観点から、フランジの中心軸(図示せず)と一致するように調整される。
【0046】
したがって、ガスケット接触面5aとガスケットとが接触する接触点を通って描かれる真円の中心軸は、ガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させる観点から、フランジ接フランジ接触面7a,7b触面7aとガスケットとが接触する接触点を通って描かれる真円の中心軸と一致するように調整される。
【0047】
フランジ接触部材7は、図1に示されるように、通常、第1挟持板2および/または第2挟持板3に取り付けられる。フランジ接触部材7は、ボルトなどの固定具で第1挟持板2および/または第2挟持板3に取り付けられていてもよく、接着剤などを用いて第1挟持板2および/または第2挟持板3に取り付けられていてもよく、あるいは溶接によって第1挟持板2および/または第2挟持板3に取り付けられていてもよい。
【0048】
図3は、クランプ本体4の上顎4aの下面にフランジ接触部材7が配設されているときのクランプ本体4およびフランジ接触部材7の平面方向における概略説明図である。
【0049】
図3において、符号9は、配管のフランジの仮想線である。フランジの仮想線9は、フランジ接触部材7およびフランジの説明の便宜上描かれている線であり、実際のフランジの大きさを示すものではない。配管同士の接続部において、図3に示されるフランジ接触部材7のフランジ接触面7aは、点Xおよび点Yで一方の配管のフランジと接触している。フランジと接触する点Xおよび点Yは、図3に示されるように、フランジ接触部材7の側端部に存在していてもよく、フランジ接触部材7の側端部よりも内側に存在していてもよい。
【0050】
図3において、フランジ9と接触する点Xおよび点Yと第1挟持板2の端部との間の距離Tは、使用されるガスケットの大きさ、質量などによって異なるので一概には決定することができないが、ガスケットを強固に掴持するとともにガスケット装着用工具1の使用性を向上させる観点から、それぞれ5~40mmであることが好ましい。また、点Xと点Yとの間の距離Zは、使用されるガスケットの大きさ、質量などによって異なるので一概には決定することができないが、ガスケットを強固に掴持するとともにガスケット装着用工具1の使用性を向上させる観点から、30~200mmであることが好ましい。
【0051】
図3に示される実施態様では、フランジ接触部材7が第1挟持板2上に配設されているときの例であるが、フランジ接触部材7が第2挟持板3上に配設されている場合および第1挟持板2上と第1挟持板2上との双方に配設されている場合のいずれの場合であっても、フランジ接触部材7が第1挟持板2上に配設されているときと同様の実施態様を有することが好ましい。
【0052】
フランジ接触部材7の厚さは、フランジ接触部材7の材質によって異なるので一概には決定することができない。フランジ接触部材7の厚さは、フランジ接触部材7のフランジ接触面7aをフランジと接触させたときに変形などの異状が生じない程度の機械的強度を有することが好ましい。
【0053】
本発明のガスケット装着用工具1は、例えば、以下のようにして用いることができる。
【0054】
まず、ガスケット装着用工具1の第1挟持板2と第2挟持板3との間にガスケットを挿入し、ガスケットの周端面をガスケット固定板5のガスケット接触面5aと接触させてガスケットを第1挟持板2と第2挟持板3との間で掴持して固定する。
【0055】
次に、第1挟持板2と第2挟持板3との間でガスケットが掴持されているガスケット装着用工具1のガスケットを一対の配管に設けられている各フランジがフランジ接触部材7のフランジ接触面7a,7bと接触するまでフランジ間に挿入する。これにより、フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが一致する。
【0056】
次に、前述の状態でフランジおよびガスケットにボルトを通し、ボルトを仮止めし、フランジ間に存在するガスケットの装着位置を固定した後、ガスケット装着用工具1をフランジ間から抜き取る。これにより、配管同士の接続部のフランジ間でガスケットの中心軸とフランジの中心軸とを一致させてフランジ間にガスケットを装着させることができる。なお、ボルトを仮止めする際には、フランジの中心軸とガスケットの中心軸とが正確に一致されている状態を維持するために、ガスケット装着用工具1からの距離が離れているボルトから順に仮止めすることが好ましい。
【0057】
以上説明したように、本発明のガスケット装着用工具1を用いた場合、ガスケット装着用工具1の第1挟持板2と第2挟持板3との間で挟持されているガスケットを一対の配管に設けられているフランジ間に挿入し、フランジ接触部材7のフランジ接触面7aをフランジの外周面と接触させるだけでフランジの中心軸とガスケットの中心軸とを一致させてフランジ間に容易に装着させることができる。
【0058】
また、ガスケットとして、センサー付きのガスケットを用いた場合、本発明のガスケット装着用工具1は、クランプ本体4が用いられているので、センサーのガスケットにおける取り付け位置を阻害しないことから、当該センサーをガスケットの任意の位置に容易に取り付けることができる。
【0059】
なお、本発明のガスケット装着用工具1を種々の直径を有するガスケットおよびフランジに適用することができるようにするために、クランプ本体4に取り付けられる第1挟持板2、第2挟持板3およびフランジ接触部材7の取り付け位置を適宜調整することができるようにしてもよく、ガスケット固定板5を他のガスケット固定板(図示せず)と交換することができるようにしてもよく、あるいはフランジ接触部材7を他のフランジ接触部材(図示せず)と交換することができるようにしてもよい。
【0060】
本発明のガスケット装着用工具1を適用することができるガスケットの種類には特に限定がなく、本発明のガスケット装着用工具1は、種々のガスケットに適用することができる。ガスケットの例として、JIS B2404(2018)に規定されているジョイントシートガスケット、フッ素樹脂ガスケット、うず巻形ガスケット、ゴム打抜きガスケット、布入りゴム打抜きガスケットなどの外周の平面形状が真円であるガスケットが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0061】
また、本発明のガスケット装着用工具1を適用することができる配管のフランジの種類には特に限定がなく、本発明のガスケット装着用工具1は、種々の配管のフランジに適用することができる。配管のフランジの例として、JISに規定されている、外周の平面形状が真円である配管のフランジなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0062】
本明細書で示されているガスケット装着用工具1の実施態様は、いずれも例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内で種々の変更が含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0063】
1 ガスケット装着用工具
2 第1挟持板
3 第2挟持板
4 クランプ本体
4a クランプ本体の上顎
4b クランプ本体の下顎
5 ガスケット固定板
5a ガスケット固定板のガスケット接触面
5b 固定板の側端部
6 ガスケットの仮想線
7 フランジ接触部材
7a フランジ接触面
7b フランジ接触面
8 ボルト
9 配管のフランジの仮想線
図1
図2
図3