(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005005
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ポリカーボネート粒子の製造方法およびポリカーボネート粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 3/14 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
C08J3/14 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104966
(22)【出願日】2023-06-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「ポリカーボネート(PC)の機能化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 秀人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 登代子
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA50
4F070AC12
4F070AC33
4F070AC36
4F070AC39
4F070AC80
4F070AE14
4F070AE28
4F070AE30
4F070CA03
4F070CB03
4F070CB12
4F070DA23
4F070DA26
4F070DA33
4F070DA38
4F070DC03
4F070DC07
(57)【要約】
【課題】本発明は、微細なポリカーボネート粒子を簡便に製造することができる方法、及び当該方法により製造可能なポリカーボネート粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るポリカーボネート粒子の製造方法は、ポリカーボネートをクロロホルムに溶解してポリカーボネート溶液を得る工程、前記ポリカーボネート溶液と水または水溶液を混合し、攪拌することにより、前記ポリカーボネート溶液の液滴が前記水または前記水溶液に分散したエマルションを調製する工程、および、前記液滴から前記クロロホルムを除去する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート粒子を製造するための方法であって、
ポリカーボネートをクロロホルムに溶解してポリカーボネート溶液を得る工程、
前記ポリカーボネート溶液と水または水溶液を混合し、攪拌することにより、前記ポリカーボネート溶液の液滴が前記水または前記水溶液に分散したエマルションを調製する工程、および、
前記液滴から前記クロロホルムを除去する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エマルションを攪拌することにより前記液滴から前記クロロホルムを除去する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネートに対する貧溶媒と前記エマルションを混合することにより前記液滴から前記クロロホルムを除去する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液が分散安定剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリカーボネート溶液における前記ポリカーボネートの濃度が7質量%以下である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記クロロホルムに対する前記貧溶媒のハンセン溶解度パラメータが15以上である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記クロロホルムに対するハンセン溶解度パラメータが15未満である前記貧溶媒を前記エマルションに滴下する請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ポリイソソルビドカーボネートからなることを特徴とするポリカーボネート粒子。
【請求項9】
平均粒径が1μm以上、100μm以下である請求項8に記載のポリカーボネート粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なポリカーボネート粒子を簡便に製造することができる方法、及び当該方法により製造可能なポリカーボネート粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子粒子は、フェンデーションやクリーム等の化粧品の触感改質剤など、様々な用途に用いられている。高分子粒子は、改質や接着性の付与などのために、インキ、塗料、バインダー等の工業製品にも用いられている。
【0003】
ポリカーボネートは、優れた耐衝撃性、耐熱性、透明性、難燃性などの特性を有しており、有機硝子、レンズ、光ディスクなどに応用されている。しかし、その製造が技術的に難しいためか、ポリカーボネートの粒子の実用例は見当たらない。
【0004】
例えば特許文献1には、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート等の含フッ素モノマー、相分離促進剤および非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得、含フッ素モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む中空微粒子を得る方法が記載されている。特許文献2には、特定のエーテル構造を有する化合物と、当該化合物と反応するモノマーを、非反応性溶剤の存在下、水系媒体中で反応させる中空樹脂粒子の製造方法が記載されている。特許文献3には、フッ素置換モノマーおよび非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得、フッ素置換モノマーを重合して含フッ素樹脂を含む相分離微粒子を得、相分離微粒子中の非重合性溶剤を除去して中空微粒子を得る方法が記載されている。特許文献4には、ポリカーボネートを含む多孔質体の製造方法が記載されているが、溶液混合物を成形する工程を含んでおり、製造可能な多孔質体は明らかに粒子ではない。
【0005】
本発明者らも、セルロースをイオン液体に溶解したイオン液体をヘキサン中に分散させたエマルションから、アセトンを使ってイオン液体を除去してセルロース粒子を製造する方法を開発している(非特許文献1)。
【0006】
粒状ポリカーボネートの製造方法として、特許文献5には、ポリカーボネートと有機溶媒を含む重合反応溶液と、ポリカーボネートと水に対して特定の溶解度などを示す反溶媒と水を含む反溶媒溶液とを混合して混合溶液を製造し、加熱して有機溶媒を除去し、乾燥または濾過して粒状ポリカーボネートを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2022/009917号パンフレット
【特許文献2】特開2023-21971号公報
【特許文献3】特開2023-57052号公報
【特許文献4】特開2013-107948号公報
【特許文献5】特表2022-510575号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Taro Omuraら,Langmuir,2020,36,14076-14082
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、数は少ないが、特許文献5の通り、粒状ポリカーボネートを製造する方法は知られている。
しかし特許文献5に記載の方法で製造される粒状ポリカーボネートは、平均粒径が数mm程度の粗大な緻密質のものであり、例えば、この方法で微細な多孔質カーボネート粒子を製造することは難しいと考えられる。
そこで本発明は、微細なポリカーボネート粒子を簡便に製造することができる方法、及び当該方法により製造可能なポリカーボネート粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ポリカーボネートを溶解するための溶媒としてクロロホルムを用いれば、貧溶媒を使わなくても微細で緻密質なポリカーボネート粒子が簡便に得られ、貧溶媒を使う場合には微細な中空または多孔質なポリカーボネート粒子が簡便に得られることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0011】
[1] ポリカーボネート粒子を製造するための方法であって、
ポリカーボネートをクロロホルムに溶解してポリカーボネート溶液を得る工程、
前記ポリカーボネート溶液と水または水溶液を混合し、攪拌することにより、前記ポリカーボネート溶液の液滴が前記水または前記水溶液に分散したエマルションを調製する工程、および、
前記液滴から前記クロロホルムを除去する工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 前記エマルションを攪拌することにより前記液滴から前記クロロホルムを除去する前記[1]に記載の方法。
[3] 前記ポリカーボネートに対する貧溶媒と前記エマルションを混合することにより前記液滴から前記クロロホルムを除去する前記[1]に記載の方法。
[4] 前記水溶液が分散安定剤を含む前記[1]に記載の方法。
[5] 前記ポリカーボネート溶液における前記ポリカーボネートの濃度が7質量%以下である前記[1]に記載の方法。
[6] 前記クロロホルムに対する前記貧溶媒のハンセン溶解度パラメータが15以上である前記[3]に記載の方法。
[7] 前記クロロホルムに対するハンセン溶解度パラメータが15未満である前記貧溶媒を前記エマルションに滴下する前記[3]に記載の方法。
[8] ポリイソソルビドカーボネートからなることを特徴とするポリカーボネート粒子。
[9] 平均粒径が1μm以上、100μm以下である前記[8]に記載のポリカーボネート粒子。
【発明の効果】
【0012】
本発明方法によれば、貧溶媒を使わなくても微細で緻密質なポリカーボネート粒子が簡便に得られる。また、貧溶媒を使うこともでき、その場合には、微細な中空または多孔質なポリカーボネート粒子が簡便に得られる。
また、本発明に係るポリカーボネート粒子は、ポリイソソルビドカーボネートからなる。近年、マイクロプラスチックの問題が話題になっているが、ポリイソソルビドカーボネートはアンモニア水により容易にイソソルビドと尿素に分解することができる。
よって本発明は、微細なポリカーボネート粒子を簡便に製造できる技術として、産業上非常に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明方法で得られるポリカーボネートのクロロホルム溶液分散滴を含むエマルションの光学顕微鏡写真である。
【
図2】
図2(a)は、本発明方法で得られるポリカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図2(b)は、本発明方法で得られるポリカーボネート粒子の断面のSEM画像である。
【
図3】
図3(a)は、10質量%ポリカーボネート/クロロホルムの分散滴の光学顕微鏡写真であり、
図3(b)は、5質量%ポリカーボネート/クロロホルムの分散滴の光学顕微鏡写真である。
【
図4】
図4(a)は、本発明方法により5質量%ポリカーボネート/クロロホルム溶液から得られたポリカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図4(b)は、同ポリカーボネート粒子のSEM画像であり、
図4(c)は、同ポリカーボネート粒子の断面のSEM画像である。
【
図5】
図5(a)は、貧溶媒としてメタノールを使った本発明方法により製造されたポリカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図5(b)は、貧溶媒としてアセトンを使った本発明方法により製造されたポリカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図5(c)は、貧溶媒としてメタノールを使った本発明方法により製造されたポリカーボネート粒子の断面のSEM画像であり、
図5(d)は、貧溶媒としてアセトンを使った本発明方法により製造されたポリカーボネート粒子の断面のSEM画像である。
【
図6】
図6(a)は、本発明方法において貧溶媒であるアセトンを滴下して製造したポリカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図6(b)は、同ポリカーボネート粒子のSEM画像であり、
図6(c)は、同ポリカーボネート粒子の断面のSEM画像であり、
図6(d)は、風乾した同ポリカーボネート粒子のSEM画像であり、
図6(e)は、凍結乾燥した同ポリカーボネート粒子のSEM画像である。
【
図7】
図7は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネートのクロロホルム溶液分散滴を含むエマルションの光学顕微鏡写真である。
【
図8】
図8(a)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図8(b)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子のSEM画像である。
【
図9】
図9(a)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネートのクロロホルム溶液分散滴を含むエマルションの光学顕微鏡写真であり、
図9(b)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図9(c)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子のSEM画像である。
【
図10】
図10(a)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネートのクロロホルム溶液分散滴を含むエマルションの光学顕微鏡写真であり、
図10(b)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図10(c)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子のSEM画像である。
【
図11】
図11(a)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネートのクロロホルム溶液分散滴を含むエマルションの光学顕微鏡写真であり、
図11(b)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図11(c)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子のSEM画像である。
【
図12】
図12(a)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図12(b)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子のSEM画像である。
【
図13】
図13(a)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子の光学顕微鏡写真であり、
図13(b)は、本発明方法で得られるポリイソソルビドカーボネート粒子のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明方法を工程毎に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0015】
1.ポリカーボネート溶液の調製工程
本工程では、ポリカーボネートをクロロホルムに溶解してポリカーボネート溶液を得る。
【0016】
本発明で用いるポリカーボネートは特に制限されず、一般的なポリカーボネートを用いることができる。一般的なポリカーボネートは、ビスフェノール類とホスゲンから製造され、例えば、以下の化学構造(I)を有する。
【0017】
【0018】
[式中、
R1とR2は、独立して、ハロゲノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキル基、又はC6-12芳香族炭化水素基を表し、
Xは下記に示す基または単結合を表し、
【0019】
【0020】
(式中、
R3とR4は、独立して、H、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC1-6アルキル基、置換基αを有してもよいC1-6アルコキシ基、置換基βを有してもよいC6-12芳香族炭化水素基、又は置換基βを有してもよいC3-10シクロアルキル基を表し、
R5~R8は、独立して、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC1-6アルキル基、置換基αを有してもよいC1-6アルコキシ基、又は置換基βを有してもよいC6-12芳香族炭化水素基を表し、
前記シクロペンタンジイル基、前記シクロヘキサンジイル基、及びフェニレン基は、置換基βを有していてもよく、
置換基αは、C6-12芳香族炭化水素基、ハロゲノ基、C1-6アルコキシ基、ニトロ基、及びシアノ基から選択される1種または2種以上の置換基を表し、
置換基βは、C1-6アルキル基、ハロゲノ基、C1-6アルコキシ基、ニトロ基、及びシアノ基から選択される1種または2種以上の置換基を表し、)
mとnは、独立して、0以上、4以下の整数を表す。]
【0021】
「ハロゲノ基」としては、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを例示することができ、フルオロ、クロロまたはブロモが好ましく、フルオロがより好ましい。
【0022】
「C1-6アルキル基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。好ましくはC1-4アルキル基であり、より好ましくはC1-2アルキル基であり、より更に好ましくはメチルである。
【0023】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族炭化水素オキシ基をいう。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ等であり、好ましくはC1-4アルコキシ基であり、より好ましくはC1-2アルコキシ基であり、より更に好ましくはメトキシである。
【0024】
「C6-12芳香族炭化水素基」とは、炭素数が6以上、12以下の一価芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、ビフェニル等であり、好ましくはフェニルである。
【0025】
「C3-10シクロアルキル基」は、炭素数3以上、10以下の一価環状飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル等である。好ましくはC4-10アルキル基であり、より好ましくはC5-10アルキル基であり、より更に好ましくはシクロヘキシルである。
【0026】
置換基の数は、置換可能であれば特に制限されない。各基における置換基数が2以上である場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等が挙げられ、ビスフェノールAが好ましい。
【0028】
また、本発明では、ポリカーボネートとして、以下の化学構造(II)を有するポリイソソルビドカーボネートを用いてもよい。
【0029】
【0030】
高分子粒子は、化粧品、インキ、塗料、バインダー等、様々な技術分野や製品に利用されているが、たとえ使用後に回収できても、単量体に分解することは不可能であり、再利用が難しかったり、再利用に多大なコストがかかるという問題があった。それに対して、ポリイソソルビドカーボネートからなるポリカーボネート微粒子は、アンモニア水によりイソソルビドと尿素に分解することが可能である(T.Abeら,Green Chem.,23,9030(2021))。イソソルビドは、ポリイソソルビドカーボネートや医薬原料などに再利用でき、尿素は窒素肥料として再利用できる。
【0031】
本開示において、本発明に係るポリカーボネート粒子がポリイソソルビドカーボネートからなるとは、残留溶媒などの不可避的不純物や不可避的混入物など、意図しない含有物以外、ポリカーボネート粒子がポリイソソルビドカーボネートで構成されており、ポリイソソルビドカーボネート以外の高分子を意図的に添加しないことを意味する。或いは、本発明に係るポリカーボネート粒子に含まれるポリイソソルビドカーボネートの割合としては、95質量%以上であり、当該割合としては、98質量%以上または99質量%以上が好ましく、99.5質量%以上がより好ましい。
【0032】
ポリカーボネートの分子量は、クロロホルムに可溶であれば特に制限されないが、例えば、数平均分子量が500以上、50000以下のポリカーボネートを用いることができる。
【0033】
ポリカーボネート溶液の濃度は、溶解可能な範囲で適宜調整すればよいが、例えば20質量%以下とすることができる。ポリカーボネート溶液の粘度が低いほど、ポリカーボネート溶液の液滴中への水または水溶液の混入を抑制できるため、当該濃度としては、15質量%以下または10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより更に好ましい。一方、前記濃度が高いほどポリカーボネート粒子の製造効率は高まるため、前記濃度としては1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。
【0034】
ポリカーボネート溶液の調製条件は、特に制限さらず、常法に従えばよい。例えば、ポリカーボネートの粉末をクロロホルムに加え、攪拌するのみでもよい。この際、温度は常温でもよいが、クロロホルムが蒸発しない範囲で加熱してもよい。加熱温度としては、例えば、60℃以下とすることができ、50℃以下または40℃以下が好ましい。
【0035】
2.エマルションの調製工程
本工程では、前記工程1で調製したポリカーボネート溶液と水または水溶液を混合し、攪拌することにより、ポリカーボネート溶液の液滴が水または水溶液に分散したエマルションを調製する。
【0036】
前記水溶液には、例えば、液滴を安定化するための分散安定剤を配合してもよい。分散安定化剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸等の水溶性高分子;ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシル水素化ヒマシ油などの界面活性剤;キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドシードガム、グァーガム、カラギナン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒアルロン酸塩などの多糖類が挙げられる。
【0037】
水溶液における分散安定剤の濃度は特に制限されないが、例えば、0.01質量%以上、5質量%以下とすることができる。前記濃度が0.01質量%以上であれば、液滴の安定化効果がより確実に発揮され得、5質量%以下であれば、粒子形成に対する分散安定剤の悪影響をより確実に抑制することができ得る。前記濃度としては、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上または0.2質量%以上がより好ましく、また、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0038】
ポリカーボネート溶液と水または水溶液との混合割合は、エマルションが良好に形成される範囲で適宜調整すればよいが、例えば、水または水溶液1mLに対するポリカーボネート溶液の割合を、0.01g/mL以上、5g/mL以下とすることができる。当該割合が0.01g/mL以上であれば、ポリカーボネート粒子をより効率的に製造し得、5g/mL以下であれば、ポリカーボネート溶液の液滴をより良好に水または水溶液中に分散させることができ得る。前記割合としては、0.02g/mL以上が好ましく、0.05g/mL以上がより好ましく、また、2g/mL以下または1g/mL以下が好ましく、0.5g/mL以下がより好ましい。
【0039】
エマルションの調製条件は、常法に従えばよい。例えば、ポリカーボネート溶液と水または水溶液との混合液を攪拌すればよい。攪拌条件は、実施規模などに応じて、エマルションが良好に形成される範囲で適宜調整すればよいが、例えば、回転速度を100rpm以上、20000rpm以下とし、攪拌時間を1分間以上、30分間以下とすることができる。
【0040】
なお、ポリカーボネート溶液の濃度や粘度が比較的高い場合であっても、クロロホルムの蒸発を抑制しつつエマルションを継続的に攪拌または静置することにより、液滴中の水または水溶液を除去し得る。エマルションを攪拌または静置する時間としては、例えば、1時間以上、50時間以下とすることができる。エマルションを静置する場合であっても、分散安定剤の使用により液滴同士の結合を抑制することが可能である。
【0041】
3.溶媒の除去工程
本工程では、前記工程2で調製したエマルション中のポリカーボネート溶液の液滴から、溶媒であるクロロホルムを除去することにより、ポリカーボネート粒子を得る。クロロホルムの除去方法としては、特に制限されないが、例えば、エマルションの攪拌を継続する方法や、貧溶媒を用いる方法が挙げられる。
【0042】
(1)攪拌によるクロロホルムの除去
エマルション中の液滴からは、攪拌を継続するのみでもクロロホルムの除去は可能である。液滴からクロロホルムを除去するための攪拌条件は、適宜調整すればよいが、例えば、回転速度を10rpm以上、200rpm以下とし、攪拌時間を1時間以上、100時間以下とすることができる。なお、液滴同士の結合は、分散安定剤の使用により有効に抑制することができる。
【0043】
攪拌によりクロロホルムを除去する際には、エマルションを加熱してもよい。加熱温度としては、例えば、60℃以下とすることができ、50℃以下または40℃以下が好ましい。一方、製造効率の観点から、エマルションは常温で攪拌してもよい。
【0044】
(2)貧溶媒によるクロロホルムの除去
ポリカーボネートに対する貧溶媒であり、クロロホルムに対して適度な親和性を有するものを用いることにより、エマルション中の液滴からクロロホルムを除去することも可能である。
【0045】
貧溶媒のクロロホルムに対する親和性の指標としては、例えば、ハンセン溶解度パラメータを用いることができ、貧溶媒としては、クロロホルムに対するハンセン溶解度パラメータが25以下のものを用いることができ、22以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0046】
クロロホルムに対するハンセン溶解度パラメータが低く、クロロホルムに対する親和性が高い貧溶媒を用いれば、ポリカーボネートを含む液滴からクロロホルムを効率的に除去することができる。しかし、クロロホルムに対する親和性が過剰に高い貧溶媒を用いると、液滴中からクロロホルムが急激に除去されて、ポリカーボネート層が過剰に薄く強度が低い中空状の粒子が得られるおそれがあり得る。よって、クロロホルムに対する貧溶媒のハンセン溶解度パラメータとしては、15以上が好ましい。中空粒子の強度を高めるために、ポリカーボネート溶液の濃度を高めてもよい。
【0047】
但し、クロロホルムに対するハンセン溶解度パラメータが15未満の貧溶媒を用いる場合であっても、貧溶媒をエマルションに滴下するなど、エマルションに対する貧溶媒の添加速度を調整して液滴からクロロホルムの除去速度を調整することにより、より強度の高い多孔質の粒子を得ることも可能である。この場合の貧溶媒の添加速度としては、エマルション1mLに対して、0.005mL/min以上、1mL/min以下とすることができる。
【0048】
クロロホルムに対する親和性が高い貧溶媒を用いれば、ポリカーボネート溶液に貧溶媒を添加するのみでポリカーボネートは速やかに固化し得る。但し、貧溶媒の添加のみでポリカーボネート粒子が得られない場合には、エマルションと貧溶媒を混合した後に混合液を静置または攪拌してもよい。静置または攪拌の時間は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、1分間以上、2時間以下とすることができる。
【0049】
ポリカーボネート粒子が形成された後は、通常の後処理を行えばよい。例えば、濾過や遠心分離などによりポリカーボネート粒子を液相から分離した後、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などにより乾燥すればよい。
【0050】
本発明で得られるポリカーボネート粒子は比較的微細なものである。具体的には、平均粒径が1μm以上、100μm以下程度のものである。なお、本発明に係るポリカーボネート粒子の平均粒径は、画像解析ソフトウエアを用い、拡大写真中の粒子径の平均値として求めることができる。
【0051】
本発明によれば、緻密質、中空、又は多孔質のポリカーボネート粒子を製造することができる。具体的には、貧溶媒を使わずに攪拌のみでポリカーボネート溶液の液滴から溶媒であるクロロホルムを除去することにより、緻密質のポリカーボネート粒子が得られる。この際、ポリカーボネート溶液の濃度を比較的低く調整することにより、液滴への水または水溶液の混入と、それによる粒子内の空隙の形成を抑制することができる。また、クロロホルムに対する親和性が比較的高い貧溶媒を用いてポリカーボネート溶液の液滴からクロロホルムを除去することにより、中空粒子が得られる。この際、ポリカーボネート溶液の濃度を高めることにより、中空粒子の強度を高めることも可能である。更に、クロロホルムに対する親和性が比較的低い貧溶媒を用いてポリカーボネート溶液の液滴からクロロホルムを除去することにより、多孔質粒子が得られる。クロロホルムに対する親和性が比較的高い貧溶媒を用い且つエマルションに当該貧溶媒をゆっくり添加することによっても、多孔質粒子が得られる。
【実施例0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
実施例1: SRMによるPC粒子の作製
(1)PC/クロロホルム分散滴の作製
市販ポリカーボネート(PC)(「パンライト(登録商標) LV-2225Y」帝人社製)を室温にてクロロホルムに溶解して10質量%溶液を調製した。別途、ポリビニルアルコール(PVA)(「Gohsenol
TM GH-17R」日本合成化学社製,数平均重合度:1700,けん化度:88%)を、純水製造装置(「Erix(登録商標) UV」メルク社製)で製造した水に溶解し、0.5質量%溶液を作製した。PC溶液(0.5g)をPVA水溶液(5mL)に加えホモジナイザーを用いて、10000rpmで10分間攪拌することで分散させ、PC/クロロホルム分散滴を作製した。
得られたPC/クロロホルム分散滴を、光学顕微鏡(「ECLIPSE Ni-U」ニコン社製)により観察し写真撮影した。結果を
図1に示す。
【0054】
図1の光学顕微鏡写真を画像解析・画像計測ソフトウェア(「WinROOF」三谷商事社製)で解析した結果、粒径約14.0μm、Cv値43.3%と、多分散ではあるが安定な分散滴が得られた。分散滴内部にはコントラスト差があり、気泡のようなものが見られた。これは、分散滴の作製時に巻き込まれた水であると考えられた。
【0055】
(2)SRMによるPC粒子の作製
前記(1)のエマルションを、室温、100rpmで24時間攪拌することにより、PC/クロロホルム分散滴からクロロホルムを除去し、PCを析出させた。得られたPC粒子分散液の光学顕微鏡写真を
図2(a)に示す。
また、光学顕微鏡写真より粒子内部にコントラスト差が見られたため、イオンビームで粒子を切削するCROSS SECTION POLISHER
TM(日本電子社製)により粒子を加工し、粒子の断面構造をSEMにて観察した。結果を
図2(b)に示す。
【0056】
図2(a)の通り、溶媒放出法(SRM:Solvent Releasing Method)によりPC粒子を作製することができた。更にPC粒子をSEM観察すると、しわのある球状の粒子であった。しわのある粒子が得られた理由としては、クロロホルムが全て揮発する前に、溶けきれなくなったPCが析出するためだと考えられた。
【0057】
図2(b)の粒子断面SEM画像の通り、得られたPC粒子の中には緻密質のものもあったが、空隙を有する粒子も確認できた。この空隙は、分散滴内部の水が残存したまま粒子が作製されたために生じたものであると考えられた。分散滴内部に水が巻き込まれて残存する原因としては、分散滴の粘度が高いためだと考えられた。
【0058】
実施例2: SRMによるPC粒子の作製
実施例1で得られたPC粒子内に空隙が認められたのは、分散滴の粘度が高く、分散滴内部に水が巻き込まれて残存したことが原因であると考えられた。
そこで、分散滴の粘度を低下させるため、分散滴のPCとクロロホルムの割合をPC/クロロホルム=10/90(w/w)から5/95(w/w)に変更した以外は同様にして、PC粒子を作製した。
【0059】
PC/クロロホルム=10/90(w/w)の分散滴の光学顕微鏡写真を
図3(a)に、PC/クロロホルム=5/95(w/w)の分散滴の光学顕微鏡写真を
図3(b)に示す。
図3(a)の通り、PC/クロロホルム=10/90(w/w)の場合に比べて、PC/クロロホルム=5/95(w/w)の場合における分散滴中の水は明らかに低減されていた。
【0060】
また、PC/クロロホルム=5/95(w/w)の場合のPC粒子の光学顕微鏡写真を
図4(a)に、SEM画像を
図4(b)に、断面写真を
図4(c)に示す。
図4の通り、PC/クロロホルム=10/90(w/w)の場合と同様に、しわのあるPC粒子が得られたが、当該粒子は緻密質のものであることが明らかにされた。
【0061】
実施例3: SRMによるPC粒子の作製 - 貧溶媒の使用
(1)SRMによるPC粒子の作製
実施例1(1)と同様にして得たエマルション(5.5g)を、メタノールまたはアセトン(90g)に一気に注ぎ、常温で10分間攪拌した。
得られた粒子の光学顕微鏡(「ECLIPSE Ni-U」ニコン社製)および走査型電子顕微鏡(「JSM-6510」日本電子社製)にて観察した。また、メタノールを使って作製したPC粒子は、クロスセクションポリッシャ(「IB-19530CP」日本電子社製)を用いて切削し、断面構造をSEM観察した。メタノール、アセトンを使って作製したPC粒子の光学顕微鏡写真をそれぞれ
図5(a),
図5(b)に、メタノールを使って作製したPC粒子の断面写真を
図5(c)に、アセトンを使って作製したPC粒子の断面写真を
図5(d)に示す。
【0062】
図5(a)の光学顕微鏡写真の通り、貧溶媒としてメタノールを用いた場合には、粒子内部にかなりのコントラスト差が見られた。これは、粒子と媒体の複数の界面における屈折率差によるものであり、多孔質構造によると考えられた。実際、
図5(c)の断面SEM画像の通り、多孔質構造の形成が確認された。
図5(c)の光学顕微鏡写真の通り、アセトンを用いた場合には、メタノールを用いた場合と同様に媒体と粒子の界面によるコントラスト差が粒子内に見られ、中空構造を有していることが確認された。また、
図5(d)の通り、乾燥状態では凹んだ粒子が得られた。これは、中空粒子のシェル層が薄いために、乾燥により粒子が凹んだことによると考えられた。
また,分散滴内部からクロロホルムを揮発させクロロホルムを放出させる実施例1,2の方法と、分散滴をPCの貧溶媒に加えてクロロホルムを放出させる方法を比較すると、前者のクロロホルムの揮発はゆっくり行われるが、後者では分散滴を貧溶媒に一気に加えるためにポリカーボネートの析出速度が速くなると考えられる。
【0063】
(2)SRMによるPC粒子の作製
クロロホルムに対するメタノールおよびアセトンのハンセン溶解度パラメータ(HSP)距離を、ハンセン溶解度パラメータのソフトウェア(「HSPiP」)を用いて算出した。それぞれの溶媒のHSPは、ソフトウエアにある既存の値を用いた。算出したHSP距離を表1に示す。
【0064】
【0065】
表1に示される結果の通り、メタノールの方がクロロホルムとの親和性が低く、アセトンの方がクロロホルムとの親和性が高いことが確認された。
かかる結果より、メタノールとアセトンの両方がポリカーボネートに対して貧溶媒だが、クロロホルムとの親和性が低いメタノールを使うと、メタノールの分散滴内部への侵入が遅く、ポリカーボネートが徐々に全体的に析出し、その結果、多孔質構造が得られると考えられた。
逆にクロロホルムとの親和性が高いアセトンでは、分散滴内へすぐにアセトンが侵入するため、分散滴界面にて急速にポリカーボネートが析出しシェル層を形成すると考えられた。
【0066】
(3)SRMによるPC粒子の作製
実施例1(1)と同様にして得たエマルション(5.5g)を常温で攪拌しつつ、マイクロフィーダーを使ってアセトン(15g)を0.1mL/minの速度で滴下した。
得られたPC粒子の光学顕微鏡写真を
図6(a)に、SEM画像を
図6(b)に、断面のSEM画像を
図6(c)に、風乾したPC粒子のSEM画像を
図6(d)に、凍結乾燥したPC粒子のSEM画像を
図6(e)に示す。
図6に示される結果の通り、PC溶液に用いたクロロホルムに対する親和性の高いアセトンを用いた場合であっても、PC溶液にゆっくり加えることによって、中空粒子ではなく多孔質粒子が得られることが示された。
【0067】
実施例4: SRMによるPIC粒子の作製
(1)PIC/クロロホルム分散滴の作製
ポリイソソルビドカーボネート(PIC)(数平均分子量:4500)を室温にてクロロホルムに溶解して10質量%溶液を調製した。別途、ポリビニルアルコール(PVA)(「Gohsenol
TM GH-17R」日本合成化学社製,数平均重合度:1700,けん化度:88%)を、純水製造装置(「Erix(登録商標) UV」メルク社製)で製造した水に溶解し、0.5質量%溶液を作製した。PIC溶液(0.5g)をPVA水溶液(5mL)に加えホモジナイザーを用いて、10000rpmで10分間攪拌することで分散させ、PIC/クロロホルム分散滴を作製した。
得られたPIC/クロロホルム分散滴を、光学顕微鏡(「ECLIPSE Ni-U」ニコン社製)により観察し写真撮影した。結果を
図7に示す。
図7の通り、僅かに水の混入が認められるが、微細で球形のPIC/クロロホルム分散滴が得られていることが確認された。
【0068】
(2)SRMによるPIC粒子の作製
前記(1)のエマルションを、室温、100rpmで24時間攪拌することにより、PIC/クロロホルム分散滴からクロロホルムを除去し、PICを析出させた。得られたPIC粒子分散液の光学顕微鏡写真を
図8(a)に、SEM画像を
図8(b)に示す。
図8に示される結果の通り、一部に粉砕された粒子が見られるものの、押し並べて球形のポリイソソルビドカーボネート粒子が得られた。
【0069】
実施例5: SRMによるPIC粒子の作製
PICクロロホルム溶液の濃度を10質量%から5質量%に変更した以外は実施例4と同様にして、ポリイソソルビドカーボネート粒子を作製した。
PIC/クロロホルム分散滴の光学顕微鏡画像を
図9(a)に、PIC粒子分散液の光学顕微鏡写真を
図9(b)に、SEM画像を
図9(c)に示す。
図9(a)の通り、PICクロロホルム溶液の濃度を下げたところ、水の混入の無い微細で球形のPIC/クロロホルム分散滴が得られた。また、
図8(b)(c)の通り、一部に粉砕された粒子が見られるものの、押し並べて球形のポリイソソルビドカーボネート粒子が得られた。
【0070】
実施例6: SRMによるPIC粒子の作製
イソソルビドとして数平均分子量が13300のものを用いた以外は実施例4と同様にして、ポリイソソルビドカーボネート粒子を作製した。
PIC/クロロホルム分散滴の光学顕微鏡画像を
図10(a)に、PIC粒子分散液の光学顕微鏡写真を
図10(b)に、SEM画像を
図10(c)に示す。
図10(a)の通り、僅かに水の混入が認められるが、微細で球形のPIC/クロロホルム分散滴が得られていることが確認された。
また、
図10(a)(b)の通り、分子量が比較的大きなイソソルビドポリカーボネートを用いたため、粉砕された粒子は確認されず、きれいな球形のポリイソソルビドカーボネート粒子が得られた。
【0071】
実施例7: SRMによるPIC粒子の作製
PICクロロホルム溶液の濃度を10質量%から5質量%に変更した以外は実施例6と同様にして、ポリイソソルビドカーボネート粒子を作製した。
PIC/クロロホルム分散滴の光学顕微鏡画像を
図11(a)に、PIC粒子分散液の光学顕微鏡写真を
図11(b)に、SEM画像を
図11(c)に示す。
図11(a)の通り、PICクロロホルム溶液の濃度を下げたところ、水の混入の無い微細で球形のPIC/クロロホルム分散滴が得られた。また、
図11(b)(c)の通り、分子量が比較的大きなイソソルビドポリカーボネートを用いたため、粉砕された粒子は確認されず、きれいな球形のポリイソソルビドカーボネート粒子が得られた。
【0072】
実施例8: SRMによるPIC粒子の作製 - 貧溶媒の使用
実施例4(1)と同様にして得たエマルション(5.5g)を、メタノール(90g)に一気に注ぎ、常温で10分間攪拌した。得られた粒子の光学顕微鏡(「ECLIPSE Ni-U」ニコン社製)および走査型電子顕微鏡(「JSM-6510」日本電子社製)にて観察した。
メタノールを使って作製したPIC粒子の光学顕微鏡写真を
図12(a)に、メタノールを使って作製したPIC粒子のSEM画像を
図12(b)に示す。
図12(a)の光学顕微鏡写真の通り、貧溶媒としてメタノールを用いた場合には、粒子内部にかなりのコントラスト差が見られた。これは、粒子と媒体の複数の界面における屈折率差によるものであり、多孔質構造によると考えられた。
【0073】
実施例9: SRMによるPIC粒子の作製
PICクロロホルム溶液の濃度を10質量%から5質量%に変更した以外は実施例8と同様にして、ポリイソソルビドカーボネート粒子を作製した。
得られたPIC粒子の光学顕微鏡写真をそれぞれ
図13(a)に、メタノールを使って作製したPC粒子のSEM画像を
図13(b)に示す。
図13の通り、PICクロロホルム溶液の濃度を下げた場合でも、同様にPIC粒子を作製することができた。