(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005006
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール、太陽電池モジュールの制御方法及び無給電表示装置
(51)【国際特許分類】
H10F 10/00 20250101AFI20250108BHJP
【FI】
H01L31/04 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104980
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】502291610
【氏名又は名称】神田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】中野 俊
(72)【発明者】
【氏名】木田 芳利
(72)【発明者】
【氏名】玉水 陽規
(72)【発明者】
【氏名】菊池 匡斉
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251BA05
5F251JA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、発電効率に優れる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る太陽電池モジュール100は、平面視で格子状に配置され、電気的に接続された複数の太陽電池セル4を有する太陽電池モジュール100であって、太陽電池セル4の列を含む厚み方向断面において、光源20からの光が入射する側の表面全体に亘って液晶レンズ2が配置されており、液晶レンズ2は、略同間隔で配置された複数の電極を有する電極群と、前記電極群と対向して配置された共通電極と、前記電極群と前記共通電極により挟持された液晶層と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で格子状に配置され、電気的に接続された複数の太陽電池セルを有する太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池セルの列を含む厚み方向断面において、光源からの光が入射する側の表面全体に亘って液晶レンズが配置されており、
前記液晶レンズは、
略同間隔で配置された複数の電極を有する電極群と、
前記電極群と対向して配置された共通電極と、
前記電極群と前記共通電極により挟持された液晶層と、を含む、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
平面視で格子状に配置され、電気的に接続された複数の太陽電池セルを有する太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池セルの列を含む厚み方向断面において、光源からの光が入射する側の表面に、前記太陽電池セル毎に前記太陽電池セルと同数の液晶レンズが配置されており、
前記液晶レンズは、
略同間隔で配置された複数の電極を有する電極群と、
前記電極群と対向して配置された共通電極と、
前記電極群と前記共通電極により挟持された液晶層と、を含む、
太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の太陽電池モジュールの前記太陽電池セルの列を含む厚み方向断面において、
前記液晶レンズを、前記太陽電池セルの前記光源からの光が入射する側に位置し、前記太陽電池セルの長さよりも若干長い第1の領域、隣接する前記第1の領域の間に位置する第2の領域、及び、前記液晶レンズの両端に位置する第3の領域の3種類の領域に分割し、
前記3種類の領域について、それぞれ、前記電極群の各電極に印加する電圧を調整する、
太陽電池モジュールの制御方法。
【請求項4】
メモリ性反射型表示部、制御部、及び、太陽電池モジュールがこの順で配置されており、前記太陽電池モジュールを電源として稼働する無給電表示装置であって、
前記制御部は、制御基板上に搭載されており、
前記太陽電池モジュールは、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールである、
無給電表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール、太陽電池モジュールの制御方法及び無給電表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、光起電力効果を利用して、光エネルギーを電気エネルギーに変換するモジュールである。太陽電池モジュールは、電池交換、電源配線等が不要であるため、自立型電源として利用することができる。また、太陽電池モジュールは、化石燃料を消費しないため、環境負荷を軽減することができ、地球温暖化対策という観点からも有用である。
【0003】
太陽電池モジュールは、シリコン系、化合物系、及び有機系に大別される。例えば、シリコン系の太陽電池モジュールは、結晶シリコン、アモルファスシリコン等を用い、化合物系の太陽電池モジュールは、InGaAs、InGaAs等を用い、有機系の太陽電池モジュールは、有機色素、ペロブスカイト結晶等を用いる。特に、シリコン系太陽電池モジュールは、当該技術分野においてよく知られており、従来から広く用いられている。
【0004】
近年では、太陽電池モジュールを表示装置の表面に配置し、表示装置のための自立型電源として利用する、太陽電池モジュール付き表示装置が提案されている。例えば、電子表示装置と太陽電池とを、支持部材を中心に反対向きに貼り合わせて、太陽電池が電子表示装置に供給される電力を発電する掲示板が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の表示装置等に電力を供給する太陽電池モジュールにおいて、発電効率の向上が求められている。
【0007】
本発明は、前述の点を考慮してなされたものであり、発電効率に優れる太陽電池モジュール、その制御方法及びそれを用いた無給電表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の第1の太陽電池モジュールは、
平面視で格子状に配置され、電気的に接続された複数の太陽電池セルを有する太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池セルの列を含む厚み方向断面において、光源からの光が入射する側の表面全体に亘って液晶レンズが配置されており、
前記液晶レンズは、
略同間隔で配置された複数の電極を有する電極群と、
前記電極群と対向して配置された共通電極と、
前記電極群と前記共通電極により挟持された液晶層と、を含む。
【0009】
また、本発明の第2の太陽電池モジュールは、
平面視で格子状に配置され、電気的に接続された複数の太陽電池セルを有する太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池セルの列を含む厚み方向断面において、光源からの光が入射する側の表面に、前記太陽電池セル毎に前記太陽電池セルと同数の液晶レンズが配置されており、
前記液晶レンズは、
略同間隔で配置された複数の電極を有する電極群と、
前記電極群と対向して配置された共通電極と、
前記電極群と前記共通電極により挟持された液晶層と、を含む。
【0010】
そして、本発明の太陽電池モジュールの制御方法は、
本発明の第1の太陽電池モジュールの前記太陽電池セルの列を含む厚み方向断面において、
前記液晶レンズを、前記太陽電池セルの前記光源からの光が入射する側に位置し、前記太陽電池セルの長さよりも若干長い第1の領域、隣接する前記第1の領域の間に位置する第2の領域、及び、前記液晶レンズの両端に位置する第3の領域の3種類の領域に分割し、
前記3種類の領域について、それぞれ、前記電極群の各電極に印加する電圧を調整する。
【0011】
さらに、本発明の無給電表示装置は、
メモリ性反射型表示部、制御部、及び、太陽電池モジュールがこの順で配置されており、前記太陽電池モジュールを電源として稼働する無給電表示装置であって、
前記制御部は、制御基板上に搭載されており、
前記太陽電池モジュールは、本発明の第1又は第2の太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発電効率に優れる太陽電池モジュール、その制御方法及びそれを用いた無給電表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一例における太陽電池セルを含む厚み方向断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の太陽電池モジュールの一例における太陽電池セルの平面配置について説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明における液晶レンズの構成の一例を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、液晶レンズの製造方法の一例について説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の太陽電池モジュールの別の例における太陽電池セルを含む厚み方向断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の太陽電池モジュールの制御方法の一例について説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の太陽電池モジュールの制御方法の一例について説明する別の図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の太陽電池モジュールの制御方法の一例について説明するさらに別の図である。
【
図9】
図9は、本発明の太陽電池モジュールを含む無給電表示装置の一例の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
別様に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願及び他の出版物や情報は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0015】
以下、本発明について例を挙げて説明するが、本発明は以下の例等に限定されるものではなく、任意に変更して実施できる。また、本発明の各実施形態における各説明は、特に言及がない限り、互いに援用可能である。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値又は物理値を含む意味で用いる。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。
【0016】
[太陽電池モジュール]
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一例における太陽電池セルを含む厚み方向断面図である。本例の太陽電池モジュールは、前述の本発明の第1の太陽電池モジュールに対応するものである。
図1に示すとおり、本例の太陽電池モジュール100は、太陽電池セル4の列を含む厚み方向断面において、光源20からの光(例えば、太陽光、照明光等)が入射する側の表面全体に亘って液晶レンズ2が配置されたものであり、液晶レンズ2を含むことを除けば、従来公知の太陽電池モジュール1と同様である。液晶レンズ2は、
図1においては簡略化して示しており、その詳細については後述する。太陽電池モジュール100において、太陽電池セル4は、
図2に示すように、平面視で格子状に配置されており、接続配線5で電気的に接続されている。この点は、後述する
図5、
図6及び
図8に示すように、太陽電池セル4の列を含む厚み方向断面を示す太陽電池モジュールにおいても同様である。また、
図1は、模式的に示したものであり、太陽電池セル4の数等は、実際とは異なり、後述する
図5、
図6及び
図8において同様である。
【0017】
図3の模式断面図に、液晶レンズ2の構成の一例を示す。
図3に示すように、液晶レンズ2は、略同間隔で配置された複数の電極を有する電極群2aと、電極群2aと対向して配置された共通電極2bと、電極群2aと共通電極2bにより挟持された液晶層2cと、を含む。なお、
図3に示すように、液晶レンズ2は、電極群2aの液晶層2cとは反対側及び共通電極2bの液晶層2cとは反対側に、それぞれ、透明基板2dを有してもよい。また、
図3には、光源20からの光が入射する側に電極群2aが配置され、その反対側に共通電極2bが配置された例を示したが、これとは逆に、光源20からの光が入射する側に共通電極2bが配置され、その反対側に電極群2aが配置されていてもよく、後述する
図7において同様である。
【0018】
太陽電池モジュール100によれば、光源20からの光が入射する側の表面全体に亘って液晶レンズ2が配置されていることで、発電効率が向上する。この発電効率の向上は、つぎのようにして実現される。すなわち、
図3に示すように、液晶レンズ2の電極群2aにおいて、中央に位置する2つの電極に印加する電圧(
図3においては、3V)と、その左右両隣に位置する2つの電極に印加する電圧(
図3においては、6V)、さらにその左右両隣に位置する2つの電極に印加する電圧(
図3においては、10V)を、それぞれ異ならせる。これにより、液晶層2cにおける液晶分子の配向を、電極群2aの電極毎に異ならせ、液晶レンズ2を透過した光源20からの光の波面3を、中央に集まるように湾曲させることができる。その結果、
図1に破線の矢印で示すように、太陽電池モジュール100において太陽電池セル4の外側を通過していた光源20からの光を、実線の矢印で示すように太陽電池セル4に入射させることができる。これにより、液晶レンズ2が無ければ太陽電池セル4の列の外を通過していた光を太陽電池モジュール100における発電に有効に活用することができるため、発電効率を向上させることができる。なお、
図3において、電極群2aにおける電極の数及び各電極に印加する電圧は、説明の便宜上例示したに過ぎず、実際とは異なることがあり、光源20からの光を好適に湾曲できるように適宜調整すればよく、後述する
図7において同様である。
【0019】
つぎに、液晶レンズ2の製造方法の一例について、
図4を参照して説明する。ただし、当該製造方法は、本例に限定されない。まず、透明基板(例えば、ガラス、透明フィルム等)を準備する。次いで、かかる透明基板上の一部に金属(例えば、アルミニウム等)の膜を形成する。次いで、かかる透明基板及び金属膜上に絶縁膜(例えば、窒化膜、酸化膜等)を製膜する。次いで、かかる絶縁膜の一部に金属膜へのコンタクトホールを複数(
図4では、説明の便宜上3つとしたが、これに限定されない)形成し、各コンタクトホール内及び上部に透明電極(例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等)を形成する。次いで、左端の透明電極及びその近傍の絶縁膜上に配向膜を塗布し、ローラーによるラビング又は紫外線(UV)配向を行う。次いで、真ん中の透明電極の上部に上下導通材を含むシールを塗布し、配向膜上に複数のスペーサを塗布する。これらの工程により、アレイ基板(すなわち、フレキシブル基板(フレキシブルプリント配線板:FPC)を実装する端子を形成する側の基板)を作製する。次いで、配向膜の塗布までのアレイ基板の作製方法と同様にして、対向基板(すなわち、FPCを実装する端子を形成しない側の基板)を作製し、アレイ基板と貼り合わせる。なお、ここまでの工程は、実際には大板で実施されるので、短冊状に切り分ける(スクライブブレイク)。次いで、貼り合わされた2枚の基板の間のスペーサで設けられた空間に液晶を注入する。次いで、対向基板における、アレイ基板の右端の透明電極上に位置する部分(
図4において、破線の長方形で示した部分)を個片カット(スクライブブレイク)する。最後に、アレイ基板の右端の透明電極上にFPCを実装することで、液晶レンズ2を製造することができる。
【0020】
図5は、本発明の太陽電池モジュールの別の例における太陽電池セルを含む厚み方向断面図である。本例の太陽電池モジュールは、前述の本発明の第2の太陽電池モジュールに対応するものである。
図5に示すとおり、本例の太陽電池モジュール101は、太陽電池セル4の列を含む厚み方向断面において、光源20からの光(例えば、太陽光、照明光等)が入射する側の表面に、太陽電池セル4毎に太陽電池セル4と同数の液晶レンズ2が配置されたものであり、複数の液晶レンズ2を含むことを除けば、従来公知の太陽電池モジュール1と同様である。各液晶レンズ2の構成は、大きさが異なること以外、
図1における液晶レンズ2と同じである。
【0021】
太陽電池モジュール101によれば、光源20からの光が入射する側の表面に、太陽電池セル4毎に太陽電池セル4と同数の液晶レンズ2が配置されていることで、発電効率が向上する。この発電効率の向上は、つぎのようにして実現される。すなわち、太陽電池セル4と同数の液晶レンズ2は、
図3を用いて前述したように、それを透過した光源20からの光の波面を、中央に集まるように湾曲させることができる。その結果、
図5に破線の矢印で示すように、太陽電池モジュール101における太陽電池セル4の外側及び隣接する太陽電池セル4の間を通過していた光源20からの光を、実線の矢印で示すように太陽電池セル4に入射させることができる。これにより、液晶レンズ2が無ければ太陽電池セル4の列の外又は隣接する太陽電池セル4の間を通過していた光を太陽電池モジュール101における発電に有効に活用することができるため、発電効率を向上させることができる。
【0022】
[太陽電池モジュールの制御方法]
前述の本発明の第1の太陽電池モジュールは、例えば、つぎのように制御してもよい。すなわち、
図6に示すように、液晶レンズ2を、太陽電池セル4の光源からの光が入射する側に位置し、太陽電池セル4の長さよりも若干長い第1の領域6、隣接する第1の領域6の間に位置する第2の領域7、及び、液晶レンズ2の両端に位置する第3の領域8の3種類の領域に分割し、前記3種類の領域について、それぞれ、前記電極群の各電極に印加する電圧を調整する。なお、第1の領域6は、例えば、太陽電池セル4の両端から、それぞれ、6mm程度長くすればよい。
【0023】
本例の制御方法では、
図7に示すように、液晶レンズ2の電極群2aの各電極に印加する電圧を調整することによって、液晶レンズ2を透過した光源20からの光の波面3の位置を調整することができる。まず、
図7(a)に示す例で電極群2aの各電極に印加する電圧は、前述の
図3に示した液晶レンズ2と同じである。その結果、液晶層2cにおける液晶分子の配向を、電極群2aの電極毎に異ならせ、液晶レンズ2を透過した光源20からの光の波面3を、中央に集まるように湾曲させることができる。このとき、液晶レンズ2は、凸レンズ3aのように機能し、この凸レンズ3aの中心は、中央に集まるように湾曲した光の波面3の中心に対応する。なお、凸レンズ3aは、液晶レンズ2の機能イメージを示すものに過ぎず、液晶レンズ2において実在するものではない。
【0024】
つぎに、
図7(b)に示す例では、
図7(a)に示す電極群2aの各電極に印加する電圧のパターンを右側にシフトさせることによって、液晶レンズ2を透過した光源20からの光の波面3を、中央より右側に集まるように湾曲させることができる。本例では、電極群2aにおいて、左端及びその隣に位置する電極に印加する電圧を10V、その右側に位置する電極に印加する電圧を6V、さらにその右側に位置する2つの電極に印加する電圧を3V、右端に位置する電極に印加する電圧を6Vとしている。これにより、光の波面3の中心は、中央より右側にシフトし、これに伴い、凸レンズ3aの中心もまた、中央より右側にシフトする。
【0025】
つぎに、
図7(c)に示す例では、
図7(b)に示す電極群2aの各電極に印加する電圧のパターンをさらに右側にシフトさせることによって、液晶レンズ2を透過した光源20からの光の波面3を、さらに右側に集まるように湾曲させることができる。本例では、電極群2aにおいて、左端及びその隣2つの電極に印加する電圧を10V、その右側に位置する電極に印加する電圧を6V、右端及びその隣に位置する電極に印加する電圧を3Vとしている。これにより、光の波面3の中心はさらに右側にシフトし、これに伴い、凸レンズ3aの中心もまたさらに右側にシフトする。
【0026】
つぎに、
図6における拡大図及び
図8(a)を用いて、第1の領域6における前記電極群の各電極に印加する電圧の調整の一例について説明する。本例においては、
図6における拡大図に示すように、液晶レンズ2の第1の領域6を、さらに、太陽電池セル4内の配線ピッチに対応した複数のミクロパターン9の繰り返しで構成する。なお、実際には、隣接するミクロパターン9の間に物理的な仕切りがあるわけではなく、かかる仕切りはあくまでも説明の便宜上示すものである。また、
図6における拡大図において、4aは、P型半導体を示し、4bは、p電極を示し、4cは、N型半導体を示し、4dは、n電極を示し、後述する
図8(a)において同様である。
図6における拡大図及び
図8(a)において、P型半導体4a及びp電極4bと、N型半導体4c及びn電極4dとを、それぞれ相互に置き換えてもよい。すなわち、光源からの光が入射する側にP型半導体4a及びp電極4bを、その反対側にN型半導体4c及びn電極4dを、それぞれ配置してもよい。
【0027】
そして、
図8(a)に示すように、各ミクロパターン9を最適化する。例えば、
図8(a)の上段におけるミクロパターン9の拡大図に示すように、ミクロパターン9における電極群の各電極に印加する電圧を上部から下部へシフトさせることによって、機能イメージである凸レンズ3aの中心を上部から下部へシフトさせることができる。これによって、凸レンズ3aの中心を任意の位置(例えば、同図の各矢印の位置)に変更することができる。その結果、ミクロパターン9が無ければ太陽電池セル4内の電極(例えば、n電極4d)で遮断されていた光源からの光を、ミクロパターン9によって屈折させ、太陽電池セル4内の半導体に入射させることができる。これにより、かかる光を太陽電池モジュール100における発電に有効に活用することができるため、発電効率を向上させることができる。なお、前述の例とは逆に、ミクロパターン9における電極群の各電極に印加する電圧を下部から上部へシフトさせ、機能イメージである凸レンズ3aの中心を下部から上部へシフトさせることによっても、同様に発電効率を向上させることができる。
【0028】
また、
図8(a)の下段に示すように、光源の位置(高度等)に応じて、すなわち、光源から入射する光(例えば、太陽光、照明光等)の方向を検知しながら、機能イメージである凸レンズ3aの中心位置を変更し、同時に発電量を計測することによって、良好な発電効率となる(例えば、最大の発電効率となる)凸レンズ3aの中心位置を検知し、その状態を保持することができる。
【0029】
そして、一定時間毎(例えば、1時間毎)に、凸レンズ3aの中心位置を変更し、同時に発電量を計測しながら、良好な発電効率となる(例えば、最大の発電効率となる)凸レンズ3aの中心位置を検知し、その状態を保持することもできる。この態様は、例えば、光源が、時間や季節により位置や高度の変わる太陽等である場合に、特に有効である。
【0030】
さらに、一定時間毎(例えば、1時間毎)に、凸レンズ3aの中心位置を変更し、同時に発電量を計測しながら、良好な発電効率となる(例えば、最大の発電効率となる)凸レンズ3aの中心位置を検知し、かかる検知した凸レンズ3aの中心位置のデータを事前に記録しておくことができる。かかる検知した凸レンズ3aの中心位置のデータに基づき、自動的に、一定時間毎(例えば、1時間毎)に、凸レンズ3aの中心位置を変更させ、良好な発電効率となる(例えば、最大の発電効率となる)凸レンズ3aの中心位置を保持することができる。この態様も、例えば、光源が、時間や季節により位置や高度の変わる太陽等である場合に、特に有効である。
【0031】
つぎに、
図8(b)を用いて、第2の領域7における前記電極群の各電極に印加する電圧の調整の一例について説明する。
図8(b)に示すように、第2の領域7における電極群の各電極に印加する電圧を上部から下部へシフトさせることによって、機能イメージである凸レンズ3aの中心を上部から下部へシフトさせることができる。これによって、前述の第1の領域6におけるミクロパターン9と同様に、発電効率を向上させることができる。なお、前述の例とは逆に、第2の領域7における電極群の各電極に印加する電圧を下部から上部へシフトさせ、機能イメージである凸レンズ3aの中心を下部から上部へシフトさせることによっても、発電効率を向上させることができる点も、第1の領域6におけるミクロパターン9と同様であり、他の得られる効果も、第1の領域6におけるミクロパターン9と同様である。
【0032】
つぎに、
図8(c)を用いて、第3の領域8における前記電極群の各電極に印加する電圧の調整の一例について説明する。
図8(c)に示すように、第3の領域8における電極群の各電極に印加する電圧を上部から下部へシフトさせることによって、機能イメージである凸レンズ3aの中心を上部から下部へシフトさせることができる。これによって、前述の第1の領域6におけるミクロパターン9と同様に、発電効率を向上させることができる。なお、前述の例とは逆に、第3の領域8における電極群の各電極に印加する電圧を下部から上部へシフトさせ、機能イメージである凸レンズ3aの中心を下部から上部へシフトさせることによっても、発電効率を向上させることができる点も、第1の領域6におけるミクロパターン9と同様であり、他の得られる効果も、第1の領域6におけるミクロパターン9と同様である。
【0033】
[無給電表示装置]
本発明の無給電表示装置は、メモリ性反射型表示部、制御部、及び、太陽電池モジュールがこの順で配置されており、前記太陽電池モジュールを電源として稼働する無給電表示装置であって、前記制御部は、制御基板上に搭載されており、前記太陽電池モジュールは、本発明の第1又は第2の太陽電池モジュールである。
【0034】
図9(a)は、無給電表示装置200の一例の全体斜視図である。
図9(a)に示すとおり、本例の無給電表示装置200は、メモリ性反射型表示部10、制御基板11、及び太陽電池モジュール100がこの順で配置されており、その一方の外側平面には、メモリ性反射型表示部10が配置され(
図9(b))、反対側の外側平面には、太陽電池モジュール100が配置されている(
図9(c))。
【0035】
(太陽電池モジュール)
太陽電池モジュール100は、例えば、シースルー型太陽電池モジュールである。シースルー型太陽電池モジュールとは、一方の面に入射した光の少なくとも一部が他方の面に向かって透過することができる平面状の太陽電池モジュールを意味する。シースルー型太陽電池の例としては、例えば、リコージャパン株式会社製有機薄膜太陽電池(OPV)等が挙げられる。
【0036】
太陽電池モジュール100は、メモリ性反射型表示部10に電気的に接続されており、外部光を受光して発電し、メモリ性反射型表示部10に給電する。このため、十分な外部光がある限り、無給電表示装置200を稼働させることができる。
【0037】
近年、ポリマーフィルム基板上に塗布プロセスを用いて太陽電池を作製することで、薄型で軽量の太陽電池モジュールを製造することが可能となっている。フィルム基板を用いることでロールツーロール方式での製造が可能となるため、製造コストの低減も見込まれている。このような塗布型の太陽電池としては、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、ペロブスカイト太陽電池(例えば、特開2021-132233号公報参照)等が知られている。かかる構成を採用することによって、薄型で軽量のシースルー型太陽電池モジュールを製造することができる。
【0038】
一般的な太陽電池は、黒色に近い色であり、無給電表示装置200に用いた場合、給電機能として問題はないが、観察者からすれば、面白みのない無機質なものに見えてしまう。ここで、太陽電池モジュール100において、給電機能を損なうことなく、文字又はデザインを表示できるのであれば、無給電表示装置200に更に情報やデザインを付加することができ、観察者に情報提供したり、面白みを提供したりすることが可能となる。
【0039】
太陽電池モジュール100において、例えば、シースルー型太陽電池の奥に文字又はデザインを付して、シースルー型太陽電池越しに当該文字又はデザインを観察可能であるように表示してもよい。シースルー型太陽電池は、奥が透けて見えるので、奥に配置されている、例えば制御基板11の太陽電池モジュール100側の表面に文字又はデザインを付すと、シースルー型太陽電池越しにこの文字又はデザインを観察することが可能となる。
【0040】
(メモリ性反射型表示部)
メモリ性反射型表示部10において、メモリ性とは、電源を切っても、或いは微弱電流だけにしておいても、外部の制御から画像データを出力することなく、その直前の画像もしくは画像データが残り、表示の変更時以外は大きな電流を必要としない特性をいう。この特性により、通電しなくても、或いは微弱な電流の通電だけでも表示内容を保持することが可能となる。また、メモリ性反射型表示部10において、反射型とは、反射構造を備えることにより、周囲の照明光等の外光を光源とし、通常の液晶の様にバックライトシステムを必要としない構成をいう。メモリ性かつ反射型にすることにより、低消費電力が可能となる。
【0041】
メモリ性反射型表示部10の具体例としては、メモリインピクセル反射型液晶ディスプレイ等が挙げられる。メモリインピクセル液晶ディスプレイでは、各画素がメモリを有し、静止画像を表示する場合、メモリに記憶された映像信号を用いて映像を表示することができ、一度ディスプレイ上で画像を作ると、その後は微弱電流を流すだけで、そのままの画像を表示した状態を維持できる。このメモリインピクセル液晶ディスプレイに反射型構造を採用したものが、メモリインピクセル反射型液晶ディスプレイである。このようなメモリインピクセル反射型液晶ディスプレイとしては、例えば、シャープ株式会社が製造するメモリインピクセル機能搭載反射型液晶を利用可能である(https://www.sharpsde.com/technologies-for/memory-in-pixels/)。
【0042】
メモリ性反射型表示部10の別の具体例としては、メモリ性反射型電子ペーパーが挙げられる。電子ペーパーは、様々な種類・方式が存在するが、その一つとして、上部電極と下部電極との間に粒子回転型又は電気泳動型等の電子インクが配置された構造を有し、表示内容を切り替える際に電力を消費するが、電力の供給がない状態でも表示状態を維持することができるタイプが知られている。このタイプの電子ペーパーは、通常、反射型構造を採用している。このような電子ペーパーは、メモリ性反射型電子ペーパーといえる。このようなメモリ性反射型電子ペーパーとしては、例えば、凸版印刷株式会社が製造する電子ペーパーを利用可能である(https://www.toppan.co.jp/denshipaper/search/product/dotmatrix.html)。
【0043】
(制御部)
制御部は、集積回路を備え、無給電表示装置200の稼働をコントロールする。制御部は、制御基板11上に搭載されている。
【0044】
(制御基板)
無給電表示装置200は、メモリ性反射型表示部10と太陽電池モジュール100とに挟まれた制御基板11内に、制御部を有している。この制御基板11は、少なくとも、電源回路を有し、この電源回路は、太陽電池モジュール100で発生した電流をメモリ性反射型表示部10に供給する。また、無給電表示装置200は、電源回路に加えて、記憶部、通信部、フィルム型二次電池を有していてもよい。
【0045】
制御基板11の太陽電池モジュール100側の表面は、ラミネート加工によって平面状にされていてもよい。制御基板11は、ラミネート加工なしでは、電源回路、記憶部、通信部、フィルム型二次電池等が搭載されているため、表面に凹凸がある状態である。この凹凸をスペーサで吸収させて平面状にした上で、全体をラミネート加工して一体化させる。これにより、表面に凹凸がある状態が解消され、作業性、取扱い性が向上する。この処理方法については、例えば、WO2019/059305が、凹部や穴を設けたスペーサ層を積層させ、最終的にプレス加工することによって表面の凹凸を解消する製造方法を開示しており、この方法を採用してもよい。
【0046】
制御基板11の厚みをできる限り薄くするために、制御基板11に搭載する部品は、できるだけ薄いものを選択し、重ねて搭載しないように設計することが好ましい。特に、フィルム型二次電池等の大きめの部品を搭載する場合は、制御基板11上にフィルム型二次電池を置くのではなく、制御基板11に必要なスペースの切込みを設けて、そこにフィルム型二次電池を置くことも可能である。この場合、フィルム型二次電池と制御基板11は、接続回路によって電気的に接続されることになる。このような制御基板11の製造にあたっては、強度を高めるために、プレス加工することが好ましい。
【0047】
(各機能部の電気的な接続方法)
本発明において、メモリ性反射型表示部10と制御基板11、太陽電池モジュール100と制御基板11は、電気的に接続される。接続方法としては、例えば、制御基板11上の回路と、メモリ性反射型表示部10又は太陽電池モジュール100の接続回路とを導電性樹脂圧着して電気的に接続する方法が挙げられる。
【0048】
導電性樹脂圧着は、正確な位置合わせや圧着作業等が手間になるため、別の接続方法として、コネクタ接続を用いてもよい。コネクタ接続は、制御基板11上にコネクタを配置し、メモリ性反射型表示部10又は太陽電池モジュール100にも対応するコネクタを配置し、両者を接合することによって電気的に接続する部品である。コネクタの種類としては、接続回路(フレキシブル基板)を差し込んで挟み込むことにより接続するタイプ、嵌合型タイプ等、特に限定はされない。コネクタ接続を使用することにより、メモリ性反射型表示部10又は太陽電池モジュール100が不良となった場合に、簡単に交換することができる。
【0049】
無給電表示装置200の電源は、基本的には太陽電池モジュール100である。無給電表示装置200は、さらに、フィルム型二次電池を備えていてもよく、その場合は、太陽電池モジュール100及びフィルム型二次電池を電源とすることができる。また、無給電表示装置200は、外部電源からの電力の供給を受けるための接続端子を有していてもよい。
【0050】
無給電表示装置200の外側平面のうち、メモリ性反射型表示部10及び太陽電池モジュール100がそれぞれ90%以上の面積を占めていることが望ましい。機能を有する部分の面積を大きくして、装置としての効率や機能密度を高めるためである。
【0051】
無給電表示装置200のサイズは、特に制限されない。無給電表示装置200は、その全体厚みが例えば7mm以下、好ましくは3mm以下の薄い平板状であってもよい。この薄さは、例えば、メモリ性反射型表示部10、制御基板11、太陽電池モジュール100等の各部材を薄型にすることによって実現される。無給電表示装置200の全体厚みが7mm以下である場合、メモリ性反射型表示部10の厚みは、例えば5mm以下、好ましくは2mm以下である。シャープ株式会社が製造するメモリインピクセル搭載モノクロ反射型液晶として、モジュールの厚みが、1.64mmの型番が存在する(LS044Q7DH01)。また、凸版印刷株式会社が製造するメモリ性反射型電子ペーパーとして、モジュールの厚みが、1.2mmの型番が存在する(オーロラMb (V231))。これらの市販のメモリ性反射型表示部を採用することで、無給電表示装置200を実現してもよい。
【0052】
無給電表示装置200は、さらに、
図9における両外側平面のいずれか一方の面上に固定部を有してもよい。そのような構成であれば、当該固定部により、構造物へ固定することができる。
【0053】
本発明において、太陽電池モジュールは、例えば、シリコン系、化合物系、有機系等、いかなるタイプのものであってもよい。例えば、シリコン系である場合、太陽電池モジュールは、結晶シリコン、アモルファスシリコン等を用いたものであってもよい。また、例えば、化合物系である場合、太陽電池モジュールは、InGaAs、InGaAs等を用いたものであってもよい。さらに、例えば、有機系である場合、太陽電池モジュールは、有機色素、ペロブスカイト結晶等を用いたものであってもよい。
【0054】
本明細書に記載された本発明の種々の特徴は様々に組み合わせることができ、そのような組合せにより得られる態様は、本明細書に具体的に記載されていない組合せも含め、すべて本発明の範囲内である。また、当業者は、本発明の精神から逸脱しない多数の様々な改変が可能であることを理解しており、かかる改変を含む均等物も本発明の範囲に含まれる。したがって、本明細書に記載された態様は例示にすぎず、これらが本発明の範囲を制限する意図をもって記載されたものではないことを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明によれば、発電効率に優れる太陽電池モジュール、その制御方法及びそれを用いた無給電表示装置を提供できる。このため、本発明は、太陽電池が用いられている様々な分野において極めて有用である。
【符号の説明】
【0056】
1、100、101 太陽電池モジュール
2 液晶レンズ
2a 電極群
2b 共通電極
2c 液晶層
2d 透明基板
3 光の波面
3a 凸レンズ
4 太陽電池セル
4a P型半導体
4b p電極
4c N型半導体
4d n電極
5 接続配線
6 液晶レンズの第1の領域
7 液晶レンズの第2の領域
8 液晶レンズの第3の領域
9 液晶レンズのミクロパターン
10 メモリ性反射型表示部
11 制御基板
20 光源
200 無給電表示装置