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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005011
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】発酵プラセンタ抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/02 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
C12P1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104989
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391005684
【氏名又は名称】厚生産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】見屋井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川合 史晃
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA05
4B064CC06
4B064CC07
4B064CD25
4B064CE08
4B064DA10
4B064DA20
(57)【要約】
【課題】
本発明は、所定の効能を有する発酵プラセンタ抽出物の新たな製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、コウジ菌Aspergillus luchuensisを用いてプラセンタを発酵させる発酵工程と、
30~50℃の水の存在下にて、前記発酵工程を経た発酵処理物から発酵プラセンタ抽出物を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で得られた発酵プラセンタ抽出物を、前記発酵処理物から分離する分離工程と、を含む発酵プラセンタ抽出物の製造方法に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コウジ菌Aspergillus luchuensisを用いてプラセンタを発酵させる発酵工程と、
30~50℃の水の存在下にて、前記発酵工程を経た発酵処理物から発酵プラセンタ抽出物を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で得られた発酵プラセンタ抽出物を、前記発酵処理物から分離する分離工程と、
を含む発酵プラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項2】
当該発酵プラセンタ抽出物に含有されるタンパク質の分子量が24万以下である、請求項1に記載の発酵プラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記抽出工程をpH2.0~6.5の範囲で行う、請求項1に記載の発酵プラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項4】
前記プラセンタが豚由来プラセンタである、請求項1に記載の発酵プラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記プラセンタが乾燥物のプラセンタである、請求項1に記載の発酵プラセンタ抽出物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵プラセンタ抽出物の製造方法、などに関する。
【背景技術】
【0002】
プラセンタは、哺乳動物の胎盤である。プラセンタは、多種類のタンパク質およびビタミンに代表される栄養成分を含むことから、プラセンタおよび当該プラセンタから有効成分を抽出したプラセンタ抽出物が化粧品および健康食品の分野で注目を集め続けている。また、当該プラセンタ抽出物の製法に関しては、様々な製法が報告されている。(例えば、特許文献1、2に記載の亜臨界抽出法によるプラセンタ抽出物の製法など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-100998号公報
【特許文献2】国際公開第2014/181769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒアルロン酸は、高い保水性を持つ高分子多糖体として知られている。近年では、ヒアルロン酸の産生促進は、皮膚のシワ・タルミ改善の観点から、例えば、化粧品の分野で着目されている。かかる製法以外にも、所定の効能、例えば、ヒアルロン酸の産生促進能を有するプラセンタ抽出物の製造方法を確立すること、などが求められている。
【0005】
本発明は、所定の効能を有する発酵プラセンタ抽出物の新たな製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法は、
コウジ菌Aspergillus luchuensisを用いてプラセンタを発酵させる発酵工程と、
30~50℃の水の存在下にて、前記発酵工程の処理を経た発酵処理物から発酵プラセンタ抽出物を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で得られた発酵プラセンタ抽出物を、前記発酵処理物から分離する分離工程と、
を含む。
(2)別の実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法にて、好ましくは、当該発酵プラセンタ抽出物に含有されるタンパク質の分子量が24万以下であってもよい。
(3)別の実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法にて、好ましくは、前記抽出工程をpH2.0~6.5の範囲で行ってもよい。
(4)別の実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法にて、好ましくは、前記プラセンタが豚由来プラセンタであってもよい。
(5)別の実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法にて、好ましくは、前記プラセンタが乾燥物のプラセンタであってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、所定の効能を有する発酵プラセンタ抽出物の新たな製造方法、などを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法のフロー図を示す。
図2図2は、HPLC分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
1.定義
(コウジ菌)
本発明において用いられるコウジ菌は、Aspergillus luchuensisである(以下単に「コウジ菌」と表記することもある)。Aspergillus luchuensisの一例として、Aspergillus luchuensis NBRC 4314は、黒麹菌とも呼ばれ、沖縄の泡盛の醸造に伝統的に用いられてきた糸状菌である(黒麹菌の学名がAspergillus luchuensisになりました、山田修、第110巻、第2号、醸協2015、p64―67))。Aspergillus luchuensisは、アミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ等の分解酵素や多様な代謝物を生産することが知られている。本実施形態で用いられるコウジ菌の菌株は、本発明を実施可能である限り特に限定されず、例えばAspergillus luchuensis mut.kawachiiのような変異株を含んでもよい。
【0011】
(プラセンタ)
本発明で用いられるプラセンタは、哺乳動物の胎盤である。当該哺乳動物は、特に制約はないが、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヒト、ヒツジなどであるが、トレーサビリティの観点などで、家畜として挙げられる動物(例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ)が好ましい。
【0012】
(発酵処理物)
本明細書において、「発酵処理物」は、後述する発酵工程後のプラセンタ、コウジ菌の菌体、プラセンタ、コウジ菌による代謝産物などを含み得る。発酵処理物の形態は、特に限定されないが、主として固体である。
【0013】
(発酵プラセンタ抽出物)
本明細書において、「発酵プラセンタ抽出物」は、プラセンタ由来のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、各種ビタミン、コウジ菌による代謝産物などを含む混合物である。なお、発酵プラセンタ抽出物は、噴霧乾燥や凍結乾燥等により、水分を除外して、粉体とすることもできる。
【0014】
以下記載の本実施形態に係る製造方法(発酵プラセンタ抽出物の製造方法)で製造された発酵プラセンタ抽出物は、例えば、ヒアルロン酸産生促進活性を有する。
【0015】
2.発酵プラセンタ抽出物の製造方法
次に、図1を用いて、本実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法について説明する。図1は、本実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法のフロー図を示す。
【0016】
(1)前処理工程(S50)
前処理工程(S50)は、後述する発酵工程にて発酵をスムーズに進めるために、プラセンタを処理する工程である。前処理工程は、この実施形態に係る発酵プラセンタ抽出物の製造方法において、必須の工程ではないが、発酵工程をより効果的に行う観点では、実行したほうが好ましい工程、である。前処理工程は、一例として、プラセンタに水を添加して吸水させる吸水処理と、吸水したプラセンタを蒸煮する蒸煮処理と、蒸煮したプラセンタの放冷処理とを備えていてもよい。以下、吸水処理、蒸煮処理および放冷処理について説明する。
【0017】
本工程で用いられるプラセンタは、作業者が当該処理をしやすくするなどの観点で、凍結乾燥法などによる乾燥物であることが好ましい。
【0018】
吸水処理においてプラセンタに添加される水は、必須ではないが、発酵工程で植菌されるコウジ菌の発育を促進する観点から、酵母エキス等を含んでいてもよい。吸水のための静置時間は、好ましくは1~24時間であり、より好ましくは2~18時間である。
【0019】
水の含有率は、コウジ菌の植菌に適した範囲であればよく、プラセンタ、水、その他の添加物の全質量に対して、好ましくは25~50質量%、より好ましくは30~45質量%であり、より好ましくは35~40質量%である。
【0020】
蒸煮処理は、発酵工程においてプラセンタの発酵を更に容易にするための処理、である。蒸煮方法には、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、常圧下における蒸煮が好ましい。蒸し器における蒸気の吐出圧力は、好ましくは0.01~0.09MPaであり、より好ましくは0.02~0.06MPaであり、さらにより好ましくは0.02~0.05MPaである。蒸煮時の水蒸気の温度は、好ましくは90~100℃、より好ましくは95~100℃、さらにより好ましくは98~100℃、である。
【0021】
放冷処理(冷却処理ともいう)は、蒸煮工程後のプラセンタを冷やす処理、である。蒸煮処理後のプラセンタは、この放冷処理で、好ましくは25~45℃まで、より好ましくは28~40℃まで、さらにより好ましくは30~35℃まで冷却される。
【0022】
(2)発酵工程(S100)
発酵工程(S100)は、コウジ菌Aspergillus luchuensisを用いてプラセンタを発酵させ、発酵処理物を得る工程である。発酵工程は、プラセンタにコウジ菌を植菌する植菌処理と、植菌後のプラセンタを発酵させる発酵処理、とを含む。
【0023】
植菌するコウジ菌は、発酵工程において存在するプラセンタなどの全質量に対して、好ましくは0.10~0.30質量%、より好ましくは0.15~0.25質量%、さらにより好ましくは0.15~0.20質量%である。
【0024】
発酵処理における水の温度は、好ましくは25~45℃、より好ましくは28~42℃、さらにより好ましくは30~40℃、である。
【0025】
発酵処理を行っている空間内の湿度は、好ましくは50~100%、より好ましくは55~100%、さらにより好ましくは60~100%である。
【0026】
発酵処理を行っている空間内の二酸化炭素濃度は、好ましくは15%以下である。発酵時間は、特に制約はないが、好ましくは24~72時間、である。
【0027】
上記の発酵工程で得られた発酵処理物に対して、必須ではないが、例えば、水分含有量を低減させ、抽出工程を行うまでの保存性を良好とするために乾燥処理をすることも可能である。乾燥処理は、例えば、発酵処理物に温風を吹きかけ、発酵処理物に含まれる水分を蒸発させること(温風乾燥)で行う。
【0028】
なお、本発明において、発酵工程後、直ぐに抽出工程を行うなど、当該乾燥処理を行わないこともある。
【0029】
(3)抽出工程(S200)
抽出工程(S200)は、30~50℃の水の存在下にて、発酵処理物中の内在性の酵素(プロテアーゼなど)による酵素反応を起こしつつ上記発酵工程を経た発酵処理物から発酵プラセンタ抽出物(例えば、発酵プラセンタ抽出液)を抽出する工程、である。
この抽出工程において用いられる水の量は、発酵プラセンタ抽出物を抽出可能な量であれば特に限定されない。かかる水の量は、発酵処理物の質量に対して、好ましくは1~50倍、より好ましくは2~20倍、さらにより好ましくは5~15倍である。
【0030】
抽出工程において使用される水は、発酵工程において用いられた水を含んでいても、または含んでいなくともよい。抽出工程に使用される水の量は、好ましくは、発酵工程に使用される水の量よりも多い。
【0031】
抽出工程における水の温度は、当該発酵処理物中の内在性の酵素(プロテアーゼなど)による酵素反応を行うなど観点から、至適温度で、好ましくは30~50℃、より好ましくは35~45℃である。抽出中においては、温度を好ましくは30~50℃(より好ましくは35~45℃)に保温しながら撹拌することが好ましい。
【0032】
抽出時間は、発酵プラセンタ抽出物を抽出可能であれば特に限定されない。抽出時間としては、例えば、2.0~72時間が好ましく、2.5~48時間がより好ましく、3~36時間がより好ましく、3.5~24時間がさらに好ましい。
【0033】
抽出工程では、発酵処理物と水との混合物のpH調整を抽出前に行っても良い。抽出時のpH値としては、2.0~7.0が好ましく、2.5~6.5がより好ましく、3.0~6.0がさらにより好ましい。pH値が上記の上限値以下の場合、酵素(プロテアーゼなど)のアルカリ変性が生じにくく、上記発酵が妨げられる危険性が低くなる。一方、pH値が上記の下限値未満の場合には、酸性条件が強すぎて当該酵素による反応が起こらないおそれがある。
【0034】
抽出工程と後述する分離工程との間に、必須ではないが、加熱などの手法を用いた殺菌を行っても良い。
【0035】
(4)分離工程(S300)
分離工程(S300)は、上記抽出工程を経て得られた発酵プラセンタ抽出物を、発酵処理物から分離する工程である。より具体的には、この工程で、例えば発酵プラセンタ抽出物が液体(発酵プラセンタ抽出液)の場合、発酵プラセンタ抽出物の水溶液が発酵処理物から分離される。当該工程により、例えば、プラセンタの残渣およびコウジ菌の菌体の大部分または全部が除去される。
【0036】
当該分離工程で用いられる分離方法としては、発酵プラセンタ抽出液を発酵処理物から分離可能な方法であれば特に限定されない。当該分離方法は、例えば、濾過、遠心分離、膜処理等、が挙げられる。挙げられた分離方法を1種又は2種以上組み合わせて、当該分離工程を行うことができる。
【0037】
濾過は、例えば、濾紙、ステンレススチール等の金属製フィルタ等によるフィルタ分離等を採用することができる。また、ろ紙を用いた濾過では、例えば、ろ紙上に濾過助剤をプレコートしてもよい。濾過助剤は、例えば、珪藻土、セルロース及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。当該助剤の使用量は適宜選択可能である。また、濾過は、加圧濾過、吸引濾過等の濾過方法も採用することもできる。
【0038】
(その他)
発酵プラセンタ抽出物を粉体とする場合は、当該分離工程で得られた発酵プラセンタ抽出液に対して、噴霧乾燥や凍結乾燥等を当該分離工程後に任意に行ってもよい。
【0039】
分離工程後の発酵プラセンタ抽出物に含有されるタンパク質の分子量は、例えば45万以下であり、より好ましくは24万、である。
【実施例0040】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例における「%」は、「質量%」を意味する。
【0041】
(製造例)発酵プラセンタ抽出物の製造
以下の表1は、前処理工程および発酵工程において用いた原料およびそれぞれの含有比率を示す。なお、実際の製造過程においては、プラセンタを2986.8g、水を1826.3g、酵母エキスRK(味の素株式会社)を48.7g、本格焼酎菌米用粉状(Aspergillus luchuensis 種麹)(株式会社樋口松之助商店)を8.2g用いた。
【0042】
【表1】
【0043】
(1)前処理工程
水に酵母エキスを溶解させ、酵母エキス溶液を調製した。プラセンタの乾燥物に対して当該酵母エキス溶液を添加した。当該添加後のプラセンタを、2~16時間静置した。その後、蒸し器を用いて98℃以上の温度を維持しつつ、蒸気の吐出圧力0.02~0.04MPaの条件下で60分間、プラセンタの蒸煮を行った。蒸煮後のプラセンタを、25~40℃になるまで放冷(冷却)した。
【0044】
(2)発酵工程
放冷後のプラセンタにコウジ菌Aspergillus luchuensisの種麹を植菌した。当該植菌後、温度を32~38℃、湿度を60~100%、二酸化炭素濃度を10%以下に保った条件下で36~48時間培養し、プラセンタの発酵を行った。当該発酵後、得られた発酵処理物の水分が10%以下になるまで、温風乾燥を行った。
【0045】
(3)抽出工程
発酵処理物10gに水を100mL加え、発酵処理物と水との混合物を得た。当該混合物のpH値は、未調整の状態で約5.8であった。当該混合物を35~45℃で2.0~4.5時間撹拌した。その後、90℃で30分間、加熱殺菌を行った。
【0046】
抽出工程において、pH調整を行う場合は、加温・撹拌を行う前に当該混合物に90%乳酸水溶液または25%クエン酸水溶液を加え、pHを約3.0となるよう調整した。
【0047】
(4)分離工程
加熱殺菌後の当該混合物を、珪藻土を助剤としたろ紙で濾過した。濾過後の濾液を回収した。回収した濾液を0.45μmのメンブレンフィルター(ADVANTEC社製)で処理し、発酵プラセンタ抽出液を得た。
【0048】
以下の表2に記載の抽出条件の発酵プラセンタ抽出液または発酵プラセンタ抽出物を、以降の各試験例に供した。
【0049】
【表2】
【0050】
(試験例1)発酵プラセンタ抽出液のHPLC分析
上記製造例で得られた発酵プラセンタ抽出液を精製水で希釈し、1mLの溶液(測定試料)とした。その後、下記のHPLC条件にて、当該測定試料に含まれるタンパク質等の分子量分布を評価した。
【0051】
<HPLC条件>
カラム:Superdex 200Increase 10/300GL(GE Healthcare製)
カラム温度:40℃
試料注入量:10μL
移動相:Tris-HCl緩衝液(pH7.0)
流量:0.5mL/min
検出器:UV検出器(SPD-20A 島津製作所社製)
検出波長:214nm
【0052】
(結果)
図2は、HPLC分析の結果を示す。図2中の矢印は、分子量約24万のピークを示す。当該ピークの化合物の保持時間は、22~24分前後であった。図2に示す通り、HPLC分析で得られたピークは、ブロード状であった。この結果から、発酵プラセンタ抽出液は、種々の分子量のタンパク質等を含んでいることを示唆された。
【0053】
(試験例2)ヒト線維芽細胞増殖試験
5%ウシ胎仔血清(以下、FBSと記載する。)(Thermo Trace製)を含むダルベッコ変法イーグル培地(以下、DMEMと記載する。)(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、96ウェルプレートの各ウェルに200μL添加した。正常ヒト皮膚線維芽細胞(KF-4009、クラボウ)を、4×10個/wellの細胞数となるように各ウェルに播種した。播種後の当該細胞を、37℃、5%COの環境下で24時間培養した。当該24時間培養後、ポジティブコントロール群用のウェルを除く各ウェルにおいて、5%FBSを含むDMEMを、0.25%FBSを含むDMEMへ置換した。当該置換後、以下の表3に記載の組成となるように発酵プラセンタ抽出物を各ウェル内の培地に添加した。添加後の当該細胞を、37℃、5%COの環境下で3日間培養した。3日間の培養後、Cell Counting Kit-8(CK04、DOJINDO)を用いて、正常ヒト皮膚線維芽細胞数を測定した。当該測定は、Cell Counting Kit-8に添付の取扱説明書に準じて行った。
【0054】
【表3】
【0055】
(結果)
表3は、ヒト線維芽細胞増殖試験の結果を示す。表3中の測定結果は、各群(n=8)における測定の平均値を算出し、ネガティブコントロール群の値を1.00とした相対値を示す。表3中の*は、n=8のStudentのt検定で、ネガティブコントロール群と比較してp<0.001の有意差を示す。当該結果は、発酵プラセンタ抽出物の添加により、ポジティブコントロール群と同様に、ヒト線維芽細胞の増殖効果を発揮した、という結果である。
【0056】
(試験例3)ヒアルロン酸産生促進活性試験
5%FBS(Thermo Trace製)を含むDMEM(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、24ウェルプレートの各ウェルに1000μL添加した。正常ヒト皮膚線維芽細胞(KF-4009、クラボウ)を、2×10個/wellの細胞数となるように各ウェルに播種した。播種後の当該細胞を、37℃、5%COの環境下で、コンフルエントになるまで培養した。その後、各ウェルの5%FBSを含むDMEMを、0.25%FBSを含むDMEMへ置換した。以下の表4に記載の組成となるように発酵プラセンタ抽出物を各ウェル内の培地に添加した。添加後の当該細胞を、37℃、5%COの環境下で、3日間培養した。培養後の当該細胞から、細胞培養上清を500μL分取した。分取した当該上清を、精製水で10倍に希釈した。希釈した上清中に含まれるヒアルロン酸の産生量(ng/mL)を、Hyaluronan Quantification Kit(HA-96KIT、コスモバイオ)を用いて算出した。当該算出は、Hyaluronan Quantification Kitに添付の取扱説明書に準じて行った。
【0057】
その後、算出した上記ヒアルロン酸の産生量Sの値を以下の式1に当てはめて、1細胞当たりのヒアルロン酸産生量Xを算出した。
X=(S/R)×10・・・(式1)
(X:1細胞当たりのヒアルロン酸産生量、S:希釈した上清中に含まれるヒアルロン酸の産生量、R:細胞数割合。)
【0058】
【表4】
【0059】
(結果)
表4は、ヒアルロン酸産生促進活性試験についての結果を示す。表4中の測定結果は、各群(n=4)における1細胞当たりのヒアルロン酸産生量(X)の平均値を示す。表4中の*は、n=4のStudentのt検定で、コントロール群と比較してp<0.01の有意差を示す。当該結果は、発酵プラセンタ抽出物の添加により、ヒアルロン酸産生が促進される、という結果である。

図1
図2