(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005014
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】入金消込システムおよび入金消込プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/14 20120101AFI20250108BHJP
【FI】
G06Q20/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104993
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】富永 健太
(72)【発明者】
【氏名】加納 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雅大
【テーマコード(参考)】
5L020
5L055
【Fターム(参考)】
5L020AA32
5L055AA32
(57)【要約】
【課題】請求データと入金データの効率的な消込処理が可能となるような請求データの組合せの候補の特定を可能とする。
【解決手段】請求データと入金データの入力をそれぞれ受けて記録するデータ入力部20と、得意先毎に、まとめて入金されると推測される請求データをグルーピングして請求グループに分ける請求グルーピング部30と、請求グループと入金データとを突合して、入金データにマッチする請求グループに含まれる請求データについて消込みを行うマッチング処理部50とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掛取引に係る請求データと入金データの消込処理を行う入金消込システムであって、
前記請求データと前記入金データの入力をそれぞれ受けて記録するデータ入力部と、
前記得意先毎に、まとめて入金されると推測される前記請求データをグルーピングして請求グループに分ける請求グルーピング部と、
前記請求グループと前記入金データとを突合して、前記入金データにマッチする前記請求グループに含まれる前記請求データについて消込みを行うマッチング処理部と、を有する、入金消込システム。
【請求項2】
請求項1に記載の入金消込システムにおいて、
前記請求グルーピング部は、
学習モデルを用いた機械学習処理により前記請求データをグルーピングする、入金消込システム。
【請求項3】
請求項2に記載の入金消込システムにおいて、
前記請求グルーピング部は、
前記請求データを埋め込みベクトル化して、当該埋め込みベクトル間の類似度の評価によりグルーピングする、入金消込システム。
【請求項4】
請求項2に記載の入金消込システムにおいて、
さらに、前記マッチング処理部によりマッチしなかった前記請求データと前記入金データについて、手動によりマッチすると判断された前記請求データと前記入金データの組合せを受け付けて消込みを行うアンマッチ処理部と、
前記アンマッチ処理部により受け付けた前記請求データと前記入金データの組合せに基づいて、前記学習モデルを再学習する学習処理部と、を有する、入金消込システム。
【請求項5】
掛取引に係る請求データと入金データの消込処理を行う情報処理システムとしてコンピュータを動作させる入金消込プログラムであって、
前記コンピュータが、
前記請求データと前記入金データの入力をそれぞれ受けて記録する第1ステップと、
前記得意先毎に、まとめて入金されると推測される前記請求データにグルーピングして請求グループに分ける第2ステップと、
前記請求グループと前記入金データとを突合して、前記入金データにマッチする前記請求グループに含まれる前記請求データについて消込みを行う第3ステップと、を実行する、入金消込プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛取引における売掛金の消込業務(入金消込業務)の技術に関し、特に、請求データと入金データのマッチングを行う入金消込システムおよび入金消込プログラムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
企業間などの継続的な商取引では、掛取引が行われ、請求した金額(売掛金)に対して後日に実際に入金された金額との突き合わせを行い、相違がなければ当該入金データにより対象の請求データを消し込む入金消込業務が行われる。この処理は、従来担当者の手作業により行われるのが一般的であったが、例えば、入金データと請求データが1対1で対応するような単純なケースでは突合にそれほど大きな負荷はかからない。
【0003】
これに対し、例えば、1つの得意先に対して複数の請求書が発行され、これらの複数の請求に対してまとめて入金がされ、まとめる粒度も様々というケースがあり、このようなケースでは請求データと入金データの突合が困難となって負荷が高くなる場合がある。また、対応すると思われる組合せでも振込手数料等の処理などで金額がわずかに一致しないため確認を要する場合などもあり、負荷が高くなる場合がある。
【0004】
このような状況に対し、入金消込処理の迅速化・効率化を図る技術として、例えば、特開2021-96574号公報(特許文献1)には、入金データに対応する請求データの組み合わせを消込候補データとして選択し、消込候補データを、消込処理がなされて学習された請求データと照合する手段を備え、消込候補データと学習された請求データとを、請求分類情報によってそれぞれn次元ベクトル化し、両ベクトル間のコサイン類似度等によって消込候補データと学習された請求データとの一致度を計算することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたような従来技術によれば、ある入金データに対して複数の請求データの組合せの候補がある場合に、どの組合せの候補が当該入金データによる消込対象として適当かを効率よく判定することが可能になるといえる。一方で、このような判定および消込処理を行う以前に、そもそも入金データによる消込対象となる請求データの組合せの候補をどのように特定するか(請求データをどのように組み合わせるべきか)については何ら言及されていない。
【0007】
そこで本発明の目的は、請求データと入金データの効率的な消込処理が可能となるような請求データの組合せの候補の特定を可能とする入金消込システムおよび入金消込プログラムを提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態である入金消込システムは、掛取引に係る請求データと入金データの消込処理を行う入金消込システムであって、前記請求データと前記入金データの入力をそれぞれ受けて記録するデータ入力部と、前記得意先毎に、まとめて入金されると推測される前記請求データをグルーピングして請求グループに分ける請求グルーピング部と、前記請求グループと前記入金データとを突合して、前記入金データにマッチする前記請求グループに含まれる前記請求データについて消込みを行うマッチング処理部と、を有するものである。
【0011】
また、本発明の代表的な実施の形態である入金消込システムは、コンピュータを上記のような入金消込システムとして動作させるプログラムにも適用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、大量の請求データから入金データによる消込対象となる請求データの組合せの候補を効率的に特定し、入金消込処理を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態である入金消込システムの構成例について概要を示した図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における入金消込処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施の形態における入金データの具体的な例について概要を示した図である。
【
図4】本発明の一実施の形態における消込済データの具体的な例について概要を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態における請求データのグルーピングの例について概要を示した図である。
【
図6】本発明の一実施の形態における請求データのグルーピングの他の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0016】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である入金消込システムの構成例について概要を示した図である。本実施の形態の入金消込システム1は、企業等の経理・会計業務において入金消込処理を行う情報処理システムであり、例えば、PC(Personal Computer)やタブレット型端末等の情報処理端末により実装されていてもよいし、サーバ機器もしくはクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により実装されていてもよい。図中では1つの論理的な情報処理システムとして記載されているが、物理的には複数の情報処理端末やサーバ等に機能が分散して実装されていてもよい。
【0017】
入金消込システム1は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、入金消込処理に係る各種機能を実現する。
【0018】
この入金消込システム1は、例えば、ソフトウェアとして実装されたデータ入力部20、請求グルーピング部30、名寄せ処理部40、マッチング処理部50、アンマッチ処理部60、消込処理部70、および学習処理部80などの各部を有する。これら各部は全体として1つのアプリケーションプログラムとして実装されていてもよいし、各部がそれぞれ独立したプログラムとして実装されて連携する構成であってもよい。また、入金消込システム1は、例えば、データベースやファイルテーブルなどにより実装された請求データ11、入金データ12、請求グループデータ13、消込済データ14、および未消込データ15などの各データストアを有する。
【0019】
データ入力部20は、入金消込処理の対象となる請求データおよび入金データの入力を受け付けてそれぞれ請求データ11および入金データ12として格納する機能を有する。データ入力の方法は特に限定されず、例えば、データが記録された媒体からコピー等する方法でもよいし、図示しないネットワークを介してアップロードする方法でもよい。請求書の発行や入金がされた都度直接手入力する方法でもよいし、請求書等をスキャンしてデータを読み取る方法であってもよい。また、図示しない経理システムやプログラム等と連携して、発生したデータを受け取る方法であってもよい。
【0020】
請求グルーピング部30は、後述する名寄せ処理部40による突合により消込みできなかった請求データについて、学習モデル81を用いた機械学習処理によりグルーピングして請求グループデータ13として格納する機能を有する。機械学習のエンジンやアルゴリズム等については特に限定されず、一般に利用可能なものを適宜利用することができる。機械学習処理によらずユーザの手動によりグルーピングする構成であってもよい。なお、グルーピング処理の内容については後述する。
【0021】
名寄せ処理部40は、請求データと入金データについて、それぞれ得意先により名寄せして、名寄せされた得意先毎に、請求データと入金データについて単純な突合を行う機能を有する。突合により対応が確認できた請求データと入金データについては、後述する消込処理部70により、当該入金データによる当該請求データの消込みに係る処理を行う。なお、ここでの単純な突合とは、例えば、請求データと入金データが1:1で対応するケースや、いずれか一方もしくは双方のデータが複数であっても、全ての請求データと全ての入金データをそれぞれまとめたものが対応するケースなど、他に候補がなく組合せを容易に一意に特定できるようなケースが該当する。
【0022】
マッチング処理部50は、名寄せ処理部40での突合により消込みができず残った未消込の請求データについて、上記の請求グルーピング部30によりグルーピングされて請求グループデータ13に出力された請求データのグループ毎に、未消込みの入金データとの突合を行う機能を有する。突合によりマッチした請求データ(グループ内の各請求データ)と入金データについては、名寄せ処理部40と同様に、後述する消込処理部70により消込みに係る処理を行う。
【0023】
なお、ここでの突合は、例えば、まず請求グループと入金データとを単純に1:1で突合する、すなわち、請求グループ内の各請求データを集計したものと入金データとを突合し、マッチした入金データによって対応する請求グループ内の各請求データを消し込む。その後、消込みできずに残った請求グループと入金データについて、それぞれをM:1の組合せで突合する。消込みできずに残った請求グループ内の各請求データについて、請求グルーピング部30により、もしくは手動で再グループ化し、改めて上記のような突合を行うようにしてもよい。請求グループとの突合処理については後述する。
【0024】
アンマッチ処理部60は、上記の名寄せ処理部40およびマッチング処理部50により消込みできずに残った請求データと入金データについて、さらに突合を行う機能を有する。例えば、消込みが可能な請求データと入金データの組合せの候補が複数あり一意に特定できないような場合、各候補について消込みの可能性を所定の手法(例えば、従来技術の特許文献1に記載されたような技術)によりスコア化し、最上位の候補に自動的に特定したり、スコアのリストをユーザに提示して手動で特定したりすることができる。
【0025】
また、マッチすると思われる組合せでも金額がわずかに一致しないというような場合に、AIもしくはルールベースでの処理により自動でマッチさせるか否かを判断したり、未消込の請求データと入金データの一覧と合計金額などの一覧をユーザに提示して手動で判断したりすることができる。これらの処理でも消込みできずに残ったデータについては、一覧をユーザに提示して手動によりマッチさせるようにしてもよい。
【0026】
消込処理部70は、上記の名寄せ処理部40、マッチング処理部50、およびアンマッチ処理部60の各部での突合によりマッチした請求データと入金データの組合せに係る情報を消込済データ14に記録することで入金データによる請求データの消込みを行い、マッチせずに残ったものに係る情報を未消込データ15に記録する機能を有する。未消込データ15に記録された請求データおよび入金データについては、マッチング処理部50やアンマッチ処理部60での処理において随時参照される。
【0027】
学習処理部80は、上記の請求グルーピング部30において請求データを機械学習処理によりグルーピングする際に用いる学習モデル81を、教師データの(再)学習により生成・更新する機能を有する。このとき、例えば、上記のアンマッチ処理部60においてユーザが手動でマッチさせた請求データと入金データの組合せからなる正解データを教師データとして用いることができる。
【0028】
<処理の流れ>
図2は、本発明の一実施の形態における入金消込処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。処理を開始すると、まず、名寄せ処理部40により、請求データ11および入金デデータ12に記録されたデータについて、得意先名で名寄せをしてまとめる(S01)。その後、名寄せされた得意先毎に、名寄せ処理部40により請求データと入金データについて単純な突合を行い、マッチしたものについて消込処理部70により消込処理を行う(S02)。なお、ここでの単純な突合とは、上述したように、例えば、請求データと入金データが1:1で対応するケースや、いずれか一方もしくは双方のデータが複数であっても、全ての請求データと全ての入金データをそれぞれまとめたものが対応するケースなど、他に候補がなく組合せを容易に一意に特定できるようなケースが該当する。
【0029】
その後、ステップS02での単純な突合により消込みできなかった未消込みの請求データについて、請求グルーピング部30により、学習モデル81を用いた機械学習処理によってグルーピングする(S03)。そして、生成された請求データのグループ毎に、マッチング処理部50により未消込みの入金データとの突合を行い、マッチしたものについて消込処理部70により消込処理を行う(S04)。なお、本実施の形態では、ステップS02での単純な突合により消込みできなかった請求データをグルーピングの対象としているが、ステップS02での単純な突合を行わずに最初から請求データをグルーピングするようにしてもよい。
【0030】
その後、必要に応じて、アンマッチ処理部60により、ステップS04で消込みできずに残った請求データと入金データについて、消込みが可能な請求データと入金データの組合せの候補を抽出し、各候補について消込みの可能性を所定の手法(例えば、従来技術の特許文献1に記載されているような手法)によりスコア化して一覧をユーザに提示する(S05)。そして、ユーザの手動によりマッチさせる候補を特定して、消込処理部70により消込処理を行う(S06)。上述したように、ステップS05で算出されたスコアが最上位の候補により自動的に消込処理を行うようにしてもよい。
【0031】
その後、ステップS06でユーザにより特定された請求データのグループと入金データの組合せ(正解データ)を教師データとして機械学習処理により再学習を行い、ステップS03で用いる学習モデル81を更新し(S07)、処理を終了する。ステップS07の処理については、ステップS01~S06までの一連の入金消込処理とは非同期で所定のタイミングで個別に行うようにしてもよい。
【0032】
<入金消込みの例>
図3は、本発明の一実施の形態における入金データ12の具体的な例について概要を示した図である。入金データ12は、例えば、請求先(入金してきた得意先)、および実際の入金日と入金額の情報などを有する。入金データには、対応する請求データを特定する通し番号等の情報が含まれていないものとする。また、
図4は、本発明の一実施の形態における消込済データ14の具体的な例について概要を示した図である。ここでは、
図3の例における入金データにより消込みすることができた請求データの例を示している。請求データは、例えば、請求先の得意先、入金予定日と請求金額、および請求内容を示す請求名などの情報を有する。
【0033】
例えば、
図3の例における上から2行の入金データ(いずれも請求先が「得意先A」で入金日が2023/05/01、2件の入金額の合計が¥700,000)により、
図4の例における上から3行の請求データ(いずれも請求先が「得意先A」で入金予定日が2023/05/01、3件の請求金額の合計が¥700,000)を消込みできたことを示している。このケースは、入金データと請求データがM:Nでマッチした場合の例である。
【0034】
なお、請求先が「得意先B」のデータでは、
図3の入金データにおける入金日と
図4の請求データにおける入金予定日が相違する(
図3の入金データにおける入金日の方が遅い)が、これは請求の際に想定(もしくは指定)された入金予定日よりも遅れて入金してくる得意先があることを示している。
【0035】
<請求データのグルーピング>
以下では、請求グルーピング部30による請求データのグルーピングについて説明する。本実施の形態では、1:1で入金データとマッチしない請求データについて、複数の請求データをグルーピングしてまとめた上で入金データと突合する。すなわち、得意先毎に、複数の請求データの内容や特徴から入金データ(どのようにまとめて入金されるか)を推測する形で請求データを入金単位となりそうなグループに分割する。これにより、請求データと入金データがM:Nでマッチ(請求データのグループと入金データが1:Nでマッチ)するような複雑なケースでも突合を効率的に行うことが可能となる。
【0036】
図5は、本発明の一実施の形態における請求データのグルーピングの例について概要を示した図である。上段の図は、未消込データ15に残っている請求データの例を示している。上述したように、これらの請求データについて得意先毎に入金データを推測して入金単位となりそうなグループに分割するのであるが、本実施の形態では、図の中段から下段に示すように各請求データを埋め込みベクトルにエンコーディングし、学習モデル81を用いた機械学習処理によりこれらベクトル間の類似を評価してクラスタリングする。そして、クラスタ毎に各ベクトルを逆変換して請求データに戻すことで各グループに含まれる請求データを得る。なお、埋め込みベクトル化する手段や、得られたベクトルを機械学習によりクラスタリングする手段については、公知の技術やツール等を適宜使用することができる。
【0037】
請求データから得られた埋め込みベクトルは有次元のベクトルであり、各要素やその値自体は特に意味を持つものではないが、機械学習による処理との親和性が高いため有効である。機械学習によりグルーピングされた結果、
図5の例では、下段に示すように請求データが「グループ1」と「グループ2」に分割されたことを示しており、その結果を見て後から請求日(2023/05/10か2023/05/11か)に基づいてグルーピングされたのであろうと推測することができる。すなわち、「得意先A」についてはこれまで請求日の単位でまとめて入金される傾向が強かったため、請求日の単位でまとめて入金される可能性が高いと推測したと考えることができる。
【0038】
請求データをどのようにグルーピングするかは学習モデル81次第であり、上記と異なって、例えば商品毎にまとめて入金される傾向が強い得意先については商品毎にグルーピングされる可能性が高い学習モデル81になるであろうことが想定される。一方、まとめて入金する単位に規則性が薄くランダムな場合では、グルーピングされた結果を後から見ても、機械学習による処理がブラックボックス化されていることから傾向を推測できない場合もあり得る。このような場合でも、グルーピングがされて請求データがまとめられればその分突合処理が効率化される可能性は高くなると考えられる。
【0039】
図6は、本発明の一実施の形態における請求データのグルーピングの他の例について概要を示した図である。上段の図は、未消込の請求データに係る請求グループデータ13の例を示している。ここでは各請求データが請求グループとして得意先毎に「グループ1」と「グループ2」に分割されていることを示している。この分割の結果を見て、「得意先A」については請求名が「保守料」かそれ以外かで分けて入金してくる傾向があることから、入金予定日と請求名(「保守料」かそれ以外か)の単位でグルーピングしたのであろうということが推測できる。また、「得意先B」については、請求から1か月遅れでまとめて入金される傾向があることから、(1か月遅れでの)入金予定日の単位でグルーピングしたのであろうということが推測できる。
【0040】
換言すれば、このようなグルーピングにより、グループ毎に請求データを集計した単位で入金がされる可能性が高いと推測したのであろうことが分かる。
図6の下段の図は、上段の図における請求データのグルーピングから推測される入金データの例を示している。実際の入金データがこれとマッチしていれば、当該入金データにより対応する請求グループ内の請求データを消し込むことができる。
【0041】
一方、実際の入金データがマッチしない場合(例えば、「得意先B」の2023/06/01の入金が¥300,000ではなく¥250,000であったような場合)は、例えば、ユーザの手動により、請求データのグルーピングについて他の請求データと入れ替えるなどの微調整を行ってもよいし、未消込の請求データについて請求グルーピング部30により再グルーピングを行って改めて突合を行ってもよい。
【0042】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である入金消込システム1によれば、複数の請求データを入金データの推測に基づいてグルーピングしてまとめることで、大量の請求データから入金データによる消込対象となる請求データの組合せの候補を効率的に特定し、請求データと入金データがM:Nでマッチ(請求データのグループと入金データが1:Nでマッチ)するような複雑なケースでも突合を効率的に行うことが可能である。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0044】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0045】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、請求データと入金データのマッチングを行う入金消込システムおよび入金消込プログラムに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…入金消込システム、
11…請求データ、12…入金データ、13…請求グループデータ、14…消込済データ、15…未消込データ、
20…データ入力部、30…請求グルーピング部、40…名寄せ処理部、50…マッチング処理部、60…アンマッチ処理部、70…消込処理部、80…学習処理部、
81…学習モデル