(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025050244
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
H03K 3/354 20060101AFI20250327BHJP
H03K 3/03 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
H03K3/354 B
H03K3/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023158937
(22)【出願日】2023-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 和樹
(72)【発明者】
【氏名】神橋 知治
(72)【発明者】
【氏名】吉野 浩
【テーマコード(参考)】
5J300
【Fターム(参考)】
5J300AA23
5J300LL01
(57)【要約】
【課題】Duty比が略50%となる矩形波交流信号を生成できる発振回路を提供する。
【解決手段】実施形態に係る発振回路は、リングオシレータと、リングオシレータの出力端に接続されたゲート端及び第1ノードに接続されたドレイン端を有する第1トランジスタと、第1ノードに接続されたドレイン端及びゲート端を有する第2トランジスタと、第1ノードに接続されたゲート端及び第2ノードに接続されたドレイン端を有する第3トランジスタと、第1ノードに接続されたゲート端及び第3ノードに接続されたドレイン端を有する第4トランジスタと、第2ノードに接続されたドレイン端及び第3ノードに接続されたソース端を有する第5トランジスタと、第2ノードに接続された入力端を有するバッファと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングオシレータと、
前記リングオシレータの出力端に接続されたゲート端及び第1ノードに接続されたドレイン端を有する第1トランジスタと、
前記第1ノードに接続されたドレイン端及びゲート端を有する第2トランジスタと、
前記第1ノードに接続されたゲート端及び第2ノードに接続されたドレイン端を有する第3トランジスタと、
前記第1ノードに接続されたゲート端及び第3ノードに接続されたドレイン端を有する第4トランジスタと、
前記第2ノードに接続されたドレイン端及び前記第3ノードに接続されたソース端を有する第5トランジスタと、
前記第2ノードに接続された入力端を有するバッファと、
を備えた、発振回路。
【請求項2】
前記第3ノードに接続されたドレイン端を有する第6トランジスタを更に備えた、
請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
第4ノードに接続されたドレイン端及びゲート端を有する第7トランジスタと、
前記第4ノードに接続された第1端を有する電流源と、
を更に備え、
前記第5トランジスタのゲート端及び前記第6トランジスタのゲート端は、前記第4ノードに接続される、
請求項2記載の発振回路。
【請求項4】
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、前記第3トランジスタ、及び前記第4トランジスタは、第1導電型を有し、
前記第5トランジスタ、前記第6トランジスタ、及び前記第7トランジスタは、第1導電型とは異なる第2導電型を有する、
請求項3記載の発振回路。
【請求項5】
前記リングオシレータは、
第1インバータ、第2インバータ、及び第3インバータと、
第1キャパシタ及び第2キャパシタと、
を含み、
前記第1インバータは、第5ノードに接続された入力端及び第6ノードに接続された出力端を有し、
前記第2インバータは、前記第6ノードに接続された入力端及び第7ノードに接続された出力端を有し、
前記第3インバータは、前記第7ノードに接続された入力端及び前記第5ノードに接続された出力端を有し、
前記第1キャパシタは、前記第6ノードに接続された第1端及び接地された第2端を有し、
前記第2キャパシタは、前記第7ノードに接続された第1端及び接地された第2端を有し、
前記第1トランジスタは、前記第5ノードに接続されたゲート端を有する、
請求項1記載の発振回路。
【請求項6】
前記第1キャパシタは、前記第6ノードに接続されたゲート端と、接地されたドレイン端及びソース端と、を有する第8トランジスタを含み、
前記第2キャパシタは、前記第6ノードに接続されたゲート端と、接地されたドレイン端及びソース端と、を有する第9トランジスタを含む、
請求項5記載の発振回路。
【請求項7】
前記第8トランジスタのゲート・ソース間容量、及び前記第9トランジスタのゲート・ソース間容量の各々は、前記第1トランジスタのゲート・ソース間容量と略等しく、
前記第8トランジスタのゲート・ドレイン間容量、及び前記第9トランジスタのゲート・ドレイン間容量の各々は、前記第1トランジスタのゲート・ドレイン間容量と略等しい、
請求項6記載の発振回路。
【請求項8】
前記第2インバータは、奇数個のインバータを含む、
請求項5記載の発振回路。
【請求項9】
リングオシレータと、
前記リングオシレータの出力端に接続された入力端と、第1出力端と、第2出力端と、を有するカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の前記第1出力端に流れる第1電流に基づくソース電流、及び前記カレントミラー回路の前記第2出力端に流れる第2電流に基づくシンク電流が入力される入力端を有するバッファと、
を備え、
前記ソース電流の大きさと、前記シンク電流の大きさとは、略等しい、
発振回路。
【請求項10】
前記カレントミラー回路の前記第1出力端は、
直列接続された2個のトランジスタの間に接続される、
請求項9記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
チャージポンプ回路の駆動用の発振器として、リングオシレータを用いた発振回路が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-61462
【特許文献2】特開平11-150467
【特許文献3】特開2001-292056
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Duty比が略50%となる矩形波交流信号を生成できる発振回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る発振回路は、リングオシレータと、リングオシレータの出力端に接続されたゲート端及び第1ノードに接続されたドレイン端を有する第1トランジスタと、第1ノードに接続されたドレイン端及びゲート端を有する第2トランジスタと、第1ノードに接続されたゲート端及び第2ノードに接続されたドレイン端を有する第3トランジスタと、第1ノードに接続されたゲート端及び第3ノードに接続されたドレイン端を有する第4トランジスタと、第2ノードに接続されたドレイン端及び第3ノードに接続されたソース端を有する第5トランジスタと、第2ノードに接続された入力端を有するバッファと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る発振回路を用いた半導体装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】
図2は、実施形態に係る発振回路の構成の一例を示す回路図。
【
図3】
図3は、実施形態に係る発振回路の動作時において、各ノードに印加される電圧及び各トランジスタを流れる電流の時間変動の一例を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。同じ文字を含んだ参照符号で表される要素を相互に区別する必要がない場合、これらの要素はそれぞれ文字のみを含んだ参照符号により参照される。
【0008】
以下の説明において、ある第1要素が別の第2要素に「接続されている」とは、第1要素が常時あるいは選択的に導電性となる中間要素を介して間接的に、又は中間要素を介することなく直接的に第2要素に接続されていることを含む。
【0009】
1. 構成
1.1 全体構成
まず、実施形態に係る発振回路を用いた半導体装置の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る発振回路を用いた半導体装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
図1に示すように、半導体装置100は、発振回路1及びチャージポンプ回路2を含む。発振回路1は、矩形波交流信号Frをチャージポンプ回路2に出力する。チャージポンプ回路2は、入力された矩形波交流信号Frをクロック信号として動作する。チャージポンプ回路2は、入力電圧を所定の電圧まで昇圧した昇圧信号Voutを、半導体装置100の外部に出力する。半導体装置100は、例えば、モーターコントロールドライバ(MCD:Motor Control Driver)に用いられる。
【0011】
1.2 発振回路の構成
次に、実施形態に係る発振回路の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係る発振回路の構成の一例を示す回路図である。
【0012】
発振回路1は、トランジスタ11、31、32、33、61、62、63、及び64、電流源12、抵抗13、キャパシタ14、トランジスタ群20、インバータ群40、キャパシタ群50、並びにバッファ70を含む。発振回路1は、インバータの遅延を利用して交流信号を生成し、出力する。
【0013】
トランジスタ11、31、32、33、61、62、63、及び64は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を含む。トランジスタ11、31、32、及び33は、例えば、P型MOSFETを含む。トランジスタ61、62、63、及び64は、例えば、N型MOSFETを含む。
【0014】
トランジスタ11は、ノードN1に接続されるドレイン端及びゲート端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、を有する。電圧VCCは、発振回路1を駆動する電源電圧である。
【0015】
電流源12は、ノードN1に接続される入力端と、電圧GNDを供給される出力端と、を有する。電圧GNDは接地電圧であり、例えば、0Vである。
【0016】
抵抗13は、ノードN1に接続される第1端と、ノードN2に接続される第2端と、を有する。
【0017】
キャパシタ14は、電圧VCCを供給される第1端と、ノードN2に接続される第2端と、を有する。
【0018】
抵抗13及びキャパシタ14は、併せてローパスフィルタとして機能する。すなわち、ある一定の周波数以上の信号を逓減させる。抵抗13及びキャパシタ14は、電流源に由来する高周波の雑音が、インバータ群40に重畳するのを抑制する。
【0019】
トランジスタ群20は、インバータ群40の各インバータに対して、それぞれ電流を供給する。トランジスタ群20は、n個のトランジスタを含む。nは、3以上の奇数である。
図2では、n=5の場合を示している。以下、n=5の場合について説明する。
【0020】
トランジスタ群20は、トランジスタ21、22、23、24、及び25を含む。トランジスタ21、22、23、24、及び25は、例えば、P型MOSFETを含む。
【0021】
トランジスタ21は、ノードN11に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN2に接続されたゲート端と、を有する。
【0022】
トランジスタ22は、ノードN12に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN2に接続されたゲート端と、を有する。
【0023】
トランジスタ23は、ノードN13に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN2に接続されたゲート端と、を有する。
【0024】
トランジスタ24は、ノードN14に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN2に接続されたゲート端と、を有する。
【0025】
トランジスタ25は、ノードN15に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN2に接続されたゲート端と、を有する。
【0026】
トランジスタ31は、ノードN3に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN2に接続されたゲート端と、を有する。
【0027】
トランジスタ32は、ノードN4に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端と、ノードN2に接続されたゲート端と、を有する。
【0028】
トランジスタ33は、ノードN5に接続されたドレイン端と、ノードN4に接続されたソース端と、ノードN2に接続されたゲート端と、電圧VCCを供給されるバックゲート端と、を有する。
【0029】
トランジスタ11、21、22、23、24、25、31、32、及び33は、カレントミラーCMC1を構成する。カレントミラーCMC1は、トランジスタ11に流れる電流をミラーし、トランジスタ21、22、23、24、25、31、32、及び33に流れる電流を決定する。
【0030】
インバータ群40は、トランジスタ群20に含まれるトランジスタの個数nと同数のインバータを含む。
図2に示す例では、5個のインバータを含む。以下、この場合について説明する。
【0031】
インバータ群40は、インバータ41、42、43、44、45を含む。インバータ41、42、43、44、45の各出力は、別のインバータに入力されており、この順にリング状に接続されている。以下、ある特定のインバータに対して、信号の入力元となるインバータを“前段”のインバータ、信号の出力先となるインバータを“後段”のインバータと呼ぶ。
【0032】
インバータ41は、例えば、トランジスタ41a及び41bを含む。トランジスタ41a及び41bは、例えば、N型MOSFETを含む。トランジスタ41aは、ノードN11に接続されたドレイン端及びゲート端と、ノードN12に接続されたソース端と、電圧GNDを供給されるバックゲート端と、を含む。トランジスタ41bは、ノードN12に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN11に接続されたゲート端と、を含む。
【0033】
インバータ42は、例えば、トランジスタ42a及び42bを含む。トランジスタ42a及び42bは、例えば、N型MOSFETを含む。トランジスタ42aは、ノードN12に接続されたドレイン端及びゲート端と、ノードN13に接続されたソース端と、電圧GNDを供給されるバックゲート端と、を含む。トランジスタ42bは、ノードN13に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN12に接続されたゲート端と、を含む。
【0034】
インバータ43は、例えば、トランジスタ43a及び43bを含む。トランジスタ43a及び43bは、例えば、N型MOSFETを含む。トランジスタ43aは、ノードN13に接続されたドレイン端及びゲート端と、ノードN14に接続されたソース端と、電圧GNDを供給されるバックゲート端と、を含む。トランジスタ43bは、ノードN14に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN13に接続されたゲート端と、を含む。
【0035】
インバータ44は、例えば、トランジスタ44a及び44bを含む。トランジスタ44a及び44bは、例えば、N型MOSFETを含む。トランジスタ44aは、ノードN14に接続されたドレイン端及びゲート端と、ノードN15に接続されたソース端と、電圧GNDを供給されるバックゲート端と、を含む。トランジスタ44bは、ノードN15に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN14に接続されたゲート端と、を含む。
【0036】
インバータ45は、例えば、トランジスタ45a及び45bを含む。トランジスタ45a及び45bは、例えば、N型MOSFETを含む。トランジスタ45aは、ノードN15に接続されたドレイン端及びゲート端と、ノードN11に接続されたソース端と、電圧GNDを供給されるバックゲート端と、を含む。トランジスタ45bは、ノードN11に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN15に接続されたゲート端と、を含む。
【0037】
インバータ群40に含まれるトランジスタのうち、トランジスタ41a、42a、43a、44a、及び45aは、プルアップ抵抗として機能する。トランジスタ41b、42b、43b、44b、及び45bは、当該インバータの出力を決定するスイッチとして機能する。
【0038】
インバータ41、42、43、44、及び45の各々は、前段のインバータから入力された信号を反転して、後段のインバータに出力する。すなわち、前段のインバータから“H”(High)レベルの電圧が入力された際、後段のインバータへ“L”(Low)レベルの電圧を出力する。前段のインバータから“L”レベルの電圧が入力された際、後段のインバータへ“H”レベルの電圧を出力する。
【0039】
キャパシタ群50は、トランジスタ群20に含まれるトランジスタの個数nよりも1つ少ない数のトランジスタを含む。
図2に示す例では、4個のトランジスタを含む。以下、この場合について説明する。
【0040】
キャパシタ群50は、例えば、トランジスタ51、52、53、及び54を含む。トランジスタ51、52、53、及び54は、例えば、MOSFETを含む。
【0041】
トランジスタ51は、ドレイン端とソース端とが短絡しているレプリカトランジスタである。トランジスタ51は、電圧GNDを供給されるドレイン端、ソース端、及びバックゲート端と、ノードN12に接続されたゲート端と、を有する。トランジスタ51は、ゲート端とドレイン端、及びゲート端とソース端との間に容量を有するキャパシタとして機能する。トランジスタ51のゲート・ドレイン間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ドレイン間容量と略等しい。トランジスタ51のゲート・ソース間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ソース間容量と略等しい。
【0042】
トランジスタ52は、ドレイン端とソース端とが短絡しているレプリカトランジスタである。トランジスタ52は、電圧GNDを供給されるドレイン端、ソース端、及びバックゲート端と、ノードN13に接続されたゲート端と、を有する。トランジスタ52は、ゲート端とドレイン端、及びゲート端とソース端との間に容量を有するキャパシタとして機能する。トランジスタ52のゲート・ドレイン間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ドレイン間容量と略等しい。トランジスタ52のゲート・ソース間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ソース間容量と略等しい。
【0043】
トランジスタ53は、ドレイン端とソース端とが短絡しているレプリカトランジスタである。トランジスタ53は、電圧GNDを供給されるドレイン端、ソース端、及びバックゲート端と、ノードN14に接続されたゲート端と、を有する。トランジスタ53は、ゲート端とドレイン端、及びゲート端とソース端との間に容量を有するキャパシタとして機能する。トランジスタ53のゲート・ドレイン間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ドレイン間容量と略等しい。トランジスタ53のゲート・ソース間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ソース間容量と略等しい。
【0044】
トランジスタ54は、ドレイン端とソース端とが短絡しているレプリカトランジスタである。トランジスタ54は、電圧GNDを供給されるドレイン端、ソース端、及びバックゲート端と、ノードN15に接続されたゲート端と、を有する。トランジスタ54は、ゲート端とドレイン端、及びゲート端とソース端との間に容量を有するキャパシタとして機能する。トランジスタ54のゲート・ドレイン間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ドレイン間容量と略等しい。トランジスタ54のゲート・ソース間容量は、後述するトランジスタ61のゲート・ソース間容量と略等しい。
【0045】
インバータ群40及びキャパシタ群50は、併せてリングオシレータROとして機能する。リングオシレータROは振幅電圧としてV0を有するクロック信号を出力する。電圧V0は、電圧VCCから、リングオシレータRO内部の負荷容量による電圧低下分を差し引いた電圧である。
【0046】
トランジスタ61は、ノードN3に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端と、ノードN11に接続されたゲート端と、を有する。トランジスタ61の閾値電圧は、0<α<1を満たす定数αと、リングオシレータROの振幅電圧V0を用いて、α×V0と表される。例えば、α=0.8である。
【0047】
トランジスタ62は、ノードN3に接続されたドレイン端及びゲート端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、を有する。
【0048】
トランジスタ63は、ノードN4に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN3に接続されたゲート端と、を有する。
【0049】
トランジスタ64は、ノードN5に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN3に接続されたゲート端と、を有する。
【0050】
トランジスタ62、63、及び64は、カレントミラーCMC2を構成する。カレントミラーCMS2は、トランジスタ62に流れる電流をミラーし、トランジスタ63及び64に流れる電流を決定する。
【0051】
バッファ70は、ノードN5に接続された入力端と、ノードN7に接続された出力端と、を有する。バッファ70は、入力される交流信号(例えば、台形波)を整形し、矩形波交流信号Frをチャージポンプ回路2に出力する。
【0052】
バッファ70は、例えば、インバータ71及び72を含む。インバータ71及び72の各々は、入力された信号を反転して出力する。すなわち、インバータ71及び72の各々は、“H”レベルの電圧が入力された際、“L”レベルの電圧を出力する。“L”レベルの電圧が入力された際、“H”レベルの電圧を出力する。
【0053】
インバータ71は、例えば、トランジスタ71a及び71bを含む。トランジスタ71aは、例えば、P型MOSFETを含む。トランジスタ71aは、ノードN6に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN5に接続されたゲート端と、を含む。トランジスタ71bは、例えば、N型MOSFETを含む。トランジスタ71bは、ノードN6に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN5に接続されたゲート端と、を含む。
【0054】
インバータ72は、例えば、トランジスタ72a及び72bを含む。トランジスタ72aは、例えば、P型MOSFETを含む。トランジスタ72aは、ノードN7に接続されたドレイン端と、電圧VCCを供給されるソース端及びバックゲート端と、ノードN6に接続されたゲート端と、を含む。トランジスタ72bは、例えば、N型MOSFETを含む。トランジスタ72bは、ノードN7に接続されたドレイン端と、電圧GNDを供給されるソース端と、ノードN6に接続されたゲート端及びバックゲート端と、を含む。
【0055】
バッファ70は、電源電圧VCCの半分の高さである、電圧VCC/2を閾値電圧とする。すなわち、ノードN5の電圧がVCC/2よりも高い場合、バッファ70はVCCを出力し、ノードN5の電圧がVCC/2よりも低い場合、バッファ70はGNDを出力する。
【0056】
2.動作
実施形態に係る発振回路の動作について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施形態に係る発振回路の動作時において、各ノードに印加される電圧及び各トランジスタを流れる電流の時間変動の一例を示す波形図である。
図3の部分(a)は、リングオシレータROの出力信号である、ノードN11に印加される電圧の時間変動を示す。
図3の部分(b)は、ノードN3に印加される電圧の時間変動を示す。
図3の部分(c)は、ノードN4に印加される電圧の時間変動を示す。
図3の部分(d)は、ノードN6に印加される電圧の時間変動を示す。
図3の部分(e)は、ノードN7に印加される電圧の時間変動を示す。
図3の部分(f)は、トランジスタ33を流れるドレイン電流の時間変動を示す。
図3の部分(g)は、トランジスタ64を流れるドレイン電流の時間変動を示す。
【0057】
インバータ群40に電流が流れると、各インバータが、“H”レベルの電圧と“L”レベルの電圧とを、一定周期Tで交互に出力する。すなわち、リングオシレータROは、クロック出力を生成する。リングオシレータROの出力端であるノードN11に印加される電圧は、
図3の部分(a)に示されるように変動する。
【0058】
図3の部分(a)に示されるように、ノードN11に印加される電圧の波形は、電圧の立上り時と電圧立下り時とで、非対称な形状を示す。具体的には、立上り時には、緩やかに電圧が上昇するが、立下り時には、速やかに電圧が低下する。これは、立上り時には、インバータ群40の各段において、キャパシタ群50及びトランジスタ61の寄生容量の充電が行われ、電圧の上昇が遅くなるためである。
【0059】
図3の部分(a)に示すように、同一の発振サイクルにおいて、ノードN11に印加される電圧がα×V0まで上昇する時刻をt1とする。また、ノードN11に印加される電圧がGNDまで低下する時刻をt3とする。
【0060】
時刻t1以前の期間において、
図3の部分(b)、(c)、及び(d)に示されるように、ノードN3には電圧VCCが印加され、ノードN4には電圧V1が印加され、ノードN5にはGNDが印加される。なおこの時、トランジスタ32は、ドレイン・ソース間の電位差が大きいため、ピンチオフ状態になっており、電圧V1とは、電源電圧VCCから、トランジスタ32のピンチオフ電圧分(例えば、0.4V)低下した電圧である。
【0061】
時刻t1において、
図3の部分(b)に示されるように、ノードN3の電圧がGNDまで速やかに低下する。この時、トランジスタ32のピンチオフ状態は解消され、
図3の部分(c)で示されるように、ノードN4の電圧はVCCまで速やかに上昇する。その結果、時刻t1において、ノードN5の電圧はGNDであり、トランジスタ33のドレイン・ソース間に電位差VCCが生じるため、
図3の部分(f)で示されるように、トランジスタ33には大きさICCでドレイン電流が流れる。トランジスタ33のドレイン電流は、バッファ70の入力端に対するソース電流となり、
図3の部分(d)に示されるように、ノードN5の電圧は、時刻t1から徐々に上昇する。
【0062】
同一の発振サイクルにおいて、時刻t1の後、初めてノードN5の電圧がVCCまで上昇した時刻をt2とする。時刻t2において、トランジスタ33のドレイン・ソース間の電位差が無くなるため、
図3の部分(f)で示されるように、トランジスタ33を流れるドレイン電流はストップする。
【0063】
時刻t2から時刻t3までの期間において、
図3の部分(b)、(c)、及び(d)に示されるように、ノードN3にはGNDが印加され、ノードN4及びノードN5には電圧VCCが印加される。
【0064】
時刻t3において、トランジスタ61のドレイン端とソース端とが絶縁されるため、
図3の部分(b)に示されるように、ノードN3の電圧が徐々に上昇を始める。トランジスタ62、63、及び64は、カレントミラーCMC2を形成しているため、ノードN3の電圧変動に応じた電流が各トランジスタに流れる。その結果、
図3の部分(c)に示されるように、ノードN4の電圧は、徐々に低下する。また、時刻t3において、ノードN5の電圧はVCCであり、トランジスタ64のドレイン・ソース間に電位差VCCが生じるため、
図3の部分(f)に示されるように、トランジスタ64に大きさICCでドレイン電流が流れる。トランジスタ64のドレイン電流は、バッファ70の入力端に対するシンク電流となり、
図3の部分(d)に示されるようにノードN5の電圧は、時刻t3から徐々に低下する。
【0065】
同一の発振サイクルにおいて、時刻t3の後、初めてノードN5の電圧がGNDまで低下した時刻をt4とする。時刻t4において、トランジスタ64のドレイン・ソース間の電位差が無くなるため、
図3の部分(f)で示されるように、トランジスタ64を流れるドレイン電流はストップする。なお、
図3の部分(b)に示されるように、時刻t4の前後でノードN3の電圧は、VCCまで上昇する。また、
図3の部分(c)に示されるように、時刻t4より前に、ノードN4の電圧はV1まで低下し、以降は電圧V1を維持する。以上で、各ノードの電位状態は、ノードN11の電圧が上昇を始める前の状況にリセットされる。
【0066】
時刻t1からt2にかけて、トランジスタ33に流れるドレイン電流の大きさICC及びドレイン・ソース間の電位差と、時刻t3からt4にかけて、トランジスタ64に流れるドレイン電流の大きさICC及びドレイン・ソース間の電位差は、等しい。ゆえに、時刻t1からt2までの期間の長さと、時刻t3からt4までの期間の長さは等しくなる。したがって、
図3の部分(d)に示すノードN5における、時刻t1からt2にかけての電圧上昇時のスルーレートと、時刻t3からt4にかけての電圧低下時のスルーレートとが、揃う。
【0067】
図3の部分(d)に示されるノードN5の電圧変動をバッファ70に入力すると、
図3の部分(e)に示される矩形波信号が出力される。出力された矩形波信号の周期T´は、インバータ群40の出力周期Tと略等しい。また、
図3の部分(e)に示される、出力電圧がVCCである期間長(A)と出力電圧がGNDである期間長(B)とは、略等しい。
【0068】
3. 効果
本実施形態に係る構成であれば、分周器等を用いることなく、Duty比が略50%となる矩形波交流信号を生成することが可能な発振回路を提供できる。本効果について、詳述する。
【0069】
本実施形態に係る構成は、クロック出力にカレントミラー回路を接続し、カレントミラー回路の出力をノードN5の上流と下流で受けている。この構成により、ノードN5の上流に接続されたトランジスタ33を流れるソース電流と、ノードN5の下流に接続されたトランジスタ64を流れるシンク電流が同じ大きさになるため、出力されたクロック信号における、電圧上昇時のスルーレートと、電圧低下時のスルーレートが略等しくなる。したがって、このクロック信号を整形し得られた矩形波交流信号Frは、Duty比が略50%に揃えられる。このことにより、例えばチャージポンプのような、システムの挙動が入力されるクロック信号のDuty比に依存するシステムの特性を満たすことができる。また、分周器等を追加することなくクロック信号のDuty比を略50%に揃えることができるため、消費電力の増加や、チップ面積の増大を抑制できる。
【0070】
更に、本実施形態に係る構成であれば、ノードN5の上流に接続されるカレントミラーの出力端を、2段積みのトランジスタ32及び33の中間部に接続することで、ノードN5の電圧低下時に、電圧がGNDまで低下するように制御している。このことにより、ノードN5の電圧がGNDまで低下しきらないことに伴う、Duty比が略50%に揃わなくなる現象を抑制する。
【0071】
また、分周器を用いずにDuty比を50%に揃える構成においては、リングオシレータから出力されるクロック信号のDuty比が50%であることが求められる。本実施形態に係る構成では、インバータ群の出力端に接続されたトランジスタ61のゲート・ドレイン間容量及びゲート・ソース間容量と同じ容量を有するトランジスタ51、52、53及び54を、インバータ群40の各段にレプリカとして接続する。この構成により、インバータ群40の各段において負荷容量が揃うため、リングオシレータROから出力される信号のDuty比を略50%に補正できる。
【0072】
4. 変形例
以上で説明された実施形態に係る発振回路1は、種々の変形が可能である。以下に、変形例を示す。
【0073】
発振回路1におけるインバータ41、42、43、44、45、71、及び72の構成は、本実施形態に記載されたものに限らない。例えば、インバータ41、42、43、44、及び45が、P型MOSFET及びN型MOSFETから構成されていても良い。
【0074】
5. その他
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…発振回路
2…チャージポンプ回路
11、21、22、23、24、25、31、32、33、41a、41b、42a、42b、43a、43b、44a、44b、45a、45b、51、52、53、54、61、62、63、64、71a、71b、72a、72b…トランジスタ
12…電流源
13…抵抗
14…キャパシタ
20…トランジスタ群
40…インバータ群
41、42、43、44、45、71、72…インバータ
50…キャパシタ群
70…バッファ
100…半導体装置
RO…リングオシレータ