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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005031
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/44 20060101AFI20250108BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A61K9/44
A61K47/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105015
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 修平
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA46
4C076BB01
4C076DD29A
(57)【要約】
【課題】外観不良の発生を抑制する錠剤を提供する。
【解決手段】錠剤10は、柱状の胴部12と、高さ方向Hに突出した表面を有するキャップ部14と、キャップ部14に印刷された印刷部16と、を備える。キャップ部14は、高さ方向からみて円形状であって、高さ方向Hに交差する面方向に広がる中央部18と、中央部18の外縁に連続した周縁部20と、を有する。胴部12の中心軸を含む断面視で、中央部18の表面の曲率半径R1と、周縁部20の表面の曲率半径R2とが、高さ方向Hからみたキャップ部14の直径をRCとした場合、それぞれ下記式(1)と式(2)とにより算出された値の±10%の範囲内の値である。非印刷領域24は、キャップ部14の表面積の少なくとも2.6%の領域を含み、かつキャップ部14の表面積の14.5%以下の領域である。印刷部16は、非印刷領域24を除く印刷領域26に設けられている。
R1=3.226RC-6.983・・・(1)
R2=0.437RC-0.231・・・(2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の胴部と、
前記胴部の高さ方向に突出するキャップ部と、
前記キャップ部に印刷された印刷部と、を備え、
前記キャップ部は、
前記高さ方向からみて円形状であって、
前記高さ方向に交差する面方向に広がる中央部と、
前記中央部の外縁に連続した周縁部と、を有し、
前記中央部の表面は、
前記キャップ部の中心から前記面方向へ円状に広がる非印刷領域と、
前記非印刷領域の外側に印刷領域と、を有し、
前記高さ方向からみた前記キャップ部の直径をRCとした場合、前記胴部の中心軸を含む断面視で、前記中央部の表面の曲率半径R1と、前記周縁部の表面の曲率半径R2とが、それぞれ下記式(1)と式(2)とにより算出された値の±10%の範囲内の値であり、
前記非印刷領域は、前記キャップ部の表面積の少なくとも2.6%の領域を含み、かつ前記キャップ部の表面積の14.5%以下の領域であり、
前記印刷部は、前記非印刷領域を除く前記印刷領域に設けられている、錠剤。
R1=3.226RC-6.983・・・(1)
R2=0.437RC-0.231・・・(2)
【請求項2】
前記印刷部は、直線状に並べられた複数の文字を含む、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
前記キャップ部が、前記胴部の前記高さ方向の少なくとも一端に設けられている、請求項1に記載の錠剤。
【請求項4】
前記錠剤が、酸化マグネシウムを主成分とする錠剤である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項5】
前記錠剤は、色素と、樹脂と、水と、エタノールとを含むインクによって印刷され、
前記インクに含まれる前記エタノールの含有量は、前記インクの組成物全体に対して5~60重量%である請求項1に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤に関し、特に、文字、記号、若しくは図形を示す識別情報が印刷された錠剤にする。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化マグネシウム粒子を主成分とする錠剤は、制酸乃至緩下用の錠剤として知られ、最近その使用量は拡大しつつある。この酸化マグネシウム粒子を含有する錠剤は、例えば、酸化マグネシウム粒子に結合剤及び崩壊剤の添加剤を配合し、打錠化して製造される。例えば、特許文献1は、崩壊時間が10秒以下と短く、従って服用時に飲み易い、酸化マグネシウム粒子高含有の錠剤を開示している。上記特許文献1に記載の錠剤は、打錠化が容易で錠剤として成形し易いという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-146889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、錠剤に対しては、製造工程における割れ欠けを抑制し得るようなさらなる改良が要望されていた。さらに、錠剤は、例えば、インクを用いた印刷によって表面に識別情報が施されることがあり、錠剤の製造工程において、例えば、錠剤同士が接触して、識別情報の欠けが生じる場合があるという懸念があった。
【0005】
本発明は、外観不良の発生を抑制する錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、例えば、以下の態様を提供する。
【0007】
[態様1]
錠剤は、柱状の胴部と、キャップ部と、印刷部とを備える。上記キャップ部は、上記胴部の高さ方向に突出した形状を有する。さらに、上記錠剤のキャップ部には印刷部を有する。上記印刷部は、上記キャップ部に印刷されている。上記キャップ部は、上記高さ方向からみて、円形状である。上記キャップ部は、中央部と、周縁部と、を有する。上記中央部は、上記高さ方向に交差する面方向に広がっている。上記周縁部は、上記中央部の外縁に連続している。上記中央部の表面は、非印刷領域と、印刷領域と、を有している。上記非印刷領域は、上記キャップ部の中心から上記面方向へ、円状に広がっている。上記印刷領域は、上記非印刷領域の外側に設けられている。上記錠剤は、上記高さ方向からみた上記キャップ部の直径をRCとした場合、上記胴部の中心軸を含む断面視で、曲率半径R1と、曲率半径R2とが、それぞれ下記式(1)と式(2)とにより算出された値の±10%の範囲内の値である。上記曲率半径R1は、上記中央部の表面における曲率半径を示す。上記曲率半径R2は、上記周縁部の表面における曲率半径を示す。上記非印刷領域は、上記キャップ部の表面積の少なくとも2.6%の領域を含む。上記非印刷領域は、上記キャップ部の表面積の14.5%以下の領域を含む。上記印刷部は、上記非印刷領域を除く上記印刷領域に設けられている。
R1=3.226RC-6.983・・・(1)
R2=0.437RC-0.231・・・(2)
【0008】
[態様2]
上記印刷部は、態様1に記載の錠剤において、直線状に並べられた複数の文字を含む。
【0009】
[態様3]
上記キャップ部は、態様1又は態様2に記載の錠剤において、上記胴部の上記高さ方向の少なくとも一端に設けられている。
【0010】
[態様4]
上記錠剤は、態様1から態様3のいずれか1つに記載の錠剤において、酸化マグネシウムを主成分とする錠剤である。
【0011】
[態様5]
上記錠剤は、態様1から態様4のいずれか1つに記載の錠剤において、色素と、樹脂と、水と、エタノールとを含むインクによって印刷される。上記インクに含まれる上記エタノールの含有量は、上記インクの組成物全体に対して5~60重量%である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による錠剤は、外観不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る錠剤の平面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3】実施例の説明に供する図であり、図3(A)はデザイン1、図3(B)はデザイン2を示す図である。
図4】実施例の説明に供する図であり、文字欠けの発生領域を分類するために用いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[錠剤]
以下、本発明の実施形態に係る錠剤の形状について図を参照して説明する。錠剤10は、図1図2に示すように、高さ方向Hと、高さ方向Hに交差する面方向とを有し、高さ方向Hに所定の長さを有する円柱状の胴部12と、胴部12の高さ方向Hの両端にそれぞれ設けられたキャップ部14と、キャップ部14に設けられた印刷部16と、を備える。錠剤10は、経口剤としての飲みやすさを考慮すれば特に限定されないが、例えば、直径の上限は14mm以下、又は10mm以下とすることができ、下限は5mm以上、又は6mm以上とすることができる。高さ方向Hの長さの上限も同様に特に制限されないが、8mm以下、又は7mm以下、下限は3mm以上、又は4mm以上とすることができる。
【0015】
本実施形態のキャップ部14は、胴部12の高さ方向Hの両端において同じ形状を有している。キャップ部14は、胴部12の高さ方向Hの両端のうち、代表して高さ方向Hの上側に設けられたキャップ部14についてのみ説明する。キャップ部14は、高さ方向Hに突出した表面を有する。キャップ部14の高さは、胴部12の一端としての上端13からキャップ部14の頂点15を示す。キャップ部14の高さは、図2の場合、キャップ部14の中心までの高さ(以下、「キャップ深さ」と呼ぶ)LHとなる。キャップ部14の高さは、特に限定されないが、例えば、0.6mm以上1.0mm以下が好ましく、0.7mm以上0.9mm以下がより好ましい。キャップ部14は、面方向に広がる中央部18と、中央部18の外縁に連続した周縁部20とを有する。図1において、一点鎖線22は、中央部18と周縁部20の境界を示している。中央部18は、一点鎖線22よりキャップ部14の半径方向内側の円盤状の部分である。
【0016】
中央部18は、表面に、非印刷領域24と、印刷領域26とを有する。印刷領域26は、非印刷領域24の外側に広がる環状の領域である。非印刷領域24は、キャップ部14の中心から面方向へ円状に広がる領域である。非印刷領域24は、キャップ部14の表面積の少なくとも2.6%の領域を含む。そして非印刷領域24は、キャップ部14の表面積の14.5%以下の領域である。なお、キャップ部14の表面積とは、平面視におけるキャップ部14の面積である。キャップ部14の表面積は、具体的には、錠剤10を平面に置いた状態で、キャップ部14を高さ方向Hから見た場合に現れるキャップ部14の外縁を通る高さ方向Hに平行な直線と、平面との交点同士を結んで形成される形状の面積である。すなわち、高さ方向から見たキャップ部14が直径RCの円形状であるので、キャップ部14の表面積は、直径RCの円の面積である。図1及び図2に示す錠剤10の場合、胴部12は円柱状である。胴部12の直径とキャップ部14の直径とは同じである。
【0017】
図1において、二点鎖線28は、非印刷領域24と印刷領域26の境界を示している。すなわち、二点鎖線28は、キャップ部14の中心から面方向に円状に広がる領域の外縁を示している。非印刷領域24は、キャップ部14の表面積の2.6%以上14.5%以下の面積を占める領域内で適宜に設定される。非印刷領域24は、二点鎖線28よりキャップ部14の半径方向内側の円盤状の領域である。印刷領域26は二点鎖線28より半径方向外側からキャップ部14の外縁までの環状の領域である。印刷領域26の外縁(図示しない)は、キャップ部14の表面積の33%以上68%以下の面積を占める領域内で適宜に設定される。
【0018】
周縁部20は、一点鎖線22より外側の環状の部分である。周縁部20は、キャップ部14の外縁を含む。周縁部20は、少なくとも一部が胴部12と接続されている。周縁部20は、内縁が中央部18と接続されている。周縁部20は、外縁が胴部12の上端13と接続されている。印刷領域26の外縁は、中央部18と周縁部20との境界(一点鎖線22)より内側でもよい。
【0019】
胴部12の中心軸を含む断面図である図2に示すように、中央部18の表面の曲率半径R1と、周縁部20の表面の曲率半径R2とは、それぞれ下記式(1)及び式(2)で算出された値の±10%の範囲内の値である。
R1=3.226RC-6.983・・・(1)
R2=0.437RC-0.231・・・(2)
【0020】
なお、RCはキャップ部14の平面視における直径である。本実施形態の場合、キャップ部14の直径RCは、錠剤10の胴部12の直径と同じである。
上記式(1)で算出された値の±10%の範囲内の値を、以下、上記式(1)で表される値と呼ぶ。同様に、上記式(2)で算出された値の±10%の範囲内の値を、以下、上記式(2)で表される値と呼ぶ。
【0021】
周縁部20の表面は、高さ方向Hに対する進入角度αが、30度以上35度以下であるのが好ましく、30度以上34度以下がより好ましい。本明細書において進入角度αは、水平方向と周縁部20表面の接線TLとの間の角度をいう。本実施形態の場合、水平方向は、II-II線断面図において、胴部12の高さ方向Hの上端13同士を結ぶ直線に平行な方向である。キャップ部14の中心を基準とする、中央部18と周縁部20との境界(一点鎖線22)の位置は、半径方向の長さLXと高さ方向の長さLHとにより表わされ、LXとLHで表される座標を交点座標Cと呼ぶ。なお、周縁部20は、曲率半径R2を備えた部位に加え、より表面の曲率半径が大きく、且つ表面積が小さい外端部を有していてもよい。
【0022】
印刷部16は、キャップ部14の非印刷領域24を除く印刷領域26に設けられている。印刷部16は、印刷領域26におけるキャップ部14の表面にインクを塗布する印刷によって形成される。印刷部16は、目視により視認することができれば、例えば、印字の場合、大きさ、字の太さ、書体は特に限定されない。印刷部16は、例えば、図1に示すように、錠剤10に含まれる有効成分の質量と、錠剤10の製品名とを含んでもよい。また、印刷部16は、例えば、錠剤10に含まれる有効成分の質量に応じて、錠剤10の種類ごとに着色の色を変えても良い。
【0023】
印刷部16は、印刷領域26において、例えば、直線状に並べられた複数の文字を含むことが、好ましい。印刷部16は、識別情報を構成する複数の文字が直線状に並べられていることによって、視認性に優れる。印刷部16は、印刷領域26において、例えば、環状に並べられた複数の文字を含んでもよい。印刷部16は、識別情報を構成する複数の文字が環状に並べられることによって、直線状に並べられたものと比較して、より文字数を多く確保することができる。
【0024】
錠剤10は、中央部18の表面の曲率半径R1が上記式(1)で表される値である。錠剤10は、周縁部20の表面の曲率半径R2が上記式(2)で表される値であることによって、より強固な形状にできるので、錠剤10の割れ欠けが抑制できる。
【0025】
非印刷領域24は、錠剤10を平面に載置した場合に当該平面に接触しやすい領域である。そのため、非印刷領域24は、製造工程において、例えば、錠剤10を搬送する搬送面、及び他の錠剤と接触する可能性が高い。錠剤10は、非印刷領域24を除く印刷領域26に印刷部16を設けたことにより、錠剤10の製造工程において、例えば、錠剤10同士が接触した場合の文字欠けの発生が抑制される。
【0026】
錠剤10は、中央部18の表面の曲率半径R1が、上記式(1)で表される値であるので、錠剤10の割れ欠けをより確実に抑制できる。同様に錠剤10は、周縁部20の表面の曲率半径R2が、上記式(2)で表される値であるので、錠剤10の割れ欠けをより確実に抑制できる。したがって、本実施形態の錠剤10は、錠剤の割れ欠け、及び印字の文字欠けの発生を抑制することによって、外観不良の発生を抑制することができる。
【0027】
錠剤10は、胴部12を備えることによって、所望の大きさ及び質量を有することができる。本実施形態の錠剤10は、胴部12を備える場合について説明したが、本発明はこれに限らない。錠剤10は、胴部12を有さず、キャップ部14のみで形成してもよい。また、錠剤10は、胴部12の高さ方向Hの両端にそれぞれキャップ部14を備える場合について説明したが、本発明はこれに限らず、胴部12の高さ方向Hの一方にのみキャップ部14を有することとしてもよい。
【0028】
本実施形態の場合、胴部12は円柱状である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、胴部12は、隅丸形状であるのが好ましく、三角柱、楕円柱、四角柱、多角柱でもよい。また、「柱状」とは必ずしも細長い形状に限定されるものではなく、高さ方向の長さより面方向の長さの方が大きい形状を含む。胴部12は、胴部12とキャップ部14の形状が異なる場合、胴部12の一部がキャップ部14の外縁から面方向の外側へ突出していてもよい。また、胴部12は、胴部12とキャップ部14の形状が異なる場合、キャップ部14の一部が胴部12から面方向の外側へ突出していてもよい。
【0029】
錠剤10は、胴部12の高さ方向Hの両端にそれぞれ設けられたキャップ部14に、印刷部16をそれぞれ有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、一方のキャップ部14にのみ印刷部16を有してもよい。
【0030】
錠剤10は、酸化マグネシウムを主成分として含んでもよい。これにより、錠剤の割れ欠け、及び印字の文字欠けの発生が抑制された、酸化マグネシウムを主成分とする錠剤を得ることができる。さらに、錠剤10は、後述する特徴を備えることによって、錠剤の割れ欠けの発生が抑制される。以下、錠剤10が酸化マグネシウムを主成分として含む場合について詳細に説明する。
【0031】
[摩損度]
本明細書において「摩損度」とは、錠剤10の衝撃に対する摩損性及び脆さの指標であって、「第十七改正日本薬局方、参考情報・錠剤の摩損度試験法」に記載の方法で測定できる。具体的には、6.5gに近い量の錠数に対し、錠剤摩損度計(富山産業株式会社製、錠剤摩損度試験器 TFT-1200)を用いて、100回転(24~26回転/分)の摩損を試験錠剤に与え、摩損前の錠剤初期質量と摩損後の錠剤質量を測定し、下記の式3に従い摩損度を算出することにより求めることができる。
【0032】
【数1】
【0033】
本実施形態の錠剤10の摩損度の範囲は、上記測定法を用いた場合、上限としては、0.40%未満であればよいが、中でも0.35%未満、さらには0.30%未満が好ましい。一方で、摩損度は、低ければ低いほうが望ましいため下限は特に設けない。
【0034】
[キャッピング]
本明細書において「キャッピング」とは、錠剤10の上面又は下面部分が断面片として剥離することを指す。キャッピングは、例えば、錠剤製造過程の打錠時、輸送時、分包時の衝撃により発生する。キャッピング発生率は、カセットローター試験により求めることができる。より具体的には、キャッピング発生率は、高さ2mの位置にセットしたカセットローターより錠剤を排出させ、落下した錠剤よりキャッピング錠数をカウントする。キャッピング発生率は、十分な数として、例えば、100錠の試験錠剤を試験する。キャッピング発生率は、100錠の試験錠剤を試験したものの内、キャッピングが発生した錠剤の数をカウントし、その割合を算出する。カセットローターは、例えば、TOSHO製、マグミット錠500mg用を用いることができる。なお、キャッピング発生率の算出の際は、使用する床材仕様として、コンクリート金ごて+エポキシ系塗床材+ペースト工法(厚み2mm)(ABC商会)ケミクリートE又はその同等品仕様を採用することができる。
【0035】
【数2】
【0036】
本実施形態の錠剤10のキャッピング発生率の範囲は、上記測定法を用いた場合、12%未満、中でも11%未満、さらには10%未満が好ましい。一方で、キャッピング発生率は低ければ低いほうが望ましいため下限は特に設けない。
【0037】
[硬度]
本明細書において「硬度」とは、錠剤の硬さの指標であって、錠剤硬度計で測定できる。錠剤硬度計は、例えば、岡田精工(株)のDC-50を用いることができる。硬度は、例えば、錠剤硬度計を用いて、直径方向の錠剤硬度を測定することで求めることができる。錠剤は、硬度が低すぎると摩損度が上昇するため、下限としては30N以上、中でも40N以上、さらには50N以上が好ましい。一方で、錠剤は、硬度がより高いほうが望ましいため上限を特に設けない。
【0038】
[崩壊時間]
本明細書において、「崩壊時間」とは、溶液中における錠剤の崩壊しやすさの指標である。崩壊時間は、第十七改正日本薬局方、一般試験法・崩壊試験法により測定することができる。崩壊試験器を用いて、崩壊時間を測定することにより求めることができる。より具体的には、「崩壊時間」は、適切な数として、例えば、6錠の試験錠剤の試験溶液とし、水における崩壊時間を崩壊試験器により測定する。崩壊試験器は、例えば、富山産業株式会社製、崩壊試験器 NT-20HSを用いることができる。錠剤は、崩壊時間が適切であると服用により口腔内で短時間で崩壊する飲み易い錠剤が提供できるため好ましい。適切な崩壊時間の上限としては、20秒以下、中でも15秒以下、さらには11秒以下が好ましい。適切な崩壊時間の下限は特に制限されないが、0.5秒以上、又は1秒以上が好ましい。
【0039】
[セルロース及び/又はセルロース誘導体]
本明細書において「セルロース」とは、β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した(C10で表される直鎖状高分子を指し、例えば、結晶セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロースが挙げられる。「セルロース誘導体」とは、このようなセルロース分子中のヒドロキシ基に、エーテル結合あるいはエステル結合により異なる置換基を導入したものを指し、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。本明細書において定義される「セルロース及び/又はセルロース誘導体」は、上述の「セルロース」及び「セルロース誘導体」から選択される少なくとも1種を指す。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとは、極めて少量のヒドロキシプロポキシ基をグルコース環に導入したセルロース、つまり低いレベルでO-(2-ヒドロキシプロピル)化したモル置換度=0.2~0.4のセルロースを指す。このようなセルロース誘導体の形状としては、例えば、粉末状、粒子状、微粒子状がある。
【0040】
セルロース及び/又はセルロース誘導体は、例えば、旭化成株式会社の各種グレードのセオラス(登録商標)が使用できる。セルロース及び/又はセルロース誘導体は、具体的には、セオラス(登録商標)PH-101、UF-711、PH-102、PH-200、PH-301、PH-302、PH-20JP、UF-702、KG-802、KG-1000の結晶セルロースを使用できる。
【0041】
[酸化マグネシウム粒子]
【0042】
本実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、マグネシウムの酸化物(MgO)の粒子である。本実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、水酸化マグネシウム粒子を焼成して得ることができる。例えば、レーザー回折散乱法による平均粒子径が1~10μmの水酸化マグネシウムを600~1000℃で焼成することにより得ることができる。酸化マグネシウム粒子は、例えば、協和化学工業(株)製の重質グレード、神島化学工業(株)製の粉末グレード、又は富田製薬(株)製の軽質グレード、及び重質グレードの日局酸化マグネシウムを使用できる。
【0043】
本実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、粉末状又は顆粒状のいずれでもよいが、顆粒状の方が打錠機の摩耗防止効果に優れ、しかもより形状保持安定性に優れた高含有量の錠剤10を得ることができる。
【0044】
本実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、限定されるものではないが、所定の粒子径を有していることが好ましい場合がある。レーザー回折散乱法で測定される酸化マグネシウム粒子の平均粒子径の上限は、例えば、40μm以下、又は20μm以下、又は10μm以下とすることができる。酸化マグネシウム粒子の平均粒子径を上述の上限以下とすることにより、錠剤崩壊時の懸濁粒子径が小さくなり、口腔内でのザラツキが少ない錠剤が得られるという効果が得られる場合がある。一方、当該平均粒子径の下限は、制限されるものではないが、製造上の限界及び費用対効果から、例えば、0.25μm以上、又は0.5μm以上、又は1μm以上とすることができる。
【0045】
本実施形態の酸化マグネシウム粒子及びその原料となる水酸化マグネシウム粒子の平均粒径及び平均粒子径は、レーザー回折散乱法による測定装置で測定することができる。レーザー回折散乱法による測定は、例えば、マイクロトラックベル株式会社 MT3300EX2の粒度分布測定器を用いることにより達成できる。
【0046】
本実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子の嵩密度は、高過ぎると硬度低下を引き起こす場合があるので、上限としては、0.8g/mL以下、又は0.7g/mL以下とすることができる。一方で、嵩密度が低過ぎるとキャッピング及びラミネーション引き起こす場合があるので、下限としては、0.1g/mL以上、又は0.2g/mL以上とすることができる。嵩密度は、例えば、100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて測定することができる。
【0047】
本実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子の安息角は、大き過ぎると流動性悪化から打錠時の錠剤質量バラツキに繋がる場合があるので、上限としては、50°以下、又は48°以下とすることができる。一方で、安息角は低ければ低いほうが望ましいため下限は特に設けない。安息角は、例えば、株式会社セイシン企業製のマルチテスターMT-1を用いて測定することができる。
【0048】
[空隙率]
本実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、インクの耐光性の観点から、空隙率を所定の範囲内で調整することが好ましい。酸化マグネシウム粒子の空隙率は、例えば、30.0%以上55.0%以下が好ましく、40.0%以上50.0%以下がより好ましい。空隙率を上述の範囲とすることにより、空隙にインクが浸透することで、浸透したインクまで光が届きにくくなり、インクの安定性、耐光性、ひいては退色性が向上するという効果が得られる場合がある。さらに、酸化マグネシウム粒子は、インクに含まれるエタノール、樹脂等の配合によって、にじみや退色をさらに抑制しやすくできる。
【0049】
[錠剤の成分]
錠剤10は、酸化マグネシウムを有効成分として含んでもよい。錠剤10は、酸化マグネシウム粒子及び内部添加剤を含む顆粒と、外部添加剤とを含むことが好ましい。この場合、錠剤10は、内部添加剤及び/又は外部添加剤として少なくともセルロース及び/又はセルロース誘導体を含有していることが好ましい。錠剤10は、内部添加剤及び外部添加剤として、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含有する場合、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が一定範囲内にあるものでもよい。
【0050】
酸化マグネシウム粒子は、内部添加剤と共に顆粒に含まれることが好ましい。酸化マグネシウム粒子の含有率は、高すぎると成形性が不十分となる場合がある。そのため、酸化マグネシウム粒子の含有率は、錠剤10全体に対し、例えば、90質量%以下、又は88質量%以下とすることができる。酸化マグネシウム粒子の含有率は、低すぎると高圧縮性および塑性変形性の高い添加剤を配合できる。錠剤10は、高圧縮性および塑性変形性の高い添加剤を配合できれば、成形性が高い錠剤10が得られるものの、一錠あたりのコストが高くなる。よって、酸化マグネシウム粒子の含有率は、錠剤10全体に対し、例えば、80質量%以上、又は85質量%以上とすることが好ましい。
【0051】
本実施形態の錠剤10は、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が一定範囲内にある。錠剤10は、外部添加剤が含有される比率を増加させることにより、硬度上昇と摩損度低減が期待できる。錠剤10は、外部添加剤が含有される比率を増加させすぎると、例えば、キャッピング発生率の増加及びチューブ通過性の低下を招いてしまう。よって、外部添加剤として含有される質量比は、錠剤10全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、上限を90以下、例えば、88以下、85以下、80以下、75以下とすることが好ましい。外部添加剤として含有される質量比は、錠剤10全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、下限を20超、例えば、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上とすることが好ましい。一方で、錠剤10は、内部添加剤が含有される割合が少な過ぎると、圧密化が不十分となることで微細粒子が多く発生し、空気を抱きやすくなり、その後の打錠時に空気が抜けきらず、キャッピング錠を発生させる場合がある。そのため、錠剤10は、一定量の内部添加剤の配合が必要であるが、逆に内部添加剤の含有される割合が多過ぎると、造粒により圧密化された顆粒が得られるため、打錠時の更なる圧密化により顆粒が破壊されにくくなる。錠剤10は、打錠時の更なる圧密化により顆粒が破壊されにくくなると、成型性の低下、すなわち摩損度の上昇を惹起する。よって、内部添加剤として含有される質量比は、錠剤10全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、上限を80未満とすることが好ましい。内部添加剤として含有される質量比は、錠剤10全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、例えば、上限を79以下、78以下、77以下、76以下、75以下とすることがより好まし。内部添加剤として含有される質量比は、錠剤10全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、下限を10以上、例えば、12以上、15以上、20以上、25以上とすることがより好ましい。
【0052】
また、錠剤10全体に対するセルロース及び/又はセルロース誘導体の含有率は、多過ぎると一錠あたりのコストが高くなるため、錠剤10全体に対し20質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下とすることができる。錠剤10全体に対するセルロース及び/又はセルロース誘導体の含有率は、少な過ぎると本実施形態の効果が奏されなくなる場合があるため、錠剤10全体に対し5質量%以上、又は7質量%以上、又は9質量%以上とすることができる。
【0053】
本実施形態の錠剤10において、上で定義したセルロース及び/又はセルロース誘導体は、内部添加剤及び外部添加剤いずれにおいても賦形剤又は結合剤として使用されることが好ましい。また、内部添加剤と外部添加剤に含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体は、同一のものであっても異なっていてもよい。
【0054】
本実施形態において、内部添加剤とは、錠剤10の製造において造粒工程の前に有効成分に添加され混合される一又は複数の物質を含む添加剤を指す。内部添加剤として、上で定義したセルロース及び/又はセルロース誘導体以外にも他の添加剤を添加してもよい。とりわけ、上述のような好ましい崩壊時間に調整するため、上で定義した特定の比率で内部添加剤及び外部添加剤に含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体に加えて、内部添加剤として、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン、カルメロースカルシウム、クロスポビドン及びカルボキシスターチナトリウムといった崩壊剤を添加することが好ましい。崩壊剤は、例えば、ニチリン化学工業(株)製のキッコレート(登録商標)ND-2HSを使用できる。崩壊剤は、錠剤10全体に対して量が多すぎれば、錠剤10の成形が困難となる場合がある。崩壊剤は、上限として、錠剤10全体に対し、例えば、5質量%以下、又は3.5質量%以下とすることができる。崩壊剤は、錠剤10全体に対して量が少な過ぎれば、崩壊が困難となる場合がある。崩壊剤は、下限として、錠剤10全体に対し、例えば、1質量%以上、又は2質量%以上とすることができる。
【0055】
本実施形態において、外部添加剤とは、錠剤10の製造において、造粒工程後に製造された顆粒に添加され顆粒と共に打錠される添加剤を指す。添加剤は、一又は複数の物質を含む。外部添加剤は、上で定義した特定の比率で内部添加剤及び外部添加剤に含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体以外にも他の添加剤を添加してもよい。外部添加剤は、例えば、滑沢剤を添加することが好ましい。外部添加剤は、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含まず、滑沢剤が含まれていてもよい。滑沢剤は、例えば、ステアリン酸及びその塩(Mg,Ca塩)が挙げられ、好ましくはステアリン酸塩、中でもステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムが好ましい。滑沢剤は、多すぎると崩壊遅延につながる場合がある。滑沢剤は、上限として、錠剤10全体に対し、例えば、2質量%以下、又は1.5質量%以下、又は1.0質量%以下とすることができる。滑沢剤は、少なすぎると杵、臼に付着する場合がある。滑沢剤は、錠剤10全体に対する滑沢剤の添加量の下限として、0.2質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.9質量%以上とすることができる。
【0056】
本実施形態の錠剤10の質量は、酸化マグネシウムを有効成分とする錠剤として、例えば、1個当たり、上限は1000mg以下、又は800mg以下、又は600mg以下とすることができ、下限は10mg以上、又は50mg以上、又は100mg以上とすることができる。
【0057】
本実施形態の錠剤10は、ヒト又は動物用の医薬品として、例えば、制酸、緩下、尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防のために経口投与される。また、本実施形態の錠剤10は、例えば、マグネシウム補給、抗低マグネシウム血症を目的としたヒト又は動物用のサプリメントとしても用いることができる。その投与量は用途、目的あるいは病状によって左右される。例えば、制酸剤として使用する場合は、酸化マグネシウム換算で成人1人当り、1日0.5~1.0gを数回に分割経口投与される。緩下剤として使用する場合は、酸化マグネシウム換算で成人1人当り、1日2gを食前又は食後の3回に分割経口投与するか、または就寝前に1回投与される。尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防として使用する場合は、酸化マグネシウム換算で成人1人当り、1日0.2~0.6gを多量の水ともに経口投与される。その他の用途の場合、マグネシウムの耐容上限量の範囲内で摂取される。例えば、食品以外からの摂取につき、マグネシウム換算で健康な成人の場合1日350mg、健康な小児の場合1日体重1kg当たり5mgが米国の食事摂取基準として設定されている(Institute of Medicine (IOM). Food and Nutrition Board. “Dietary Reference Intakes: Calcium, Phosphorus, Magnesium, Vitamin D and Fluoride”. Washington, DC: National Academy Press, 1997)。
【0058】
本実施形態の医薬品は、有効成分による所望の制酸剤、緩下剤、尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防が用法として日本国内で承認されている。その各用途において期待する効果、ならびに摩損度の低減とキャッピング発生率の低減を実質的に妨げない限りにおいて、内部添加剤及び/又は外部添加剤に、更に1種又は2種以上の他の任意の成分を含有していてもよい。斯かる他の成分としては、制限されるものではないが、例えば、各種の医薬的に許容可能な種々の医薬添加剤、例えば、色素、風味剤が挙げられる。これらの成分は、何れか1種を単独で使用してもよく、何れか2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0059】
[錠剤の製造方法]
本実施形態に係る錠剤10は、例えば、粉末を造粒し顆粒にすることによって製造することができる。造粒は、乾式造粒が好ましい。例えば、乾式造粒機を用いて造粒を行うことにより、顆粒を製造できる。乾式造粒機は、例えば、フロイント産業株式会社製 乾式造粒機 RC-156を用いることができる。
【0060】
次いで、得られた顆粒を用いて打錠する。打錠圧は、一錠当りのパンチ圧として、例えば、上限が20kN以下、又は18kN以下、又は16kN以下とすることができる。打錠圧は、一錠当りのパンチ圧として、例えば、下限は2kN以上、又は3kN以上、又は4kN以上とすることができる。杵の形状は、錠剤10の形状に合わせて適宜選択することができる。
【0061】
錠剤10が酸化マグネシウムを有効成分とする錠剤の場合、上記製造方法は、酸化マグネシウム粒子と、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含む内部添加剤とを混合する工程と、混合物を造粒し、顆粒にする工程と、顆粒を打錠する工程とを含んでもよい。さらに、錠剤10が外部添加剤を備える場合、上記打錠する工程は、顆粒にセルロース及び/又はセルロース誘導体を含む外部添加剤を添加し打錠する工程を含んでもよい。顆粒にセルロース及び/又はセルロース誘導体を含む外部添加剤を添加する場合、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が75:25~10:90の範囲内である方法でもよい。
【0062】
打錠後の錠剤に対し、印刷によってキャップ部14の印刷領域に印刷部を形成する。印刷方法は特に限定されないが、例えば、染料インク又は顔料インクを用い、インクジェットプリンターによって印刷部を形成してもよい。染料インク又は顔料インク中に含まれる色材は、食品添加物として認められているもの、または、薬事法に準拠したものを用いる。このような色材は、例えば、紅花赤色素、クチナシ青色素、クロロフィル色素、ウコン色素、カカオ色素、イカ墨色素、酸化チタン、炭素末、三二酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号を使用することができる。
【0063】
以下、インクジェットプリンターでの印刷に用いるインクを例として説明する。
例えば、インクジェットプリンター用のインクとしては、色素と、水と、エタノールと、樹脂とを含む。その他、必要に応じて、例えば、水溶性高沸点有機溶剤、乳化剤、pH調整剤、着香料及び防腐剤を配合しても良い。これらのインクの組成物は、いずれも食用のものが好ましい。
【0064】
(色素)
色素は、合成食用色素、天然食用色素から1種または2種以上を選ぶことができる。合成食用色素は、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素、二酸化チタンが挙げられる。タール系色素は、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色1号、食用青色2号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用5号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキが挙げられる。天然色素誘導体は、例えば、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、ノルビキシンカリウム、天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビンが挙げられる。
【0065】
天然食用色素は、例えば、植物炭末色素、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス色素、その他の天然物を起源とする色素が挙げられる。アントシアニン系色素は、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グーズベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、その他のアントシアニン系色素が挙げられる。カロチノイド系色素は、アナトー色素、クチナシ黄色素、その他のカロチノイド系色素が挙げられる。キノン系色素は、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、その他のキノン系色素が挙げられる。フラボノイド系色素は、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、タマネギ色素、その他のフラボノイド系色素が挙げられる。ベタイン系色素は、ビートレッド色素があげられる。モナスカス色素は、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素が挙げられる。その他の天然物を起源とする色素としては、例えば、ウコン色素、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、スピルリナ青色素が挙げられる。
【0066】
色素の含有量は、インクの組成物全体に対して、0.1~10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~8重量%である。色素は、含有量が0.1重量%より少ないと印刷色が薄く視認性が悪くなる傾向にある。また、色素は、含有量が10重量%より多いとインク粘度の上昇により、インクが正常に吐出されにくく、印刷不良となる傾向にある。
【0067】
(エタノール)
エタノールは、例えば、天然醸造の発酵エチルアルコール及びサトウキビアルコールが好ましい。エタノールの含有量は、インクの組成物全体に対して、5~60重量%が好ましく、より好ましくは10~40重量%である。エタノールは、含有量が5重量%より少ないとインクの乾燥性が悪くなりやすい。インクは、例えば、インクの乾燥に印刷後3秒以上の時間がかかる乾燥性が悪い場合、印刷後の搬送でインクが剥がれたり、他の錠剤及び搬送面に付着したりして汚してしまう虞がある。また、インクは、エタノールの含有量が5重量%より少ないと、インクの表面張力が高くなり印刷されたインクが錠剤の表面に弾かれやすくなる。つまり、インクは、錠剤の表面に濡れ広がらないために乾燥しにくくなる。インクは、錠剤の表面に濡れ広がらない場合、錠剤表面との接触面積が少ないので付着力が小さくなり、例えば、24時間後でも擦ると剥がれてしまう虞がある。また、インクは、エタノールの含有量が60重量%より多いとインクジェットノズルの開口内あるいは開口部周辺で乾燥して付着しやすい傾向にある。インクは、乾燥して開口部を塞げば、例えば、吐出不良、吐出されたインクの飛翔方向のずれが発生し、印刷不良となる。
【0068】
(水溶性高沸点有機溶剤)
水溶性高沸点有機溶剤は、インクジェットヘッドのノズルの乾燥を防ぐ目的で使用することができる。水溶性高沸点有機溶剤は、例えば、プロピレングリコール、グリセリンから1種以上を選ぶことができる。水溶性高沸点有機溶剤の含有量は、インク組成物全体に対して、1~60重量%が好ましく、より好ましくは2~55重量%である。インクは、水溶性高沸点有機溶剤の含有量が1重量%より少ないと、インクジェットノズルでのインクの乾燥による印刷不良となる傾向にある。また、インクは、水溶性高沸点有機溶剤の含有量が60重量%より多いと、インク粘度の上昇により、インクが正常に吐出されないため印刷不良となる虞がある。
【0069】
(樹脂)
インクは、可食性樹脂も必要に応じて添加されてもよい。可食性樹脂は、例えば、セラック、アラビアガム、デンプン類、セルロース樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドンが挙げられる。可食性樹脂は、1種または2種以上を選択することができる。
【0070】
(乳化剤)
乳化剤は、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルより水溶性のものを、1種または2種以上を選択することができる。インクは、必ずしも乳化剤を配合しなくてよい。インクは、乳化剤が配合される場合、乳化剤の含有量がインクの組成物全体に対して、0.01~5重量%が好ましく、より好ましくは0.1~2重量%である。乳化剤の含有量は、0.01重量%より少ないと、インクの表面張力が大きくなり、ノズル開口部で適切なメニスカス状態とならない場合がある。インクは、ノズル開口部で適切なメニスカス状態とならない場合、ノズルからインクが吐出されなかったり、吐出されても所定の位置に着弾しなかったりすることで印刷不良が生じる虞がある。また、インクは、乳化剤の含有量が5重量%より多いと、例えば、インクの増粘、及び時間の経過とともに析出物が生じることで、ノズルが詰まったりして、やはり印刷不良が生じる虞がある。
【0071】
(pH調整剤)
pH調整剤は、インクのpHを所定の範囲内に調整することができる。pH調整剤は、耐水性の観点より、印字後に揮発していく成分であることが好ましい。pH調整剤、例えば、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウムが挙げられる。なかでも、残留が問題にならない観点から、pH調整剤は、水酸化アンモニウムないし炭酸アンモニウムを用いてpHを調整することが好ましい。なお、錠剤の空隙率は、例えば、細孔径分布測定装置を用いて水銀圧入法により測定を行うことができる。細孔径分布測定装置は、例えば、Micrometrics社製Auto poreV9620型を用いることができる。
【0072】
インクの調製における攪拌には、例えば、マグネチックスターラー、プロペラ撹拌機、一般的に使用される攪拌機を使用することができる。
【0073】
また、インクは、例えば、植物炭末色素、二酸化チタン、アルミニウムレーキ、いわゆる顔料を配合する場合、顔料の分散処理を行なう必要がある。分散処理は、分散機を用いることができる。分散機は、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミルが挙げられる。
【0074】
インクの濾過方法は、例えば、遠心濾過、フィルター濾過を採用することができる。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
<第1実施例>摩損度、キャッピング評価
[処方]
本実施例に係る錠剤を製造するにあたり、以下の表に示す処方を用いた。
【0077】
【表1】
【0078】
表1における、原料の詳細は以下の通りである。酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製 日局酸化マグネシウム(重質グレード)、結晶セルロース:旭化成(株)製 セオラスKG-1000、クロスカルメロースナトリウム:ニチリン化学工業(株)製 キッコレートND-2HS、ステアリン酸カルシウム:太平化学産業(株)製 ステアリン酸カルシウム 植物性。
本実施例で使用した酸化マグネシウムの物性を測定したところ、以下の通りであった。
・平均粒子径:7.691μm(マイクロトラックベル株式会社 MT3300 EX2を使用したレーザー回折散乱法により測定)
・嵩密度:0.249g/mL(100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))により測定)
・安息角:41.7°(株式会社セイシン企業製 マルチテスターMT-1により測定)
【0079】
[製造方法]
上記処方に従い各原料を電子天秤(メトラートレド社製、5kg秤量 PB5001-S/FACT)を用いて1.5万錠スケールで秤量した。
1.混合
秤量した酸化マグネシウム及びその他の原料をポリエチレン袋(1100mm×600mm)に投入し、袋を左右30回振り混合した。
2.造粒
得られた混合物に対し乾式造粒機(フロイント産業株式会社製 乾式造粒機 RC-156)を用い、下記の造粒条件で造粒を行うことにより顆粒を製造した。
【0080】
【表2】
【0081】
造粒後、以下の方法で嵩密度および粒子径の測定を行った。
・嵩密度:100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて測定
・粒度分布:粒度分布測定器(株式会社セイシン企業製 レーザー回折散乱式粒度分布測定器 LMS-2000e)を用いて測定
3.打錠
混合した顆粒及び外添剤を以下の条件で打錠機(株式会社菊水製作所製 小型高速回転式錠剤機 VIRG)を用いて打錠した。
打錠条件:φ10.5mm杵、1本立て
回転盤回転数45rpm、厚み5.1mm(予圧厚み6.0mm)
複数種類の杵を用いて、処方1及び処方2をそれぞれ用いて打錠を行った。打錠後、以下の評価を行った。
・質量:(試験錠数:10錠)
・厚み:(試験錠数:5錠)、(株)尾崎製作所製 シックネスゲージを使用
・硬度:(試験錠数:10錠)、岡田精工(株)製 ロードセル式卓上硬度計 DC-50を使用
・摩損度試験:富山産業(株)製 錠剤摩損度試験器 TFT-1200を使用し、100回転(試験錠数:6.5gにできるだけ近い量の錠数)で実施
・打錠状況:打錠圧/打錠障害の有無を目視で確認
杵の構成と、上記処方を用いて打錠した錠剤の評価結果とを表3に、打錠後の測定結果を表4に、それぞれ示す
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
上記表において「R1-R2-Cup」は、それぞれ順に、R1、R2、キャップ深さを示している。以上より、No.2及びNo.3の杵を用いて成形した錠剤において、キャッピング及び摩損度ともに、良好な結果が得られた。さらにNo.3の結果から、進入角度を34°とすることによって、摩損度及びキャッピングにおいてより優れた結果が得られることが分かった。また、No.5及びNo.6の結果から、No.3と相似形の杵を用いて錠剤を成形することによって、No.3と同様に、摩損度及びキャッピングにおいて優れた結果が得られることが確認された。
【0085】
<第2実施例>印刷評価
上記「製造方法」に従い、上記第1実施例におけるNo.3の杵を用いて、酸化マグネシウム粒子及び内部添加剤を含む顆粒と、外部添加剤とを含むと共に、内部添加剤及び外部添加剤として少なくともセルロース及び/又はセルロース誘導体を含有し、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が75:25~10:90の範囲内にある酸化マグネシウム錠剤を製造した。
【0086】
さらに錠剤に対し、染料インク又は顔料インクを用いて、以下の装置を用い、インクジェットプリンター方式で印刷部を形成した。
・印刷装置
・錠剤印刷装置:池上通信機(株)製(TIE-4500P)
・錠剤印刷検査:第一実業ビスウィル(株)製(システムTIPS-EX4-CD)
印刷部のデザインは、図3(A)に示す錠剤100と、図3(B)に示す錠剤110の2種類とした。錠剤100は、キャップ部14の全体に識別情報として文字部が形成された、デザイン1を有する。錠剤110は、キャップ部14の非印刷領域を除く部分に識別情報として文字部が形成されたデザイン2を有する。染料インクは、食用青色1号、水、エタノール、プロピレングリコール、セラックを含有するインクを用いた。
【0087】
[振動試験]
得られた錠剤に対し、以下に示す方法で振動試験による評価を行った。
・振動試験装置:IMV(株)社製
・試験方法:印刷錠1000錠をボトルに充填後、最終梱包品(20ボトル)とし、JIS Z0200包装貨物-性能試験方法一般通則JIS Z0232包装貨物-振動試験方法に従って試験を実施した。
・振動試験条件:振動試験レベル2である、長距離の国内輸送又は国際輸送で温帯気候における適切な輸送が行われる場合を想定した試験で90分/z軸へのランダム振動を行った。
・評価方法:試験後の錠剤をボトルより取り出し、目視にて、転写・文字欠けの発生した錠剤を計数し、発生頻度を確認した。
【0088】
[分包試験]
得られた錠剤に対し、以下に示す方法で分包試験による評価を行った。
・錠剤自動分包機:(株)トーショー製(Xana-120)
・試験方法:印刷錠1000錠を分包機用カセットに充填し、カセットを分包機上段に設置し、5錠/包計200包を分包した。
・評価方法:分包後の錠剤を分包紙から取り出し、目視にて転写・文字欠けの発生した錠剤を計数し、発生頻度を確認した。
【0089】
[評価結果]
印刷部のデザインとインクとの組合せ、及び、振動試験と分包試験の結果を以下の表に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
デザイン1よりデザイン2の方が、転写・文字欠けの発生が低減することが確認された(実施例2-1と比較例2-1,実施例2-2及び2-3と比較例2-2及び比較例2-3をそれぞれ対比)。
【0092】
文字欠けが発生した錠剤における文字欠けが発生した箇所を図4に示す領域で分類した結果を以下の表に示す。図4に示す錠剤100において、破線で表される4つの円はキャップ部14の中心から面方向へ円状に広がる領域であって、円Aはキャップ部14の表面積の2.6%の領域、円Bはキャップ部14の表面積の14.5%の領域、円Cはキャップ部14の表面積の33.3%の領域、円Dはキャップ部14の表面積の68.2%の領域をそれぞれ示す。
【0093】
【表6】
【0094】
表6において、領域Aは円Aで囲まれる円形の面、領域Bは円Bで囲まれる面から円Aで囲まれる面を引いた環状の面、領域Cは円Cで囲まれる面から円Bで囲まれる面を引いた環状の面、領域Dは円Dで囲まれる面から円Cで囲まれる面を引いた環状の面を、それぞれ示す。上記結果から、キャップ部14に対する面積率が2.6%の領域A、及び14.5%以下の領域B内における文字欠け発生率が、当該範囲の外側の領域C及び領域Dの文字欠け発生率よりも高いことが分かった。したがって、キャップ部14の表面積の2.6%を含み、14.5%以下の範囲である非印刷領域を除き、非印刷領域の外側の印刷領域に印刷部を設けることによって、文字欠けの発生を抑制できることが確認された。
【0095】
<第3実施例>
[処方]
以下の表に示す処方にて錠剤を製造した。
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
上記各実施例および比較例で使用した原料の詳細は以下の通りである。
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製 日局酸化マグネシウム(重質グレード)
結晶セルロース:旭化成(株)製 セオラスPH-101 (実施例3-1から3-3、比較例3-1から3-3)、セオラスUF-711(実施例3-4から3-6、比較例3-4から3-6)
クロスカルメロースナトリウム:ニチリン化学工業(株)製 キッコレートND-2HS
ステアリン酸カルシウム:太平化学産業(株)製 ステアリン酸カルシウム 植物性
本実施例で使用した酸化マグネシウムの物性を測定したところ、以下の通りであった。
・平均粒子径:7.691μm(マイクロトラックベル株式会社 MT3300 EX2を使用したレーザー回折散乱法により測定)
・嵩密度:0.249g/mL(100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))により測定)
・安息角:41.7°(株式会社セイシン企業製 マルチテスターMT-1により測定)
【0099】
[製造方法]
上記処方に従い各原料を電子天秤(メトラートレド社製、5kg秤量 PB5001-S/FACT)を用いて1.5万錠スケールで秤量した。
1.混合
秤量した酸化マグネシウム及び内添剤の原料をポリエチレン袋(1100mm×600mm)に投入し、袋を左右30回振り混合した。混合工程後、100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて嵩密度を測定した。
2.造粒
得られた混合物に対し乾式造粒機(フロイント産業株式会社製 乾式造粒機 RC-156)を用い、下記の造粒条件で造粒を行うことにより顆粒を製造した。
【0100】
【表9】
【0101】
造粒後、以下評価項目につき評価を行った。
・フレーク率:造粒工程を1分間行った1分間処理品(A)及び該1分間処理品(A)を1000μmでふるったもの(B)の質量を測定し下記の式5より算出
【0102】
【数3】
【0103】
・嵩密度:100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて測定
・粒度分布:粒度分布測定器(株式会社セイシン企業製 レーザー回折散乱式粒度分布測定器 LMS-2000e)を用いて測定
【0104】
3.外添剤添加
上記顆粒と秤量した外添剤の原料をポリエチレン袋(1100mm×600mm)に投入し、袋を左右30回振り混合した。
混合後、以下評価項目につき評価を行った。
・嵩密度:100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて測定
・安息角:株式会社セイシン企業製 マルチテスターMT-1により測定
4.打錠
混合した顆粒及び外添剤を以下の条件で打錠機(株式会社菊水製作所製 小型高速回転式錠剤機 VIRG)を用いて打錠した。
【0105】
【表10】
【0106】
打錠後、以下評価項目につき評価を行った。
・質量:(試験錠数:10錠)
・厚み:(試験錠数:5錠)、ピーコック社製 シックネスゲージを使用
・硬度:(試験錠数:10錠)、岡田精工株式会社製 ロードセル式卓上硬度計 DC-50を使用
・摩損度試験:富山産業株式会社製 錠剤摩損度試験器 TFT-1200を使用し、100回転(試験錠数:6.5gにできるだけ近い量の錠数)で実施
・崩壊時間:(試験錠数:6錠)、第十七改正日本薬局方、一般試験法・崩壊試験法に準拠。崩壊試験器(富山産業株式会社製、崩壊試験器 NT-20HS)を用い、水における試験錠剤の崩壊時間を測定
・打錠状況:打錠圧/打錠障害の有無を目視で確認
・懸濁粒子径D50(μm):(試験錠数:1錠)、セイシン企業(株)製レーザー回折散乱式粒度分布測定器LMS-2000eを用い、試験錠剤を水に懸濁させた際の懸濁粒子径を測定
・チューブ通過性5Fr:カテーテル用シリンジ(ニプロ(株)製 経腸栄養注入セットシリンジDS20mLカテーテルイエロー)の押子を抜き取り、外筒内に錠剤を1錠入れ、押子を戻し、55℃の温湯20mLを吸い取り、筒先に蓋をして5分間静置する。5分後にカテーテルシリンジを手で90度15往復横転した後に、経管栄養チューブ(アトムメディカル製 アトム栄養カテーテルT;太さ5Fr、長さ120cm)を連結し、内部の懸濁液および洗浄用のイオン交換水20mLをさらに注入し、チューブ閉塞の可否を確認した。本試験は3回行い、チューブが閉塞しなかった場合は適、閉塞した場合は不適で評価した。
・打錠工程圧縮率の算出:充填深さ(a)、本圧圧縮厚み(b)とし、下記式6により算出
【0107】
【数4】
【0108】
[結果]
混合後の結果物(混合品)嵩密度の測定結果を以下表に示す。
【0109】
【表11】
【0110】
【表12】
【0111】
混合品の嵩密度は実施例及び比較例のいずれも0.20~0.25(g/mL)の範囲内にあり特に大きな差は見られなかった。造粒後の顆粒(造粒品)の各項目の測定結果を以下表に示す。
【0112】
【表13】
【0113】
【表14】
【0114】
造粒性に関しては、内部添加剤として含有される結晶セルロースが多いほど処理能力、フレーク率は良く、造粒品の嵩密度を高めることができた。よって内部添加剤にある程度の結晶セルロースを含めた方が好ましいことが導かれる。外添剤添加後の測定結果を以下表に示す。
【0115】
【表15】
【0116】
【表16】
【0117】
外部添加剤に結晶セルロースを含まない比較例3-1、比較例3-4と、外部添加剤に含まれる結晶セルロースが100%の比較例3-3、比較例3-6の外部添加剤添加後の粒子径を比較すると、比較例3-3、比較例3-6では150μm Passの増加が見られたが、安息角はいずれも40°~44°の範囲内でさほど差は見られなかった為、流動性に差はないものと考えられる。
【0118】
打錠後の各項目の測定結果を以下表に示す。
【0119】
【表17】
【0120】
【表18】
【0121】
内部添加剤として含有される結晶セルロースに対し外部添加剤として含有される結晶セルロースの質量比が増大するほど(比較例3-1→比較例3-3、比較例3-4→比較例3-6)、硬度は上昇し摩損度は低減するが、キャッピング発生率の上昇と懸濁粒子の凝集が見られた。内部添加剤として含有される結晶セルロースに対し外部添加剤として含有される結晶セルロースの質量比が増大するほど、錠剤成形に寄与できる未圧縮の結晶セルロースの割合が多くなり、打錠時の圧縮率が上昇することで、硬度が上昇し摩損度の低下に繋がったものと考えられる。一方、造粒時の圧密化が不十分となるため、フレークになりきれなかった微粒子が空気を抱き込みやすくなる事と、後添加された未圧縮の結晶セルロースに影響されて打錠する顆粒全体の嵩密度も低下することから、圧縮時に脱気不足が発生し空気を抱え込んだ状態になることがキャッピング発生率上昇の原因であると考えられる。また、結晶セルロースの全量が外部添加剤として含有される比較例3-3では、チューブ通過性試験における詰まりも見られた。よって、摩損度の低減のために外部添加剤として含有される結晶セルロースの質量比は、錠剤全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、おおよそ25以上であると好ましく、おおよそ90以下であると適切であると考えられる。
【0122】
打錠後の錠厚はいずれも5.3~5.5mmの範囲内にあり大きな差は見られなかった。崩壊時間については、実施例及び比較例いずれも適切な範囲内にあった。
【0123】
以上の結果より、とりわけ、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比を75:25~10:90の範囲内、例えば、75:25~20:80の範囲内、とりわけ75:25~25:75の範囲内に調整することにより摩損度及びキャッピング発生率の低減を両立できる酸化マグネシウム錠剤を効率よく製造できることが分かった。更には、このような比率とすると、成形性、造粒性、打錠性、流動性、チューブ通過性といった錠剤製造時に求められる物性、並びに崩壊性といった酸化マグネシウム錠剤に求められる物性を担保しつつ、摩損度の低減とキャッピング発生率低減の両立を図ることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、外観不良の発生がより少ない錠剤が求められる産業分野、特に医薬品製造及び流通の分野において、極めて高い利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0125】
10 錠剤
12 胴部
13 胴部の上端
14 キャップ部
15 キャップ部の頂点
16 印刷部
18 中央部
20 周縁部
22 一点鎖線
24 非印刷領域
26 印刷領域
28 二点鎖線
100 錠剤
110 錠剤
H 高さ方向
図1
図2
図3
図4