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  • 特開-ポリウレタンフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025050321
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20250327BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20250327BHJP
   C08K 5/5357 20060101ALI20250327BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20250327BHJP
   C08L 1/12 20060101ALI20250327BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250327BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08L75/04
C08K5/5357
C08K5/5399
C08L1/12
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159040
(22)【出願日】2023-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 茜
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002AB022
4J002CK031
4J002CK041
4J002CK051
4J002EX077
4J002FD136
4J002FD137
4J002GC00
4J002GN00
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DC25
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF11
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DF27
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034DG15
4J034DG16
4J034DG18
4J034DG22
4J034DG23
4J034DG28
4J034DG29
4J034DJ02
4J034DJ08
4J034DJ12
4J034DP19
4J034DQ05
4J034DQ15
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034EA08
4J034EA11
4J034EA12
4J034GA05
4J034GA06
4J034GA23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC23
4J034KC35
4J034KD01
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD08
4J034KD12
4J034KD25
4J034KE02
4J034MA16
4J034MA26
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA05
4J034NA06
4J034NA07
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤の使用量を低減し、または、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を用いることなく、難燃性を確保できる技術を提供する。
【解決手段】ポリオールと、イソシアネートと、下記化学式(1)の化合物と、を含む組成物から得られる、ポリウレタンフォーム。

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であり、nはそれぞれ独立に0-4の整数であり、Rは、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であって、水酸基を有しない炭化水素基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、イソシアネートと、下記化学式(1)の化合物と、を含む組成物から得られる、ポリウレタンフォーム。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であり、nはそれぞれ独立に0-4の整数であり、
は、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であって、水酸基を有しない炭化水素基である。)
【請求項2】
前記組成物は、酢酸セルロースを更に含む、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記組成物は、フェノキシフォスファゼンを更に含む、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
JIS K6400-4:2004 A法に準じて測定された圧縮残留ひずみが20%未満である、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塩素化ポリ塩化ビニル及びアンチモン酸化物を含む難燃性ポリウレタン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03-007716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤の使用は、環境や人体への負荷が大きい。よって、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤は、規制対象物質として、または、今後、使用が規制される可能性の高い物質として、代替となる物質が求められている。
【0005】
本開示は、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤の使用量を低減し、または、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を用いることなく、ポリウレタンフォームの難燃性を確保できる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕ポリオールと、イソシアネートと、下記化学式(1)の化合物と、を含む組成物から得られる、ポリウレタンフォーム。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であり、nはそれぞれ独立に0-4の整数であり、
は、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であって、水酸基を有しない炭化水素基である。)
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤の使用量を低減し、または、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を用いることなく、難燃性を確保できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】環状リン化合物と酢酸セルロースを併用した場合のメカニズムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記組成物は、酢酸セルロースを更に含む、〔1〕に記載のポリウレタンフォーム。
【0010】
〔3〕前記組成物は、フェノキシフォスファゼンを更に含む、〔1〕又は〔2〕に記載のポリウレタンフォーム。
【0011】
〔4〕JIS K6400-4:2004 A法に準じて測定された圧縮残留ひずみが20%未満である、〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム
【0012】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0013】
1.ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリオールと、イソシアネートと、下記化学式(1)の化合物(以下、単に環状リン化合物とも称する)と、を含む組成物から得られる。
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であり、nはそれぞれ独立に0~4の整数であり、
は、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であって、水酸基を有しない炭化水素基である。)
【0014】
(1)ポリオール
ポリオールは、特に限定されない。各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールが例示される。
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンポリオール、ポリマーポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族系又は芳香族系の重縮合系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールは、例えば、ポリブタジエンポリオール、イソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール、アクリルポリオールが挙げられる。
【0015】
(1.1)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、以下の開始剤(化合物)の1種又は2種以上に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド等の1種又は2種以上を付加せしめて得られるポリエーテルポリオール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールが例示される。
【0016】
(1.1.1)開始剤
(1.1.1.1)多価アルコール、及び多価アルコールのアルキレンオキシド付加物
多価アルコールの例:
〔2官能アルコール〕エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール
〔3官能アルコール〕グリセリン、トリメチロールプロパン
〔4官能アルコール〕ペンタエリスリトール
〔6官能アルコール〕ソルビトール
〔8官能アルコール〕ショ糖
(1.1.1.2)多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物
多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物の例:ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物
(1.1.1.3)多価ヒドロキシ化合物
多価ヒドロキシ化合物の例:りん酸、ベンゼンりん酸、ポリりん酸(例えばトリポリりん酸およびテトラポリりん酸)等
(1.1.1.4)フェノール-アニリン-ホルムアルデヒド三元縮合生成物
(1.1.1.5)アニリン-ホルムアルデヒド縮合生成物
(1.1.1.6)ポリアミン類
ポリアミン類の例:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビスオルソクロルアニリン、4,4-および2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン等
(1.1.1.7)アルカノールアミン類
アルカノールアミン類の例:トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等
【0017】
(1.1.2)ポリマーポリオール
ポリマーポリオールは、既述のポリエーテルポリオールに、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたポリオールである。
【0018】
(1.1.3)エチレンオキサイド単位の含有量
ポリエーテルポリオールにおけるエチレンオキサイド単位の含有量は、特に限定されない。エチレンオキサイド単位の含有量は、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、好ましくは0モル%より多く、50モル%以下であり、より好ましくは3モル%より多く、20モル%以下であり、更に好ましくは5モル%より多く、10モル%以下である。
【0019】
(1.2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の1種又は2種以上と、少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の1種又は2種以上との縮合により得られるポリエステルポリオール、又はカプロラクトン、メチルバレロラクトン等の環状エステルの開環重合体類である。
【0020】
(1.2.1)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の例
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール
【0021】
(1.2.2)少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の例
シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸
【0022】
(1.3)ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばブタンジオールやヘキサンジオール等の低分子ポリオールと、プロピレンカーボネートやジエチルカーボネート等の低分子カーボネートとのエステル交換反応よって得られるもの等が挙げられる。
【0023】
(1.4)ポリオレフィン系ポリオール
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオールが例示される。
【0024】
(1.5)植物由来ポリオール
ポリオールとして、上記のポリオールに加え、植物由来ポリオールを含んでもよい。植物由来ポリオールとしては、例えば、ひまし油系ポリオール、大豆油系ポリオール、パーム油系ポリオール、パーム核油系ポリオール、ヤシ油系ポリオール、カシュー油系ポリオール、オリーブ油系ポリオール、綿実油系ポリオール、サフラワー油系ポリオール、ごま油系ポリオール、ひまわり油系ポリオール、アマニ油系ポリオール等が挙げられる。植物由来のポリオール類は、1分子中の水酸基の官能基数が通常2-3である。
ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、ひまし油とポリオールとの反応物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等を挙げることができる。ひまし油又はひまし油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロプレングリコールなどの2価のポリオール、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ソルビトール等の3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
大豆油系ポリオールとしては、大豆油に由来するポリオール、例えば、大豆油とポリオールとの反応物、大豆油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等が挙げられる。大豆油又は大豆油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、上記ひまし油の場合と同様のものを用いることができる。パーム油系ポリオール、カシュー油系ポリオール等についても、大豆油系ポリオールの場合と同様である。なお、植物由来ポリオールとして例示した各種のポリオールは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0025】
(1.6)重量平均分子量、水酸基価、官能基数
ポリオールの重量平均分子量、水酸基価、官能基数は、特に限定されない。
上記のポリオールの重量平均分子量は、好ましくは500以上10000以下であり、より好ましくは1000以上6000以下であり、更に好ましくは1500以上4000以下である。ポリオールの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定できる。
上記のポリオールの水酸基価は、好ましくは40mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であり、より好ましくは45mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、更に好ましくは50mgKOH/g以上80mgKOH/g以下である。
上記のポリオールの官能基数は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.1以上であり、更に好ましくは2.2以上である。ポリオールの官能基数は、例えば4.0以下である。
【0026】
(2)環状リン化合物
組成物(以下、ポリウレタンフォーム用組成物とも称する)は、ポリウレタンフォームの諸物性を確保しつつ、難燃性を向上する観点から、下記化学式(1)の化合物を含む。
【化3】

式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基である。Rの炭素数は、例えば、1-3である。Rの炭素数は、例えば、1-3である。nはそれぞれ独立に0-4の整数であり、好ましくは0-2であり、より好ましくは0-1であり、更に好ましくは0である。
は、ハロゲン以外の置換基を有してもよい炭化水素基であって、水酸基を有しない炭化水素基である。Rの炭素数は、例えば、1-8である。Rは、好ましくはフェニル基、トリル基、又はキシリル基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0027】
本願発明者は、ポリウレタンフォームの諸物性を確保しつつ、難燃性を向上できる難燃剤について鋭意検討を重ねた。一般的に、融点が低く(例えば、200℃未満)、かつ、活性水素を有する難燃剤は、ウレタン化反応等の反応阻害を引き起こし、ポリウレタンフォームの物性を悪化させると考えられる。本願発明者は、新たに、融点が200℃以上であっても、水酸基を有し、水溶性がある環状リン化合物は、ポリウレタンフォームの物性を悪化させやすいという知見を得た。これらの知見に基づき、上記の化学式(1)の化合物を用いる、本開示の技術を開発するに至った。
【0028】
環状リン化合物は、下記化学式(2)の化合物であることが好ましい。下記化学式(2)の化合物は、9,10-ジヒドロ-10-ベンジル-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド(CAS No.113504-81-7)とも称される。市販品としては、三光株式会社製、BCAが挙げられる。
【化4】
【0029】
環状リン化合物の性状は特に限定されない。環状リン化合物は、粉体であることが好ましい。環状リン化合物の融点は、100℃より高いことが好ましい。環状リン化合物の分解温度は、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは300℃以上である。環状リン化合物の分解温度は、例えば500℃以下である。環状リン化合物のリン含有量は、難燃性向上の観点から、例えば、9質量%以上11質量%であるとよい。リン含有量(質量%)は、環状リン化合物1分子の質量に対する含まれるリン原子の質量として、(リン原子の質量/環状リン化合物1分子の質量)×100として算出できる。
【0030】
環状リン化合物の配合量は、特に限定されない。環状リン化合物の配合量は、ポリオール100質量部に対し、十分な難燃性を確保する観点から、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましく、12質量部以上が特に好ましい。他方、上記の環状リン化合物の配合量は、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、30質量部以下が好ましく、28質量部以下がより好ましく、25質量部以下が更に好ましく、22質量部以下が特に好ましい。これらの観点から、上記の環状リン化合物の配合量は、ポリオール100質量部に対し、3質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上28質量部以下がより好ましく、8質量部以上25質量部以下が更に好ましく、12質量部以上22質量部以下が特に好ましい。
【0031】
(3)酢酸セルロース
ポリウレタンフォーム用組成物は、酢酸セルロースを更に含むことが好ましい。酢酸セルロースは、天然の高分子であるセルロースを酢酸エステル化することにより得ることができる。セルロースは無水グルコースを繰り返し単位とする高分子で、繰り返し単位当たり3個の水酸基を有し、エステル化している程度(置換度)により性質の異なる酢酸セルロース樹脂が得られる。置換度は酢化度という指標で表す。3個の水酸基が全てアセチル化したもの、すなわちトリアセチルセルロースの酢化度は62.5%になる。本実施形態で用いられる酢酸セルロースの酢化度としては40%-62%であることが好ましく、43%-60%であることがより好ましい。また平均重合度は、特に限定されず、例えば100-400程度のものが好ましい。
【0032】
酢酸セルロースは粉体であることが好ましい。粉体の形状は、例えば、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状又はフレーク状(鱗片状)、棒状、不定形などが挙げられる。
酢酸セルロールは、ポリウレタンフォームの諸物性を確保する観点から、球状であり、平均粒径が2μm以上40μm以下のものが好適である。球状微小粒子の平均粒径は、例えば、コールター・エレクトロニクス社製コールターカウンターによって測定できる。
なお、酢酸セルロールの粒径は、特に限定されず、例えば、粒径500μm超であってもよい。「粒径500μm超」とは、例えば、目開き500μmのJIS Z8801-1(2006)に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。酢酸セルロールの粒径の上限値は、特に限定されず、例えば、粒径1500μm以下とすることができる。
【0033】
酢酸セルロースの配合量は、特に限定されない。酢酸セルロースの配合量は、ポリオール100質量部に対し、十分な難燃性を確保する観点から、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.2質量部以上が更に好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。他方、上記の酢酸セルロースの配合量は、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下が更に好ましく、4質量部以下が特に好ましい。これらの観点から、上記の酢酸セルロースの配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、0.8質量部以上8質量部以下がより好ましく、1.2質量部以上6質量部以下が更に好ましく、1.5質量部以上4質量部以下が特に好ましい。
【0034】
環状リン化合物と酢酸セルロースを併用した場合に、環状リン化合物を単独で用いた場合に比して、難燃性を向上できるメカニズムの詳細は明らかでないが、次のように推定される。但し、本開示は、この推定メカニズムによって何ら限定解釈されるものではない。推定メカニズムを図1を参照して説明する。
図1は、環状リン化合物及び酢酸セルロースを含有するポリウレタンフォーム10を模式的に表している。なお、図1中、(C10は、酢酸セルロースのセルロース成分のみを概念的に示すものである。環状リン化合物が熱分解すると、リン酸又はポリリン酸(リンの重合物)を形成し、脱水縮合を繰返すことにより、高粘性の液体になると考えられる。この際、酢酸セルロースのセルロース成分(C10は、脱水され、下記式のように炭化され得る。
(C10 → 6nC + 5nH
すると、ポリウレタンフォーム10の表面に、溶融してできたガラス質のリン酸層11や緻密な炭化層12が形成され、酸素や熱が遮断されると推測される。
【0035】
(4)フェノキシフォスファゼン
ポリウレタンフォーム用組成物は、フェノキシフォスファゼンを更に含むことが好ましい。フェノキシフォスファゼンは、CAS No. 28212-48-8が付与されているフォスファゼン化合物の一種である。フェノキシフォスファゼンは、Poly(bis(phenoxy)phosphazene)、Hexaphenoxycyclotriphosphazene Oligomerとも称される。フェノキシフォスファゼンは、ハロゲン非含有の難燃剤である。フェノキシフォスファゼンは、活性水素基を含んでおらず、ウレタン化反応等の反応阻害を起こしにくいと考えられる。
【0036】
フェノキシフォスファゼンの性状は特に限定されない。フェノキシフォスファゼンは、粉体であることが好ましい。フェノキシフォスファゼンの融点は、通常100℃より高い。フェノキシフォスファゼンの分解温度は、通常300℃以上500℃以下である。フェノキシフォスファゼン中のリン含有量は、十分な難燃性を確保する観点から、上記の環状リン化合物のリン含有量よりも大きいことが好ましい。
【0037】
フェノキシフォスファゼンの配合量は、特に限定されない。フェノキシフォスファゼンの配合量は、ポリオール100質量部に対し、十分な難燃性を確保する観点から、1質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましく、6質量部以上が更に好ましく、8質量部以上が特に好ましい。他方、上記のフェノキシフォスファゼンの配合量は、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、16質量部以下が更に好ましく、14質量部以下が特に好ましい。これらの観点から、上記のフェノキシフォスファゼンの配合量は、ポリオール100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下が好ましく、4質量部以上18質量部以下がより好ましく、6質量部以上16質量部以下が更に好ましく、8質量部以上14質量部以下が特に好ましい。
【0038】
(5)触媒
ポリウレタンフォーム用組成物には、触媒が含まれていてもよい。触媒は特に限定されない。各種の触媒は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
触媒として、アミン触媒、第4級アンモニウム塩触媒を用いることができる。これらの触媒の具体例を示す。
N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N,N’-トリメチル-N’-アミノプロピル-ビス(アミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-オクタデシルモルホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール等の第三級アミン触媒、トリエチレンジアミンのギ酸塩および他の塩、第一および第二アミンのアミノ基のオキシアルキレン付加物、N,N’-ジアルキルピペラジン類のようなアザ環化合物、N,N,N",N"-テトラメチルジエチレントリアミンのような官能基としてアミノ基を有するアミン触媒等を採用できる。
また、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類等の第4級アンモニウム塩触媒も採用できる。
ポリウレタンフォーム用組成物における、アミン触媒及び第4級アンモニウム塩触媒からなる群より選択される1種以上の触媒の配合量は、特に限定されない。これらの触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.07質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、1質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、アミン触媒及び第4級アンモニウム塩触媒からなる群より選択される1種以上の触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.8質量部以下がより好ましく、0.07質量部以上0.5質量部以下が更に好ましい。
【0039】
触媒として、金属触媒(有機金属触媒)を用いることができる。金属触媒として、従来公知の金属触媒を特に限定なく採用できる。
金属触媒として、例えば、Sn(錫)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等の金属塩、有機酸金属塩等が用いることができる。より具体的には、下記の金属触媒を用いることができる。
Sn触媒:オクチル酸スズ(II)(2-エチルヘキサン酸スズ、スタナスジオクトエート)、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、スタナスジオレエート、ネオデカン酸スズ(II)、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジアセテート等
Pb触媒:オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等
Bi触媒:オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等
Fe触媒:鉄アセチルアセトナート等
Zr触媒:ジルコニウムアセチルアセトナート等
Ni触媒:ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等
Co触媒:コバルトアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等
【0040】
ポリウレタンフォーム用組成物における、金属触媒の配合量は、特に限定されない。金属触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましい。他方、金属触媒に由来する揮発性有機化合物(2-エチルヘキサン酸等)を抑制する観点から、1.0質量部以下が好ましく、0.6質量部以下がより好ましく、0.4質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、金属触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.6質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上0.4質量部以下が更に好ましい。
【0041】
(6)整泡剤
ポリウレタンフォーム用組成物には、整泡剤が含まれていてもよい。整泡剤は、特に限定されない。
整泡剤は、具体的には、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン、シリコーン-グリース共重合体等のシリコーン系化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。これらの整泡剤は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
整泡剤の配合量は、特に限定されない。整泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.03質量部以上5.0質量部以下が好ましい。
【0042】
(7)発泡剤
ポリウレタンフォーム用組成物には、発泡剤が含まれていてもよい。発泡剤は、特に限定されない。発泡剤としては、水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が好適に用いられる。発泡剤が水の場合、添加量はポリウレタン発泡体において目的とする密度や良好な発泡状態が得られる範囲に決定され、通常はポリオール100質量部に対して1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0043】
(8)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。イソシアネートとしては、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族系イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。脂肪族系イソシアネートの1種類以上と、芳香族系イソシアネートの1種類以上を併用してもよい。
また、イソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネート、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートのいずれであってもよく、単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート等の脂肪族系イソシアネートを挙げることができる。
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。
なお、その他ウレタンプレポリマーやカルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性イソシアネート、ビュレット変性イソシアネートも使用することができる。
【0044】
イソシアネートとポリオールの混合割合は、特に限定されない。イソシアネートインデックスは80以上120以下が好ましい。イソシアネートインデックス(INDEX)は、組成物中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート基のモル数を100倍した値であり、[(組成物中のイソシアネート当量/組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0045】
(9)その他の添加剤
ポリウレタンフォーム用組成物には、適宜その他の添加剤、例えば架橋剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、脱泡剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤、消臭剤、芳香剤、香料等を配合することができる。架橋剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の短鎖ジオール系の架橋剤等が挙げられる。着色剤としては、顔料、染料、着色料等が挙げられる。
【0046】
(10)ポリウレタンフォームの物性
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームであることが好ましい。
ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
(10.1)見かけ密度
見かけ密度(JISK7222:2005)は、8kg/m-120kg/mが好ましく、10kg/m-80kg/mがより好ましく、15kg/m-45kg/mが更に好ましい。
(10.2)硬さ
硬さ(JIS K6400-2 D法:2012)は、10N-600Nが好ましく、50N-300Nがより好ましく、80N-150Nが更に好ましい。この範囲であれば柔軟性に富み、軟質ポリウレタンフォームとして好ましい。
(10.3)反発弾性
反発弾性(JIS K6400-3:2011)は、1%-80%が好ましく、5%-70%がより好ましく、15%-60%が更に好ましい。
(10.4)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみ(JIS K6400-4 4.5.2A法:2004)は、20%未満が好ましく、10%未満がより好ましく、5%未満が更に好ましい。圧縮残留ひずみの下限値は特に限定されず、例えば、0%以上である。
(10.5)通気量
通気量(JIS K6400-7 A法:2012)は、25L/min以上が好ましく、40L/min以上がより好ましく、60L/min以上が更に好ましい。尚、通気量は、通常300L/min以下である。
【0047】
2.ポリウレタンフォームの製造
ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム用組成物を攪拌混合してポリオールとイソシアネートを反応させる公知の発泡方法によって製造することができる。発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡とがあり、いずれの成形方法でもよい。スラブ発泡は、混合したポリウレタンフォーム用組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。他方、モールド発泡は、混合したポリウレタンフォーム用組成物をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。
【0048】
3.ポリウレタンフォームの用途
本実施形態のポリウレタンフォームは、例えば、難燃性ポリウレタンフォームとして用いられる。ポリウレタンフォームの用途は特に限定されない。本実施形態のポリウレタンフォームは、環状リン化合物を用いることによって、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤の使用量を低減し、または、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を用いることなく、難燃性を確保できる。本実施形態のポリウレタンフォームは、環境や人体への負荷が少なく、難燃性を有するポリウレタンフォームとして、種々の用途に有用である。
また、本実施形態のポリウレタンフォームは、環状リン化合物を用いることによって、
圧縮残留ひずみ等の諸物性を確保でき、種々の用途に好適である。
【0049】
本実施形態のポリウレタンフォームは、難燃性が確保されているから、乗物の室内用部材として好適である。乗物の室内用部材は、特に限定されない。乗物の室内用部材としては、乗物用シートに用いられる部材、乗物用内装材に用いられる部材等が挙げられる。
【実施例0050】
1.ポリウレタンフォームの製造
表1-4の割合で配合した組成物を調製し、スラブ発泡により、参考例、実施例、及び比較例のポリウレタンフォームを製造した。参考例は、組成物に上記の化学式(1)の化合物(難燃剤1)が含まれない比較例である。
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール:ポリエーテルポリオール、官能基数3、重量平均分子量3000、水酸基価56.1mgKOH/g、エチレンオキサイド含有率8質量%
・発泡剤:水
・アミン触媒1:N,N-ジメチルアミノヘキサノール
・アミン触媒2:脂肪族アミン触媒、EVONIC社製、製品名 NE-300
・整泡剤:シリコーン系整泡剤、品名:SZ-1136、東レ・ダウコーニング社製
・イソシアネート:トリレンジイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合物)
・スズ触媒:オクチル酸スズ(II)
・難燃剤1:9,10-ジヒドロ-10-ベンジル-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド(CAS No.113504-81-7)、三光株式会社、製品名 BCA、上記の化学式(2)の化合物に対応する。
・難燃剤2:6H-ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン6-オキシド(CAS No.35948-25-5)、Pharmicell社、製品名 DPP
・難燃剤3:3-[ヒドロキシ(フェニル)ホスホリル]プロパン酸(CAS No.14657-64-8)、Pharmicell社、製品名 Phoretar101
・難燃剤4:フェノキシフォスファゼン Poly(bis(phenoxy)phosphazene)(CAS No.28212-48-8)、Pharmicell社、製品名 Phoretar201
・難燃剤5:10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド(CAS No.99208-50-1)、三光株式会社、製品名 HCA-HQ
・難燃剤6:含ハロゲン系縮合リン酸エステル、大八化学工業株式会社、製品名 CR-504L
・酢酸セルロース1:フレーク状、粒径 500μm超、試薬
・酢酸セルロース2:真球状微粒子、平均粒径 7μm、ダイセル社製、製品名 BELLOCEA
【0051】
ポリウレタンフォームは、具体的には次の手順により製造した。
イソシアネート以外の原料をカップ容器に計量、攪拌し、混合溶液とした。
混合溶液にイソシアネートを添加し、攪拌して、組成物とした。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
難燃剤1-8及び酢酸セルロース1,2の性状をまとめて表5に記載する。また、難燃剤1-8及び酢酸セルロース1,2について、以下の実験例についての後述の「反応性」「物性」「難燃性」に関する結果を、表5に併記する。
難燃剤1:実施例1
難燃剤2:比較例2
難燃剤3:比較例3
難燃剤4:比較例5
難燃剤5:比較例8
難燃剤6:参考例
酢酸セルロース1:比較例11
酢酸セルロース2:比較例14
【表5】
【0057】
2.評価方法
(1)見かけ密度(密度)
見かけ密度は、JISK7222:2005にて測定した。
(2)硬さ(25%ILD硬さ)
硬さは、JIS K6400-2 D法:2012にて測定した。
なお、比較例10,11,13-15は、ASTM D 3574-11にて25%CLD硬さを測定した。25%CLD硬さは、数値に「( )」を付して記載した。
(3)反発弾性
反発弾性は、JIS K6400-3:2011にて測定した。
(4)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4 4.5.2A法:2004、50%圧縮、70℃、22時間にて測定した。
(5)通気量
通気量は、JIS K6400-7 A法にて測定した。
【0058】
(6)燃焼試験
参考例、比較例、及び実施例のポリウレタンフォームから燃焼試験片(N=5)を切り出した。各燃焼試験片について、米国Underwriters Laboratoryの難燃規格UL94HF-1に従い燃焼試験を行った。UL94HF-1試験では、上記燃焼試験片を金網上に載せ、試験片の端(幅2インチ)全体に炎があたるようなガスバーナーを接炎させた。
【0059】
表1-4の各項目は以下の通りである。
燃焼距離:試験片末端からの燃焼距離(mm)を測定して、5つの燃焼試験片の平均値を算出した。
残炎時間:接炎60秒後から火炎が消えるまでの燃焼時間(秒)を測定して、5つの燃焼試験片の平均値を算出した。
滴下数 :滴下物を数えて、5つの燃焼試験片の平均値を算出した。
着 火 :着火した試験片の数を数えた。表1-4において、着火した試験片の数/全試験片の数として表記した。
【0060】
(7)反応性
ポリウレタンフォームの反応性を評価した。反応性が良好である場合には、「良」とし、不良である場合には「不良」として考えられる要因を記載した。
(8)フォーム外観
ポリウレタンフォームの外観を評価した。ポリウレタンフォームの外観が良好である場合には「良」とし、不良である場合には「不良」としてその内容を記載した。
(9)物性
物性の一つの指標となる圧縮残留ひずみについて、以下の基準で評価した。
A: 5%未満
B:10%未満
C:20%未満
D:20%以上
(10)燃焼性
燃焼距離の平均値(N=5)を、以下の基準で評価した。燃焼性の評価の「-」は、当該評価を行っていないことを意味する。
A: 60mm未満
B: 80mm未満
C:100mm未満
D:100mm以上
【0061】
3.結果
評価結果を、表1-4に併記する。
実施例1-12の組成物は、ポリオールと、イソシアネートと、上記の化学式(1)の化合物と、を含んでいる。実施例1-12のポリウレタンフォームは、物性の評価が「A」、「B」、「C」のいずれかであった。実施例1-12のポリウレタンフォームは、燃焼性の評価が「A」、「B」、「C」のいずれかであった。実施例1-12は、物性及び難燃性が両立され、実用に適していること分かった。
【0062】
これに対して、比較例1-15の組成物は、上記の化学式(1)の化合物を含んでいない。比較例1-15のポリウレタンフォームは、物性の評価と、燃焼性の評価の少なくとも一方が「D」であった。比較例1-15は、実用に適していないことが分かった。
【0063】
以下、詳細に検討する。
比較例1は、難燃剤を含まない例(ブランク)である。比較例1の燃焼距離は125mmであり、難燃性の評価が「D」であった。
【0064】
参考例は、ハロゲン系難燃剤を20質量部添加した例である。参考例の燃焼距離は45mmであった。参考例は、物性の評価と、燃焼性の評価が共に「A」である。しかし、参考例は、ハロゲン系難燃剤を使用する点において、環境や人体への負荷が懸念される。
【0065】
比較例2,3は、難燃剤2(DPP)および難燃剤3(Phoretar101)を5質量部添加した例である。比較例2,3は、発泡阻害が生じた。難燃剤2(DPP)および難燃剤3(Phoretar101)に含まれる活性水素が反応を阻害した可能性が考えられる。
【0066】
実施例1-3は、難燃剤1(BCA)を、10質量部、20質量部、25質量部それぞれ添加した例である。実施例1-3の燃焼距離は、それぞれ75mm、55mm、45mmであった。難燃剤1(BCA)を添加することで、難燃性を向上できることが示唆された。
【0067】
比較例4-6は、難燃剤5(Phoretar201)を単独で、5質量部、10質量部、20質量部添加した例である。比較例4-6の燃焼距離は、それぞれ125mm、125mm、115mmであった。難燃剤5(Phoretar201)単独では、難燃性を十分に向上できなかった。
【0068】
実施例4-6は、難燃剤1(BCA)10質量部に加え、難燃剤5(Phoretar201)を3質量部、5質量部、10質量部を併用添加した例である。実施例4-6の燃焼距離は、それぞれ75mm、72mm、59mmであった。難燃剤1(BCA)と難燃剤5(Phoretar201)を併用することで、難燃剤1(BCA)単体よりも、難燃性を向上できることが示唆された。
【0069】
比較例7-9は、難燃剤5(HCA-HQ)を5質量部、10質量部、20質量部添加した例である。比較例7-9の燃焼距離は、それぞれ123mm、56mm、40mmであった。難燃剤5(HCA-HQ)を添加することで、難燃性を向上できることが示唆された。しかし、比較例7-9は、物性の評価がいずれも「D」であった。難燃剤5(HCA-HQ)は、水酸基(活性水素)を有し、水溶性があるために、物性が悪化した可能性がある。
【0070】
比較例10-12は、酢酸セルロース(粒径 500μm超)を、それぞれ5質量部、10質量部、20質量部添加した例である。比較例13-15は、酢酸セルロース(平均粒径 7μm)を、それぞれ5質量部、10質量部、20質量部添加した例である。比較例10-15の燃焼距離は、すべて125mmであり、難燃効果がないことが示唆された。
【0071】
実施例7-9は、難燃剤1(BCA)10質量部に加え、酢酸セルロース(粒径 500μm超)を、1質量部、3質量部、5質量部併用添加した例である。実施例7-9の燃焼距離は、56mm、64mm、51mmであった。
実施例10-12は、難燃剤1(BCA)10質量部に加え、酢酸セルロース(平均粒径 7μm)を、1質量部、3質量部、5質量部併用添加した例である。実施例10-12の燃焼距離は、71mm、57mm、24mmであった。
難燃剤1(BCA)と酢酸セルロースを併用することで、難燃剤1(BCA)単体よりも、難燃性を向上できることが示唆された。
【0072】
以上の実施例によれば、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を用いることなく、難燃性を確保できた。また、上記の化学式(1)の化合物が、ハロゲン系難燃剤の代替物質となり得ることが確認できた。
【0073】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。
図1