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  • 特開-液冷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025050339
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】液冷装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20250327BHJP
【FI】
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159063
(22)【出願日】2023-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根崎 楓真
(72)【発明者】
【氏名】中村 豪男
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA06
5E322AA10
5E322DA04
5E322FA01
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】省スペースであり、且つ放熱性能に優れた液冷装置を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、液体の冷媒が流入する液体流入口と、冷媒が流出する液体流出口とを備え、少なくとも一部が多孔質体で構成され、該多孔質体に液体の冷媒が接触することで冷却を行う液冷装置であって、多孔質体の内部に存在する空孔の断面の円相当径平均値が150μm以上である、液冷装置が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の冷媒が流入する液体流入口と、前記冷媒が流出する液体流出口とを備え、少なくとも一部が多孔質体で構成され、該多孔質体に液体の前記冷媒が接触することで冷却を行う液冷装置であって、前記多孔質体の内部に存在する空孔の断面の円相当径平均値が150μm以上である、液冷装置。
【請求項2】
前記多孔質体の断面において、前記空孔の占める面積の割合が20%以上である、請求項1に記載の液冷装置。
【請求項3】
前記多孔質体の断面において、高さ方向を前記多孔質体の主面と垂直な方向と定義するとき、高さ500μmで幅2000μmの視野範囲において前記高さ方向について前記視野範囲の上辺から下辺に連結している前記空孔の面積が、前記視野範囲に存在する前記空孔の全ての面積のうち40%以上である、請求項1または請求項2に記載の液冷装置。
【請求項4】
前記多孔質体の空隙率が、30%以上、且つ70%以下である、請求項3に記載の液冷装置。
【請求項5】
前記多孔質体は、金属の粉末から形成される、請求項4に記載の液冷装置。
【請求項6】
前記金属の粉末のうち90%以上の量が粒子径300μm以上である、請求項5に記載の液冷装置。
【請求項7】
前記多孔質体は、焼結法によって形成される、請求項6に記載の液冷装置。
【請求項8】
前記多孔質体は、金属の板材に直接焼結される、請求項7に記載の液冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が多孔質体で構成される液冷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体の冷媒を用いて熱源から熱を奪う液冷装置は、電子機器の冷却、産業用冷却塔、化学反応の熱管理等の用途で極めて一般的に用いられている。また冷却フィン等、放熱体の形状を工夫して、冷却効率を向上させる方法も知られている。液冷装置の部材として多孔質体を用いて、その多孔質体に冷媒を接触させることで放熱させるという方法もある。多孔質体を用いる方法は、多孔質体の有する大きな表面積と、多孔質体の内部に存在する多数の小空間が、冷媒と熱源との間で熱伝達を促進するため効果的な冷却が期待できる。
【0003】
特許文献1では、冷却流路を構成する壁部の少なくとも一部が多孔質体である液冷装置が開示されている。特許文献1に記載された実施例の中には、空隙率の異なる複数の多孔質体を用いる技術が開示されており、また空隙率によって冷却効率が異なってくることがシミュレーションの結果として示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-134778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィン形状の放熱体は、冷却能力は高いが、大きなスペースが必要になるという欠点を持つ。またバルクの金属表面からの放熱よりも冷却能力を向上させたいという課題がある。多孔質体を用いた液冷装置の冷却能力は多孔質体の空隙率だけでは決定されない。例えば多孔質体の内部に存在する空孔のサイズ等により、熱交換の効率は変化する。
本発明の目的は、省スペースであり、且つ放熱性能に優れた液冷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、多孔質体を用いた液冷の液冷装置の構成に関し、鋭意研究を行った。そして、多孔質体であればどんなものでも冷却効果が高くなるわけではないことを見出した。特に多孔質体の内部における液体交換がうまくいかない場合には、かえって冷却性能が落ちてしまうことがあるということがわかった。
したがって上記目的を達成するために、液体の冷媒が流入する液体流入口と、冷媒が流出する液体流出口とを備え、少なくとも一部が多孔質体で構成され、該多孔質体に液体の冷媒が接触することで冷却を行う液冷装置であって、多孔質体の内部に存在する空孔の断面の円相当径平均値が150μm以上である、液冷装置が提供される。
このような液冷装置においては、多孔質体が小さな占有体積で高い放熱性能を有し、例えば電子部品の放熱体として使用され得る。
【0007】
本発明の一実施形態では、多孔質体の断面において、空孔の占める面積の割合が20%以上である、液冷装置が提供される。
【0008】
本発明の他の実施形態では、多孔質体の断面において、高さ方向を多孔質体の主面と垂直な方向と定義するとき、高さ500μmで幅2000μmの視野範囲において高さ方向について視野範囲の上辺から下辺に連結している空孔の面積が、視野範囲に存在する空孔の全ての面積のうち40%以上である、液冷装置が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態では、多孔質体の空隙率が、30%以上、且つ70%以下である、液冷装置が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態では、多孔質体は、金属の粉末から形成される、液冷装置が提供される。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態では、金属の粉末のうち90%以上の量が粒子径300μm以上である、液冷装置が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、多孔質体は、焼結法によって形成される、液冷装置が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、多孔質体は、金属の板材に直接焼結される、液冷装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、省スペースであり、且つ放熱性能に優れた液冷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本実施形態に係る液冷装置の第1実施例の断面図である。(b)本実施形態に係る液冷装置の第2実施例の断面図である。(c)本実施形態に係る液冷装置の第3実施例の断面図である。
図2】本実施形態に係る液冷装置を構成する多孔質体の断面模式図である。
図3】貫通空孔率の説明図である。
図4】各試料における試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ただし詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
以下、図1図4を用いて本実施形態を説明する。
[1.構成]
図1(a)、図1(b)、及び図1(c)は、それぞれ本実施形態に係る液冷装置1の実施例の断面図である。
【0018】
(実施例1の構成)
実施例1に係る液冷装置1は、冷却を行う液体を保持する液冷装置外壁30を備える。液冷装置外壁30は、冷媒である液体が流入する入り口である液体流入口10と、熱交換を終えた液体の出口である液体流出口20を備える。熱交換を行う多孔質体40は、支持部50によって支持され、支持部50と液冷装置外壁30は、液体が漏れないように、例えば箱状の閉空間を構成する。このとき多孔質体40は、その主面45が支持部50と金属接合されていてよい。ここで多孔質体40の主面45とは、支持部50と接触している面積が最も大きな面を意味する。冷却対象である熱源70について、熱源70と支持部50の間には熱伝導性の高い接合部60が設けられる。熱源70の周辺には、熱源70の温度を計測するための熱電対80が備えられている。
【0019】
液冷装置1に用いられる液体は、例えば水、オイル、LLC(Long Life Coolant)等の冷却液であり、液冷装置において一般的に使用されるものであればどのようなものでもよく、金属を腐食しにくい液体が好ましい。冷却液は、例えばヒートポンプサイクルを利用して冷却処理を行うチラー等(不図示)で冷却され、液冷装置1を含めた冷却システム内を循環する。
【0020】
接合部60については、熱伝導性の高いグリースやシートなど任意の熱伝導材料であってよい。
【0021】
(実施例2の構成)
図1(b)は、液冷装置1の他の実施例の構成を示す図である。本実施例においては液冷装置外壁30と、多孔質体40を支持する支持部50は一体であり、箱状の閉空間を構成する。このとき、多孔質体40は、その主面45が液冷装置外壁30と金属接合されていてよい。上記した実施例1と同様に、本実施例における液冷装置1は、液体流入口10と液体流出口20を備える。冷却対象である熱源70と支持部50の間には熱伝導性の高い接合部60が設けられる。熱源70の周辺には、熱源70の温度を計測するための熱電対80が備えられている。ただし、熱電対は必須の構成要素ではない。
【0022】
(実施例3の構成)
図1(c)は、液冷装置1の別の実施例の構成を示す図である。本実施例においては液冷装置外壁30と、熱源70が箱状の閉空間を構成する。このとき、多孔質体40は、その主面45が熱源70と金属接合されていてよい。上記した実施例1と同様に、本実施例における液冷装置1は、液体流入口10と液体流出口20を備える。熱源70の周辺には、熱源70の温度を計測するための熱電対80が備えられている。
なお図示はしないが、熱源70自体が箱状の閉空間を構成して、液体流入口10と液体流出口20が構成される形態でもよい。このとき熱源70と多孔質体40の主面45とは金属接合されていてもよい。
【0023】
図2は、上記した液冷装置1における多孔質体40の断面模式図である。具体的には、例えば上記実施例1で言えば、多孔質体40と支持部50の接合面をXY方向としたときに、接合面と垂直方向の断面を模式的に表した図である。多孔質体40は、多孔質部90とその隙間である空孔部100から構成される。空孔部100は、3次元的に連結された網目状の空間を実現する。冷却するための液体は、この空孔部100に入り込み、熱交換を行う。冷却するための液体は純水やLLCを使用してよい。このとき、空孔部100について、空孔部100の断面の円相当径の平均値が150μm以上、且つ500μm以下であることが望ましい。空孔が小さすぎると熱交換がしにくくなる。また空孔が大きすぎると加工や設置に際して最低限必要な機械的強度が満たせなくなる。空孔部100について最適なサイズは、冷媒の種類や、多孔質体の材料によって異なってくる可能性があるが、冷媒が純水であり、多孔質体40が純アルミまたはアルミ合金で形成されている場合には、空孔部100の断面の円相当径の平均値が150μm以上であることが望ましいという実験結果を発明者は得ている。
【0024】
ここで、空孔40の円相当径の平均値とは、空孔40の断面について、その断面の面積に相当する真円の直径の平均値である。例えば顕微鏡の視野内にある、すべての空孔40の断面について平均値を求める。
また、多孔質体40の断面において、空孔40の占める面積の割合は20%以上である。多孔質体40の断面において、空孔40の占める面積の割合は30%以上、且つ70%以下であることが望ましい。空孔40の占める面積の割合が70%以下であるという条件は、多孔質体40の加工や設置などに好適な機械的強度を満たし、かつ内部空孔が大きいことによる多孔質体40全体の熱伝導率低下を防ぐことにつながる。
なお多孔質体40の空隙率は30%以上、且つ70%以下である。多孔質体40の空隙率は40%以上、且つ60%以下であることがさらに望ましい。
【0025】
多孔質体40は、金属粉末を焼結させて作製する。もちろん多孔質体40は他の方法で作製してもよい。例えば湿式メッキで作製してもよく、また3Dプリンタで作製してもよい。しかし、空孔100の表面積が大きくなる金属粉末の焼結法で作製することが望ましい。焼結法で作製すると、内部に複雑な流路が形成され、空孔100を作りながら強度も確保された多孔質体を作成できる。このとき、基材の金属粉末としては、純アルミニウム単体粉末、アルミニウム合金単体粉末、または、純アルミニウム及びアルミニウム合金の混合粉のうちから1種類を選択する。もちろん金属粉末の金属としては、銅や銅の合金であってもよく、また他の金属でもよい。金属粉末は、90%以上の量が粒子径300μm以上であることが望ましい。ここで本明細書では、量というのは、例えば重量パーセントや容量パーセントを意味するが、重量パーセントで制御することが望ましい。金属粉末は、その大きさによって分別する操作である分球をして、適切な粒度分布の粉末を作製する。別途、他の粉末を添加する場合には適切な粒度分布となったときに混合する。焼結は、550℃から670℃程度で段階的に還元雰囲気にて実施することが望ましい。
【0026】
多孔質体40と液冷装置1の接着は、例えば上記実施例1で言えば、支持部50に対して、多孔質体40を直接焼結することが望ましいが、溶接や圧接といった方法でもよく、接着剤や粘着テープでの接続でもよい。多孔質体40を支持部50に直接焼結で形成する場合には、多孔質体40を支持部50に接着させる接着工程がないため、量産性に優れる。
【0027】
図3(a)と図3(b)は、多孔質体40における貫通空孔率の説明図である。図3(a)は、顕微鏡で多孔質体40の断面を、例えばY方向(幅方向)2000μm、Z方向(高さ方向)500μmで観察したときの観察視野の模式図である。貫通空孔率は、断面を見た時の観察視野において、空孔110のすべてが上辺から下辺につながっている空孔の面積が、空孔全体の面積のうちに占める割合として定義される。図3(a)の場合、視野上辺95と視野下辺97の間で、空孔110のすべてが上辺から下辺につながっている状態であり、貫通空孔率100%である。図3(b)の場合、視野上辺95と視野下辺97の間で、空孔120のすべてが上辺から下辺につながっていない状態であり、貫通空孔率0%である。本実施形態に係る液冷装置1で用いられる多孔質体40は、例えば上記実施例1で言えば、多孔質体40と支持部50の接合面をXY方向としたときに、接合面と垂直方向の断面について、観察視野がY方向2000μm、Z方向500μmであるとき貫通空孔率としては40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより望ましい。このような特徴により、冷却のための液体が多孔質体40の内部空間を通過しやすくなり熱交換が容易になる。
【0028】
[2.実験結果]
液冷装置1が上記実施例1に従った構成を備えた場合における実験結果を表1に示す。実験に用いた多孔質体40は略直方体であり、対向する支持部50と平行な主面45について、50mm角の正方形の形状をなし、第1平面と垂直な厚み方向について1mmである。ここで冷却性能とは、多孔質体40の代わりにバルクのAl板を支持部50上に備えた場合との比較を示す。表において二重丸、一重丸は、Al板よりも冷却性能が優れていることを示し、三角印は、Al板と同程度の冷却性能であることを示す。また×マークはAl板よりも冷却性能が劣ることを示す。ここで多孔質体40の冷却性能は、熱源から多孔質体を介して放熱される放熱性能を意味する。
【表1】
【0029】
図4は、表1に示した実施例No.1、実施例No.2、実施例No.5、実施例No.4、及び実施例No.9と、Al板の間での冷却性能の比較実験結果である。具体的には冷却チラーで純水を冷却循環させて1時間放置したときの液冷装置1における最終到達温度を比較している。具体的には熱源70から熱を吸熱して、多孔質体40で熱交換が適正に行われると、熱電対80で計測される最終到達温度が低くなるという結果が得られる。縦軸は最終到達温度である。今回の実験は、Al板での最終到達温度が50℃になる冷媒循環の条件でおこなった。最も冷却性能が優れていたのは実施例No.1であり、貫通空孔率が高い場合の方が、最終到達温度が低くなる傾向、すなわち冷却能力が優れている傾向があることが分かった。逆に貫通空孔率が低い場合(例えば、実施例NO.4、及び実施例No.9)では、冷却性能はAl板に比べて低くなる傾向のあることが分かった。これは多孔質体40の内部で空孔が主面45と垂直方向につながっていないことで断熱効果が優位になってしまい、多孔質体40での冷却性能が低くなってしまうことが原因であると考えられる。
【0030】
[3.効果等]
(構成1)
本実施形態に係る液冷装置は、液体の冷媒が流入する液体流入口と、前記冷媒が流出する液体流出口とを備え、少なくとも一部が多孔質体で構成され、該多孔質体に液体の冷媒が接触することで冷却を行う液冷装置であって、前記多孔質体の内部に存在する空孔の断面の円相当径平均値が150μm以上である液冷装置を提供する。
多孔質体の内部に存在する空孔の大きさが小さければ小さいほど毛細管現象のため空孔内に冷媒を取り込みやすくなり熱交換の効率が向上するように思われる。しかし空孔のサイズが小さすぎると、冷媒が空孔内にとどまってしまうため、熱交換の効率はかえって落ちてしまう。
本実施形態に係る液冷装置の少なくとも一部を構成する多孔質体の内部に存在する空孔の断面の円相当径平均値が150μm以上である場合、空孔内外での冷媒の交換が活発になり、結果として熱交換の効率が向上するという効果を奏する。
【0031】
(構成2)
本実施形態に係る液冷装置に係る前記多孔質体の断面において、前記空孔の占める面積の割合が20%以上である、構成1に記載の液冷装置を提供する。
多孔質体の内部に存在する空孔の大きさが小さすぎると、冷媒が空孔内にとどまってしまうため、熱交換の効率は落ちてしまう。
本実施形態に係る液冷装置の少なくとも一部を構成する多孔質体の断面において、前記空孔の占める面積の割合が20%以上であると、空孔内外での冷媒の交換が活発になり、結果として熱交換の効率が向上するという効果を奏する。
【0032】
(構成3)
本実施形態に係る液冷装置に係る前記多孔質体の断面において、高さ方向を前記多孔質体の主面と垂直な方向と定義するとき、高さ500μmで幅2000μmの視野範囲において前記高さ方向について前記視野範囲の上辺から下辺に連結している前記空孔の面積が、前記視野範囲に存在する前記空孔の全ての面積のうち40%以上である、構成1または構成2に記載の液冷装置を提供する。
本実施形態に係る液冷装置の少なくとも一部を構成する多孔質体について、空孔が高さ方向に貫通している割合が大きいと、熱交換を終わった冷媒が抜けやすくなり、結果として熱交換の効率が向上するという効果を奏する。
【0033】
(構成4)
本実施形態に係る液冷装置に係る前記多孔質体の空隙率が、30%以上、且つ70%以下である、構成1から構成3のいずれかに記載の液冷装置を提供する。
一般に多孔質体については、空隙率が高いことと内部表面積が大きいことには相関関係がある。したがって放熱のためには、多孔質体の空隙率が高いことが望ましい。しかし空隙率が高い場合には多孔質体全体の熱伝導率が低下するとともに、多孔質体自体の強度低下も招いてしまう。本実施形態に係る液冷装置の少なくとも一部を構成する多孔質体については空隙率が上記した範囲であると、高い熱交換率と多孔質自体の強度を両立しうるという優れた効果を奏する。
【0034】
(構成5)
本実施形態に係る液冷装置に係る前記多孔質体は、金属の粉末から形成される、構成1から構成4のいずれかに記載の液冷装置を提供する。
金属粒子は、望みの粒径のものを比較的安価に入手可能であるため、多孔質体を金属粒子から形成することは安価であり制御性が高い。したがって高い熱交換率と多孔質自体の強度を両立する多孔質体を形成しやすいという効果を奏する。
【0035】
(構成6)
本実施形態に係る液冷装置に係る前記多孔質体は、前記金属の粉末のうち90%以上の量が粒子径300μm以上である、構成5に記載の液冷装置を提供する。
これにより高い熱交換率と多孔質自体の強度を両立する多孔質体を形成しやすいという効果を奏する。
(構成7)
本実施形態に係る液冷装置に係る前記多孔質体は、焼結法によって形成される、構成6に記載の液冷装置を提供する。
焼結法は、粒子の形状、サイズ、分布、および焼結の温度と時間によって制御して、多孔質体の微細構造(例えば、空隙率)を制御することが可能である。また焼結法によって、金属粒子は一緒に溶融して強固に結合する結果、強度と耐久性が高い多孔質体が得られる。したがって高い熱交換率と多孔質自体の強度を両立する多孔質体を形成しやすいという効果を奏する。
【0036】
(構成8)
前記多孔質体は、金属の板材に直接焼結される、構成7に記載の液冷装置。
多孔質体を、ベースとなる金属の板材に接着する接着工程がないため量産性に優れ、高い熱交換率と多孔質自体の強度を両立する多孔質体を形成しやすいという効果を奏する。
【0037】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示は、冷媒を用いて熱源から熱を奪う液冷装置に適用可能である。具体的には電子部品の放熱などに用いる液冷に本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 液冷装置
10 液体流入口
20 液体流出口
30 液冷装置外壁
40 多孔質体
45 主面
50 支持部
60 接合部
70 熱源
80 熱電対
90 多孔質部
95 視野上辺
97 視野下辺
100 空孔部
110 貫通空孔部
120 非貫通空孔部
図1
図2
図3
図4