(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005038
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0438 20160101AFI20250108BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20250108BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20250108BHJP
【FI】
H01M8/0438
H01M8/04 N
H01M8/043
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105023
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】中根 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB02
5H127AB04
5H127AC02
5H127AC14
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA57
5H127DA15
5H127DB03
5H127DB13
5H127DC81
5H127EE18
5H127EE27
(57)【要約】
【課題】燃料電池モジュールに備えられる水素循環ポンプに発生する異常の誤判断を抑制する。
【解決手段】燃料電池スタックFCSから排出される未反応の水素ガスを水素循環流路CPを介して吸入し水素供給流路SPに吐出する水素循環ポンプHPと、水素供給流路SP内の圧力を検出する第1圧力センサS1と、水素循環流路CP内の圧力を検出する第2圧力センサS2と、第1圧力センサS1により検出される圧力及び第2圧力センサS2により検出される圧力の少なくとも1つの圧力に基づいて水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かを判断する判断部2とを備えて燃料電池モジュールFCMを構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに水素ガスを供給する水素供給流路と、
前記燃料電池スタックから排出される未反応の水素ガスを水素循環流路を介して吸入し前記水素供給流路に吐出する水素循環ポンプと、
前記水素供給流路内の圧力を検出する第1圧力センサと、
前記水素循環流路内の圧力を検出する第2圧力センサと、
前記第1圧力センサにより検出される圧力及び前記第2圧力センサにより検出される圧力の少なくとも1つの圧力に基づいて前記水素循環ポンプに異常が発生しているか否かを判断する判断部と、
を備える燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記判断部は、前記第1圧力センサにより検出される圧力と前記第2圧力センサにより検出される圧力との圧力差が第1閾値以下である場合、前記水素循環ポンプに異常が発生していると判断する
燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記判断部は、前記第1圧力センサにより検出される圧力の単位時間あたりの変化量、または、前記第2圧力センサにより検出される圧力の単位時間あたりの変化量が第2閾値以下である場合、前記水素循環ポンプに異常が発生していると判断する
燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記判断部は、前記燃料電池スタックの発電制御前において、または、前記燃料電池スタックの発電制御中において、前記水素供給流路に設けられるインジェクタが駆動していないときに前記水素循環ポンプに異常が発生しているか否かを判断する
燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに備えられる水素循環ポンプに異常が発生しているか否かを判断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水素循環ポンプの故障判断技術として、水素循環ポンプを駆動させるモータに流れる電流が下限値を下回った場合、水素循環ポンプに故障が発生していると判断するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、メンテナンスの観点から水素循環ポンプが正常に機能しているかを判定し、異常が発生することを未然に検出したいという要望がある。
【0004】
上記故障判断技術では、モータに故障が発生している場合、水素循環ポンプに故障が発生していないにもかかわらず、水素循環ポンプに故障が発生していると誤って判断されるおそれがあるため、異常が発生していることを未然に検出するには別の方法で検出することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、燃料電池モジュールに備えられる水素循環ポンプに発生する異常の誤判断を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である燃料電池モジュールは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックに水素ガスを供給する水素供給流路と、前記燃料電池スタックから排出される未反応の水素ガスを水素循環流路を介して吸入し前記水素供給流路に吐出する水素循環ポンプと、前記水素供給流路内の圧力を検出する第1圧力センサと、前記水素循環流路内の圧力を検出する第2圧力センサと、前記第1圧力センサにより検出される圧力及び前記第2圧力センサにより検出される圧力の少なくとも1つの圧力に基づいて前記水素循環ポンプに異常が発生しているか否かを判断する判断部とを備える。
【0008】
このように、本発明に係る一つの形態である燃料電池モジュールでは、水素循環ポンプに入出力される水素ガスの圧力、すなわち、水素循環ポンプに直接的に係わるパラメータに基づいて水素循環ポンプに異常が発生しているか否かを判断する構成である。そのため、水素循環ポンプを駆動するモータに流れる電流など、水素循環ポンプに間接的に係わるパラメータに基づいて水素循環ポンプに異常が発生しているか否かを判断する構成に比べて、水素循環ポンプに異常が発生していないにもかかわらず、水素循環ポンプに異常が発生していると誤って判断することを抑制することができる。
【0009】
また、前記判断部は、前記第1圧力センサにより検出される圧力と前記第2圧力センサにより検出される圧力との圧力差が第1閾値以下である場合、前記水素循環ポンプに異常が発生していると判断するように構成してもよい。
【0010】
また、前記判断部は、前記第1圧力センサにより検出される圧力の単位時間あたりの変化量、または、前記第2圧力センサにより検出される圧力の単位時間あたりの変化量が第2閾値以下である場合、前記水素循環ポンプに異常が発生していると判断するように構成してもよい。
【0011】
また、前記判断部は、前記燃料電池スタックの発電制御前において、または、前記燃料電池スタックの発電制御中において、前記水素供給流路に設けられるインジェクタが駆動していないときに前記水素循環ポンプに異常が発生しているか否かを判断するように構成してもよい。
【0012】
これにより、インジェクタが駆動することで第1及び第2圧力センサにより検出される圧力が変動することを抑えることができるため、水素循環ポンプに異常が発生しているか否かの判断精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池モジュールに備えられる水素循環ポンプに発生する異常の誤判断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の燃料電池モジュールの一例を示す図である。
【
図3】第1実施例の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施例の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】インバータ回路の駆動信号のデューティ比、インジェクタの駆動フラグ、及び圧力センサにより検出される圧力の一例を示す図である。
【
図6】インバータ回路の駆動信号のデューティ比及び圧力センサにより検出される圧力の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0016】
図1は、実施形態の燃料電池モジュールの一例を示す図である。
【0017】
図1に示す燃料電池モジュールFCMは、例えば、フォークリフト、トーイングトラクタ、または無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などの車両に搭載され、その車両に搭載される負荷Loに電力を供給する。このように構成する場合、
図1に示す負荷Loは、例えば、荷役装置や走行用モータを駆動するインバータ回路などとする。
【0018】
なお、燃料電池モジュールFCMは、工業用定置式発電機、家庭用定置式発電機、または非常用定置式発電機などの定置式発電機に備えられていてもよい。このように構成する場合、
図1に示す負荷Loは、例えば、産業機械や家電製品などとする。
【0019】
また、燃料電池モジュールFCMは、燃料ガス系補機として、水素タンクHTと、インジェクタINJと、気液分離機GLSと、インバータ回路INVと、モータMと、水素循環ポンプHPと、第1圧力センサS1と、第2圧力センサS2と、排気排水弁EDVと、希釈器DILとを備える。
【0020】
また、燃料電池モジュールFCMは、酸化剤ガス系補機として、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVとを備える。
【0021】
また、燃料電池モジュールFCMは、電気系補機として、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bとを備える。
【0022】
また、燃料電池モジュールFCMは、燃料電池スタックFCSと、記憶装置Strと、通信装置Comと、制御装置Cntとを備える。
【0023】
燃料電池スタックFCSは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成され、水素ガスに含まれる水素と空気に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0024】
水素タンクHTは、水素ガスの貯蔵容器である。水素タンクHTに貯蔵された水素ガスはインジェクタINJ及び水素供給流路SPを介して燃料電池スタックFCSに供給される。
【0025】
インジェクタINJは、燃料電池スタックFCSに供給される水素ガスの流量を調整する。
【0026】
気液分離機GLSは、燃料電池スタックFCSから排出される未反応の水素ガスと液水とを分離する。
【0027】
インバータ回路INVは、複数のスイッチング素子により構成され、制御装置Cntから各スイッチング素子に出力される駆動信号により各スイッチング素子が繰り返しオン、オフすることで、互いに位相が異なる複数の交流電力がモータMに供給され、モータMが駆動する。モータMが駆動すると、水素循環ポンプHPが駆動する。
【0028】
水素循環ポンプHPは、気液分離機GLSにより分離された水素ガスを水素供給流路SPを介して燃料電池FCに再度供給する。すなわち、水素循環ポンプHPは、燃料電池スタックFCSから排出される未反応の水素ガスを水素循環流路CPを介して吸入し水素供給流路SPに吐出する。
【0029】
第1圧力センサS1は、水素供給流路SP内の圧力P1を検出し、その検出した圧力P1を制御装置Cntに送る。
【0030】
第2圧力センサS2は、水素循環流路CP内の圧力P2を検出し、その検出した圧力P2を制御装置Cntに送る。なお、第2圧力センサS2は、
図1に示す例では、気液分離機GLSと水素循環ポンプHPとの間の水素循環流路CP内の圧力P2を検出する構成であるが、燃料電池スタックFCSと気液分離機GLSとの間の水素循環流路CP内の圧力P2を検出するように構成してもよい。
【0031】
排気排水弁EDVは、気液分離機GLSにより分離された液水を希釈器DILに送る。希釈器DILに送られた液水は、希釈器DIL内のタンクに溜まる。また、燃料電池スタックFCSから排出された水素ガスと空気は希釈器DILで合流し、燃料電池モジュールFCMの外部または内部に排出される。
【0032】
エアコンプレッサACPは、燃料電池モジュールFCMの周囲に存在する空気を圧縮し燃料電池スタックFCSに供給する。
【0033】
エア調圧弁ARVは、燃料電池スタックFCSに供給される空気の圧力や流量を調整する。
【0034】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池スタックFCSから出力される電圧を所定電圧に変換する。DCDCコンバータCNVから出力される電力は、負荷Loの他に、水素循環ポンプHPなどの補機や蓄電装置Bに供給される。
【0035】
蓄電装置Bは、リチウムイオン電池またはリチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続されている。DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、燃料電池モジュールFCMの外部(例えば、負荷Loの動作を制御する不図示の制御部)から要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうち、要求電力分の電力が負荷Loに供給されるとともに、残りの電力が蓄電装置Bに供給される。DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率(蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合[%])が増加する。また、負荷Loから燃料電池モジュールFCMに供給される回生電力が蓄電装置Bに供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率が増加する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、燃料電池モジュールFCMの外部から要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに、足りない分の電力が蓄電装置Bから負荷Loに供給される。蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電率が減少する。
【0036】
記憶装置Strは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成され、後述する第1閾値や第2閾値などを記憶する。
【0037】
通信装置Comは、例えば、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末により構成され、インターネットなどのネットワークNを介してサーバSVとデータを送受信する。
【0038】
制御装置Cntは、マイクロコンピュータなどにより構成され、発電制御部1と、判断部2とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶装置Strに記憶されているプログラムを実行することで発電制御部1及び判断部2が実現される。
【0039】
発電制御部1は、燃料電池スタックFCSの発電を制御するために各補機の動作を制御する。すなわち、発電制御部1は、蓄電装置Bの充電率と複数の閾値との比較結果に応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させるとともに、PI(Proportional-Integral)制御などにより燃料電池スタックFCSの発電電力が目標発電電力Ptに追従するように、各補機の動作を制御する。例えば、発電制御部1は、第1圧力センサS1により検出される圧力と目標発電電力Ptに対応する圧力との差がゼロになるように、インジェクタINJ、水素循環ポンプHP、及び排気排水弁EDVの駆動を制御する。
【0040】
このように、蓄電装置Bの充電率に応じて燃料電池スタックFCSの発電電力を段階的に変化させることにより、燃料電池スタックFCSの出力電圧の単位時間あたりの変動回数を抑えることができるため、燃料電池スタックFCSの劣化を抑制することができる。なお、目標発電電力Ptが大きくなるほど、燃料電池FCの発電電力が大きくなり、目標発電電力Ptが小さくなるほど、燃料電池FCの発電電力が小さくなるものとする。
【0041】
判断部2は、第1圧力センサS1により検出される圧力P1及び第2圧力センサS2により検出される圧力P2のうちの少なくとも1つの圧力に基づいて水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かを判断する。
【0042】
また、判断部2は、水素循環ポンプHPに異常が発生していると判断すると、水素循環ポンプHPに異常が発生している旨を燃料電池モジュールFCMの外部に設けられるディスプレイDPYに表示させる。
【0043】
また、判断部2は、水素循環ポンプHPに異常が発生していると判断すると、水素循環ポンプHPに異常が発生している旨を示すデータを通信装置ComによりネットワークNを介してサーバSVに送信させる。サーバSVは、水素循環ポンプHPに異常が発生している旨を示すデータを受信すると、その旨を不図示のディスプレイに表示させる。
【0044】
このように、判断部2では、水素循環ポンプHPに入出力される水素ガスの圧力、すなわち、水素循環ポンプHPに直接的に係わるパラメータに基づいて水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かを判断する構成である。そのため、水素循環ポンプHPを駆動するモータMに流れる電流など、水素循環ポンプHPに間接的に係わるパラメータに基づいて水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かを判断する構成に比べて、水素循環ポンプHPに異常が発生していないにもかかわらず、水素循環ポンプHPに異常が発生していると誤って判断することを抑制することができる。
【0045】
<第1実施例>
第1実施例の判断部2は、第1圧力センサS1により検出される圧力P1と第2圧力センサS2により検出される圧力P2との圧力差ΔPが第1閾値以下である場合、水素循環ポンプHPに異常が発生していると判断する。
【0046】
ここで、
図2は、水素循環ポンプHPを模式的に示す図である。
【0047】
図2に示す水素循環ポンプHPは、いわゆる、ダイヤフラムポンプであり、室C1~C3と、逆止弁V1~V4と、ダイヤフラムDとを備える。なお、逆止弁V1~V4は、例えば、ゴムにより構成される。また、逆止弁V1は、水素循環流路CPから室C1への水素ガスの移動を許可し、室C1から水素循環流路CPへの水素ガスの移動を禁止する。また、逆止弁V2は、室C1から室C2への水素ガスの移動を許可し、室C2から室C1への水素ガスの移動を禁止する。また、逆止弁V3は、室C2から室C3への水素ガスの移動を許可し、室C3から室C2への水素ガスの移動を禁止する。また、逆止弁V4は、室C3から水素供給流路SPへの水素ガスの移動を許可し、水素供給流路SPから室C3への水素ガスの移動を禁止する。
【0048】
モータMが駆動すると、モータMの一方向回転運動が水素循環ポンプHP内で往復直線運動に変換され、その往復直線運動によりダイヤフラムDが振動する。ダイヤフラムDの振動によりダイヤフラムDが室C2から離れる方向に移動し室C2の容積が増加すると、室C2内の水素ガスの圧力が低下し、水素ガスが水素循環流路CPから逆止弁V1、室C1、逆止弁V2を介して室C2へ吸入される。一方、ダイヤフラムDの振動によりダイヤフラムDが室C2側へ移動し室C2の容積が減少すると、室C2内の水素ガスの圧力が上昇し、水素ガスが室C2から逆止弁V3、室C3、及び逆止弁V4を介して水素供給流路SPに排出される。これにより、水素循環ポンプHPを駆動させることで、燃料電池スタックFCSと水素循環ポンプHPとの間で水素ガスを循環させることができる。
【0049】
ところで、逆止弁V1~V4のうちの1つの逆止弁が破損しただけでは、水素ガスを水素循環ポンプHPに吸入させる能力や水素ガスを水素循環ポンプHPから排出させる能力が低下するものの、燃料電池スタックFCSと水素循環ポンプHPとの間で水素ガスを継続して循環させることができる場合がある。しかしながら、1つの逆止弁が破損した状態で水素循環ポンプHPを駆動し続けると、他の逆止弁にかかる負荷が大きくなるため、他の逆止弁も破損し水素ガスを循環させることができなくなる故障が水素循環ポンプHPに発生するおそれがある。そのため、1つの逆止弁だけが破損する場合など、水素循環ポンプHPに破損が発生したことを判断することができれば、その時点で水素循環ポンプHPを修理することができるため、水素ガスを循環させることができなくなるような故障の発生を未然に防ぐきっかけとなる。
【0050】
例えば、水素循環ポンプHPに異常が発生していないときに第1圧力センサS1により検出される圧力P1と第2圧力センサS2により検出される圧力P2との圧力差ΔPを圧力差ΔP1とし、水素循環ポンプHPに破損(例えば、1つの逆止弁だけが破損し水素ガスを継続して循環させることが可能な状態の異常)が発生しているときに第1圧力センサS1により検出される圧力P1と第2圧力センサS2により検出される圧力P2との圧力差ΔPを圧力差ΔP2とし、水素循環ポンプHPに故障(例えば、複数の逆止弁が破損し水素ガスを継続して循環させることが困難な状態の異常)が発生しているときに第1圧力センサS1により検出される圧力と第2圧力センサS2により検出される圧力P2との圧力差ΔPを圧力差ΔP3とする場合を想定する。なお、圧力差ΔP1>圧力差ΔP2>圧力差ΔP3とする。
【0051】
この場合、例えば、第1閾値を圧力差ΔP2に設定することで、第1実施例の判断部2は、水素循環ポンプHPに少なくとも破損を含む異常が発生していると判断することができる。
【0052】
図3は、第1実施例における制御装置Cntの動作を示すフローチャートである。
【0053】
まず、制御装置Cntの発電制御部1は、ユーザの操作などにより車両がキーオンになった旨を外部から受け取ると、または、ユーザの操作などにより定置式発電機の電源がオンになった旨を外部から受け取ると(ステップS101:Yes)、燃料電池スタックFCSの発電準備処理を開始し、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であるか否かを判断する(ステップS102)。例えば、発電制御部1は、第1圧力センサS1や第2圧力センサS2などの各種センサやDCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続される不図示のスイッチなどが正常に動作していると判断すると、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であると判断する。
【0054】
次に、発電制御部1は、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常でないと判断すると(ステップS102:No)、燃料電池モジュールFCMのシステムに異常が発生していると判断し、その旨のメッセージを外部のディスプレイDPYに表示させた後、発電準備処理を終了する(ステップS103)。
【0055】
一方、発電制御部1は、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であると判断すると(ステップS102:Yes)、インバータ回路INVに所定デューティ比の駆動信号を入力することで水素循環ポンプHPのみを駆動させる(ステップS104)。なお、所定デューティ比は、水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かを判断するために予め決められた任意の値とする。
【0056】
次に、制御装置Cntの判断部2は、水素循環ポンプHPの駆動開始時から第1所定時間T1が経過したときに、第1圧力センサS1により検出される圧力P1と第2圧力センサS2により検出される圧力P2との圧力差ΔPを算出する(ステップS105)。例えば、判断部2は、水素循環ポンプHPの駆動開始時から第1所定時間T1が経過したときに、第1圧力センサS1により検出される圧力P1から第2圧力センサS2により検出される圧力P2を減算した結果を、圧力差ΔPとする。なお、水素循環ポンプHPに故障が発生していない場合、圧力P1>圧力P2とする。
【0057】
次に、判断部2は、ステップS105で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP3以下である場合(ステップS106:Yes)、水素循環ポンプHPに故障(例えば、複数の逆止弁が破損し水素ガスを循環させることができないほどの異常)が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後、発電準備処理を終了する(ステップS107)。なお、第1閾値ΔP3=圧力差ΔP3とする。
【0058】
また、判断部2は、ステップS105で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP3より大きい場合で(ステップS106:No)、かつ、ステップS105で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP2以下である場合(ステップS108:Yes)、水素循環ポンプHPに破損(例えば、1つの逆止弁が破損し水素ガスの循環能力が低下するものの、水素ガスを継続して循環させることが可能な異常)が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS109)、ステップS110に進む。なお、第1閾値ΔP2=圧力差ΔP2とする。
【0059】
一方、判断部2は、ステップS105で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP2より大きい場合(ステップS108:No)、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断し、ステップS110に進む。
【0060】
次に、ステップS110において、発電制御部1は、燃料電池スタックFCSの発電制御を開始する。発電制御部1は、燃料電池スタックFCSの発電制御中、例えば、インジェクタINJ、水素循環ポンプHP、及び排気排水弁EDVの動作を制御する。
【0061】
また、発電制御部1は、ユーザの操作などにより車両がキーオフになった旨を外部から受け取った場合、または、ユーザの操作などにより定置式発電機の電源がオフになった旨を外部から受け取った場合(ステップS111:Yes)、燃料電池スタックFCSの発電停止処理を実行し発電制御を終了する(ステップS112)。
【0062】
また、判断部2は、発電制御中において(ステップS111:No)、インジェクタINJ及び排気排水弁EDVのうち、少なくともインジェクタINJが停止していると判断すると(ステップS113:Yes)、第1圧力センサS1により検出される圧力P1と第2圧力センサS2により検出される圧力P2との圧力差ΔPを算出する(ステップS114)。
【0063】
次に、判断部2は、ステップS114で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP3以下である場合(ステップS115:Yes)、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS116)、燃料電池スタックFCSの発電停止処理を実行し発電制御を終了する(ステップS117)。
【0064】
また、判断部2は、ステップS114で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP3より大きい場合で(ステップS115:No)、かつ、ステップS114で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP2以下である場合(ステップS118:Yes)、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS119)、ステップS111に戻る。
【0065】
一方、判断部2は、ステップS114で算出した圧力差ΔPが第1閾値ΔP2より大きい場合(ステップS118:No)、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断し、ステップS111に戻る。
【0066】
このように、第1実施例の燃料電池モジュールFCMによれば、破損が水素循環ポンプHPに発生していることを判断することができるため、破損が発生している時点で水素循環ポンプHPを修理することが可能であり、水素ガスを循環させることができなくなるような故障の発生を未然に防ぐことができる。
【0067】
また、第1実施例の燃料電池モジュールFCMでは、燃料電池スタックFCSの発電制御前や発電制御中において、インジェクタINJ及び排気排水弁EDVのうち、少なくともインジェクタINJが駆動していないときに、水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かを判断している。これにより、インジェクタINJや排気排水弁EDVが駆動することで圧力P1及び圧力P2が変動することを抑えることができるため、圧力差ΔPの変動を抑えることができ、水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かの判断精度を向上させることができる。
【0068】
<第2実施例>
第2実施例の判断部2では、第1圧力センサS1により検出される圧力P1の単位時間あたりの変化量P1´(t)が第2閾値以下である場合、または、第2圧力センサS2により検出される圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)が第2閾値以下である場合、水素循環ポンプHPに異常が発生していると判断する。
【0069】
例えば、水素循環ポンプHPに異常が発生していないときに第1圧力センサS1により検出される圧力P1の単位時間あたりの変化量P1´(t)を変化量P11´(t)とし、水素循環ポンプHPに破損(例えば、1つの逆止弁だけが破損し水素ガスを継続して循環させることが可能な状態の異常)が発生しているときに第1圧力センサS1により検出される圧力P1の単位時間あたりの変化量P1´(t)を変化量P12´(t)とし、水素循環ポンプHPに故障(例えば、複数の逆止弁が破損し水素ガスを継続して循環させることが困難な状態の異常)が発生しているときに第1圧力センサS1により検出される圧力の単位時間あたりの変化量P1´(t)を変化量P13´(t)とする場合を想定する。なお、変化量P11´(t)>変化量P12´(t)>変化量P13´(t)とする。
【0070】
または、水素循環ポンプHPに異常が発生していないときに第2圧力センサS2により検出される圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)を変化量P21´(t)とし、水素循環ポンプHPに破損が発生しているときに第2圧力センサS2により検出される圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)を変化量P22´(t)とし、水素循環ポンプHPに故障が発生しているときに第2圧力センサS2により検出される圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)を変化量P23´(t)とする場合を想定する。なお、変化量P21´(t)>変化量P22´(t)>変化量P23´(t)とする。
【0071】
この場合、例えば、第2閾値を変化量P12´(t)または変化量P22´(t)に設定することで、第2実施例の判断部2は、水素循環ポンプHPに少なくとも破損を含む異常が発生していると判断することができる。
【0072】
図4は、第2実施例における制御装置Cntの動作を示すフローチャートである。
【0073】
まず、制御装置Cntの発電制御部1は、ユーザの操作などにより車両がキーオンになった旨を外部から受け取ると、または、ユーザの操作などにより定置式発電機の電源がオンになった旨を外部から受け取ると(ステップS201:Yes)、燃料電池スタックFCSの発電準備処理を開始し、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であるか否かを判断する(ステップS202)。
【0074】
次に、発電制御部1は、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常でないと判断すると(ステップS202:No)、燃料電池モジュールFCMのシステムに異常が発生していると判断し、その旨のメッセージを外部のディスプレイDPYに表示させた後、発電準備処理を終了する(ステップS203)。
【0075】
一方、発電制御部1は、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であると判断すると(ステップS202:Yes)、インバータ回路INVに所定デューティ比の駆動信号を入力することで水素循環ポンプHPのみを駆動させる(ステップS204)。
【0076】
次に、制御装置Cntの判断部2は、水素循環ポンプHPの駆動開始時から第2所定時間T2が経過したときに、第1圧力センサS1により検出される圧力P1の単位時間あたりの変化量P1´(t)を算出する(ステップS205)。例えば、判断部2は、水素循環ポンプHPの駆動開始時から第2所定時間T2が経過したときに、第1圧力センサS1により検出される圧力P1を時間微分した結果を、変化量P1´(t)とする。なお、水素循環ポンプHPに故障が発生していない場合、変化量P1´(t)>0とする。
【0077】
次に、判断部2は、ステップS205で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P13´(t)以下である場合(ステップS206:Yes)、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後、発電準備処理を終了する(ステップS207)。なお、第2閾値P13´(t)=変化量P13´(t)とする。
【0078】
また、判断部2は、ステップS205で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P13´(t)より大きい場合で(ステップS206:No)、かつ、ステップS205で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P12´(t)以下である場合(ステップS208:Yes)、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS209)、ステップS210に進む。なお、第2閾値P12´(t)=変化量P12´(t)とする。
【0079】
一方、判断部2は、ステップS205で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P12´(t)より大きい場合(ステップS208:No)、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断し、ステップS210に進む。
【0080】
次に、ステップS210において、発電制御部1は、燃料電池スタックFCSの発電制御を開始する。発電制御部1は、燃料電池スタックFCSの発電制御中、例えば、インジェクタINJ、水素循環ポンプHP、及び排気排水弁EDVの動作を制御する。
【0081】
また、発電制御部1は、ユーザの操作などにより車両がキーオフになった旨を外部から受け取った場合、または、ユーザの操作などにより定置式発電機の電源がオフになった旨を外部から受け取った場合(ステップS211:Yes)、燃料電池スタックFCSの発電停止処理を実行し発電制御を終了する(ステップS212)。
【0082】
また、判断部2は、発電制御中において(ステップS211:No)、インジェクタINJ及び排気排水弁EDVのうち、少なくともインジェクタINJが停止していると判断すると(ステップS213:Yes)、第1圧力センサS1により検出される圧力P1の単位時間あたりの変化量P1´(t)を算出する(ステップS214)。
【0083】
次に、判断部2は、ステップS214で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P13´(t)以下である場合(ステップS215:Yes)、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS216)、燃料電池スタックFCSの発電停止処理を実行し発電制御を終了する(ステップS217)。
【0084】
また、判断部2は、ステップS214で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P13´(t)より大きい場合で(ステップS215:No)、かつ、ステップS214で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P12´(t)以下である場合(ステップS218:Yes)、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS219)、ステップS211に戻る。
【0085】
一方、判断部2は、ステップS214で算出した変化量P1´(t)が第2閾値P12´(t)より大きい場合(ステップS218:No)、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断し、ステップS211に戻る。
【0086】
なお、ステップS205及びステップS214において、判断部2は、水素循環ポンプHPの駆動開始時から第2所定時間T2が経過したときに、第2圧力センサS2により検出される圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)を算出するように構成してもよい。例えば、判断部2は、水素循環ポンプHPの駆動開始時から第2所定時間T2が経過したときに、第2圧力センサS2により検出される圧力を時間微分した結果を、変化量P2´(t)とする。なお、水素循環ポンプHPに故障が発生していない場合、変化量P2´(t)>0とする。
【0087】
このように構成する場合、判断部2は、ステップS205で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P23´(t)以下である場合(ステップS206:Yes)、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後、発電準備処理を終了する(ステップS207)。なお、第2閾値P23´(t)=変化量P23´(t)とする。
【0088】
また、判断部2は、ステップS205で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P23´(t)より大きい場合で(ステップS206:No)、かつ、ステップS205で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P22´(t)以下である場合(ステップS208:Yes)、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS209)、ステップS210に進む。なお、第2閾値P22´(t)=変化量P22´(t)とする。
【0089】
一方、判断部2は、ステップS205で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P22´(t)より大きい場合(ステップS208:No)、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断し、ステップS210に進む。
【0090】
また、判断部2は、ステップS214で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P23´(t)以下である場合(ステップS215:Yes)、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS216)、燃料電池スタックFCSの発電停止処理を実行し発電制御を終了する(ステップS217)。
【0091】
また、判断部2は、ステップS214で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P23´(t)より大きい場合で(ステップS215:No)、かつ、ステップS214で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P22´(t)以下である場合(ステップS218:Yes)、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断し、その旨をディスプレイDPYに表示させた後(ステップS219)、ステップS211に戻る。
【0092】
一方、判断部2は、ステップS214で算出した変化量P2´(t)が第2閾値P22´(t)より大きい場合(ステップS218:No)、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断し、ステップS211に戻る。
【0093】
このように、第2実施例の燃料電池モジュールFCMによれば、第1実施例の燃料電池モジュールFCMと同様に、破損が水素循環ポンプHPに発生していることを判断することができるため、破損が発生している時点で水素循環ポンプHPを修理することが可能であり、水素ガスを循環させることができなくなるような故障の発生を未然に防ぐことができる。
【0094】
また、第2実施例の燃料電池モジュールFCMにおいても、第1実施例の燃料電池モジュールFCMと同様に、燃料電池スタックFCSの発電制御前や発電制御中において、インジェクタINJ及び排気排水弁EDVのうち、少なくともインジェクタINJが駆動していないときに、水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かを判断している。これにより、インジェクタINJや排気排水弁EDVが駆動することで圧力P1及び圧力P2が変動することを抑えることができるため、変化量P1´(t)または変化量P2´(t)の変動を抑えることができ、水素循環ポンプHPに異常が発生しているか否かの判断精度を向上させることができる。
【0095】
ここで、
図5(a)は、水素循環ポンプHPに異常が発生していないときまたは水素循環ポンプHPに破損が発生しているときにインバータ回路INVに入力される駆動信号のデューティ比及びインジェクタINJの駆動フラグの一例を示す図である。
図5(b)は、水素循環ポンプHPに異常が発生していないときに第1圧力センサS1により検出される圧力P1及び第2圧力センサS2により検出される圧力P2の一例を示す図である。
図5(c)は、水素循環ポンプHPに破損が発生しているときに第1圧力センサS1により検出される圧力P1及び第2圧力センサS2により検出される圧力P2の一例を示す図である。なお、
図5(a)に示す二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸はデューティ比を示している。また、
図5(a)に示す実線はインバータ回路INVに入力される駆動信号のデューティ比を示し、
図5(a)に示す破線はインジェクタINJの駆動フラグを示している。また、
図5(b)~
図5(c)に示す二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は圧力を示している。また、
図5(b)~
図5(c)に示す実線は第1圧力センサS1により検出される圧力P1を示し、
図5(b)~
図5(c)に示す破線は第2圧力センサS2により検出される圧力P2を示している。また、
図5(a)~
図5(c)に示す二次元座標の横軸は互いに同じ時間経過を示している。
【0096】
まず、発電制御部1は、時刻t10において、車両がキーオンになった旨または定置式発電機の電源がオンになった旨を受け取ると、燃料電池スタックFCSの発電準備処理を開始し、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であるか否かを判断する。
【0097】
次に、発電制御部1は、時刻t11において、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であると判断すると、異常判断のため水素循環ポンプHPのみが駆動するように、インバータ回路INVに入力される駆動信号のデューティ比をゼロからデューティ比Dr1まで上昇させる。すると、時刻t11から時刻t12までの期間において、圧力P1が徐々に上昇し圧力P2が徐々に下降した後、圧力P1、P2がそれぞれ一定に保たれる。
【0098】
なお、水素循環ポンプHPに異常が発生していない場合、
図5(b)に示すように、時刻t11から第1所定時間T1が経過したときの圧力P1と圧力P2との圧力差ΔPは圧力差ΔP1になる。そのため、
図5(b)に示す例において、判断部2は、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断することができる。なお、第1所定時間T1<「時刻t11から時刻t12までの期間」とする。
【0099】
一方、水素循環ポンプHPに破損が発生している場合、
図5(c)に示すように、時刻t11から第1所定時間T1が経過したときの圧力P1と圧力P2との圧力差ΔPは圧力差ΔP2になる。そのため、
図5(c)に示す例において、判断部2は、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断することができる。
【0100】
または、水素循環ポンプHPに異常が発生していない場合、
図5(b)に示すように、時刻t11から第2所定時間T2が経過したときの圧力P1の単位時間あたりの変化量P1´(t)は変化量P11´(t)になり、時刻t11から第2所定時間T2が経過したときの圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)は変化量P21´(t)になる。そのため、
図5(b)に示す例において、判断部2は、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断することができる。なお、第2所定時間T2<「時刻t11から時刻t12までの期間」とする。
【0101】
一方、水素循環ポンプHPに破損が発生している場合、
図5(c)に示すように、時刻t11から第2所定時間T2が経過したときの圧力P1の単位時間あたりの変化量P2´(t)は変化量P12´(t)になり、時刻t11から第2所定時間T2経過したときの圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)は変化量P22´(t)になる。そのため、
図5(c)に示す例において、判断部2は、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断することができる。
【0102】
そして、発電制御部1は、水素循環ポンプHPに異常が発生していないと判断部2により判断されると、または、水素循環ポンプHPに破損が発生していると判断部2により判断されると、燃料電池スタックFCSの発電制御を開始する。すなわち、発電制御部1は、発電制御を開始すると、時刻t12から時刻t13までの期間において、インジェクタINJの駆動フラグを3回オン、オフさせた後、時刻t3において、駆動信号のデューティ比をデューティ比Dr1からデューティ比Dr2に上昇させる。
【0103】
なお、駆動フラグがオンすると、インジェクタINJが駆動することで水素タンクHTから燃料電池スタックFCSへ水素ガスが供給され、駆動フラグがオフすると、インジェクタINJが停止することで水素タンクHTから燃料電池スタックFCSへの水素ガスの供給が停止する。また、デューティ比Dr1<デューティ比Dr2とする。
【0104】
すると、時刻t12から時刻t13までの期間において、圧力P1が徐々に上昇するとともに圧力P2が徐々に上昇し、時刻t13以降において、圧力P1が目標発電電力Ptに対応する圧力に近づく。
【0105】
図6(a)は、水素循環ポンプHPに故障が発生しているときにインバータ回路INVに入力される駆動信号のデューティ比の一例を示す図である。
図6(b)は、水素循環ポンプHPに故障が発生しているときに第1圧力センサS1により検出される圧力P1及び第2圧力センサS2により検出される圧力P2の一例を示す図である。なお、
図6(a)に示す二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸はデューティ比を示している。また、
図6(a)に示す実線はインバータ回路INVに入力される駆動信号のデューティ比を示している。また、
図6(b)に示す二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は圧力を示している。また、
図6(b)に示す実線は第1圧力センサS1により検出される圧力P1を示し、
図6(b)に示す破線は第2圧力センサS2により検出される圧力P2を示している。また、
図6(a)及び
図6(b)に示す二次元座標の横軸は互いに同じ時間経過を示している。
【0106】
まず、発電制御部1は、時刻t20において、車両がキーオンになった旨または定置式発電機の電源がオンになった旨を受け取ると、燃料電池スタックFCSの発電準備処理を開始し、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であるか否かを判断する。
【0107】
次に、発電制御部1は、時刻t21において、燃料電池モジュールFCMのシステムが正常であると判断すると、異常判断のため水素循環ポンプHPのみが駆動するように、インバータ回路INVに入力される駆動信号のデューティ比をゼロからデューティ比Dr1まで上昇させる。
【0108】
しかしながら、水素循環ポンプHPに故障が発生している場合、
図6(b)に示すように、時刻t21から第1所定時間T1が経過したときの圧力P1と圧力P2との圧力差ΔPは圧力差ΔP3になる。そのため、
図6(b)に示す例において、判断部2は、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断することができる。
【0109】
または、水素循環ポンプHPに故障が発生している場合、
図6(b)に示すように、時刻t21から第2所定時間T2が経過したときの圧力P1の単位時間あたりの変化量P1´(t)は変化量P13´(t)になり、時刻t21から第2所定時間T2が経過したときの圧力P2の単位時間あたりの変化量P2´(t)は変化量P23´(t)になる。そのため、
図6(b)に示す例において、判断部2は、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断することができる。
【0110】
そして、発電制御部1は、水素循環ポンプHPに故障が発生していると判断部2により判断されると、時刻t22において、駆動信号のデューティ比をゼロに戻し、発電準備処理を終了する。
【0111】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
FCM 燃料電池モジュール
Lo 負荷
FCS 燃料電池スタック
HT 燃料タンク
INJ インジェクタ
GLS 気液分離機
INV インバータ回路
M モータ
HP 水素循環ポンプ
EDV 排気排水弁
DIL 希釈器
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧弁
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置
Str 記憶装置
Cnt 制御装置