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特開2025-5050アントラキノン化合物を含有する非水電解液及びこれを含む二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005050
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】アントラキノン化合物を含有する非水電解液及びこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20250108BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250108BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20250108BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20250108BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/0525
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105042
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】321011907
【氏名又は名称】エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】岡部 明弘
(72)【発明者】
【氏名】竹本 嵩清
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リチウムイオン二次電池において放電容量が高く、サイクル特性を十分満足できる非水電解液組成物を提供する。
【解決手段】非水電解液が、添加剤1としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、さらに添加剤2として一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を含む。

(R~Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、Xは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかを表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合又は二重結合を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、
前記非水電解液が添加剤1としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、さらに添加剤2として一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物または一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を含むことを特徴とする非水電解液。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、Xは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかを表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合又は二重結合を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、Xは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかを表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合又は二重結合を表す。)
【請求項2】
添加剤1であるビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
添加剤2である一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、0.5重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項4】
添加剤1であるビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、5重量%以下であり、添加剤2である一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、0.5重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項5】
非水溶媒が、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル及びスルホンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項6】
電解質塩がリチウム塩であるであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非水電解液と正極及び負極からなることを特徴とする、二次電池。
【請求項8】
請求項6に記載された非水電解液、及び、正極がリチウム含有複合酸化物、負極が黒鉛からなることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液及びこれを含む二次電池に関し、特に、4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を含有する非水電解液及びこれを含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電技術が社会を支える重要な要素技術のひとつとして認識されている。特に、資源エネルギーから再生可能エネルギーへの流れの中で、エネルギー密度の低い自然エネルギーを効率よく利用するために、蓄電技術は非常に重要な位置づけとなっている。蓄電技術としては、化学エネルギーを電気エネルギーに変換することで充放電を可能とする二次電池と、物理的に電荷を蓄えることで充放電を可能とするキャパシタがある。現在、二次電池の主流としてリチウムイオン二次電池が挙げられる。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、スマートフォンやノートパソコンなどのモバイル機器や電気自動車などの電源として広く使用されている。リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、セパレータの4つの主要な部材から構成されており、一般的には正極にはリチウム含有酸化物、負極には黒鉛化炭素が使用されている。電解液はリチウムイオンの移動を促進する溶液であり、基本的には有機溶媒、リチウム塩、必要に応じて添加剤から構成される。年々、リチウムイオン二次電池に求められる性能要求(容量、出力、サイクル(寿命)、安全性など)は高くなっており、更なる高性能化が必要とされている。
【0004】
リチウム含有酸化物正極として、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、三元系正極(NCM, ニッケル・コバルト・マンガンが主成分)などが挙げられる。充電時に正極表面で電解液が局部的に電気化学的に酸化分解される。電解液の酸化分解により、電池性能を低下させる。CEI(Cathode electrolyte interphase)は効果的にこれら酸化分解を抑制できる。CEIとは、リチウム塩、溶媒、または添加剤などが正極上で酸化分解されて形成した被膜のことを意味する。
【0005】
非特許文献1に提案されているように、ビフェニル、o-ターフェニル、ジベンジルなどはCEIを形成する添加剤であり、前記添加剤により優れたサイクル特性を示すことが報告されている。一方、黒鉛化炭素負極は充電時には非常に強い還元力を示すため、電解液が負極上で還元分解され、電池特性の低下を引き起こす。SEI(Solid electrolyte interphase)は効果的にこれら還元分解を抑制できる。SEIとは、リチウム塩、溶媒、または添加剤などが負極上で還元分解されて形成した被膜のことを意味する。
【0006】
非特許文献2に提案されているように、ビニレンカーボネート(VC)はSEIを形成する添加剤の1つであり、VCの添加により優れたサイクル特性を示すことが報告されている。
【0007】
そこで、負極表面のSEIを制御するために、様々な電解液添加剤が検討されている。例えば、ビニレンカーボネート(VC)を電解液へ添加することにより電解液の分解を抑制させることが提案されている(特許文献1)。該文献では、環の炭素原子に結合した少なくとも1個の不飽和結合を有する化合物が有効であるとし、実施例では、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートから構成される非水系電解液にビニレンカーボネートを添加する事により、負極炭素の剥離が生じづらくなることが開示されている。
【0008】
また、添加剤のLUMOを基に負極活物質表面で還元分解する電位を制御した電解液添加剤が提案されている(特許文献2)。この添加剤のLUMOを制御した二種類の添加剤を添加することにより、有機溶媒よりも先に還元分解して被膜を形成するため、負極活物質表面に堅い安定な被膜を形成することが可能としている。具体的には、第1添加剤としてトリメチルシリルリン酸、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、第2添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチルカーボネート(FEC)が挙げられている。
【0009】
本発明者らは既に、電解質塩及び有機溶媒を含む非水電解液に4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を添加することにより、リチウムイオン二次電池において、放電容量が高く、サイクル特性や保存特性を改善できることを提案している(特許文献3)。しかしながら初期の放電容量を高く維持するという点では、さらに改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8-045545号公報
【特許文献2】特開2006-12806号公報
【特許文献3】特開2022-077961号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Koji Abe et al.,Journal of Power Sources,153,328, 2005
【非特許文献2】Hung-Chun Wu et al.,Electrochemical and Solid-State Letters, 9, 12, A537, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、リチウムイオン二次電池用非水電解液およびこれを用いたリチウムイオン二次電池において、サイクル特性を十分満足できるとともに、初期の放電容量も高く保つことができる、非水電解液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、縮合多環化合物及び様々な添加剤を鋭意検討した結果、非水電解液に、添加剤1としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート,プロパンスルトンの少なくとも1種類を所定量添加し、かつ、添加剤2として特定の構造を有するアントラキノン化合物を所定量添加する事により、これを用いたリチウムイオン二次電池のサイクル特性が改善されるとともに初期の放電容量も高く保つことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
第1の発明では、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、前記非水電解液が添加剤1としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、さらに添加剤2として一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を含むことを特徴とする非水電解液に存する。
【0015】
【化1】
【0016】
一般式(1)中、R、R、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、Xは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかを表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合又は二重結合を表す。
【0017】
【化2】
【0018】
一般式(2)中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、Xは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかを表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合又は二重結合を表す。
【0019】
第2の発明は、添加剤1であるビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする、第1の発明に記載の非水電解液に存する。
【0020】
第3の発明は、添加剤2である一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、0.5重量%以下であることを特徴とする、第1の発明に記載の非水電解液に存する。
【0021】
第4の発明は、添加剤1であるビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、5重量%以下であり、添加剤2である一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物の含有量が、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、0.5重量%以下であることを特徴とする、第1の発明に記載の非水電解液に存する。
【0022】
第5の発明は、非水溶媒が、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル及びスルホンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、第1の発明乃至第4の発明のいずれか一つに記載の非水電解液に存する。
【0023】
第6の発明は、電解質塩がリチウム塩であることを特徴とする、第1の発明乃至第4の発明のいずれか一つに記載の非水電解液に存する。
【0024】
第7の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかひとつに記載の非水電解液と正極及び負極からなることを特徴とする、二次電池に存する。
【0025】
第8の発明は、第6の発明に記載された非水電解液、及び、正極がリチウム含有複合酸化物、負極が黒鉛からなることを特徴とする、リチウムイオン二次電池に存する。
【0026】
本発明におけるアントラキノン環又はメタノアントラキノン環における置換基の位置を示す炭素原子の番号は、下記の通りである。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【発明の効果】
【0029】
本発明の添加剤1としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種と添加剤2として特定の構造を有するアントラキノン化合物を非水電解液に添加する事により、これを用いた二次電池のサイクル特性が改善されるとともに初期の放電容量も高く保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、添加剤1としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種と添加剤2として一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を含有する非水電解液に存する。
【0031】
(添加剤1)
まず、添加剤1について説明する。添加剤1としては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート又はプロパンスルトンが挙げられる。これらを単独で用いてもよいが、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロパンスルトンは、市販品を購入して用いることができる。
【0033】
これらの化合物は、還元分解性を有し、SEI被膜を形成しやすい化合物である。これらの化合物が電解液に優先して分解されて負極にSEI被膜を形成するため、電解液の耐久性を向上するといわれている。
【0034】
非水電解液に対して、添加剤1としてのビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種の含有量は、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、5重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以上、3重量%以下であることが特に好ましい。0.01重量%未満であるとサイクルの改善効果が悪くなる傾向にあり、5重量%を超えると、初期の放電容量の改善効果が悪くなる傾向にある。
【0035】
サイクル特性の改善効果という点では、ビニレンカーボネートが特に好ましい。
【0036】
(添加剤2)
次に、添加剤2について説明する。添加剤2としては一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物があげられる。
【0037】
本発明の4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物は下記一般式(1)に記載の構造を有する化合物である。
【0038】
【化5】
【0039】
一般式(1)中、R、R、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、Xは水素原子、炭素数1~10のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合又は二重結合を表す。
【0040】
また、本発明の4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物は下記一般式(2)に記載の構造を有する化合物である。
【0041】
【化6】
【0042】
一般式(2)中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、Xは水素原子、炭素数1~10のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合又は二重結合を表す。
【0043】
一般式(1)又は一般式(2)中、R、R、R、Rで表される炭素数1~10のアルキル基、及び般式(2)中、R、Rで表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、n-ペンチル基、i-アミル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、炭素数1~10のアルケニル基としては、上記に列記したアルキル基に存在する1つ以上のCH-CH構造を、CH=CH構造に置き換えたものが挙げられる。より具体的には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子,臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0044】
一般式(1)又は一般式(2)中、Xで表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、n-ペンチル基、i-アミル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子,臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0045】
一般式(1)に示す4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物で実線と破線が平行している部分が二重結合である場合の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。まず、1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノンが挙げられ、R、R、R及び/又はRがアルキル基である、2-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、1-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-エチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-ブチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-アミル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、1,3-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2,3-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、1,4-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン等が挙げられる。また、R、R、R及び/又はRがハロゲン原子である、2-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-ブロモ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン等が挙げられる。
【0046】
一般式(1)に示す4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物で実線と破線が平行している部分が一重結合である場合の具体例としては、例えば次のものが挙げられる。まず、1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノンが挙げられ、R、R、R及び/又はRがアルキル基である、2-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、1-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-エチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-ブチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-アミル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、1,3-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2,3-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、1,4-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン等が挙げられる。また、R、R、R及び/又はRがハロゲン原子である、2-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-ブロモ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン等が挙げられる。
【0047】
更に、Xがアルキル基である、6-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2,6-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2,7-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-エチル-6-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-ブチル-6-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-アミル-6-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-クロロ-6-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-ブロモ-6-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、6-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2,6-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2,7-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-エチル-6-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-ブチル-6-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-アミル-6-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-クロロ-6-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-ブロモ-6-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン等が挙げられる。
【0048】
更にまた、Xがハロゲン原子である、6-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-メチル-6-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-エチル-6-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-ブチル-6-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-アミル-6-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2,6-ジクロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-ブロモ-6-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、6-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-メチル-6-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-エチル-6-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-ブチル-6-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-アミル-6-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2,6-ジクロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン、2-ブロモ-6-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン等が挙げられる。
【0049】
そして、R、R、R及び/又はRがアルケニル基である場合としては、1-(2-メチル-2-ブテニル)-3-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、1-(3-ブテニル)-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-(4-メチル-3-ペンテニル)-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、1-(2-メチル-1-プロペニル)-3,4-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン等が挙げられる。
【0050】
上記例示した化合物以外にも、1,4-ナフトキノン化合物と1,3-ジエン構造を持つ化合物によるディールス-アルダー反応生成物が挙げられる。
【0051】
そして更に、1,4-ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン構造を持つ化合物によるディールス-アルダー反応生成物である一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物で実線と破線が平行している部分が二重結合である場合としては、1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、1-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、2-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、11-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、11,11-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、1,2,3,4,11-ペンタメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、6-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、6-エチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、1,6-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、2,6-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、6,11-ジメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、6,11,11-トリメチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、6-クロロ-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン、6-ブロモ-1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン等が挙げられる。
【0052】
実線と破線が平行している部分が一重結合である場合としては、1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、1-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、2-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、11-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、11,11-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、1,2,3,4,11-ペンタメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、6-メチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、6-エチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、1,6-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、2,6-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、6,11-ジメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、6,11,11-トリメチル-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、6-クロロ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン、6-ブロモ-1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン等が挙げられる。
【0053】
これらの化合物のうち、下記構造式の化合物である、1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン(THAQ)、2-(4-メチル-3-ペンテニル)-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン(IHETHAQ)、1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン(CPNQ)、2-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン(MeTHAQ)、1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロヘキサヒドロメタノアントラキノン(NBNQ)が合成が容易でありかつ効果が高い点で好ましい。
【0054】
【化7】
【0055】
[製造方法]
次に、これら化合物の合成について詳述する。本発明の4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物は、対応する1,4-ナフトキノン化合物と1,3-ジエン化合物のディールス・アルダー反応により得ることができる。1,3-ジエン化合物としてブタジエンを用いると1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン(THAQ)を製造することができ、置換ブタジエンを用いることにより、種々の置換基を有する1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン化合物を得ることができる。置換ブタジエンとしては、2-メチル-1,3-ブタジエン、1-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ミルセン、アロオシメン、クロロプレン等があげられる。また、得られた1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン化合物を水素添加する事により、1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロアントラキノン化合物を得ることができる。
【0056】
また、シクロペンタジエンを用いると1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン(CPNQ)を製造することができる。更に、置換基を有するシクロペンタジエン化合物を用いることにより、種々の1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン化合物を得ることができる。置換基を有するシクロペンタジエン化合物としては、メチルシクロペンタジエン、1,2-ジメチルシクロペンタジエン、1,2,3-トリメチルシクロペンタジエン、1,2,4-トリメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4-テトラメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4,5-ペンタクロロシクロペンタジエン、tert-ブチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、5,5-ジメチル-1,3-シクロペンタジエン、フェニルシクロペンタジエン、トリメチルシリルシクロペンタジエン、1,2-ジメチル-4-エチルシクロペンタジエン、1,2-ジメチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエン、1,2-ジメチル-4-トリメチルシリルシクロペンタジエン等が挙げられる。そして、得られた1,4,4a,9a-テトラヒドロメタノアントラキノン化合物を水素添加する事により、1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロメタノアントラキノン化合物を得ることができる。
【0057】
もう一方の原料となる1,4-ナフトキノン化合物も種々の化合物を用いることができる。例えば、1,4-ナフトキノン、6-メチル-1,4-ナフトキノン、6-エチル-1,4-ナフトキノン、6-クロロ-1,4-ナフトキノン、6-ブロモ-1,4-ナフトキノン等を用いることができる。
【0058】
上記1,3-ジエン化合物と1,4-ナフトキノン化合物を溶媒の存在下もしくは非存在下、加熱することによって4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物及び4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を製造することができる。通常ディールス・アルダー反応においては、反応速度を高めるために、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒を用いることも可能である。触媒としては、三フッ化ホウ素エーテル錯体、三塩化アルミニウム、四塩化チタン等があげられる。反応温度は20℃以上、150℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上,120℃以下である。
【0059】
非水電解液に対して、添加剤2である一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物の含有量は、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上、0.5重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上、0.2重量%以下であることが特に好ましい。0.01重量%未満であると、サイクル特性の改善効果が悪くなる傾向にあり、0.5重量%を超えると、初期の放電容量が低下する傾向にある。
【0060】
非水電解液に、添加剤1であるビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種と添加剤2である一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物の両方を添加することにより、その相乗効果により、サイクル特性が改善されるとともに初期の放電容量も高く保つことができる。
【0061】
[非水電解液]
本発明の非水電解液は,非水溶媒、電解質塩及び添加剤1としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びプロパンスルトンからなる群より選択される少なくとも1種と添加剤2として一般式(1)で表される4a,9a-ジヒドロアントラキノン化合物又は一般式(2)で表される4a,9a-ジヒドロメタノアントラキノン化合物を含む。
【0062】
(非水溶媒)
非水溶媒としては、得られる非水電解液の粘度を低く抑える等の観点から、非プロトン性溶媒が好適である。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、及び、スルホンからなる群より選択される少なくとも1 種を含有することが好ましい。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネートがより好ましく用いられる。
【0063】
環状カーボネートとしては、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等が挙げられる。鎖状カーボネートとしては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル等が挙げられる。脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル等が挙げられる。ラクトンとしては、例えば、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、N-メチルピロリドン等が挙げられる。記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、2 - メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1 , 3 - ジオキソラン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。スルホンとしては、例えば、スルホラン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、例えば、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)等、2種以上を組み合わせて用いてもよい。環状カーボネートと鎖状エーテルを組み合わせて用いることも好ましい。
【0064】
(電解質塩)
電解質塩としては、リチウムイオンのイオン源となるリチウム塩が好ましい。なかでも、LiAlCl、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiTFSI、LiFSI、LiTFS及びLiSbFからなる群より選択される少なくとも1 種であることが好ましい。なかでも、解離度が高く電解液のイオン伝導度を高めることができ、さらには耐酸化還元特性により長期間使用による二次電池の性能劣化を抑制する作用がある等の観点から、LiBF、LiPFであることがより好ましい。これらの電解質は、単独で用いてもよいし、2 種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
本発明の非水電解液における電解質塩の濃度の好ましい下限は0.1mol/L、好ましい上限は2.0mol/Lである。電解質塩の濃度が0.1mol/L未満であると、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、二次電池に用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすことがある。電解質塩の濃度が2.0mol/Lを超えると、粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、二次電池に用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすことがある。
【0066】
[二次電池]
本発明の二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、コイン型、円筒型、積層型、シート型、角形等が挙げられる。前記二次電池は、正極、負極、それら正極及び負極の間にはセパレータとを備え、本発明の非水電解液を含む。
【0067】
本発明の二次電池に含まれる正極は、正極活物質、バインダー及び導電助剤などを含む正極スラリーを正極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0068】
前記正極集電体としては、特に限定されるものではなく、公知又は市販のものを使用できる。正極集電体の素材としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、カーボンコートアルミ箔、ステンレス箔、アルミニウム等の金属メッシュ等を用いることができる。
【0069】
正極活物質層に含まれる正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物が好ましく用いられ、例えば、LiMnO、LiFeO、LiCoO、LiMn、LiFeSiO 、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiFePO 等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。前記正極活物質層には電子伝導性を向上させる観点から、導電助剤を含む方が好ましい。導電助剤としては、特に限定される物ではなく、公知又は市販のものを使用することができ、例えばアセチレンブラックやケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素材料が挙げられる。これらの炭素材料は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。さらに、前記正極活物質層には、正極活物質層の耐久性を向上できる観点から、バインダー(結着材)を含む方が好ましい。特に限定されるものではなく、公知又は市販のものを使用することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これらのバインダーは1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0070】
本発明の二次電池に含まれる負極は、負極活物質、バインダー及び導電助剤などを含む負極スラリーを負極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0071】
前記負極集電体としては、特に限定されるものではなく、公知又は市販のものを使用できる。銅、パラジウム、ニッケル、ステンレス、銀、ニッケル、チタン、これらの合金およびこれらの組み合わせからなる箔、銅等の金属メッシュ等を用いることができる。
【0072】
負極活物質層に含まれる負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出することができる材料が挙げられる。このような材料としては、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料、リチウムシリコン合金、リチウムスズ合金等の合金材料、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。これらの負極活物質は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。これらの中でも黒鉛が好ましく用いられる。前記負極活物質層には電子伝導性を向上させる観点から、導電助剤を含む方が好ましい。導電助剤としては、特に限定される物ではなく、公知又は市販のものを使用することができ、例えばアセチレンブラックやケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素材料が挙げられる。これらの炭素材料は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。さらに、前記負極活物質層には、負極活物質層の耐久性を向上できる観点から、バインダー(結着材)を含む方が好ましい。特に限定されるものではなく、公知又は市販のものを使用することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これらのバインダーは1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0073】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等の微多孔膜または不織布からなる多孔質フィルムを用いることができるが、特に限定されない。
【0074】
本発明の非水電解液、正極、及び、負極を備えた二次電池の中でもリチウムイオン電池が好適である。
【0075】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、例示を目的として提示をしたものである。すなわち、以下の実施例は、網羅的であったり、記載した形態そのままに本発明を制限したりすることを意図したものではない。よって、本発明は、その趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。また、特記しない限り、すべての部及び百分率は重量基準である。
【実施例0076】
実施例、および比較例に関して具体的に下記に示す。
(コイン電池の作製)
【0077】
[実施例1]
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように調整し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、本願発明の添加剤1であるビニレンカーボネート(VC)をその含有割合が1質量%となるように添加し、本願発明の添加剤2である1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン(THAQ)をその含有割合が0.2質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。そして、正極として、市販のコバルト酸リチウム塗布電極(宝泉製)を用い、負極として、市販の球晶黒鉛塗布電極(宝泉製)を用い、セパレータとして、ポリプロピレン製セパレータを用いた。上記の正極、非水電解液が含侵されたセパレータ、負極の順番で積層し、CR2032コイン型電池(直径20.0mm 高さ3.2mm、コイン型電池)を作製した。
【0078】
[比較例1]
非水電解液に、VCとTHAQを含まないこと以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0079】
[比較例2]
非水電解液に、THAQを含まないこと以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0080】
[比較例3]
非水電解液に、VCを含まないこと以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0081】
[実施例2]
溶液全重量に対し、THAQの含有割合が0.01質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0082】
[実施例3]
溶液全重量に対し、THAQの含有割合が0.5質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0083】
[実施例4]
溶液全重量に対し、THAQの含有割合が1質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0084】
[実施例5]
溶液全重量に対し、VCの含有割合が0.01質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0085】
[実施例6]
溶液全重量に対し、VCの含有割合が3質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0086】
[実施例7]
溶液全重量に対し、VCの含有割合が5質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0087】
[実施例8]
溶液全重量に対し、VCの含有割合が7質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0088】
[実施例9]
THAQの代わりに1,4,4a, 9a-テトラヒドロメタノアントラキノン(CPNQ)を用いた以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0089】
[実施例10]
THAQの代わりに2-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン(MeTHAQ)を用いた以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0090】
[実施例11]
THAQの代わりに2-(4-メチル-3-ペンテニル)-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン(IHETHAQ)を用いた以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0091】
[実施例12]
THAQの代わりに1,2,3,4,4a,9a-ヘキサヒドロヘキサヒドロメタノアントラキノン(NBNQ)を用いた以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0092】
[実施例13]
VCの代わりにプロパンスルトン(PS)を用いた以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0093】
[実施例14]
VCの代わりにフルオロエチレンカーボネート(FEC)を用いた以外は、実施例1と同様にコイン電池を作製した。
【0094】
(放電容量維持率の測定)
作製したコイン電池に対して、北斗電工製充放電試験装置(HJ1001SD8)を用い、25℃において、充電レートを0.2C、放電レートを0.2C、充電終止電圧を4.2V、及び、放電終止電圧を3.0Vとして3サイクル充放電を実施し、続けて25℃において、充電レートを1.0C、放電レートを1.0C、充電終止電圧を4.2V、及び、放電終止電圧を3.0Vとして300サイクル充放電を行った。1サイクル目の放電容量、300サイクル後の放電容量を測定し、表1から表5に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1と比較例1とを比較することにより、明らかなように、本願発明の添加剤1であるビニレンカーボネート及び添加剤2であるTHAQを所定量添加することにより、1サイクル目の放電容量だけでなく、300サイクル目の放電容量119mAh/gと高く維持されていることがわかる。一方、ビニレンカーボネートだけを添加した比較例2では300サイクル目の放電容量58mAh/gと初期放電容量140mAh/gから著しく低下していることがわかる。また、THAQだけを添加した例では、300サイクル目の放電容量は、109mAh/gと高く維持されるものの、1サイクル目の放電用利用が、134mAh/gと低下することがわかる。よって、本願発明の添加剤1であるビニレンカーボネートと添加剤2であるTHAQを組み合わせて用いることにより、その相乗効果で、初期放電容量が高くなるだけでなく、300サイクル目の放電容量も高く維持されることがわかる。
【0097】
【表2】
【0098】
比較例2と実施例1から4を比較することにより明らかなように、本願発明の添加剤2であるTHAQの添加量としては、非水電解液全重量に対して0.01重量部でも添加剤1のビニレンカーボネートとの相乗効果が認められ、0.5重量部において、その300サイクル目の放電容量の維持率としてはその添加効果は認められるが、1重量部まで添加すると初期放電容量の低下が顕著になってくることがわかる。この場合でも、300サイクル目の放電容量の維持率としては、高く維持される。
【0099】
【表3】
【0100】
比較例3と実施例1及び実施例5から8を比較することにより明らかなように、本願発明の添加剤1であるビニレンカーボネートの添加量としては、非水電解液全重量に対して0.01重量部でも、1サイクル目の放電容量を高めることができ、相乗効果を認めることができる。そして、その効果は添加量5重量部まで維持されるが、300サイクル目の放電容量及びその維持率に関しては、添加量5重量部より低下をはじめ、7重量部では、初期放電容量も低くなることがわかる。
【0101】
【表4】
【0102】
実施例1と実施例9から12から明らかなように、添加剤2であるTHAQの添加の相乗効果は、THAQをCPNQ、MeTHAQ、IHTHAQ又はNBNQに替えても認められることがわかる。
【0103】
【表5】
【0104】
実施例1と実施例13と14および比較例2から5を比較することから明らかなように、添加剤1ビニレンカーボネートの添加の相乗効果は、ビニレンカーボネートをフルオロエチレンカーボネート又はプロパンスルトンに替えても認められることがわかる。