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  • 特開-表皮材及びハンドル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005055
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】表皮材及びハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105058
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】荒川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】井出 恭平
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030CA01
3D030DA13
3D030DA24
3D030DA34
3D030DA47
3D030DA53
3D030DA67
(57)【要約】
【課題】造形物を被覆しても外観が損なわれにくい表皮材及びこれを備えたステアリングホイールを提供する。
【解決手段】表皮材1は、引っ張り力が加えられた状態で造形物の少なくとも一部を被覆して固定される本体部3と、本体部3に設けられ、所定の情報を表示する表示部4と、本体部3の外縁部と表示部4との間に位置して引っ張り力の表示部4への作用を緩和する緩和部5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引っ張り力が加えられた状態で造形物の少なくとも一部を被覆して固定される本体部と、
この本体部に設けられ、所定の情報を表示する表示部と、
前記本体部の外縁部と前記表示部との間に位置して前記引っ張り力の前記表示部への作用を緩和する緩和部と、
を備えることを特徴とする表皮材。
【請求項2】
緩和部は、本体部の造形物側の面に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の表皮材。
【請求項3】
緩和部は、本体部の引っ張り方向と交差する方向に延びるスリットである
ことを特徴とする請求項2記載の表皮材。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の表皮材と、
この表皮材の本体部により少なくとも一部が覆われる造形物と、
を備えることを特徴とするハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物の少なくとも一部を被覆して固定される表皮材及びこれを備えたハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のハンドルであるステアリングホイールのリム部の一部を被覆する表皮材であって、シート状の皮革からなるピースを、金型を用いてリム部外表面の形状と対応するよう三次元状に成形し、同時に例えば刻印風などの立体状のロゴなどを形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-154932号公報 (第5頁、図4及び図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ピースを予めリム部外表面と一致する形状としてはいるものの、被覆作業の際には、リム部外表面とピース裏面との間の隙間による浮きや弛みなどを生じさせないよう、ピースを引っ張りながら巻き付けていく必要がある。そのため、引っ張り力の加わり方によっては、ロゴ全体が想定位置からずれてしまったり、ロゴが歪になってしまったりするなど、外観を著しく損なわせるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、造形物を被覆しても外観が損なわれにくい表皮材及びこれを備えたハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の表皮材は、引っ張り力が加えられた状態で造形物の少なくとも一部を被覆して固定される本体部と、この本体部に設けられ、所定の情報を表示する表示部と、前記本体部の外縁部と前記表示部との間に位置して前記引っ張り力の前記表示部への作用を緩和する緩和部と、を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の表皮材は、請求項1記載の表皮材において、緩和部は、本体部の造形物側の面に設けられているものである。
【0008】
請求項3記載の表皮材は、請求項2記載の表皮材において、緩和部は、本体部の引っ張り方向と交差する方向に延びるスリットであるものである。
【0009】
請求項4記載のハンドルは、請求項1ないし3いずれか一記載の表皮材と、この表皮材の本体部により少なくとも一部が覆われる造形物と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の表皮材によれば、表皮材により造形物を被覆する際に引っ張り力が加わっても、表示部がゆがんだり、所定の設置想定位置からずれてしまったりすることがなく、造形物を被覆しても外観が損なわれにくい。
【0011】
請求項2記載の表皮材によれば、請求項1記載の表皮材の効果に加えて、緩和部そのものにより表皮材の外観が損なわれることを防止できる。
【0012】
請求項3記載の表皮材によれば、請求項2記載の表皮材の効果に加えて、緩和部を容易に形成できる。
【0013】
請求項4記載のハンドルによれば、外観性が良好なハンドルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態の表皮材を示し、(a)はその平面図、(b)はその一部の断面図である。
図2】同上表皮材を備えるハンドルを示し、(a)はその正面図、(b)はその一部の断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態の表皮材の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)において、1は表皮材を示す。表皮材1は、造形物の少なくとも一部を被覆し、意匠性や高級感を付与する機能を有するものである。表皮材1は、例えば天然皮革、合成皮革、あるいは合成樹脂などの部材により形成されている。なお、本実施の形態では、表皮材1は、1枚のシート状のものを例に挙げるが、これに限らず、複数枚を1枚に積層したものや、複数枚を縫製などにより接合して1枚に形成したもの、あるいはそれらの組み合わせなどを含むものとする。
【0017】
表皮材1は、シート状の本体部3を有する。本体部3の外形は、被覆する造形物の形状に応じて任意に形成してよいが、本実施の形態では、例えば、互いに対向する一対の辺部3a,3aと、それと交差する方向に延びて互いに対向する一対の辺部3b,3bと、により形成される、概略四角形状となっている。図示される例では、辺部3aが辺部3bより長い形状となっている。また、本実施の形態では、辺部3a及び辺部3bは、それぞれ本体部3の外方へと凸となるように膨らんだ湾曲形状となっている。
【0018】
本体部3は、引っ張り力が加えられた状態で造形物に対して固定される。本実施の形態では、本体部3は、厚み方向を除く全方向に引っ張り力が加えられた状態で固定される。本体部3の固定には、造形物の被覆面に固着する接着剤などの固着手段を用いてもよいし、本体部3の辺部3a同士、あるいは、本体部3を他の部材に対し固着する、縫製などの固着手段を用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本体部3には、所定の情報を表示する表示部4が所定の位置に形成されている。表示部4は、本体部3の表面つまり意匠側に形成されている。表示部4は、例えば刻印により形成されたロゴを例に挙げる。すなわち、表示部4は、本体部3の表面に対して窪んで形成されている。これに限らず、表示部4は、レーザによる焼き付けや印刷などでもよい。また、表示部4は、ロゴ表示に限らず、図案や任意の文字などにより意匠的、あるいは機能的な表示がされているものなど、任意のデザインとしてよい。
【0020】
表示部4は、本体部3の一方の辺部3aに近接し、この辺部3aに沿って位置している。
【0021】
さらに、本体部3には、表示部4と本体部3の外縁部との間に、緩和部5が形成されている。緩和部5は、本体部3の外縁部と表示部4との間に位置して、本体部3に加えられる引っ張り力の表示部4への作用を緩和する。
【0022】
例えば、緩和部5は、本体部3の造形物側の面つまり裏面(背面)に設けられている。本実施の形態において、緩和部5は、本体部3の引っ張り方向と交差する方向に延びるスリットである。緩和部5は、表示部4全体を囲んで断続的に形成されている。図示される例では、緩和部5は、表示部4全体を四角形状に囲んでいる。つまり、表示部4と本体部3の外縁部の一部である辺部3aとの間で、この辺部3aに沿って本体部3の長手方向に延びる一対の辺5a,5aと、これら辺5a,5aの端部間を連結し表示部4と本体部3の外縁部の一部である辺部3bとの間に位置する辺5b,5bと、により構成されている。本実施の形態では、辺5aが辺5bよりも長い、長方形状となっている。図1(b)に示すように、緩和部5は、本体部3の裏面を厚み方向に削いで形成されている。緩和部5の深さは、本体部3の厚みの半分以下程度であり、本体部3の表面に影響がないようにすることが好ましい。
【0023】
そして、本実施の形態において、表皮材1は、図2(a)に示すように、車両用のハンドル(操向ハンドル)であるステアリングホイール10に用いられるものを例に挙げる。ステアリングホイール10は、ハンドル本体部であるステアリングホイール本体部11と、このステアリングホイール本体部11の乗員側に取り付けられるエアバッグ装置などの設置体であるモジュール12と、ステアリングホイール本体部11の乗員側とは反対側である反乗員側、すなわちモジュール12と反対側に取り付けられる被覆部材としてのカバー体であるバックカバーと、などから構成されている。
【0024】
ステアリングホイール本体部11は、芯金(アーマチュア)の一部が合成樹脂製などの被覆部により被覆されて構成されている。ステアリングホイール本体部11は、モジュール12が取り付けられるとともにステアリングシャフトに装着されるハブ部であるボス部(マウント部)15と、ボス部15の周辺に位置するリム部(リング部)16と、これらボス部15とリム部16とを連結する複数のスポーク部(アーム部)17と、を有する。
【0025】
リム部16は、乗員がステアリングホイール10を操作するために把持する部分である。リム部16は、乗員側から見て円弧状または円環状であり、本実施の形態では円環状に連なって形成されたドーナツ状であり、ボス部15の外方を囲んで位置している。本実施の形態では、このリム部16の表面に表皮材1が適用されている。つまり、リム部16の表面の少なくとも一部が表皮材1により構成されている。リム部16の下部(正面から見てアナログ時計の6時方向)の左右方向の所定範囲を覆って表皮材1が配置され、乗員側に表示部4が位置している。リム部16のその他の部分は、表皮材1以外の表皮材により覆われている。表皮材1と他の表皮材とは、一体的に連なっていてもよい。
【0026】
図2(b)に示すように、リム部16は、断面が円形状または楕円形状などに形成されている。本実施の形態では、リム部16の乗員側に対向する位置に表示部4が位置する。そのため、表皮材1は、リム部16において、芯金の一部を構成するリム芯金部20を覆う造形物である被覆部21に対し、経線方向(矢印X方向)に巻き付けられて固定されている。表示部4が位置する部分において、被覆部21の表面は湾曲していてもよいし、平面状となっていてもよい。そして、表皮材1の本体部3の辺部5a同士がリム部16の内縁部にて例えばベースボールステッチによる縫製などの固定手段により互いに連結されることで、リム部16を覆って固定されている。
【0027】
すなわち、表皮材1は、被覆部21に対し、本体部3を、厚み方向を除く上下左右全方向に引っ張りながら巻き付け、辺部3a,3a(図1(a))を固定手段により互いに固着して被覆部21に固定する。そのため、図1(a)の矢印に示すように、本体部3に加えた引っ張り力が表示部4に作用する。
【0028】
このとき、本実施の形態によれば、本体部3の外縁部と表示部4との間に位置して引っ張り力の表示部4への作用を緩和する緩和部5を形成していることで、表皮材1により被覆部21を被覆する際に引っ張り力が加わっても、表示部4がゆがんだり、所定の設置想定位置からずれてしまったりすることがなく、被覆部21を被覆しても外観が損なわれにくい。
【0029】
また、緩和部5を本体部3の被覆部21に対向する面つまり裏面に設けることで、緩和部5そのものにより表皮材1の外観が損なわれることを防止できる。
【0030】
緩和部5を、本体部3の引っ張り方向と交差する方向に延びるスリットとすることで、緩和部5を容易に形成できる。例えば、この緩和部5は、エアバッグ装置の膨張展開時に開裂するテアラインをエアバッグ装置のカバーに用いられる表皮材に形成するためのテアライン加工機を利用して容易に形成できる。
【0031】
そして、このような表皮材1により被覆部21を覆ったステアリングホイール10とすることで、外観性が良好なステアリングホイール10を提供できる。
【0032】
なお、第1の実施の形態において、緩和部5は、スリットだけに限らず、例えばスリットに弾性材料を含浸させてもよく、例えば、図3に示す第2の実施の形態のように、スリットに弾性材料23を埋めて、引っ張り力を緩和するように形成してもよい。
【0033】
また、各実施の形態において、表皮材1により被覆される造形物は、リム部に限らず、ステアリングホイール10のボス部に用いられるエアバッグ装置のカバーなど、ステアリングホイール10の任意の部分としてよい。また、ステアリングホイール10以外でも、車輌に用いられる任意の物、あるいは車輌用以外でも、任意の物を造形物としてよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えばステアリングホイールのリム部用の表皮材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 表皮材
3 本体部
4 表示部
5 緩和部
10 ハンドルであるステアリングホイール
21 造形物である被覆部
図1
図2
図3