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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005057
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】屋根構造及び水切り部材
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/40 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
E04D3/40 J
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105060
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】菊地 弘明
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA03
2E108AZ08
2E108EE01
2E108FF01
2E108GG09
(57)【要約】
【課題】雨水が建物の内部に侵入しないようにする。
【解決手段】所定方向に向けて下るように傾斜した第一屋根面21を備える第一屋根20と、第一屋根20の軒先の下方に離間して配され、第一屋根面21と同方向に向けて下るように傾斜した第二屋根面41を備える第二屋根40と、第一屋根20に設けられた板状の水切り部材10と、を備える。水切り部材10は、下端部が、第一屋根20よりも第二屋根40に近い位置に配されるとともに第二屋根40の水上側端部より水下側に配されて、板面により第二屋根40の水上側端部を覆うように配される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根構造であって、
所定方向に向けて下るように傾斜した第一屋根面を備える第一屋根と、
前記第一屋根の軒先の下方に離間して配され、前記第一屋根面と同方向に向けて下るように傾斜した第二屋根面を備える第二屋根と、
前記第一屋根に設けられた板状の水切り部材と、を備え、
前記水切り部材は、
下端部が、前記第一屋根よりも前記第二屋根に近い位置に配されるとともに前記第二屋根の水上側端部より水下側に配されて、板面により前記第二屋根の水上側端部を覆うように配されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
前記水切り部材は、
前記第一屋根に固定される固定部と、
前記固定部から下方に延出するように形成され、前記建物の前記第一屋根と前記第二屋根との間を覆うことが可能な第一延出部と、
前記第一延出部の下端に接続し、前記第一延出部の板面の一側方向へ延出するように形成され、前記第二屋根の上側を覆うことが可能な第二延出部と、
前記第二延出部における前記第一延出部が接続した一端部と対向する他端部に設けられ、前記他端部よりも下方で当該他端部よりも前記第一延出部の板面の前記一側方向へ延出し、前記水切り部材の下端部を構成する水切り部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記第一延出部は、前記第一屋根面の下方に位置することを特徴とする請求項2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記第一屋根には、
取付部の端部に第二水切り部を備える第二水切り部材が取り付けられており、
前記第二水切り部材は、
前記取付部が前記固定部よりも上側に位置するとともに、前記第二水切り部が前記固定部と前記第一延出部との接続部分が位置する部分よりも軒先側に位置することを特徴とする請求項3に記載の屋根構造。
【請求項5】
前記第一屋根は、
当該第一屋根の第一野地板を覆う第一防水シートを備え、
前記第一防水シートは、
前記固定部を覆うように配されることを特徴とする請求項4に記載の屋根構造。
【請求項6】
前記第二屋根は、
当該第二屋根の第二野地板を覆う第二防水シートを備え、
前記第二防水シートは、
前記第二屋根から前記第一屋根にわたる部分を覆うとともに、前記第一屋根の前記第一野地板の一部を覆い、
前記水切り部材は、前記第二防水シートよりも上側であって、前記第二防水シートが配された範囲に配されることを特徴とする請求項5に記載の屋根構造。
【請求項7】
前記第一屋根は、
前記固定部と、前記取付部と、の間に第三防水シートを備えることを特徴とする請求項6に記載の屋根構造。
【請求項8】
前記第一屋根面の傾斜角度よりも前記第二屋根面の傾斜角度の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
【請求項9】
第一屋根と、前記第一屋根の軒先の下方に離間して配された第二屋根と、を備える建物に設けられる板状の水切り部材であって、
前記第一屋根に固定される固定部と、
前記固定部から下方に延出するように形成され、前記建物の前記第一屋根と前記第二屋根との間を覆うことが可能な第一延出部と、
前記第一延出部の下端に接続し、前記第一延出部の板面の一側方向へ延出するように形成され、前記第二屋根の上側を覆うことが可能な第二延出部と、
前記第二延出部における前記第一延出部が接続した一端部と対向する他端部に設けられ、前記他端部よりも下方で当該他端部よりも前記第一延出部の板面の前記一側方向へ延出し、前記水切り部材の下端部を構成する水切り部と、を備えることを特徴とする水切り部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造及び水切り部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根の軒先部等に設けられ、雨水の建物への侵入を防止する水切り部材を備える屋根構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-80571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように屋根の軒先の直下に雨水を流下させる構成であると、風により建物の外壁に雨水がかかるおそれがある。特に、雨水の流下先に別の屋根が存在する場合には、当該別の屋根に雨水を確実に流下させて雨水が建物の内部に侵入しないようにすることが重要となる。本発明の課題は、雨水が建物の内部に侵入しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、例えば図1、4に示すように、
建物2の屋根構造1であって、
所定方向に向けて下るように傾斜した第一屋根面21を備える第一屋根20と、
前記第一屋根20の軒先の下方に離間して配され、前記第一屋根面21と同方向に向けて下るように傾斜した第二屋根面41を備える第二屋根40と、
前記第一屋根20に設けられた板状の水切り部材10と、を備え、
前記水切り部材10は、
下端部(折返部15)が、前記第一屋根20よりも前記第二屋根40に近い位置に配されるとともに前記第二屋根40の水上側端部より水下側に配されて、板面により前記第二屋根40の水上側端部を覆うように配されていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、第一屋根20に設けられた板状の水切り部材10の下端部が、第一屋根20よりも第二屋根40に近い位置に配されるとともに第二屋根40の水上側端部より水下側に配されて、板面により第二屋根40の水上側端部を覆うように配されているので、第一屋根20を流下する雨水が第二屋根40の水上側端部よりも水下側に確実に案内され、建物2の内部への雨水の侵入を防止することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図2、3に示すように、
請求項1に記載の屋根構造1において、
前記水切り部材10は、
前記第一屋根20に固定される固定部11と、
前記固定部11から下方に延出するように形成され、前記建物2の前記第一屋根20と前記第二屋根40との間を覆うことが可能な第一延出部12と、
前記第一延出部12の下端に接続し、前記第一延出部12の板面の一側方向へ延出するように形成され、前記第二屋根40の上側を覆うことが可能な第二延出部13と、
前記第二延出部13における前記第一延出部12が接続した一端部と対向する他端部に設けられ、前記他端部よりも下方で当該他端部よりも前記第一延出部12の板面の前記一側方向へ延出し、前記水切り部材10の下端部を構成する水切り部14と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、水切り部材10は、第一屋根20に固定される固定部11と、第一屋根20と第二屋根40との間を覆うことが可能な第一延出部12と、第二屋根40の上側を覆うことが可能な第二延出部13と、水切り部材10の下端部を構成する水切り部14と、を備えるので、第一屋根20を流下する雨水が第二屋根40の水上側端部よりも水下側に確実に案内され、建物2の内部への雨水の侵入を防止することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、例えば図4に示すように、
請求項2に記載の屋根構造1において、
前記第一延出部12は、前記第一屋根面21の下方に位置することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、第一延出部12は、第一屋根面21の下方に位置するので、第一屋根面21を流下した雨水が第一延出部12に直接かかりにくくなり、建物2の内部への雨水の侵入を防止することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、例えば図4に示すように、
請求項3に記載の屋根構造1であって、
前記第一屋根20には、
取付部61の端部に第二水切り部62を備える第二水切り部材60が取り付けられており、
前記第二水切り部材60は、
前記取付部61が前記固定部11よりも上側に位置するとともに、前記第二水切り部62が前記固定部11と前記第一延出部12との接続部分が位置する部分よりも軒先側に位置することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、第二水切り部材60は、取付部61が固定部11よりも上側に位置するとともに、第二水切り部62が固定部11と第一延出部12との接続部分が位置する部分よりも軒先側に位置するので、第一屋根面21を流下した雨水が第一延出部12に直接かかりにくくなり、建物2の内部への雨水の侵入を防止することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、例えば図4に示すように、
請求項4に記載の屋根構造1であって、
前記第一屋根20は、
当該第一屋根20の第一野地板24を覆う第一防水シート25を備え、
前記第一防水シート25は、
前記固定部11を覆うように配されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、第一屋根20の第一野地板24を覆う第一防水シート25が、固定部11を覆うので、水切り部材10の上側からの雨水の侵入を防止することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、例えば図4に示すように、
請求項5に記載の屋根構造1であって、
前記第二屋根40は、
当該第二屋根40の第二野地板44を覆う第二防水シート45を備え、
前記第二防水シート45は、
前記第二屋根40から前記第一屋根20にわたる部分を覆うとともに、前記第一屋根20の前記第一野地板24の一部を覆い、
前記水切り部材10は、前記第二防水シート45よりも上側であって、前記第二防水シート45が配された範囲に配されることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、水切り部材10は、第二防水シート45よりも上側であって、第二防水シート45が配された範囲に配されるので、水切り部材10の下側に雨水が侵入したとしてもそれ以上の侵入を防止することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、例えば図4に示すように、
請求項6に記載の屋根構造1であって、
前記第一屋根20は、
前記固定部11と、前記取付部61と、の間に第三防水シート26を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、第一屋根20は、固定部11と、取付部61と、の間に第三防水シート26を備えるので、第二水切り部材60を伝う雨水の侵入を防止することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、例えば図1、4に示すように、
請求項1に記載の屋根構造1であって、
前記第一屋根面21の傾斜角度よりも前記第二屋根面41の傾斜角度の方が大きいことを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、第一屋根面21の傾斜角度よりも第二屋根面41の傾斜角度の方が大きいので、第一屋根面21を流下する雨水が第二屋根40の水上側端部に到達し難くなり、建物2の内部への雨水の侵入を防止することができる。また、北側斜線制限に適合するように屋根面を設計可能となる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、例えば図2、3に示すように、
水切り部材10であって、
第一屋根20と、前記第一屋根20の軒先の下方に離間して配された第二屋根40と、を備える建物に設けられる板状の水切り部材10であって、
前記第一屋根20に固定される固定部11と、
前記固定部11から下方に延出するように形成され、前記建物2の前記第一屋根20と前記第二屋根40との間を覆うことが可能な第一延出部12と、
前記第一延出部12の下端に接続し、前記第一延出部12の板面の一側方向へ延出するように形成され、前記第二屋根40の上側を覆うことが可能な第二延出部13と、
前記第二延出部13における前記第一延出部12が接続した一端部と対向する他端部に設けられ、前記他端部よりも下方で当該他端部よりも前記第一延出部12の板面の前記一側方向へ延出し、前記水切り部材10の下端部を構成する水切り部14と、を備えることを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、水切り部材10は、第一屋根20に固定される固定部11と、第一屋根20と第二屋根40との間を覆うことが可能な第一延出部12と、第二屋根40の上側を覆うことが可能な第二延出部13と、水切り部材10の下端部を構成する水切り部14と、を備えるので、第一屋根20を流下する雨水が第二屋根40の水上側端部よりも水下側に確実に案内され、建物2の内部への雨水の侵入を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、雨水が建物の内部に侵入しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の屋根構造を有する建物の一部を示す斜視図である。
図2】水切り部材の斜視図である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0026】
図1には、本発明に係る屋根構造1及び水切り部材10を備える建物2の屋根部分を示した。建物2は、第一屋根面21を有する第一屋根20と、第二屋根面41を有する第二屋根40と、を備える。
第一屋根20の第一屋根面21は、第二屋根40が設けられた側へ下る傾斜面となっている。第一屋根20は、第一屋根面21を形成する長尺な金属製の板材である第一屋根材22が、第一屋根面21の傾斜方向に沿って延在するように配され、隣接する第一屋根材22を嵌合又は巻締により連結した立平葺き屋根となっている。
【0027】
第二屋根40の第二屋根面41は、第一屋根面21の軒先から下方に離間して配されている。この第一屋根20と第二屋根40の間には水切り部材10が設けられており、建物2における第一屋根20と第二屋根40の間は水切り部材10により覆われている。
この第二屋根40は、第二屋根面41を形成する長尺な金属製の板材である第二屋根材42が、第二屋根面41の傾斜方向に沿って延在するように配され、隣接する第二屋根材42を嵌合又は巻締により連結した立平葺き屋根となっている。
【0028】
第二屋根面41は、第一屋根面21と同じ方向に下る傾斜面となっており、第一屋根面21よりも傾斜角度が大きくなっている。傾斜角度は任意に設定可能であるが、例えば第一屋根面21は1/12勾配とされ、第二屋根面41は1/1勾配又は2/3勾配とされている。
また、第一屋根20の周囲であって第二屋根40が位置する側を除く部分には、パラペット3が設けられている。このパラペット3は第二屋根40の側部にも延設されている。
【0029】
図2には水切り部材10の斜視図を示し、図3には水切り部材10の断面図を示した。
水切り部材10は、固定部11と、第一延出部12と、第二延出部13と、水切り部14と、水返し部16と、を備える。この水切り部材10は、一枚の金属板を折り曲げることにより形成されている。
【0030】
固定部11は、第一屋根20に固定するための部分であって平板状に形成されており、板面が第一屋根面21に沿った状態で固定できるように第一屋根面21と略等しい傾斜角度で傾斜した面とされている。
この固定部11の傾斜方向上側に位置する端部であって水切り部材10の上端部となる部分には、板面を上側に折り返すことで形成された水返し部16が形成されており、雨水の侵入を防止できるようにされている。
また、固定部11における傾斜方向下側の端部には、固定部11から略鉛直に下方へ延出するように板面を屈曲して形成された第一延出部12が設けられている。
【0031】
第一延出部12は、建物2の第一屋根20と第二屋根40との間を覆うことが可能な部分であって平板状に形成されている。この第一延出部12の下端には、第一延出部12の板面の一側方向へ延出するように板面を屈曲して形成された第二延出部13が設けられている。
第二延出部13は、第二屋根40の上側を覆うことが可能な部分であって平板状に形成されている。この第二延出部13は、第一延出部12に対して固定部11とは反対方向へ延出しており、第二屋根40の水下側へ向けて延出するように配することが可能となっている。また、第二延出部13は、第一延出部12との接続部分から延出方向に向けて下るように傾斜しており、傾斜角度は第二屋根面41の傾斜角度と略等しいものとされている。これにより、第二屋根面41に沿って配することが可能となっている。
【0032】
第二延出部13における傾斜方向下側の端部には、板面を屈曲して形成された水切り部14が設けられている。
水切り部14は、第二延出部13の端部から一段低くなるように下方に延出するとともに、第一延出部12に対する第二延出部13の延出方向と同じ方向に延出している。
すなわち、水切り部14は、第一延出部12の板面の一側方向へ延出しており、第二屋根40の水下側へ向けて延出するように配することが可能となっている。この水切り部14の先端部は、板面が下側に折り返された折返部15となっていて、この折返部15が水切り部材10の下端部となるようにされており、雨水がこの折返部15から下方へ流下するようにされている。
【0033】
図4には、図1に示すA-A線の断面図を示した。
第一屋根20は、第一垂木23と、第一垂木23の上に張られた第一野地板24と、を備える。第一野地板24の上には第一野地板24を覆う第一防水シート25が配されている。また、一部には、第二防水シート45及び第三防水シート26が重なるように配されている。そして、これらの防水シートの上に第一屋根材22が配されている。
第一垂木23の軒先側の端部には、調整材31を介して第二屋根40の第二垂木43が接続している。第一屋根20の第一野地板24は、第1垂木23の端部よりも軒先側となる位置にも配されており、この延出部分の第一野地板24は、調整材31と、第二屋根40の上に配された支持材32と、により支持されている。この延出部分には、水切り部材10と、第二水切り部材60が設けられている。
【0034】
第二屋根40は、第二垂木43と、第二垂木43の上に張られた第二野地板44と、を備える。第二野地板44の上には第二野地板44を覆う第二防水シート45が配され、第二防水シート45の上に第二屋根材42が配されている。
第二屋根材42の水上側端部は、第二屋根材42を折り曲げた立ち上げ加工がなされているとともに、隙間をふさぐためのケミカル面戸46及びエプロン面戸47が取り付けられている。さらに、第二屋根材42よりも水上側には水切り部材10を支持する下地材33が第二屋根材42の水上側端部の上側を覆うように設けられている。エプロン面戸47は第二屋根材42と下地材33との隙間をふさぐように設けられ、この隙間からの雨水等の侵入を防止するようにしている。
【0035】
第二野地板44を覆う第二防水シート45は、水上側の端部が第一屋根20にまで至るように配されており、第二野地板44を覆うことに加えて、第二屋根40から第一屋根20にわたる部分や、第一屋根20の第一野地板24における軒先側の一部も覆うようになっている。この第二防水シート45の上に水切り部材10が配される。
【0036】
水切り部材10は、第一屋根20の第一野地板24における第二防水シート45により覆われた部分の上に固定部11が配され、ビス27により第一野地板24に固定される。第二防水シート45が第一野地板24を覆う範囲は、固定部11が配される領域よりも広いものとされており、固定部11の裏面側に水が浸入したとしても第一野地板24に至らないようにしている。
【0037】
固定部11の端部に接続する第一延出部12は、第一野地板24の軒先側の端部から第二屋根40へ向けて下方に延出するように配される。これにより、建物2における第一屋根20と第二屋根40の間の部分が第一延出部12により覆われる。
また、第一延出部12は、第一屋根面21の下側に位置していて、第一屋根面21に覆われるようになっており、雨水が直接かかりにくくなるようにされている。
この第一延出部12の裏面側にも第二防水シート45が配されており、第一延出部12の裏面側に水が浸入したとしても支持材32や第二野地板44等に至らないようにされている。
【0038】
水切り部材10における第一延出部12の端部に接続する第二延出部13は、第二屋根面41に沿うように配される。第二屋根40には第二延出部13を支持する下地材33が設けられており、第二延出部13は第二屋根面41から上方に離間した位置に支持される。
第二延出部13の端部に設けられた水切り部14は、水切り部材10の下端部となる折返部15が第二延出部13よりも第二屋根面41に近接した位置に配される。
また、折返部15は、第二屋根材42の水上側端部よりも水下側に位置し、かつ、第二屋根材42に設けられたケミカル面戸46及びエプロン面戸47よりも水下側に位置している。これにより、水切り部材10の表面を流下した雨水が第二屋根材42の水上側端部へ至らないようにすることができる。
【0039】
すなわち水切り部材10は、下端部となる折返部15が、第一屋根20よりも第二屋根40に近い位置に配されるとともに第二屋根40の水上側端部より水下側に配されるようになり、第一延出部12及び第二延出部13の板面により第二屋根40の水上側端部を覆うように配されることとなる。これにより、第一屋根20を流下する雨水が第二屋根40の水上側端部よりも水下側に確実に案内される。
また、固定部11は第一屋根面21に沿い、第一延出部12は建物2の側壁に沿い、第二延出部13は第二屋根面41に沿い、水切り部14は第二屋根面41に近接した位置に配されるので、第一屋根20、水切り部材10及び第二屋根40が連続した外観となり、建物2の意匠性を向上することができる。
【0040】
第一屋根20において、水切り部材10の固定部11の上には、第三防水シート26が配され、第三防水シート26の上には第二水切り部材60が設けられている。
第二水切り部材60は、第一屋根20に取り付けるための平板状の取付部61と、取付部61の端部に設けられた第二水切り部62と、を備え、第二水切り部62が水切り部材10における固定部11と第一延出部12との接続部分よりも水下側に位置するように配される。取付部61の水上側端部は、水切り部材10の固定部11の水上側端部よりも水上側に位置しており、固定部11を避けた部分で第一野地板24にビス28により固定される。
【0041】
第三防水シート26は、第二水切り部材60の取付部61の下面から、第一垂木23の端部よりも水上側である所定位置まで配される。第三防水シート26が第一野地板24を覆う範囲は、取付部61が配される領域よりも広いものとされており、取付部61の裏面側に水が浸入したとしても第一野地板24に至らないようにしている。
第二水切り部材60の上には第一防水シート25が配される。この第一防水シート25は第二水切り部材60の上面及び第一野地板24の全体を覆うように配される。
【0042】
以上のような水切り部材10を備える屋根構造1によれば、第一屋根面21を流下した雨水は、第二水切り部62により第二屋根面41へ流下するように誘導される。
第二水切り部62から流下する雨水が風により建物側に吹き付けられたとしても、第一屋根20と第二屋根40の間や、第二屋根40の水上側端部は水切り部材10により覆われており、雨水の建物2の内部への侵入が防止される。
【0043】
また、水切り部材10の外面に至った雨水は、外面に沿って水切り部材10の下端部となる水切り部14の折返部15に案内され、第二屋根面41へ流下する。折返部15は第二屋根40の水上側端部よりも水下側にあり、水切り部材10を流下した雨水は第二屋根面41へと確実に案内され、第二屋根40の水上側端部から雨水が建物2の内部に侵入することが防止される。さらに、折返部15は、第二屋根材42に設けられたケミカル面戸46及びエプロン面戸47よりも水下側に位置しているので、折返部15から流下する雨水が風により建物2の側へ吹き付けられたとしても、第二屋根40の水上側端部へ侵入することはない。
【0044】
立平葺き屋根においては、屋根材の接続部分であるハゼ部から雨水が侵入する可能性があり、特に、ハゼ部における水上側端部から雨水が侵入する可能性が高い。また、第二屋根面41は第一屋根面21よりも傾斜角度が大きいので、第二屋根材42のハゼ部における水上側端部がより上向きとなるため、雨水が侵入する可能性が高い。上述のような水切り部材10により第二屋根材42の水上側端部を覆うことで、建物2の内部への雨水の侵入を効果的に防止することができる。
【0045】
なお、第一屋根20の傾斜角度よりも第二屋根40の傾斜角度の方が大きいとしたが、同じ傾斜角度であっても良いし、第一屋根20の傾斜角度よりも第二屋根40の傾斜角度の方が小さいものとしても良い。また、第一屋根材22や第二屋根材42は任意の材料を用いることができ、立平葺き屋根に限られるものではない。
【0046】
また、水切り部材10の形状は上述したものに限られず、上端部が第一屋根20に接続し、下端部が、第一屋根20よりも第二屋根40に近い位置に配されるとともに第二屋根40の水上側端部より水下側に配されて、板面により第二屋根40の水上側端部を覆うように配されるものであればどの様な形状であっても良い。
例えば、固定部11は第一屋根20に固定できる構成であればどの様な形状であっても良い。
第一延出部12は鉛直下方に延出するものに限られず、斜め下方に延出するものとしても良い。この場合、第一延出部12の下側部分が第一屋根20の軒先よりも水下側に延出して第一屋根面21の下方に位置しないものとしても良い。
【0047】
また、第二延出部13は第二屋根面41とは異なる傾斜角度であっても良い。
また、第一延出部12及び第二延出部13は平板状としたが、板面が曲面となっていても良い。
第一延出部12と第二延出部13とを屈曲部分で分けた構成としたが、当該屈曲部分を設けずに第一延出部12と第二延出部13とが一体となって一の板面で構成される延出部としても良い。すなわち、水切り部材10が、固定部11と、固定部11から下方へ延出する延出部と、延出部の下端に設けられた水切り部14とで構成されるようにしても良い。
【0048】
水切り部材10の材質を金属としたが金属以外の材質であっても良い。また、水切り部材10は、一枚の板材を屈曲することで形成するものとしたが、複数の部材を組み合わせて構成するものであっても良い。
また、第二水切り部材60を設けないようにしても良い。
【0049】
また、近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。本実施形態の水切り部材10及び屋根構造1は、雨水等の侵入を防止することで建物2の劣化を防止して長期にわたり使用可能とするものなので、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0050】
1 屋根構造
2 建物
10 水切り部材
11 固定部
12 第一延出部
13 第二延出部
14 水切り部
15 折返部
20 第一屋根
21 第一屋根面
24 第一野地板
25 第一防水シート
26 第三防水シート
40 第二屋根
41 第二屋根面
44 第二野地板
45 第二防水シート
60 第二水切り部材
61 取付部
62 第二水切り部
図1
図2
図3
図4