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  • 特開-MEMS型半導体式ガスセンサ 図1
  • 特開-MEMS型半導体式ガスセンサ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005058
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】MEMS型半導体式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
G01N27/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105061
(22)【出願日】2023-06-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 卓史
(72)【発明者】
【氏名】三橋 弘和
(72)【発明者】
【氏名】折田 泰志
(72)【発明者】
【氏名】北川 靖久
(72)【発明者】
【氏名】角中 塁
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA05
2G046AA18
2G046AA19
2G046AA21
2G046BA01
2G046BA03
2G046BA04
2G046BA06
2G046BA09
2G046BB02
2G046BD01
2G046BD04
2G046BD05
2G046BD06
2G046BE02
2G046FB02
2G046FE03
2G046FE15
2G046FE24
2G046FE29
2G046FE31
2G046FE36
2G046FE38
2G046FE39
2G046FE48
(57)【要約】
【課題】測定対象ガスにシロキサン、硫黄系ガスおよびエタノールが存在しても、MEMS型半導体式ガス検知素子の感度の変動を抑制できるMEMS型半導体式ガスセンサを提供する。
【解決手段】本発明のMEMS型半導体式ガスセンサ1は、測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知するMEMS型半導体式ガス検知素子2と、当該ガス検知素子2を収納し、測定対象ガスが流通可能な開口部31を有するハウジング3と、開口部31とガス検知素子2との間に設けられるフィルタ部材4とを備え、フィルタ部材4が、シロキサンを除去する第1フィルタ部材41と、硫黄系ガスを除去する第2フィルタ部材42とを備え、第1フィルタ部材41が、第2フィルタ部材42よりもシロキサンの除去能力が高く、第2フィルタ部材42が、第1フィルタ部材41よりも硫黄系ガスの除去能力が高く、フィルタ部材4が、貴金属を含まないことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知するMEMS型半導体式ガス検知素子と、
前記MEMS型半導体式ガス検知素子を収納し、前記測定対象ガスが流通可能な開口部を有するハウジングと、
前記ハウジング内において、前記開口部と前記MEMS型半導体式ガス検知素子との間に設けられるフィルタ部材と
を備えたMEMS型半導体式ガスセンサであって、
前記フィルタ部材が、シロキサンを除去する第1フィルタ部材と、硫黄系ガスを除去する第2フィルタ部材とを備え、
前記第1フィルタ部材が、前記第2フィルタ部材よりもシロキサンの除去能力が高く、前記第2フィルタ部材が、前記第1フィルタ部材よりも硫黄系ガスの除去能力が高く、
前記フィルタ部材が、貴金属を含まない、
MEMS型半導体式ガスセンサ。
【請求項2】
前記第1フィルタ部材および前記第2フィルタ部材が、前記開口部から前記MEMS型半導体式ガス検知素子に向かって、前記第1フィルタ部材、前記第2フィルタ部材の順に設けられる、
請求項1に記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。
【請求項3】
前記第2フィルタ部材が、アルミノケイ酸亜鉛またはアロフェンを含む、
請求項1または2に記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。
【請求項4】
前記第1フィルタ部材が、シリカゲルを含む、
請求項1または2に記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS型半導体式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気などの測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知するガス検知素子として、たとえば特許文献1に開示されるような、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術によって製造される半導体式ガス検知素子が用いられている。MEMS型半導体式ガス検知素子は、MEMS技術により小型化されるために、間欠駆動することで、低消費電力を実現することができる。しかし、MEMS型半導体式ガス検知素子は、間欠駆動により高温になる時間が短くなるために、測定対象ガスにシロキサン(オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)や硫黄系ガス(硫化水素など)などが含まれると、被毒して感度が変動する可能性が高くなる。したがって、MEMS型半導体式ガス検知素子では、他の種類のガス検知素子と比べて、より高度な被毒対策が求められる。
【0003】
シロキサンや硫黄系ガスによるガス検知素子の被毒を抑制するために、たとえば特許文献2では、活性炭や貴金属触媒を含むフィルタが用いられている。特許文献2に示されるように、貴金属触媒は、シロキサンや硫黄系ガスを吸着する一方で、測定対象ガスにエタノールが含まれる場合に、エタノールを酸化して酢酸を生成する。酢酸は、シロキサンや硫黄系ガスと同様に、ガス検知素子を被毒させ、その感度を変動させてしまう。したがって、特許文献2では、酢酸によるガス検知素子の被毒を抑制するために、貴金属触媒によって生成される酢酸を炭酸カルシウムなどで中和することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-041164号公報
【特許文献2】特開2018-211233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、MEMS型半導体式ガス検知素子のように、間欠駆動されて高温になる時間が短くなるガス検知素子では、他の種類のガス検知素子と比べて、より高度な被毒対策が求められる。特許文献2のように、貴金属触媒によって酢酸が生成される構成では、許容量を超えて酢酸が生成されると、十分に酢酸を中和することができないという問題がある。したがって、MEMS型半導体式ガス検知素子では、特許文献2のフィルタによって、被毒による感度の変動を十分に抑制することが難しい。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、測定対象ガスにシロキサン、硫黄系ガスおよびエタノールが存在しても、MEMS型半導体式ガス検知素子の感度の変動を抑制できるMEMS型半導体式ガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のMEMS型半導体式ガスセンサは、測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知するMEMS型半導体式ガス検知素子と、前記MEMS型半導体式ガス検知素子を収納し、前記測定対象ガスが流通可能な開口部を有するハウジングと、前記ハウジング内において、前記開口部と前記MEMS型半導体式ガス検知素子との間に設けられるフィルタ部材とを備えたMEMS型半導体式ガスセンサであって、前記フィルタ部材が、シロキサンを除去する第1フィルタ部材と、硫黄系ガスを除去する第2フィルタ部材とを備え、前記第1フィルタ部材が、前記第2フィルタ部材よりもシロキサンの除去能力が高く、前記第2フィルタ部材が、前記第1フィルタ部材よりも硫黄系ガスの除去能力が高く、前記フィルタ部材が、貴金属を含まないことを特徴とする。
【0008】
また、前記第1フィルタ部材および前記第2フィルタ部材が、前記開口部から前記MEMS型半導体式ガス検知素子に向かって、前記第1フィルタ部材、前記第2フィルタ部材の順に設けられることが好ましい。
【0009】
また、前記第2フィルタ部材が、アルミノケイ酸亜鉛またはアロフェンを含むことが好ましい。
【0010】
また、前記第1フィルタ部材が、シリカゲルを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定対象ガスにシロキサン、硫黄系ガスおよびエタノールが存在しても、MEMS型半導体式ガス検知素子の感度の変動を抑制できるMEMS型半導体式ガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るMEMS型半導体式ガスセンサを模式的に示す断面図である。
図2図1のMEMS型半導体式ガスセンサに含まれるMEMS型半導体式ガス検知素子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るMEMS型半導体式ガスセンサ(以下、単に「ガスセンサ」という)を説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例であり、本発明のガスセンサは、以下の例に限定されることはない。
【0014】
本実施形態のガスセンサは、たとえば大気などの環境雰囲気など、検知対象ガスを含み得る測定対象ガス中の検知対象ガスを検知するために用いられる。検知対象ガスとは、後述するMEMS型半導体式ガス検知素子2が検知可能であり、検知対象とするガスである。検知対象ガスとしては、特に限定されることはなく、たとえば、メタン、ブタン、イソブタン、プロパン、水素などの可燃性ガスが例示され、特にその中でもイソブタンおよびプロパンが例示される。検知対象ガスの検知には、測定対象ガス中での検知対象ガスの有無の判定や、測定対象ガス中の検知対象ガスの濃度の判定が含まれる。
【0015】
ガスセンサ1は、図1に示されるように、MEMS型半導体式ガス検知素子(以下、単に「ガス検知素子」という)2と、ガス検知素子2を収納するハウジング3と、ハウジング3内に設けられるフィルタ部材4とを備えている。ガスセンサ1は、たとえば、リード線5および電極6を介して検知回路(たとえば公知のブリッジ回路)に組み込まれ、検知回路において印加する電圧を制御し、検知回路で出力されるセンサ出力から検知対象ガスのガス濃度を算出する制御部や、検知対象ガスのガス濃度を表示する表示部、算出されたガス濃度が所定の閾値よりも高い場合に警告を通知する通知部などを備えたガス検知器に組み込まれて使用することができる。
【0016】
ガス検知素子2は、測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知する。ガス検知素子2は、公知の半導体式として構成され、検知対象ガスとの化学反応に伴なって電気抵抗(または電気伝導度)が変化することを利用して、検知対象ガスを検知する。また、ガス検知素子2は、図2に示されるように、MEMS(Micro Electro Mechanical System)型として形成されている。MEMS型とは、シリコン基板などの基板の上に微細加工技術によって素子構成要素の少なくとも一部を集積化したデバイス構造のことを意味する。ガス検知素子2は、MEMS型として形成されることにより、コイル型として形成される場合と比べて、小型化が可能で、低消費電力での駆動が可能である。
【0017】
ガス検知素子2は、公知のMEMS型半導体式として構成されていればよく、その具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、ガス検知素子2は、イソブタンおよびプロパンを検知するように構成されている。ガス検知素子2は、図2に示されるように、シリコン基板などの基板21と、基板21上に設けられるガス感応部22と、ガス感応部22を覆う触媒保護層23とを備えている。ガス検知素子2はさらに、ガス感応部22に覆われるように基板21上に設けられる抵抗体24を備えている。
【0018】
基板21は、ガス感応部22、触媒保護層23および抵抗体24を支持する。基板21は、図2に示されるように、基板本体21aと、基板本体21a上に形成された絶縁支持膜21bとを備えている。絶縁支持膜21bは、その下面で基板本体21aに接触して基板本体21a上に形成された部分と、基板本体21aから離間して基板本体21aの空洞21c上に設けられた部分とを含んでいる。ガス感応部22、触媒保護層23および抵抗体24は、空洞21c上に設けられた絶縁支持膜21bの部分に設けられている。基板21は、たとえば、シリコン基板などにより構成することができ、基板本体21aおよび絶縁支持膜21bはそれぞれ、シリコンおよびシリコン酸化膜などにより構成することができる。
【0019】
ガス感応部22は、金属酸化物半導体を主成分とし、検知対象ガスとの化学反応に伴なって電気抵抗が変化する部位である。ガス感応部22は、たとえば、酸化スズや酸化インジウムなどの金属酸化物半導体にアンチモンやニオブなどの金属をドナーとして添加することで形成することができる。ガス感応部22はさらに、白金やパラジウムなどの貴金属触媒を含んでいても良い。本実施形態では、ガス感応部22は、金属酸化物半導体として酸化スズを含み、ドナーとしてアンチモンを含み、貴金属触媒として白金を含んでいる。
【0020】
触媒保護層23は、検知対象ガスの検知に障害となる干渉ガスがガス感応部22の表面と反応するのを抑制する部位である。触媒保護層23は、ガス感応部22と干渉ガスとの反応を抑制するために、干渉ガスに応じて適宜層構造を設計することができる。触媒保護層23は、たとえば、アルミナやシリカなどの金属酸化物に、白金やパラジウムなどの貴金属触媒を担持させた担持体をガス感応部22の表面に被覆することにより形成することができる。本実施形態では、触媒保護層23は、パラジウム担持アルミナを含んでいる。
【0021】
抵抗体24は、所定の電圧が印加されることで、ガス感応部22(および触媒保護層23)を、検知対象ガスの検知に適した所定の温度(たとえば400~600℃)に加熱する加熱電極として機能する。また、抵抗体24は、ガス感応部22の電気抵抗値の変化を検出する抵抗検知電極としても機能する。ガス検知素子2は、抵抗体24によって検出されるガス感応部22の電気抵抗値の変化によって検知対象ガスを検知する。抵抗体24は、たとえば、白金、白金-ロジウム合金などの貴金属などを、スパッタリングなどの公知の成膜手法により基板21(絶縁支持膜21b)上に成膜することにより形成することができる。なお、本実施形態では、抵抗体24が加熱電極および抵抗検知電極として兼用されるが、加熱電極および抵抗検知電極が別々に設けられてもよい。
【0022】
ハウジング3は、図1に示されるように、ガス検知素子2を収納可能な空間を内部に有し、その空間内に測定対象ガスを導くために、測定対象ガスが流通可能な開口部31を有している。開口部31は、本実施形態では、ハウジング3の一方側(図1中、上側)の端部の中央の一部に設けられている。しかし、開口部は、測定対象ガスが流通可能に構成されていれば、その大きさや設けられる位置は特に限定されることはない。たとえば、開口部は、ハウジングの一方側の端部の全体に亘って設けられてもよいし、ハウジングの他の部位に設けられてもよい。また、ハウジング3は、本実施形態では、ハウジング3内の空間の他方側(図1中、下側)にガス検知素子2を収納している。しかし、ハウジングは、ハウジング内の空間にガス検知素子を収納することができれば、その収納位置は特に限定されることはなく、ハウジング内の空間の他の部位に収納してもよい。
【0023】
ハウジング3は、ガス検知素子2を収納することができ、測定対象ガスが流通可能な開口部31を有していれば、その構成は特に限定されない。本実施形態では、ハウジング3は、図1に示されるように、ガス検知素子2が設置される基台32と、ガス検知素子2を囲繞するように基台32に固定されるキャップ33とを備えている。基台32にはさらに、ガス検知素子2を検知回路(たとえば公知のブリッジ回路)に接続するためのリード線5および電極6が設けられている。キャップ33は、一方側(図1中、上側)の端部に開口部31を有し、他方側(図1中、下側)の端部に基台32によって閉鎖される開口を有する略筒状に形成されている。キャップ33の他方側の端部が基台32に固定されて、キャップ33の他方側の端部の開口が基台32によって閉鎖されることで、キャップ33の内部にガス検知素子2を収納可能な空間が形成される。なお、ハウジング3は、本実施形態では1つのキャップ33を備える一層構造を有しているが、複数のキャップを備え、1つのキャップが別のキャップに覆われる多層構造を有していてもよい。
【0024】
フィルタ部材4は、図1に示されるように、シロキサンを除去する第1フィルタ部材41と、硫黄系ガスを除去する第2フィルタ部材42とを備え、ハウジング3内において、開口部31とガス検知素子2との間に設けられる。フィルタ部材4は、開口部31とガス検知素子2との間に設けられることで、開口部31を通じてガス検知素子2に到達する測定対象ガスからシロキサンおよび硫黄系ガスを除去する。ここで、本明細書においてシロキサン/硫黄系ガスを除去するとは、測定対象ガスからシロキサン/硫黄系ガスを少なくとも部分的に、好ましくはその全部を除去することを意味する。そして、シロキサン/硫黄系ガスを除去することには、シロキサン/硫黄系ガスをフィルタ部材4に吸着させて、ガス検知素子2に到達する測定対象ガスからシロキサン/硫黄系ガスを除去することや、シロキサン/硫黄系ガスをフィルタ部材4で分解して、ガス検知素子2に到達する測定対象ガスからシロキサン/硫黄系ガスを除去することなどが含まれる。ガスセンサ1では、測定対象ガスにシロキサンおよび硫黄系ガスが含まれていても、フィルタ部材4によってシロキサンおよび硫黄系ガスを除去することにより、シロキサンおよび硫黄系ガスによるガス検知素子2の被毒が抑制され、ガス検知素子2の感度の変動が抑制される。
【0025】
第1フィルタ部材41は、第2フィルタ部材42よりもシロキサンの除去能力が高い材料で構成されている。第1フィルタ部材41は、開口部31を通じてガス検知素子2に到達する測定対象ガスからシロキサンを除去する。第1フィルタ部材41が除去するシロキサンとは、シロキサン結合を有する化合物により構成されるガスであり、たとえば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)が例示される。
【0026】
第1フィルタ部材41は、少なくとも第2フィルタ部材42よりもシロキサンの除去能力が高い材料により構成されていれば、その材料は特に限定されないが、シリカゲルを含むことが好ましい。第1フィルタ部材41は、シリカゲルを含むことにより、シロキサン除去能力がより高まり、ガス検知素子2の感度の変動をより抑制することができる。シリカゲルとしては、特に限定されることはないが、よりシロキサン除去能力の高い有機スルホン酸担持シリカゲルを好適に用いることができる。なお、シリカゲルは、ガス検知素子2の感度の変動をもたらす可能性のある水分を吸着して除去することができるという点でも、好適に用いることができる。
【0027】
第1フィルタ部材41は、少なくとも第2フィルタ部材42よりもシロキサンの除去能力が高くなるように構成されていれば、特に限定されなく、粒状、粉末状、繊維状、シート状、ディスク状などの形状を有する材料により形成することができる。第1フィルタ部材41は、たとえば、粒状のフィルタ材料をハウジング3内に充填することにより形成することができる。
【0028】
第2フィルタ部材42は、第1フィルタ部材41よりも硫黄系ガスの除去能力が高い材料で構成されている。第2フィルタ部材42は、開口部31を通じてガス検知素子2に到達する測定対象ガスから硫黄系ガスを除去する。第2フィルタ部材42が除去する硫黄系ガスとは、硫黄を含むガスであり、たとえば、硫化水素、二酸化硫黄が例示される。
【0029】
第2フィルタ部材42は、少なくとも第1フィルタ部材41よりも硫黄系ガスの除去能力が高い材料により構成されていれば、その材料は特に限定されないが、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェンおよび酸化マンガンのいずれかを含むことが好ましい。第2フィルタ部材42は、後述するエタノール酸化生成物の生成をさらに抑制するという観点から、アルミノケイ酸亜鉛またはアロフェンを含むことが好ましい。アルミノケイ酸亜鉛は、酸化アルミニウム(Al23など)、酸化ケイ素(SiO2など)および酸化亜鉛(ZnOなど)を含む複合酸化物であり、アルミノケイ酸亜鉛系鉱物とも呼ばれるものを含む。アルミノケイ酸亜鉛は、シリカアルミナゲルの中にシリカ亜鉛粒子を内包する構造を有することが好ましい。また、アロフェンは、アモルファスまたは結晶化度の低い水和アルミニウムケイ酸塩で構成された粘土準鉱物である。
【0030】
第2フィルタ部材42は、少なくとも第1フィルタ部材41よりも硫黄系ガスの除去能力が高くなるように構成されていれば、特に限定されなく、粒状、粉末状、繊維状、シート状、ディスク状などの形状を有する材料により形成することができる。第2フィルタ部材42は、たとえば、粒状のフィルタ材料をハウジング3内に充填することにより形成することができる。
【0031】
フィルタ部材4は、図1に示されるように、ハウジング3内において、開口部31とガス検知素子2との間に設けられ、開口部31を通じてハウジング3内に流入した測定対象ガスの一部または全部が第1フィルタ部材41および第2フィルタ部材42の両方を通過してガス検知素子2に到達するように配置されている。ガスセンサ1では、測定対象ガスが第1フィルタ部材41および第2フィルタ部材42の両方を通過することで、測定対象ガスに含まれるシロキサンおよび硫黄系ガスが除去される。第1フィルタ部材41および第2フィルタ部材42は、少なくとも測定対象ガスがその両方を通過するように配置されていればよいが、図1に示されるように、ハウジング3の開口部31からガス検知素子2に向かって、第1フィルタ部材41、第2フィルタ部材42の順に設けられることが好ましい。つまり、第1フィルタ部材41および第2フィルタ部材42は、開口部31からハウジング3内に流入してガス検知素子2に到達する測定対象ガスが、先ず第1フィルタ部材41を通過し、次に第2フィルタ部材42を通過するように配置されることが好ましい。ガスセンサ1では、測定対象ガスの流れの上流側から下流側に向かって第1フィルタ部材41、第2フィルタ部材42の順にフィルタ部材4が設けられることで、シロキサンおよび硫黄系ガスによる被毒をさらに抑制するとともに、後述するエタノールの影響もさらに抑制して、ガス検知素子2の感度の変動をさらに抑制することができる。ただし、第1フィルタ部材41および第2フィルタ部材42は、開口部31からガス検知素子2に向かって、第2フィルタ部材42、第1フィルタ部材41の順に設けられてもよいし、交互に設けられてもよい。
【0032】
本実施形態では、図1に示されるように、第1フィルタ部材41は、ハウジング3の一方側の端部に接触して配置された通気性材料(たとえば金網7および不織布8)を介して、ハウジング3の開口部31に隣接して配置される。第2フィルタ部材42は、ハウジング3の一方側と他方側の間の中間に配置された通気性材料(たとえば不織布8)を介して、第1フィルタ部材41に隣接して配置される。第1フィルタ部材41および第2フィルタ部材42は、ハウジング3の他方側に配置された通気性材料(たとえば不織布8および金網7)によってガス検知素子2側に移動しないように固定される。なお、第1フィルタ部材41および第2フィルタ部材42は、図示された例に限定されることはなく、第1フィルタ部材41が1つのキャップ内に配置され、第2フィルタ部材42が別のキャップ内に配置され、第1フィルタ部材41が配置されたキャップ内に、第2フィルタ部材42が配置されたキャップが挿入されて、2層構造を形成するハウジング内に配置されてもよい。
【0033】
ここで、フィルタ部材4は、金、白金、パラジウムなどの貴金属を含んでいない。貴金属は、エタノールを酸化してエタノール酸化生成物(アセトアルデヒド、酢酸)を生成する。エタノール酸化生成物は、シロキサンや硫黄系ガスと同様に、ガス検知素子2を被毒させ、ガス検知素子2の感度を変動させる。ガスセンサ1では、測定対象ガスにエタノールが含まれていても、フィルタ部材4が貴金属を含まないことで、エタノール酸化生成物の生成が抑制されるので、エタノール酸化生成物によるガス検知素子2の被毒が抑制され、ガス検知素子2の感度の変動が抑制される。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0035】
(1)測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知するMEMS型半導体式ガス検知素子と、
前記MEMS型半導体式ガス検知素子を収納し、前記測定対象ガスが流通可能な開口部を有するハウジングと、
前記ハウジング内において、前記開口部と前記MEMS型半導体式ガス検知素子との間に設けられるフィルタ部材と
を備えたMEMS型半導体式ガスセンサであって、
前記フィルタ部材が、シロキサンを除去する第1フィルタ部材と、硫黄系ガスを除去する第2フィルタ部材とを備え、
前記第1フィルタ部材が、前記第2フィルタ部材よりもシロキサンの除去能力が高く、前記第2フィルタ部材が、前記第1フィルタ部材よりも硫黄系ガスの除去能力が高く、
前記フィルタ部材が、貴金属を含まない、MEMS型半導体式ガスセンサ。
【0036】
上記構成によれば、測定対象ガスにシロキサン、硫黄系ガスおよびエタノールが存在しても、MEMS型半導体式ガス検知素子の感度の変動を抑制できる。
【0037】
(2)前記第1フィルタ部材および前記第2フィルタ部材が、前記開口部から前記MEMS型半導体式ガス検知素子に向かって、前記第1フィルタ部材、前記第2フィルタ部材の順に設けられる、(1)に記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。
【0038】
上記構成によれば、測定対象ガスにシロキサン、硫黄系ガスおよびエタノールが存在しても、MEMS型半導体式ガス検知素子の感度の変動をさらに抑制できる。
【0039】
(3)前記第2フィルタ部材が、アルミノケイ酸亜鉛またはアロフェンを含む、(1)または(2)に記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。
【0040】
上記構成によれば、測定対象ガスにシロキサン、硫黄系ガスおよびエタノールが存在しても、MEMS型半導体式ガス検知素子の感度の変動をさらに抑制できる。
【0041】
(4)前記第1フィルタ部材が、シリカゲルを含む、(1)~(3)のいずれかに記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。
【0042】
上記構成によれば、測定対象ガスにシロキサン、硫黄系ガスおよびエタノールが存在しても、MEMS型半導体式ガス検知素子の感度の変動をさらに抑制できる。
【実施例0043】
以下において、実施例をもとに本実施形態のガスセンサの優れた効果を説明する。ただし、本発明のガスセンサは、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(ガスセンサ)
ガスセンサとして、図1に概略的に示されるガスセンサを作製した。ガスセンサは、フィルタ部材を配置したキャップを、ガス検知素子を配置した基台に溶着することで作製した。キャップは、高さが12mm、外径が8.3mmφ、内径が7.7mm、開口部径が2mmφになるように形成した。
【0045】
ガス検知素子として、図2に概略的に示されるガス検知素子を作製した。その際、基板をシリコン基板とし、絶縁支持膜をシリコン酸化膜とし、絶縁支持膜上にスパッタリングにより白金を成膜して抵抗体を形成した。ガス感応部は、アンチモンをドナーとして添加した酸化スズ半導体の微粉体および白金の微粉体を含むペーストを、絶縁支持膜上の抵抗体を覆うように塗布した後、乾燥・加熱して、焼結することにより形成した。触媒保護層は、パラジウム担持アルミナの微粒体を含むペーストを、ガス感応部を覆うように塗布した後、乾燥・加熱して形成した。その他は、公知の方法を採用した。
【0046】
フィルタ部材として、図1に示される第1フィルタ部材および第2フィルタ部材のそれぞれの位置に、以下の表1~4に示されたフィルタ材料を含む上流側フィルタ部材および下流側フィルタ部材をそれぞれ配置した。上流側フィルタ部材および下流側フィルタ部材のそれぞれは、粒状に形成された、以下の表1~4のフィルタ材料をキャップに充填することで形成した。表1~4のフィルタ材料のうち酸担持シリカゲルは、有機スルホン酸担持シリカゲルを意味し、上述した第1フィルタ部材を構成する材料の一例である。また、表1~4のフィルタ材料のうちアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガンは、上述した第2フィルタ部材を構成する材料の一例である。
【0047】
(曝露試験)
ガスセンサに、シロキサン、硫黄系ガス、エタノール、シロキサン+エタノールをそれぞれ曝露して、ガス検知素子の感度の変化を測定した。シロキサン曝露試験(表1)では、10ppmのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)を含む大気にガスセンサを90日間曝露した。硫黄系ガス曝露試験(表2)では、5ppmの硫化水素を含む大気にガスセンサを24時間曝露した。エタノール曝露試験(表3)では、250ppmのエタノールを含む大気にガスセンサを90日間曝露した。シロキサン+エタノール曝露試験(表4)では、10ppmのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)および250ppmのエタノールを含む大気にガスセンサを90日間曝露した。曝露期間中は、ガス検知素子に対して、抵抗体への0.1秒の通電(500℃加熱)と29.9秒の無通電を交互に繰り返す間欠駆動を行なった。
【0048】
(測定条件)
ガスセンサを公知のブリッジ回路に組み込んで、ガス検知素子の電気抵抗値の変化に伴なってブリッジ回路に生じる電位差をセンサ出力として測定した。ガス検知素子の測定時の駆動条件は、抵抗体に対して0.1秒の通電(500℃加熱)を行う検知動作と、29.9秒の無通電動作とを交互に繰り返す間欠駆動とした。センサ出力の測定は、曝露試験前後において、検知対象ガスを含まない大気中で行なった。ガス検知素子の感度の変化は、曝露試験前から曝露試験後へのセンサ出力の上昇量により評価した。センサ出力は、2000ppmのプロパンを含む大気中で得られたセンサ出力を100として規格化した。ちなみに、大気中に2000ppmのプロパンが存在することを検知したときに警報を発するように構成されたガス検知器では、規格化したセンサ出力が曝露試験によって100を超えると、大気中にプロパンが存在しないにも関わらず警報を発することになる。
【0049】
(シロキサン曝露試験結果)
表1に、ガスセンサにシロキサンを曝露したときのセンサ出力の変化を示す。まず、表1において、実施例、比較例に関係なく、フィルタが酸担持シリカゲルを含む場合に(実施例1~6、比較例2~6)、酸担持シリカゲルを含まない場合(比較例1、7~10)と比べて、センサ出力の上昇が大きく抑制されている。このことから、酸担持シリカゲルは、測定対象ガスからシロキサンを除去し、ガス検知素子の被毒を抑制していることが分かる。つぎに、表1において比較例2~6と比較例7~10に注目すると、フィルタが酸担持シリカゲルを含む場合はセンサ出力の上昇が抑制されているが、フィルタが酸担持シリカゲルを含まず、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナのいずれかを含む場合はセンサ出力が大きく上昇している。このことから、酸担持シリカゲルは、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナと比べて、シロキサンを除去する能力が高いことが分かる。さらに、表1において実施例1~3と実施例4~6に注目すると、酸担持シリカゲルが上流側に配置される場合に、下流側に配置される場合と比べて、センサ出力の上昇がわずかに抑制されている。このことから、測定対象ガスからシロキサンを除去するためには、酸担持シリカゲルが上流側に配置されることが好ましいことが分かる。
【0050】
【表1】
【0051】
(硫化水素曝露試験結果)
表2に、ガスセンサに硫化水素を曝露したときのセンサ出力の変化を示す。まず、表2において、実施例、比較例に関係なく、フィルタがアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナのいずれかを含む場合に(実施例1~6、比較例2、7~10)、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナのいずれも含まない場合(比較例1、3~6)と比べて、センサ出力の上昇が大きく抑制されている。このことから、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナは、測定対象ガスから硫化水素を除去し、ガス検知素子の被毒を抑制していることが分かる。つぎに、表2において比較例3~6と比較例7~10に注目すると、フィルタがアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナのいずれかを含む場合はセンサ出力の上昇が抑制されているが、フィルタがアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナのいずれも含まず、酸担持シリカゲルを含む場合はセンサ出力が大きく上昇している。このことから、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガン、白金担持アルミナは、酸担持シリカゲルと比べて、硫化水素を除去する能力が高いことが分かる。さらに、表2において実施例1~3と実施例4~6に注目すると、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガンのいずれかが下流側に配置される場合に、上流側に配置される場合と比べて、センサ出力の上昇がわずかに抑制されている。このことから、測定対象ガスから硫化水素を除去するためには、アルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガンのいずれかが下流側に配置されることが好ましいことが分かる。
【0052】
【表2】
【0053】
(エタノール曝露試験結果)
表3に、ガスセンサにエタノールを曝露したときのセンサ出力の変化を示す。まず、表3において、実施例、比較例に関係なく、フィルタが白金担持アルミナを含む場合に(比較例2、7)、白金担持アルミナを含まない場合(実施例1~6、比較例1、3~6、8~9)と比べて、センサ出力が大きく上昇している。特に、フィルタが白金担持アルミナを含む場合に(比較例2、7)、白金担持アルミナの代わりにアルミナやシリカアルミナを含む場合(比較例3~4)と比べて、センサ出力が大きく上昇している。このことから、白金担持アルミナは、白金を含むことにより、エタノールの影響によるガス検知素子の被毒を促進していることが分かる。これは、白金がエタノールを酸化してエタノール酸化生成物を生成し、生成されたエタノール酸化生成物がガス検知素子の被毒を促進していると考えられる。それに対して、実施例のいずれにおいても、フィルタが白金を含まないことで、センサ出力の上昇が抑制され、ガス検知素子の被毒が抑制されている。さらに、表3において実施例1~3と実施例4~6に注目すると、上流側に酸担持シリカゲルが配置され、下流側にアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガンのいずれかが配置される場合に、その逆の配置と比べて、センサ出力の上昇がわずかに抑制されている。このことから、エタノールによる影響を抑えるためには、上流側に酸担持シリカゲルを配置し、下流側にアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガンのいずれかを配置することが好ましいことが分かる。また、実施例において、フィルタが酸化マンガンを含む場合に(実施例3、6)、酸化マンガンの代わりにアルミノケイ酸亜鉛やアロフェンを含む場合(実施例1~2、4~5)と比べて、センサ出力がわずかに上昇している。このことから、エタノールによる影響をさらに抑えるためには、フィルタに酸化マンガンの代わりにアルミノケイ酸亜鉛やアロフェンを含むことがさらに好ましいことが分かる。これは、酸化マンガンには、わずかながらもエタノールを酸化する能力があって、エタノール酸化生成物をわずかに生成するからであると考えられる。
【0054】
【表3】
【0055】
(シロキサン+エタノール曝露試験結果)
表4に、ガスセンサにシロキサン+エタノールを曝露したときのセンサ出力の変化を示す。まず、表4において、実施例、比較例に関係なく、フィルタが酸担持シリカゲルを含み、かつ白金担持アルミナを含まない場合に(実施例1~6、比較例3~6)、酸担持シリカゲルを含まないか、または白金担持アルミナを含む場合(比較例1~2、7~10)と比べて、センサ出力の上昇が大きく抑制されている。このことから、酸担持シリカゲルが、測定対象ガスからシロキサンを除去し、ガス検知素子の被毒を抑制しているとともに、フィルタが白金を含まないことで、ガス検知素子の被毒が抑制されていることが分かる。たとえば、比較例1、7~10では、フィルタが酸担持シリカゲルを含まないことにより、測定対象ガスからシロキサンが除去されず、比較例2、7では、フィルタが白金担持アルミナを含むことにより、エタノール酸化生成物が生成されて、ガス検知素子の被毒が促進されていると考えられる。それに対して、実施例のいずれにおいても、フィルタが酸担持シリカゲルを含むことでシロキサンが除去され、フィルタが白金を含まないことでエタノール酸化生成物の生成が抑制されて、ガス検知素子の被毒が抑制されていると考えられる。つぎに、表1において実施例1~3と実施例4~6に注目すると、上流側に酸担持シリカゲルが配置され、下流側にアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガンのいずれかが配置される場合に、その逆の配置と比べて、センサ出力の上昇がわずかに抑制されている。このことから、シロキサンおよびエタノールの存在下でのセンサ出力の増加を抑制するためには、上流側に酸担持シリカゲルを配置し、下流側にアルミノケイ酸亜鉛、アロフェン、酸化マンガンのいずれかを配置することが好ましいことが分かる。
【0056】
【表4】
【符号の説明】
【0057】
1 MEMS型半導体式ガスセンサ(ガスセンサ)
2 MEMS型半導体式ガス検知素子(ガス検知素子)
21 基板
21a 基板本体
21b 絶縁支持膜
21c 空洞
22 ガス感応部
23 触媒保護層
24 抵抗体
3 ハウジング
31 開口部
32 基台
33 キャップ
4 フィルタ部材
41 第1フィルタ部材
42 第2フィルタ部材
5 リード線
6 電極
7 金網
8 不織布
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガスに含まれる検知対象ガスを検知するMEMS型半導体式ガス検知素子と、
前記MEMS型半導体式ガス検知素子を収納し、前記測定対象ガスが流通可能な開口部を有するハウジングと、
前記ハウジング内において、前記開口部と前記MEMS型半導体式ガス検知素子との間に設けられるフィルタ部材と
を備えたMEMS型半導体式ガスセンサであって、
前記フィルタ部材が、シロキサンを除去する第1フィルタ部材と、硫黄系ガスを除去する第2フィルタ部材とを備え、
前記第1フィルタ部材が、前記第2フィルタ部材よりもシロキサンの除去能力が高く、前記第2フィルタ部材が、前記第1フィルタ部材よりも硫黄系ガスの除去能力が高く、
前記フィルタ部材が、貴金属を含まず、
前記第2フィルタ部材が、アルミノケイ酸亜鉛またはアロフェンを含む
MEMS型半導体式ガスセンサ。
【請求項2】
前記第1フィルタ部材および前記第2フィルタ部材が、前記開口部から前記MEMS型半導体式ガス検知素子に向かって、前記第1フィルタ部材、前記第2フィルタ部材の順に設けられる、
請求項1に記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。
【請求項3】
前記第1フィルタ部材が、シリカゲルを含む、
請求項1または2に記載のMEMS型半導体式ガスセンサ。