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特開2025-5061自動半田付システムの半田飛散防止方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005061
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】自動半田付システムの半田飛散防止方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/00 20060101AFI20250108BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B23K3/00 310P
B23K3/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105064
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】浅井 淳治
(72)【発明者】
【氏名】大平 倫之
(57)【要約】
【課題】 ショートトラブルが生じる虞れやプリント基板が汚れるなどの不具合を回避し、全体の品質及び信頼性を高めるとともに、容易かつ低コストに実施可能にする。
【解決手段】 予め、半田鏝部2i又は半田付対象部Tの移動方向Fmにおける半田付ヘッド部2と半田付対象部T間に、当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を遮蔽するセット位置Xs又は当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を開放するリリース位置Xrに移動する飛散防止シャッター3を設け、半田鏝部2iの先端に半田供給部2sからの半田Hを付着させる一次半田付処理時に、飛散防止シャッター3をセット位置Xsに移動させるとともに、一次半田付処理の終了後に、飛散防止シャッター3をリリース位置Xrに移動させるようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田付ヘッド部に備える半田供給部から半田鏝部の先端に半田を供給するとともに、少なくとも前記半田鏝部又は所定の半田付対象部を移動させて半田付けを行う際における半田の飛散を防止する自動半田付システムの半田飛散防止方法であって、予め、前記半田鏝部又は前記半田付対象部の移動方向における前記半田付ヘッド部と前記半田付対象部間に、当該半田付ヘッド部と当該半田付対象部間を遮蔽するセット位置又は当該半田付ヘッド部と当該半田付対象部間を開放するリリース位置に移動する飛散防止シャッターを設け、前記半田鏝部の先端に前記半田供給部からの半田を付着させる一次半田付処理時に、前記飛散防止シャッターを前記セット位置に移動させるとともに、前記一次半田付処理の終了後に、前記飛散防止シャッターを前記リリース位置に移動させることを特徴とする自動半田付システムの半田飛散防止方法。
【請求項2】
半田付ヘッド部に備える半田供給部から半田鏝部の先端に半田を供給するとともに、少なくとも前記半田鏝部又は所定の半田付対象部を移動させて半田付けを行う際における半田の飛散を防止する自動半田付システムの半田飛散防止装置であって、前記半田鏝部又は前記半田付対象部の移動方向における前記半田付ヘッド部と前記半田付対象部間に、当該半田付ヘッド部と当該半田付対象部間を遮蔽するセット位置又は当該半田付ヘッド部と当該半田付対象部間を開放するリリース位置に移動する飛散防止シャッター,及びこの飛散防止シャッターを移動させるシャッター移動機構部を備える飛散防止機能部と、半田鏝部の先端に半田を付着させる一次半田付処理時に、前記飛散防止シャッターを前記セット位置に移動させ、かつ前記一次半田付処理の終了後に、前記飛散防止シャッターを前記リリース位置へ移動させる制御処理を行う移動制御機能部とを備えることを特徴とする自動半田付システムの半田飛散防止装置。
【請求項3】
前記飛散防止シャッターは、底面部及びこの底面部の周縁部から起立した側面部を有するトレイ状に構成することを特徴とする請求項2記載の自動半田付システムの半田飛散防止装置。
【請求項4】
前記飛散防止シャッターは、前記底面部の上面を緩衝面により形成することを特徴とする請求項3記載の自動半田付システムの半田飛散防止装置。
【請求項5】
前記飛散防止シャッターは、前記底面部の上面に敷設し、かつ着脱可能な弾性シート部材を備えることを特徴とする請求項4記載の自動半田付システムの半田飛散防止装置。
【請求項6】
前記シャッター移動機構部は、昇降方向に移動する前記半田鏝部に対して、水平方向に
前記飛散防止シャッターを移動させることを特徴とする請求項2記載の自動半田付システムの半田飛散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの被接続部に線材等の接続部を自動で半田付けする際に用いる自動半田付システムの半田飛散防止方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品等のワークの被接続部に線材等の接続部を接続する場合、半田付けにより接続されることも多いため、半田付けを自動で行う自動半田付システムも各種提案されており、本出願人も、既に、この種の半田付けに用いて好適な自動半田付システムを特許文献1により提案した。
【0003】
特許文献1に記載の自動半田付システムは、線材の接続強度を確保し、接続品質の向上及び接続不良(接触不良)を解消するとともに、生産効率を低下させることなく小型化及び低コスト化に寄与することを目的としたものであり、具体的には、回転制御可能な回転軸を有するロボット機構と、被接続部の接続面に対する面直角方向から見て、当該接続面の面方向における中心軸線に対する線材の先端位置におけるオフセット量を検出するオフセット検出機能部と、このオフセット検出機能部の検出結果に基づき、線材の先端位置が、面直角方向から見て、回転軸に一致する当該回転軸の修正回転角を求める演算処理機能部とを設けて構成したものであり、半田付工程には、半田鏝部及び半田供給部を有する半田付ヘッド部を備えるとともに、この半田付ヘッド部をXYZ方向へ移動させることができるロボット機構部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-184463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の自動半田付システムは、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
即ち、この種の自動半田付システムにおける半田付工程では、通常、半田鏝部及びこの半田鏝部の先端に半田を供給する半田供給部を有する半田付ヘッド部を備えている。そして、接続面(被接続部)に線材等の接続部を半田付けする際には、半田付けを行う半田付対象部の手前で、一旦、半田鏝部の先端に半田を付着させる一次半田付処理を行い、この後、半田鏝部を前進(下降)させ、半田鏝部の先端に付着した溶融状態の半田を半田付対象部に転移させている。
【0007】
この場合、一次半田付処理では、350〔℃〕前後に加熱した半田鏝部に、常温に近い半田を接触させるため、接触時に半田やフラックスの一部が無用に飛散してしまう問題を生じる。この際、半田は小さなハンダボールとなって飛散するため、プリント基板の表面等に付着した場合、回路や部品のショートトラブルを生じる虞れがあるとともに、フラックスの飛散によりプリント基板の汚れにより品質低下を招く虞れがある。
【0008】
なお、半田やフラックス、更には半田付手法や半田付機構自体の変更改善により半田飛散防止のための対策もなされているが、基本的に高コスト化を招きやすいとともに、飛散防止を確実に行う観点からは必ずしも十分とはいえないため、これらの対策は採用しにくい難点がある。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した自動半田付システムの半田飛散防止装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る自動半田付システム1の半田飛散防止方法は、上述した課題を解決するため、半田付ヘッド部2に備える半田供給部2sから半田鏝部2iの先端に半田Hを供給するとともに、少なくとも半田鏝部2i又は所定の半田付対象部Tを移動させて半田付けを行う際における半田Hの飛散を防止するに際し、予め、半田鏝部2i又は半田付対象部Tの移動方向Fmにおける半田付ヘッド部2と半田付対象部T間に、当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を遮蔽するセット位置Xs又は当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を開放するリリース位置Xrに移動する飛散防止シャッター3を設け、半田鏝部2iの先端に半田供給部2sからの半田Hを付着させる一次半田付処理時に、飛散防止シャッター3をセット位置Xsに移動させるとともに、一次半田付処理の終了後に、飛散防止シャッター3をリリース位置Xrに移動させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る自動半田付システム1の半田飛散防止装置Mは、上述した課題を解決するため、半田付ヘッド部2に備える半田供給部2sから半田鏝部2iの先端に半田Hを供給するとともに、少なくとも半田鏝部2i又は所定の半田付対象部Tを移動させて半田付けを行う際における半田Hの飛散を防止する半田飛散防止装置を構成するに際して、半田鏝部2i又は半田付対象部Tの移動方向Fmにおける半田付ヘッド部2と半田付対象部T間に、当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を遮蔽するセット位置Xs又は当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を開放するリリース位置Xrに移動する飛散防止シャッター3,及びこの飛散防止シャッター3を移動させるシャッター移動機構部4を備える半田飛散防止機能部Esと、半田鏝部2iの先端に半田Hを付着させる一次半田付処理時に、飛散防止シャッター3をセット位置Xsに移動させ、かつ一次半田付処理の終了後に、飛散防止シャッター3をリリース位置Xrへ移動させる制御処理を行う移動制御機能部Emとを備えることを特徴とする。
【0012】
一方、本発明は、発明の好適な実施の態様により、飛散防止シャッター3は、底面部3d及びこの底面部3dの周縁部から起立した側面部3sを有するトレイ状に構成することが望ましい。また、飛散防止シャッター3は、底面部3dの上面を緩衝面Dfにより形成することができ、この際、飛散防止シャッター3は、底面部3dの上面に敷設し、かつ着脱可能な弾性シート部材Dを設けて構成することができる。さらに、シャッター移動機構部4は、昇降方向Fmvに移動する半田鏝部2iに対して、水平方向Fhに飛散防止シャッター3を移動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような構成を有する本発明に係る自動半田付システム1の半田飛散防止方法及び装置Mによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 一次半田付処理で、半田鏝部2iに、常温に近い半田Hが接触し、半田(ハンダボール)やフラックスの一部が飛散した場合であっても、飛散防止シャッター3により、無用な半田やフラックスを回収できるため、プリント基板の表面等に付着する虞れがなくなり、回路や部品のショートトラブルが生じる虞れを回避できるとともに、フラックスの飛散によりプリント基板が汚れるなどの不具合を回避でき、全体の品質及び信頼性を高めることができる。
【0015】
(2) 汎用的な半田Hを使用できるとともに、半田飛散防止装置Mは従来の自動半田付システム1にも容易に後付け可能になるなど、容易かつ低コストに実施できるとともに、確実な飛散防止効果を得ることができる。
【0016】
(3) 好適な態様により、飛散防止シャッター3を構成するに際し、水平な底面部3d及びこの底面部3dの周縁部から起立した側面部3sを有するトレイ状に形成すれば、無用な二次飛散や横方向への飛散を側面部3sにより阻止できるため、飛散した半田H等をより確実に回収することができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、飛散防止シャッター3を形成するに際し、底面部3dの上面を緩衝面Dfにより形成すれば、飛散したハンダボールを緩衝面Dfにより受け止めることができるため、底面部3dにより半田Hに対して確実かつ安定な飛散防止を図ることができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、飛散防止シャッター3を構成するに際し、底面部3dの上面に敷設し、かつ着脱可能な弾性シート部材Dを設けて構成すれば、長期の使用等により、汚れが酷くなったり、劣化した場合であっても、弾性シート部材Dの交換により対応できるため、クリーニングやメンテナンスを容易に行うことができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、シャッター移動機構部4を構成するに際し、昇降方向Fmvに移動する半田鏝部2iに対して、水平方向Fhに飛散防止シャッター3を移動させるように構成すれば、飛散防止シャッター3を水平に配置できるため、一般的な自動半田付システム1に広く適用できる。加えて、前述したトレイ状に形成する飛散防止シャッター3を有効化できるため、飛散した半田H等を確実に回収できるとともに、実施の容易化にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適実施形態に係る自動半田付システムの半田飛散防止装置の外観斜視図、
図2】同半田飛散防止装置における飛散防止シャッターの側面断面図、
図3】同半田飛散防止装置の図2中円Z1部の拡大図、
図4】同自動半田付システムの概略全体工程図、
図5】同自動半田付システムのブロック系統図、
図6】同自動半田付システムの処理を順次説明するためのフローチャート、
図7】同自動半田付システムの半田付け工程(図6中のステップS10)の具体的処理手順を説明するためのフローチャート、
図8】同半田飛散防止装置の飛散防止シャッターがリリース位置に移動した状態を示す概要図、
図9】同半田飛散防止装置の飛散防止シャッターがセット位置に移動した状態を示す概要図、
図10】同半田飛散防止装置の半田付け処理時の状態を示す概要図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る自動半田付システム1の全体の概略構成について、図4図1及び図8)を参照して説明する。
【0023】
なお、例示する自動半田付システム1は、ワークA(半田付対象部T)として、センサモジュールの中間アセンブリを示し、プリント基板Apに四つの被接続部(接続端子)Aj…を備えている。また、この被接続部Aj…に半田付けする接続部となる線材(Wa…)は、リード線Wa,Wb,Wc,Wdである。このリード線Wa…は、図1及び図8に示すように、先端一部の被覆部Wt…を除去して先端側の導線部Wm…の一部を露出させた形態を備える。
【0024】
次に、自動半田付システム1の機械系について説明する。自動半田付システム1は、図4に示すように、中央に、ワーク半田付ライン11を設置し、このワーク半田付ライン11は、上流側から四つの半田付処理部11a,11b,11c,11dを順次配する。即ち、ワーク半田付ライン11は、ワークAをセットしたパレット14を順次搬送する機能を備え、各パレット14にセットした各ワークAを、各半田付処理部11a,11b…に一定時間停止させつつ順次搬送する機能を備える。
【0025】
また、ワーク半田付ライン11の搬送方向Fsの右側には、各半田付処理部11a,11b…に対応する四台のロボット機構R,R,R.Rを順次配設する。一台のロボット機構Rは、六軸の産業用ロボットであり、先端に、六軸目の回転出力部に取付けたハンド部を備える。
【0026】
さらに、ロボット機構R,R,R…の右側には、クランパー19にクランプしたリード線Wa…を上述したワークA…(パレット14…)に同期して搬送するリード線搬送ライン15を配設する。クランパー19は、一個のワークAに使用する色の異なる四本のリード線Wa,Wb,Wc,Wdをクランプする機能を備える。一方、図4に示すように、リード線搬送ライン15の近傍には、多数のリード線Wa…,Wb…,Wc…,Wd…をストックしたリード線ストッカー16が配設される。
【0027】
その他、図4に示すように、ワーク半田付ライン11に対する上流側には、ワーク搬入部17を配設するとともに、このワーク搬入部17により搬送されたワークAをスタンバイさせるワーク導入部17sを備える。さらに、ワーク導入部17sの近傍には、不図示のリード線移載ロボットを設置するとともに、リード線搬送ライン15の上流側には、クランパースタンバイ部Xpを設け、リード線移載ロボットにより、このスタンバイ部Xpにセットされたクランパー19に対して、リード線ストッカー16にストックされたリード線Wa,Wb……を順次移載することができる。他方、ワーク半田付ライン11に対して、下流側には半田付け処理の終了したワークAを、ワーク半田付ライン11から搬出するワーク搬出部18を備える。Rpは半田付け処理の終了したワークAを取出すワーク取出ロボットを示す。
【0028】
他方、ワーク半田付ライン11の搬送方向Fsの左側には、各半田付処理部11a,11b…に対応する四台の半田付ユニット12,12,12.12を順次配設する。一台の半田付ユニット12は、図1に示すように、半田付ヘッド部2備え、この半田付ヘッド部2は、半田付対象部T(ワークA)に半田付けを行う半田鏝部2i,及び半田鏝部2iの先端に半田Hを供給する半田供給部2sを備える。また、この半田付ヘッド部2を、XYZ方向へ移動させる移動機構部2dを備える。そして、この半田付ユニット12に、本発明の要部を構成する本実施形態に係る半田飛散防止装置Mを付設する。
【0029】
次に、本実施形態に係る半田飛散防止装置Mの構成について、図1図3及び図8図10を参照して説明する。
【0030】
この半田飛散防止装置Mは、図1に示すように、半田鏝部2iの移動方向Fmにおける半田付ヘッド部2と半田付対象部T間に、当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を遮蔽するセット位置Xs(図1)又は当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を開放するリリース位置Xr(図8)に移動する飛散防止シャッター3,及びこの飛散防止シャッター3を移動させるシャッター移動機構部4を備え、この飛散防止シャッター3とシャッター移動機構部4は、飛散防止機能部5を構成する。
【0031】
シャッター移動機構部4は、複数の支柱21…に支持され、かつ位置が固定された水平なシャッター支持テーブル22を備え、このシャッター支持テーブル22の上面22uに左右一対のエアシリンダ(例示は、ロッドレスシリンダ)23,23を配設する。24は、このエアシリンダ23,23の駆動制御により移動する可動部を示す。
【0032】
そして、この可動部24の上面には、飛散防止シャッター3の後端を位置調整機能を兼ねる固定部24cにより固定する。飛散防止シャッター3は、半田鏝部2iの移動方向Fmとなる昇降方向Fmvに対して、水平方向Fhに移動させることができる。これにより、飛散防止シャッター3を、図1及び図9に示すセット位置Xs、即ち、半田鏝部2iの移動方向Fmにおける半田付ヘッド部2と半田付対象部T間となるセット位置Xs,又は図8及び図10に示すリリース位置Xr、即ち、半田付ヘッド部2と半田付対象部T間を開放するリリース位置Xrに選択的に移動させることができる。
【0033】
このように、飛散防止シャッター3を、昇降方向Fmvに移動する半田鏝部2iに対して、水平方向Fhに移動させるように構成すれば、飛散防止シャッター3を水平に配置できるため、一般的な自動半田付システム1に広く適用できる。加えて、前述したトレイ状に形成する飛散防止シャッター3を有効化できるため、飛散した半田H等を確実に回収できるとともに、実施の容易化にも寄与できる。
【0034】
また、飛散防止シャッター3は、図1図3に示すように、長方形に形成した水平な底面部3dを有するとともに、この底面部3dの周縁部から起立した側面部3sを有するトレイ状に構成する。この場合、長手方向の一端側が前端として配置される。飛散防止シャッター3を、このような形状に形成すれば、無用な二次飛散や横方向への飛散を側面部3sにより阻止できるため、飛散した半田H等をより確実に回収することができる。
【0035】
さらに、飛散防止シャッター3は、底面部3dの上面を緩衝面Dfにより形成する。具体的には、図2及び図3に示すように、底面部3dの上面に敷設し、かつ着脱可能な弾性シート部材Dを設けて構成する。具体的には、飛散防止シャッター3自体を、耐熱性を有するステンレス素材等により形成するとともに、底面部3dの上面に、例えば、ポリウレタン等の合成樹脂の発泡成形品であるスポンジを用いた弾性シート部材Dを敷いた二層構造の底面に構成することができる。
【0036】
このように、飛散防止シャッター3を構成するに際し、底面部3dの上面に敷設し、かつ着脱可能な弾性シート部材Dを設けて構成すれば、長期の使用等により、汚れが酷くなったり、劣化した場合であっても、弾性シート部材Dの交換により対応できるため、クリーニングやメンテナンスを容易に行うことができる。また、この構成により、飛散防止シャッター3の底面部3dの上面は緩衝面Dfに形成されるため、飛散したハンダボールを緩衝面Dfにより受け止めることが可能となり、底面部3dにより半田Hに対して確実かつ安定な飛散防止を図ることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る半田飛散防止装置Mを含む自動半田付システム1の駆動系及び制御系の構成について、図5を参照して説明する。
【0038】
図5中、Csはシステムコントローラを示す。システムコントローラCsは、システムコントローラ本体31を備え、このシステムコントローラ本体31には、タッチパネル31tを有するディスプレイ31dが付属する。また、システムコントローラ本体31には位置決用カメラ24をインターフェイス32を介して接続する。一方、システムコントローラ本体31には、半田付処理部11aにおける、ハンド部Rh及び各ロボット軸を駆動する各種のアクチュエータ群Roを含むロボット機構Rをインターフェイス34を介して接続する。半田付処理部11aについて説明したが、他の半田付処理部11b,11c,11dについても、半田付処理部11aと同様に接続する。さらに、システムコントローラ本体31には、シャッター移動機構部4…を含む各半田付ユニット12…をインターフェイス35…を介して接続する。その他、ワーク取出ロボットRp及びリード線移載ロボット(不図示)、ワーク半田付ライン11,リード線搬送ライン15,ワーク搬入部17及びワーク搬出部18の各駆動機構(不図示)も必要なインターフェイスを介してシステムコントローラ本体31に接続される。
【0039】
また、システムコントローラCsは、CPU及び内部メモリ36等を内蔵するコンピュータ機能を備え、内部メモリ36mには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため包括的な制御プログラム(ソフトウェア)を格納するプログラムエリア36mpを有するとともに、各種データ(データベース)類を書込可能なデータエリア36mdが含まれる。そして、プログラムエリア36mpには、自動半田付システム1を機能させるための半田付シーケンスプログムCpfが格納されることにより各機能部が実行される。具体的には、本発明に関連して、半田鏝部2iの先端に半田Hを付着させる一次半田付処理時に、飛散防止シャッター3をセット位置Xsに移動させ、かつ一次半田付処理の終了後に、飛散防止シャッター3をリリース位置Xrへ移動させる制御処理を行う移動制御機能部Emが含まれる、
【0040】
次に、自動半田付システム1の全体的動作を含む本実施形態に係る半田飛散防止方法について、各図、特に、図8図10を参照しつつ図6及び図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0041】
まず、図4において、ワーク搬入部17により搬入されたワークAは、スタンバイ位置となるワーク導入部17sにおけるパレット14内にセットされる(ステップS1)。また、不図示のリード線移載ロボットにより、リード線ストッカー16から色の異なる一番目のリード線Waが、リード線搬送ライン15におけるクランパースタンバイ部Xpに位置するクランパー19にセット(移載)される(ステップS2)。このような移載処理は、残りの三本(一般にはN本)のリード線Wb,Wc,Wdに対しても同様に行われる(ステップS3)。
【0042】
移載処理が完了したなら、リード線搬送ライン15によりクランパー19は、次工程である一番目のリード線Waの半田付けを行う半田付処理部11aに移送される(ステップS4)。クランパー19が半田付処理部11aに移送されたなら、半田付処理部11aにおけるロボット機構Rにより、一番目のリード線Waがハンド部Rhにより把持される(ステップS5)。そして、ロボット機構Rにより把持されたリード線Waは、直ちにワークAにおける対応する位置、即ち、被接続部Ajに対する対面位置(図1及び図8参照)まで移送される(ステップS6)。
【0043】
そして、以上の処理が終了、即ち、リード線Waが被接続部Ajの対面位置に移送されたなら、位置決用カメラ24によりリード線Waの先端位置Ws付近を撮影する(ステップS7)。これにより、位置決用カメラ24の画像データ(検出データ)は、システムコントローラ本体31に付与されるため、システムコントローラCsにおける位置決め制御機能により、ロボット機構Rのアクチュエータ群Roを駆動制御し、リード線Waの位置に対するフィードバック制御により位置決め処理を行う(ステップS8,S9)。この結果、リード線Waの先端位置Wsが被接続部Ajに対して定位置になったなら、半田付ユニット12を駆動制御して半田付け工程を実行する(ステップS10)。
【0044】
この半田付け工程の処理手順について、図7に示すフローチャート及び図8図10の概要図を参照して説明する。
【0045】
図8は、半田付け工程の初期状態を示す。初期状態では、飛散防止シャッター3が後退したリリース位置Xrに移動した状態にあるとともに、半田付ヘッド部2は最上昇位置にある。
【0046】
今、この状態から移動制御機能部Emによりエアシリンダ23,23が駆動制御され、飛散防止シャッター3が前進移動する(ステップS101)。これにより、飛散防止シャッター3は、セット位置Xsで停止する(ステップS102)。このセット位置Xsは、半田鏝部2iの移動方向Fmにおける半田付ヘッド部2と半田付対象部T間であって、半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を遮蔽する図9に示す位置となる。
【0047】
次いで、半田付ヘッド部2を制御し、半田鏝部2iの先端に半田Hを付着させる一次半田付処理を行う(ステップS103)。この場合、半田付ヘッド部2に備える半田供給部2sから半田Hを供給し、半田鏝部2iの先端に半田Hを付着させる。なお、この際、半田付ヘッド部2の位置は、そのままの状態を維持してもよいし、必要な高さ、即ち、飛散防止シャッター3の近傍まで下降させるなど任意である。そして、終了条件を満たしたなら一次半田付処理を終了させる(ステップS104)。この終了条件は、設定した時間の経過或いは半田Hに対する設定した供給量(供給長さ)等を条件とすることができる。
【0048】
一次半田付処理時には、350〔℃〕前後に加熱した半田鏝部2iに、常温に近い半田Hを接触させるため、接触時には、図9に示す矢印Fnのように、半田Hやフラックス等の一部が飛散するが、その下方に配した飛散防止シャッター3により、飛散した半田Hやフラックスが回収されるため、飛散防止シャッター3より外側への飛散が防止される。
【0049】
この後、一次半田付処理が終了すれば、移動制御機能部Emによりエアシリンダ23,23が駆動制御され、飛散防止シャッター3が後退移動し、リリース位置Xrに戻される(ステップS105)。図10に、リリース位置Xrに戻された飛散防止シャッター3を示す。そして、半田付ヘッド部2と半田付対象部T間が開放されるため、半田付ヘッド部2を所定の設定位置まで下降変位させる(ステップS106,S107)。この場合、半田付ヘッド部2の全体を下降させる構成でもよいし、半田鏝部2iのみを下降させる構成でもよい。
【0050】
これにより、半田鏝部2iの先端は、図10に示すように、半田付対象部Tに近接又は当接し、半田鏝部2iの先端に付着した半田Hは、半田付対象部Tにおける被接続部Ajに転移され、被接続部Ajにリード線Waが半田付けされる半田付け処理(二次半田付処理)が行われる(ステップS108)。そして、時間等により設定した終了条件を満たしたなら半田付け処理を終了させる(ステップS109)。また、半田付ヘッド部2を上昇移動させ、図8に示す初期状態となるホームポジションに戻す制御を行う(ステップS110)。以上により、半田付け工程が終了する。この後、次の半田付け工程が継続する場合には、同様の処理が所定のタイミングに従って実行される(ステップS111,S101…)。したがって、図6の場合には、次の工程に移送され、次のリード線Wb…に対する半田付け工程が同様に行われる。
【0051】
よって、このような本実施形態に係る自動半田付システム1の半田飛散防止方法及び装置1によれば、基本的な手法として、予め、半田鏝部2i又は半田付対象部Tの移動方向Fmにおける半田付ヘッド部2と半田付対象部T間に、当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を遮蔽するセット位置Xs又は当該半田付ヘッド部2と当該半田付対象部T間を開放するリリース位置Xrに移動する飛散防止シャッター3を設け、半田鏝部2iの先端に半田供給部2sからの半田Hを付着させる一次半田付処理時に、飛散防止シャッター3をセット位置Xsに移動させるとともに、一次半田付処理の終了後に、飛散防止シャッター3をリリース位置Xrに移動させるようにしたため、一次半田付処理で、半田鏝部2iに、常温に近い半田Hが接触し、半田(ハンダボール)やフラックスの一部が飛散した場合であっても、飛散防止シャッター3により、無用な半田やフラックスを回収できるため、プリント基板の表面等に付着する虞れがなくなり、回路や部品のショートトラブルが生じる虞れを回避できるとともに、フラックスの飛散によりプリント基板が汚れるなどの不具合を回避でき、全体の品質及び信頼性を高めることができる。また、汎用的な半田Hを使用できるとともに、半田飛散防止装置Mは従来の自動半田付システム1にも容易に後付け可能になるなど、容易かつ低コストに実施できるとともに、確実な飛散防止効果を得ることができる。
【0052】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0053】
例えば、飛散防止シャッター3は、昇降方向Fmvに移動する半田鏝部2iに対して、水平方向Fhに移動させる例を示したが、これらの方向に限定されるものではない。また、半田鏝部2iを移動させて半田付けを行う例を示したが、半田付対象部Tを移動させて半田付けを行う場合であっても同様に適用できる。一方、この飛散防止シャッター3は、水平な底面部3d及びこの底面部3dの周縁部から起立した側面部3sを有するトレイ状に構成した例を示したが、側面部3sは、必須の構成要素ではなく、水平な底面部3dのみであってもよいとともに、或いは底面部3dの中央を下方に膨出させた湾曲状に形成するなどしてもよい。さらに、平面形状を長方形に形成した例を示したが、先端を半円形に形成するなど、形状は任意である。また、底面部3dの上面に敷設し、かつ着脱可能な弾性シート部材Dを設けて構成した場合を示したが、底面部3dの上面を摩擦性の塗料等でコーティングするなど、弾性シート部材Dを使用するか否かは任意である。他方、シャッター移動機構部4は、エアシリンダ23…を利用した例を示したが、電動シリンダ等の同様の機能を有する他のアクチュエータにより置換可能である。また、ロボット機構R…は、同様の機能を有する機械的要素に置換可能であり、必ずしも一般的なロボットを意味するものではない。同様に、半田付けは、被接続部Aj…に対して接続部となる線材(Wa…)を接続する例を説明したが、各種の部品や材料を含む接続部と被接続部を接続する際に利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る自動半田付システムは、電子部品や電子機器等の製造工程における各種ワークの被接続部に対して各種線材等の接続部を自動で半田付けする際に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1:自動半田付システム,2:半田付ヘッド部,2s:半田供給部,2i:半田鏝部,3:飛散防止シャッター,3d:底面部,3s:側面部,4:シャッター移動機構部,M:半田飛散防止装置,H:半田,T:半田付対象部,Es:半田飛散防止機能部,Em:移動制御機能部,Fm:半田鏝部の移動方向,Fmv:昇降方向,Fh:水平方向,Xs:セット位置,Xr:リリース位置,Df:緩衝面,D:弾性シート部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10