(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005062
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】計数装置、計数方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06M 11/00 20060101AFI20250108BHJP
A01M 1/00 20060101ALI20250108BHJP
A01M 1/14 20060101ALI20250108BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20250108BHJP
【FI】
G06M11/00 D
A01M1/00 Q
A01M1/14 S
A01M1/14 Z
G06T7/60 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105065
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000101938
【氏名又は名称】イカリ消毒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田近 五郎
(72)【発明者】
【氏名】土井 啓敬
(72)【発明者】
【氏名】道倉 達也
(72)【発明者】
【氏名】内田 有治
(72)【発明者】
【氏名】矢代 真子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和雄
【テーマコード(参考)】
2B121
5L096
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121BA03
2B121DA34
2B121EA08
2B121FA04
2B121FA14
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA02
5L096DA02
5L096DA03
5L096EA37
5L096EA43
5L096FA34
5L096FA53
5L096FA59
5L096GA32
5L096GA34
5L096GA51
5L096JA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】虫の数を適切に計数すること。
【解決手段】本開示に係る計数装置は、捕獲した虫の画像を取得する画像取得部と、前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出する占有率算出部と、捕獲された虫の数を計数する計数部と、を備える。前記計数部は、前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理を行い、前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理を行う。占有率に応じて計数処理を異ならせることによって、虫同士の重なり具合に応じて虫の数を適切に計数することができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕獲した虫の画像を取得する画像取得部と、
前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出する占有率算出部と、
捕獲された虫の数を計数する計数部と、
を備え、
前記計数部は、
前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理を行い、
前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理を行うことを特徴とする計数装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計数装置であって、
前記計数部は、
前記占有率が第1閾値よりも高く、且つ、前記占有率が第2閾値よりも低い場合には、前記第2計数処理を行い、
前記占有率が前記第2閾値よりも高い場合には、前記虫の数の計数を行わないことを特徴とする計数装置。
【請求項3】
請求項2に記載の計数装置であって、
前記計数部の計数結果を出力する出力部を更に備え、
前記出力部は、
前記占有率が前記第2閾値よりも低い場合、前記計数部が計数した前記虫の数を出力し、
前記占有率が前記第2閾値よりも高い場合、前記虫の数が異常であることを出力することを特徴とする計数装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の計数装置であって、
前記画像を解析することによって、虫の種類を同定する同定部を更に備え、
前記占有率が第1閾値よりも高く、且つ、前記占有率が前記第2閾値よりも低い場合、前記計数部は、
前記同定部によって同定可能であった虫のうちの特定の種類の虫の割合を算出し、
前記占有率に基づいて、捕獲された虫の総数を算出し、
前記特定の種類の虫の割合と、前記総数とに基づいて、前記特定の種類の前記虫の数を算出することを特徴とする計数装置。
【請求項5】
捕獲した虫の画像を取得すること、
前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出すること、及び、
捕獲された虫の数を計数すること
を行うとともに、
前記捕獲された虫の数を計数する際に、
前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理を行い、
前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理を行う、計数方法。
【請求項6】
コンピュータに、
捕獲した虫の画像を取得する画像取得機能と、
前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出する占有率算出機能と、
捕獲された虫の数を計数する計数機能と
を実現させるとともに、
前記計数機能として、
前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理機能と、
前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理機能と
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計数装置、計数方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、虫を捕獲した粘着シートの画像に基づいて、虫の数を計数することや、虫の種類を判別することが開示されている。また、特許文献1では、粘着シートの画像を解析することによって、虫と判別された領域を抽出し、抽出した領域の数に基づいて虫の数を計数している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着シートに捕獲された虫の数が多くなると、虫同士が重なり合う可能性が高くなる。そして、虫同士が重なり合うと、虫と判別された領域の数に基づく計数処理では、誤差が生じやすくなる。特に、粘着シート上でほとんどの虫が重なる程度まで多数の虫が捕獲された場合には、虫と判別された領域の数に基づく計数では、計数結果が役に立たない事態になる。
【0005】
本発明は、虫同士の重なり具合に応じて虫の数を適切に計数することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の幾つかの実施形態は、捕獲した虫の画像を取得する画像取得部と、前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出する占有率算出部と、捕獲された虫の数を計数する計数部と、を備え、前記計数部は、前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理を行い、前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理を行うことを特徴とする計数装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の幾つかの実施形態によれば、虫同士の重なり具合に応じて虫の数を適切に計数することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、虫を捕獲した捕虫シート7の画像である。
【
図6】
図6は、捕虫シート7に捕獲された虫の数と、2値画像の黒画素の割合(占有率)の測定結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、捕獲された虫の数と占有率の散布図である。
【
図8】
図8は、計数装置10のハードウェア構成を示す説明図である。
【
図10】
図10は、計数装置10が行う第1処理のフロー図である。
【
図11】
図11は、計数装置10が行う第2処理のフロー図である。
【
図12】
図12は、計数装置10が行う第3処理のフロー図である。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、占有率Rが第1閾値T
1よりも高く、第2閾値T
2よりも低い場合における処理前画像及び2値画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の態様が明らかとなる。
【0011】
態様1は、捕獲した虫の画像を取得する画像取得部と、前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出する占有率算出部と、捕獲された虫の数を計数する計数部と、を備え、前記計数部は、前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理を行い、前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理を行うことを特徴とする計数装置である。このような計数装置によれば、占有率に応じて計数処理を異ならせることによって、虫同士の重なり具合に応じて虫の数を適切に計数することができる。
【0012】
態様2に係る計数装置は、態様1に係る計数装置であって、前記計数部は、前記占有率が第1閾値よりも高く、且つ、前記占有率が第2閾値よりも低い場合には、前記第2計数処理を行い、前記占有率が前記第2閾値よりも高い場合には、前記虫の数の計数を行わない。これにより、占有率が第1閾値よりも低い場合には、占有率に基づいて虫の数を算出するよりも、捕獲された虫の数を少ない誤差で求めることができる。また、前記占有率が第1閾値よりも高く、且つ、前記占有率が第2閾値よりも低い場合には、虫同士が重なり合っていても、捕獲数と占有率が相関していることを利用して、虫の数を適切に計数することができる。また、前記占有率が前記第2閾値よりも高い場合には、誤差の多い捕獲数を出力することを抑制できる。
【0013】
態様3に係る計数装置は、態様2に係る計数装置であって、前記計数部の計数結果を出力する出力部を更に備え、前記出力部は、前記占有率が前記第2閾値よりも低い場合、前記計数部が計数した前記虫の数を出力し、前記占有率が前記第2閾値よりも高い場合、前記虫の数が異常であることを出力する。これにより、計数装置の使用者に有効な情報を出力しつつ、誤差の多い捕獲数を出力することを抑制できる。
【0014】
態様4に係る計数装置は、態様2又は3に係る計数装置であって、前記画像を解析することによって、虫の種類を同定する同定部を更に備え、前記占有率が第1閾値よりも高く、且つ、前記占有率が前記第2閾値よりも低い場合、前記計数部は、前記同定部によって同定可能であった虫のうちの特定の種類の虫の割合を算出し、前記占有率に基づいて、捕獲された虫の総数を算出し、前記特定の種類の虫の割合と、前記総数とに基づいて、前記特定の種類の前記虫の数を算出する。これにより、特定の種類の捕獲数を少ない誤差で求めることが可能である。
【0015】
態様5は、捕獲した虫の画像を取得すること、前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出すること、及び、捕獲された虫の数を計数すること、を行うとともに、前記捕獲された虫の数を計数する際に、前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理を行い、前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理を行う計数方法である。このような計数方法によれば、占有率に応じて計数処理を異ならせることによって、虫の数を適切に計数することができる。
【0016】
態様6は、コンピュータに、捕獲した虫の画像を取得する画像取得機能と、前記画像において虫の占める領域の割合を示す占有率を算出する占有率算出機能と、捕獲された虫の数を計数する計数機能とを実現させるとともに、前記計数機能として、前記占有率が第1閾値よりも低い場合、前記画像の解析によって前記虫の数を計数する第1計数処理機能と、前記占有率が第1閾値よりも高い場合、前記占有率に基づいて前記虫の数を計数する第2計数処理機能とを実現させるプログラムである。このようなプログラムによれば、占有率に応じて計数処理を異ならせることによって、コンピュータに虫の数を適切に計数させることができる。
【0017】
===本実施形態===
<参考説明>
図1は、捕虫装置1の説明図である。
【0018】
捕虫装置1は、虫を捕獲する装置である。捕虫装置1は、開口3Aを有する本体3と、ランプ5とを有する。ランプ5は、例えばブラックライトであり、虫を誘引する。但し、捕虫装置1はランプ5を備えていなくても良い。
【0019】
捕虫装置1には、捕虫シート7を装着可能である。捕虫シート7は、虫を捕獲するシートであり、粘着シートで構成されている。なお、後述するように、捕虫装置1は、捕虫シート7を用いて捕虫する装置に限られるものではない。
【0020】
捕虫装置1は、例えば食品工場などに設置され、捕虫シート7の交換時に、虫を捕獲した捕虫シート7(使用済みの捕虫シート7)が回収されることになる。捕虫装置1の設置場所における虫の発生や拡散の状況を把握するために、捕虫シート7に捕獲された虫の計数や同定が行われることになる。但し、捕虫シート7に捕獲された虫の計数や同定を人間が目視で行うと、作業時間がかかり、また、計数結果や同定結果にばらつきが生じるおそれがある。このため、捕虫シート7の画像を解析して、自動で虫の計数や同定が行われることになる。
【0021】
図2は、虫を捕獲した捕虫シート7の画像である。カメラやスキャナー等によって、捕虫シート7の画像が読み取られることになる。画像(画像データ)は、2次元配置された画素で構成されている。
図2に示す画像(処理前画像、生画像)は、RGBのカラー画像であり、画像を構成する画素(画素データ)は、RGBの多階調データで構成されている。
【0022】
図3は、2値化処理の説明図である。図中の左側の画像は、2値化処理前の画像(処理前画像、生画像)であり、
図2に示すカラー画像である。図中の右側の画像は、2値化処理後の画像であり、2値画像である。2値画像は、白黒画像であり、2値画像を構成する画素は、白又は黒を示す2値データで構成されている。2値画像の黒画素は、虫が存在する画素を示している。また、2値画像において黒画素が連結した領域は、虫が存在する領域を示している。なお、捕虫シート7の罫線の領域も黒画素になるが、捕虫シート7の罫線は前処理又は後処理によって2値画像から除去可能である。
【0023】
図4は、ラベリング処理の説明図である。ラベリング処理は、2値画像に含まれる連結領域(2値画像において黒画素が連結した領域)ごとに、ラベル(番号)を割り当てる処理である。同じ連結領域に属する画素には同じラベルが割り当てられるとともに、異なった連結領域には異なったラベルが割り当てられる。ラベリング処理の後、2値画像に含まれる連結領域の数を計数することができる。
【0024】
捕獲された虫が少ない場合、虫同士が重なっている可能性が低いため、2値画像の1つの連結領域は、1匹の虫が存在する領域を示していると考えられる。例えば
図2に示す画像の場合、虫同士はほとんど重なっておらず、2値画像の1つの連結領域には1匹の虫が存在することになる。このため、捕獲された虫が少ない場合、2値画像に含まれる連結領域の数は、捕獲された虫の数に相当する。このため、
図2に示すように虫同士がほとんど重ならない状況下では、2値画像の連結領域の数(画像において虫が占める領域の数)に基づいて虫の数を計数しても、計数結果(捕獲数)の誤差は少ないと考えられる(次述する占有率Rに基づいて虫の数を推定する計数処理よりも、計数結果の誤差は少ないと考えられる)。上記のような画像解析に基づいて虫の数を計数する計数処理(画像において虫が占める領域の数を計数する計数処理)のことを「第1計数処理」と呼ぶ。
【0025】
【0026】
捕獲された虫が多い場合、虫同士が重なっている可能性が高いため、2値画像の1つの連結領域(画像において虫が占める領域)には、2匹以上の虫が存在する可能性が高くなる。例えば、
図5Aに示す画像の場合、多くの虫が重なり合っているため、
図5Bに示す2値画像の1つの連結領域には、多数の虫が存在している。このため、
図5Aに示すように多くの虫が重なり合う状況下では、第1計数処理によって虫の数を計数すると、計数結果(捕獲数)の誤差が大きくなる。また、第1計数処理の場合、捕獲された虫の数が多くなるほど、2値画像の連結領域の数が減少し、計数される虫の数が減少してくるため、誤差が増大しやすくなる。なお、
図5Aのように虫同士が重なり合うと、画像解析による虫の同定も困難になる。
【0027】
<捕獲数と占有率との関係について>
図6は、捕虫シート7に捕獲された虫の数と、2値画像の黒画素の割合(占有率)の測定結果を示すグラフである。また、
図7は、捕獲された虫の数と占有率の散布図である。
【0028】
異なる条件下で捕虫装置1を設置して虫を捕獲した51枚の捕虫シート7を収集し、それぞれの捕虫シート7について、捕獲された虫の数を目視にて計数した。また、それぞれの捕虫シート7について、粘着面の画像を読み取り、捕虫シート7の画像に2値化処理を施して2値画像を取得し、2値画像における黒画素の領域の占有率を算出した。占有率は、所定領域における画素数に対する黒画素の割合を示している。なお、2値画像の黒画素の領域には虫が存在しているため、2値画像における黒画素の領域の占有率は、言い換えると、画像において虫の占める領域の割合を示している。
【0029】
図6のグラフの横軸は、シート番号を示している。なお、シート番号は、占有率の多い順に付されている。また、
図6の左側の縦軸は、捕獲された虫の数(捕獲数)を示している。右側の縦軸は、占有率を示している。
図7の横軸は、占有率を示している。また、
図7の縦軸は、捕獲された虫の数(捕獲数)を示している。
【0030】
図6及び
図7に示される通り、捕獲数が少ないほど占有率は低く、捕獲数が多いほど占有率は高くなる。つまり、捕獲数と占有率は相関している。なお、シート番号1~51の捕獲数と占有率との相関係数は0.884であった。相関係数の絶対値が1に比較的近いことからも、捕獲数と占有率は強い相関関係であることが示されている。
【0031】
本実施形態の計数装置は、捕獲数と占有率が相関していることを利用して、占有率に基づいて、捕獲された虫の数を計数する。これにより、虫同士が重なり合っていても、虫の数を適切に計数することができる。なお、占有率に基づいて捕獲された虫の数を計数する計数処理のことを「第2計数処理」と呼ぶ。この第2計数処理については後述する。
【0032】
また、占有率が低い場合、虫同士が重なり合う可能性が低いと考えられ、占有率が高い場合、虫同士が重なり合う可能性が高いと考えられる。例えば、
図3に示す画像では占有率は5%であり、
図5Aに示す画像では占有率は26%である。そこで、本実施形態の計数装置10は、虫同士の重なり具合に応じて虫の数を適切に計数するために、占有率に応じて計数処理を異ならせている。
以下、本実施形態の計数装置について説明する。
【0033】
<計数装置10の構成>
図8は、計数装置10のハードウェア構成を示す説明図である。
図9は、計数装置10のブロック図である。なお、計数システム100は、計数装置10に画像読取装置9(カメラやスキャナーなどの画像読取装置9)を加えたシステムである。
【0034】
計数装置10は、捕獲された虫の数を計数する装置である。計数装置10は、1台又は複数台のコンピュータで構成されている。複数台のコンピュータで計数装置10を構成する場合には、複数の機能(例えば
図9の計数部23や同定部24)を機能毎に別々のコンピュータに分けて実現しても良いし、同じ機能を複数のコンピュータで分散処理させても良い。
【0035】
図8に示すように、計数装置10は、演算処理装置11と、記憶装置12と、通信装置13と、表示装置14と、入力装置15とを有する。演算処理装置11は、例えばCPU等により構成される。記憶装置12は、例えばRAM等の主記憶装置と、ハードディスクドライブやSSD等の補助記憶装置とにより構成される。通信装置13は、外部装置(例えば画像読取装置9など)との間で有線通信又は無線通信を行う通信モジュール等により構成される。表示装置14は、例えばディスプレイ等により構成され、計数結果や同定結果を表示(出力)する。入力部は、例えばキーボードやマウスなどにより構成される。演算処理装置11が記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することによって、
図9に示す制御部20の各部(例えば計数部23や同定部24)の機能が実現されることになる。
【0036】
図9に示すように、計数装置10は、制御部20と、記憶部30とを有する。記憶部30には、前述の画像や2値画像のデータが記憶される。
【0037】
制御部20は、計数装置10の制御を司る。制御部20は、画像取得部21と、占有率算出部22と、計数部23と、同定部24と、出力部25とを有する。画像取得部21は、捕獲された虫の画像を画像読取装置9(カメラやスキャナーなど)から取得する。画像取得部21は、取得した画像を記憶部30に記憶することになる。占有率算出部22は、前述の占有率(画像において虫の占める領域の割合)を算出する。計数部23は、虫の数を算出する。本実施形態の計数部23は、占有率に基づいて虫の数(推定捕獲数)を算出することになる。同定部24は、画像を解析して、虫の種類を同定する。計数装置10が虫の同定を行わない場合には、計数装置10は同定部24を備えていなくても良い。出力部25は、計数部23の計数結果を出力する。例えば、出力部25は、ディスプレイ等に計数部23の計数結果を出力(表示)したり、印刷装置等で計数部23の計数結果を出力(印刷)したり、計数部23の計数結果の信号を出力(データ送信)したりする。なお、計数装置10が虫の種類を同定する場合には、出力部25は、虫の種類を出力しても良い。
【0038】
<計数装置10の処理(1)>
図10は、計数装置10が行う第1処理のフロー図である。図中の各処理は、演算処理装置11が記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することによって、実行されることになる。(なお、後述するフロー図の各処理も、演算処理装置11が記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することによって、実行されることになる。)
【0039】
まず、制御部20(画像取得部21)は、捕獲された虫の画像を画像読取装置9(カメラやスキャナーなど)から取得する(S101)。ここでは、画像取得部21は、画像読取装置9によって読み取られた捕虫シート7の粘着面の画像を取得することになる。
【0040】
次に、制御部20(占有率算出部22)は、占有率R(画像において虫の占める領域の割合)を算出する(S102)。例えば、占有率算出部22は、画像に2値化処理を施して2値画像を取得し、2値画像における黒画素の領域の占有率Rを算出する。但し、占有率の算出方法は、これに限られるものではない。例えば、占有率算出部22は、2値化処理を行わずに、カラー画像の画素の階調値に基づいて虫の占める領域を抽出し、抽出された領域が画像に占める割合を算出することによって占有率Rを算出しても良い。
【0041】
次に、制御部20(計数部23)は、占有率Rと、所定の第1閾値T1とを比較する(S103)。
【0042】
占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合(S103でYES)、制御部20(計数部23)は、画像の解析に基づき虫の数を計数する(S104;第1計数処理)。例えば、計数部23は、2値画像の連結領域の数(画像において虫が占める領域の数)に基づいて虫の数を計数する。このときの2値画像は、S102の占有率Rの算出に用いた2値画像でも良いし、S102で行われた2値化処理とは異なる2値化処理(例えば2値化閾値を異ならせた2値化処理)を行って取得した2値画像でも良い。また、S104の画像解析は、2値画像を用いるものに限られない。例えば、計数部23は、2値化処理を行わずに、カラー画像の画素の階調値に基づいて虫の占める領域を抽出し、虫の占める領域の数を虫の数として計数しても良い。占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合(S103でYES)、虫同士が重なり合う可能性が低いため、画像の解析によって虫の数を計数する第1計数処理を行うことによって(S104)、占有率Rに基づいて虫の数を推定する第2計数処理(次述;S105)よりも、捕獲された虫の数を少ない誤差で求めることが可能である。
【0043】
S104の処理の後、制御部20(出力部25)は、S104で算出した捕獲数を出力する(S105)。例えば、出力部25は、ディスプレイ(表示装置14)に捕獲数を表示する。S105では、虫がほとんど重ならない状況下で第1計数処理された計数結果が出力されるため、誤差の少ない捕獲数を出力することができる。なお、出力部25は、後述する同定処理を行い、捕獲数とともに同定結果を出力しても良い。
【0044】
占有率Rが第1閾値T
1よりも高い場合(S103でNO)、制御部20(計数部23)は、占有率Rに基づいて推定捕獲数C
1を算出する(S106;第2計数処理)。計数部23には、占有率Rに基づいて推定捕獲数C
1を算出するための関数が予め設定されている。例えば、
図6に示すシート番号1~51の捕獲シートのように、占有率と、実際に捕獲された虫の数とを測定し、測定結果に基づいて最小二乗法によりC
1=a
1R+a
2という一次方程式のa
1及びa
2の値を決定することによって、関数(C
1=a
1R+a
2)を設定することが可能である。なお、占有率Rに基づいて虫の数C
1を算出する関数は、一次方程式ではなく二次方程式でも良い。また、占有率Rに基づいて虫の数C
1を算出する関数は、測定結果や最小二乗法を用いずに定められた関数でも良い。前述したように、捕獲数と占有率Rは相関しているため(
図6参照)、占有率Rに基づいて捕獲された虫の数を推定することが可能である。
【0045】
なお、制御部20(計数部23)は、S102で算出した占有率Rを用いてS106の第2計数処理を行う。これにより、S106の第2計数処理に用いられる占有率Rの計算負荷を軽減させることができる。但し、制御部20は、S106の処理の際に改めて占有率Rを算出しても良い。
【0046】
S106の処理の後(推定捕獲数C1の算出後)、制御部20(出力部25)は、推定捕獲数C1を出力する(S107)。例えば、出力部25は、ディスプレイ(表示装置14)に推定捕獲数C1を表示する。S107では、虫が重なり合う状況下で第2計数処理された計数結果が出力されるため、仮にこの状況下で第1計数処理された計数結果が出力される場合と比べて、誤差の少ない捕獲数を出力することができる。なお、出力部25は、推定捕獲数C1のような数値を出力する代わりに、推定捕獲数C1に基づく評価結果(例えば、虫のリスクを5段階で評価した1~5の評価ランク)をディスプレイ(表示装置14)に出力しても良い。但し、評価ランクが出力されるよりも、推定捕獲数C1のような数値が出力される方が、捕虫装置1の設置場所における虫の発生や拡散の状況を把握し易いため、望ましい。
【0047】
制御部20(出力部25)は、推定捕獲数C1を出力する際に、推定捕獲数C1の誤差の範囲も出力しても良い。この場合、推定捕獲数C1の誤差の範囲は、占有率Rに基づいて定められても良い(例えば、占有率Rが高くなるほど誤差の範囲が広くなるように、推定捕獲数C1の誤差の範囲が占有率Rに基づいて算出されても良い)。また、出力部25は、後述する同定処理を行い、推定捕獲数とともに同定結果を出力しても良い。
【0048】
上記の第1処理によれば、計数装置10は、占有率Rに応じて、異なる計数処理(S104の第1計数処理,S106の第2計数処理)を行っている。占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合には、虫同士が重なり合う可能性が低いため、計数装置10は、S104の第1計数処理(画像の解析に基づく計数処理)を行うことによって、S106の第2計数処理(占有率Rに基づいて虫の数を算出する計数処理)よりも、捕獲数を少ない誤差で求めることができる。一方、占有率Rが第1閾値T1よりも高い場合には、虫同士が重なり合う可能性が高いため、計数装置10は、捕獲数と占有率が相関していることを利用して、S106の第2計数処理(占有率Rに基づいて虫の数を算出する計数処理)を行うことによって、S104の第1計数処理よりも、捕虫数を少ない誤差で求めることができる。このように、占有率Rに応じて異なる計数処理(S104,S106)を行うことによって、捕獲数を適切に計数することができる。
【0049】
<計数装置10の処理(2)>
捕獲された虫の数が多過ぎると、捕獲数と占有率との相関関係が弱くなる。例えば、
図6に示すシート番号1~51の捕獲シートの測定結果によると、シート番号1~51の捕獲数と占有率との相関係数は0.884であるのに対し、占有率が10%以上となるシート番号1~21の捕獲数と占有率との相関係数は0.774であった。このため、占有率が高くなるほど、占有率Rに基づいて推定捕獲数C
1を算出した時に、誤差が多くなると考えられる。
一方、捕獲された虫の数が多過ぎる場合、捕獲数を把握することよりも、虫の発生や拡散の状況が異常であることを把握する方が重要なことがある。このような場合、誤差の多い捕獲数を出力することよりも、捕獲された虫の数が異常であることを出力することの方が有効である。
そこで、計数装置10は、次に説明する第2処理を行っても良い。
【0050】
図11は、計数装置10が行う第2処理のフロー図である。図中のS101~S107の処理は、
図10の第2処理のS101~S107の処理と同様である。第2処理のフロー図では、S201、S202の処理が行われる点で第1処理とは異なっている。
【0051】
占有率Rが第1閾値T1よりも高い場合(S103でNO)、制御部20(計数部23)は、占有率Rと、所定の第2閾値T2とを比較する(S201)。なお、第2閾値T2は、第1閾値T1よりも大きい値の閾値である。
【0052】
占有率Rが第1閾値T1よりも高く(S103でNO)、且つ、第2閾値T2よりも低い場合(S201でYES)、計数部23は、占有率Rに基づいて推定捕獲数C1を算出し(S106;第2計数処理)、出力部25は、計数した虫の数として推定捕獲数C1を出力する(S107)。なお、占有率Rが第1閾値T1よりも高いため(虫が重なり合う可能性が高いため)、占有率Rに基づいて推定捕獲数C1を算出することによって、捕獲された虫の数を少ない誤差で求めることが可能である。また、占有率Rが第2閾値T2よりも低いため、捕獲数と占有率との相関関係が強い状況下であるので、占有率Rに基づいて推定捕獲数C1を算出しても、捕獲された虫の数を少ない誤差で求めることが可能である。
【0053】
占有率Rが第2閾値T1よりも高い場合(S103でNO、S201でNO)、計数部23による計数処理(S104の第1計数処理やS106の第2計数処理)を行わずに、制御部20(出力部25)は、捕獲された虫の数が異常であることを出力する(S202)。例えば、出力部25は、ディスプレイ(表示装置14)に、捕獲数を表示する代わりに、単に「多い」ことを表示したり、「異常」であることや警告を表示したりする。これにより、計数装置10の使用者に有効な情報を出力しつつ、誤差の多い捕獲数を出力することを抑制できる。
【0054】
上記の第2処理によれば、占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合には、虫同士が重なり合う可能性が低いため、計数装置10は、S104の第1計数処理(画像の解析に基づく計数処理)を行うことによって、S106の第2計数処理(占有率Rに基づいて虫の数を算出する計数処理)よりも、捕獲数を少ない誤差で求めることができる。また、占有率Rが第1閾値T1よりも高く、且つ、占有率Rが第2閾値T2よりも低い場合には、虫同士が重なり合う可能性が高いため、計数装置10は、捕獲数と占有率が相関していることを利用して、S106の第2計数処理(占有率Rに基づいて虫の数を算出する計数処理)を行うことによって、S104の第1計数処理よりも、捕虫数を少ない誤差で求めることができる。また、占有率が第2閾値T2よりも高い場合には、計数装置10の使用者に有効な情報を出力しつつ、誤差の多い捕獲数を出力することを抑制できる。
【0055】
<計数装置10の処理(3)>
計数装置10は、捕獲した虫の種類を同定しても良い。また、計数装置10は、虫の同定を行う場合には、種類に応じて虫の数を計数しても良い。
【0056】
図12は、計数装置10が行う第3処理のフロー図である。
【0057】
まず、制御部20は、捕虫シート7の画像を取得し(S101)、占有率Rを算出する(S102)。第3処理のS101及びS102の処理は、
図10の第1処理(又は
図11の第2処理)のS101、102の処理と同様である。
【0058】
次に、制御部20(計数部23)は、占有率Rと、所定の第1閾値T
1とを比較する(S103)。また、占有率Rが第1閾値T
1よりも高い場合(S103でNO)、制御部20(計数部23)は、占有率Rと、所定の第2閾値T
2とを比較する(S201)。第3処理のS103及びS201の処理は、
図11の第3処理のS103及びS201の処理と同様である。
【0059】
・占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合
占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合(S103でYES)、制御部20(計数部23及び同定部24)は、画像の解析に基づき虫の数を計数する第1計数処理を行うとともに、画像の解析に基づき虫の種類を同定する(S301)。
【0060】
S301では、計数部23は、第1処理(又は第2処理)のS104と同様に、占有率Rに基づいて推定捕獲数C1を算出せずに、画像の解析に基づき虫の数を計数する。例えば、計数部23は、2値画像の連結領域の数(画像における虫の占める領域の数)に基づいて虫の数を計数する。既に説明した通り、占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合には、虫同士が重なり合う可能性が低いため、画像解析に基づき虫の数を計数する第1計数処理を行うことによって、占有率Rに基づいて虫の数を推定する第2計数処理(前述のS106、後述のS306)よりも、捕獲数を少ない誤差で求めることが可能である。
【0061】
また、S301では、同定部24は、画像の解析に基づき虫の種類を同定する。例えば、同定部24は、S101で取得した画像から、2値画像の連結領域に相当する領域(虫の占める領域)の画像片を抽出する。抽出された画像片には1匹の虫が映し出されていると推定されるため、同定部24は、抽出された複数の画像片のそれぞれについて、画像片に写し出された虫の種類を同定する。
【0062】
ここでは、同定部24は、機械学習によって生成した同定モデルに基づいて、画像片に写し出された虫の種類を同定する。同定モデルは、虫の画像と、その画像の虫の種類とを対応付けた多数のデータを教師データとし、教師データに含まれる虫の画像を入力データとし、虫の種類を出力データとする機械学習によって、生成されることになる。なお、同定モデルの生成方法は、これに限られるものではない。例えば、同定モデルは、虫の画像の特徴量と、その画像の虫の種類とを対応付けた多数のデータを教師データとし、教師データに含まれる特徴量を入力データとし、虫の種類を出力データとする機械学習によって、生成されても良い。この場合、同定部24は、画像片に対して画像処理を施して特徴量を抽出し、抽出した特徴量を同定モデルに入力することによって、その画像片に写し出された虫の種類を同定することになる。
なお、同定部24は、機械学習によって生成した同定モデルに基づいて虫の種類を同定するものに限られない。例えば、虫の画像の特徴量(虫のサイズ、頭と胴の割合など)と、虫の種類とを対応付けた照合テーブルを用意し、同定部24は、照合テーブルに基づいて、虫の種類を同定しても良い。この場合、同定部24は、S101で取得した画像から抽出した画像片に対して画像処理を施して特徴量を求め、照合テーブルに照合することによって特徴量に対応する虫の種類を特定することによって、その画像片に写し出された虫の種類を同定することになる。
【0063】
S301の処理の後、制御部20(出力部25)は、捕獲数及び虫の種類を出力する(S402)。例えば、制御部20は、ディスプレイ(表示装置14)に、S301で計数部23が計数した捕獲数を表示するとともに、S302で同定部24が同定した虫の種類を表示する。なお、出力部25は、虫の種類ごとに、捕獲数を出力しても良い。また、出力部25は、同定された複数の虫の種類のうち、特定の種類(例えば最も捕獲数の多い種類;優占種)のみを出力し、その特定の種類の虫の捕獲数を表示しても良い。
【0064】
占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合(S203でYES)、虫同士が重なり合う可能性が低いため、既に説明した通り、捕獲された虫の数を少ない誤差で求めることが可能である。また、占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合(S203でYES)、虫同士が重なり合う可能性が低いため、画像から抽出された画像片には1匹の虫が映し出されている可能性が高く、画像片に写し出された虫の種類を比較的高精度に同定することが可能である。
【0065】
・占有率Rが第1閾値T
1よりも高く、第2閾値T
2よりも低い場合
図13A及び
図13Bは、占有率Rが第1閾値T
1よりも高く、第2閾値T
2よりも低い場合における処理前画像及び2値画像である。なお、
図13A及び
図13Bに示す画像では、占有率は13%である。
【0066】
図中のAの領域には、1匹の虫が存在しており、虫同士は重なっていない状態である。一方、図中のBの領域には、複数の虫が重なり合っている。このように、占有率Rが第1閾値T1よりも高く、第2閾値T2よりも低い場合、虫が重なり合わないものと、2匹以上の虫が重なり合うものとが混在した状態になっている。
【0067】
占有率Rが第1閾値T1よりも高く(S103でNO)、第2閾値T2よりも低い場合(S201でYES)、制御部20(同定部24)は、画像の解析に基づき虫の種類を同定する(S303)。例えば、同定部24は、S101で取得した画像から、2値画像の連結領域に相当する領域(虫の占める領域)の画像片を抽出する。同定部24は、抽出された複数の画像片のそれぞれについて、画像片に写し出された虫の種類を同定する。S303の同定処理は、前述のS301の同定処理と同様である。
【0068】
S303の同定処理において、同定部24は、領域Aの画像片のように、抽出された画像片に1匹の虫が映し出されている場合には、虫の種類の同定可能である。一方、同定部24は、領域Bの画像片のように、抽出された画像片に重なり合った虫が写し出されている場合には、虫の種類を同定することができない。このため、S303の同定処理では、同定部24が同定処理を行った複数の画像片について、虫の種類を同定できたものと、虫の種類を同定できないものとが混在することになる。
【0069】
次に、制御部20(計数部23)は、同定可能であった虫について、虫の種類ごとに計数する。言い換えると、計数部23は、同定可能であった画像片を計数対象として、虫の種類ごとに同定可能であった画像片の数を計数する。例えば、S303において、同定部24がユスリカとアザミウマの2種類の虫を同定した場合には、同定部24がユスリカと同定した画像片の数と、同定部24がアザミウマと同定した画像片の数をそれぞれ計数する。
【0070】
次に、制御部20(計数部23)は、S304の計数結果に基づいて、種類ごとの割合を算出する(S305)。なお、S304で計数された虫の数は実際の数よりも少ない数となるが、S305で算出された割合は、捕獲された虫の種類ごとの割合と近似する。
【0071】
次に、制御部20(計数部23)は、占有率Rに基づいて、推定総捕獲数C1を算出する(S306)。なお、S306の処理は、第1処理(又は第2処理)のS106の第2計数処理と同様である。占有率Rに基づいて推定総捕獲数C1を算出することによって、捕獲された虫の数(総数)を少ない誤差で求めることが可能である。
【0072】
次に、制御部20(計数部23)は、S305で算出した割合と、S306で算出した推定総捕獲数C1とに基づいて、種類ごとの推定捕獲数を算出する(S307)。例えば、S305においてユスリカとアザミウマとの割合が2:1と算出された場合には、ユスリカの推定捕獲数を(2/3)×C1として算出するとともに、アザミウマの推定捕獲数を(1/3)×C1として算出する。若しくは、S305においてユスリカの割合がX%と算出された場合、ユスリカの推定捕獲数をC1×X×(1/100)として算出する。
【0073】
ところで、S304で計数された虫の数は実際の数よりも少ない数となる。但し、S305で算出された割合は、捕獲された虫の種類ごとの割合とほぼ同程度になる。また、S306では、占有率Rに基づいて推定総捕獲数C1を算出することによって、捕獲された虫の数(総数)を少ない誤差で求めることが可能である。このため、計数部23は、S305で算出した割合と、S306で算出した推定総捕獲数とに基づいて、種類ごとの捕獲数を少ない誤差で求めることが可能である。
【0074】
S307の処理の後、制御部20(出力部25)は、推定捕獲数及び虫の種類を出力する(S308)。例えば、出力部25は、ディスプレイ(表示装置14)に、ユスリカとアザミウマを表示するとともに、それぞれの推定捕獲数を表示する。また、出力部25は、同定された複数の虫の種類のうち、特定の種類のみを出力し、その特定の種類の虫の捕獲数を表示しても良い。例えば、出力部25は、ディスプレイ(表示装置14)に、ユスリカを表示するとともに、ユスリカの推定捕獲数を表示し、アザミウマに関する表示は行わなくても良い。
【0075】
・占有率Rが第2閾値T
2よりも高い場合
占有率Rが第2閾値T
1よりも高い場合(S103でNO、S201でNO)、計数部23による計数処理(S301、S303~307)を行わずに、制御部20(出力部25)は、捕獲された虫の数が異常であることを出力する(S202)。なお、第3処理のS202の処理は、
図11の第2処理のS202の処理と同様である。
【0076】
・小括
上記の第3処理によれば、占有率Rが第1閾値T1よりも低い場合には、占有率Rに基づいて虫の数を算出するよりも、種類ごとの捕獲数(又は特定の種類の虫の捕獲数)を少ない誤差で求めることができる。また、占有率Rが第1閾値T1よりも高く、且つ、占有率Rが第2閾値T2よりも低い場合には、虫同士が重なり合っていても、捕獲数と占有率が相関していることを利用して、種類ごとの捕獲数(又は特定の種類の虫の捕獲数)を適切に計数することができる。また、占有率が第2閾値T2よりも高い場合には、計数装置10の使用者に有効な情報を出力しつつ、誤差の多い捕獲数を出力することを抑制できる。
【0077】
<捕虫シートについて>
上記の説明では、捕虫シートが粘着シートで構成されており、制御部20(画像取得部21)は、粘着シートに捕獲された虫の画像を取得していた。但し、捕虫シートは、粘着シートに限られるものではなく、粘着とは別の固定方法で虫を捕獲するものでも良い。また、制御部20(画像取得部21)が取得する画像は、捕虫シートに固定された虫の画像でなくても良い。例えば、捕虫装置1の内部に画像読取装置9が設けられており、制御部20(画像取得部21)は、捕虫装置1のケース内やトレイ上で固定されていない虫の画像を取得しても良い。
【0078】
===その他===
【0079】
前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1 捕虫装置、3 本体、3A 開口、5 ランプ、
7 捕虫シート、9 画像読取装置、
10 計数装置、11 演算処理装置、
12 記憶装置、13 通信装置、
14 表示装置、15 入力装置、
20 制御部、21 画像取得部、
22 占有率算出部、23 計数部、
24 同定部、25 出力部、
30 記憶部、100 計数システム