(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005064
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】架設材固定構造
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20250108BHJP
E04G 7/22 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E04G7/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105068
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306035122
【氏名又は名称】信和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 諭
(72)【発明者】
【氏名】石川 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 敏朗
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059DD14
2D059EE02
2D059EE10
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】架設材同士の固定作業を容易に行うことのできる架設材固定構造を提供する。
【解決手段】間隔保持部材40は、上側間隔保持部41を上側フレーム部材11に着脱可能に固定する固定機構50を備え、固定機構50は、上側フレーム部材11に係止可能な係止部材51と、係止部材51が一端に設けられた固定ボルト52と、上側間隔保持部41側に固定されるボルト取付部(基板53,ネジ部材54,ナット55)とを有し、上側間隔保持部41の係合部41cに係合する上側フレーム部材11に係止部材51が近づくように固定ボルト52を回動することにより、係止部材51を上側フレーム部材11に係止させて係合部41cに対する上側フレーム部材11の係合解除方向への移動を規制するように構成しているので、固定ボルト52の回動のみによって上側フレーム部材11に上側間隔保持部41を固定することができる。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木または建築工事現場に用いられる架設材同士を固定するための架設材固定構造において、
互いに固定される架設材のうち一方の架設材側に配置され、他方の架設材に係合可能なフック状の係合部を有する係合部材と、
他方の架設材の外周面に係止可能な係止部材と、
係止部材が一端に設けられた固定ボルトと、
係合部材側に設けられ、固定ボルトが螺合するボルト支持部とを備え、
係合部材の係合部に係合する他方の架設材に係止部材が近づくように固定ボルトを回動することにより、係止部材を他方の架設材に係止させて係合部に対する他方の架設材の係合解除方向への移動を規制し、他方の架設材から係止部材が離れるように固定ボルトを回動することにより、係止部材を係合部に対する他方の架設材の係合を解除可能な位置まで移動させるように構成した
ことを特徴とする架設材固定構造。
【請求項2】
前記係止部材は先端側に向かって厚さ寸法が小さくなるように形成され、
固定ボルトによって係止部材を他方の架設材に係止すると、係止部材が他方の架設材と他の所定の部材との間に楔状に圧入するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の架設材固定構造。
【請求項3】
前記固定ボルトは軸方向が他方の架設材の長手方向に対して斜めになるように設けている
ことを特徴とする請求項1記載の架設材固定構造。
【請求項4】
前記係合部材は、他方の架設材の端部に互いに厚さ方向に間隔をおいて配置された一対の板状部材からなり、
前記係止部材、固定ボルト及びボルト支持部が各係合部材の間に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の架設材固定構造。
【請求項5】
前記各係合部材は、係合部を含む先端側が板厚方向一方に偏位するように形成されている
ことを特徴とする請求項4記載の架設材固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木または建築工事現場に用いられる架設材同士を固定するための架設材固定構造であって、例えば橋梁等の構造物の新設、補修、床版取替施工等の作業現場に設置される吊足場用の架設材に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般道や高速道路等の橋梁において、鋼橋を建設する場合、鋼桁の架設、組立に伴い鋼桁直下に作業足場を設置して鋼桁の組立、塗装等が行われる。また、既設の鋼桁が劣化損傷した場合は、鋼桁直下に作業足場を設置し、損傷箇所の補修、補強、加工等が行われる。更に、既設の床版が老朽化した場合は、既設床版を主桁上から撤去して新たな床版を架設する床版取替施工が行われる。その際、橋梁本体には作業用の足場が設置されるが、その下方及び下方近傍には車道等がある場合が多く、地上から足場を組み上げることができない。そこで、このような橋梁においては、橋桁から吊り下げられた吊足場が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、現場に吊足場を架設する際には、架設材としての単管パイプが用いられ、単管パイプ同士の接合には単管クランプが用いられる。単管クランプとしては、単管パイプに着脱可能な一対のクランプ部材を互いに回動自在に連結し、二本の単管パイプを互いに直交または平行に固定できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-316070号公報
【特許文献2】特許第6930716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の単管クランプによる架設材の固定構造では、単管クランプのクランプ部材を開閉して単管パイプに装着した後、クランプ部材の締結部材を締め付ける作業が必要となり、単管パイプ同士の固定作業が煩雑になるという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、架設材同士の固定作業を容易に行うことのできる架設材固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、土木または建築工事現場に用いられる架設材同士を固定するための架設材固定構造において、互いに固定される架設材のうち一方の架設材側に配置され、他方の架設材に係合可能なフック状の係合部を有する係合部材と、他方の架設材の外周面に係止可能な係止部材と、係止部材が一端に設けられた固定ボルトと、係合部材側に設けられ、固定ボルトが螺合するボルト支持部とを備え、係合部材の係合部に係合する他方の架設材に係止部材が近づくように固定ボルトを回動することにより、係止部材を他方の架設材に係止させて係合部に対する他方の架設材の係合解除方向への移動を規制し、他方の架設材から係止部材が離れるように固定ボルトを回動することにより、係止部材を係合部に対する他方の架設材の係合を解除可能な位置まで移動させるように構成している。
【0008】
これにより、一方の架設材側に配置された係合部材の係合部を他方の架設材の外周面に係合し、固定ボルトを回動して係止部材を他方の架設材に係止させることにより、係合部に対する他方の架設材の係合解除方向への移動が規制されることから、固定ボルトの回動のみによって一方の架設材側に他方の架設材が固定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定ボルトの回動のみによって一方の架設材側に他方の架設材を固定することができるので、従来の単管クランプのようにクランプ部材を開閉する作業を必要とせず、架設材の固定作業を極めて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示す吊足場の要部分解斜視図
【
図3】A-A線矢視方向における吊足場の要部正面図
【
図15】固定機構の動作を示す間隔保持部材の要部側面断面図
【
図16】固定機構の動作を示す間隔保持部材の要部側面断面図
【
図17】間隔保持部材の取付工程を示す要部側面断面図
【
図18】間隔保持部材の取付工程を示す要部側面断面図
【
図25】間隔保持部材の取付工程を示す要部側面断面図
【
図27】従来の単管クランプによる接合部分を示す平面図
【
図28】本発明の架設材固定構造の他の適用例を示す吊足場の概略斜視図
【
図29】本発明の架設材固定構造の他の適用例を示す枠組足場の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図27は本発明の一実施形態を示すもので、例えば橋梁本体の上部工の下方に吊り下げて設置される吊足場に本発明の架設材固定構造を用いたものである。
【0012】
同図に示す吊足場は、互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置される複数の足場フレーム10と、各足場フレーム10間に架け渡すように配置される複数の第1及び第2の床パネル20,30と、各足場フレーム10同士を平行に保持する間隔保持部材40とからなる足場ユニット1を形成し、足場ユニット1の足場フレーム10に新たな足場フレーム10を長手方向に連結して新たな足場ユニット1を順次形成することにより、橋軸方向に延びる足場を設置するようになっている。
【0013】
足場フレーム10は、互いに上下方向に間隔をおいて平行に延びる上側フレーム部材11及び下側フレーム部材12と、上側及び下側フレーム部材11,12の長手方向両端にそれぞれ設けられた縦フレーム部材13と、上側及び下側フレーム部材11,12の間に設けられたトラス部材14とからなり、上側及び下側フレーム部材11,12は水平方向に延びるパイプ状の部材によって形成されている。縦フレーム部材13は、上下方向に延びるとともに、上端を閉塞され且つ下端を開口した円筒状の部材からなり、その上端側及び下端側の側面を上側及び下側フレーム部材11,12の端部に接合されている。トラス部材14は山形をなすように斜めに延びる部材からなり、その上端及び下端を上側及び下側フレーム部材11,12にそれぞれ接合されている。また、下側フレーム部材12には、間隔保持部材40が係合する係合部12aが設けられている。係合部12aは、上下方向両端を開口した角筒状の部材からなり、下側フレーム部材12の長手方向一端側に下側フレーム部材12の幅方向両側に配置されている。
【0014】
また、足場フレーム10の長手方向両端には、他の足場フレーム10に連結される連結部が設けられている。この連結部は、足場フレーム10の長手方向一端側に設けられる第1の連結部15と、足場フレーム10の長手方向他端側に設けられる第2の連結部16とからなり、第1及び第2の連結部15,16は互いに上下方向に着脱自在且つ水平方向に回動自在に連結されるようになっている。
【0015】
第1の連結部15は、足場フレーム10の長手方向一端側の縦フレーム部材13によって形成されている。即ち、第1の連結部15は、上下方向に延びるように形成されるとともに、上端を閉塞し且つ下端を開口した円筒状の部材からなる。
【0016】
第2の連結部16は、足場フレーム10の長手方向他端側に設けられ、上下方向に延びるように形成されるとともに、上端を閉塞し且つ下端を開口した円筒状の部材からなる。第2の連結部16は、足場フレーム10の長手方向他端側の縦フレーム部材13と足場フレーム10の長手方向に間隔をおいて配置され、第2の連結部16と縦フレーム部材13の下端同士は平板状の基板17に接合されている。第2の連結部16は、外径が第1の連結部15の内径よりも僅かに小さい円筒状の部材からなり、第1の連結部15内に軸心回りに回動自在に挿入されるようになっている。また、第2の連結部16の下端側には基板17から上方に突出する半球状の凸部16aが設けられ、第1の連結部15の下端には凸部16aに係合する円形の切り欠き状の凹部15aが設けられている。即ち、
図7に示すように第1の連結部15に第2の連結部16が挿入された状態で第1の連結部15を回動すると、
図8に示すように所定の回動位置(足場フレーム10同士が長手方向に180°をなす回動位置)で凸部16aと凹部15aが互いに係合し、第1の連結部15の回動が規制されるようになっている。その際、第1の連結部15は、下端を凸部16aに当接させながら回動し、凸部16aと凹部15aが係合すると、凸部16aの高さ分だけ下降するようになっている。即ち、凸部16a及び凹部15aは、第1及び第2の連結部15,16を所定の回動位置で位置決めする位置決め手段を構成している。
【0017】
第1の連結部15と第2の連結部16が連結されると、足場フレーム10同士は連結板18によって更に連結される。連結板18は第1の連結部15の上面及び足場フレーム10の長手方向他端側の縦フレーム部材13の上面に亘って延びる平板状の部材からなり、その一端側をボルト18a及びナット18bによって第1及び第2の連結部15,16に固定され、その他端側をボルト18c及びナット18dによって縦フレーム部材13に固定されるようになっている。この場合、連結板18の一端側、第1の連結部15の上面部及び第2の連結部16の上面部には、それぞれ一方のボルト18aを挿通する孔18e,15b,16bが設けられ、連結板18の他端側及び縦フレーム部材13の上面部には、それぞれ他方のボルト18cを挿通する孔18f,13aが設けられている。また、各ナット18b,18dは、それぞれ第2の連結部16の上面部の内面及び縦フレーム部材13の上面部の内面に接合されている。
【0018】
第1の床パネル20は、互いに平行に配置された足場フレーム10の長手方向に直交する方向に長い四角形状に形成され、幅方向両端側を下方に屈曲した板状部材からなる。また、第1の床パネル20の表面には多数の滑り止め20aが設けられている。第1の床パネル20の四隅(長手方向両端及び幅方向両端)にはそれぞれ足場フレーム10の上側フレーム部材11に係合する係合部21が設けられている。各係合部21は、パイプ状の部材(上側フレーム部材11)に上方から係合可能なフック状の部材からなり、外れ止め(図示せず)を有するものが好ましい。
【0019】
第2の床パネル30は、第1の床パネル20と同様、互いに平行に配置された足場フレーム10の長手方向に直交する方向に長く且つ第1の床パネル20の略半分の幅寸法を有する四角形状に形成され、幅方向両端側を下方に屈曲した板状部材からなる。また、第2の床パネル30の表面には多数の滑り止め30aが設けられている。第2の床パネル30の四隅(長手方向両端及び幅方向両端)にはそれぞれ足場フレーム10の上側フレーム部材11に係合する係合部31が設けられている。各係合部31は、パイプ状の部材(上側フレーム部材11)に上方から係合可能なフック状の部材からなり、外れ止め(図示せず)を有するものが好ましい。
【0020】
間隔保持部材40は、長手方向両端側を足場フレーム10の上側フレーム部材11に係合することにより各上側フレーム部材11を互いに間隔をおいて保持する上側間隔保持部41と、長手方向両端側を各足場フレーム10の下側フレーム部材12に係合することにより各下側フレーム部材12を互いに間隔をおいて保持する下側間隔保持部42と、上側間隔保持部41と下側間隔保持部42とを連結する一対の連結部材43とを有し、上側及び下側間隔保持部41,42は互いに平行に配置された足場フレーム10に亘って延びるように形成されている。
【0021】
上側間隔保持部41は、水平方向に延びる角筒状部材41aと、角筒状部材41aの長手方向両端側に設けられた複数の板状部材41bとから形成され、各板状部材41bは互いに角筒状部材41aの幅方向に間隔をおいて基端側を角筒状部材41aの両側面に接合されている。各板状部材41bの先端側には上側フレーム部材11に上方から係合するフック状の係合部41cが設けられ、係合部41cは上側フレーム部材11の外径と同等の内径を有する半円形状に形成されている。また、間隔保持部材40は、足場フレーム10に係合した状態で上側間隔保持部41の上面が各床パネル20,30の上面と同等の高さ位置になるように形成されている。各板状部材41bは、
図10に示すように、係合部41cを含む先端側が他の部分に対して板厚方向一方に偏位量tだけ偏位するように形成されている。この場合、上側間隔保持部41の長手方向一端側の各板状部材41bと他端側の各板状部材41bは互いに反対方向に偏位しており、偏位量tは板状部材41bの板厚の半分以上である。
【0022】
下側間隔保持部42は、上側間隔保持部41と上下方向に間隔をおいて水平方向に延びる角棒状の部材からなり、その長手方向両端には下側フレーム部材12の係合部12aに係合する係合部42aがそれぞれ設けられている。係合部42aは下側間隔保持部42の端部から下方に屈曲するように形成され、下側フレーム部材12の係合部12aに上方から挿入されるようになっている。この場合、下側間隔保持部42は、互いに平行に配置された上側フレーム部材11の間隔よりも短い長さに形成されており、
図17に示すように各上側フレーム部材11の間を通過し、
図18に示すように下側フレーム部材12間の内側に位置する係合部12aに係合可能になっている。
【0023】
各連結部材43は上下方向に延びる円筒状部材からなり、その上端及び下端をそれぞれ上側間隔保持部41及び下側間隔保持部42に接合されている。この場合、連結部材43の下端側は下側間隔保持部42の幅と同等の幅を有する切り欠きに下側間隔保持部42を嵌合させて接合されている。
【0024】
また、間隔保持部材40には、本実施形態の架設材固定構造を備えた固定機構50が設けられており、固定機構50によって一方の架設材としての上側間隔保持部41と他方の架設材としての上側フレーム部材11とを着脱自在に固定するようになっている。
【0025】
固定機構50は、上側フレーム部材11に係止可能な係止部材51と、係止部材51が一端に設けられた固定ボルト52と、上側間隔保持部41側に固定される基板53と、内周面に固定ボルト52が螺合するネジ部材54と、ネジ部材53を基板53に締結するナット55とからなり、基板53、ネジ部材54及びナット55はボルト取付部を構成している。また、固定機構50は、上側間隔保持部41の長手方向両端側にそれぞれ設けられている。
【0026】
係止部材51は、断面四角形状のブロック状部材からなり、先端側に向かって厚さ寸法が徐々に小さくなるように形成されている。係止部材51の先端側には上側フレーム部材11の外周面に係止する係止面51aが設けられ、係止面51aは上側フレーム部材11の外周面と同等の曲率を有する曲面状に形成されている。係止部材51には、基端側の端面に開口するボルト挿入孔51bと、上面から下面まで貫通する横長の角孔51cが設けられ、角孔51cとボルト挿入孔51bとは係止部材51の内部で連通している。
【0027】
固定ボルト52は、基端側に締め付け用の六角形の頭部52aが形成されるとともに、先端側の外周面に周方向に延びる溝52bが設けられている。
【0028】
基板53は、平板状の底面部53aと、底面部53aの一端からL字状に屈曲する垂直部53bとから形成されている。垂直部53bにはネジ部材54を挿通する挿通孔53cが設けられ、挿通孔53cには円形の内周面の一部に平面状の回り止め部53dが形成されている。
【0029】
ネジ部材54は、一端に六角形の拡径部54aが形成された円筒状部材からなり、その外周面及び内周面にはそれぞれネジが形成されている。ネジ部材54は、基板53の挿通孔53cに挿通され、その外周面に螺合するナット55によって基板53の垂直部53bに固定されるようになっている。また、ネジ部材54には円形の外周面の一部に平面状の回り止め部54bが形成されており、挿通孔53cに挿入されたネジ部材54の回動が各回り止め部53d,54bによって規制されるようになっている。
【0030】
基板53にナット55で固定されたネジ部材54には固定ボルト52が挿通され、固定ボルト52はネジ部材54の内周面のネジに螺合している。また、固定ボルト52の先端側は係止部材51の挿入孔51bに挿入されるとともに、E型止め輪からなる抜け止め部材56を係止部材51の角孔51cを通じて固定ボルト52の溝52bに装着することにより、係止部材51が固定ボルト52の先端側に取り付けられている。これにより、固定ボルト52は、抜け止め部材56によって係止部材51から抜け止めされた状態で係止部材51に対して回動可能になっている。即ち、固定ボルト52を一方に回動すると、固定ボルト52とともに係止部材51が固定ボルト52の軸方向一方に向かって移動し、固定ボルト52を他方に回動すると、固定ボルト52とともに係止部材51が固定ボルト52の軸方向他方に向かって移動するようになっている。その際、係止部材51は、基板53の底面部53a上をスライドし、底面部53aによって回動を規制されながら移動するようになっている。
【0031】
前記固定機構50は、上側間隔保持部41の各板状部材41bの間に配置され、基板53の幅方向両端を各板状部材41bの対向面に接合することにより上側間隔保持部41に固定されている。この場合、基板53は、固定ボルト52の軸方向が水平方向に対して斜めになるように配置され、固定ボルト52の頭部52aが上方に位置し、係止部材51が下方に位置している。また、係止部材51は板状部材41bの係合部41cの近傍に配置され、係合部41cに係合する上側フレーム部材11に係止するようになっている。
【0032】
即ち、固定ボルト52を一方に回動して係止部材51を上側フレーム部材11に近づく方向に移動させると、
図15に示すように係止部材51の先端側が上側フレーム部材11の下方に進出し、係止面51aが上側フレーム部材11に係止するようになっている。その際、固定ボルト52を締め付けることにより、係止部材51が上側フレーム部材11と基板53(他の所定の部材)との間に楔状に圧入し、上側フレーム部材11が係止部材51によって係合解除方向への移動を規制されて上側間隔保持部41に固定されるようになっている。
【0033】
また、固定ボルト52を他方に回動して係止部材51を上側フレーム部材11から離れる方向に移動させると、
図16に示すように係止部材51の先端側が係合部41c側から後退し、係止部材51が上側間隔保持部41の係合部41cと上側フレーム部材11との係合を解除可能な位置まで移動するようになっている。
【0034】
以上の構成からなる吊足場は、先行して設置されている足場ユニット1から延長するようにして設置される。以下、
図19乃至
図24を参照し、本実施形態の吊足場の設置工程について説明する。
【0035】
まず、
図19に示すように、既に設置されている足場ユニット1の幅方向一方の足場フレーム10に新たな足場フレーム10を連結する。その際、既設の足場フレーム10の第2の連結部16に新たな足場フレーム10の第1の連結部15を連結し、第1及び第2の連結部15,16を中心に新たな足場フレーム10を水平方向に回動する。
【0036】
次に、
図20に示すように、新たな足場フレーム10が既設の足場フレーム10に対して一直線上に位置するまで回動すると、第1及び第2の連結部15,16の回動が凸部16a及び凹部15aの係合により規制され、第1及び第2の連結部15,16が位置決めされる。次に、この状態で連結板18を取り付けることにより、互いに連結された第1及び第2の連結部15の上端及び既設側の足場フレーム10の縦フレーム部材13の上端とが連結板18によって連結される。
【0037】
この後、幅方向他方の足場フレーム10に新たな足場フレーム10を連結し、前述と同様にして、新たな足場フレーム10が既設の足場フレーム10に対して一直線上に位置するまで回動することにより、
図21に示すように幅方向一対の新たな足場フレーム10を互いに平行になるように保持する。
【0038】
続いて、
図22に示すように1枚の第2の床パネル30を既設の足場フレーム10と新たな足場フレーム10との連結部分を間にするように各足場フレーム10に架け渡す。
【0039】
次に、
図23に示すように2枚の第1の床パネル20を新たな各足場フレーム10に順次並べて架け渡し、間隔保持部材40を各足場フレーム10の先端側に上方から係合する。その際、
図17に示すように、間隔保持部材40の下側間隔保持部42が各上側フレーム部材11の間を通過し、下側フレーム部材12間の内側に位置する係合部12aに係合するとともに、上側間隔保持部41の係合部41cが上側フレーム部材11に係合する。この後、
図18に示すように、間隔保持部材40の固定機構50によって上側間隔保持部41を上側フレーム部材11に固定する。その際、インパクトドライバー等の締め付け工具により固定ボルト52を一方に回動して係止部材51を上側フレーム部材11に近づく方向に移動させ、係止部材51を上側フレーム部材11の下方に係止することにより、上側フレーム部材11の係合解除方向への移動を係止部材51によって規制し、上側フレーム部材11に上側間隔保持部41を固定する。
【0040】
そして、
図24に示すように2枚目の第2の床パネル30を新たな各足場フレーム10の先端側に架け渡すとともに、吊りチェーン等の吊り部材60を各足場フレーム10に接続することにより、新たな足場ユニット1が設置される。その際、各足場フレーム10間に架け渡された間隔保持部材40の上側間隔保持部41及び下側間隔保持部42によって各上側フレーム部材11及び各下側フレーム部材12が互いに間隔をおいて平行に保持される。この場合、間隔保持部材40は、上側間隔保持部41及び下側間隔保持部42が一対の連結部材43を介して連結された剛性の高い一体構造であることから、各足場フレーム部材10からなる足場ユニット1の形状が強固に保持される。また、間隔保持部材40は、
図2に示すように足場フレーム10に係合した状態で上側間隔保持部41の上面が各床パネル20,30の上面と同等の高さ位置になることから、各床パネル20,30の上面と間隔保持部材40の上面との間に段差を生ずることがない。
【0041】
この後、前述と同様にして新たな足場ユニット1を繰り返し設置することにより、橋軸方向に延びる吊足場が設置される。また、足場ユニット1を幅方向複数列に設置することにより、橋軸方向のみならず橋軸直角方向にも吊足場を拡張することができる。その際、足場ユニット1の各列間では互いに足場フレーム10が共用される。この場合、橋軸直角方向両側の足場ユニット1の各間隔保持部材40は、
図25に示すように互いに足場フレーム10の橋軸方向同一位置に係合するが、各間隔保持部材40の各板状部材41bの先端側が基端側に対して互いに板厚方向反対側に偏位しているので、
図26に示すように各間隔保持部材40を互いに幅方向の中心が一致するように橋軸方向同一位置に配置しても、各間隔保持部材40の各板状部材41bが板厚方向に偏位しているため、各間隔保持部材40の各板状部材41bは互いに干渉することなく共通の足場フレーム10に係合する。
【0042】
本実施形態の吊足場によれば、各足場フレーム10を回動自在に支持する既設の足場側から各足場フレーム10を回動して互いに平行になるように延ばし、各足場フレーム10の上端側に第1及び第2の床パネル20,30を架け渡すように配置することにより、橋梁本体2から吊り下げられる足場本体を形成するようにしたので、地上から足場を組み上げることなく橋梁本体2に沿って延長しながら設置することができ、水平方向に延びる吊足場1を短時間で容易に形成することができる。これにより、例えば橋梁本体2の下方及び下方近傍に車道等がある場合でも交通規制を少なくして効率よく吊足場を設置することができ、足場設置工期を大幅に短縮することができる。
【0043】
また、互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置される足場フレーム10に架け渡されるように配置される間隔保持部材40を備え、間隔保持部材40の両端側を各足場フレーム10に係合することにより各足場フレーム10を互いに間隔をおいて保持するようにしたので、各足場フレーム10を確実に平行状態に保つことができる。
【0044】
この場合、間隔保持部材40には、長手方向両端側を各足場フレーム10の上側フレーム部材11に係合することにより各上側フレーム部材11を互いに間隔をおいて保持する上側間隔保持部41と、長手方向両端側を各足場フレーム10の下側フレーム部材12に係合することにより各下側フレーム部材12を互いに間隔をおいて保持する下側間隔保持部42が一体に設けられているので、幅方向両側の各上側フレーム部材11及び各下側フレーム部材12によって形成される四角形の断面形状を間隔保持部材40によって強固に保持することができ、足場ユニット1の幅方向への変形に対する剛性を格段に高めることができる。これにより、足場ユニット1の幅方向の強度を高めるために足場フレーム10自体の構造を複雑化させることがないので、足場フレーム10を簡素化及び軽量化することができ、足場の設置作業を容易に行うことができるとともに、足場全体の軽量化を図ることもできる。
【0045】
また、上側間隔保持部41の長手方向両端側に上側フレーム部材11に上方から係合するフック状の係合部41cを設けるとともに、下側間隔保持部42の長手方向両端に下側フレーム部材12に設けられた係合部12aに上方から係合する係合部42aを設け、下側間隔保持部42を互いに平行に配置される上側フレーム部材11の間隔よりも短い長さに形成するとともに、下側フレーム部材12の係合部12aを互いに平行に配置される下側フレーム部材12よりも内側に位置するように設けたので、間隔保持部材40を各足場フレーム10に上方から架け渡す際、下側間隔保持部42が各上側フレーム部材11の間を通過し、下側フレーム部材12の係合部12aに係合するとともに、上側間隔保持部41の係合部41cが上側フレーム部材11に係合することから、間隔保持部材40を取り付ける際、間隔保持部材40の向きを変えずに各足場フレーム10に上方から係合することができ、間隔保持部材40の取付作業を容易に行うことができる。
【0046】
更に、間隔保持部材40は、足場フレーム10に係合した状態で上側間隔保持部41の上面が各床パネル20,30の上面と同等の高さ位置になるように形成されているので、各床パネル20,30の上面と間隔保持部材40との間に段差を生ずることがなく、足場全体の上面を平坦に形成することができる。
【0047】
また、本実施形態の間隔保持部材40は、上側間隔保持部41を上側フレーム部材11に着脱可能に固定する固定機構50を備えているので、固定機構50によって各足場フレーム10に間隔保持部材40を固定することにより、各足場フレーム10に対する間隔保持部材40の位置ずれや脱落を確実に防止することができる。
【0048】
この場合、固定機構50は、上側フレーム部材11に係止可能な係止部材51と、係止部材51が一端に設けられた固定ボルト52と、上側間隔保持部41側に固定されるボルト取付部(基板53,ネジ部材54,ナット55)とを有し、上側間隔保持部41の係合部41cに係合する上側フレーム部材11に係止部材51が近づくように固定ボルト52を回動することにより、係止部材51を上側フレーム部材11に係止させて係合部41cに対する上側フレーム部材11の係合解除方向への移動を規制し、上側フレーム部材11から係止部材51が離れるように固定ボルト52を回動することにより、係止部材51を係合部41cに対する上側フレーム部材11の係合を解除可能な位置まで移動させるように構成しているので、固定ボルト52の締め付けにより係止部材51を上側フレーム部材11に圧接させることができ、各足場フレーム10と間隔保持部材40とを遊びやガタツキを生ずることなく結合することができる。また、固定ボルト52の回動のみによって上側フレーム部材11に上側間隔保持部41を固定することができるので、従来の単管クランプのようにクランプ部材を開閉する作業を必要とせず、固定作業を極めて容易に行うことができる。
【0049】
その際、固定ボルト52によって係止部材51を上側フレーム部材11に係止すると、上側フレーム部材11と基板53との間に係止部材51が楔状に圧入するようにしたので、間隔保持部材40を強固に各足場フレーム10に固定することができ、足場ユニット全体の剛性をより高めることができる。
【0050】
また、固定機構50は、固定ボルト52が上側間隔保持部41の長手方向に対して斜めに設けられているので、斜め上方から締め付け工具を用いて固定ボルト52を回動することができるとともに、固定ボルト52のストローク量を十分に確保することができる。
【0051】
更に、上側間隔保持部41の係合部41cは、上側フレーム部材の長手方向両端側に互いに厚さ方向に間隔をおいて配置された一対の板状部材41bの先端側に形成され、各板状部材41bの間には固定機構50が配置されているので、固定機構50が間隔保持部材40から幅方向外側に突出することがなく、固定機構50を備えていても間隔保持部材40を第2の床パネル30に幅方向に近接して配置することができる。
【0052】
また、上側間隔保持部41の各板状部材41bは係合部41cを含む先端側が板厚方向一方に偏位するように形成されているので、幅方向二列の足場ユニット1間の足場フレーム10に各列の間隔保持部材40を足場フレーム10の長手方向同一位置に配置した場合でも、各間隔保持部材40の各板状部材41bが板厚方向に偏位していることにより、各間隔保持部材40の各板状部材41bを互いに干渉することなく共通の足場フレーム10に係合させることができ、各列の足場ユニット1において間隔保持部材40同士の位置ずれを生じさせることがないという利点がある。即ち、
図27に示すように、従来の単管クランプ70を用いて主材71に左右の繋ぎ材72を接合する場合には、各繋ぎ材72の単管クランプ70の位置が主材71の軸方向に繋ぎ材72の外径寸法以上の長さLだけずれるが、繋ぎ材72がずれた箇所は床材を設置できず開口部となるため、別途板材で塞ぐなどの煩雑な作業が必要となる。これに対し、本実施形態では、前述のように間隔保持部材40同士の位置ずれを生ずることがないので、床パネル20,30を隙間なく設置することができる。
【0053】
尚、前記実施形態では、一つの足場ユニット1に一つの間隔保持部材40を取り付けるようにしたものを示したが、下側フレーム部材12の係合部12aを下側フレーム部材12の長手方向複数箇所に設けておけば、足場ユニット1における間隔保持部材40の位置や数を適宜変更することができる。
【0054】
また、前記実施形態では、吊足場用の仮設材である間隔保持部材40に本発明の架設材固定構造を用いたものを示したが、本発明は枠組足場、単管足場等の他の仮設足場や仮設階段、手摺り等の他の現場仮設物の架設材固定構造に適用することができる。
【0055】
例えば、
図28に示すように単管パイプで組まれた吊足場80に手摺り81を取り付ける場合、本発明の架設材固定構造を備えた固定機構82を手摺り81の両端に設け、固定機構82によって手摺り81を支柱83に固定することが可能である。
【0056】
また、
図29に示す枠組足場90の建枠91に中さん92及び床枠93を取り付ける場合、本発明の架設材固定構造を備えた固定機構94を中さん92及び床枠93の両端に設け、固定機構94によって中さん92及び床枠93を建枠91に固定することが可能である。
【0057】
尚、前記実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0058】
1…足場ユニット、10…足場フレーム、11…上側フレーム部材、12…下側フレーム部材、12a…係合部、20…第1の床パネル、30…第2の床パネル、40…間隔保持部材、41…上側間隔保持部、41b…板状部材、41c…係合部、42…下側間隔保持部、44a…係合部、50…固定機構、51…係止部材、52…固定ボルト、53…基板、54…ネジ部材、55…ナット、70…吊足場、81…手摺り、82…固定機構、83…支柱、90…枠組足場、91…建枠、92…中さん、93…床枠、94…固定機構。