(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005066
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電力変換器の制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 21/12 20160101AFI20250108BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H02P21/12
H02P27/06 ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105070
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 瞭弥
(72)【発明者】
【氏名】外山 佳祐
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB06
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE30
5H505EE41
5H505GG04
5H505HA09
5H505HB01
5H505HB05
5H505JJ03
5H505JJ24
5H505JJ26
5H505KK05
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】蓄電部の充電時に回転電機のトルクが発生し、種々の問題が生じることを抑制することができる電力変換器の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置60は、回転電機20と、蓄電池10と、電力変換器30と、を備えるシステムに適用される。制御装置60は、各相巻線24U,24V,24W及びインバータ31を介して、蓄電池10に交流電源41が電気的に接続された状態において、交流電源41から蓄電池10へと電流が流れるように、インバータ31のスイッチング制御を行う第1制御部と、インバータ31のスイッチング制御中に発生する回転電機20のトルクが、界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、界磁通電回路33のスイッチング制御を行う第2制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線(24U,24V,24W)及び界磁巻線(22)を有する回転電機(20)と、
前記回転電機の駆動電力を蓄電する蓄電部(10)と、
前記電機子巻線に電気的に接続され、前記電機子巻線に流れる電流を制御する第1電力変換器(31)と、
前記界磁巻線に電気的に接続され、前記界磁巻線に流れる電流を制御する第2電力変換器(33)と、
を備えるシステムに適用される電力変換器の制御装置(60)において、
前記電機子巻線及び前記第1電力変換器を介して、前記蓄電部に交流電源(41)が電気的に接続された状態において、前記交流電源から前記蓄電部へと電流が流れるように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う第1制御部と、
前記第1電力変換器のスイッチング制御中に発生する前記回転電機のトルクが、前記界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減されるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う第2制御部と、
を備える、電力変換器の制御装置。
【請求項2】
前記回転電機は、d軸インダクタンスがq軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記第2制御部は、前記電機子巻線に流れる電流のd軸成分と逆位相である電流が前記界磁巻線に流れるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う、請求項1に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項3】
前記回転電機は、q軸インダクタンスがd軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記第2制御部は、前記電機子巻線に流れる電流のd軸成分と同位相である電流が前記界磁巻線に流れるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う、請求項1に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記電機子巻線に流れる電流の位相を、前記交流電源から前記電機子巻線へと入力される入力電圧の位相に揃えるように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項5】
前記第1制御部は、
前記入力電圧の位相情報に基づいて、前記電機子巻線に流れる電流をdq座標系における電流に変換する座標変換部と、
前記dq座標系において、前記電機子巻線に流れる電流の方向を、前記入力電圧から定まる電圧ベクトルの方向に揃えるように、前記電機子巻線の指令電流を設定する指令電流設定部と、
前記電機子巻線に流れる電流を前記指令電流に制御するように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う電機子電流制御部と、
を有する、請求項4に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項6】
前記システムは、前記回転電機のロータ(21)から回転駆動対象(12)までの動力伝達機構(11)を構成し、前記ロータからの回転動力によって回転するとともに互いに噛み合う少なくとも一対のギア(13,14)を備え、
前記第2制御部は、前記第1電力変換器のスイッチング制御中に発生する前記回転電機のトルクを前記界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減させ、かつ前記電機子巻線に流す交流電流の1周期又は複数周期における前記回転電機のトルクの時間平均値を0からオフセットさせるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項7】
前記第2制御部は、
界磁目標電流を設定する目標電流設定部と、
前記界磁巻線に流れる界磁電流を、前記界磁目標電流に制御する界磁電流制御部と、
を有し、
前記目標電流設定部は、前記電機子巻線に流れる電流のd軸成分と逆位相又は同位相である前記界磁電流に対して、前記界磁目標電流の位相をシフトさせることにより、前記時間平均値を0からオフセットさせる、請求項6に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項8】
前記電機子巻線は、第1端が前記第1電力変換器に接続され、第2端が互いに中性点で接続された複数相の巻線であり、
前記各電機子巻線の前記中性点側に設けられ、前記各電機子巻線の間を電気的に接続又は遮断する中性点スイッチ(44a,44b)を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項9】
前記電機子巻線及び前記交流電源の間に設けられ、前記電機子巻線に流れる電流の導通及び遮断を切り替える切替スイッチ(42,45)を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項10】
電機子巻線(24U,24V,24W)及び界磁巻線(22)を有する回転電機(20)と、
前記回転電機の駆動電力を蓄電する蓄電部(10)と、
前記電機子巻線に電気的に接続され、前記電機子巻線に流れる電流を制御する第1電力変換器(31)と、
前記界磁巻線に電気的に接続され、前記界磁巻線に流れる電流を制御する第2電力変換器(33)と、
コンピュータ(60a)と、
を備えるシステムに適用されるプログラムにおいて、
前記電機子巻線及び前記第1電力変換器を介して、前記蓄電部に交流電源(41)が電気的に接続された状態において、前記交流電源から前記蓄電部へと電流が流れるように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う第1制御処理と、
前記第1電力変換器のスイッチング制御中に発生する前記回転電機のトルクが、前記界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減されるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う第2制御処理と、
を前記コンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換器の制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電部と、蓄電部に電気的に接続された電力変換器と、電力変換器に電気的に接続された電機子巻線及び界磁巻線を有する回転電機とを備えるシステムが知られている。このシステムでは、電機子巻線及び電力変換器を介して交流電源が蓄電部に電気的に接続され、蓄電部の充電が行われる。そして、交流電源による蓄電部の充電時において、界磁巻線に流れる電流を遮断し、回転電機のトルク低減を図っている。このような技術の例として、特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
界磁巻線への通電を遮断しつつ交流電源により蓄電部を充電したとしても、電機子巻線に電流が流れることにより、回転電機のトルクが発生し得る。蓄電部の充電中に回転電機のトルクが発生することに起因して、種々の問題が生じ得る。
【0005】
本開示の主たる目的は、蓄電部の充電時に回転電機のトルクが発生し、種々の問題が生じることを抑制することができる電力変換器の制御装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
電機子巻線及び界磁巻線を有する回転電機と、
前記回転電機の駆動電力を蓄電する蓄電部と、
前記電機子巻線に電気的に接続され、前記電機子巻線に流れる電流を制御する第1電力変換器と、
前記界磁巻線に電気的に接続され、前記界磁巻線に流れる電流を制御する第2電力変換器と、
を備えるシステムに適用される電力変換器の制御装置において、
前記電機子巻線及び前記第1電力変換器を介して、前記蓄電部に交流電源が電気的に接続された状態において、前記交流電源から前記蓄電部へと電流が流れるように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う第1制御部と、
前記第1電力変換器のスイッチング制御中に発生する前記回転電機のトルクが、前記界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減されるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う第2制御部と、
を備える。
【0007】
電機子巻線及び第1電力変換器を介して、蓄電部に交流電源が電気的に接続された状態において、交流電源から蓄電部へと電流が流れるように、第1電力変換器のスイッチング制御が行われる。これにより、蓄電部が充電される。この場合に、電機子巻線に電流が流れることにより、リラクタンストルクが発生し、種々の問題が生じ得る。この点、回転電機が界磁巻線を有する構成では、界磁巻線に電流を流し、界磁巻線を励磁させることにより発生するマグネットトルクを制御可能である。界磁巻線への通電は、第2電力変換器のスイッチング制御を行うことにより制御可能である。
【0008】
そこで、本開示では、第1電力変換器のスイッチング制御中に発生する回転電機の発生トルクが界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減されるように、第2電力変換器のスイッチング制御が行われる。これにより、マグネットトルクとリラクタンストルクとの合計トルクが界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減される。そのため、蓄電部の充電時に回転電機のトルクが発生することを抑制することができる。その結果、蓄電部の充電中において、回転電機のトルクが生じることに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る車載システムの全体構成図。
【
図4】制御装置が行う3相充電制御の機能ブロック図。
【
図5】3相充電制御の制御例を示すタイムチャート。
【
図9】制御装置が行うトルク低減制御の機能ブロック図。
【
図10】トルク低減制御の制御例を示すタイムチャート。
【
図11】外部充電制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図12】外部充電制御の一例を示すタイムチャート。
【
図14】第2実施形態に係るトルク低減制御を説明するためのタイムチャート。
【
図17】ロータの発生トルクの推移を模式的に示すタイムチャート。
【
図18】トルク低減制御の一例を示すタイムチャート。
【
図19】その他の実施形態に係る車載システムの全体構成図。
【
図20】その他の実施形態に係る車載システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の制御装置を備えるシステムは、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両に搭載されている。
【0011】
図1に示すように、システムは、蓄電池10(「蓄電部」に相当)と、回転電機20とを備えている。本実施形態において、回転電機20は、巻線界磁型の回転電機である。本実施形態の回転電機20は、d軸インダクタンスLdがq軸インダクタンスLqよりも大きい特性である順突極性を有する回転電機である。
【0012】
蓄電池10は、回転電機20の駆動電力を供給する電源である。蓄電池10は、例えば、単位電池の直列接続体を備える組電池である。単位電池は、1つの電池セル、又は複数の電池セルの直列接続体である。電池セルは、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池である。
【0013】
回転電機20は、車両の駆動輪12(「回転駆動対象」に相当)に回転動力を付与して駆動輪12を回転させる機器である。回転電機20は、ロータ21を備えている。ロータ21は、ロータコアと、ロータコアから径方向に延びる複数の界磁突極部とを備えている。各界磁突極部には、界磁巻線22が巻回されている。
【0014】
システムは、動力伝達機構11を備えている。ロータ21の回転軸は、動力伝達機構11を介して、車両の駆動輪12へと動力を伝達することが可能とされている。動力伝達機構11は、変速装置及びシャフトを含む。変速装置は、例えば減速装置であり、少なくとも一対のギアを含む。回転電機20が電動機として機能することにより発生するトルクが、動力伝達機構11を介して駆動輪12に伝達され、駆動輪12が回転する。これにより、車両が走行する。
【0015】
回転電機20は、ステータ23を備えている。ステータ23は、電機子コアと、電機子巻線とを備えている。電機子コアは、円環状のバックヨーク部と、バックヨーク部から径方向においてロータ21側に延びる複数のティース部とを備えている。電機子巻線は、U,V,W相巻線24U,24V,24Wである。なお、回転電機20は、例えば、車両の駆動輪12に一体に設けられるインホイールモータであってもよいし、車両の車体に備えられるオンボードモータであってもよい。
【0016】
システムは、電力変換器30を備えている。電力変換器30は、インバータ31と、界磁通電回路33とを備えている。インバータ31は、蓄電池10からの直流電流を交流電流に変換して電機子巻線24に供給する。インバータ31は、U,V,W相上アームスイッチSUH,SVH,SWHと、U,V,W相下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を備えている。
【0017】
U,V,W相上アームスイッチSUH,SVH,SWHの高電位側端子であるドレインには、高電位側電気経路Lpを介して蓄電池10の正極端子が接続されている。U,V,W相下アームスイッチSUL,SVL,SWLの低電位側端子であるソースには、低電位側電気経路Lnを介して蓄電池10の負極端子が接続されている。各電気経路Lp,Lnは、バスバー等の導電部材である。
【0018】
各相において、上アームスイッチSUH,SVH,SWH及び下アームスイッチSUL,SVL,SWLの接続点が、巻線24U,24V,24Wの第1端に電気的に接続されている。U,V,W相巻線24U,24V,24Wの第2端が、互いに接続可能となっている。
【0019】
インバータ31は、平滑コンデンサである第1コンデンサ32を備えている。なお、第1コンデンサ32は、インバータ31の外部に設けられていてもよい。
【0020】
界磁通電回路33は、蓄電池10から界磁巻線22に電流を供給する。界磁通電回路33は、フルブリッジ回路であり、第1上アームスイッチSH1及び第1下アームスイッチSL1の直列接続体と、第2上アームスイッチSH2及び第2下アームスイッチSL2の直列接続体とを備えている。
【0021】
第1,第2上アームスイッチSH1,SH2の高電位側端子であるドレインには、高電位側電気経路Lpを介して蓄電池10の正極端子が接続されている。第1,第2下アームスイッチSL1,SL2の低電位側端子であるソースには、低電位側電気経路Lnを介して蓄電池10の負極端子が接続されている。第1上アームスイッチSH1と第1下アームスイッチSL1との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線22の第1端が接続されている。第2上アームスイッチSH2と第2下アームスイッチSL2との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線22の第2端が接続されている。
【0022】
本実施形態において、各スイッチSUH~SWL,SH1~SL2は、オンされることにより、ドレインからソースへの電流の流通、及びソースからドレインへの電流の流通が許可される双方向導通型のスイッチング素子である。例えば、各スイッチSUH~SWL,SH1~SL2は、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。各スイッチSUH,SVH,SWH,SUL,SVL,SWL,SH1,SH2,SL1,SL2は、ボディダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWL,DH1,DH2,DL1,DL2を備えている。なお、インバータ31が「第1電力変換器」に相当し、界磁通電回路33が「第2電力変換器」に相当する。
【0023】
界磁通電回路33は、平滑コンデンサである第2コンデンサ34を備えている。なお、第2コンデンサ34は、界磁通電回路33の外部に設けられていてもよい。また、界磁通電回路33に個別に第2コンデンサ34が設けられるとともに、インバータ31に個別に第1コンデンサ32が設けられる構成に代えて、インバータ31及び界磁通電回路33に共通のコンデンサが設けられる構成であってもよい。この場合、例えば、第2コンデンサ34が設けられない構成とすればよい。
【0024】
システムは、高電位側メインスイッチ40p及び低電位側メインスイッチ40nを備えている。各メインスイッチ40p,40nは、蓄電池10と電力変換器30との間を電気的に接続又は遮断するためのスイッチである。高電位側メインスイッチ40pが高電位側電気経路Lpに設けられ、低電位側メインスイッチ40nが低電位側電気経路Lnに設けられている。各メインスイッチ40p,40nは、オフされると双方向の電流の流通を阻止し、オンされると双方向の電流の流通を許容する。例えば、各メインスイッチ40p,40nは、機械式のリレー又は半導体スイッチング素子である。
【0025】
システムは、3相交流電源41を備えている。3相交流電源41は、例えば系統電源である。3相交流電源41において、3相の出力電圧の振幅及び周波数は同じであり、出力電圧及び出力電流の位相は各相で120°ずつずれている。3相交流電源41は、蓄電池10を充電可能な外部充電器を構成している。外部充電器は、車両の外部に設けられており、例えば定置式の充電器である。
【0026】
システムは、U,V,W相充電経路25U,25V,25W、入力スイッチ42(「切替スイッチ」に相当)、フィルタ43及び中性点スイッチを備えている。各相において、巻線24U,24V,24Wの第2端は、充電経路25U,25V,25Wを介して3相交流電源41に電気的に接続可能とされている。フィルタ43は、各充電経路25U,25V,25Wを伝わるノイズを除去する。フィルタ43は、EMC規格の要求を満たすために設けられている。
【0027】
入力スイッチ42は、各充電経路25U,25V,25Wにおいて、フィルタ43よりも3相交流電源41側に設けられている。各入力スイッチ42は、3相交流電源41により蓄電池10が充電される場合にオンされ、蓄電池10が充電されない場合、又は3相交流電源41が各相巻線24U,24V,24Wに接続されていない場合にオフされる。各入力スイッチ42が設けられていることにより、各相巻線24U,24V,24Wと3相交流電源41とを電気的に接続又は遮断するのに好適な構成を実現することができる。
【0028】
中性点スイッチは、各相巻線24U,24V,24Wの第2端側の電気的な接続を切り替えるスイッチである。本実施形態では、中性点スイッチとして、U相充電経路25U及びV相充電経路25Vの間を電気的に接続又は遮断するUV相間の中性点スイッチ44aと、V相充電経路25V及びW相充電経路25Wの間を電気的に接続又は遮断するVW相間の中性点スイッチ44bとが設けられている。
【0029】
各中性点スイッチ44a,44bがオンされることにより、各相巻線24U,24V,24Wの第2端が互いに電気的に接続される。この場合、各相巻線24U,24V,24Wは、電気角で互いに120°ずれた状態で星形結線される。これにより、回転電機20を回転駆動させることが可能な状態とされる。
【0030】
一方、各中性点スイッチ44a,44bがオフされることにより、各相巻線24U,24V,24Wの第2端が互いに電気的に切り離される。この場合、各相において、充電経路25U,25V,25Wを介して、巻線24U,24V,24Wの第2端が3相交流電源41に電気的に接続されることにより、3相交流電源41により蓄電池10を充電可能な状態とされる。そのため、各中性点スイッチ44a,44bが設けられていることにより、回転電機20を回転駆動させる状態と、回転電機20を蓄電池10の充電器の一部として利用する状態とを切り替えることができる。
【0031】
各入力スイッチ42及び各中性点スイッチ44a,44bは、オフされると双方向の電流の流通を阻止し、オンされると双方向の電流の流通を許容する。例えば、各入力スイッチ42及び各中性点スイッチ44a,44bは、機械式のリレー又は半導体スイッチング素子である。
【0032】
システムは、電圧センサ50、相電流センサ51、界磁電流センサ52、角度センサ53及び相電圧センサ54備えている。電圧センサ50は、蓄電池10の電圧を検出する。相電流センサ51は、U,V,W相巻線24U,24V,24Wのうち少なくとも2相の巻線に流れる相電流を検出する。界磁電流センサ52は、界磁巻線22に流れる界磁電流を検出する。角度センサ53は、ロータ21の回転角(具体的には電気角)を検出する。相電圧センサ54は、各相巻線24U,24V,24Wの相電圧を検出する。
【0033】
システムは、制御装置60と、制御装置60よりも上位の上位制御装置70とを備えている。各センサ50~54の検出値は、制御装置60に入力される。
【0034】
制御装置60は、マイコン60aを主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。上位制御装置70は、マイコンを主体として構成される電子制御装置である。制御装置60と上位制御装置70とは、情報のやり取りが可能になっている。
【0035】
マイコン60aは、CPU(Central Processing Unit)を備えている。マイコン60aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン60aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン60aは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する
図11等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムを構成するインストラクションのセットが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0036】
制御装置60は、各メインスイッチ40p,40n、入力スイッチ42及び各中性点スイッチ44a,44bを制御する。具体的には、制御装置60は、車両を走行させるために回転電機20を駆動させる場合、各メインスイッチ40p,40n及び各中性点スイッチ44a,44bをオンするとともに、入力スイッチ42をオフする。
【0037】
制御装置60は、界磁巻線22を励磁すべく、界磁通電回路33を構成する各スイッチSH1~SL2のスイッチング制御を行う。詳しくは、制御装置60は、界磁電流センサ52により検出された界磁電流を界磁目標電流に制御すべく、第1状態と第2状態とが交互に出現するようにスイッチング制御を行う。第1状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオンされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオフされている状態である。第2状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオフされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオンされている状態である。
【0038】
制御装置60は、界磁巻線22が励磁されている状態において、各センサ50~54の検出値に基づいて、回転電機20の制御量を指令値にフィードバック制御すべく、インバータ31を構成する各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行う。本実施形態において、制御量はトルクである。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは交互にオンされる。このフィードバック制御が行われることにより、ロータ21の回転動力が駆動輪12に伝達され、車両が走行する。
【0039】
続いて、3相交流電源41により蓄電池10を充電する外部充電制御について説明する。
【0040】
制御装置60は、外部充電制御を行う場合、各メインスイッチ40p,40n及び入力スイッチ42をオンするとともに、各中性点スイッチ44a,44bをオフする。制御装置60は、外部充電制御中において、インバータ31のスイッチング制御を行うことにより、3相交流電源41の交流電力を直流電力に変換する。変換された直流電力が蓄電池10に供給され、蓄電池10が充電される。
【0041】
ところで、外部充電制御中において、各相巻線24U,24V,24Wに電流が流れることにより回転電機20のトルクが発生し得る。この場合、蓄電池10の充電中に回転電機20のトルクが発生することに起因して、種々の問題が生じ得る。
【0042】
例えば、回転電機20が多極化されたり、回転電機20における回転軸方向の長さ(つまり、積厚)及び回転電機20における回転軸方向と直交する径方向の長さ(つまり、外径)が増大されたりして、回転電機20が高出力化されることがある。これに伴い、U,V,W相巻線24U,24V,24Wに電流が流れることにより発生する回転電機20のトルクが増大する。この場合に、蓄電池10の充電時において、意図せず駆動輪12が回転する等の問題の発生が懸念される。
【0043】
そこで、本実施形態では、制御装置60は、外部充電制御中において、3相充電制御と、トルク低減制御とを行う。3相充電制御では、3相交流電源41から蓄電池10へと電流が流れるように、インバータ31のスイッチング制御が行われる。トルク低減制御では、3相充電制御中に発生する回転電機20のトルクが、界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、界磁通電回路33のスイッチング制御が行われる。
【0044】
以下、3相充電制御及びトルク低減制御について詳しく説明する。
【0045】
3相充電制御及びトルク低減制御では、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を2相回転座標系(dq座標系)に変換した電流に基づいて、スイッチング制御が行われる。3相充電制御では、第1dq座標系に変換された電流に基づいて、インバータ31のスイッチング制御が行われる。第1dq座標系と3相固定座標系との間におけるU,V,W相電流の変換には、周期的に変動する位相情報として、3相交流電源41から各相巻線24U,24V,24Wへと入力される入力電圧の位相情報が用いられる。
【0046】
トルク低減制御では、第2dq座標系に変換された電流に基づいて、界磁通電回路33のスイッチング制御が行われる。第2dq座標系と3相固定座標系との間におけるU,V,W相電流の変換には、周期的に変動する位相情報として、ロータ21の電気角θeが用いられる。
【0047】
図2及び
図3に示すように、制御装置60は、第1座標変換部100と、第2座標変換部110とを備えている。第1座標変換部100は、3相充電制御に用いられる電流及び電圧を、第1dq座標系の電流及び電圧に変換する。第2座標変換部110は、トルク低減制御に用いられる電流を、第2dq座標系の電流に変換する。
【0048】
詳しくは、第1座標変換部100は、第1位相取得部101、第1電流変換部102及び電圧変換部103を有する。第1位相取得部101には、U相電圧Vuが入力される。U相電圧Vuは、3相交流電源41からU相巻線24Uへと入力される入力電圧である。第1位相取得部101は、U相電圧Vuとして、相電圧センサ54の検出値を用いることが可能である。第1位相取得部101は、U相電圧Vuの位相情報θaを取得する。U相電圧Vuの位相情報θaは、U相電圧Vuと同一周期で変動し、かつ0°~360°の範囲で変動する情報である。例えば、位相情報θaは、U相電圧Vuのゼロアップクロスタイミングを0°とし、次のU相電圧Vuのゼロアップクロスタイミングを360°として定めることが可能である。第1位相取得部101は、例えば位相同期回路により構成されている。
【0049】
第1電流変換部102には、第1位相取得部101により取得されたU相電圧Vuの位相情報θaと、U,V,W相電流Iu,Iv,Iwとが入力される。第1電流変換部102は、U,V,W相電流Iu,Iv,Iwとして、相電流センサ51の検出値を用いることが可能である。第1電流変換部102は、U相電圧Vuの位相情報θaに基づいて、U,V,W相電流Iu,Iv,Iwを、第1d軸電流id1及び第1q軸電流iq1に変換する。
【0050】
電圧変換部103には、第1位相取得部101により取得された位相情報θaと、U,V,W相電圧Vu,Vv,Vwとが入力される。電圧変換部103は、各相電圧Vu,Vv,Vwとして、相電圧センサ54の検出値を用いることが可能である。電圧変換部103は、位相情報θaに基づいて、U,V,W相電圧Vu,Vv,Vwを、d,q軸入力電圧Esd,Esqに変換する。
【0051】
第2座標変換部110は、第2位相取得部111及び第2電流変換部112を有する。第2位相取得部111には、角度センサ53の検出値が入力される。第2位相取得部111は、角度センサ53の検出値を、ロータ21の電気角θeとして取得する。
【0052】
第2電流変換部112には、第2位相取得部111により取得されたロータ21の電気角θeと、U,V,W相電流Iu,Iv,Iwとが入力される。第2電流変換部112は、U,V,W相電流Iu,Iv,Iwとして、相電流センサ51の検出値を用いることが可能である。第2電流変換部112は、ロータ21の電気角θeに基づいて、U,V,W相電流Iu,Iv,Iwを、第2d軸電流id2及び第2q軸電流iq2に変換する。
【0053】
続いて、
図4を参照しつつ、3相充電制御について具体的に説明する。
【0054】
制御装置60は、d軸指令電流id*及びq軸指令電流iq*を設定する指令電流設定部80を備えている。指令電流設定部80は、d軸指令電流id*を0に設定する。指令電流設定部80は、q軸指令電流iq*を、電力変換器30の直流側の電圧に基づいて設定する。
【0055】
詳しくは、指令電流設定部80は、制限部81と、電圧偏差算出部82と、電圧フィードバック制御部83とを有している。制限部81には、電力変換器30の直流側の電圧における参照電圧VDCrefが入力される。例えば、制限部81は、参照電圧VDCrefとして、上位制御装置70が設定した電圧値を用いることが可能である。制限部81は、参照電圧VDCrefが所定の電圧範囲外の電圧である場合に、参照電圧VDCrefを電圧範囲の上限値又は下限値に制限する。制限部81は、参照電圧VDCrefを電圧偏差算出部82に出力する。
【0056】
電圧偏差算出部82は、参照電圧VDCrefから、電源電圧VDCを減算することにより、電圧偏差ΔVを算出する。電圧偏差算出部82は、電源電圧VDCとして、電圧センサ50の検出値を用いることが可能である。電圧偏差算出部82は、電圧偏差ΔVを電圧フィードバック制御部83に出力する。
【0057】
電圧フィードバック制御部83は、電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電流iq*を算出する。なお、電圧フィードバック制御部83で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0058】
指令電流設定部80は、電圧フィードバック制御部83により算出されたq軸指令電流iq*と、0であるd軸指令電流id*とを、各相巻線24U,24V,24Wの指令電流として設定する。
【0059】
制御装置60は、q軸電流偏差算出部84aと、d軸電流偏差算出部84bとを備えている。q軸電流偏差算出部84aには、指令電流設定部80により設定されたq軸指令電流iq*と、第1電流変換部102により変換された第1q軸電流iq1とが入力される。q軸電流偏差算出部84aは、q軸指令電流iq*から、第1q軸電流iq1を減算することにより、q軸電流偏差Δiqを算出する。
【0060】
d軸電流偏差算出部84bには、指令電流設定部80により設定されたd軸指令電流id*と、第1電流変換部102により変換された第1d軸電流id1とが入力される。d軸電流偏差算出部84bは、d軸指令電流id*から、第1d軸電流id1を減算することにより、d軸電流偏差Δidを算出する。
【0061】
制御装置60は、q軸電流フィードバック制御部85aと、d軸電流フィードバック制御部85bとを備えている。q軸電流フィードバック制御部85aは、q軸電流偏差Δiqを0にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vqを算出する。d軸電流フィードバック制御部85bは、d軸電流偏差Δidを0にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vdを算出する。なお、各フィードバック制御部85a,85bで用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0062】
制御装置60は、非干渉制御部86を備えている。非干渉制御部86は、dq軸のうち異なる軸の成分に干渉するように発生する起電力を考慮して、d,q軸指令電圧Vd,Vqを補正する。
【0063】
詳しくは、非干渉制御部86は、q軸非干渉項算出部86aと、q軸非干渉項加算部86bとを有する。q軸非干渉項算出部86aは、第1電流変換部102により変換された第1d軸電流id1、d軸インダクタンスLd及び角速度ωを乗算した値として、q軸非干渉項「ω・Ld・id」を算出する。ここで、角速度ωは、U,V,W相電圧Vu,Vv,Vwの周波数をfとして、ω=2π×fである。U,V,W相電圧Vu,Vv,Vwの周波数は、例えば50Hzである。q軸非干渉項加算部86bは、q軸電流フィードバック制御部85aにより算出されたq軸指令電圧Vqに、q軸非干渉項算出部86aにより算出されたq軸非干渉項を加算する。
【0064】
また、非干渉制御部86は、d軸非干渉項算出部86cと、d軸非干渉項減算部86dとを有する。d軸非干渉項算出部86cは、第1電流変換部102により変換された第1q軸電流iq、q軸インダクタンスLq及び角速度ωを乗算した値として、d軸非干渉項「ω・Lq・iq」を算出する。d軸非干渉項減算部86dは、d軸電流フィードバック制御部85bにより算出されたd軸指令電圧Vdから、d軸非干渉項算出部86cにより算出されたd軸非干渉項を減算する。
【0065】
なお、d軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLqは、U,V,W相電流Iu,Iv,Iw、界磁電流及びロータ21の電気角θeに応じて変化する。そこで、q軸非干渉項算出部86aは、d軸インダクタンスLdとして、U,V,W相電流Iu,Iv,Iw、界磁電流及びロータ21の電気角θeのうち少なくとも1つに基づいて算出された値を用いてもよい。また、d軸非干渉項算出部86cは、q軸インダクタンスLqとして、U,V,W相電流Iu,Iv,Iw、界磁電流及びロータ21の電気角θeのうち少なくとも1つに基づいて算出された値を用いてもよい。各軸インダクタンスLd,Lqの算出には、d軸インダクタンスLd又はq軸インダクタンスLqと、U,V,W相電流Iu,Iv,Iw、界磁電流及びロータ21の電気角θeのうち少なくとも1つとが対応付けられた情報(具体的には、マップ情報又は数式情報)が用いられてもよい。
【0066】
制御装置60は、q軸フィードフォワード制御部87aと、d軸フィードフォワード制御部87bとを備えている。q軸フィードフォワード制御部87aには、電圧変換部103により変換されたq軸入力電圧Esqと、q軸非干渉項加算部86bにより補正されたq軸指令電圧Vqとが入力される。q軸フィードフォワード制御部87aは、フィードフォワード項としてのq軸入力電圧Esqを、q軸指令電圧Vqに加算する。d軸フィードフォワード制御部87bには、電圧変換部103により変換されたd軸入力電圧Esdと、d軸非干渉項減算部86dにより補正されたd軸指令電圧Vdとが入力される。d軸フィードフォワード制御部87bは、フィードフォワード項としてのd軸入力電圧Esdを、d軸指令電圧Vdに加算する。
【0067】
制御装置60は、固定座標変換部88を備えている。固定座標変換部88には、d,q軸フィードフォワード制御部87a,87bにより算出されたd,q軸指令電圧Vd,Vqと、第1位相取得部101の位相情報θaとが入力される。固定座標変換部88は、位相情報θaに基づいて、d,q軸指令電圧Vd,Vqを、U,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換する。
【0068】
制御装置60は、変調部89、比較部90及び反転部91を備えている。変調部89には、電源電圧VDCと、固定座標変換部88のU,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*とが入力される。変調部89は、各相において、指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に3次高調波を重畳する。そして、変調部89は、各相において、指令電圧Vu*,Vv*,Vw*を電源電圧VDCで除算することにより、変調率Mu,Mv,Mwを算出する。変調部89は、電源電圧VDCとして、電圧センサ50の検出値を用いることが可能である。
【0069】
比較部90には、変調部89から各相変調率Mu,Mv,Mwが入力される。比較部90は、各相変調率Mu,Mv,Mwと、キャリア信号との大小比較に基づいて、インバータ31における下アームスイッチSUL,SVL,SWLの操作信号を生成する。下アームスイッチSUL,SVL,SWLの操作信号は、オン操作信号又はオフ操作信号である。反転部91は、各相下アームスイッチSUL,SVL,SWLの操作信号の論理を反転させることにより、各相上アームスイッチSUH,SVH,SWLの操作信号を生成する。なお、キャリア信号は、例えば三角波信号である。
【0070】
図5及び
図6に、上述した3相充電制御が行われた場合における電圧及び電流の制御例を示す。
図5において、(a)は各相電圧Vu,Vv,Vwの推移を示し、(b)は各相電流Iu,Iv,Iwの推移を示し、(c)はU相電圧Vuの位相情報θaを示し、(d)は第1d軸電流id1の推移を示し、(e)は第1q軸電流iq1の推移を示す。
図6では、第1dq座標系上において、各相電圧Vu,Vv,Vwから定まる電圧ベクトルVと、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流ベクトルiとを示している。なお、
図5(b)では、各相巻線24U,24V,24Wの第1端から第2端へ電流が流れる方向を正とし、各相巻線24U,24V,24Wの第2端から第1端へ電流が流れる方向を負としている。
【0071】
第1座標変換部100は、3相固定座標系から第1dq座標系への変換には、U相電圧Vuと同じ周期Tで周期的に変動する位相情報θaを用いる。この場合、第1座標変換部100は、位相情報θaに基づいて、各相電圧Vu,Vv,Vwから定まる電圧ベクトルVの方向が第1dq座標系におけるq軸方向を向くように、3相固定座標系から第1dq座標系への変換を行うことが可能である。
【0072】
指令電流設定部80は、第1dq座標系において、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流がq軸方向を向くように、d軸指令電流id*及びq軸指令電流iq*を設定する。つまり、指令電流設定部80は、第1dq座標系において、第1d,q軸電流id1,iq1の方向を、各相電圧Vu,Vv,Vwから定まる電圧ベクトルVの方向に揃えるように、d軸指令電流id*及びq軸指令電流iq*を設定する。本実施形態では、指令電流設定部80は、d軸指令電流id*を0に設定するとともに、q軸指令電流iq*を電源電圧VDCに応じた値に設定する。
【0073】
指令電流設定部80により設定されたd,q軸指令電流id*,iq*に基づいて、第1d,q軸電流id1,iq1の電流フィードバック制御が行われることにより、各相電流Iu,Iv,Iwが、各相電圧Vu,Vv,Vwと同位相の波形に制御される。言い換えると、第1dq座標系において、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流ベクトルiの方向が、各相電圧Vu,Vv,Vwから定まる電圧ベクトルVと同じ方向であるq軸方向に制御される。これにより、電圧ベクトルVと電流ベクトルiとから定まる力率を1に近づけることができ、蓄電池10の充電効率を高めることができる。
【0074】
次に、トルク低減制御について説明する。
【0075】
トルク低減制御では、3相充電制御中に発生する回転電機20のトルクが、界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、界磁通電回路33のスイッチング制御が行われる。
【0076】
詳しくは、回転電機20の発生トルクTrqは、マグネットトルクTMと、リラクタンストルクTRとからなる。マグネットトルクTM及びリラクタンストルクTRを第2d,q軸電流id2,iq2を用いて表すと、下式(eq1)となる。
【0077】
Trq=TM+TR
=P・φf・iq2+P・(Ld-Lq)・id2・iq2 …(eq1)
ここで、上式(eq1)において、Pは回転電機20の極対数を示し、φfは界磁巻線22に界磁電流Ifが流れることにより発生する磁束を示す。磁束φfは、結合インダクタンスLmfを用いると、「φf=Lmf×If」のように表される。結合インダクタンスLmf(>0)は、ステータ23のバックヨーク部及びティース部と、ロータ21のロータコア及び界磁突極部とを含むd軸磁路のインダクタンスである。
【0078】
トルク低減制御では、界磁巻線22への通電が制御されることにより、マグネットトルクTMが制御される。この場合に、リラクタンストルクTRとマグネットトルクTMとの合計トルクが界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、マグネットトルクTMが発生させられる。例えば、リラクタンストルクTRとマグネットトルクTMとが相殺するように界磁巻線22に電流を流すには、上式(eq1)において回転電機20の発生トルクTrqが0となるように、界磁電流Ifを流せばよい。この場合、界磁電流Ifは、下式(eq2)のようになればよい。
【0079】
【数1】
本実施形態では、回転電機20は順突極性を有し、Ld-Lq>0である。そのため、上式(eq2)において、界磁電流Ifは、第2d軸電流id2とは位相が180°ずれた逆位相の電流である。
【0080】
ここでは、
図7及び
図8を用いて、トルク低減制御における界磁巻線22に流れる界磁電流Ifを説明する。
【0081】
図7及び
図8では、3相充電制御中に各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流ベクトルIaを、第2dq座標系において模式的に示している。電流ベクトルIaは、第2dq座標系において、3相交流電源41から入力される各相電圧Vu,Vv,Vwの周波数で回転するベクトルである。このため、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流ベクトルIaのd軸成分である第2d軸電流id2は、第2dq軸座標系における交流電流である。本実施形態では、回転電機20は、順突極性(Ld-Lq>0)を有する。そこで、制御装置60は、トルク低減制御において、交流の第2d軸電流id2と逆位相である電流を、界磁電流Ifとして流すように、界磁通電回路33のスイッチング制御を行う。
【0082】
例えば、
図7に示すように、制御装置60は、第2d軸電流id2が正である場合、第2dq座標系における界磁電流Ifが負のd軸方向に生じるように、界磁通電回路33のスイッチング制御を行う。例えば、
図8に示すように、制御装置60は、第2d軸電流id2が負である場合、第2dq座標系における界磁電流Ifが正のd軸方向に生じるように、界磁通電回路33のスイッチング制御を行う。
【0083】
図9を参照しつつ、トルク低減制御について具体的に説明する。
【0084】
制御装置60は、目標電流設定部120を備えている。目標電流設定部120には、第2座標変換部110から第2d軸電流id2が入力される。本実施形態では、回転電機20は、順突極性(Ld-Lq>0)を有する。そこで、目標電流設定部120は、第2d軸電流id2と逆位相の電流を、界磁目標電流If*として設定する。これにより、回転電機20の特性が考慮され、リラクタンストルクTRが発生する方向とは反対方向にマグネットトルクTMが発生するように、界磁電流Ifを流すことができる。そのため、トルク低減制御において、リラクタンストルクTRとマグネットトルクTMとの合計トルクが界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、マグネットトルクTMを的確に発生させることができる。
【0085】
具体的には、目標電流設定部120は、第2d軸電流id2と、界磁目標電流If*とが対応付けられた情報(具体的には、マップ情報又は数式情報)を用いて、界磁目標電流If*を設定する。
【0086】
例えば、目標電流設定部120は、第2d軸電流id2、d,q軸インダクタンスLd,Lq、結合インダクタンスLmfに基づいて、界磁目標電流If*を設定することが可能である。この場合、目標電流設定部120は、第2電流変換部112から入力された第2d軸電流id2、d,q軸インダクタンスLd,Lq及び結合インダクタンスLmfに基づいて、上式(eq2)の右辺を算出し、算出した値を、界磁目標電流If*として設定する。
【0087】
なお、目標電流設定部120は、d,q軸インダクタンスLd,Lq及び結合インダクタンスLmfとして、マップ情報又は数式情報を用いて算出された値を用いることが可能である。
【0088】
例えば、d軸インダクタンスLdは、第2d軸電流id2、界磁電流If、電気角θe及びd軸インダクタンスLdが対応付けられたマップ情報と、第2座標変換部110から入力された第2d軸電流id2と、界磁電流センサ52の検出値と、第2位相取得部111により取得された電気角θeとから算出することが可能である。例えば、q軸インダクタンスLqは、第2q軸電流iq2、電気角θe及びq軸インダクタンスLqが関係付けられたマップ情報と、第2座標変換部110から入力された第2q軸電流iq2と、第2位相取得部111により取得された電気角θeとから算出することが可能である。例えば、結合インダクタンスLmfは、第2d,q軸電流id2,iq2、界磁電流If、電気角θe及び結合インダクタンスLmfが関係付けられたマップ情報と、第2座標変換部110から入力された第2d,q軸電流id2,iq2と、界磁電流センサ52の検出値と、第2位相取得部111により取得された電気角θeとに基づいて、結合インダクタンスLmfを算出することが可能である。
【0089】
制御装置60は、界磁電流偏差算出部121と、界磁電流フィードバック制御部122とを備えている。界磁電流偏差算出部121には、目標電流設定部120により設定された界磁目標電流If*と、界磁電流Ifとが入力される。界磁電流偏差算出部121は、界磁電流Ifとして、界磁電流センサ52の検出値を用いることが可能である。界磁電流偏差算出部121は、界磁目標電流If*から、界磁電流Ifを減算することにより、界磁電流偏差ΔIfを算出する。界磁電流偏差算出部121は、算出した界磁電流偏差ΔIfを、界磁電流フィードバック制御部122に出力する。
【0090】
界磁電流フィードバック制御部122は、界磁電流偏差ΔIfを0にフィードバック制御するための操作量として、界磁指令電圧Vfを算出する。なお、電圧フィードバック制御部83で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0091】
制御装置60は、除算部123と、比較部124と、反転部125とを備えている。除算部123には、界磁電流フィードバック制御部122から界磁指令電圧Vfが入力される。除算部123は、界磁指令電圧Vfを電源電圧VDCで除算することにより、界磁変調率Mfを算出する。除算部123は、電源電圧VDCとして、電圧センサ50の検出値を用いることが可能である。
【0092】
比較部124には、除算部123から界磁変調率Mfが入力される。比較部124は、界磁変調率Mfと、キャリア信号との大小比較に基づいて、第1上アームスイッチSH1及び第2下アームスイッチSL2の操作信号を生成する。第1上アームスイッチSH1及び第2下アームスイッチSL2の操作信号は、オン操作信号又はオフ操作信号である。反転部125は、第1上アームスイッチSH1及び第2下アームスイッチSL2の操作信号の論理を反転させることにより、第1下アームスイッチSL1及び第2上アームスイッチSH2の操作信号を生成する。なお、キャリア信号は、例えば三角波信号である。
【0093】
図10に、上述したトルク低減制御が行われた場合における各電流の推移等を示す。
図10において、(a)はロータ21の電気角θeを示し、(b)は第2d軸電流id2の推移を示し、(c)は第2q軸電流iq2の推移を示し、(d)は界磁電流Ifの推移を示す。
【0094】
第2d軸電流id2及び第2q軸電流iq2は、U相電圧Vuと同じ周期Tで周期的に変動する交流電流である。界磁電流Ifは、第2d軸電流id2と逆位相の交流電流に制御される。
図10では、界磁電流Ifと第2d軸電流id2との位相差θsが180°である場合を示している。例えば、位相差θsが180°である場合、第2d軸電流id2のゼロアップクロスタイミングから、次のゼロダウンクロスタイミングまでの期間に相当する分だけ、界磁電流Ifの位相が第2d軸電流id2に対して進められる。界磁電流Ifが第2d軸電流id2と逆位相の交流電流に制御されることにより、リラクタンストルクTRとマグネットトルクTMとの合計トルクが界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、マグネットトルクTMが発生させられる。そのため、ロータ21の電気角θeの変動が抑制される。
【0095】
図11に、制御装置60が行う外部充電制御の処理手順を示す。外部充電制御は、例えば、上位制御装置70の指令に基づいて行われる。ここでは、各相巻線24U,24V,24Wの第2端が3相交流電源41に電気的に接続されており、かつ、入力スイッチ42がオンされ、各中性点スイッチ44a,44bがオフされているものとして説明する。
【0096】
ステップS10では、3相充電制御を実施するか否かを判定する。例えば、上位制御装置70から外部充電制御を行う旨の指令が伝達されている場合に、3相充電制御を実施すると判定する。ステップS10において否定判定した場合、本制御を終了する。一方、ステップS10において肯定判定した場合、ステップS11に進む。
【0097】
ステップS11では、3相交流電源41から各相巻線24U,24V,24Wへと入力される各相電圧Vu,Vv,Vwの周波数fと、電力変換器30の直流側の電圧における参照電圧VDCrefとを取得する。周波数fとしては、3相交流電源41側から送信される情報を取得することが可能である。参照電圧VDCrefとしては、上位制御装置70から送信される情報を取得することが可能である。
【0098】
ステップS12では、3相交流電源41から各相巻線24U,24V,24Wへと入力される電流及び電圧として、各相電流Iu,Iv,Iw及び各相電圧Vu,Vv,Vwを取得する。各相電流Iu,Iv,Iwとして、相電流センサ51の検出値を取得することが可能である。各相電圧Vu,Vv,Vwとして、相電圧センサ54の検出値を取得することが可能である。
【0099】
ステップS13では、U相電圧Vuに基づいて、位相情報θaを取得する。この場合、制御装置60は、先の
図2で説明した第1位相取得部101として機能する。また、電圧センサ50の検出値を、電源電圧VDCとして取得する。
【0100】
ステップS14では、指令電流を設定する。本実施形態では、d軸指令電流id*を0に設定するとともに、参照電圧VDCref及び電源電圧VDCに基づいて、q軸指令電流iq*を設定する。この場合、制御装置60は、先の
図4で説明した指令電流設定部80として機能する。
【0101】
ステップS15では、位相情報θaに基づいて、各相電流Iu,Iv,Iwを第1d,q軸電流id1,iq1に変換し、各相電圧Vu,Vv,Vwをd,q軸入力電圧Esd,Esqに変換する。この場合、制御装置60は、先の
図2で説明した第1座標変換部100として機能する。
【0102】
ステップS16では、指令電流に基づいて、第1d,q軸電流id1,iq1のフィードバック制御を行う。ここでは、d,q軸指令電圧Vd,Vqを算出する。この場合、制御装置60は、先の
図4で説明したq軸電流偏差算出部84a、d軸電流偏差算出部84b、q軸電流フィードバック制御部85a及びd軸電流フィードバック制御部85bとして機能する。
【0103】
ステップS17では、d,q軸指令電圧Vd,Vq、周波数f及びd,q軸インダクタンスLd,Lqに基づいて、dq軸非干渉制御を行う。d,q軸インダクタンスLd,Lqとしては、U,V,W相電流Iu,Iv,Iw、界磁電流If及びロータ21の電気角θeのうち少なくとも1つに基づいて算出された値を用いることが可能である。ステップS17の処理において、制御装置60は、先の
図4で説明した非干渉制御部86として機能する。
【0104】
ステップS18では、d,q軸指令電圧Vd,Vq及びd,q軸入力電圧Esd,Esqに基づいて、フィードフォワード制御を行う。この場合、制御装置60は、先の
図4で説明したd,q軸フィードフォワード制御部87a,87bとして機能する。
【0105】
ステップS19では、d,q軸指令電圧Vd,Vq、位相情報θa及び電源電圧VDCに基づいて、U,V,W相変調率Mu,Mv,Mwを算出する。この場合、制御装置60は、先の
図4で説明した固定座標変換部88及び変調部89として機能する。
【0106】
ステップS20では、角度センサ53に基づいて、ロータ21の電気角θeを取得する。また、界磁電流センサ52の検出値を、界磁電流Ifとして取得する。ステップS21では、ロータ21の電気角θeに基づいて、各相電流Iu,Iv,Iwを、第2d,q軸電流id2,iq2に変換する。この場合、制御装置60は、先の
図3で説明した第2座標変換部110として機能する。
【0107】
ステップS22では、第2d軸電流id2、d,q軸インダクタンスLd,Lq及び結合インダクタンスLmfに基づいて、界磁目標電流If*を設定する。この場合、制御装置60は、先の
図9で説明した目標電流設定部120として機能する。
【0108】
ステップS23では、界磁電流Ifを界磁目標電流If*にするフィードバック制御を行う。ここでは、界磁指令電圧Vfを算出する。この場合、制御装置60は、先の
図9で説明した界磁電流偏差算出部121及び界磁電流フィードバック制御部122として機能する。
【0109】
ステップS24では、界磁指令電圧Vf及び電源電圧VDCに基づいて、界磁変調率Mfを算出する。この場合、制御装置60は、先の
図9で説明した除算部123として機能する。
【0110】
ステップS25では、各相変調率Mu,Mv,Mwに基づいて、インバータ31のスイッチング制御を行う。この場合、制御装置60は、比較部90及び反転部91として機能する。また、界磁変調率Mfに基づいて、界磁通電回路33のスイッチング制御を行う。この場合、制御装置60は、比較部124及び反転部125として機能する。本実施形態において、ステップS16~S19,S25の処理が「電機子電流制御部」に相当する。
【0111】
なお、ステップS13~S19,S25の処理は、3相充電制御を行うための処理であり、「第1制御部」に相当する。ステップS20~S25の処理は、トルク低減制御を行うための処理であり、「第2制御部」に相当する。ステップS20~S24の処理は、ステップS19の処理の後に行うことに限らず、ステップS12の処理の後、かつステップS13の処理よりも前に行ってもよい。また、ステップS13~S19の処理と、ステップS20の処理とを並列に行ってもよい。
【0112】
上述した外部充電制御では、各相巻線24U,24V,24W及びインバータ31を介して、蓄電池10及び3相交流電源41が電気的に接続された状態において、3相充電制御が行われる。これにより、蓄電池10が充電される。この場合に、各相巻線24U,24V,24Wに電流が流れることにより、リラクタンストルクTRが発生し、種々の問題が生じ得る。
【0113】
そこで、本実施形態では、3相充電制御中に発生する回転電機20の発生トルクTrqが界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、トルク低減制御が行われる。これにより、マグネットトルクTMとリラクタンストルクTRとの合計トルクが界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減される。そのため、蓄電池10の充電時に回転電機20のトルクが発生することを抑制することができる。その結果、蓄電池10の充電中において、回転電機20のトルクが生じることに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【0114】
以下では、
図12を参照しつつ、外部充電制御の制御例について説明する。
図12において、(a)は各相電圧Vu,Vv,Vwの推移を示し、(b)は各相電流Iu,Iv,Iwの推移を示し、(c)は界磁電流Ifの推移を示し、(d)は回転電機20の発生トルクTrqの推移を示す。なお、
図12(b)では、各相巻線24U,24V,24Wの第2端から第1端へ電流が流れる方向を正とし、各相巻線24U,24V,24Wの第1端から第2端へ電流が流れる方向を負としている。
【0115】
外部充電制御中にトルク低減制御が行われ、界磁巻線22に交流の界磁電流Ifが流れる。界磁電流Ifは、第2d軸電流id2と逆位相の電流に制御される。これにより、リラクタンストルクTRとマグネットトルクTMとの合計トルクが界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、マグネットトルクTMが発生させられる。そのため、回転電機20の発生トルクTrqの大きさが、トルク閾値Trqthよりも大きくなることが抑制される。トルク閾値Trqthは、例えば、駆動輪12が回転し始めるトルクであり、駆動輪12が回転し始めるトルクとして想定される範囲の上限値に設定されている。
【0116】
図13に、本実施形態とは異なり、外部充電制御中において、界磁巻線22への通電が遮断された場合の比較例を示す。
図13において、(a)は界磁電流Ifの推移を示し、(b)は回転電機20の発生トルクTrqの推移を示す。
【0117】
比較例では、外部充電制御中において、界磁巻線22への通電が遮断されているため、界磁電流Ifが0で一定となっている。この場合、リラクタンストルクTRが発生するものの、マグネットトルクTMが発生しないことに起因して、回転電機20の発生トルクTrqの変動幅Taが、トルク閾値Trqthにより定まる範囲よりも大きくなることが懸念される。発生トルクTrqがトルク閾値Trqthを超えてしまうと、外部充電制御中においてユーザに違和感を与えるおそれがある。
【0118】
この点、本実施形態では、上述したように、外部充電制御中にトルク低減制御が行われる。これにより、回転電機20の発生トルクTrqの大きさが、トルク閾値Trqthよりも大きくなることが抑制される。その結果、外部充電制御中にユーザに違和感を与えることを抑制することができる。
【0119】
U相電圧Vuの位相情報θaに基づいて、各相電流Iu,Iv,Iwが第1d,q軸電流id1,iq1に変換される。第1dq座標系において、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流ベクトルiの方向が、各相電圧Vu,Vv,Vwから定まる電圧ベクトルVの方向に揃うように、d,q軸指令電流id*,iq*が設定される。そして、第1d,q軸電流id1,iq1がd,q軸指令電流id*,iq*に制御される。
【0120】
図12(a),(b)に示すように、上述した電流フィードバック制御が行われることにより、各相電流Iu,Iv,Iwの位相が各相電圧Vu,Vv,Vwの位相に揃うように、各相電流Iu,Iv,Iwが制御される。これにより、各相電圧Vu,Vv,Vwと、各相電流Iu,Iv,Iwとから定まる力率を1に近づけることができる。そのため、蓄電池10の充電効率を高めつつ、3相充電制御時における回転電機20の発生トルクTrqを低減することができる。
【0121】
第1d,q軸電流id1,iq1の電流フィードバック制御を行う際の周期的に変動する位相情報として、U相電圧Vuの位相情報θaが用いられる。これにより、外部充電制御中において、第1dq座標系における直流電流である第1d,q軸電流id1,iq1が制御対象とされ、電流フィードバック制御が行われる。そのため、第1dq座標系において、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流ベクトルiの方向を、各相電圧Vu,Vv,Vwから定まる電圧ベクトルVの方向に揃えるように、電流フィードバック制御を行うのに好適な構成を実現することができる。その結果、各相電圧Vu,Vv,Vwと、各相電流Iu,Iv,Iwとから定まる力率を的確に高めることができる。
【0122】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、トルク低減制御の構成が変更される。
【0123】
図14に、トルク低減制御において界磁電流Ifを上式(eq2)のように生じさせた場合における発生トルクTrqの波形を示す。この場合、理論的には、
図14の破線にて示すように、回転電機20の発生トルクTrqが0となる。しかしながら、実際には
図14の実線にて示すように、相電流センサ51の検出誤差等に起因して、発生トルクTrqが小さいながら変動することがある。この場合、発生トルクTrqの極性が正負交互に変化する。
【0124】
図15に示すように、動力伝達機構11を構成する第1ギア13及び第2ギア14には、バックラッシュが設けられている。
図15には、各ギア13,14として外歯歯車を例示している。バックラッシュが設けられる構成において、ロータ21の発生トルクTrqの極性が正負交互に変化すると、第1ギア13及び第2ギア14の回転方向が交互に変化し、第1ギア13の歯13a及び第2ギア14の歯14a同士が衝突する歯打ちが発生し得る。
【0125】
外部充電制御において、ロータ21の発生トルクTrqの大きさがトルク閾値Trqth以下となり、ロータ21の発生トルクTrqが低減されているにもかかわらず、ギアの歯打ち音が大きくなると、システムのNV(Noise,Vibration)が悪化してしまう。
【0126】
そこで、本実施形態では、
図16に示すように、第1ギア13の歯13a及び第2ギア14の歯14a同士の押し付け状態を維持して歯打ち音が発生するのを抑制し、NVの改善を図る。
【0127】
目標電流設定部120は、各相巻線24U,24V,24Wに流す交流電流の1周期又は複数周期における回転電機20の発生トルクTrqの時間平均値を界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減させるように、界磁目標電流If*を設定する。この際、目標電流設定部120は、発生トルクTrqの時間平均値を0からオフセットさせるように、界磁目標電流If*を設定する。
【0128】
図17に、トルク低減制御において、回転電機20の発生トルクTrqを正側にオフセットさせるように界磁目標電流If*が設定された場合の一例を示す。
図17では、回転電機20の発生トルクTrqの時間平均値がオフセット値Toffsetだけオフセットされ、かつ、発生トルクTrqの変動幅ΔTが0からトルク閾値Trqthの範囲内に収められている。これにより、回転電機20の発生トルクTrqの極性が正負交互に変化することが抑制され、歯打ち音が発生するのを抑制することができる。そのため、NVの改善を図ることができる。
【0129】
具体的には、目標電流設定部120は、第2d軸電流id2と逆位相又は同位相である界磁電流Ifに対して、界磁目標電流If*の位相をシフトさせる。界磁電流偏差算出部121、界磁電流フィードバック制御部122、除算部123、比較部124及び反転部125は、界磁電流Ifを、界磁目標電流If*に制御する。これにより、マグネットトルクTMがリラクタンストルクTRに対して大きく又は小さくなる。そのため、回転電機20の発生トルクTrqの時間平均値を0からオフセットさせることができる。
【0130】
例えば、目標電流設定部120は、第2d軸電流id2と、第2d軸電流id2に対して位相がシフトされた界磁目標電流If*とが対応付けられた情報(具体的には、マップ情報又は数式情報)を用いて、界磁目標電流If*を設定することが可能である。また、例えば、目標電流設定部120は、入力電流と、入力電流とは逆位相の界磁目標電流If*とが対応付けられた情報を用いて、界磁目標電流If*を設定する場合に、第2d軸電流id2に対して位相がシフトされたシフト電流を入力電流として、界磁目標電流If*を設定することが可能である。例えば、シフト電流としては、ロータ21の電気角θeに対して正側又は負側にシフトされた位相情報に基づいて、3相固定座標系から第2dq座標系へと変換された電流を用いることが可能である。
【0131】
図18に、トルク低減制御の制御例を示す。
図18において、(a)~(d)は、先の
図10(a)~(d)に対応している。
図18(d)では、破線にて先の
図10(d)と同じ波形を示し、実線にて界磁電流Ifの位相をシフトさせた場合の波形を示している。ここでは、界磁電流Ifの位相を、所定のシフト量Tsだけシフトさせている。
【0132】
界磁電流Ifの位相のシフト量Tsは、例えば、第2d軸電流id2と逆位相である界磁電流Ifに対して、界磁電流Ifの周期T分だけシフトされた場合を360°として、0°≦Ts≦360°の範囲で表される。この場合、界磁電流Ifの位相のシフト量Tsが0°<Ts≦180°の範囲で大きいほど、オフセット値Toffsetが増大し、かつ回転電機20の発生トルクTrqの変動幅ΔTが増大する。回転電機20の発生トルクTrqの変動幅ΔTが大きいと、ロータ21の発生トルクTrqが、トルク閾値Trqthを上回ったり、0を下回ったりする可能性がある。
【0133】
界磁電流Ifの位相のシフト量Tsは、回転電機20の特性(例えば、回転電機20のインダクタンス及び電気抵抗)に応じて、ロータ21の発生トルクTrqが0からトルク閾値Trqthの範囲内に収まるように定められる。例えば、界磁電流Ifの位相のシフト量Tsは、0°<Ts≦30°、0°<Ts≦60°又は0°<Ts≦90°の範囲で定められる。なお、本実施形態において、ステップS23~S25の処理が「界磁電流制御部」に相当する。
【0134】
本実施形態によれば、界磁電流Ifの位相のシフト量Tsが回転電機20の特性に応じて定められることにより、ロータ21の発生トルクTrqの時間平均値を0からオフセットさせる際に、発生トルクTrqが、トルク閾値Trqthを上回ったり、0を下回ったりすることを抑制することができる。そのため、NVの改善を図るのに好適な構成を実現することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0135】
・
図19に示すように、システムは、モータ側スイッチ45(「切替スイッチ」に相当)を備えていてもよい。モータ側スイッチ45は、U,V,W相充電経路25U,25V,25Wにおいて、フィルタ43よりも回転電機20側に設けられている。例えば、各モータ側スイッチ45は、機械式のリレー又は半導体スイッチング素子である。
【0136】
制御装置60は、各モータ側スイッチ45を制御する。制御装置60は、外部充電制御を行う場合に、各メインスイッチ40p,40n、入力スイッチ42及びモータ側スイッチ45をオンするとともに、各中性点スイッチ44a,44bをオフする。一方、制御装置60は、外部充電制御を行わない場合又は回転電機20を回転駆動させる場合に、各メインスイッチ40p,40n及び各中性点スイッチ44a,44bをオンするとともに、入力スイッチ42及びモータ側スイッチ45をオフする。
【0137】
本実施形態では、回転電機20が回転駆動される場合に、各中性点スイッチ44a,44bがオンされ、かつ各モータ側スイッチ45がオフされる。この場合、回転電機20の回転駆動中において、フィルタ43を介して各相巻線24U,24V,24W間に電流が流れることを抑制することができる。そのため、回転電機20が蓄電池10を充電する充電器の一部として利用される構成において、システムに意図しない電流が流れることを抑制することができる。
【0138】
・各相充電経路25U,25V,25Wに入力スイッチ42が設けられていなくてもよい。また、高電位側電気経路Lpに高電位側メインスイッチ40pが設けられていなくてもよく、低電位側電気経路Lnに低電位側メインスイッチ40nが設けられていなくてもよい。
【0139】
・
図20に示すように、システムは、DCDCコンバータ130を備えていてもよい。DCDCコンバータ130は、蓄電池10及び電力変換器30の間の電力伝達を行う。本実施形態において、DCDCコンバータ130は、絶縁型のDCDCコンバータである。
【0140】
DCDCコンバータ130は、DAB(Dual Active Bridge)方式のものであり、第1フルブリッジ回路131と、第2フルブリッジ回路133と、各フルブリッジ回路131,133の間の電力伝達を行うトランス132とを備えている。トランス132は、第1フルブリッジ回路131に接続された第1コイル132Aと、第2フルブリッジ回路133に接続された第2コイル132Bと、各コイル132A,132Bを磁気結合するコア132Cを備えている。なお、DCDCコンバータ130は、他の方式(例えばLLC方式)のものであってもよい。
【0141】
各フルブリッジ回路131,133は、上下アームのスイッチにより構成されている。各フルブリッジ回路131,133のスイッチは、半導体スイッチング素子であり、具体的にはNチャネルMOSFETである。各フルブリッジ回路131,133のスイッチは、制御装置60により制御される。
【0142】
・指令電流設定部80は、第1dq座標系において、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流の方向をq軸方向に揃えるのに、d軸指令電流id*を0以外の値に設定してもよい。例えば、指令電流設定部80は、各相巻線24U,24V,24Wに流れる電流と、各相電圧Vu,Vv,Vwとから定まる力率が所定値(例えば、1付近の値)以上となる範囲で、d軸指令電流id*及びq軸指令電流iq*を、電源電圧VDCに応じた値に設定することが可能である。
【0143】
・第1座標変換部100は、位相情報θaに基づいて、各相電圧Vu,Vv,Vwから定まる電圧ベクトルVの方向が第1dq座標系におけるq軸方向以外の方向を向くように、3相固定座標系から第1dq座標系への変換を行うことが可能である。この場合、指令電流設定部80は、第1dq座標系において、第1d,q軸電流id1,iq1の方向を、q軸方向以外の方向を向いた電圧ベクトルの方向に揃えるように、d軸指令電流id*及びq軸指令電流iq*を設定する。
【0144】
・第1座標変換部100は、U相電圧Vuに代えて、V相電圧Vv又はW相電圧Vwに基づいて、3相充電制御に用いられる電流及び電圧を、第1dq座標系の電流及び電圧に変換することが可能である。
【0145】
例えば、V相電圧Vvを例にして説明すると、第1位相取得部101には、V相電圧Vvが入力される。V相電圧Vvは、3相交流電源41からV相巻線24Vへと入力される入力電圧である。第1位相取得部101は、V相電圧Vvとして、相電圧センサ54の検出値を用いることが可能である。第1位相取得部101は、V相電圧Vvの位相情報を取得する。V相電圧Vvの位相情報は、U相電圧Vuの位相情報θaと同様の情報である。V相電圧Vvの位相情報は、第1電流変換部102及び電圧変換部103に入力される。
【0146】
第1電流変換部102は、V相電圧Vvの位相情報に基づいて、U,V,W相電流Iu,Iv,Iwを、第1d軸電流id1及び第1q軸電流iq1に変換することが可能である。電圧変換部103は、V相電圧Vvの位相情報に基づいて、U,V,W相電圧Vu,Vv,Vwを、d,q軸入力電圧Esd,Esqに変換することが可能である。
【0147】
・第1実施形態において、目標電流設定部120は、マグネットトルクTMとリラクタンストルクTRとの合計トルクが低減する範囲において、界磁目標電流If*として、第2d軸電流id2と逆位相の電流以外の電流を設定してもよい。例えば、目標電流設定部120は、界磁電流Ifと第2d軸電流id2との位相差θsを、90°<θs<270°、150°≦θs≦210°、又は170°≦θs≦190°とするように、界磁目標電流If*を設定してもよい。
【0148】
・回転電機20は、q軸インダクタンスLqがd軸インダクタンスLdよりも大きい特性である逆突極性(Lq-Ld>0)を有する回転電機であってもよい。この場合、目標電流設定部120は、第2d軸電流id2と同位相の電流を、界磁目標電流If*として設定する。これにより、回転電機20の特性が考慮され、リラクタンストルクTRが発生する方向とは反対方向にマグネットトルクTMが発生するように、界磁電流Ifを流すことができる。そのため、トルク低減制御において、リラクタンストルクTRとマグネットトルクTMとの合計トルクが界磁巻線22に電流を流さない場合よりも低減されるように、マグネットトルクTMを的確に発生させることができる。
【0149】
なお、目標電流設定部120は、回転電機20が順突極性を有する場合と同様に、界磁目標電流If*として、第2d軸電流id2と同位相の電流以外の電流を設定することが可能である。例えば、目標電流設定部120は、マグネットトルクTMとリラクタンストルクTRとの合計トルクが低減する範囲において、-90°<θs<90、-30°≦θs≦30°、又は-10°≦θs≦10°となるように、界磁目標電流If*を設定することが可能である。また、例えば、目標電流設定部120は、回転電機20の発生トルクTrqの時間平均値を0からオフセットさせるべく、第2d軸電流id2と同位相である界磁電流Ifに対して、界磁目標電流If*の位相をシフト量Tsだけシフトさせるように、界磁目標電流If*を設定することが可能である。
【0150】
・第2実施形態のトルク低減制御において、回転電機20の発生トルクTrqの1周期のうち一部期間における発生トルクTrqの極性が負となったり、複数周期のうち、一部周期の一部期間における発生トルクTrqの極性が負となったりしてもよい。この場合でも、各相巻線24U,24V,24Wに流れる交流電流の複数周期における発生トルクTrqの時間平均値が、0からオフセットされることにより、歯打ちが発生したとしても歯打ち音を低減したり、歯打ち回数を低減したりすることができる。
【0151】
・電力変換器30及び各フルブリッジ回路131,133を構成するスイッチは、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。この場合、IGBTにフリーホイールダイオードが逆並列接続されていればよい。
【0152】
・インバータ等の電力変換器に接続される蓄電部としては、蓄電池に限らず、例えば、大容量の電気二重層キャパシタ、又は蓄電池及び電気二重層キャパシタの双方を備えるものであってもよい。
【0153】
・制御装置60が搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。航空機の場合、回転駆動対象は例えばプロペラであり、船舶の場合、回転駆動対象は例えばスクリューである。また、制御装置の搭載先は、移動体に限らず、定置式の装置であってもよい。
【0154】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0155】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
電機子巻線(24U,24V,24W)及び界磁巻線(22)を有する回転電機(20)と、
前記回転電機の駆動電力を蓄電する蓄電部(10)と、
前記電機子巻線に電気的に接続され、前記電機子巻線に流れる電流を制御する第1電力変換器(31)と、
前記界磁巻線に電気的に接続され、前記界磁巻線に流れる電流を制御する第2電力変換器(33)と、
を備えるシステムに適用される電力変換器の制御装置(60)において、
前記電機子巻線及び前記第1電力変換器を介して、前記蓄電部に交流電源(41)が電気的に接続された状態において、前記交流電源から前記蓄電部へと電流が流れるように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う第1制御部と、
前記第1電力変換器のスイッチング制御中に発生する前記回転電機のトルクが、前記界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減されるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う第2制御部と、
を備える、電力変換器の制御装置。
[構成2]
前記回転電機は、d軸インダクタンスがq軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記第2制御部は、前記電機子巻線に流れる電流のd軸成分と逆位相である電流が前記界磁巻線に流れるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う、構成1に記載の電力変換器の制御装置。
[構成3]
前記回転電機は、q軸インダクタンスがd軸インダクタンスよりも大きい特性を有し、
前記第2制御部は、前記電機子巻線に流れる電流のd軸成分と同位相である電流が前記界磁巻線に流れるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う、構成1に記載の電力変換器の制御装置。
[構成4]
前記第1制御部は、前記電機子巻線に流れる電流の位相を、前記交流電源から前記電機子巻線へと入力される入力電圧の位相に揃えるように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う、構成1~3のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
[構成5]
前記第1制御部は、
前記入力電圧の位相情報に基づいて、前記電機子巻線に流れる電流をdq座標系における電流に変換する座標変換部と、
前記dq座標系において、前記電機子巻線に流れる電流の方向を、前記入力電圧から定まる電圧ベクトルの方向に揃えるように、前記電機子巻線の指令電流を設定する指令電流設定部と、
前記電機子巻線に流れる電流を前記指令電流に制御するように、前記第1電力変換器のスイッチング制御を行う電機子電流制御部と、
を有する、構成4に記載の電力変換器の制御装置。
[構成6]
前記システムは、前記回転電機のロータ(21)から回転駆動対象(12)までの動力伝達機構(11)を構成し、前記ロータからの回転動力によって回転するとともに互いに噛み合う少なくとも一対のギア(13,14)を備え、
前記第2制御部は、前記第1電力変換器のスイッチング制御中に発生する前記回転電機のトルクを前記界磁巻線に電流を流さない場合よりも低減させ、かつ前記電機子巻線に流す交流電流の1周期又は複数周期における前記回転電機のトルクの時間平均値を0からオフセットさせるように、前記第2電力変換器のスイッチング制御を行う、構成1~5のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
[構成7]
前記第2制御部は、
界磁目標電流を設定する目標電流設定部と、
前記界磁巻線に流れる界磁電流を、前記界磁目標電流に制御する界磁電流制御部と、
を有し、
前記目標電流設定部は、前記電機子巻線に流れる電流のd軸成分と逆位相又は同位相である前記界磁電流に対して、前記界磁目標電流の位相をシフトさせることにより、前記時間平均値を0からオフセットさせる、構成6に記載の電力変換器の制御装置。
[構成8]
前記電機子巻線は、第1端が前記第1電力変換器に接続され、第2端が互いに中性点で接続された複数相の巻線であり、
前記各電機子巻線の前記中性点側に設けられ、前記各電機子巻線の間を電気的に接続又は遮断する中性点スイッチ(44a,44b)を備える、構成1~7のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
[構成9]
前記電機子巻線及び前記交流電源の間に設けられ、前記電機子巻線に流れる電流の導通及び遮断を切り替える切替スイッチ(42,45)を備える、構成1~8のいずれか1つに記載の電力変換器の制御装置。
【符号の説明】
【0156】
10…蓄電池、20…回転電機、22…界磁巻線、24U,24V,24W…U,V,W相巻線、30…電力変換器、31…インバータ、33…界磁通電回路、41…3相交流電源、60…制御装置。