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特開2025-5070木製部材、木製部材の製造方法及び什器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005070
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】木製部材、木製部材の製造方法及び什器
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
B27N3/02 B
B27N3/02 C
B27N3/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105075
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】512317733
【氏名又は名称】エースジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】判藤 慶太
(72)【発明者】
【氏名】塩寺 亮義
【テーマコード(参考)】
2B260
【Fターム(参考)】
2B260AA11
2B260AA12
2B260BA02
2B260BA03
2B260BA05
2B260BA15
2B260BA18
2B260BA19
2B260CB01
2B260CB04
2B260CC03
2B260CD06
2B260DA01
2B260EA05
2B260EA15
2B260EB01
2B260EB02
2B260EB06
2B260EB19
2B260EB21
2B260EB25
(57)【要約】
【課題】強度を確保した上で、低コストで良好な感触を得ることができる木製部材、木製部材の製造方法及び什器を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る木製部材は、複数のチップ状の木質材と接着剤とを含む混合材によって成形された基材を備えている。基材は、基材の中央部を構成する芯層部と、基材の外表面のうち第1面上に露出するとともに、芯層部を被覆する第1表層部と、外表面のうち第1面と異なる方向を向き、かつ第1面に隣り合って配置される第2面上に露出するとともに、芯層部を被覆する第2表層部と、を備えている。木質材のうち、第1表層部及び第2表層部で用いられる表層用木質材のチップサイズは、芯層部で用いられる芯層用木質材のチップサイズよりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップ状の木質材と接着剤とを含む混合材によって成形された基材を備え、
前記基材は、
前記基材の中央部を構成する芯層部と、
前記基材の外表面のうち第1面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第1表層部と、
前記外表面のうち前記第1面と異なる方向を向き、かつ前記第1面に隣り合って配置される第2面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第2表層部と、を備え、
前記木質材のうち、前記第1表層部及び前記第2表層部で用いられる表層用木質材のチップサイズは、前記芯層部で用いられる芯層用木質材のチップサイズよりも小さい木製部材。
【請求項2】
前記第1表層部は、前記第1面の全体を構成し、
前記第2表層部は、前記第2面の全体を構成している請求項1に記載の木製部材。
【請求項3】
前記芯層部は、前記基材のうち前記第1面と反対側を向く第3面に露出している請求項1又は請求項2に記載の木製部材。
【請求項4】
前記木質材の少なくとも一部に未利用材を含んでいる請求項1又は請求項2に記載の木製部材。
【請求項5】
前記未利用材は、間伐材、倒木又は流木を含んでいる請求項4に記載の木製部材。
【請求項6】
前記木質材は、葉、枝又は根を含んでいる請求項4に記載の木製部材。
【請求項7】
基材のうち中央部を構成する芯層部と、
前記基材の外表面のうち第1面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第1表層部と、
前記外表面のうち前記第1面と異なる方向を向き、かつ前記第1面に隣り合って配置される第2面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第2表層部と、を備えた木製部材の製造方法であって、
前記基材は、前記芯層部、前記第1表層部及び前記第2表層部それぞれを構成する複数のチップ状の木質材と、接着剤と、を含む混合材をまとめて加熱圧縮することにより成形され、
前記第1表層部及び前記第2表層部で用いられる表層用木質材のチップサイズは、前記芯層部で用いられる芯層用木質材のチップサイズよりも小さく設定されている木製部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の木製部材を備えている什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製部材、木製部材の製造方法及び什器に関する。
【背景技術】
【0002】
木製部材として、いわゆるパーティクルボードやストランドボードのように、複数のチップ状の木質材が押し固められることで板状に形成された構成が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-160722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
什器の天板等、利用者が触れる部分に木製部材を利用する場合には、木製部材の感触を良好にする必要がある。一方で、木製部材を什器に搭載するにあたっては、低コスト化を図った上で、木製部材自体の強度や各部材間の連結強度を確保する必要がある。特に、近時では、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)を達成するべく、環境貢献や災害防止等に配慮した製品を提供することが求められている。
【0005】
本発明は、強度を確保した上で、低コストで良好な感触を得ることができる木製部材、木製部材の製造方法及び什器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る木製部材は、複数のチップ状の木質材と接着剤とを含む混合材によって成形された基材を備え、前記基材は、前記基材の中央部を構成する芯層部と、前記基材の外表面のうち第1面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第1表層部と、前記外表面のうち前記第1面と異なる方向を向き、かつ前記第1面に隣り合って配置される第2面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第2表層部と、を備え、前記木質材のうち、前記第1表層部及び前記第2表層部で用いられる表層用木質材のチップサイズは、前記芯層部で用いられる芯層用木質材のチップサイズよりも小さい。
【0007】
本態様によれば、芯層部に対して第1面側及び第2面側が、芯層用木質材のチップサイズよりも小さい表装用木質材により構成された第1表層部及び第2表層部によって覆われる。これにより、芯層部の凹凸を各表層部で吸収することができ、木製部材の外表面を平滑に維持し易い。そのため、什器の天板等、利用者が触れる部分に木製部材を採用した場合であっても、良好な感触を与えることができる。
しかも、芯層用木質材で構成された芯層部を備えることで、表層用木質材のみで木製部材を製造する場合に比べ、木製部材自体の強度を確保し易い。また、芯層部に対して締結部材を締結することで、締結部材が木製部材に引っ掛かり易くなり、木製部材と他部材と間での連結強度を確保し易い。また、芯層用木質材のチップサイズを、表層用木質材のチップサイズよりも大きくすることで、芯層用木質材を得るための破砕工程に掛かる工数を短縮し易い。そのため、低コスト化を図ることができる。
【0008】
(2)上記(1)の態様に係る木製部材において、前記第1表層部は、前記第1面の全体を構成し、前記第2表層部は、前記第2面の全体を構成していることが好ましい。
本態様によれば、木製部材の第1面及び第2面全体に亘って良好な感触を与えることができる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係る木製部材において、前記芯層部は、前記基材のうち前記第1面と反対側を向く第3面に露出していることが好ましい。
本態様によれば、木製部材の第3面に対して締結部材を固定するにあたって、木製部材と他部材との間の連結強度を確保し易い。
【0010】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様に係る木製部材において、前記木質材の少なくとも一部に未利用材を含んでいることが好ましい。
本態様によれば、木製部材の材料として未利用材を用いることで、環境貢献や災害防止等に配慮した製品を低コストで提供することができ、国連が主導する持続可能な開発目標を達成することができる。
【0011】
(5)上記(4)の態様に係る木製部材において、前記未利用材は、間伐材、倒木又は流木を含んでいることが好ましい。
本態様によれば、未利用材が、間伐材、倒木又は流木を含んでいることで、環境貢献や災害防止等に配慮した製品を低コストで提供することができ、国連が主導する持続可能な開発目標を達成することができる。
【0012】
(6)上記(4)又は(5)の態様に係る木製部材において、前記木質材は、葉、枝又は根を含んでいることが好ましい。
本態様によれば、木製部材の材料として葉、枝又は根を用いることで、環境貢献や災害防止等に配慮した製品を低コストで提供することができ、国連が主導する持続可能な開発目標を達成することができる。
【0013】
(7)本発明の一態様に係る木製部材の製造方法は、基材のうち中央部を構成する芯層部と、前記基材の外表面のうち第1面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第1表層部と、前記外表面のうち前記第1面と異なる方向を向き、かつ前記第1面に隣り合って配置される第2面上に露出するとともに、前記芯層部を被覆する第2表層部と、を備えた木製部材の製造方法であって、前記基材は、前記芯層部、前記第1表層部及び前記第2表層部それぞれを構成する複数のチップ状の木質材と、接着剤と、を含む混合材をまとめて加熱圧縮することにより成形され、前記第1表層部及び前記第2表層部で用いられる表層用木質材のチップサイズは、前記芯層部で用いられる芯層用木質材のチップサイズよりも小さく設定されている。
本態様によれば、成形工程において各層の木質材を一括に接合できるので、製造工程の削減や低コスト化を図ることができる。
【0014】
(8)本発明の一態様に係る什器は、上記(1)から(7)の何れかの態様に係る木製部材を備えている。
本態様によれば、上記態様に係る木製部材を備えているため、環境貢献や災害防止等に配慮した低コストな什器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記各態様によれば、強度を確保した上で、低コストで良好な感触を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る天板付什器の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る天板の斜視断面図である。
図3】第1実施形態に係る天板の断面図である。
図4】第1実施形態に係る天板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る成形工程を説明するための工程図である。
図6】第2実施形態に係る天板の断面図である。
図7】第3実施形態に係る天板の断面図である。
図8】変形例に係る天板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。また、本実施形態において、「向かい合う」とは、2つの面それぞれの直交方向(法線方向)が互いに一致している場合に限らず、直交方向同士が交差している場合も含んでいる。
【0018】
(第1実施形態)
[天板昇降式什器1]
図1は、天板付什器1の斜視図である。
図1に示すように、天板付什器1は、例えばオフィスや公共施設、住宅等に設置されるテーブル装置である。天板付什器1は、支持構造体11と、天板(木製部材、基材)12と、を備えている。以下の説明では、床面Fに直交する方向を上下方向とし、上下方向に直交する2方向を左右方向及び前後方向として説明する。
【0019】
<支持構造体11>
支持構造体11は、床面F上に設置されて天板12を下方から支持する。支持構造体11は、支持フレーム21と、複数の脚体22と、を備えている。
支持フレーム21は、平面視で例えば矩形枠状に形成されている。
各脚体22は、支持フレーム21における各角部に対応して設けられている。各脚体22は、アジャスタ等を介して床面Fに接地している。なお、脚体22の位置や本数等は適宜変更が可能である。
【0020】
<天板12>
図2は、天板12の斜視断面図である。図3は、天板12の断面図である。
図2図3に示すように、天板12は、例えば平面視矩形状の板状部材である。天板12は、締結部材等を介して支持フレーム21に固定されている。なお、天板12は、矩形状に限らず、円形状や矩形状以外の多角形状であってもよい。
【0021】
天板12は、いわゆるパーティクルボードやストランドボード等のように、チップ状の木質材からなる複数のチップ部と接着剤との混合材が押し固められて成形されている。木質材とは、木質原料として、バージン木質材料(大本系や草本系等の植物由来の木質材料(樹幹等))や、加工が施された木質材料(集成材や合板、合成材等)であってもよく、枝、葉、根等であってもよい。また、木質材としては、主伐材であってもよく、未利用材やリサイクル材等であってもよい。主伐材とは、木質材製品としての利用を目的として収集される材料を指す。未利用材とは、木質材製品としての利用以外に収集される材料を指し、例えば間伐材や倒木、流木等を挙げることができる。間伐材とは、森林の成長過程で密集化する立木を間引く間伐の過程で発生する木質材のことである。倒木とは、山間部で土砂崩れ等があったときになぎ倒された木質材のことである。流木とは、倒木のうち、川やダム等に流れ着いたものである。リサイクル材とは、木質材のうち、工場や建築現場等で発生する端材、解体作業時に発生する廃材等である。
【0022】
木質材の樹種は、特に限定されることはなく、針葉樹(ヒノキ科(スギやヒノキ等)やイチイ科(イチイやイヌガヤ等)等)及び広葉樹(マツ科(アカマツやクロマツ等)やブナ科(ブナやクリ等))の何れであってもよい。この場合、一つの天板12に対し、複数の樹種の木質材が含まれていてもよい。上述した条件の下、本実施形態の天板12に用いられる木質材としては、針葉樹又は広葉樹の未利用材のうち、バージン木質材料、枝、葉、樹皮又は根を少なくとも一部に含んでいることが好ましい。なお、本実施形態において、チップ状とは、木質材が破砕又は粉砕された状態を意味し、小片状や粉状、粒状、繊維状を含んでいる。
【0023】
接着剤には、熱硬化性の接着剤が用いられる。本実施形態では、例えばイソシアネート系接着剤や尿素樹脂接着剤、フェノール樹脂系接着剤等を単独又は2種以上を混合して用いることができる。特に、上述した接着剤のうち、イソシアネート系接着剤は、他の接着剤に比べて耐水性や耐熱性に優れている点で好ましい。
【0024】
天板12は、芯層部41と、上面表層部(第1表層部)42と、外周表層部(第2表層部)43と、を備えている。天板12は、芯層部41、上面表層部42及び外周表層部43が一体に積層されることで構成されている。
【0025】
芯層部41は、断面視において天板12の少なくとも中央部を構成する層である。芯層部41は、天板12の厚さ方向において、天板12の下面から中央部に至る部分を構成している。一方、芯層部41は、平面視において、天板12の外周部分を除く領域一体を構成している。すなわち、芯層部41は、天板12の下面(第3面)のうち外周部分を除く領域で外部に露出している。なお、芯層部41には、支持フレーム21と天板12とを固定する締結部材等が固定される。この場合、芯層部41に埋め込まれたナット(締結部材)に対してボルトが締結される構成でもよく、芯層部41に対して直接ビス(締結部材)等が締め付けられる構成であってもよい。
【0026】
芯層部41を構成するチップ部(芯層用チップ部(芯層用木質材))のチップサイズは、5mm以上10mm以下の小片状に形成されている。なお、本実施形態において、チップサイズとは、対象となるチップ部が所定のメッシュサイズ(目開き)で形成されたスクリーン(篩)を通過するか否かで判断される。例えば、チップサイズが5mm以上10mm以下とは、メッシュサイズが10mm×10mmのスクリーンを通過し、メッシュサイズが5mm×5mmスクリーンを通過しない大きさである。
【0027】
上面表層部42は、天板12の上面(第1面)に露出する層である。上面表層部42は、芯層部41の上方に積層され、芯層部41の上面全体を覆っている。上面表層部42を構成するチップ部(上面表層用チップ部(表層用木質材))のチップサイズは、1mm以上3mm以下の粉状に形成されている。すなわち、上面表層用チップ部は、チップ部のうち、メッシュサイズが3mm×3mmのスクリーンを通過し、メッシュサイズが1mm×1mmスクリーンを通過しないものが選定される。なお、上面表層用チップ部及び外周表層用チップ部それぞれで、チップ部の配合(樹種や部位等)を変更してもよい。
【0028】
外周表層部43は、天板12の外周面(第2面)に露出する層である。外周表層部43は、芯層部41の側面に積層され、芯層部41の周囲を全周に亘って取り囲んでいる。したがって、上面表層部42と外周表層部43とは、互いに異なる(交差する)方向を向いた状態で連なっている。上面表層部42と外周表層部43との境界部分は、天板12における表面側の外周縁を構成している。
一方、外周表層部43の下端面は、芯層部41の下面に対して面一に配置されている。外周表層部43の下端面は、天板12の下面における外周部分を構成している。図示の例において、天板12の上下面における外周縁は、面取りが施されている。
【0029】
外周表層部43を構成するチップ部(外周表層用チップ部)のチップサイズは、上面表層用チップ部のチップサイズと同等に設定されている。但し、上面表層用チップ部と外周表層用チップ部とでチップサイズを異ならせてもよい。
【0030】
天板12の厚さ方向において、芯層部41の寸法D1は、上面表層部42の寸法D2に比べて大きい。この場合、天板12全体の厚さ寸法D0に対する上面表層部42の寸法D2は、20%以上30%以下に設定されていることが好ましい。天板12全体の厚さ寸法D0に対して上面表層部42の寸法D2を20%以上に設定することで、上面表層部42によって芯層部41の凹凸を吸収し易い。一方、天板12全体の厚さ寸法D0に対して上面表層部42の寸法D2を30%以下に設定することで、芯層部41の寸法D1を確保して、天板12としての強度を確保し易い。また、外周表層部43の幅W(天板12の上面に沿う方向における寸法)は、上面表層部42の寸法D2以上であることが好ましい。但し、外周表層部43の幅Wは、芯層部41の凹凸を吸収することができれば、上面表層部42の寸法D2未満であってもよい。
【0031】
<天板12の製造方法>
次に、上述した天板12の製造方法について説明する。図4は、天板12の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態の天板12は、破砕工程S1、分類工程S2、乾燥工程S3、接着剤混合工程S4、成形工程S5、冷却工程S6等を経て製造される。
【0032】
破砕工程S1では、収集した木質材をチップ状に粉砕する。破砕工程S1では、収集した木質材について、木質材の樹種や部位等に限らず、一括して粉砕してもよく、樹種や部位毎に粉砕してもよい。これにより、複数のチップ部が形成される。また、本実施形態では、収集した木質材を粉砕する方法について説明するが、これに限られない。天板12に使用する木質材は、予め粉砕されたものを収集してもよい。
【0033】
破砕工程S1の後、分類工程S2において、粉砕された木質材(チップ部)をチップサイズ毎に分類する。具体的には、芯層用チップ部と、表層用チップ部と、に分類する。
乾燥工程S3では、チップ部を含水率が例えば6%以上15%以下になるまで乾燥させる。
【0034】
接着剤混合工程S4では、チップ部と接着剤とを混ぜ合わせる。具体的には、各層に対応したチップ部を、複数の容器に別々に投入した後、チップ部を撹拌しながら各容器内に接着剤を投入する。これにより、チップ部と接着剤との混合材が各層ごとに生成される。
【0035】
図5は、成形工程S5を説明するための工程図である。
図5に示すように、成形工程S5では、接着剤混合工程S4で生成した混合材を成形型100内にセットし、加熱圧縮(熱プレス)することで、天板12を成形する。本実施形態の成形型100は、第1型101と、第1型101に対して上下方向に移動可能な第2型102と、を備えている。
第1型101は、固定型である。第1型101には、天板12の平面視外形に倣った凹部101aが形成されている。第1型101の側壁101bには、第1解放孔105a及び第2解放孔105bが形成されている。各解放孔105a,105bは、凹部101aの内周面上で開口して、凹部101aの内外を連通させる。第1解放孔105aは、凹部101aの内周面において、天板12のうち厚さ方向の中心よりも上方に位置する部分に対応して開口している。第2解放孔105bは、凹部101aの内周面において、天板12の厚さ方向の中心付近で開口している。本実施形態において、第1解放孔105a及び第2解放孔105bは、凹部101aの内周面全周を互いに間隔をあけた状態で交互に(千鳥状に)形成されている。
【0036】
第2型102は、可動型である。第2型102は、凹部101aの上端開口部を通じて凹部101a内に進退可能に構成されている。凹部101aの内面と第2型102の下面とで囲まれた空間は、天板12の外形を成形するキャビティCを構成している。
【0037】
上述した成形型100を用いて天板12を成形するには、まず成形型100を加熱する。本実施形態において、接着剤にイソシアネート系接着剤を用いた場合、成形型100の温度は例えば140℃±20℃前後に設定することが好ましい。このような温度に設定することで、外気温に左右されず、接着剤を確実に硬化させることができるとともに、成形時にチップ部の焦げ等が発生することを抑制できる。
【0038】
成形型100の加熱後、天板12の材料を凹部101a内に投入する。具体的には、芯層部41となる混合材、各表層部42となる混合材を投入する。その後、第2型102を凹部101a内に進入させ、キャビティC内において各層の混合材をまとめて加熱圧縮する。本実施形態において、キャビティC内に作用させる最大圧力は、凹部101a内への材料の投入量に応じて調整される。すなわち、凹部101a内への材料の投入量を少なくすることで、キャビティC内に作用させる最大圧力を抑えた上で、天板12の軽量化を図ることができる。一方、凹部101a内への材料の投入量を多くすることで、キャビティC内に作用させる最大圧力を高くする必要があるものの、天板12の強度を確保し易い。なお、本実施形態では、各層の混合材をそれぞれ未加圧の状態で投入する構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、芯層部41を構成する混合材を仮加圧(一次加圧)した後、上面表層部42や外周表層部43を構成する混合材を投入し、各層の混合材を合わせて本加圧(二次加圧)を行ってもよい。また、芯層部41、上面表層部42及び外周表層部43それぞれの混合材の層を、別々に仮加圧した後、成形型100内でまとめて本加圧してもよい。
【0039】
キャビティC内を加熱圧縮することで、キャビティC内に存在する空気が解放孔105a,105bを通じて排出されながら、混合材中においてチップ部同士が接着剤によって接合される。これにより、天板12が成形される。
天板12の硬化後、成形型100を型開きし、天板12を取り出す。その後、冷却工程S6を経ることで、上述した天板12が完成する。
【0040】
このように、本実施形態の天板12は、芯層部41と、天板12の上面に露出するとともに、芯層部41を被覆する上面表層部42と、天板12の外周面に露出するとともに、芯層部41を被覆する外周表層部43と、を備えている。その上で、上面表層部42及び外周表層部43で用いられる表層用チップ部のチップサイズは、芯層部41で用いられる芯層用チップ部のチップサイズよりも小さい構成とした。
この構成によれば、芯層部41に対して上方及び側方が、芯層用チップ部のチップサイズよりも小さい表装用チップ部により構成された上面表層部42及び外周表層部43によって覆われる。これにより、芯層部41の凹凸を上面表層部42及び外周表層部43で吸収することができ、天板12の外表面を平滑に維持し易い。そのため、天板12等、利用者が触れる部分に木製部材を採用した場合であっても、良好な感触を与えることができる。
しかも、芯層用チップ部で構成された芯層部41を備えることで、表層用チップ部のみで天板12を製造する場合に比べ、天板12自体の強度を確保し易い。また、芯層部41に対して締結部材を締結することで、締結部材が天板12に引っ掛かり易くなり、天板12と他部材と間での連結強度を確保し易い。また、芯層用チップ部のチップサイズを、表層用チップ部のチップサイズよりも大きくすることで、芯層用チップ部を得るための破砕工程に掛かる工数を短縮し易い。そのため、低コスト化を図ることができる。
【0041】
本実施形態の天板12は、接着剤と、芯層部41、上面表層部42及び外周表層部43それぞれを構成する複数のチップ状の木質材と、を含む混合材をまとめて加熱圧縮することにより成形される構成とした。
この構成によれば、成形工程において各層のチップ部を一括に接合できるので、製造工程の削減や低コスト化を図ることができる。
【0042】
本実施形態の天板12において、上面表層部42は天板12の上面全体を構成し、外周表層部43は天板12の外周面全体を構成している。
この構成によれば、天板12の上面及び外周面全体に亘って良好な感触を与えることができる。
【0043】
本実施形態の天板12において、芯層部41が天板12の下面(第3面)に露出している構成とした。
この構成によれば、天板12の下面に対して締結部材を固定するにあたって、天板12と他部材との間の連結強度を確保し易い。
【0044】
本実施形態の天板12において、木質材の少なくとも一部に間伐材や倒木、流木等の未利用材を含んでいる構成とした。
この構成によれば、天板12の材料として未利用材を用いることで、環境貢献や災害防止等に配慮した製品を低コストで提供することができ、国連が主導する持続可能な開発目標を達成することができる。
【0045】
本実施形態の天板12において、木質材が、葉、枝又は根を含んでいる構成とした。
この構成によれば、天板12の材料として葉、枝又は根を用いることで、環境貢献や災害防止等に配慮した製品を低コストで提供することができ、国連が主導する持続可能な開発目標を達成することができる。
【0046】
本実施形態の天板付什器1では、上述した天板12を備えているため、環境貢献や災害防止等に配慮した低コストな天板付什器1を提供することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の天板12を示す断面図である。第2実施形態では、天板12の上面に化粧材51を備えている点で、第1実施形態と相違している。
図6に示す天板12は、基材50と、化粧材51と、を備えている。
基材50は、天板12の外形を構成するものであって、板状に形成されている。本実施形態の基材50は、第1実施形態における芯層部41、上面表層部42及び外周表層部43を備えている。
【0048】
化粧材51は、基材50に上方から重ね合わされている。化粧材51は、例えばメラミン等により形成されたシート状のものである。但し、化粧材51にメラミン等に限らず、金属や無垢板や集成材等、基材50と異なる質感を得られるものであればよい。
【0049】
化粧材51の平面視外形は、基材50(上面表層部42)の平面視外形よりも一回り小さい。化粧材51は、表面が露出した状態で、上面表層部42内に埋め込まれている。したがって、化粧材51は、上面表層部42の外周部分とともに、天板12の上面を構成している。なお、本実施形態では、化粧材51の外周端面が上面表層部42によって覆われる構成について説明したが、この構成に限られない。化粧材51の外周端面が天板12の外周面に露呈していてもよい。また、天板12の外周面が別途化粧材により覆われていてもよい。
【0050】
化粧材51は、基材50に含まれる接着剤によって基材50に一体に接合されている。具体的に、化粧材51は、上述した成形工程S5において、各層の混合材を凹部101a内に投入した後、混合材に対して化粧材51を重ね合わせる。その後、型締めすることで、キャビティC内において基材50の材料と化粧材51とをまとめて加熱圧縮する。混合材に含まれる接着剤が化粧材51に付着することで、化粧材51が混合材に一体に接合される。これにより、基材50と化粧材51とが一体に接合された天板12が成形される。
【0051】
このように、天板12の上面が化粧材51により形成されることで、天板12の上面において、より良好な感触を得ることができる。
【0052】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る天板12の断面図である。本実施形態は、芯層部41の全周が表層用チップ部により形成された表層部(上面表層部42、外周表層部43及び下面表層部44)に覆われている点で、上述した実施形態と相違している。
図7に示す天板12は、芯層部41、上面表層部42、外周表層部43及び下面表層部(第3表層部)44を備えている。
芯層部41は、天板12における厚さ方向の中央部を構成している。芯層部41は、平面視において、天板12の外周部分を除く領域一体を構成している。
【0053】
下面表層部44は、天板12の下面(裏面)に露出する層である。下面表層部44は、芯層部41を下方に積層され、芯層部41の下面全体を覆っている。下面表層部44を構成するチップ部(下面表層用チップ部)のチップサイズは、上面表層用チップ部や外周表層用チップ部のチップサイズと同等に設定されている。但し、下面表層用チップ部のチップサイズは、上面表層用チップ部や外周表層用チップ部のチップサイズと異ならせてもよい。
【0054】
図示の例において、天板12は、芯層部41の寸法D1は、上面表層部42の寸法D2及び下面表層部44の寸法D3それぞれよりも大きくなっている。また、上面表層部42の寸法D2及び下面表層部44の寸法D3は、それぞれ同等であることが好ましい。この場合、天板12全体の厚さ寸法D0に対する上面表層部42の寸法D2及び下面表層部44の寸法D3の合計は、40%以上50%以下に設定されていることが好ましい。天板12全体の厚さ寸法D0に対して寸法D2及び寸法D3の合計を40%以上に設定することで、上面表層部42及び下面表層部44によって芯層部41の凹凸を吸収し易い。一方、天板12全体の厚さ寸法D0に対して寸法D2及び寸法D3の合計を50%以下に設定することで、芯層部41の寸法D1を確保して、天板12としての強度を確保し易い。なお、寸法D2及び寸法D3を同等に設定することで、天板12の上面側及び下面側での膨張や収縮の程度を同等にすることができ、天板12の反りを抑制し易い。但し、寸法D2及び寸法D3は、互いに異ならせてもよい。
【0055】
本実施形態では、天板12の中央部において芯層部41を残しつつ、外周面全体が表層用チップ部で構成されるので、天板12の強度を確保した上で、良好な感触を与えることができる。
【0056】
なお、第2実施形態では、上面表層部42上に化粧材51が配置された構成について説明したが、この構成に限られない。例えば図8に示す天板12のように、下面表層部44の下面に化粧材52を配置してもよい。この場合、基材50(芯層部41、各表層部42~44)の上下面が化粧材51,52によって覆われるため、温度条件や湿度条件を天板12の上下面で同等に維持することができる。これにより、天板12の反りや歪み等を抑制することができる。
【0057】
(その他の変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、本発明に係る木製部材をテーブル装置の天板12に採用した場合について説明したが、この構成に限られない。木製部材は、テーブル装置以外の天板付什器(例えば、棚等)や、天板付什器以外の什器(例えば、仕切りや椅子等)に採用してもよく、建材(例えば、壁材や床材)等に採用してもよい。
上述した実施形態では、木製部材の一例として板状部材を例にして説明したが、板状部材以外の木製部材に本発明に係る構成を採用してもよい。この場合、本発明に係る木製部材を、脚や杆材等、柱状の部材に採用してもよい。
上述した実施形態では、表層部が天板12の一面全体を構成する場合について説明したが、この構成に限られない。表層部は、天板12の一面のうち少なくとも一部に露出していればよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
12:天板(木製部材、基材)
41:芯層部
42:上面表層部(第1表層部)
43:外周表層部(第2表層部)
50:基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8