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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005084
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】燃料噴射式エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/14 20060101AFI20250108BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F02M61/14 320A
F02M55/02 350H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105095
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 昭彦
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AC09
3G066AD07
3G066BA65
(57)【要約】
【課題】シリンダヘッドカバー内での部品配置の自由度が高く、かつ、燃料インジェクタ2の燃料噴射精度を高く維持できる、燃料噴射式エンジンを提供する。
【解決手段】燃料インジェクタ2は、その軸長方向の中間に位置する中間胴部2aに受圧部2aaを備え、クランプ5は主クランプ6と副クランプ7を備え、主クランプ6はロッカアームブラケット3の上部に配置されると共にスタッドボルト4に外嵌され、副クランプ7は燃料インジェクタ2の中間胴部2aに外嵌され、スタッドボルト4に締結したナット4aの締付力により、主クランプ6がその下側の副クランプ7を介して燃料インジェクタ2の受圧部2aaを押圧するように構成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド(1)のインジェクタ挿入孔(1a)に挿入された燃料インジェクタ(2)と、シリンダヘッドカバー(1b)内に配置されたロッカアームブラケット(3)と、ロッカアームブラケット(3)をシリンダヘッド(1)に固定するスタッドボルト(4)と、ロッカアームブラケット(3)の上部に配置されたクランプ(5)を備え、クランプ(5)の押圧力により燃料インジェクタ(2)がインジェクタ挿入孔(1a)内で押圧固定されるように構成された、燃料噴射式エンジンにおいて、
燃料インジェクタ(2)は、その軸長方向の中間に位置する中間胴部(2a)に受圧部(2aa)を備え、
クランプ(5)は主クランプ(6)と副クランプ(7)を備え、副クランプ(7)は燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)に外嵌され、主クランプ(6)はロッカアームブラケット(3)の上部に配置されると共にスタッドボルト(4)に外嵌され、
スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力により、主クランプ(6)がその下側の副クランプ(7)を介して燃料インジェクタ(2)の受圧部(2aa)を押圧するように構成されている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載された燃料噴射式エンジンにおいて、
燃料インジェクタ(2)は、副クランプ(7)よりも上側に、径方向外側に張り出した大径部(2b)を備え、
主クランプ(6)は二股状に分岐した一対の押圧部(6a)(6a)を備え、一対の押圧部(6a)(6a)の離間寸法(6aD)は、燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)の直径寸法(2bD)よりも大きい寸法に形成され、燃料インジェクタ(2)のクランプ時、スタッドボルト(4)に外嵌した主クランプ(6)をスタッドボルト(4)に沿って下降(D)させた場合に、主クランプ(6)の一対の押圧部(6a)(6a)が燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)の両脇を通過して、副クランプ(7)の一対の受圧部(7a)(7a)に当接されるように構成されている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【請求項3】
請求項2に記載された燃料噴射式エンジンにおいて、
副クランプ(7)の一対の受圧部(7a)(7a)は、燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)に外嵌されたコの字形の外嵌部(7b)の両脇から外向きに突出し、燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)より径方向外寄りに配置されている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【請求項4】
請求項3に記載された燃料噴射式エンジンにおいて、
燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)は、その両脇に中心部側に向けて凹入された一対の平坦面(2c)(2c)を備え、この一対の平坦面(2c)(2c)で、中間胴部(2a)に外嵌された副クランプ(7)が廻り止めされ、この一対の平坦面(2c)(2c)の凹入でその下縁部に形成される一対の段差部(2d)(2d)が燃料インジェクタ(2)の一対の受圧部(2aa)(2aa)とされている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された燃料噴射式エンジンにおいて、
副クランプ(7)の外嵌部(7b)から下向きに突出した位置決め突起(7c)が燃料インジェクタ(2)の外周面とロッカアームブラケット(3)の端面に挟み込まれて、副クランプ(7)が位置決めされている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【請求項6】
請求項1に記載された燃料噴射式エンジンにおいて、
主クランプ(6)は、支点部(6b)と力点部(6c)と作用点部(6d)を備え、
支点部(6b)は、燃料インジェクタ(2)から遠ざかる主クランプ(6)の第一端部側に設けられ、力点部(6c)は、スタッドボルト(4)を内嵌させた主クランプ(6)の途中部に設けられ、作用点部(6d)は、燃料インジェクタ(2)寄りの主クランプ(6)の第二端部側に設けられている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【請求項7】
請求項6に記載された燃料噴射式エンジンにおいて、
支点部(6b)は第一部分球面部(6ba)とこの第一部分球面部(6ba)と嵌合する球面受穴(6bb)を備え、第一部分球面部(6ba)はロッカアームブラケット(3)に固定され、球面受穴(6bb)は主クランプ(6)の底面から上向きに凹入され、
力点部(6c)は、第二部分球面部(6ca)とこの第二部分球面部(6ca)と嵌合する球面受孔(6cb)を備え、第二部分球面部(6ca)はスタッドボルト(4)に外嵌されたワッシャ(4b)の下面に形成され、球面受孔(6cb)はスタッドボルト(4)に外嵌された主クランプ(6)の上面に形成され、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力で、ワッシャ(4b)の第二部分球面部(6ca)が主クランプ(6)の球面受孔(6cb)に押圧嵌合され、
副クランプ(7)の受圧部(7a)の平坦な受圧面(7aa)に圧接される主クランプ(6)の力点部(6c)にある押圧部(6a)の押圧面(6aa)は、下凸の凸曲面で構成されている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射式エンジンに関し、詳しくは、狭いシリンダヘッドカバー内での部品配置の自由度が高く、かつ、燃料インジェクタの燃料噴射精度を高く維持できる、燃料噴射式エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者は、本発明に先立ち、図1図2の燃料噴射式エンジンを提案した。
図1または図2に示すように、この先提案例1,2の燃料噴射式エンジンは、シリンダヘッド(1)のインジェクタ挿入孔(1a)に挿入された燃料インジェクタ(2)と、図示しないシリンダヘッドカバー内に配置されたロッカアームブラケット(3)と、ロッカアームブラケット(3)をシリンダヘッド(1)に固定するスタッドボルト(4)と、ロッカアームブラケット(3)の上側に配置されたクランプ(5)を備え、クランプ(5)の押圧力により燃料インジェクタ(2)がインジェクタ挿入孔(1a)内で押圧固定されるように構成されている。
この種のエンジンの従来技術としては、特許文献1のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-110231号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点1》 狭いシリンダヘッドカバー内での部品配置の自由度が低くなる。
図1に示す先提案例1では、燃料インジェクタ(2)をインジェクタ挿入孔(1a)に挿入し、燃料インジェクタ(2)の上部にある大径部(2b)よりも下側の小径の中間胴部(2a)に、その径方向に沿う横スライド(S)で二股構造のクランプ(5)を嵌合させた後、クランプ(5)を頭付きボルト(20)の締付力で押圧し、中間胴部(2a)の受圧部(2aa)を押圧している。
このため、この頭付きボルト(20)のボルト取付部(20a)がロッカアームブラケット(3)から燃料インジェクタ(2)側に膨出し、このボルト取付部(20a)が邪魔になり、図示しない狭いシリンダヘッドカバー内での燃料インジェクタ(2)やその周辺の図示しない吸排気バルブ、バルブスプリング、バルブリテーナ等の部品配置の自由度が低くなる。
特許文献1の発明にも、同じ問題がある。
【0005】
《問題点2》 燃料インジェクタ(2)の燃料噴射精度が低下することがある。
図2に示す先提案例2では、燃料インジェクタ(2)をインジェクタ挿入孔(1a)に挿入し、スタッドボルト(4)に外嵌させたクランプ(5)をスタッドボルト(4)に沿って下降(D)させ、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力で、クランプ(5)に押圧力を付与するが、二股構造のクランプ(5)の下降(D)時に、クランプ(5)が中間胴部(2a)の上側にある燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)に当たり、下降(D)が制限されるため、大径部(2b)に受圧部(2aa)を形成し、これをクランプ(5)で押圧している。
このため、燃料インジェクタ(2)が高い位置で押圧され、座屈により燃料インジェクタ(2)内の精密部品が変形し、燃料インジェクタ(2)の燃料噴射精度が低下することがある。
【0006】
本発明の課題は、狭いシリンダヘッドカバー内での部品配置の自由度が高く、かつ、燃料インジェクタの燃料噴射精度を高いまま維持できる、燃料噴射式エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
図3に例示するように、シリンダヘッド(1)のインジェクタ挿入孔(1a)に挿入された燃料インジェクタ(2)と、図4(B)に例示するシリンダヘッドカバー(1b)内に配置されたロッカアームブラケット(3)と、図3に例示するように、ロッカアームブラケット(3)をシリンダヘッド(1)に固定するスタッドボルト(4)と、ロッカアームブラケット(3)の上側に配置されたクランプ(5)を備え、クランプ(5)の押圧力により燃料インジェクタ(2)がインジェクタ挿入孔(1a)内で押圧固定されるように構成された、燃料噴射式エンジンにおいて、
図3に例示するように、燃料インジェクタ(2)は、その軸長方向の中間に位置する中間胴部(2a)に受圧部(2aa)を備え、
図3に例示するように、クランプ(5)は主クランプ(6)と副クランプ(7)を備え、副クランプ(7)は燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)に外嵌され、主クランプ(6)はロッカアームブラケット(3)の上部に配置されると共にスタッドボルト(4)に外嵌され、
図3に例示するように、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力により、主クランプ(6)がその下側の副クランプ(7)を介して燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)の受圧部(2aa)を押圧するように構成されている、ことを特徴とする燃料噴射式エンジン。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果1》 狭いシリンダヘッドカバー(1b)内での部品配置の自由度が高くなる。
図3に例示するように、この発明では、ロッカアームブラケット(3)を固定するスタッドボルト(4)を主クランプ(6)の取付ボルトとして兼用しているため、先提案例1や特許文献1の発明とは異なり、図1に例示する頭付きボルト(20)のボルト取付部(20a)をロッカアームブラケット(3)から燃料インジェクタ(2)側に膨出させる必要がなくなり、図4(B)に例示する狭いシリンダヘッドカバー(1b)内での燃料インジェクタ(2)やその周辺の吸排気バルブ、バルブスプリング、バルブリテーナ等の部品配置の自由度が高くなる。
【0009】
《効果2》 燃料インジェクタ(2)の燃料噴射精度を高いまま維持できる。
図3に例示するように、この発明では、副クランプ(7)は燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)に外嵌され、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力により、主クランプ(6)がその下側の副クランプ(7)を介して燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)の受圧部(2aa)を押圧するため、図2に例示する先提案例2とは異なり、燃料インジェクタ(2)は低い位置で押圧され、座屈による燃料インジェクタ(2)内の精密部品の変形が起こり難く、燃料インジェクタ(2)の燃料噴射精度を高いまま維持できる。
【0010】
《効果3》 クランプ(5)を安価に修復できる。
図3に例示するように、この発明では、クランプ(5)が主クランプ(6)と副クランプ(7)で構成されているため、副クランプ(7)が早期に摩耗した場合には、副クランプ(7)のみを交換し、クランプ(5)を安価に修復できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】先提案例1の要部斜視図である。
図2】先提案例2の要部斜視図である。
図3】本発明の実施形態の要部斜視図である。
図4】本発明の実施形態の要部を説明する図で、図4(A)は平面図、図4(B)は正面図である。
図5】本発明の実施形態で用いる主クランプを説明する図で、図5(A)は平面図、図5(B)は正面図、図5(C)は図5(A)のC方向矢視図である。
図6】本発明の実施形態で用いる副クランプを説明する図で、図6(A)は平面図、図6(B)は正面図、図6(C)は図6(A)のC方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2は先提案例、図3から図5は本発明の実施形態に係る燃料噴射式エンジンを説明する図で、この実施形態では、コモンレール式で、多弁式の立形直列多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0013】
このエンジンは、図示しないクランク軸の架設方向に複数の気筒が並んで配置されている。
この発明の先提案例や実施形態では、クランク軸の架設方向を前後方向、前後方向のうちの一方側、例えば、エンジン冷却ファンやラジエータを配置する側を前、他方側、例えば、フライホイールを配置する側を後、エンジンの幅方向を左右方向、エンジンの位置で前方を向いた観察者の左手側を左、右手側を右、エンジンの高さ方向を上下方向として図示し、説明する。
【0014】
このエンジンは、吸気装置と、燃料供給装置と、排気装置を備えている。
図示しないが、吸排気装置は、吸排気ポートと、吸排気弁と、動弁装置を備えている。
図示しない吸排気ポートは、図4(B)に示すシリンダヘッド(1)内に形成され、吸排気弁は、各気筒に吸気弁2個と排気弁2個を備えた4弁式のもので、燃料インジェクタ(2)の周囲に配置されている。
図示しない動弁装置は、動弁カム軸と、プッシュロッドと、ロッカアームを備えた頭上弁式のものである。
図示しないロッカアームは、図4(A)に示すロッカアームブラケット(3)に支持されたロッカアーム枢軸(3a)に枢支されている。
【0015】
燃料供給装置は、図示しないエンジンECU(エンジン電子制御装置)と、燃料サプライポンプと、コモンレールと、燃料供給管を備えている。
燃料供給装置は、各気筒に設けられた図3に示す燃料インジェクタ(2)を備え、コモンレールに蓄圧された液体燃料(軽油)が燃料供給管から燃料インジェクタ(2)に圧送され、電子制御により、燃料インジェクタ(2)の燃料噴射弁が所定のタイミングで所定時間開弁され、燃料インジェクタ(2)から所定のタイミングで各気筒内に所定量の燃料噴射が行われる。
【0016】
図4(B)に示すように、ロッカアームブラケット(3)は、シリンダヘッド(1)の上面に載置固定され、シリンダヘッド(1)の上面に載置固定されたシリンダヘッドカバー(1b)内に収容されている。
図4(B)に示すように、このエンジンでは、シリンダヘッド(1)にスタッドボルト(4)がネジ込まれて固定され、スタッドボルト(4)がシリンダヘッド(1)の上面から起立し、このスタッドボルト(4)にロッカアームブラケット(3)が外嵌され、スタッドボルト(4)の途中部にネジ嵌合されたブラケット固定用ナット(4c)の締付力でロッカアームブラケット(3)がシリンダヘッド(1)の上面に押圧固定されている。
【0017】
図4(B)に示すように、燃料インジェクタ(2)は、その先端寄り部分かシリンダヘッド(1)のインジェクタ挿入孔(1a)に挿入され、燃料インジェクタ(2)の先端寄り部分に設けられた下向きのインジェクタ押圧面(2e)とインジェクタ挿入孔(1a)の奥端面(1aa)の間に銅製の円環状パッキン(1c)が配置され、燃料インジェクタ(2)にかかる押圧力で、インジェクタ押圧面(2e)が円環状パッキン(1c)を介してインジェクタ挿入孔(1a)の奥端面(1aa)に押圧固定され、インジェクタ押圧面(2e)とインジェクタ挿入孔(1a)の奥端面(1aa)の相互間は、この相互間に挟圧された円環状パッキン(1c)で密封されている。
図4(B)に示すように、インジェクタ挿入孔(1a)の内周面と燃料インジェクタ(2)の外周面の相互間は、上下一対のOリング(1d)(1d)で密封されている。
【0018】
図3に示すように、このエンジンでは、シリンダヘッド(1)のインジェクタ挿入孔(1a)に挿入された燃料インジェクタ(2)と、図4(B)に示すシリンダヘッドカバー(1b)内に配置されたロッカアームブラケット(3)と、図3に示すように、ロッカアームブラケット(3)をシリンダヘッド(1)に固定するスタッドボルト(4)と、ロッカアームブラケット(3)の上側に配置されたクランプ(5)を備え、クランプ(5)の押圧力により燃料インジェクタ(2)がインジェクタ挿入孔(1a)内で押圧固定されるように構成されている。
【0019】
図3に示すように、燃料インジェクタ(2)は、その軸長方向の中間に位置する中間胴部(2a)に受圧部(2aa)を備えている。
図3に示すように、クランプ(5)は主クランプ(6)と副クランプ(7)を備え、副クランプ(7)は燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)に外嵌され、主クランプ(6)はロッカアームブラケット(3)の上側に配置されると共にスタッドボルト(4)に外嵌されている。
図3に示すように、このエンジンでは、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力により、主クランプ(6)がその下側の副クランプ(7)を介して燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)の受圧部(2aa)を押圧するように構成されている。
【0020】
図3に示すように、このエンジンでは、ロッカアームブラケット(3)を固定するスタッドボルト(4)を主クランプ(6)の取付ボルトとして兼用しているため、先提案例1や特許文献1の発明とは異なり、図1に示すボルト取付部(20a)をロッカアームブラケット(3)から燃料インジェクタ(2)側に膨出させる必要がなくなり、図4(B)に示す狭いシリンダヘッドカバー(1b)内での燃料インジェクタ(2)やその周辺の吸排気バルブ、バルブスプリング、バルブリテーナ等の部品配置の自由度が高くなる。
【0021】
図3に示すように、このエンジンでは、副クランプ(7)は燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)に外嵌され、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力により、主クランプ(6)がその下側の副クランプ(7)を介して燃料インジェクタ(2)の受圧部(2aa)を押圧するため、先提案例2とは異なり、燃料インジェクタ(2)は低い位置で押圧され、座屈による燃料インジェクタ(2)内の精密部品の変形が起こり難く、燃料インジェクタ(2)の燃料噴射精度を高いまま維持できる。
【0022】
図3に示すように、このエンジンでは、クランプ(5)が主クランプ(6)と副クランプ(7)で構成されているため、副クランプ(7)が早期に摩耗した場合には、副クランプ(7)のみを交換し、クランプ(5)を安価に修復できる。
【0023】
図3に示すように、このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)は、副クランプ(7)よりも上側に、径方向外側に張り出した大径部(2b)を備えている。
図5(A)に示すように、主クランプ(6)は二股状に分岐した一対の押圧部(6a)(6a)を備え、一対の押圧部(6a)(6a)の離間寸法(6aD)は、燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)の直径寸法(2bD)よりも大きい寸法に形成されている。
図3に示すように、このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)のクランプ時、スタッドボルト(4)に外嵌した主クランプ(6)をスタッドボルト(4)に沿って下降(D)させた場合に、主クランプ(6)の一対の押圧部(6a)(6a)が燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)の両脇を通過して、副クランプ(7)の一対の受圧部(7a)(7a)に当接されるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)に大径部(2b)があっても、大径部(2b)に邪魔されることなく、スタッドボルト(4)に外嵌した主クランプ(6)をスタッドボルト(4)に沿って下降(D)させることができ、副クランプ(7)の受圧部(7a)に当接させ、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)を締付けるだけで、主クランプ(6)でその下側の副クランプ(7)を介して燃料インジェクタ(2)の受圧部(2aa)を押圧でき、燃料インジェクタ(2)のクランプ作業を簡単に行うことができる。
【0025】
図3に示すように、このエンジンでは、副クランプ(7)の受圧部(7a)は、燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)に外嵌されたコの字形の外嵌部(7b)の両脇から外向きに突出し、燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)より径方向外寄りに配置されている。
【0026】
このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)に大径部(2b)があっても、副クランプ(7)の受圧部(7a)を両脇から外向きに突出させるだけで、燃料インジェクタ(2)のクランプ作業時の大径部(2b)と主クランプ(6)の干渉を避けることができ、主クランプ(6)の押圧部(6a)が燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)の両脇を通過できるため、燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)を小径化する等、燃料インジェクタ(2)の構造を変更する必要がなく、燃料インジェクタ(2)の燃料噴射精度を高いまま維持できる。
【0027】
図3または図4(A)に示すように、このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)の中間胴部(2a)は、その両脇に中心部側に向けて凹入された一対の平坦面(2c)(2c)を備え、この一対の平坦面(2c)(2c)で、中間胴部(2a)に外嵌された副クランプ(7)が廻り止めされ、この一対の平坦面(2c)(2c)の凹入でその下縁側に形成される一対の段差部(2d)(2d)が燃料インジェクタ(2)の一対の受圧部(2aa)(2aa)とされている。
【0028】
図3または図4(A)に示すように、このエンジンでは、中間胴部(2a)での一対の平坦面(2c)(2c)の凹入により、燃料インジェクタ(2)の一対の受圧部(2aa)(2aa)も同時に形成されるため、一対の受圧部(2aa)(2aa)の形成に手間がかからない。
【0029】
図3に示すように、このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)と中間胴部(2a)の間から右向きに燃料入口(2f)が導出され、この燃料入口(2f)にコモンレールから導出された燃料供給管の導出端部が接続される。
図3に示すように、このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)の最上部に右向きのコネクタ(2g)が設けられ、このコネクタ(2g)に図示しないエンジンECUから導出されたケーブルの導出端部が接続され、エンジンECUから燃料インジェクタ(2)に制御信号が発信され、図示しないバッテリから燃料インジェクタ(2)に電力が供給される。
【0030】
図4(B)に示すように、このエンジンでは、副クランプ(7)の外嵌部(7b)から下向きに突出した位置決め突起(7c)が燃料インジェクタ(2)の外周面とロッカアームブラケット(3)の対向端面に挟み込まれて、副クランプ(7)が位置決めされている。
【0031】
図4(B)に示すように、このエンジンでは、燃料インジェクタ(2)のクランプ時に、位置決め突起(7c)によって図3または図4(A)に示す中間胴部(2a)の一対の平坦面(2c)(2c)に沿う径方向の副クランプ(7)の位置ずれが無くなり、主クランプ(6)の押圧部(6a)と副クランプ(7)の受圧部(7a)の圧接位置が一定位置に定まり、燃料インジェクタ(2)にかかる押圧力の大きさや向きのばらつきが抑制される。
【0032】
図4(B)に示すように、このエンジンでは、主クランプ(6)は、支点部(6b)と力点部(6c)と作用点部(6d)を備えている。
図4(B)に示すように、支点部(6b)は、燃料インジェクタ(2)から遠ざかる主クランプ(6)の第一端部側に設けられ、力点部(6c)は、スタッドボルト(4)を内嵌させた主クランプ(6)の途中部に設けられ、作用点部(6d)は、燃料インジェクタ(2)寄りの主クランプ(6)の第二端部側に設けられている。
【0033】
図4(B)に示すように、このエンジンでは、主クランプ(6)の梃子機能による作用点部(6d)からの増幅された押圧力で、燃料インジェクタ(2)をインジェクタ挿入孔(1a)内で強力に押圧固定することができ、インジェクタ挿入孔(1a)内での燃料インジェクタ(2)の密封性も高まる。
【0034】
図4(B)に示すように、このエンジンでは、支点部(6b)は第一部分球面部(6ba)とこの第一部分球面部(6ba)と嵌合する第一球面受穴(6bb)を備え、第一部分球面部(6ba)はロッカアームブラケット(3)に固定され、第一球面受穴(6bb)は主クランプ(6)の底面から上向きに凹入されている。
図4(B)に示すように、力点部(6c)は、第二部分球面部(6ca)とこの第二部分球面部(6ca)と嵌合する第二球面受孔(6cb)を備え、第二部分球面部(6ca)はスタッドボルト(4)に外嵌されたワッシャ(4b)の下面に形成され、第二球面受孔(6cb)はスタッドボルト(4)に外嵌された主クランプ(6)の上面に形成され、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力で、ワッシャ(4b)の第二部分球面部(6ca)が主クランプ(6)の第二球面受孔(6cb)に押圧嵌合されている。
図4(B)に示すように、副クランプ(7)の受圧部(7a)の平坦な受圧面(7aa)に当接される主クランプ(6)の力点部(6c)にある押圧部(6a)の押圧面(6aa)は、下凸の凸曲面で構成されている。
【0035】
このエンジンでは、球面受構造や凸曲面受構造により、主クランプ(6)や副クランプ(7)の各圧接面にエッジによる集中応力が掛かり難く、クランプ(5)の耐久性が高まる。
【0036】
図5(A)に示すように、主クランプ(6)は、基部(6e)と、基部(6e)から右側の前後に分岐する一対の押圧部(6a)(6a)を備え、基部(6e)の左寄りの下面に第一球面受穴(6bb)を備え、図5(A)(B)に示すように、基部(6e)の右寄りの上面に第二球面受孔(6cb)を備え、図3に示すように、第二球面受孔(6cb)は、スタッドボルト(4)を挿通するボルト挿通孔(6ea)の開口周縁部に形成されている。
【0037】
図6(A)に示すように、副クランプ(7)は、コの字方の外嵌部(7b)の前後両脇からから外側に導出された一対の受圧部(7a)を備え、図6(B)(C)に示すように、一対の受圧部(7a)の上側に形成された一対の受圧面(7aa)(7aa)は、外嵌部(7b)の下側に形成された押圧面(7ba)よりも高い位置に配置されている。
【0038】
主クランプ(6)と副クランプ(7)には、いずれも鋼の焼結品が用いられている。
主クランプ(6)と副クランプ(7)は、鋼以外の鉄系金属や、他の金属を用いた、焼結品、鍛造品、鋳造品であってもよい。
主クランプ(6)と副クランプ(7)の素材は、異なるものであってもよく、例えば主クランプ(6)に鋳鉄の鋳造品を用い、副クランプに鋼の焼結品を用いてもよい。
【0039】
図3または図4(B)に示す燃料インジェクタ(2)のクランプ(5)による押圧手順は、次の通りである。
図4(B)に示すように、シリンダヘッド(1)に固定したスタッドボルト(4)にネジ嵌合させたブラケット固定用ナット(4c)の締付力でロッカアームブラケット(3)をシリンダヘッド(1)の上面に押圧固定しておき、シリンダヘッド(1)のインジェクタ挿入孔(1a)に燃料インジェクタ(2)を挿入する。
次に、図3に示すように、燃料インジェクタ(2)の左側から副クランプ(7)を矢印のように斜め下向きに横スライド(S)させながら、中間胴部(2a)に副クランプ(7)を外嵌させ、図4(B)に示すように、副クランプ(7)の位置決め突起(7c)を燃料インジェクタ(2)の外周面とロッカアームブラケット(3)の対向端面の間に差し込む。
【0040】
次に、図3に示すように、スタッドボルト(4)に主クランプ(6)を外嵌し、スタッドボルト(4)に沿って下降(D)させ、燃料インジェクタ(2)の大径部(2b)の両脇外側で主クランプ(6)の一対の押圧部(6a)(6a)を通過させる。
次に、図4(A)に示すように、主クランプ(6)の一対の押圧部(6a)(6a)を副クランプ(7)の一対の受圧部(7a)(7a)に当接させ、スタッドボルト(4)にネジ嵌合させたナット(4a)の締付力で、ワッシャ(4b)を介して主クランプ(6)を下向きに押圧し、主クランプ(6)の下側の副クランプ(7)を介して燃料インジェクタ(2)の受圧部(2aa)を押圧し、燃料インジェクタ(2)をインジェクタ挿入孔(1a)内で押圧固定する。
【符号の説明】
【0041】
(1)…シリンダヘッド、(1a)…インジェクタ挿入孔、(1b)…シリンダヘッドカバー、(2)…燃料インジェクタ、(2a)…中間胴部、(2aa)…受圧部、(2b)…大径部、(2c)…平坦面、(2d)…段差部、(3)…ロッカアームブラケット、(4)…スタッドボルト、(4a)…ナット、(4b)…ワッシャ、(5)…クランプ、(6)…主クランプ、(6a)…押圧部、(6aa)…押圧面、(6aD)…離間寸法、(6b)…支点部、(6ba)…第一部分球面部、(6bb)…第一球面受穴、(6c)…力点部、(6ca)… 第二部分球面部、(6cb)…第二球面受孔、 (6d)…作用点部、(7)…副クランプ、(7a)…受圧部、(7aa)…受圧面、(7b)…外嵌部、(7c)…位置決め突起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6