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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005087
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】内燃機関用の点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 15/00 20060101AFI20250108BHJP
   H01F 38/12 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F02P15/00 303B
H01F38/12 G
H01F38/12 L
H01F38/12 B
H01F38/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105100
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】泉 光宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕幸
【テーマコード(参考)】
3G019
【Fターム(参考)】
3G019BA01
3G019KC05
3G019KC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1次コイルやイグナイタに発生した熱を放熱可能な点火装を提供する。
【解決手段】内燃機関用の点火装置1は、点火コイル103と、イグナイタと、ケース105と、樹脂部106とを有する。点火コイルは、1次コイルL1と、2次コイルL2と、鉄心60とを有する。ケース105は、点火コイルおよびイグナイタを収容し、鉄心の一部を露出させる。樹脂部は、ケースの内部の隙間を埋める。鉄心のうちの樹脂部から露出する露出部604は、表面に凹凸形状を有する。鉄心は、複数の鋼板90が積層されて形成される。露出部の凹凸形状は、鋼板の延伸方向の長さが長い長鋼板901と、短い短鋼板902とが、鋼板の厚み方向に交互に積層されることにより形成される。これにより、1次コイルやイグナイタに発生した熱を、凹凸形状から外部空間へ、効率良く放熱することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用の点火装置であって、
1次コイルと、2次コイルと、前記1次コイルと前記2次コイルとを電磁結合させる鉄心と、を有し、点火プラグへ高電圧を供給する、点火コイルと、
前記1次コイルに流れる電流を制御する、イグナイタと、
前記点火コイルおよび前記イグナイタを収容しつつ、前記鉄心の一部を露出させる、ケースと、
前記ケースの内部の隙間を埋める樹脂部と、
を有し、
前記鉄心のうちの前記樹脂部から露出する部位である露出部は、表面に凹凸形状を有し、
前記鉄心は、複数の鋼板が積層されることによって形成され、
前記露出部において、前記鋼板の厚み方向に直交する延伸方向の長さが長い前記鋼板と、前記延伸方向の長さが短い前記鋼板とが、前記厚み方向に交互に積層されることにより、前記凹凸形状が形成される、点火装置。
【請求項2】
請求項1に記載の点火装置であって、
前記鉄心は、
前記1次コイルおよび前記2次コイルよりも径方向内側に位置し、軸方向に延びる、中心鉄心と、
前記2次コイルよりも径方向外側に位置し、前記中心鉄心の軸方向の両端部を繋ぐ、外周鉄心と、
を有し、
前記露出部は、前記外周鉄心の一部である、点火装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の点火装置であって、
前記露出部を覆う、カバー
をさらに有し、
前記カバーは、アルミニウム製であり、滑らかな外表面を有し、内表面において前記露出部に接触し、前記露出部と外部空間との間に介在する、点火装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の点火装置であって、
前記1次コイルは、
前記鉄心の周囲に第1の1次導線が巻回されることにより形成された第1の1次コイルと、
前記鉄心の周囲の、前記第1の1次コイルとは異なる位置に、第2の1次導線が巻回されることにより形成された第2の1次コイルと、
を含み、
前記点火装置は、
前記第1の1次コイルの一端と、前記第2の1次コイルの一端とに、それぞれ直流電圧を印加する電源装置と、
前記2次コイルに誘起される高電圧に基づいてギャップにおいて放電することによって燃料に点火する、前記点火プラグと、
をさらに有し、
前記イグナイタは、
前記第1の1次コイルの他端と接地点とを接続する第1の1次側接地線に介挿され、前記電源装置から前記第1の1次コイルへ流れる1次電流の通電または遮断を切り替え可能な第1のスイッチング素子と、
前記第2の1次コイルの他端と接地点とを接続する第2の1次側接地線に介挿され、前記電源装置から前記第2の1次コイルへ流れる1次電流の通電または遮断を切り替え可能な第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子の開閉と、前記第2のスイッチング素子の開閉と、のそれぞれを制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
a-1)前記第1のスイッチング素子を閉状態にすることによって、前記第1の1次コイルに1次電流を流して充電する第1の充電制御と、
a-2)前記第2のスイッチング素子を閉状態にすることによって、前記第2の1次コイルに1次電流を流して充電する第2の充電制御と、
のいずれか一方を選択して実行した後、
b)前記第1の充電制御または前記第2の充電制御にて閉状態とした前記第1のスイッチング素子または前記第2のスイッチング素子を開状態に切り替えて、前記2次コイルの一端に高電圧を誘起させることによって、前記点火プラグを放電させる放電制御
を実行し、
前記工程a-1)と前記工程a-2)とを、交互に選択する、点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関用の点火装置には、電源装置から供給される低電圧を数千ボルトにまで昇圧する、点火コイルが使用される。点火コイルには、1次コイルと、2次コイルと、1次コイルと2次コイルとを電磁結合させるための鉄心と、が含まれる。また、1次コイル、2次コイル、および鉄心は、ケース内に収容され、ケース内の所定の位置に固定される。従来の点火コイルについては、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6170279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の点火コイル(100)は、1次コイル、2次コイル、およびI字型の中心鉄芯(30)とロの字型の外周鉄芯(40)とを日の字型に組み合わせた鉄芯を有する(段落0026)。また、点火コイル(100)は、ケース(60)内に収容され、ケース(60)内には、電気的絶縁および各部材の物理的固定を実現するモールド樹脂(90)が、ケース開口面(62)付近まで充填される。また、1次コイル、2次コイル、および鉄芯は、ケース開口面(62)付近に形成される樹脂面(92)よりも低い位置に配置される(段落0036)。また、ケース(60)内には、1次コイルへ点火信号を供給するスイッチング素子およびリードフレームを絶縁樹脂モールドしたものからなるイグナイタ(80)が備えられている(段落0033)。
【0005】
一方、近年普及している高出力のレシプロエンジンに用いられるような、放電エネルギーの大きな点火コイルにおいては、1次コイルの充電時に、1次側に大きな電流が流れる。このため、1次コイルやイグナイタが大きく発熱し、これにより各部の溶損や不具合に繋がる虞がある。そこで、1次コイルやイグナイタに発生した熱を、効率良く放熱可能にするために、点火コイルの構造を工夫する余地がある。
【0006】
本発明の目的は、1次コイルやイグナイタが大きく発熱した場合でも、点火コイルの構造を工夫することによって、発生した熱を効率良く放熱可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、内燃機関用の点火装置であって、点火コイルと、イグナイタと、ケースと、樹脂部と、を有する。前記点火コイルは、1次コイルと、2次コイルと、前記1次コイルと前記2次コイルとを電磁結合させる鉄心と、を有し、点火プラグへ高電圧を供給する。前記イグナイタは、前記1次コイルに流れる電流を制御する。前記ケースは、前記点火コイルおよび前記イグナイタを収容しつつ、前記鉄心の一部を露出させる。前記樹脂部は、前記ケースの内部の隙間を埋める。前記鉄心のうちの前記樹脂部から露出する部位である露出部は、表面に凹凸形状を有する。前記鉄心は、複数の鋼板が積層されることによって形成される。前記露出部において、前記鋼板の厚み方向に直交する延伸方向の長さが長い前記鋼板と、前記延伸方向の長さが短い前記鋼板とが、前記厚み方向に交互に積層されることにより、前記凹凸形状が形成される。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の点火装置であって、前記鉄心は、中心鉄心と外周鉄心とを有する。前記中心鉄心は、前記1次コイルおよび前記2次コイルよりも径方向内側に位置し、軸方向に延びる。前記外周鉄心は、前記2次コイルよりも径方向外側に位置し、前記中心鉄心の軸方向の両端部を繋ぐ。前記露出部は、前記外周鉄心の一部である。
【0009】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の点火装置であって、前記露出部を覆う、カバーをさらに有する。前記カバーは、アルミニウム製であり、滑らかな外表面を有し、内表面において前記露出部に接触し、前記露出部と外部空間との間に介在する。
【0010】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の点火装置であって、前記1次コイルは、第1の1次コイルと、第2の1次コイルと、を含む。前記第1の1次コイルは、前記鉄心の周囲に第1の1次導線が巻回されることにより形成される。前記第2の1次コイルは、前記鉄心の周囲の、前記第1の1次コイルとは異なる位置に、第2の1次導線が巻回されることにより形成される。前記点火装置は、電源装置と、前記点火プラグと、をさらに有する。前記電源装置は、前記第1の1次コイルの一端と、前記第2の1次コイルの一端とに、それぞれ直流電圧を印加する。前記点火プラグは、前記2次コイルに誘起される高電圧に基づいて、ギャップにおいて放電することによって、燃料に点火する。前記イグナイタは、第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子と、制御部と、を有する。前記第1のスイッチング素子は、前記第1の1次コイルの他端と接地点とを接続する第1の1次側接地線に介挿され、前記電源装置から前記第1の1次コイルへ流れる1次電流の通電または遮断を切り替え可能である。前記第2のスイッチング素子は、前記第2の1次コイルの他端と接地点とを接続する第2の1次側接地線に介挿され、前記電源装置から前記第2の1次コイルへ流れる1次電流の通電または遮断を切り替え可能である。前記制御部は、前記第1のスイッチング素子の開閉と、前記第2のスイッチング素子の開閉と、のそれぞれを制御する。前記制御部は、a-1)前記第1のスイッチング素子を閉状態にすることによって、前記第1の1次コイルに1次電流を流して充電する第1の充電制御と、a-2)前記第2のスイッチング素子を閉状態にすることによって、前記第2の1次コイルに1次電流を流して充電する第2の充電制御と、のいずれか一方を選択して実行した後、b)前記第1の充電制御または前記第2の充電制御にて閉状態とした前記第1のスイッチング素子または前記第2のスイッチング素子を開状態に切り替えて、前記2次コイルの一端に高電圧を誘起させることによって、前記点火プラグを放電させる放電制御を実行する。前記制御部は、前記工程a-1)と前記工程a-2)とを、交互に選択する。
【発明の効果】
【0011】
本願の第1発明~第4発明によれば、1次コイルやイグナイタに発生した熱を、鉄心の露出部の凹凸形状から外部空間へ、効率良く放熱することができる。また、鋼板の厚み方向に直交する延伸方向の長さが長い鋼板と短い鋼板とを、厚み方向に交互に積層して鉄心を形成することによって、容易に凹凸形状を形成することができる。
【0012】
特に、本願の第3発明によれば、1次コイルやイグナイタに発生した熱を、鉄心を介して、熱伝導性能および放熱性能の優れたカバーへ効率良く伝え、さらにカバーから外部空間へ効率良く放熱することができる。
【0013】
特に、本願の第4発明によれば、第1の1次コイルと第2の1次コイルとに、交互に1次電流を流して充電することによって、各1次コイルにて単位時間あたりに生じる発熱量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る内燃機関用の点火装置の動作環境を模式的に示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る点火装置の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る点火装置の縦断面図である。
図4】第1実施形態に係る点火装置の縦断面図である。
図5】第2実施形態に係る点火装置の縦断面図である。
図6】第2実施形態に係る点火装置の縦断面図である。
図7】第3実施形態に係る点火装置の縦断面図である。
図8】第3実施形態に係る内燃機関用の点火装置の動作環境を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
<1.第1実施形態>
<1-1.点火装置の構成>
まず、本発明の第1実施形態となる内燃機関用の点火装置1の構成について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係る点火装置1の動作環境を模式的に示すブロック図である。なお、後述のとおり、本実施形態の点火装置1に含まれる点火コイル103の1次コイルL1と2次コイルL2とは、互いに積層される方向に配置されるが、図1では、理解容易のため、これらを隣接させて図示している。
【0017】
本実施形態の点火装置1は、例えば、自動車等の車体100に搭載され、内燃機関用の点火プラグ113に火花放電を発生させるための高電圧を印加する装置である。また、図1に示すように、車体100には、当該点火装置1に加え、当該点火プラグ113と、電源装置102(バッテリ)と、ECU101(Engine Control Unit)とが、備えられている。なお、広義の意味において、点火プラグ113と、電源装置102と、ECU101とは、点火装置1に含まれると見ることもできる。
【0018】
点火プラグ113は、内燃機関の燃焼室で着火動作を実現するための装置である。点火プラグ113は、点火コイル103の後述する2次コイルL2の一端822に、導線121を介して電気的に接続される。点火プラグ113は、2次コイルL2の一端822と接地点(グランド151)との間に介挿される。点火プラグ113は、中心電極141と接地電極142とを有する。点火コイル103の2次コイルL2に高電圧が誘起され、この高電圧が中心電極141と接地電極142との間のギャップdにおける絶縁破壊電圧を超えると、ギャップdにおいて放電が起こり、火花が発生する。これにより、内燃機関に充填された燃料に点火される。すなわち、点火プラグ113は、2次コイルL2の一端822に誘起される高電圧に基づいて、ギャップdにおいて放電することによって、燃料に点火する。
【0019】
電源装置102は、直流電力を充放電可能な蓄電池である。本実施形態では、電源装置102は、点火コイル103の後述する1次コイルL1の一端811に、導線である電源線150を介して電気的に接続される。電源装置102は、点火コイル103の1次コイルL1の一端811へ、電源線150を介して直流電圧を印加する。
【0020】
ECU101は、車体100のトランスミッションやエアバックの作動等を総合的に制御するコンピュータである。
【0021】
図2は、本実施形態に係る点火装置1の斜視図である。図2に示すように、点火装置1は、長手方向の長さが短手方向の長さよりも長い立体形状を有する。図3は、図2を長手方向に拡がる鉛直断面に沿って切断した、点火装置1の縦断面図である。図4は、図2を短手方向に拡がる鉛直断面に沿って切断した、点火装置1の縦断面図である。ただし、点火装置1の形状は、これに限定されない。また、図2~後述する図7では、説明容易のため、「鉛直方向」を定義しているが、点火装置1の製造時および使用時において、点火装置1が配置される向きは、これに限定されない。
【0022】
図1図4に示すように、点火装置1は、点火コイル103、イグナイタ104、ケース105、樹脂部106、およびダイオード114を有する。なお、図1図4では、いくつかの部材や、断面図におけるハッチングの一部の図示を省略している。
【0023】
また、図3に示すように、点火コイル103は、ボビン40と、1次コイルL1と、2次コイルL2と、鉄心60と、を有する。なお、以下の点火コイル103の説明においては、ボビン40の中心軸Bcと平行な方向を「軸方向」、ボビン40の中心軸Bcに直交する方向を「径方向」、ボビン40の中心軸Bcを中心とする周りに沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、当該「平行な方向」とは、略平行な方向も含むものとし、当該「直交する方向」とは、略直交する方向も含むものとする。また、上記の長手方向は、軸方向と略平行である。
【0024】
ボビン40は、互いに連結可能な1次ボビン41および2次ボビン42を含む。1次ボビン41および2次ボビン42はそれぞれ、中心軸Bcに沿って筒状に延びる。また、1次ボビン41および2次ボビン42の材料には、例えば、絶縁体である樹脂が用いられる。
【0025】
1次コイルL1は、1次ボビン41の外周面に、導線が中心軸Bcを中心とする周方向に百数十回程度巻回されつつ、径方向に複数層に亘って積層されることによって、形成される。以下では、1次ボビン41に巻回される当該導線を、「1次導線81」と称する。1次コイルL1の形成が完了した後、1次コイルL1の外周面を覆うように、2次ボビン42が配置され、1次ボビン41に連結される。そして、2次ボビン42の外周面に、1次導線81とは別の導線が、中心軸Bcを中心とする周方向に1万回程度巻回されつつ、径方向に複数層に亘って積層されることによって、2次コイルL2が形成される。以下では、2次ボビン42に巻回される当該別の導線を、「2次導線82」と称する。
【0026】
このように、1次コイルL1と2次コイルL2とを互いに積層するように配置することによって、これらを含む点火コイル103全体を小型化できる。ただし、1次コイルL1と2次コイルL2とは、このように互いに積層されつつ巻回される場合のみでなく、図1のように互いに隣接しつつ配置されてもよい。
【0027】
鉄心60は、中心鉄心601と外周鉄心602とが組み合わさった構造を有する。中心鉄心601および外周鉄心602はそれぞれ、鋼板90(図4参照)が積層された積層鋼板により形成される。より具体的には、中心鉄心601は、鋼板90である珪素鋼板を積層して形成したI字形状を有する。また、中心鉄心601は、1次ボビン41の径方向内側の空間410に挿通される。すなわち、中心鉄心601は、1次コイルL1および2次コイルL2よりも径方向内側に位置し、軸方向に延びる。
【0028】
また、外周鉄心602は、鋼板90である珪素鋼板を積層して形成したコの字形状を有する。外周鉄心602は、2次ボビン42および2次コイルL2よりも径方向外側に位置し、中心鉄心601の軸方向の両端部を繋ぐ。これにより、鉄心60は、1次コイルL1と2次コイルL2とを電磁結合させる閉磁路構造を形成する。
【0029】
なお、一般に、珪素鋼板とは、鉄に珪素が数%程度混入されて、熱処理された鋼が、圧延されることによって形成された電磁鋼板である。ただし、本発明の鋼板90には、珪素鋼板以外の鋼板が用いられてもよい。そして、鉄心60は、複数の鋼板90が積層されることによって形成されていればよい。
【0030】
また、詳細を後述するように、鉄心60は、ケース105の内部に収容される。そして、ケース105の内部の隙間に後述する樹脂部106が形成された状態において、外周鉄心602の一部(上部)が、ケース105の外部(上側)に露出する。すなわち、ケース105は、鉄心60の一部を外部空間へ露出させる。以下では、外周鉄心602のうち、樹脂部106から外部(上側)に露出する部位を、「露出部604」と称することとする。すなわち、露出部604は、鉄心60のうちの樹脂部106から露出する部位であり、外周鉄心602の一部である。
【0031】
また、本実施形態では、図4における部分拡大図に示すように、外周鉄心602の露出部604においては、鋼板90の延伸方向の長さが長い鋼板90と、延伸方向の長さが短い鋼板90とが、厚み方向に交互に積層される。ここで、「厚み方向」とは、鋼板90の板厚の方向であり、「延伸方向」とは、鋼板90の厚み方向に対して直交する方向である。また、「延伸方向」とは、樹脂部106から露出部604が突出する方向であり、本実施形態では、略鉛直方向である。また、以下では、延伸方向の長さが長い鋼板を「長鋼板901」と称し、延伸方向の長さが短い鋼板を「短鋼板902」と称する。図4の部分拡大断面図においては、理解容易のため、短鋼板902のみにハッチングを施している。
【0032】
これにより、外周鉄心602の露出部604の表面(鉛直方向上側を向く面)に、凹凸形状が形成される。すなわち、露出部604は、表面に凹凸形状を有する。このように、本実施形態では、延伸方向の長さの異なる鋼板90を厚み方向に積層して外周鉄心602を形成することによって、露出部604の表面に容易に凹凸形状を形成することができる。ただし、外周鉄心602の露出部604において、長鋼板901と短鋼板902とが、厚み方向に複数枚ずつ交互に積層されてもよい。また、長鋼板901の枚数と短鋼板902の枚数とが変更されつつ、厚み方向に積層されてもよい。また、延伸方向の長さが長鋼板901および短鋼板902とは異なる別の鋼板90が、合わせて厚み方向に積層されてもよい。
【0033】
また、図4に示すように、本実施形態の各鋼板90は、鉛直方向に、かつ、短手方向に直交する長手方向に拡がる板状である。しかしながら、鋼板90が拡がる方向は、これに限定されない。鋼板90は、点火装置1が配置される場所の周辺の気流の向き等を考慮して配置されればよい。
【0034】
本実施形態では、当該凹凸形状において、複数の長鋼板901の端部が、それぞれ外部空間へ向かって突出する構造を有することにより、露出部604の表面積が大きくなる。これにより、当該凹凸形状が、放熱フィンとしての役割を果たす。この結果、後述のとおり、1次コイルL1やイグナイタ104に発生した熱を、導線123や鉄心60を介して、露出部604の当該凹凸形状から外部空間へ、効率良く放熱することができる。この結果、各部の温度上昇を抑制でき、不具合の発生を抑制できる。
【0035】
さらに、中心鉄心601と外周鉄心602との2つの接続面のうちの1つには、1次コイルL1に発生した磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるためのマグネット603が設けられている。
【0036】
上記のとおり、1次コイルL1の一端811には、電源装置102から延びる電源線150が接続される。1次コイルL1の他端812は、後述するイグナイタ104に接続される。イグナイタ104に制御されることによって、1次コイルL1の一端811に、電源装置102からの直流の低電圧が印加され、1次コイルL1に、次第に増加する1次電流が流れ始める。
【0037】
2次コイルL2の一端822は、点火プラグ113に接続される。2次導線82の線径は、1次導線81の線径よりも小さい。また、2次コイルL2における2次導線82の巻き数は、1次コイルL1における1次導線81の巻き数よりも多い。例えば、2次コイルL2における2次導線82の巻き数は、1次コイルL1における1次導線81の巻き数の、100倍程度である。これにより、点火コイル103は、1次電流の遮断時に、電源装置102から供給される直流の低電圧の電力を、数千V~数万Vにまで昇圧する。すなわち、2次コイルL2には高電圧が誘起される。そして、2次コイルL2は、誘起された高電圧の電力を、点火プラグ113ヘと供給する。これにより、点火プラグ113において電気火花が発生し、燃料が点火される。
【0038】
なお、図1に示すように、2次コイルL2のうち、点火プラグ113が接続される一端822とは反対側の他端821は、導線122を介して電源装置102と電気的に接続される。本実施形態では、2次コイルL2の他端821は、電源線150と電気的に接続される。また、導線122には、ダイオード114が介挿される。ダイオード114は、2次コイルL2と直列に接続される。また、ダイオード114は、2次コイルL2の一端822から他端821へ向かう方向が順方向となるように配置される。
【0039】
これにより、後述する充電制御において、1次コイルL1に1次電流を流して充電する時(ON時)に、次第に増加する1次電流により2次コイルL2に誘起される電圧による誘導電流が、ダイオード114における逆方向に流れることが防止される。この結果、当該誘導電流が点火プラグ113へ流れることを防止できるため、点火プラグ113において、ON時、すなわち、異常タイミングにて、放電が起こることを抑制できる。
【0040】
なお、2次コイルL2の一端822と点火プラグ113とを接続する導線121には、点火コイル103内のイグニッションノイズを低減させるための、図示を省略した雑防抵抗が、さらに介挿されてもよい。
【0041】
イグナイタ104は、1次コイルL1と電気的に接続され、1次コイルL1に流れる電流を制御する半導体デバイスである。また、イグナイタ104は、ECU101と電気的に接続され、ECU101から信号(以下「EST信号」と称する)を受信する。イグナイタ104は、スイッチング素子70と、駆動IC91と、を有する。なお、イグナイタ104は、ECU101の電子回路と一体化されていてもよい。
【0042】
スイッチング素子70には、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられる。スイッチング素子70は、1次コイルL1の他端812と、接地点(グランド152)と、を接続する導線123に介挿される。スイッチング素子70のC(コレクタ)は、1次コイルL1の他端812に接続される。スイッチング素子70のE(エミッタ)は、接地点(グランド152)に接続される。スイッチング素子70のG(ゲート)は、駆動IC91に接続される。
【0043】
これにより、スイッチング素子70は、電源装置102から1次コイルL1へ流れる1次電流の通電または遮断の切り替えが可能となる。スイッチング素子70が閉状態になると、電源装置102から1次コイルL1に1次電流が流れる。スイッチング素子70が開状態になると、1次コイルL1に流れる1次電流が遮断される。ただし、スイッチング素子70には、IGBTの代わりに、MOSFET等の他の種類のトランジスタが用いられてもよい。
【0044】
駆動IC91は、ECU101から受信するEST信号に基づき、スイッチング素子70の切り替えを制御する制御部である。駆動IC91は、スイッチング素子70に接続された論理デバイスを有する。論理デバイスには、例えば、論理回路、プロセッサ、CPLD(complex programmablelogic device)、FPGA(field-programmable gate array)、またはASIC(application-specific integrated circuit)等が含まれる。論理デバイスは、点火装置1を動作させて点火プラグ113に点火するための演算処理を行う。
【0045】
ケース105は、点火装置1の外形を形成し、点火コイル103およびイグナイタ104を含む各部を収容する、絶縁性を有する樹脂製の容器である。ケース105は、主収容部71、コネクタ部73、および固定部74を有する。
【0046】
主収容部71は、鉛直方向上向きに開口する凹形状を有する。以下では、主収容部71の上部に位置する当該開口を「開口700」と称する。また、主収容部71の内側の空間を「内部空間710」と称する。内部空間710には、点火コイル103およびイグナイタ104が収容される。図3に示すように、点火コイル103は、点火コイル103の軸方向が、水平な長手方向を向いた状態で、ケース105の内部空間710に収容される。さらに、ケース105内の点火コイル103の隣には、イグナイタ104が配置される。また、点火コイル103およびイグナイタ104に繋がる導線等が適宜配置される。
【0047】
点火装置1の製造過程においては、内部空間710に点火コイル103およびイグナイタ104を含む各部が配置された状態で、各部を絶縁および固定するための熱硬化性のモールド樹脂(エポキシ樹脂)が流し込まれる。モールド樹脂は、内部空間710において、開口700付近にまで充填される。これにより、モールド樹脂の硬化後、ケース105の内部の隙間を埋める樹脂部106が形成される。この結果、内部空間710において、点火コイル103およびイグナイタ104を含む各部が、適切な位置に保持される。
【0048】
また、上記のとおり、樹脂部106が形成された状態において、外周鉄心602の一部(上部)が、内部空間710よりも外側(上側)に露出し、露出部604が形成される。なお、上記のモールド樹脂が流し込まれる前段階において、外周鉄心602の表面のうち、露出部604における鉛直方向上側を向く面、中心鉄心601との接触面、およびマグネット603との接触面を除く部位が、キャップ72に覆われる。キャップ72には、例えば、樹脂部106と剥離し易いエラストマーが用いられる。これにより、樹脂部106が形成された後、1次コイルL1が発熱し、または冷却されることにより、各部が熱膨張または熱収縮した場合でも、クラックが発生することを抑制できる。
【0049】
主収容部71の側部には、コネクタ部73が形成されている。イグナイタ104から延びる導線123を含む配線や、1次導線81から延びる電源線150は、コネクタ部73の内部を介して、ケース105の外部まで引き出され、ECU101や電源装置102に接続される。また、主収容部71における、コネクタ部73とは反対側の側部には、固定部74が形成されている。固定部74は、点火装置1をエンジンブロックに取り付けて固定するための、主収容部71から略三角柱状に突出した部位である。
【0050】
<1-2.点火装置の動作>
続いて、点火装置1の動作について説明する。上記のとおり、1次コイルL1の一端811には、電源装置102から直流電圧が、電源線150を介して印加される。また、1次コイルL1の他端812は、スイッチング素子70に接続される。また、駆動IC91は、ECU101から受信するEST信号に基づき、スイッチング素子70の切り替えを制御する。
【0051】
点火装置1を動作させる際は、まず、ECU101から駆動IC91へ送信されるEST信号の信号レベルをLからHにする。すると、駆動IC91は、EST信号に基づき、スイッチング素子70を開状態から閉状態に切り替える。これにより、1次コイルL1を形成する1次導線81に1次電流が流れ、1次コイルL1に電荷が充電される。なお、このような、1次コイルL1に1次電流を流して充電する工程を「充電制御」と称する。また、1次コイルL1に通電磁束が生じ、通電磁束に応じた磁界が鉄心60へ作用する。
【0052】
また、鉄心60を介して1次コイルL1と電磁結合された2次コイルL2の両端821,822において、相互誘導作用により、電位差(以下「ON時電圧」と称する)が生じる。本実施形態では、この時、2次コイルL2の一端822に掛かる電圧の最大値は正の値(例えば、数百V程度)となり、2次コイルL2の他端821に掛かる電圧の最小値は負の値(例えば、マイナス数百V程度)となる。なお、当該ON時電圧の最大値は、電源装置102から電源線150を介して1次コイルL1の一端811へ印加される直流電圧の電圧値(例えば、12V)に、1次コイルL1の巻き数に対する2次コイルL2の巻き数の比率を掛けることによって、算出される。
【0053】
ここで、充電制御を行っている間、1次コイルL1やイグナイタ104が発熱することがある。特に、高出力のレシプロエンジンに用いられるような、放電エネルギーの大きな点火コイル103においては、1次側に大きな電流が流れ、1次コイルL1やイグナイタ104が大きく発熱する。しかしながら、本実施形態の点火装置1においては、鉄心60の露出部604が外部空間へ露出し、かつ、凹凸形状を有することにより、放熱フィンとしての役割を果たす。このため、1次コイルL1やイグナイタ104に発生した熱を、導線123や鉄心60を介して、露出部604の凹凸形状から外部空間へ、効率良く放熱することができる。これにより、各部の温度上昇を抑制でき、不具合の発生を抑制できる。
【0054】
また、上記のとおり、2次コイルL2の他端821と電源装置102とを接続する導線122において、ダイオード114が、2次コイルL2と直列に接続されている。ダイオード114は、2次コイルL2の一端822から他端821へ向かう方向が順方向となるように、配置されている。このため、1次コイルL1に1次電流を流した時に、2次コイルL2の他端821に掛かる電圧に対して、2次コイルL2の一端822に掛かる電圧が、大きな値になる場合でも、誘導電流(2次電流)が、電源装置102の側から2次コイルL2の他端821を介して一端822の側へ流れてしまうことを抑制できる。これにより、ON時電圧の発生時に、点火プラグ113において、異常タイミングにて、放電が起こることを抑制できる。
【0055】
充電制御を行った後、続いて、ECU101から駆動IC91へ送信されるEST信号の信号レベルをHからLにする。すると、駆動IC91は、スイッチング素子70を閉状態から開状態に切り替えて、電源装置102から1次コイルL1へ流れる1次電流を遮断する。これにより、鉄心60を介して1次コイルL1と電磁結合された2次コイルL2において、相互誘導作用により、誘導起電力が誘起される。本実施形態では、2次コイルL2の一端822に、負の高電圧が誘起される。この時、2次コイルL2の一端822に掛かる電圧値は、接地点(グランド151)に対して、マイナス数千V~数万Vに及ぶ。
【0056】
また、2次コイルL2の一端822に誘起される負の高電圧の絶対値は、点火プラグ113のギャップdにおける絶縁破壊電圧を超える。これにより、点火プラグ113のギャップdにおいて絶縁破壊が生じる。そして、接地点(グランド151)から、点火プラグ113の接地電極142を介して点火プラグ113の中心電極141へ向かい(図1参照)、さらに2次コイルL2を流れ、かつ、ダイオード114を順方向に流れる電流が生じる。
【0057】
この結果、点火プラグ113のギャップdにおいて放電が起こることによって、火花が発生し、内燃機関に充填された燃料に点火される。すなわち、点火プラグ113は、2次コイルL2の一端822に誘起される負の高電圧に基づいて、ギャップdにおいて放電することによって、燃料に点火する。なお、このようにスイッチング素子70を開状態に切り替えて、1次コイルL1へ流れる1次電流を遮断し、2次コイルL2の一端822に高電圧を誘起させることによって、点火プラグ113のギャップdにおいて放電させる工程を「放電制御」と称する。その後、2次コイルL2の一端822に誘起される負の高電圧の絶対値が、点火プラグ113のギャップdにおける絶縁破壊電圧を下回ると、点火プラグ113のギャップdにおける放電が終了する。
【0058】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。また、第1実施形態と同等の構造を有する部材については、第1実施形態と同じ符号を付して説明するものとする。
【0059】
図5は、第2実施形態の点火装置1Bを、長手方向に拡がる鉛直断面に沿って切断した縦断面図である。図6は、第2実施形態の点火装置1Bを、短手方向に拡がる鉛直断面に沿って切断した縦断面図である。図5および図6に示すように、第2実施形態の点火装置1Bは、第1実施形態と同等の構成を有する点火コイル103、イグナイタ104、ケース105、樹脂部106、およびダイオード114に加えて、カバー107Bをさらに有する。カバー107Bは、滑らかな外表面117Bを有する。
【0060】
より具体的には、点火装置1Bの製造過程における、ケース105の内部にモールド樹脂が流し込まれる前段階において、外周鉄心602の一部がキャップ72に覆われた状態で、さらに露出部604がカバー107Bに覆われる。ここで、露出部604における鉛直方向上側を向く面は、キャップ72に覆われることなく、カバー107Bに直接覆われる。そして、カバー107Bは、外周鉄心602の側面およびキャップ72に嵌合しつつ、周縁部においてモールド樹脂に埋設され、外周鉄心602およびキャップ72と一体的に固定される。これにより、モールド樹脂の硬化後、カバー107Bは、その内表面118Bにおいて露出部604に接触しつつ、露出部604と外部空間との間に介在する。
【0061】
ただし、モールド樹脂を流し込んだ後段階において、外周鉄心602の露出部604をカバー107Bで覆うようにしてもよい。例えば、モールド樹脂の硬化後に、カバー107Bと外周鉄心602とを、圧入嵌合してもよく、または接着剤によって固定してもよい。このように、モールド樹脂の硬化後に外周鉄心602とカバー107Bとを嵌合または固定する場合には、カバー107Bがモールド樹脂に埋設されない。その結果、カバー107Bを起因とするモールド樹脂のクラックを抑制することができる。
【0062】
また、露出部604がカバー107Bに覆われることにより、露出部604が外気等から保護され、水分の浸入等が抑止される。また、カバー107Bは、高い放熱性能および熱伝導性能を有し、外周鉄心602から熱を効率良く発散させるための放熱部材である。これにより、1次コイルL1やイグナイタ104に発生した熱を、導線123や鉄心60を介して、カバー107Bへ効率良く伝え、さらにカバー107Bから外部空間へ効率良く放熱することができる。これにより、各部の温度上昇を抑制でき、不具合の発生を抑制できる。
【0063】
特に、本実施形態のカバー107Bは、アルミニウム製である。このため、カバー107Bの放熱性能および熱伝導性能をより高めることができ、かつ、カバー107Bの製造コストを抑制できる。この結果、1次コイルL1やイグナイタ104に発生した熱を、導線123や鉄心60を介して、より効率良くカバー107Bへ伝え、より効率良くカバー107Bから外部空間へ放熱することができる。ただし、カバー107Bは、金属製またはセラミック製で、放熱性能および熱伝導性能に優れた材料により形成されていればよい。
【0064】
また、上記のとおり、露出部604の表面には凹凸形状が設けられている。また、カバー107Bの内表面118Bにも、露出部604の凹凸形状に嵌合する凹凸形状が設けられている。これにより、露出部604とカバー107Bとの接触面積がより大きくなる。この結果、露出部604からカバー107Bへ、さらに効率良く熱を伝え、カバー107Bから外部空間へ、さらに効率良く放熱することができる。
【0065】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。なお、以下では、第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態および第2実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。また、第1実施形態および第2実施形態と同等の構造を有する部材については、第1実施形態および第2実施形態と同じ符号を付して説明するものとする。
【0066】
図7は、第3実施形態の点火装置1Cを、長手方向に拡がる鉛直断面に沿って切断した縦断面図である。図8は、第3実施形態に係る点火装置1Cの動作環境を模式的に示すブロック図である。図7および図8に示すように、本実施形態の点火コイル103Cにおいては、1次コイルL1として、第1の1次コイルL11および第2の1次コイルL12が設けられている。第1の1次コイルL11は、鉄心60Cの周囲に第1の1次導線801Cが巻回されることにより形成される。第2の1次コイルL12は、鉄心60Cの周囲の、第1の1次コイルL11とは異なる位置に、第2の1次導線802Cが巻回されることにより形成される。また、電源装置102は、第1の1次コイルL11の一端と、第2の1次コイルL12の一端とに、それぞれ直流電圧を印加する。
【0067】
また、イグナイタ104Cは、第1のスイッチング素子701Cと、第2のスイッチング素子702Cと、駆動IC91Cと、を有する。第1のスイッチング素子701Cは、第1の1次コイルL11の他端と接地点(グランド152)とを接続する第1の1次側接地線124Cに介挿され、電源装置102Cから第1の1次コイルL11へ流れる1次電流の通電または遮断を切り替え可能である。第2のスイッチング素子702Cは、第2の1次コイルL12の他端と接地点(グランド152)とを接続する第2の1次側接地線125Cに介挿され、電源装置102Cから第2の1次コイルL12へ流れる1次電流の通電または遮断を切り替え可能である。駆動IC91Cは、第1のスイッチング素子701Cの開閉と、第2のスイッチング素子702Cの開閉と、のそれぞれを制御する制御部である。
【0068】
本実施形態の駆動IC91Cは、a-1)第1のスイッチング素子701Cを閉状態にすることによって、第1の1次コイルL11に1次電流を流して充電する第1の充電制御と、a-2)第2のスイッチング素子702Cを閉状態にすることによって、第2の1次コイルL12に1次電流を流して充電する第2の充電制御と、のいずれか一方を選択して実行した後、b)第1の充電制御または第2の充電制御にて閉状態とした第1のスイッチング素子701Cまたは第2のスイッチング素子702Cを開状態に切り替えて、2次コイルL2の一端に高電圧を誘起させることによって、点火プラグ113を放電させる放電制御を実行する。また、駆動IC91Cは、工程a-1)と工程a-2)とを、交互に選択する。
【0069】
すなわち、本実施形態では、第1の1次コイルL11と第2の1次コイルL12とに、交互に1次電流を流して充電した後、第1の1次コイルL11および第2の1次コイルL12のいずれかに充電された電荷を用いて、点火プラグ113を放電させる。このように制御することにより、各1次コイルL11,L12において単位時間あたりに充電される回数が低減される。この結果、各1次コイルL11,L12において単位時間あたりに生じる発熱量を抑制でき、これらの付近の各部の温度上昇を抑制できるため、不具合の発生をさらに抑制できる。
【0070】
<4.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。
【0071】
本発明の点火装置は、自動車等の車両のみならず、発電機等の様々な装置や産業機械に搭載されて、内燃機関の点火プラグに電気火花を発生させて燃料を点火させるために使用されるものであればよい。
【0072】
上記の点火装置の細部の形状や構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1B,1C 点火装置
60,60C 鉄心
70 スイッチング素子
81 1次導線
82 2次導線
90 鋼板
91,91C 駆動IC(制御部)
101 ECU
102,102C 電源装置
103,103C 点火コイル
104,104C イグナイタ
105 ケース
106 樹脂部
107B カバー
113 点火プラグ
117B (カバーの)外表面
118B (カバーの)内表面
601 中心鉄心
602 外周鉄心
604 露出部
701C 第1のスイッチング素子
702C 第2のスイッチング素子
710 (ケースの)内部空間
801C 第1の1次導線
802C 第2の1次導線
901 長鋼板
902 短鋼板
L1 1次コイル
L11 第1の1次コイル
L12 第2の1次コイル
L2 2次コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8