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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025051064
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20250328BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250328BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250328BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 121
B41J2/01 451
B41J2/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159966
(22)【出願日】2023-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】宮地 亮介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB16
2C056EB30
2C056EB36
2C056EB48
2C056EC15
2C056EC20
2C056EC32
2C056EC40
2C056FA13
2C056KB16
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】印刷画質の低下を軽減できるインクジェット印刷装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド11は、インクを吐出するノズルを有する。加圧タンク21および負圧タンク23は、インクジェットヘッド11に接続されている。循環経路41は、加圧タンク21、インクジェットヘッド11、および負圧タンク23の間でインクの循環を行うための経路である。制御部7は、加圧タンク21とインクジェットヘッド11とを接続する上流側経路42におけるインクの温度、およびインクジェットヘッド11と負圧タンク23とを接続する下流側経路43におけるインクの温度に基づき、インクジェットヘッド11のノズル圧を所定圧力範囲内に維持するように、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力を調整するよう圧力調整部5を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに接続された加圧タンクおよび負圧タンクと、
前記加圧タンク、前記インクジェットヘッド、および前記負圧タンクの間でインクの循環を行うための循環経路と、
前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整する圧力調整部と、
前記圧力調整部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記循環経路の前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドとを接続する経路におけるインクの温度、および前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとを接続する経路におけるインクの温度に基づき、前記インクジェットヘッドのノズル圧を所定圧力範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、環境温度にさらに基づき、前記インクジェットヘッドのノズル圧を前記所定圧力範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であり、
前記制御部は、前記インクジェットヘッドの高さ位置に応じて、前記インクジェットヘッドのノズル圧を前記所定圧力範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記循環経路におけるインクの循環流量を所定流量範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドの上流側に配置されたタンクと、インクジェットヘッドと、その下流側に配置されたタンクとの間でインクを循環させつつ、インクジェットヘッドからインクを吐出して印刷するインク循環式のインクジェット印刷装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置において、環境温度やインクジェットヘッドの発熱の影響により、循環経路を流れている間にインクの温度が変化することがある。このため、インクの循環方向におけるインクジェットヘッドの上流側の経路(上流側経路)を流れるインクの温度、およびインクジェットヘッドの下流側の経路(下流側経路)を流れるインクの温度が変化することがある。
【0004】
ここで、インクの温度の変化に応じてインクの粘度が変化し、インクの粘度の変化に応じてインクが流れる経路の流路抵抗が変化する。このため、上流側経路および下流側経路のそれぞれにおけるインクの温度が変化することで、上流側経路の流路抵抗と下流側経路の流路抵抗との比である流路抵抗比が変化することがある。この流路抵抗比が変化すると、インクジェットヘッドのノズル圧が変化して安定吐出範囲を外れることがある。
【0005】
これに対し、特許文献1には、上流側経路および下流側経路のインクの温度を調整することで、ノズル圧を所定圧に維持するための流路抵抗比を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-56477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、上流側経路および下流側経路のインクの温度調整にある程度の時間を要するため、上流側経路と下流側経路との流路抵抗比を迅速に変化させることが困難である。このため、インクジェットヘッドのノズル圧が安定吐出範囲を外れ、インクの吐出が不安定になることがある。この結果、印刷画質が低下することがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷画質の低下を軽減できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット印刷装置は、インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに接続された加圧タンクおよび負圧タンクと、前記加圧タンク、前記インクジェットヘッド、および前記負圧タンクの間でインクの循環を行うための循環経路と、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整する圧力調整部と、前記圧力調整部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記循環経路の前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドとを接続する経路におけるインクの温度、および前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとを接続する経路におけるインクの温度に基づき、前記インクジェットヘッドのノズル圧を所定圧力範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェット印刷装置によれば、印刷画質の低下を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドブロックの概略構成図である。
図3】圧力テーブルを示す図である。
図4図1に示すインクジェット印刷装置の流体回路モデル図である。
図5図1に示すインクジェット印刷装置の加圧タンクから負圧タンクまでインクが流れる経路におけるインクの温度の推移の一例を示す図である。
図6図1に示すインクジェット印刷装置の加圧タンクから負圧タンクまでインクが流れる経路におけるインクの温度の推移の他の例を示す図である。
図7図1に示すインクジェット印刷装置の加圧タンクから負圧タンクまでインクが流れる経路におけるインクの温度の推移のさらに他の例を示す図である。
図8図1に示すインクジェット印刷装置の加圧タンクから負圧タンクまでインクが流れる経路におけるインクの温度の推移のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0013】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドブロックの概略構成図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。上下方向は鉛直方向であり、左右方向および前後方向は、互いに直交し、かつ、いずれも上下方向に直交し、水平方向に平行な方向である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、ヘッドモジュール部2と、インク循環部3と、インク補給部4と、圧力調整部5と、環境温度センサ6と、制御部7とを備える。
【0016】
ヘッドモジュール部2は、用紙等の印刷媒体にインクを吐出して印刷を行う。ヘッドモジュール部2は、インクジェットヘッド11と、インクバス12,13と、複数の流入管14と、複数の流出管15と、複数の下流側インク温度センサ16とを備える。
【0017】
インクジェットヘッド11は、インク循環部3により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、複数のヘッドブロック17を有する。本実施の形態では、インクジェットヘッド11は、6個のヘッドブロック17を有する。
【0018】
インクジェットヘッド11において、ヘッドブロック17は、左右方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、インクジェットヘッド11において、左右方向に沿って配列された6個のヘッドブロック17が、前後方向における位置を交互にずらして配置されている。6個のヘッドブロック17は、互いに同じ高さ位置に配置されている。
【0019】
図2に示すように、ヘッドブロック17は、インクを吐出する複数のノズル18を有する。なお、図2は、ヘッドブロック17を下から見た図である。
【0020】
ノズル18は、左右方向に沿って配列されている。ノズル18は、ヘッドブロック17の下面であるノズル面17aに開口し、下向きにインクを吐出する。
【0021】
インクバス12は、後述のインク供給管22を介して後述の加圧タンク21から送られてきたインクを、各流入管14を介して各ヘッドブロック17へ供給する。
【0022】
インクバス13は、各ヘッドブロック17で消費されなかったインクを、各流出管15を介して回収し、後述のインク回収管24へ流す。
【0023】
流入管14は、ヘッドブロック17とインクバス12とを接続する。流入管14は、各ヘッドブロック17に1本ずつ対応して設けられている。
【0024】
流出管15は、ヘッドブロック17とインクバス13とを接続する。流出管15は、各ヘッドブロック17に1本ずつ対応して設けられている。
【0025】
下流側インク温度センサ16は、流出管15におけるインク温度を検出する。下流側インク温度センサ16は、各流出管15に1つずつ対応して設けられている。各下流側インク温度センサ16は、後述する下流側経路43におけるインク温度Tを取得するために、各流出管15におけるインクの温度を検出するものである。下流側経路43におけるインク温度Tは、各下流側インク温度センサ16が検出したインク温度の平均値である。
【0026】
インク循環部3は、インクを循環させつつヘッドモジュール部2にインクを供給する。インク循環部3は、加圧タンク21と、インク供給管22と、負圧タンク23と、インク回収管24と、インクポンプ25と、インク送液管26と、インク温度調整部27と、上流側インク温度センサ28とを備える。
【0027】
加圧タンク21は、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する。加圧タンク21には、圧力調整部5により、インクジェットヘッド11にインクを送液するための正圧が付与される。加圧タンク21は、インク供給管22、インクバス12、および各流入管14を介して、インクジェットヘッド11の各ヘッドブロック17に接続されている。加圧タンク21内には、インクの液面上に空気層が形成されている。加圧タンク21は、インクジェットヘッド11より低い位置(下方)に配置されている。
【0028】
加圧タンク21には、加圧タンク液面センサ31が設けられている。加圧タンク液面センサ31は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ31は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0029】
インク供給管22は、加圧タンク21とインクバス12とを接続する。インク供給管22の一部は、後述するヒートシンク56およびヒータパイプ58により構成されている。
【0030】
負圧タンク23は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを受け取って貯留する。負圧タンク23には、圧力調整部5により、インクジェットヘッド11からインクを回収するための負圧が付与される。負圧タンク23は、各流出管15、インクバス13、およびインク回収管24を介して、インクジェットヘッド11の各ヘッドブロック17に接続されている。また、負圧タンク23は、後述するインク補給部4のインクカートリッジ61から補給されるインクを貯留する。負圧タンク23内には、インクの液面上に空気層が形成されている。負圧タンク23は、加圧タンク21と同じ高さ位置に配置されている。
【0031】
負圧タンク23には、負圧タンク液面センサ32が設けられている。負圧タンク液面センサ32は、負圧タンク23内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク液面センサ32は、負圧タンク23内のインクの液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0032】
インク回収管24は、インクバス13と負圧タンク23とを接続する。
【0033】
インクポンプ25は、負圧タンク23から加圧タンク21へインクを送液する。インクポンプ25は、インク送液管26の途中に設けられている。
【0034】
インク送液管26は、インクポンプ25により負圧タンク23から加圧タンク21へと送液されるインクの流路を形成する。
【0035】
ここで、インク供給管22、インク回収管24、インク送液管26、インクバス12,13、各流入管14、および各流出管15により、循環経路41が構成される。循環経路41は、加圧タンク21、インクジェットヘッド11、および負圧タンク23の間でインクの循環を行うための経路である。
【0036】
また、インク供給管22、インクバス12、および各流入管14により、上流側経路42が構成される。上流側経路42は、循環経路41のうちの加圧タンク21とインクジェットヘッド11とを接続する経路である。
【0037】
また、各流出管15、インクバス13、およびインク回収管24により、下流側経路43が構成される。下流側経路43は、循環経路41のうちのインクジェットヘッド11と負圧タンク23とを接続する経路である。
【0038】
インク温度調整部27は、インクの温度を印刷のための適正温度範囲内に維持するために、循環経路41におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部27は、インク供給管22の途中に設けられている。インク温度調整部27は、冷却部51と、加温部52とを備える。
【0039】
冷却部51は、ヒートシンク56と、冷却ファン57とを備える。ヒートシンク56は、その内部を流れるインクを放熱により冷却する。冷却ファン57は、ヒートシンク56に冷却風を送る。
【0040】
加温部52は、ヒータパイプ58と、ヒータ59と、ヒータ温度センサ60とを備える。ヒータパイプ58は、その内部を流れるインクにヒータ59の熱を伝えてインクに加温する。ヒータ59は、ヒータパイプ58を温める。ヒータ温度センサ60は、ヒータ59により温められるヒータパイプ58の温度を検出する。
【0041】
上流側インク温度センサ28は、上流側経路42におけるインク温度Tを検出する。上流側インク温度センサ28は、循環経路41のインクの循環方向におけるインク温度調整部27の下流側近傍に配置されている。
【0042】
インク補給部4は、インク循環部3にインクを補給する。インク補給部4は、インクカートリッジ61と、インク補給弁62と、インク補給管63とを備える。
【0043】
インクカートリッジ61は、インクジェットヘッド11による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ61内のインクは、インク補給管63を介してインク循環部3の負圧タンク23に供給される。
【0044】
インク補給弁62は、インク補給管63内のインクの流路を開閉する。負圧タンク23へインクを補給する際、インク補給弁62が開かれる。
【0045】
インク補給管63は、インクカートリッジ61と負圧タンク23とを接続する。
【0046】
圧力調整部5は、インク循環部3の加圧タンク21および負圧タンク23の圧力を調整する。圧力調整部5は、加圧タンク大気開放弁71と、加圧タンク大気開放管72と、加圧タンク圧力調整弁73と、加圧タンク圧力調整管74と、加圧圧力センサ75と、負圧タンク大気開放弁76と、負圧タンク大気開放管77と、負圧タンク圧力調整弁78と、負圧タンク圧力調整管79と、負圧圧力センサ80と、エアポンプ81と、エアポンプ用配管82とを備える。
【0047】
加圧タンク大気開放弁71は、加圧タンク21を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、加圧タンク大気開放管72内の空気の流路を開閉する。
【0048】
加圧タンク大気開放管72は、加圧タンク21を大気開放するための空気の流路を形成する。加圧タンク大気開放管72は、一端が加圧タンク21の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
【0049】
加圧タンク圧力調整弁73は、加圧タンク21内の圧力を調整するために、加圧タンク圧力調整管74内の空気の流路を開閉する。
【0050】
加圧タンク圧力調整管74は、加圧タンク21内の圧力調整のための空気の流路を形成する。加圧タンク圧力調整管74は、加圧タンク大気開放管72より流路抵抗が大きいパイプからなる。具体的には、加圧タンク圧力調整管74は、加圧タンク大気開放管72より細いパイプからなる。加圧タンク圧力調整管74は、一端が加圧タンク21の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
【0051】
加圧圧力センサ75は、加圧タンク21内の圧力を検出する。
【0052】
負圧タンク大気開放弁76は、負圧タンク23を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、負圧タンク大気開放管77内の空気の流路を開閉する。
【0053】
負圧タンク大気開放管77は、負圧タンク23を大気開放するための空気の流路を形成する。負圧タンク大気開放管77は、一端が負圧タンク23の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
【0054】
負圧タンク圧力調整弁78は、負圧タンク23内の圧力を調整するために、負圧タンク圧力調整管79内の空気の流路を開閉する。
【0055】
負圧タンク圧力調整管79は、負圧タンク23内の圧力調整のための空気の流路を形成する。負圧タンク圧力調整管79は、負圧タンク大気開放管77より流路抵抗が大きいパイプからなる。具体的には、負圧タンク圧力調整管79は、負圧タンク大気開放管77より細い、加圧タンク圧力調整管74と同程度の太さのパイプからなる。負圧タンク圧力調整管79は、一端が負圧タンク23の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
【0056】
負圧圧力センサ80は、負圧タンク23内の圧力を検出する。
【0057】
エアポンプ81は、負圧タンク23から加圧タンク21へ空気を送ることで、加圧タンク21および負圧タンク23にインク循環のための圧力を生成する。また、エアポンプ81は、インク循環時における加圧タンク21および負圧タンク23の圧力調整に用いられる。
【0058】
エアポンプ用配管82は、エアポンプ81により負圧タンク23から加圧タンク21へ送られる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管82は、一端が負圧タンク23の空気層に接続され、他端が加圧タンク21の空気層に接続されている。
【0059】
ここで、インク供給管22のインクバス12側の一部およびインク回収管24のインクバス13側の一部を除くインク循環部3、インク補給部4、および圧力調整部5により、本体モジュール部86が構成される。
【0060】
また、上流側経路42のインク供給管22および下流側経路43のインク回収管24の本体モジュール部86とヘッドモジュール部2との間の部分を、インク経路露出部87とする。インク経路露出部87は、インク供給管22およびインク回収管24の内部を流れるインクの温度が、インクジェット印刷装置1が設置された環境の温度である環境温度(室温)の影響を受けやすい部分である。
【0061】
環境温度センサ6は、環境温度Tを検出する。
【0062】
制御部7は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部7は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0063】
制御部7は、図3に示す圧力テーブル91を記憶している。圧力テーブル91は、上流側経路42におけるインク温度T、下流側経路43におけるインク温度T、環境温度T、加圧タンク21の圧力P、および負圧タンク23の圧力Pを関連付けたテーブルである。
【0064】
ここで、前述のように、上流側経路42におけるインク温度Tは、上流側インク温度センサ28により検出されたインクの温度である。また、下流側経路43におけるインク温度Tは、各下流側インク温度センサ16により検出されたインクの温度の平均値である。
【0065】
圧力テーブル91における圧力P,Pの値は、インク温度T,T、および環境温度Tの組み合わせに応じた、循環経路41におけるインクの循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、インクジェットヘッド11のノズル圧Pを安定吐出範囲(所定圧力範囲に相当)内に維持するための値である。圧力テーブル91における圧力P,Pの値は、予め計算で求められたものである。ここで、ノズル圧Pの安定吐出範囲は、ノズル18が安定してインクを吐出できるノズル圧Pの範囲である。また、所定流量範囲は、インク循環時(印刷時)において適正なインク循環流量の範囲である。
【0066】
制御部7は、印刷動作中において、インク温度T,Tおよび環境温度Tに基づき、圧力テーブル91を参照して、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持するように、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整するよう圧力調整部5を制御する。
【0067】
次に、圧力テーブル91における圧力P,Pの値の詳細について説明する。
【0068】
インクジェットヘッド11のノズル圧Pは、下記の式(1)で表される。
【0069】
=(ΛP+P)/(Λ+1)+P …(1)
ここで、Pは、インクジェットヘッド11の水頭圧である。また、Λは、上流側経路42と下流側経路43との流路抵抗比である。式(1)から、ノズル圧Pは、流路抵抗比Λによって変化することが分かる。ここで、本実施の形態では、インクジェットヘッド11の高さ位置(インクジェットヘッド11と加圧タンク21および負圧タンク23との高低差)は固定であり、水頭圧Pは固定値である。
【0070】
上流側経路42の流路抵抗をR、下流側経路43の流路抵抗をRとすると、流路抵抗比Λは、下記の式(2)で表される。
【0071】
Λ=R/R …(2)
また、上流側経路42の流路抵抗をR、下流側経路43の流路抵抗をRは、それぞれ下記の式(3)、式(4)で表される。
【0072】
=Rik+Rk0+Rk1 …(3)
=Rif+Rf0+Rf1 …(4)
ここで、図4に示すように、Rikは、上流側経路42のうちインク経路露出部87に含まれる部分の流路抵抗である。Rk0は、上流側経路42のうち本体モジュール部86内の部分の流路抵抗である。Rk1は、上流側経路42のうちヘッドモジュール部2内の部分の流路抵抗である。Rifは、下流側経路43のうちインク経路露出部87に含まれる部分の流路抵抗である。Rf0は、下流側経路43のうち本体モジュール部86内の部分の流路抵抗である。Rf1は、下流側経路43のうちヘッドモジュール部2内の部分の流路抵抗である。
【0073】
循環経路41におけるインクの循環流量Qは、下記の式(5)で表される。
【0074】
Q=(P-P)/(R+R) …(5)
ところで、一般的にインクの流路の流路抵抗Rは、下記の式(6)で表される。
【0075】
R=128Lμ/πD …(6)
ここで、Lは流路長、Dは流路径、μはインクの粘度である。インクの粘度μは、下記の式(7)で表される。
【0076】
μ=α・exp(β/T) …(7)
ここで、α,βはインクの物性による定数である。Tはインクの温度である。
【0077】
式(6)、式(7)より、流路を流れるインクの温度Tが変化すると、流路抵抗Rが変化する。すなわち、インクの温度Tが高いほど、インクの粘度μが低下し、流路抵抗Rが小さくなる。したがって、上述の上流側経路42の流路抵抗Rおよび下流側経路43の流路抵抗Rは、それぞれの経路を流れるインクの平均温度に応じて変化する。
【0078】
ここで、加圧タンク21から負圧タンク23までインクが流れる経路におけるインクの温度の推移の例を、図5図8に示す。図5図8の例では、インクの温度は環境温度よりも高い。
【0079】
図5は、インク経路露出部87が比較的長い構成である場合において、加温部52によりインクに加温した場合のインクの温度の推移を示す。
【0080】
図5の例では、上流側経路42を流れるインクは、加温部52により加温された後、インク経路露出部87において比較的長時間、環境温度の影響を受けることで、インクジェットヘッド11に到達するまでに冷やされる。また、下流側経路43においても、インク経路露出部87において環境温度の影響でインクが冷やされる。このため、上流側経路42を流れるインクの平均温度と下流側経路43を流れるインクの平均温度との間で、比較的大きな差が生じる。
【0081】
図6は、インク経路露出部87が比較的長い構成である場合において、冷却部51によりインクを冷却した場合のインクの温度の推移を示す。
【0082】
図6の例では、上流側経路42を流れるインクは、冷却部51により冷やされた後、インク経路露出部87において比較的長時間、環境温度の影響を受けることで、インクジェットヘッド11に到達するまでにさらに冷やされる。冷やされたインクは、インクジェットヘッド11において、その駆動時の発熱によって温められる。インクジェットヘッド11で温められたインクは、下流側経路43におけるインク経路露出部87の部分で環境温度の影響で冷やされる。このような図6の例では、図5の例と比べると、上流側経路42を流れるインクの平均温度と下流側経路43を流れるインクの平均温度との差は小さい。
【0083】
図7は、インク経路露出部87が比較的短い構成である場合において、加温部52によりインクに加温した場合のインクの温度の推移を示す。
【0084】
図7の例でも、図5の例と同様に、上流側経路42を流れるインクおよび下流側経路43を流れるインクが、インク経路露出部87において冷やされる。しかし、図7の例では、インク経路露出部87が比較的短いため、インクの温度の低下度合いは比較的小さい。このため、上流側経路42を流れるインクの平均温度と下流側経路43を流れるインクの平均温度との差は比較的小さい。
【0085】
図8は、インク経路露出部87が比較的短い構成である場合において、冷却部51によりインクを冷却した場合のインクの温度の推移を示す。
【0086】
図8の例でも、図6の例と同様に、インクジェットヘッド11で温められたインクは、下流側経路43におけるインク経路露出部87の部分で環境温度の影響で冷やされる。しかし、図8の例では、インク経路露出部87が比較的短いため、インクの温度の低下度合いは比較的小さい。このような図8の例では、図7の例と比べると、上流側経路42を流れるインクの平均温度と下流側経路43を流れるインクの平均温度との差は大きい。この温度差は、インクジェットヘッド11の発熱量(印字率)が大きいほど、大きくなりやすい。
【0087】
このように、インク経路露出部87が、図5図6の例のように比較的長い場合でも、図7図8の例のように比較的短い場合でも、上流側経路42を流れるインクの平均温度と下流側経路43を流れるインクの平均温度との差が変化することがある。
【0088】
ここで、前述のように、上流側経路42の流路抵抗Rおよび下流側経路43の流路抵抗Rは、それぞれの経路を流れるインクの平均温度に応じて変化する。このため、上流側経路42を流れるインクの平均温度と下流側経路43を流れるインクの平均温度との差の変化に応じて、流路抵抗比Λが変化する。
【0089】
これに対し、上流側経路42を流れるインクの平均温度は、上流側インク温度センサ28により検出されたインク温度Tおよび環境温度Tから予測可能なものである。また、下流側経路43を流れるインクの平均温度は、各下流側インク温度センサ16の検出値の平均値であるインク温度Tおよび環境温度Tから予測可能なものである。このため、流路抵抗R,Rおよび流路抵抗比Λは、インク温度T,Tおよび環境温度Taから算出可能なものである。
【0090】
また、式(1)から、流路抵抗比Λの変化に応じて、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整することで、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持することが可能である。
【0091】
また、式(5)から、流路抵抗R,Rの変化に応じて、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整することで、循環流量Qを所定流量範囲内に維持することが可能である。
【0092】
したがって、インク温度T,T、および環境温度Tに基づき、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持できるような圧力P,Pを求めることができる。
【0093】
そこで、本実施の形態では、インク温度T,T、および環境温度Tの組み合わせごとに、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持できる調整用の圧力P,Pの値を予め求め、それらの値を圧力テーブル91に記憶している。
【0094】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0095】
印刷ジョブが入力されると、制御部7は、圧力調整部5により、加圧タンク21および負圧タンク23にインク循環のためのそれぞれの設定圧を生成させる。加圧タンク21の設定圧は正圧であり、負圧タンク23の設定圧は負圧である。
【0096】
具体的には、まず、制御部7は、加圧タンク大気開放弁71および負圧タンク大気開放弁76を閉鎖する。ここで、インクジェット印刷装置1が動作しない待機中は、加圧タンク大気開放弁71および負圧タンク大気開放弁76は開放され、加圧タンク圧力調整弁73および負圧タンク圧力調整弁78は閉鎖されている。
【0097】
次いで、制御部7は、エアポンプ81の駆動を開始させる。これにより、加圧タンク21、負圧タンク23にそれぞれ正圧、負圧が生成され始める。
【0098】
これにより、インク循環部3におけるインク循環が開始され、加圧タンク21からインクジェットヘッド11を経由して負圧タンク23へインクが流れる。
【0099】
この後、制御部7は、加圧圧力センサ75および負圧圧力センサ80の検出値に基づき、加圧タンク圧力調整弁73および負圧タンク圧力調整弁78を開閉制御する。加圧タンク21および負圧タンク23にそれぞれの設定圧が生成されると、制御部7は、エアポンプ81を停止させる。
【0100】
次いで、制御部7は、印刷ジョブの実行を開始する。具体的には、制御部7は、印刷ジョブに基づき、インクジェットヘッド11からインクを吐出させて印刷媒体に画像を印刷させる。
【0101】
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク23に回収される。加圧タンク液面センサ31がオフで負圧タンク液面センサ32がオンの状態になると、制御部7は、インクポンプ25を駆動させる。これにより、負圧タンク23から加圧タンク21へインクが送液される。加圧タンク21がオンになると、制御部7は、インクポンプ25を停止させる。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
【0102】
また、加圧タンク液面センサ31および負圧タンク液面センサ32がともにオフになると、制御部7は、インク補給弁62を開放する。これにより、インクカートリッジ61から負圧タンク23へインクが補給される。負圧タンク液面センサ32がオンになると、制御部7は、インク補給弁62を閉鎖する。
【0103】
また、制御部7は、印刷動作中において、インクジェットヘッド11に供給されるインクの温度が適正温度範囲内を維持するように、インク温度調整部27を制御してインクの温度調整を行う。
【0104】
また、制御部7は、印刷動作中において、上流側インク温度センサ28により検出されるインク温度T、および環境温度センサ6により検出される環境温度Tを監視している。また、制御部7は、各下流側インク温度センサ16の検出値を監視し、各下流側インク温度センサ16の検出値の平均値であるインク温度Tを算出している。
【0105】
そして、制御部7は、インク温度T,Tおよび環境温度Tに基づき、圧力テーブル91を参照して、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整するよう圧力調整部5を制御する。
【0106】
具体的には、制御部7は、インク温度T,T、および環境温度Tの組み合わせに応じた圧力P,Pの値を圧力テーブル91から取得する。そして、制御部7は、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pが圧力テーブル91から取得した値になるように、エアポンプ81、加圧タンク圧力調整弁73および負圧タンク圧力調整弁78を制御する。
【0107】
このような圧力調整部5の制御により、循環経路41におけるインクの循環流量Qが所定流量範囲内に維持されるとともに、インクジェットヘッド11のノズル圧Pが安定吐出範囲内に維持される。
【0108】
印刷ジョブに基づく印刷が終了すると、制御部7は、圧力調整部5を制御してインク循環部3におけるインク循環を終了させる。具体的には、制御部7は、エアポンプ81を停止状態とし、加圧タンク圧力調整弁73および負圧タンク圧力調整弁78を閉鎖状態とする。次いで、制御部7は、加圧タンク大気開放弁71および負圧タンク大気開放弁76を開放する。これにより、一連の動作が終了となる。
【0109】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部7は、上流側経路42におけるインク温度T、下流側経路43におけるインク温度T、および環境温度Tに基づき、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持するように、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整するよう圧力調整部5を制御する。
【0110】
これにより、上流側経路42および下流側経路43のそれぞれを流れるインクの温度(平均温度)が変化することで流路抵抗比Λが変化しても、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pの調整により、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持するように迅速に調整できる。この結果、ノズル圧Pが安定吐出範囲を外れること、および循環流量Qが不足することが抑えられるので、印刷画質の低下を軽減できる。
【0111】
なお、上述した実施の形態では、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持するように、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整した。しかし、循環流量Qを所定流量範囲内に維持する条件を省略してもよい。この場合でも、ノズル圧Pが安定吐出範囲を外れることを低減できるので、印刷画質の低下を軽減できる。
【0112】
ここで、循環流量Qを所定流量範囲内に維持する条件を省略した場合には、循環流量Qが所定流量範囲の下限より小さくなることで、インクがインク経路露出部87を通過する時間が長くなることがある。この場合、インクの温度に対する環境温度の影響が想定よりも大きくなり、予め求めた調整用の圧力P,Pの値が適切でなくなることがある。これに対し、循環流量Qを所定流量範囲内に維持するようにすることで、ノズル圧Pが安定吐出範囲を外れることをより抑えることができる。
【0113】
また、上述した実施の形態では、インク温度T,T、および環境温度センサ6で検出された環境温度Tに基づき、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整した。しかし、この圧力P,Pの調整に用いる条件から、環境温度センサ6で検出された環境温度Tを省略してもよい。
【0114】
この場合、例えば、環境温度が標準的な温度である場合のインク温度T,Tに応じた圧力P,Pの値をテーブルに保存し、このテーブルを用いて、インク温度T,Tに基づき、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持するように、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整するようにすることができる。この場合においても、循環流量Qを所定流量範囲内に維持する条件を省略してもよい。この場合でも、ノズル圧Pが安定吐出範囲を外れることを低減できるので、印刷画質の低下を軽減できる。
【0115】
また、上述した実施の形態では、圧力テーブル91を用いて、圧力P,Pの調整を行った。しかし、制御部7は、インク温度T,Tおよび環境温度Tに基づき、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持できる圧力P,Pの値を計算により求め、計算により得られた値に圧力P,Pを調整するようにしてもよい。この場合においても、循環流量Qを所定流量範囲内に維持する条件を省略してもよい。また、圧力P,Pの調整に用いる条件から、環境温度センサ6で検出された環境温度Tを省略してもよい。
【0116】
また、上述した実施の形態では、インクジェットヘッド11の高さ位置が固定であり、水頭圧Pは固定値であるとした。しかし、インクジェットヘッド11の高さ位置を変更可能な構成としてもよい。
【0117】
この場合において、インクジェットヘッド11の高さ位置に応じて水頭圧Pが変化すると、式(1)から、ノズル圧Pも変化することが分かる。したがって、この場合、制御部7は、インク温度T,Tおよび環境温度Tに加えて、インクジェットヘッド11の高さ位置に基づき、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持するように、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整するよう圧力調整部5を制御すればよい。
【0118】
この場合、例えば、インクジェットヘッド11の高さ位置ごとに、図3の圧力テーブル91のようなテーブルを用意しておき、それらのテーブルを用いて、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整することができる。テーブルを用いるかわりに計算により圧力P,Pの値を求めてもよい。この場合においても、圧力P,Pの調整に用いる条件から、環境温度センサ6で検出された環境温度Tを省略してもよい。
【0119】
上述のようにインクジェットヘッド11の高さ位置に基づき圧力P,Pを調整することで、インクジェットヘッド11の高さ位置を変更可能な構成にも対応可能であるため、インクジェットヘッド11の配置の自由度を高めることができる。
【0120】
また、上述した実施の形態では、インク温度T,T、および環境温度Tに基づき、循環流量Qを所定流量範囲内に維持しつつ、ノズル圧Pを安定吐出範囲内に維持するように、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整した。しかし、加圧タンク21および負圧タンク23の圧力P,Pを調整するかわりに、上流側経路42の流路抵抗Rおよび下流側経路43の流路抵抗Rを調整するようにしてもよい。
【0121】
ここで、式(1)、式(2)から、流路抵抗R,Rを調整することで、流路抵抗比Λを調整し、ノズル圧Pを調整できる。また、式(5)から、流路抵抗R,Rを調整することで、循環流量Qを調整できる。
【0122】
例えば、上流側経路42のインク供給管22および下流側経路43のインク回収管24のそれぞれに流路抵抗を調整する機構を配置することで、流路抵抗R,Rを調整可能とすることができる。流路抵抗を調整する機構としては、例えば、流路の断面積を調整する調整弁を用いることができる。
【0123】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0124】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0125】
(付記1)
インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに接続された加圧タンクおよび負圧タンクと、
前記加圧タンク、前記インクジェットヘッド、および前記負圧タンクの間でインクの循環を行うための循環経路と、
前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整する圧力調整部と、
前記圧力調整部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記循環経路の前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドとを接続する経路におけるインクの温度、および前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとを接続する経路におけるインクの温度に基づき、前記インクジェットヘッドのノズル圧を所定圧力範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0126】
(付記2)
前記制御部は、環境温度にさらに基づき、前記インクジェットヘッドのノズル圧を前記所定圧力範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とする付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【0127】
(付記3)
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であり、
前記制御部は、前記インクジェットヘッドの高さ位置に応じて、前記インクジェットヘッドのノズル圧を前記所定圧力範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とする付記1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【0128】
(付記4)
前記制御部は、前記循環経路におけるインクの循環流量を所定流量範囲内に維持するように、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの圧力を調整するよう前記圧力調整部を制御することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0129】
1 インクジェット印刷装置
2 ヘッドモジュール部
3 インク循環部
4 インク補給部
5 圧力調整部
6 環境温度センサ
7 制御部
11 インクジェットヘッド
12,13 インクバス
14 流入管
15 流出管
16 下流側インク温度センサ
17 ヘッドブロック
17a ノズル面
18 ノズル
21 加圧タンク
22 インク供給管
23 負圧タンク
24 インク回収管
25 インクポンプ
26 インク送液管
27 インク温度調整部
28 上流側インク温度センサ
41 循環経路
42 上流側経路
43 下流側経路
51 冷却部
52 加温部
71 加圧タンク大気開放弁
72 加圧タンク大気開放管
73 加圧タンク圧力調整弁
74 加圧タンク圧力調整管
75 加圧圧力センサ
76 負圧タンク大気開放弁
77 負圧タンク大気開放管
78 負圧タンク圧力調整弁
79 負圧タンク圧力調整管
80 負圧圧力センサ
81 エアポンプ
82 エアポンプ用配管
86 本体モジュール部
87 インク経路露出部
91 圧力テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8