(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005116
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】釣竿及びエンドグリップ
(51)【国際特許分類】
A01K 87/00 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
A01K87/00 640C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105147
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】神納 芳行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠太
(72)【発明者】
【氏名】川島 公一
(72)【発明者】
【氏名】徳山 雄己
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AH02
(57)【要約】
【課題】釣人がポンピング動作を安定して容易に行うことができる釣竿を提供すること。
【解決手段】この釣竿10は、竿本体11の後端部にエンドグリップ14を備える。エンドグリップ14は、グリップ本体33を備える。グリップ本体33は、ベース31および端面部材32を備える。端面部材32は、所定の硬さを有するゴムまたはエラストマーからなる。ベース31は、径方向18に膨らむ膨出部34を有し、斜面38が形成されている。端面部材32の後端面36と前記斜面38との間に傾斜面82が介在する。前記後端面36は、前記斜面38と角度θ(125度)で交差する。端面部材32は筒軸45を有し、竿本体11に設けられたギンバルジョイント25が筒軸45に嵌め込まれる。筒軸45は突条56を有し、この突条56がギンバルジョイント25と係合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿の竿軸方向後側に接続される釣竿用エンドグリップであって、
前記釣竿の径方向外側に向けて膨出する膨出部と、
前記膨出部の前記竿軸方向後側に設けられる端部と、を有するグリップ本体を備え、
前記端部は、
前記竿軸方向と交差する第1平面によって規定される第1端部と、
前記第1平面と鈍角で交差する第2平面によって規定される第2端部と、を有する釣竿用エンドグリップ。
【請求項2】
前記グリップ本体は、前記釣竿と前記グリップ本体との相対回転を規制する回転規制部を有する、請求項1に記載の釣竿用エンドグリップ。
【請求項3】
前記グリップ本体は、前記釣竿が挿入される挿入孔を有し、
前記回転規制部は、前記挿入孔の内面に設けられ、前記釣竿と係合する係合部を有する、請求項2に記載の釣竿用エンドグリップ。
【請求項4】
前記端部は、前記第1端部と前記第2端部とを接続する接続部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の釣竿用エンドグリップ。
【請求項5】
前記接続部は、曲面によって規定される、請求項4に記載の釣竿用エンドグリップ。
【請求項6】
前記第1端部は、前記釣竿の径方向に延びる放射状溝を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の釣竿用エンドグリップ。
【請求項7】
前記第1端部は、前記釣竿の周方向に沿って延びる環状溝を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の釣竿用エンドグリップ。
【請求項8】
前記グリップ本体は、
前記膨出部を形成するベース部と、
前記ベース部に挿入される筒軸と、
前記筒軸に設けられ、前記第1端部を形成するフランジと、を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の釣竿用エンドグリップ。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の釣竿用エンドグリップを備える釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿に関し、具体的には釣竿の後端に設けられたエンドグリップの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型魚をターゲットとする釣りでは、魚とのファイトにおいて釣竿およびこれを支える釣人に大きな力が加わるため、従来、さまざまな問題が指摘されている。
【0003】
たとえば、釣竿は、魚とのファイトを容易にするためにエンドグリップを備えている。大型魚とのファイトにおいて釣人がポンピング動作をする際に、釣人は、エンドグリップを腹部に当接させ、このエンドグリップを支点として釣竿を俯仰させる。このとき、釣人の腹部にエンドグリップの角部が押し付けられて大きな圧力が加わるため、釣人の身体的な負担が大きい。加えて、エンドグリップの角部がピンポイントで釣人の腹部に当接するので、釣人にとってファイト中にロッドを安定させにくい。
【0004】
このような事情に鑑みて、従来、エンドグリップの構造が提案されている(たとえば特許文献1から特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-34198号公報
【特許文献2】特開2008-17792号公報
【特許文献3】特開2000-106789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1あるいは特許文献3に開示されたエンドグリップは、釣人の腹部への食い込みを防止するため、柔軟性のある材質からなり、エンドグリップの外形サイズが大きく設定されている。しかしながら、これらのエンドグリップも、その角部がファイト中に釣人の腹部に押し付けられることから、なお釣人の負担は大きい。
【0007】
特許文献2に開示されたエンドグリップは、ピボットを介して釣竿本体に連結されており、ファイト中にエンドグリップの角部が釣人の腹部に強く押し付けられることは回避されるが、構造が複雑であり、製造の手間が増え、製造コストも上昇してしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、大型の魚をターゲットとする釣りにおいて、ファイト中のポンピング動作を釣人の負担を軽減して安定して容易に行うことができる釣竿、並びに、この釣竿に適用されるエンドグリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 前記課題を解決するために、本件発明の第1側面の釣竿用エンドグリップは、釣竿の竿軸方向後側に接続される釣竿用エンドグリップであって、前記釣竿の径方向外側に向けて膨出する膨出部と、前記膨出部の前記竿軸方向後側に設けられる端部と、を有するグリップ本体を備える。前記端部は、前記竿軸方向と交差する第1平面によって規定される第1端部と、前記第1平面と鈍角で交差する第2平面によって規定される第2端部と、を有する。
【0010】
この構成によれば、いわゆる魚とのファイトにおいて、釣人は、グリップ本体を腹部に当てた状態で釣竿を腕で支え、ポンピング動作、すなわち、グリップ本体と腹部との接点を支点として、釣竿を俯仰させつつリーリングを行う。このとき、グリップ本体の第1端部が前記腹部と当接し、釣竿が起立されることにより、グリップ本体の膨出部が前記腹部と転がり接触しつつ、前記第2端部が前記第1端部に代わって前記腹部と接触する。同様に、起立された釣竿が倒伏されるときは、グリップ本体の膨出部が前記腹部と転がり接触しつつ、前記第1端部が前記第2端部に代わって前記腹部と接触する。前記第1端部は第1平面により規定され、前記第2端部は、前記第1平面と鈍角を成して交差する第2平面により規定されるから、前記腹部は、グリップ本体と常に面接触する。したがって、釣人は、ファイト中のポンピング動作を安定して容易に行うことができる。しかも、このグリップ本体に前記第1平面および第2平面が形成されているだけであるから、グリップ本体および釣竿は、コスト安価に製造され得る。
【0011】
(2) 本件発明の第1側面にしたがう第2側面の釣竿用エンドグリップにおいては、前記グリップ本体は、前記釣竿と前記グリップ本体との相対回転を規制する回転規制部を有する。
【0012】
この構成では、回転規制部により前記釣竿と前記グリップ本体との相対回転が規制される。したがって、釣人は、魚とのファイト中に釣竿を安定させることができる。
【0013】
(3) 本件発明の第2側面にしたがう第3側面の釣竿用エンドグリップにおいては、前記グリップ本体は、前記釣竿が挿入される挿入孔を有し、前記回転規制部は、前記挿入孔の内面に設けられ、前記釣竿と係合する係合部を有する。
【0014】
この構成では、前記釣竿の後端部が前記グリップ本体の挿入孔に挿入されると、前記係合部が前記釣竿と係合し、前記釣竿と前記グリップ本体との相対回転が規制される。
【0015】
(4) 本件発明の第1側面から第3側面のいずれかにしたがう第4側面の釣竿用エンドグリップにおいては、前記端部は、前記第1端部と前記第2端部とを接続する接続部を備えていてもよい。
【0016】
この構成では、前記ポンピング動作の際に、釣人の腹部は、前記接続部を介して前記第1端部および第2端部が交互に面接触する。
【0017】
(5) 本件発明の第4側面にしたがう第5側面の釣竿用エンドグリップにおいては、前記接続部は、曲面によって規定される。
【0018】
この構成では、前記ポンピング動作において、釣人の腹部が前記第1端部から前記第2端部に、あるいは前記第2端部から前記第1端部に接触する際に、前記腹部に極端に大きい面圧が作用することがない。したがって、釣人は、より安定したポンピング動作をすることができる。
【0019】
(6) 本件発明の第1側面から第5側面のいずれかにしたがう第6側面の釣竿用エンドグリップにおいては、前記第1端部は、前記釣竿の径方向に延びる放射状溝を有する。
【0020】
この構成では、前記放射状溝が設けられることにより、前記第1端部は、前記腹部との間に滑り止め効果を発揮する。したがって、釣人は、より安定して釣竿を支えることができ、より安定したポンピング動作が可能である。
【0021】
(7) 本件発明の第1側面から第6側面のいずれかにしたがう第7側面の釣竿用エンドグリップにおいては、前記第1端部は、前記釣竿の周方向に沿って延びる環状溝を有する。
【0022】
この構成では、前記環状溝が設けられることにより、前記第1端部は、前記腹部との間に滑り止め効果を発揮する。したがって、釣人は、より安定して釣竿を支えることができ、より安定したポンピング動作が可能である。
【0023】
(8) 本件発明の第1側面から第7側面のいずれかにしたがう第8側面の釣竿用エンドグリップにおいては、前記グリップ本体は、前記膨出部を形成するベース部と、前記ベース部に挿入される筒軸と、前記筒軸に設けられ、前記第1端部を形成するフランジと、を有する。
【0024】
この構成では、前記グリップ本体は、ベース部と、フランジを有する軸部とを有する構造である。これにより、前記第1端部と前記第2端部は、異なる別部材に設けられることになるから、前記グリップ本体において前記第1端部および前記第2端部が容易に形成される。しかも、グリップ本体の製造において、前記第1端部を構成する材料と前記第2端部を構成する材料を異なるものとすることができる。
【0025】
(9) 前記課題を解決するために、本件発明の第9側面の釣竿は、前記釣竿用エンドグリップを備える。
【0026】
この構成によれば、釣人は、ファイト中のポンピング動作を安定して容易に行うことができる。しかも、前記グリップ本体の構造が簡単であるから、釣竿のコストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るエンドグリップ14の斜視図である。
【
図4】
図4は、エンドグリップ14の断面図である。
【
図7】
図7は、エンドグリップ14の外形を示す図である。
【
図8】
図8は、エンドグリップ14の構成要素であるベース31の斜視図である。
【
図10】
図10は、エンドグリップ14の構成要素である端面部材32の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0029】
1.釣竿の概要と特徴点
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の外観斜視図である。
【0031】
この釣竿10は、大型魚をターゲットとするものであり、竿本体11と、この竿本体11の所定位置に設けられたリールシート12と、フロントグリップ13と、リアグリップ24と、エンドグリップ14(特許請求の範囲に記載された「釣竿用エンドグリップ」に相当)とを有する。同図において、参照符号15は、釣竿10(釣竿本体11)の中心である竿軸を示している。参照符号16は、竿軸15の方向に沿う前側を示し、参照符号17は、竿軸15の方向に沿う後側を示している。竿軸15の方向に直交する方向は、釣竿10の径方向18である。
【0032】
竿本体11は、単一のあるいは複数の棒状体からなり、既知の要領で製造される。たとえば、炭素繊維に樹脂が含浸されたシート(プリプレグ)が所定形状に裁断され、これがマンドレルの周囲に巻回される。この状態で所定の熱処理が施されることによって、細長筒状の部材(前記棒状体)が焼成される。単一の棒状体が竿本体11を構成する場合もあるが、複数の棒状体が既知の継ぎ形式により連結され、竿本体11が組み立てられる場合もある。なお、竿本体11は、中実棒状の部材から構成されていてもよい。複数の釣糸ガイド23が竿本体11の所定の位置に設けられる。同図では、複数の釣糸ガイド23のうち一部のみが図示されている。釣糸ガイド23の構造は既知であるため、その詳しい説明は省略される。
【0033】
図2は、
図1における要部拡大断面図である。
図2は、釣竿10の後端部の構造を詳細に示している。
【0034】
図1が示すように、リールシート12は、釣用リールを保持するものであって、竿本体11の所定位置に固定される。リールシート12は、シート本体19と、固定フード20と、可動フード21とを有する。シート本体19は、筒状の部材である。
【0035】
図2が示すように、竿本体11は、シート本体19に挿入され、両者が固定される。このとき、シート本体19の中心と竿軸15とが一致する。本実施形態では、竿本体11はギンバルジョイント25を備えている。このギンバルジョイント25は、竿本体11の後端に固定される。ギンバルジョイント25の後端面に径方向18(同図では、紙面に垂直な方向)に延びる溝26が設けられている。なお、ギンバルジョイント25の構造は既知であるため、その詳しい説明は省略される。
【0036】
図1が示すように、シート本体19は、シート面22を有する。前記釣用リールの脚がこのシート面22上に載置され、固定フード20および可動フード21により挟持される。なお、リールシート12は既知の構造であるため、その詳しい説明は省略される。フロントグリップ13およびリアグリップ24は、それぞれ、リールシート12の前側16および後側17に設けられている。これらは樹脂またはゴムからなり、円柱状の外形を有する。フロントグリップ13およびリアグリップ24の構造は既知であるため、その詳しい説明は省略される。
【0037】
図3は、エンドグリップ14の斜視図であり、同図(a)は竿軸15方向の後側17から見た図、同図(b)は竿軸15方向の前側16から見た図である。
図4は、エンドグリップ14の断面図である。
図5および
図6は、それぞれ、
図3におけるV-矢視図およびVI-矢視図である。
図7は、エンドグリップ14の外形を示しており、同図(b)は正面図(
図3におけるVII-矢視図)、同図(a)および(b)は、それぞれ、左側面図および右側面図である。
【0038】
本実施形態に係る釣竿10の特徴とするところは、エンドグリップ14の構造である。
図2ないし
図4が示すように、エンドグリップ14は、竿本体11に対して竿軸15方向の後側17に接続される。エンドグリップ14は、ベース31(特許請求の範囲に記載された「ベース部」に相当)および端面部材32を有し、これらがグリップ本体33を構成している。グリップ本体33は、
図3および
図4が示すような異形を呈し、前記径方向18に膨らむ膨出部34と、この膨出部34の前記後側17に設けられる端部35とを備える。この端部35は、第1端部37および第2端部39を有する。第1端部37は、竿軸15と直交する後端面36(特許請求の範囲に記載された「第1平面」に相当)により規定され、第2端部39は、前記後端面36と所定の角度θで交差する斜面38(特許請求の範囲に記載された「第2平面」に相当)により規定される。エンドグリップ14が第1端部37および第2端部39を備えることにより、釣人は、魚とのファイトにおいて釣竿10を安定して保持し、ポンピング動作を容易に行うことができる。
【0039】
2.ベースの構造
【0040】
図8は、ベース31の斜視図であり、竿軸15方向の後側17から見た図である。
図9は、ベース31の断面図である。
【0041】
ベース31は、発泡樹脂、典型的にはエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる。この発泡樹脂の硬さは、JIS K7312:1996 スプリング硬さ試験タイプCの試験方法における硬度が35度以上70度以下であるのが好ましい。ベース31に貫通孔40が設けられている。この貫通孔40は、竿軸15に沿ってベース31を貫通している。ベース31に凹部41が設けられている。この凹部41は、ベース31の後端に開口し、貫通孔40の竿軸15方向の後側17に連続している。本実施形態では、貫通孔40は円形の孔であり、凹部41は、貫通孔40が拡径された浅い孔である。この凹部41の周縁に沿って環状の溝42が形成されている。ベース31の前端部、すなわち竿軸15方向の前側16にボス43が形成されている。このボス43の中心は、竿軸15と一致しており、たとえば化粧リング等がボス43に嵌め合わされる。
【0042】
ベース31の外形形状は、
図8および
図9が示すように、異形に成形されている。
図9の二点鎖線が示すように、ベース31は、略円錐台形を呈する樹脂体44からなる。この樹脂体44の外径(すなわちベース31の外径)は、軸線15に沿って前側16から後側17に向かって漸次拡大しており、これにより、樹脂体44は略円錐台形を呈する。ベース31は、この樹脂体44の一部が切除されたような形態であって、これにより、前記斜面38が形成されている。換言すれば、ベース31は、樹脂体44が前記斜面38に沿う仮想面により切断されたような形態であり、ベース31の一部により前記膨出部34が構成され、前記斜面38は、軸線15に対して交差する位置に配置される。樹脂体44の外形形状は、前記略円錐台形に限定されるものではなく、ベース31は、前記膨出部34および前記斜面38を備えていればよい。
【0043】
前記斜面38が形成されることにより、前記凹部41は異形を呈する。すなわち、前記凹部41は、前記樹脂体44の底面51(前記後側17の端面)に円形の孔が設けられ、且つ前記斜面38が形成されることによって、直線部分52(
図8参照)を有するD字状を呈する。したがって、前記溝42は、凹部41の周縁に沿って形成されるので、D字状を呈する環状溝である。
【0044】
3.端面部材の構造
【0045】
図10は、端面部材32の斜視図であり、同図(a)は竿軸15方向の後側17から見た図、同図(b)は竿軸15方向の前側16から見た図である。
図11は、
図10(b)におけるXI-矢視図である。
図12は、
図10(b)におけるXII-XII断面図であって、端面部材32の構造を示している。
【0046】
端面部材32は、筒軸45と、フランジ50とを有する。本実施形態では、端面部材32はゴムまたはエラストマー(たとえば、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等)その他の弾性を有する弾性材料からなり、筒軸45及びフランジ50は一体的に形成されている。この端面部材32を構成する材料は、JIS K6253-3:2012 タイプAデュロメータ硬さ試験における硬度が30度以上80度以下の弾性材料であることが望ましい。
【0047】
図10および
図12が示すように、筒軸45は、円柱状の部材である。筒軸45の外径46は、ベース31に設けられた貫通孔40(
図9参照)の第1内径47に対応している。筒軸45は、挿入孔54(特許請求の範囲に記載された「挿入孔」に相当)を備えている。前記ギンバルジョイント25(
図2参照)が挿入孔54に挿入されるようになっている。挿入孔54の深さは、ギンバルジョイント25の長さに対応している。挿入孔54の第2内径48は、ギンバルジョイント25の外径に対応している。
【0048】
本実施形態では、挿入孔54の内周面49にローレット加工が施される。
図2が示すように、竿本体11に設けられたギンバルジョイント25が筒軸45の挿入孔54に挿入され、筒軸45とギンバルジョイント25とが連結される。このとき、前記ローレット加工が施された内周面49(特許請求の範囲に記載された「回転規制部」に相当)により、ギンバルジョイント25が筒軸45に対して確実に固定され、その結果、エンドグリップ14に対して竿本体11が相対的に回転することが規制される。なお、前記ギンバルジョイント25は省略されることもあるが、その場合においても前記内周面49は、エンドグリップ14に対して竿本体11が相対的に回転することを規制する。もっとも、前記ローレット加工は省略されてもよい。
【0049】
図12および
図11が示すように、前記挿入孔54の孔底55に突条56(特許請求の範囲に記載された「回転規制部」および「係合部」に相当)が設けられている。この突条56は、前記孔底55の中心(竿軸15)を通り、前記径方向18に延びている。突条56の幅57(
図11参照)は、前記ギンバルジョイント25に設けられた溝26(
図2参照)よりも小さい。したがって、ギンバルジョイント25が筒軸45に挿入されると、突条56が溝26に沿って嵌まり込み、筒軸45に対してギンバルジョイント25が竿軸15を中心にして回転することが規制される。
【0050】
図12および
図10が示すように、フランジ50は、筒軸45の前記後側17の端面に連続して形成されている。フランジ50の外形は、前記ベース31に設けられた凹部41に対応している。すなわち、フランジ50は平板状を呈し、直線部53及び円弧部58を有する。このため、フランジ50の外形はD字状に形成されており、フランジ50は、前記凹部41に嵌まり込むことができる。本実施形態では、直線部53の一方側の端部に傾斜面82(特許請求の範囲に記載された「接続部」に相当)が形成されている。
【0051】
フランジ50の周縁にリブ59が形成されている。このリブ59は、前記直線部53および円弧部58に沿って環状に形成されており、フランジ50の前面64から前記前側16に向けて突出している。リブ59の高さ60(
図12参照)は、ベース31に設けられた溝42(
図9参照)の深さ61に対応している。リブ59の厚さ62は、前記溝42の幅63(
図9参照)に対応している。フランジ50の端面、すなわち竿軸15方向の後側17の端面は、前記後端面36(
図3および
図4参照)を構成している。
【0052】
図10および
図5が示すように、この後端面36に溝65~75(特許請求の範囲に記載された「放射状溝」に相当)および溝76~81(特許請求の範囲に記載された「環状溝」に相当)が設けられている。溝65~溝75は、竿軸15を中心として径方向18に真直に延びている。同図が示すように、溝65~溝75は、周方向に均等に放射状に配置されている。もっとも、各溝65~75は、周方向に均等に配置されていなくてもよい。溝76~溝81は、竿軸15を囲繞する環状に形成されている。各溝76~81は、径方向18に均等に並んでいるが、これらは均等に並設されていなくてもよい。本実施形態では、放射状に配置された11本の溝65~75と、6本の環状に形成された溝76~81とが前記後端面36に設けられているが、これら溝65~81の数は特に限定されるものではなく、省略されてもよい。
【0053】
4.エンドグリップの組立て
【0054】
図9および
図12が示すように、端面部材32(
図12参照)は、ベース31(
図9参照)に嵌め込まれる。具体的には、筒軸45が前記後側17から前側16に向かってベース31の凹部41を通過して貫通孔40に挿入される。すなわち、フランジ50が凹部41に嵌め込まれ、フランジ50のリブ59がベース31に設けられた溝42に嵌め込まれる。これにより、
図4が示すように、エンドグリップ14が組み立てられる。
【0055】
このように、ベース31および端面部材32によりエンドグリップ14が組み立てられると、前記膨出部34および前記端部35が構成される。すなわち、前記後端面36(第1端部37)が形成され、前記斜面38により規定される第2端部39が形成される。本実施形態では、フランジ50に傾斜面82が形成されているから、この傾斜面82を介して前記後端面36と前記斜面38とが接続される。この斜面38は、前記後端面36と所定の角度θで交差する。本実施形態では、角度θは125度に設定されているが、95度以上165度以下の鈍角であればよい。
【0056】
図2が示すように、このエンドグリップ14は、釣竿10の前記後側17に配置される。具体的には、竿本体11の後端に設けられたギンバルジョイント25がエンドグリップ14に挿入される。このとき、ギンバルジョイント25の外径とエンドグリップ14の第2内径48との間に所定のはめあい公差が設定されることにより、エンドグリップ14が安定して竿本体11に固定される。
【0057】
5.作用効果
【0058】
いわゆる魚とのファイトにおいて、釣人は、本実施形態に係る釣竿10のエンドグリップ14を腹部に当て、且つ竿本体11を腕で支えてポンピング動作をする。具体的には、エンドグリップ14と前記腹部との接点を支点として、釣竿10を俯仰させつつリーリングを行う。このとき、
図2が示すように、エンドグリップ14の第1端部37が前記腹部と当接し、釣竿10が起立されることにより、エンドグリップ14の膨出部34が前記腹部と転がり接触する。これにより、エンドグリップ14の第2端部39が第1端部37に代わって前記腹部と接触する。他方、起立された釣竿10が倒伏されるときは、膨出部34が前記腹部と転がり接触し、第1端部37が第2端部39に代わって前記腹部と接触する。
【0059】
第1端部37は後端面36により規定され、第2端部39は、斜面38により規定される。斜面38は後端面36に対して鈍角を成して交差するから、前記ポンピング動作において、前記腹部はエンドグリップ14と常に面接触する。したがって、釣人は、前記ポンピング動作を安定して容易に行うことができる。しかも、エンドグリップ14に後端面36および斜面38が形成されているだけであるから、エンドグリップ14および釣竿10の製造コストの上昇は抑えられる。
【0060】
この釣竿10では、エンドグリップ14側に設けられた突条56が竿本体11側の溝26に嵌め合わされる。これにより、竿本体11とエンドグリップ14との相対回転が規制され、釣人は、魚とのファイト中に釣竿10を安定させることができる。
【0061】
本実施形態では、傾斜面82が後端面36と斜面38とを接続している。すなわち、傾斜面82によって、後端面36と斜面38との境界に面取りがなされた状態となる。したがって、ポンピング動作において、後端面36および斜面38が交互に滑らかに釣人の腹部と接触し、釣人の負担がより軽減される。この傾斜面38は省略されてもよいし、傾斜面82と後端面36との接続部分並びに傾斜面82と斜面38との接続部分が曲面に形成されていてもよい。この場合、ポンピング動作において、釣人の腹部に大きい面圧が作用することが確実に回避される。したがって、釣人は、より安定したポンピング動作をすることができる。
【0062】
図5(
図3)が示すように、後端面36に溝65~75が設けられることにより、後端面36は、前記腹部に対して滑り止め効果を発揮する。加えて、この後端面36に溝76~81が設けられることにより、後端面36は、より高い滑り止め効果を発揮する。したがって、釣人は、より安定して釣竿10を支えることができ、より安定したポンピング動作が可能である。
【0063】
本実施形態では、エンドグリップ14は、グリップ本体33で構成され、このグリップ本体33は、ベース31および端面部材32から構成される。ベース31および端面部材32は単一の部材から一体に形成されていてもよい。たとえば、
図4において、ベース31および端面部材32が樹脂、ゴムあるいは金属により一体的に成形されてもよい。この場合においても、前記後端面36および前記斜面38が形成されることにより、前記ポンピング動作において、釣人の腹部はエンドグリップ14と常に面接触する。したがって、釣人は、安定したポンピング動作が可能である。もっとも、この場合においても、前記後端面36と前記斜面38との境界に面取加工が施され、前記傾斜面82が形成されてもよい。
【0064】
エンドグリップ14のうち、第1端部37のみが、前記ゴムまたは前記エラストマー(JIS K6253-3:2012 タイプAデュロメータ硬さ試験における硬度が30度以上80度以下のゴムまたはエラストマー)で構成されていてもよい。その場合、前記フランジ50に相当する部分が前記ゴムまたは前記エラストマーで構成され、これがエンドグリップ14に貼り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10・・・釣竿
11・・・竿本体
14・・・エンドグリップ
15・・・竿軸
16・・・前側
17・・・後側
18・・・径方向
25・・・ギンバルジョイント
26・・・溝
31・・・ベース
32・・・端面部材
33・・・グリップ本体
34・・・膨出部
35・・・端部
36・・・後端面
37・・・第1端部
38・・・斜面
39・・・第2端部
40・・・貫通孔
41・・・凹部
42・・・溝
45・・・筒軸
46・・・外径
47・・・第1内径
48・・・第2内径
49・・・内周面
50・・・フランジ
51・・・底面
52・・・直線部分
53・・・直線部
54・・・挿入孔
55・・・孔底
56・・・突条
57・・・幅
58・・・円弧部
59・・・リブ
60・・・高さ
61・・・深さ
62・・・厚さ
63・・・幅
64・・・前面
65~75・・・溝
76~81・・・溝
82・・・傾斜面