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  • 特開-電池冷却システム 図1
  • 特開-電池冷却システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005119
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電池冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20250108BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250108BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250108BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20250108BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105153
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 嘉範
(72)【発明者】
【氏名】馬場 勇人
(72)【発明者】
【氏名】土田 祥生
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031HH06
(57)【要約】
【課題】電池の冷却に起因して電池パックに結露が生じるのを抑制することが可能な電池冷却システムを提供する。
【解決手段】電池冷却システム100は、電池セル11が収容される電池パック10と、電池パック10内の温度を検出する温度センサ40と、電池パック10を冷却する冷却装置50と、電池セル11に流れる電流値を検出する電流センサ30と、を備える。冷却装置50は、温度センサ40により検出された温度が冷却開始温度T1以上になった場合に電池パック10の冷却を開始する。電流センサ30により検出された電流値に基づく通電量が所定値以下の場合の冷却開始温度T1は、通電量が上記所定値よりも大きい場合の冷却開始温度T1よりも高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルが収容される電池パックと、
前記電池パック内の温度を検出する温度センサと、
前記電池パックを冷却する冷却装置と、
前記電池セルに流れる電流値を検出する電流センサと、を備え、
前記冷却装置は、前記温度センサにより検出された温度が冷却開始温度以上になった場合に前記電池パックの冷却を開始し、
前記電流センサにより検出された電流値に基づく通電量が所定値以下の場合の前記冷却開始温度は、前記通電量が前記所定値よりも大きい場合の前記冷却開始温度よりも高い、電池冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-091847号公報(特許文献1)には、温度センサによって検出される電池の温度に応じて、電池の冷却を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-091847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、電池の通電量に応じて電池の冷却制御を行うことが考慮されていない。たとえば、電池の通電量が小さい場合、通電に起因する電池の発熱量が小さくなる。このため、電池の冷却時において、電池を収容する電池パックに結露が生じるのを抑制し難い(結露が揮発し難い)。電池の冷却に起因して電池パックに結露が生じるのを抑制することが可能なシステムが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電池の冷却に起因して電池パックに結露が生じるのを抑制することが可能な電池冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係る電池冷却システムは、電池セルが収容される電池パックと、電池パック内の温度を検出する温度センサと、電池パックを冷却する冷却装置と、電池セルに流れる電流値を検出する電流センサと、を備える。冷却装置は、温度センサにより検出された温度が冷却開始温度以上になった場合に電池パックの冷却を開始する。電流センサにより検出された電流値に基づく通電量が所定値以下の場合の冷却開始温度は、通電量が所定値よりも大きい場合の冷却開始温度よりも高い。
【0007】
本開示の一の局面に係る電池冷却システムでは、上記のように、電流センサにより検出された電流値に基づく通電量が所定値以下の場合の冷却開始温度は、通電量が所定値よりも大きい場合の冷却開始温度よりも高い。これにより、通電量が比較的低い場合の冷却開始温度を比較的高くすることができる。すなわち、電池の通電に起因する発熱量が比較的低い場合に、冷却開始温度が比較的高くなる。その結果、電池の通電に起因する発熱によって結露が生じるのを抑制し難い場合に、冷却が開始されるのを抑制する(遅らせる)ことができる。これにより、電池の冷却に起因して電池パックに結露が生じるのを抑制することができる。
【0008】
本開示によれば、電池の冷却に起因して電池パックに結露が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による電池冷却システムが搭載された電動車両の構成を示す図である。
図2】一実施形態によるECUによる制御を示すフロー図である。
図3】一実施形態の冷却マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る電池冷却システム100を備える電動車両200の全体構成を概略的に示す図である。電池冷却システム100は、電池パック10と、電流センサ30と、温度センサ40と、冷却装置50と、を備える。電動車両200は、電池冷却システム100に加えて、ECU(Electronic Control Unit)20を備える。
【0012】
電池パック10は、電池セル11を収容する。電池パック10には、複数の電池セル11により構成される組電池が収容されている。電池パック10は、密閉されている。これにより、電池パック10に雨水等が混入することに起因して電池セル11がショートするのを防止することが可能である。
【0013】
電流センサ30は、電池セル11に流れる電流値を検出する。電流センサ30により検出された電流値の情報は、ECU20に送信される。
【0014】
温度センサ40は、電池パック10内の温度を検出する。なお、温度センサ40は、電池パック10内の電池セル11に取り付けられていてもよい。温度センサ40により検出された温度の情報は、ECU20に送信される。
【0015】
冷却装置50は、電池パック10(電池セル11)を冷却する。たとえば、冷却装置50は、液体の冷媒を流通させる循環回路(図示せず)を含んでいてもよい。循環回路を流通する冷媒と電池パック10との間において熱交換が行われる。これにより、電池パック10(電池セル11)が冷却される。なお、冷却装置50は、冷却空気により電池パック10(電池セル11)を冷却する装置であってもよい。
【0016】
冷却装置50は、温度センサ40により検出された温度が冷却開始温度T1以上になった場合に、電池パック10の冷却を開始する。具体的には、ECU20(後述のプロセッサ21)は、温度センサ40により検出された温度が冷却開始温度T1以上になったことに応じて、冷却装置50が電池パック10の冷却を開始するように冷却装置50に所定の信号を送信する。
【0017】
電動車両200は、電池セル11に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。電動車両200は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(BEV)である。なお、電動車両200は、エンジンを備えたハイブリッド車両(HEV)、あるいは、プラグインハイブリッド車両(PHEV)であってもよい。
【0018】
ECU20は、電池セル11の充電制御および放電制御を実行するように構成される。ECU20は、プロセッサ21と、RAM(Random Access Memory)22と、記憶装置23とを含む。
【0019】
ECU20はコンピュータであってもよい。プロセッサ21はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。RAM22は、プロセッサ21によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。
【0020】
記憶装置23は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置23には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、および各種パラメータ)が記憶されている。記憶装置23に記憶されているプログラムをプロセッサ21が実行することで、ECU20における各種制御が実行される。
【0021】
ここで、従来のシステムでは、電池の通電量に応じて電池の冷却制御を行うことが考慮されていない。たとえば、電池の通電量が小さい場合、通電に起因する電池の発熱量が小さくなる。このため、電池の冷却時において、電池を収容する電池パックに結露が生じるのを抑制し難い(結露が揮発し難い)。電池の冷却に起因して電池パックに結露が生じるのを抑制することが可能なシステムが望まれている。
【0022】
そこで、本実施形態の電池冷却システム100では、電流センサ30により検出された電流値に基づく通電量が所定値(本実施形態では0)以下の場合(すなわち0の場合)の冷却開始温度T1は、通電量が上記所定値よりも大きい場合の冷却開始温度T1よりも高い。通電量とは、電池セル11に流れる電流によって直近の所定期間(たとえば10分)において積算された通電量(電荷量)を意味する。
【0023】
これにより、通電量が小さいことに起因して電池セル11の発熱量が小さい場合に、冷却装置50による冷却が開始されるのを抑制する(遅らせる)ことができる。その結果、結露が揮発し難い条件下で電池パック10の冷却が行われるのを抑制することができる。
【0024】
(ECUの制御フロー)
図2および図3を参照して、ECU20(プロセッサ21)による電池冷却制御のフローを説明する。なお、図2のフローは、所定時間毎(たとえば5分毎)に実行される。
【0025】
ステップS1において、ECU20は、電流センサ30により検出された電流値に基づく、直近の所定期間(たとえば10分)における通電量が0よりも大きいか否かを判定する。たとえば、ECU20は、電流センサ30により検出された電流値の時間推移に基づいて、電流値を積算する。上記積算により算出された値が上記通電量に相当する。通電量が0よりも大きい場合(S1においてYes)、処理はステップS2に進む。通電量が0の場合(S1においてNo)、処理はステップS3に進む。
【0026】
ステップS2において、ECU20は、冷却装置50による冷却制御を行うために、通電時の冷却マップ(図3(A)参照)を適用する。この場合、図3(A)に示すように、通電量が大きいほど、冷却装置50による電池パック10の冷却開始温度T1が低く設定される。また、通電量が大きいほど、冷却装置50による電池パック10の冷却終了温度T2が低く設定される。なお、通電量に拘わらず、冷却開始温度T1および冷却終了温度T2の各々が一定であってもよい。また、図3(A)に示す冷却マップは、ECU20の記憶装置23(図1参照)に格納されていてもよい。なお、図3(A)では、説明のために通電量を「大」、「中」、および、「小」と記載したが、実際は、「大」、「中」、および、「小」のそれぞれに対応する数値範囲が設定されている。
【0027】
ステップS3において、ECU20は、冷却装置50による冷却制御を行うために、無通電時の冷却マップ(図3(B)参照)を適用する。この場合、図3(B)に示すように、無通電開始から(電流が流れなくなってから)の経過時間が長いほど、冷却開始温度T1が高く設定される。また、上記経過時間が長いほど、冷却終了温度T2が高く設定される。なお、上記経過時間に拘わらず、冷却開始温度T1および冷却終了温度T2の各々が一定であってもよい。また、図3(B)に示す冷却マップは、ECU20の記憶装置23(図1参照)に格納されていてもよい。なお、図3(B)では、説明のために経過時間を「大」、「中」、および、「小」と記載したが、実際は、「大」、「中」、および、「小」のそれぞれに対応する時間範囲が設定されている。
【0028】
再び図2を参照して、ステップS4では、ECU20は、温度センサ40により検出された電池パック10(電池セル11)の温度がステップS2またはS3において設定された冷却開始温度T1以上であるか否かを判定する。電池パック10の温度が冷却開始温度T1以上である場合(S4においてYes)、処理はステップS5に進む。電池パック10の温度が冷却開始温度T1未満である場合(S4においてNo)、冷却装置50による冷却は実施されずに処理は終了する。
【0029】
ステップS5において、ECU20は、冷却装置50を制御して、冷却装置50による電池パック10(電池セル11)の冷却を開始する。
【0030】
ステップS6では、ECU20は、温度センサ40により検出された電池パック10(電池セル11)の温度がステップS2またはS3において設定された冷却終了温度T2まで低下したか否かを判定する。電池パック10の温度が冷却終了温度T2まで低下した場合(S6においてYes)、処理は終了する。電池パック10の温度が冷却終了温度T2まで低下していない場合(S6においてNo)、ステップS6の処理を繰り返すことにより冷却装置50による冷却を継続する。
【0031】
以上のように、本実施形態では、電流センサ30により検出された電流値に基づく通電量が所定値以下(本実施形態では0)の場合の冷却開始温度T1は、通電量が上記所定値よりも大きい場合の冷却開始温度T1よりも高い。これにより、通電量が比較的小さいことに起因して電池セル11の発熱量が比較的小さい場合(結露が揮発し難い場合)に、電池パック10の冷却が行われるのを抑制することができる。また、通電量が比較的大きいことに起因して電池セル11の発熱量が比較的大きい場合(結露が揮発し易い場合)に、電池パック10の冷却を早期に開始することができる。その結果、結露を揮発させながら電池セル11が過度に高温になるのを抑制することができる。
【0032】
上記実施形態では、冷却マップを用いて冷却開始温度T1および冷却終了温度T2を設定する例を示したが、本開示はこれに限られない。冷却マップを用いずに通電量(または無通電開始からの経過時間)等に基づいて冷却開始温度T1および冷却終了温度T2が算出されてもよい。
【0033】
上記実施形態では、冷却マップに冷却終了温度T2の情報が含まれる例を示したが、本開示はこれに限られない。冷却マップに冷却終了温度T2の情報が含まれていなくてもよい。たとえば、冷却終了温度T2は、一定値であってもよい。
【0034】
上記実施形態では、冷却マップにおける温度設定が、通電量(または経過時間)に基づいて3段階に分けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。冷却マップにおける温度設定が2段階または4段階以上に分けられていてもよい。
【0035】
上記実施形態では、電池冷却システム100が電動車両200に搭載されている例を示したが、本開示はこれに限られない。電動車両以外の電気機器(たとえば定置式の蓄電装置)に電池冷却システム100が搭載されていてもよい。
【0036】
上記実施形態では、所定期間における通電量が0の場合に、無通電時の冷却マップが適用される例を示したが、本開示はこれに限られない。所定期間における通電量が0よりも大きい所定の閾値以下の場合に無通電時の冷却マップが適用されてもよい。この場合、無通電時においても、通電量の大きさごとに冷却開始温度T1(冷却終了温度T2)が互いに異なっていてもよい。
【0037】
上記実施形態では、所定期間の通電量に基づいて冷却開始温度T1が設定される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、電池セル11の充放電時等において、電流センサ30により検出された電流値(瞬時値)に基づいて冷却開始温度T1が設定されてもよい。すなわち、電流値(瞬時値)が所定値以下の場合の冷却開始温度T1が、電流値(瞬時値)が上記所定値よりも大きい場合の冷却開始温度T1よりも高く設定されてもよい。なお、上記の場合の電流値(瞬時値)は、本開示の「電流値に基づく通電量」の一例である。
【0038】
なお、上記の実施形態および上記の各変形例の構成が、互いに組み合わされていてもよい。
【0039】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
10 電池パック,11 電池セル,30 電流センサ,40 温度センサ,50 冷却装置,100 電池冷却システム,T1 冷却開始温度。
図1
図2
図3