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特開2025-5122燃料電池モジュール、及び燃料電池モジュールを搭載した車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005122
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール、及び燃料電池モジュールを搭載した車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04302 20160101AFI20250108BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20250108BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20250108BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20250108BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20250108BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20250108BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20250108BHJP
【FI】
H01M8/04302
H01M8/0438
H01M8/04 J
H01M8/00 Z
B60L58/30
H01M8/04664
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105157
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA13
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD01
5H125DD05
5H125EE34
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC14
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BB02
5H127DA01
5H127DB03
5H127DC81
5H127EE18
5H127EE20
5H127EE27
5H127FF02
(57)【要約】
【課題】循環ポンプに異常が生じているか否かの判定を精度よく行う。
【解決手段】制御装置80は、第1期間にて内圧センサ42から検出された供給流路64aの内圧である第1内圧と、第2期間にて内圧センサ42から検出された供給流路64aの内圧である第2内圧と、に基づいて、循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行う。第1期間は、燃料電池モジュール10の駆動開始後の期間であって、且つインジェクタ62からの燃料ガスの噴射開始前の期間であって、且つ循環ポンプ66の駆動開始前の期間である。第2期間は、第1期間よりも後の期間であって、且つインジェクタ62からの燃料ガスの噴射開始前の期間であって、且つ循環ポンプ66の駆動開始から所定期間が経過した後の期間である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、
燃料ガスを噴射するインジェクタと、
前記インジェクタから噴射された燃料ガスを前記燃料電池スタックに供給する供給流路と、
前記燃料電池スタックから排出された燃料ガスを前記供給流路に循環させる循環流路と、
前記供給流路の内圧を検出する内圧センサと、
前記循環流路に設けられる循環ポンプと、
前記循環ポンプの駆動を制御する制御装置と、を備える燃料電池モジュールであって、
前記制御装置は、第1期間にて前記内圧センサから検出された前記供給流路の内圧である第1内圧と、第2期間にて前記内圧センサから検出された前記供給流路の内圧である第2内圧と、に基づいて、前記循環ポンプに異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行い、
前記第1期間は、前記燃料電池モジュールの駆動開始後の期間であって、且つ前記インジェクタからの燃料ガスの噴射開始前の期間であって、且つ前記循環ポンプの駆動開始前の期間であり、
前記第2期間は、前記第1期間よりも後の期間であって、且つ前記インジェクタからの燃料ガスの噴射開始前の期間であって、且つ前記循環ポンプの駆動開始から所定期間が経過した後の期間である、ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記燃料電池モジュールの駆動が開始される度に前記異常判定処理を行い、
前記異常判定処理において前記循環ポンプに異常が生じていると判定する場合、判定回数をカウントし、
前記異常判定処理において前記循環ポンプに異常が生じていないと判定する場合、前記判定回数をリセットし、
前記判定回数が2以上の所定回数である場合、前記循環ポンプに異常が生じていると確定させる、請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1期間にて前記内圧センサから複数回検出された前記第1内圧の平均値を平均内圧として記憶する記憶部を備え、
前記異常判定処理において、前記内圧センサからの前記第2内圧の取得と、取得した前記第2内圧に対する前記記憶部に記憶された前記平均内圧の差が所定値未満であるか否かを判断する判断処理と、を前記第2期間にて繰り返し行い、前記判断処理にて前記差が前記所定値未満であると所定時間で連続して判断することを条件に前記循環ポンプに異常が生じていると判定する、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池モジュールを搭載した車両であって、
前記車両は、前記燃料電池モジュールから供給される電力により駆動する車両負荷を備え、
前記制御装置は、
前記燃料電池モジュールの駆動開始を条件に前記異常判定処理を行い、
前記第1期間は、前記燃料電池モジュールの駆動開始から前記燃料電池スタックと前記車両負荷とを接続させるコンタクタがオン状態となるまでの期間に含まれる、ことを特徴とする燃料電池モジュールを搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュール、及び燃料電池モジュールを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の燃料電池モジュールは、燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、燃料ガスを燃料電池スタックに供給する供給流路と、燃料電池スタックから排出された燃料ガスを供給流路に循環させる循環流路と、を備えている。さらに、燃料電池モジュールは、内圧センサと、循環流路に設けられる循環ポンプと、を備えている。内圧センサは、循環流路の内圧を検出する。特許文献1に記載の燃料電池モジュールにおいては、内圧センサからの検出値に基づいて循環流路の内圧変化を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-310653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内圧センサとして供給流路の内圧を検出する内圧センサを採用することがある。この内圧センサを備える燃料電池モジュールにおいて、内圧センサの検出値に基づいて循環ポンプに異常が生じているか否かの判定を精度よく行うことが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池モジュールは、燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、燃料ガスを噴射するインジェクタと、前記インジェクタから噴射された燃料ガスを前記燃料電池スタックに供給する供給流路と、前記燃料電池スタックから排出された燃料ガスを前記供給流路に循環させる循環流路と、前記供給流路の内圧を検出する内圧センサと、前記循環流路に設けられる循環ポンプと、前記循環ポンプの駆動を制御する制御装置と、を備える燃料電池モジュールであって、前記制御装置は、第1期間にて前記内圧センサから検出された前記供給流路の内圧である第1内圧と、第2期間にて前記内圧センサから検出された前記供給流路の内圧である第2内圧と、に基づいて、前記循環ポンプに異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行い、前記第1期間は、前記燃料電池モジュールの駆動開始後の期間であって、且つ前記インジェクタからの燃料ガスの噴射開始前の期間であって、且つ前記循環ポンプの駆動開始前の期間であり、前記第2期間は、前記第1期間よりも後の期間であって、且つ前記インジェクタからの燃料ガスの噴射開始前の期間であって、且つ前記循環ポンプの駆動開始から所定期間が経過した後の期間である、ことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、制御装置は、第1内圧と第2内圧とに基づいて、循環ポンプに異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行う。第1内圧は、第1期間にて内圧センサから検出された供給流路の内圧である。第2内圧は、第2期間にて内圧センサから検出された供給流路の内圧である。第1内圧が検出される第1期間と第2内圧が検出される第2期間とは、どちらもインジェクタからの燃料ガスの噴射開始前の期間である。インジェクタからの燃料ガスの噴射開始前の期間では、インジェクタからの燃料ガスの噴射に起因した供給流路の内圧の変動が生じない。そのため、第1内圧と第2内圧とに基づいて異常判定処理を行うことにより、循環ポンプの駆動以外の要因に起因する供給流路の内圧の変動が生じにくい状況下にて、供給流路の内圧の変動に基づいて異常判定処理を行える。また、第1内圧が検出される第1期間は、循環ポンプの駆動開始前の期間である。そのため、第1内圧は、循環ポンプの駆動に起因する供給流路の内圧の変動が生じないときの供給流路の内圧である。第2内圧が検出される第2期間は、循環ポンプの駆動開始から所定期間が経過した後の期間である。そのため、第2内圧は、循環ポンプの駆動に起因する供給流路の内圧の変動が生じるときの供給流路の内圧である。制御装置は、異常判定処理において第1内圧と第2内圧とに基づいて循環ポンプに異常が生じているか否かを判定することにより、循環ポンプの駆動に起因した供給流路の内圧の変化に基づいて循環ポンプに異常が生じているか否かを判定できる。したがって、循環ポンプに異常が生じているか否かの判定を精度よく行うことができる。
【0007】
燃料電池モジュールにおいて、前記制御装置は、前記燃料電池モジュールの駆動が開始される度に前記異常判定処理を行い、前記異常判定処理において前記循環ポンプに異常が生じていると判定する場合、判定回数をカウントし、前記異常判定処理において前記循環ポンプに異常が生じていないと判定する場合、前記判定回数をリセットし、前記判定回数が2以上の所定回数である場合、前記循環ポンプに異常が生じていると確定させてもよい。
【0008】
上記構成によれば、判定回数が所定回数になるまで、制御装置は循環ポンプに異常が生じていると確定しない。したがって、異常判定処理において循環ポンプの異常以外の要因によって循環ポンプに異常が生じていると判定された場合に、循環ポンプに異常が生じていると確定されることを抑制できる。
【0009】
燃料電池モジュールにおいて、前記制御装置は、前記第1期間にて前記内圧センサから複数回検出された前記第1内圧の平均値を平均内圧として記憶する記憶部を備え、前記異常判定処理において、前記内圧センサからの前記第2内圧の取得と、取得した前記第2内圧に対する前記記憶部に記憶された前記平均内圧の差が所定値未満であるか否かを判断する判断処理と、を前記第2期間にて繰り返し行い、前記判断処理にて前記差が前記所定値未満であると所定時間で連続して判断することを条件に前記循環ポンプに異常が生じていると判定してもよい。
【0010】
上記構成によれば、制御装置は、判断処理にて差が所定値未満であると所定時間で連続して判断しない間は、循環ポンプに異常が生じていると判定しない。したがって、異常判定処理において循環ポンプの異常以外の要因によって一時的に差が所定値未満となる場合に、循環ポンプに異常が生じていると判定されることを抑制できる。
【0011】
上記課題を解決する燃料電池モジュールを搭載する車両は、上記に記載の燃料電池モジュールを搭載した車両であって、前記車両は、前記燃料電池モジュールから供給される電力により駆動する車両負荷を備え、前記制御装置は、前記燃料電池モジュールの駆動開始を条件に前記異常判定処理を行い、前記第1期間は、前記燃料電池モジュールの駆動開始から前記燃料電池スタックと前記車両負荷とを接続させるコンタクタがオン状態となるまでの期間に含まれてもよい。
【0012】
上記構成によれば、燃料電池モジュールの駆動開始からコンタクタがオン状態となるまでの期間にて、制御装置は、異常判定処理に用いられる第1内圧を取得できる。したがって、燃料電池モジュールの駆動開始からコンタクタがオン状態となるまでの期間を、循環ポンプに異常が生じているか否かの判定を行うための期間として活用できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、循環ポンプに異常が生じているか否かの判定を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、燃料電池モジュールを搭載した車両を示す側面図である。
図2図2は、燃料電池モジュールを示す模式図である。
図3図3は、制御装置が行う処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、フェーズ、循環ポンプ、インジェクタ、及び供給流路の内圧を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、燃料電池モジュール及び燃料電池モジュールを搭載した車両を具体化した実施形態を図面にしたがって説明する。本実施形態における燃料電池モジュールを搭載した車両は、フォークリフトである。なお、以下では、説明の都合上、燃料電池モジュールを搭載した車両についての説明を、燃料電池モジュールの説明よりも先に行う。
【0016】
<フォークリフト>
図1に示すように、車両としてのフォークリフト100は、車体101と、車両負荷102と、を備える。車両負荷102は、燃料電池モジュール10から供給される電力により駆動する。車両負荷102の一例は、走行モータ103及び荷役モータ104である。走行モータ103は、車体101の駆動輪105を駆動させる。荷役モータ104は、荷役装置106を駆動させる。車体101は、収容部107を有する。燃料電池モジュール10は、収容部107に収容されている。これにより、車両としてのフォークリフト100は、燃料電池モジュール10を搭載している。
【0017】
図2に示すように、フォークリフト100は、キースイッチ15を備えている。キースイッチ15は、フォークリフト100のユーザによって操作される。ユーザによる操作によって、キースイッチ15のオンとオフとが切り替えられる。以下の説明において、キースイッチ15がオンされることをキーオンと称し、キースイッチ15がオフされることをキーオフと称する場合がある。
【0018】
<燃料電池モジュール>
燃料電池モジュール10は、アノード系60と、電気系90と、希釈器69と、を備える。燃料電池モジュール10は、燃料電池スタック21を備える。燃料電池スタック21は、例えば、固体高分子形燃料電池である。燃料電池スタック21は、複数の燃料電池セル22を備える。燃料電池セル22は、アノードガスが供給されるアノード極と、カソードガスが供給されるカソード極と、アノード極とカソード極との間に配置されている電解質膜と、を備える。燃料電池セル22は、セパレータによって挟まれている。
【0019】
燃料電池モジュール10は、図示しないカソード系を備えている。カソード系は、例えば、カソードガスが流れる図示しないカソード流路を備える。カソード流路は、例えば、燃料電池スタック21におけるカソード極に向かい合うセパレータに設けられている。
【0020】
アノード系60は、アノードガスが流れるアノード流路26を備える。アノード流路26は、例えば、燃料電池スタック21におけるアノード極に向かい合うセパレータに設けられている。
【0021】
アノード流路26を流れる燃料ガスとしてのアノードガスと、カソード流路を流れるカソードガスと、が反応することにより、燃料電池スタック21は発電を行う。したがって、燃料電池スタック21は、燃料ガスを用いて発電を行う。なお、燃料ガスとしてのアノードガスは、水素ガスである。カソードガスは、酸素ガスである。
【0022】
カソード系は、図示しないカソード供給流路を備えている。カソード供給流路には、カソードガスを含む気体が流れる。カソードガスを含む気体は、例えば空気である。カソードガスを含む気体は、カソード供給流路を介してカソード流路に供給される。これにより、カソードガスは燃料電池スタック21に供給される。カソード供給流路には、図示しない電動圧縮機が設けられている。
【0023】
カソード系は、図示しない排出流路を備えている。排出流路の一端はカソード流路の下流端に接続され、排出流路の他端は希釈器69に接続されている。排出流路には、カソード流路からカソード排ガスが流入する。カソード排ガスは、未反応の酸素ガスと、生成水と、を含む。カソード排ガスは、排出流路を介して希釈器69に供給される。
【0024】
アノード系60は、水素タンク61と、主止弁12と、インジェクタ62と、インジェクタ62よりも上流に設けられる上流流路63と、下流流路64と、気液分離器65と、循環ポンプ66と、排気排水弁67と、を備えている。言い換えると、燃料電池モジュール10は、インジェクタ62と、循環ポンプ66と、を備えている。
【0025】
水素タンク61には、水素ガスが貯留されている。上流流路63の一端はインジェクタ62に接続され、上流流路63の他端は水素タンク61に接続されている。インジェクタ62は、燃料ガスとしての水素ガスを噴射する。インジェクタ62は、燃料電池スタック21に供給される水素ガスの量を調整するための部材である。燃料電池スタック21に供給される水素ガスの量は、インジェクタ62が制御されることで調整される。
【0026】
主止弁12は、上流流路63に設けられている。主止弁12は、例えば電磁開閉弁である。主止弁12が開弁状態にされると、上流流路63における主止弁12の上流側から下流側へと水素ガスが流れる。主止弁12が閉弁状態にされると、上流流路63における主止弁12の上流側から下流側へと水素ガスが流れない。主止弁12が開弁状態にされることで、上流流路63を介して水素タンク61からインジェクタ62に水素ガスが供給される。
【0027】
下流流路64は、供給流路64aと、循環流路64bと、アノード流路26と、を含む。すなわち、燃料電池モジュール10は、供給流路64aと、循環流路64bと、を備えている。供給流路64aの一端はインジェクタ62に接続され、供給流路64aの他端はアノード流路26の上流端に接続されている。循環流路64bの一端はアノード流路26の下流端に接続され、循環流路64bの他端は供給流路64aの両端部の間に接続されている。
【0028】
供給流路64aには、インジェクタ62から噴射された水素ガスが流入する。水素ガスは、供給流路64aを介してアノード流路26に供給される。言い換えると、供給流路64aは、インジェクタ62から噴射された燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池スタック21に供給する。
【0029】
循環流路64bには、アノード流路26からアノード排ガスが流入する。アノード排ガスは、未反応の水素ガスと、生成水と、を含む。生成水は、燃料電池スタック21での発電によって生成される水である。アノード排ガスに含まれる未反応の水素ガスは、循環流路64bを介して供給流路64aに戻される。したがって、循環流路64bは、燃料電池スタック21から排出された燃料ガスとしての水素ガスを供給流路64aに循環させる。水素ガスは、供給流路64a、アノード流路26、及び循環流路64bの順で循環する。
【0030】
気液分離器65は、循環流路64bに設けられている。気液分離器65は、アノード排ガスを水素ガスと生成水とに分離する。アノード排ガスから分離された生成水は、気液分離器65に貯留される。循環ポンプ66は、循環流路64bに設けられている。循環ポンプ66は、気液分離器65によってアノード排ガスから分離された水素ガスを供給流路64aに供給する。
【0031】
排気排水弁67は、気液分離器65に接続されている。排気排水弁67は、開状態と閉状態に切り替えられる。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65から生成水が排出される。排気排水弁67は、気液分離器65に貯留される生成水の量が閾値を上回った場合に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。排気排水弁67は、所定の時間間隔毎に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65に貯留された生成水と共に、循環流路64b内のアノード排ガスが下流流路64外に排気される。
【0032】
気液分離器65は、希釈器69に接続されている。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65に貯留された生成水及びアノード排ガスが希釈器69に供給される。希釈器69は、気液分離器65から供給されたアノード排ガスを、排出流路から希釈器69に供給されたカソード排ガスによって希釈して排出する。
【0033】
希釈器69には排出口39が接続されている。希釈器69にてカソード排ガスによって希釈されたアノード排ガスは、排出口39から排出される。
電気系90は、DC/DCコンバータ91と、蓄電装置96と、コンタクタ92と、を備える。DC/DCコンバータ91は、燃料電池スタック21に接続されている。DC/DCコンバータ91は、燃料電池スタック21の出力電圧を変圧して出力する。DC/DCコンバータ91からの出力電力は、車両負荷102に供給される。コンタクタ92は、車両負荷102に直列接続されている。
【0034】
蓄電装置96は、DC/DCコンバータ91に接続されている。蓄電装置96は、DC/DCコンバータ91に対して補機97と並列に接続されている。DC/DCコンバータ91からの出力電力が車両負荷102及び補機97の消費電力を上回っている場合、蓄電装置96は余剰の電力によって充電される。DC/DCコンバータ91からの出力電力が車両負荷102及び補機97の消費電力を下回っている場合、蓄電装置96は放電を行う。蓄電装置96は、充放電可能であれば、どのようなものを用いてもよい。蓄電装置96としては、例えば、二次電池及びキャパシタを挙げることができる。補機97は、例えば、カソード系における電動圧縮機、循環ポンプ66、主止弁12、排気排水弁67、及びインジェクタ62を含む。
【0035】
燃料電池モジュール10は、内圧センサ42を備えている。内圧センサ42は、供給流路64aの内圧を検出する。本実施形態における内圧センサ42は、供給流路64aのうち、インジェクタ62に接続される端部と循環流路64bが接続される部分との間の内圧を検出する。
【0036】
<制御装置>
燃料電池モジュール10は、制御装置80を備えている。制御装置80は、プロセッサ81と、記憶部82と、を備える。記憶部82は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部82は、処理をプロセッサ81に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部82、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置80は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置80は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0037】
制御装置80は、各種の検出部及び各種のスイッチからの出力に基づいて各種の制御を行う。上記の各種の検出部は、内圧センサ42を含む。上記の各種のスイッチは、キースイッチ15を含む。
【0038】
制御装置80は、燃料電池モジュール10の制御を行う。例えば、制御装置80は、燃料電池スタック21の出力電力[kW]を制御する。燃料電池スタック21の出力電力は、燃料電池スタック21に供給されるカソードガスの量と、燃料電池スタック21に供給される水素ガスの量と、によって変化する。制御装置80は、インジェクタ62からの水素ガスの噴射を制御する。これにより、燃料電池スタック21への水素ガスの供給量を制御する。制御装置80は、カソード系における電動圧縮機を制御することで、燃料電池スタック21へのカソードガスの供給量を制御する。制御装置80は、排気排水弁67の開閉を制御する。制御装置80は、主止弁12の開閉を制御する。制御装置80は、循環ポンプ66の駆動を制御する。
【0039】
制御装置80は、コンタクタ92のオン状態とオン状態とを制御する。コンタクタ92は、燃料電池スタック21と車両負荷102とを接続させるものである。コンタクタ92がオフ状態とされると、燃料電池スタック21と車両負荷102との接続が遮断される。これにより、燃料電池スタック21から車両負荷102への電力の供給が停止される。コンタクタ92がオン状態とされると、燃料電池スタック21と車両負荷102とが接続される。これにより、燃料電池スタック21から車両負荷102に電力が供給される。
【0040】
制御装置80は、燃料電池スタック21への水素ガスの供給とカソードガスの供給とを停止することにより、燃料電池スタック21の発電を停止する。制御装置80は、例えば、キーオフされたことを条件に、燃料電池スタック21の発電を停止する。燃料電池スタック21の発電停止に際して、制御装置80は、例えば、インジェクタ62からの水素ガスの噴射の停止、主止弁12の閉弁、循環ポンプ66の駆動停止、及び排気排水弁67の閉弁を行う。燃料電池スタック21の発電停止に際して、制御装置80は、例えば、カソード系における電動圧縮機の駆動停止を行う。さらに制御装置80は、燃料電池スタック21の発電停止に際して、カソード供給流路に設けられた図示しない開閉弁を閉弁させてもよい。
【0041】
制御装置80は、燃料電池スタック21への酸素ガスの供給と水素ガスの供給とを行うことにより、燃料電池スタック21の発電を行う。制御装置80は、例えば、キーオンされたことを条件に、燃料電池モジュール10の駆動を開始することで、燃料電池スタック21の発電を開始する。燃料電池スタック21の発電開始に際して、制御装置80は、例えば、インジェクタ62からの水素ガスの噴射開始、主止弁12の開弁、及び循環ポンプ66の駆動開始を行う。燃料電池スタック21の発電開始に際して、制御装置80は、例えば、カソード系における電動圧縮機の駆動を行う。さらに制御装置80は、燃料電池スタック21の発電開始に際して、カソード供給流路に設けられた図示しない開閉弁を開弁させてもよい。
【0042】
制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動を開始すると、第1フェーズ、第2フェーズ、第3フェーズ、及び第4フェーズの順でフェーズを切り替えることで処理内容を変更する。第1フェーズにおいて、制御装置80は、各種の検出部に故障が生じていないか否かを判断する。第2フェーズにおいて、制御装置80は、コンタクタ92がオン状態になるまで各種の制御を待機する。第3フェーズにおいて、制御装置80は、循環ポンプ66の駆動とインジェクタ62からの水素ガスの噴射とを開始させるとともに、主止弁12を開弁させる。詳細には、第3フェーズにおいて、制御装置80は、循環ポンプ66の駆動を開始させた後にインジェクタ62からの水素ガスの噴射を開始させる。第4フェーズにおいて、制御装置80は、カソード系における電動圧縮機の駆動を開始した後、燃料電池スタック21の発電が開始される。
【0043】
<異常判定処理>
制御装置80は、循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行う。制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動開始を条件に異常判定処理を行う。制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動が開始される度に異常判定処理を行う。
【0044】
制御装置80は、第1内圧P1と、第2内圧P2と、に基づいて、循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行う。第1内圧P1は、第1期間T1にて内圧センサ42から検出された供給流路64aの内圧である。第2内圧P2は、第2期間T2にて内圧センサ42から検出された供給流路64aの内圧である。
【0045】
第1期間T1は、燃料電池モジュール10の駆動開始後の期間であって、且つインジェクタ62からの燃料ガスとしての水素ガスの噴射開始前の期間であって、且つ循環ポンプ66の駆動開始前の期間である。第1期間T1は、燃料電池モジュール10の駆動開始からコンタクタ92がオン状態となるまでの期間に含まれる。本実施形態における第1期間T1は、第2フェーズでの期間である。例えば、第1期間T1は、第2フェーズに設定される期間よりも短く設定されていてもよい。この場合、第1期間T1は、第2フェーズにフェーズが移行されてから所定の時間経過後から第2フェーズが終了するまでの期間であってもよい。
【0046】
記憶部82は、第1期間T1にて内圧センサ42から複数回検出された第1内圧P1の平均値を平均内圧PA1として記憶する。詳細には、制御装置80は、第1期間T1にて一定の周期毎に内圧センサ42から検出された第1内圧P1を記憶することにより、複数の検出結果として第1内圧P1を記憶する。制御装置80は、記憶部82に記憶された複数の第1内圧P1を平均化することで平均内圧PA1を算出する。記憶部82は、算出された平均内圧PA1を記憶する。なお、記憶部82に記憶された平均内圧PA1は、燃料電池モジュール10の駆動が停止される際に記憶部82からリセットされる。そのため、燃料電池モジュール10の駆動が開始される度に、第1期間T1における平均内圧PA1が算出されるとともに記憶部82に記憶される。
【0047】
第2期間T2は、第1期間T1よりも後の期間であって、且つインジェクタ62からの燃料ガスとしての水素ガスの噴射開始前の期間であって、且つ循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過した後の期間である。本実施形態における第2期間T2は、第3フェーズにおいて、循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過した後であって、且つインジェクタ62からの水素ガスの噴射が開始される前の期間である。
【0048】
制御装置80は、異常判定処理において、内圧センサ42からの第2内圧P2の取得と、取得した第2内圧P2に対する記憶部82に記憶された平均内圧PA1の差Dが所定値Pt未満であるか否かを判断する判断処理と、を第2期間T2にて繰り返し行う。制御装置80は、判断処理にて差Dが所定値Pt未満であると所定時間Tp2で連続して判断することを条件に循環ポンプ66に異常が生じていると判定する。詳細には、制御装置80は、第2期間T2にて一定の周期毎に内圧センサ42から検出された第2内圧P2を取得する。制御装置80は、第2内圧P2を取得する度に判断処理を行う。制御装置80は、第2内圧P2の取得と、取得された第2内圧P2に基づいて行われる判断処理での差Dが所定値Pt未満であるとの判断と、が所定時間Tp2で連続する場合に、循環ポンプ66に異常が生じていると判定する。
【0049】
制御装置80は、判断処理での差Dが所定値Pt以上である場合と、差Dが所定値Pt未満である旨の判断の継続時間が所定時間Tp2未満である場合と、には循環ポンプ66の異常を判定せずに第2内圧P2の取得と判断処理とを繰り返し行う。こうした第2内圧P2の取得と判断処理との繰り返しは、循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過したタイミングから第2期間T2が経過するまで行われる。制御装置80は、第2期間T2が経過するまでに、判断処理にて差Dが所定値Pt未満であるとの判断が所定時間Tp2で連続してなされない場合、循環ポンプ66に異常が生じていないとして正常判定をする。異常判定処理において、制御装置80は、循環ポンプ66の異常判定と、循環ポンプ66の正常判定と、のいずれかを行った後、異常判定処理を終了させる。
【0050】
<異常確定処理>
本実施形態における制御装置80は、異常判定処理に続いて異常確定処理を行う。異常確定処理において、制御装置80は、異常判定処理による判定結果に応じて判定回数Cのカウント又はリセットを行う。詳細には、制御装置80は、異常判定処理において循環ポンプ66に異常が生じていると判定する場合、判定回数Cをカウントする。これにより、判定回数Cは、異常判定処理において循環ポンプ66に異常が生じていると判定される度に、「1」ずつカウントアップされる。制御装置80は、異常判定処理において循環ポンプ66に異常が生じていないと判定する場合、判定回数Cをリセットする。これにより、判定回数Cは、異常判定処理において循環ポンプ66が正常であると判定されると、「0」にリセットされる。
【0051】
異常確定処理において、制御装置80は、判定回数Cが2以上の所定回数Cpである場合、循環ポンプ66に異常が生じていると確定させる。所定回数Cpは、2以上の値に設定されており、実験等によって予め設定された値である。異常確定処理において、制御装置80は、判定回数Cが所定回数Cp未満である場合、循環ポンプ66の異常を確定させずに、異常確定処理を終了させる。
【0052】
制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動が開始される度に、異常判定処理と異常確定処理とを行う。こうして繰り返されることで、制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動が開始される度に、判定回数Cのカウントと判定回数Cのリセットとのいずれかを行う。燃料電池モジュール10の駆動開始が複数回行われる中で、判定回数Cのカウントが継続して行われることで、判定回数Cは所定回数Cpとなる。
【0053】
<制御装置による処理の一例>
制御装置80によって行われる処理の一例を図3にしたがって説明する。なお図3に示す処理は、キーオンされたことを条件に一度実行される。
【0054】
図3に示すように、処理が開始されると、制御装置80は、各種の検出部に故障が生じていないか否かを判断する(ステップS110)。各種の検出部に故障が生じていると判断すると、制御装置80は本処理を終了させる。各種の検出部に故障が生じていないと判断すると(ステップS110:YES)、平均内圧PA1を記憶する(ステップS120)。ここでは、制御装置80は、内圧センサ42から検出された第1内圧P1に基づいて平均内圧PA1を算出するとともに、算出された平均内圧PA1を制御装置80の記憶部82が記憶する。その後、制御装置80は、循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過したか否かを判断する(ステップS130)。循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過していないと判断すると(ステップS130:NO)、制御装置80は、ステップS130の処理を再び行う。すなわち、制御装置80は、ステップS130にてYESと判断されない間は、ステップS130の処理を繰り返し行う。
【0055】
循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過していると判断すると(ステップS130:YES)、制御装置80は、循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過したタイミングから第2期間T2が経過したか否かを判断する(ステップS140)。第2期間T2が経過していないと判断すると(ステップS140:NO)、制御装置80は、内圧センサ42から検出された内圧である第2内圧P2を取得する(ステップS150)。その後、制御装置80は、ステップS150にて取得した第2内圧P2に対する記憶部82に記憶された平均内圧PA1の差Dが所定値Pt未満であるか否かを判断する(ステップS160)。差Dが所定値Pt未満であると判断すると(ステップS160:YES)、制御装置80は、差Dが所定値Pt未満であるとの判断が所定時間Tp2連続で行われているか否かを判断する(ステップS170)。差Dが所定値Pt以上であると判断するとき(ステップS160:NO)と、差Dが所定値Pt未満であるとの判断が所定時間Tp2連続で行われていないと判断するとき(ステップS170:NO)と、には制御装置80は、ステップS140の処理を再び行う。すなわち、ステップS170にてYESと判断されない間は、ステップS140の処理が繰り返し行われる。ステップS140にて第2期間T2が経過したと判断されない間は、ステップS150~ステップS170の処理が繰り返し行われる。
【0056】
差Dが所定値Pt未満であるとの判断が所定時間Tp2連続で行われていると判断すると(ステップS170:YES)、制御装置80は、循環ポンプ66に異常が生じているとして異常判定をする(ステップS180)。その後、制御装置80は、判定回数Cをカウントする(ステップS190)。
【0057】
続いて、制御装置80は、判定回数Cが所定回数Cpであるか否かを判断する(ステップS200)。判定回数Cが所定回数Cpではないと判断すると(ステップS200:NO)、制御装置80は処理を終了させる。判定回数Cが所定回数Cpであると判断すると(ステップS200:YES)、制御装置80は、循環ポンプ66の異常を確定させた後(ステップS210)、処理を終了させる。
【0058】
第2期間T2が経過したと判断すると(ステップS140:YES)、制御装置80は、循環ポンプ66に異常が生じていないとして正常判定をする(ステップS220)。その後、制御装置80は、判定回数Cをリセットした後(ステップS230)、本処理を終了させる。
【0059】
なお、図3に示す処理において、ステップS110~ステップS180、及びステップS220が異常判定処理に相当する。ステップS160が判断処理に相当する。ステップS190~ステップS210、及びステップS230が異常確定処理に相当する。
【0060】
[実施形態の作用]
次に本実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、燃料電池モジュール10の駆動が開始されると、第1フェーズ、第2フェーズ、第3フェーズ、及び第4フェーズの順でフェーズが移行する。時間t1と時間t2との間で第2フェーズに設定される。第2フェーズにおける第1期間T1にて、制御装置80の記憶部82は、内圧センサ42から複数回検出された第1内圧P1の平均値を平均内圧PA1として記憶する。時間t2にて、コンタクタ92がオン状態にされるとともに循環ポンプ66がオフ状態としての停止された状態からオン状態として駆動が開始される。
【0061】
時間t2と時間t6の間で第3フェーズに設定される。第3フェーズにおける時間t2と時間t3との間の時間が所定期間Tp1に相当する。この所定期間Tp1の間で、循環ポンプ66の駆動によって供給流路64aの内圧が上昇する。
【0062】
時間t3と時間t4との間の時間が第2期間T2に相当する。時間t3から時間t4の間で、制御装置80は、第2内圧P2の取得と、取得した第2内圧P2に対する記憶部82に記憶された平均内圧PA1の差Dが所定値Pt未満であるか否かを判断する判断処理と、を繰り返し行う。時間t3から時間t4の間で、判断処理にて差Dが所定値Pt未満であると所定時間Tp2で連続して判断することを条件に、制御装置80は循環ポンプ66に異常が生じているとして異常判定を行う。時間t4に至るまでに、すなわち循環ポンプ66の駆動開始から第2期間T2が経過するまでに、差Dが所定値Pt未満であると所定時間Tp2で連続して判断されない場合、制御装置80は循環ポンプ66に異常が生じていないとして正常判定を行う。
【0063】
供給流路64aの内圧は、循環ポンプ66の駆動開始に伴って上昇するため、循環ポンプ66が正常に駆動していれば、第1期間T1における供給流路64aの内圧よりも第2期間T2における供給流路64aの内圧の方が高くなる。制御装置80は、第1期間T1にて検出された供給流路64aの内圧である第1内圧P1と、第2期間T2にて検出された供給流路64aの内圧である第2内圧P2と、に基づいて、循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行う。したがって、循環ポンプ66の駆動の開始前後での供給流路64aの内圧の変化に基づいて、循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定できる。
【0064】
時間t4よりも後のタイミングである時間t5にて、インジェクタ62からの燃料ガスとしての水素ガスの噴射が開始される。したがって、制御装置80は、インジェクタ62からの水素ガスの噴射の開始前に、内圧センサ42から第1内圧P1と第2内圧P2とを取得できる。時間t5以降は循環ポンプ66の駆動とインジェクタ62からの噴射とが行われることにより、時間t5以前よりも供給流路64aの内圧が上昇する。時間t6以降から第4フェーズに設定される。第4フェーズにおいては、燃料電池スタック21の発電が開始される。
【0065】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)制御装置80は、第1内圧P1と第2内圧P2とに基づいて、循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定する異常判定処理を行う。第1内圧P1は、第1期間T1にて内圧センサ42から検出された供給流路64aの内圧である。第2内圧P2は、第2期間T2にて内圧センサ42から検出された供給流路64aの内圧である。第1内圧P1が検出される第1期間T1と第2内圧P2が検出される第2期間T2とは、どちらもインジェクタ62からの燃料ガスとしての水素ガスの噴射開始前の期間である。インジェクタ62からの燃料ガスとしての水素ガスの噴射開始前の期間では、インジェクタ62からの燃料ガスとしての水素ガスの噴射に起因した供給流路64aの内圧の変動が生じない。そのため、第1内圧P1と第2内圧P2とに基づいて異常判定処理を行うことにより、循環ポンプ66の駆動以外の要因に起因する供給流路64aの内圧の変動が生じにくい状況下にて、供給流路64aの内圧の変動に基づいて異常判定処理を行える。
【0066】
また、第1内圧P1が検出される第1期間T1は、循環ポンプ66の駆動開始前の期間である。そのため、第1内圧P1は、循環ポンプ66の駆動に起因する供給流路64aの内圧の変動が生じないときの供給流路64aの内圧である。第2内圧P2が検出される第2期間T2は、循環ポンプ66の駆動開始から所定期間Tp1が経過した後の期間である。そのため、第2内圧P2は、循環ポンプ66の駆動に起因する供給流路64aの内圧の変動が生じるときの供給流路64aの内圧である。制御装置80は、異常判定処理において第1内圧P1と第2内圧P2とに基づいて循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定する。これにより、循環ポンプ66の駆動に起因した供給流路64aの内圧の変化に基づいて循環ポンプ66に異常が生じているか否かを判定できる。したがって、循環ポンプ66に異常が生じているか否かの判定を精度よく行うことができる。
【0067】
(2)制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動が開始される度に異常判定処理を行う。制御装置80は、異常判定処理において循環ポンプ66に異常が生じていると判定する場合、判定回数Cをカウントする。制御装置80は、異常判定処理において循環ポンプ66に異常が生じていないと判定する場合、判定回数Cをリセットする。制御装置80は、判定回数Cが2以上の所定回数Cpである場合、循環ポンプ66に異常が生じていると確定させる。そのため、判定回数Cが所定回数Cpになるまで、制御装置80は循環ポンプ66に異常が生じていると確定しない。したがって、異常判定処理において循環ポンプ66の異常以外の要因によって循環ポンプ66に異常が生じていると判定された場合に、循環ポンプ66に異常が生じていると確定されることを抑制できる。
【0068】
(3)制御装置80は、第1期間T1にて内圧センサ42から複数回検出された第1内圧P1の平均値を平均内圧PA1として記憶する記憶部82を備える。制御装置80は、異常判定処理において、内圧センサ42からの第2内圧P2の取得と、取得した第2内圧P2に対する記憶部82に記憶された平均内圧PA1の差Dが所定値Pt未満であるか否かを判断する判断処理と、を第2期間T2にて繰り返し行う。制御装置80は、判断処理にて差Dが所定値Pt未満であると所定時間Tp2で連続して判断することを条件に循環ポンプ66に異常が生じていると判定する。そのため、制御装置80は、判断処理にて差Dが所定値Pt未満であると所定時間Tp2で連続して判断しない間は、循環ポンプ66に異常が生じていると判定しない。したがって、異常判定処理において循環ポンプ66の異常以外の要因によって一時的に差Dが所定値Pt未満となる場合に、循環ポンプ66に異常が生じていると判定されることを抑制できる。
【0069】
(4)車両としてのフォークリフト100は、燃料電池モジュール10から供給される電力により駆動する車両負荷102を備える。制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動開始を条件に異常判定処理を行う。第1期間T1は、燃料電池モジュール10の駆動開始から燃料電池スタック21と車両負荷102とを接続させるコンタクタ92がオン状態となるまでの期間に含まれる。そのため、燃料電池モジュール10の駆動開始からコンタクタ92がオン状態となるまでの期間にて、制御装置80は、異常判定処理に用いられる第1内圧P1を取得できる。したがって、燃料電池モジュール10の駆動開始からコンタクタ92がオン状態となるまでの期間を、循環ポンプ66に異常が生じているか否かの判定を行うための期間として活用できる。
【0070】
(5)仮に循環流路64bにおける循環ポンプ66よりも上流に上流内圧センサを設ければ、上流内圧センサと内圧センサ42との圧力差に基づいて循環ポンプ66の異常の判定を行うことができるが、上流内圧センサを循環流路64bに設ける必要がある。実施形態によれば、内圧センサ42から検出される供給流路64aの内圧に基づいて循環ポンプ66の異常の判定を行える。したがって、上記の上流内圧センサを循環流路64bから省略できる分だけ、燃料電池モジュール10における部品点数を低下できる。
【0071】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0072】
○ 内圧センサ42が内圧を検出する箇所は、供給流路64aのうち、インジェクタ62に接続される端部と循環流路64bが接続される部分との間の部分に限らない。例えば、内圧センサ42は、供給流路64aのうち、循環流路64bが接続される部分よりも下流側の部分の内圧を検出してもよい。
【0073】
図3に示す処理からステップS110を省略してもよい。
○ 第1期間T1は、燃料電池モジュール10の駆動開始から燃料電池スタック21と車両負荷102とを接続させるコンタクタ92がオン状態となるまでの期間に含まれていなくてもよい。例えば、第1期間T1は、コンタクタ92がオフ状態からオン状態にされたタイミングから循環ポンプ66の駆動が開始されるまでの期間に含まれてもよい。
【0074】
○制御装置80は、燃料電池モジュール10の駆動開始以外の条件に基づいて異常判定処理を行ってもよい。例えば、燃料電池モジュール10の駆動が開始されてから所定の時間が経過したことを条件に異常判定処理を行ってもよい。
【0075】
○ 異常判定処理において、制御装置80は、第2期間T2において、判断処理にて差Dが所定値Pt未満であると1度でも判断されたら、循環ポンプ66に異常が生じていると判定してもよい。この場合、図3に示す処理からステップS170を省略してもよい。
【0076】
○ 判断処理において、制御装置80は、取得した第2内圧P2に対する第1内圧P1の差Dが所定の値未満であるか否かを判断してもよい。この場合、制御装置80は、例えば、第1期間T1にて内圧センサ42から検出された第1内圧P1を取得する。この取得した第1内圧P1を用いて判断処理を行ってもよい。また、この場合、図3に示すステップS160にて、取得した第2内圧P2に対する第1内圧P1の差Dが所定の値未満であるか否かを判断してもよい。ステップS120にて、記憶部82は第1内圧P1を記憶してもよい。
【0077】
○ 制御装置80は、判定回数Cのカウント、判定回数Cのリセット、及び判定回数Cに基づく循環ポンプ66に異常が生じているとの確定を省略してもよい。この場合、図3に示す処理からステップS190~ステップS210、及びステップS230を省略してもよい。
【0078】
○ 燃料ガスは水素ガスに限らない。
○ 燃料電池モジュール10は、乗用車、船舶、鉄道などに搭載されていてもよい。
○ 燃料電池モジュール10は、定置式の発電装置として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0079】
C…判定回数、Cp…所定回数、D…差、Tp1…所定期間、Tp2…所定時間、T1…第1期間、T2…第2期間、PA1…平均内圧、P1…第1内圧、P2…第2内圧、Pt…所定値、10…燃料電池モジュール、21…燃料電池スタック、42…内圧センサ、62…インジェクタ、64a…供給流路、64b…循環流路、66…循環ポンプ、80…制御装置、82…記憶部、92…コンタクタ、100…車両としてのフォークリフト、102…車両負荷。
図1
図2
図3
図4