(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005157
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20250108BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20250108BHJP
E06B 3/36 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
E06B3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105214
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 功明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】人見 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】増田 成悟
(72)【発明者】
【氏名】原 孝士郎
(72)【発明者】
【氏名】角谷 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014DA05
2E014DA07
2E014DB01
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB07
2E036EC05
2E036GA03
2E036HA01
2E036HB15
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】従来よりも止水性能が向上した止水装置を提供する。
【解決手段】止水装置は、枠と、扉と、弾性体と、少なくとも一つの押圧機構と、を備える。枠は、構造物の屋外側と屋内側とを連通する開口部に嵌合する。さらに、枠には、屋内側に向かって凹む保持部が設けられている。扉は、枠に回転可能に取り付けられる。弾性体は、保持部に収容されるとともに扉における屋内側を向く面である内面に当接する。少なくとも一つの押圧機構は、扉に取り付けられる。さらに、少なくとも一つの押圧機構は、扉を弾性体に押し付ける押圧部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の屋外側と屋内側とを連通する開口部に嵌合するとともに、前記屋内側に向かって凹む保持部が設けられた枠と、
前記枠に回転可能に取り付けられた扉と、
前記保持部に収容されるとともに、前記扉における前記屋内側を向く面である内面に当接する弾性体と、
前記扉を前記弾性体に押し付ける押圧部を有し、前記扉に取り付けられる少なくとも一つの押圧機構と、
を備える、
止水装置。
【請求項2】
前記扉は、前記内面に埋め込まれた複数の鋲をさらに有する、
請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記扉は、当該扉の召し合せを前記屋内側から覆う被覆材をさらに有する、
請求項1又は2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記被覆材を前記屋内側から押さえる補強材をさらに備える、
請求項3に記載の止水装置。
【請求項5】
前記扉は、前記被覆材の端部に貼り付けられた補強テープをさらに有する、
請求項3に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外と屋内とを遮る扉と、当該扉を回転可能に取り付けた枠と、当該枠に嵌合する止水ゴムと、を備える止水装置が知られている。止水ゴムは、扉が閉じた状態において当該扉と密着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の止水装置において、例えば、屋外から侵入しようとする水の水圧が大きい場合、扉が歪み、水が侵入することがある。すなわち、従来の止水装置では、水害の規模により止水性能が不十分な場合があった。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、止水性能の向上が可能な止水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の止水装置は、構造物の屋外側と屋内側とを連通する開口部に嵌合するとともに、前記屋内側に向かって凹む保持部が設けられた枠と、前記枠に回転可能に取り付けられた扉と、前記保持部に収容されるとともに、前記扉における前記屋内側を向く面である内面に当接する弾性体と、前記扉を前記弾性体に押し付ける押圧部を有し、前記扉に取り付けられた少なくとも一つの押圧機構と、を備える。このような構成によれば、押圧機構の押圧部は扉と当接している。すなわち、押圧部は、屋外側から屋内側に圧力を加えている。そのため、弾性体は、扉の内面により密着する。従って、本実施形態の止水装置は、従来の止水装置と比べて止水性能の向上が可能である。
【0007】
前記止水装置では、前記扉は、前記内面に埋め込まれた複数の鋲をさらに有する。このような構成によれば、本実施形態の扉は、従来の扉と比べて剛性が高くなる。従って、例えば、水圧により扉が歪んでしまい、枠と扉との隙間から水が侵入することを抑制できる。
【0008】
前記止水装置では、前記扉は、当該扉の召し合せを前記屋内側から覆う被覆材をさらに有する。このような構成によれば、例えば、召し合せは、当該召し合せを屋内側から覆う被覆材により密閉される。従って、例えば、召し合せから水が侵入することを抑制できる。
【0009】
前記止水装置は、前記被覆材を前記屋内側から押さえる補強材をさらに備える。このような構成によれば、例えば、被覆材は、扉により密着し易くなる。従って、補強材は、扉の召し合せを被覆材によってより密閉させることができる。
【0010】
前記止水装置では、前記扉は、前記被覆材の端部に貼り付けられた補強テープをさらに有する。このような構成によれば、例えば、補強テープは、被覆材の外部に露出している部分を保護する。従って、補強テープは、被覆材の損傷を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、止水装置の止水性能を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態の止水装置の平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の止水装置の断面図である。
【
図3】
図3は、
図2とは異なる方向における本実施形態の止水装置の断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の一部を拡大した本実施形態の止水装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、実施形態に係る止水装置1を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0014】
本実施形態の止水装置1は、例えば、建築物等の構造物Sに設置され、構造物Sの屋外側から屋内側に侵入しようとする水を妨げる装置である。
図1は、本実施形態の止水装置1の平面図である。
図2は、本実施形態の止水装置1の断面図である。言い換えると、
図1は、止水装置1を屋外側から見た正面図である。
図2は、止水装置1を高さ方向から見た断面図である。
【0015】
図1、2に示すように、止水装置1は、扉枠2と、扉3と、止水ゴム4と、補強材5と、複数のヒンジ6と、三つのトルグクランプ7と、を備える。なお、扉枠2は、枠の一例であり、止水ゴム4は弾性体の一例である。また、トルグクランプ7は、押圧機構の一例である。
【0016】
以下の各図では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、扉3の厚さ方向に沿う方向であり、前後方向とも称され得る。Y方向は、扉3の幅方向に沿う方向であり、左右方向とも称され得る。Z方向は、扉3の高さ方向に沿う方向であり、上下方向とも称され得る。なお、本実施形態における前後左右上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、止水装置1の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。
【0017】
扉枠2は、例えば、金属で形成された中空部材である。
図1に示すように、扉枠2は、例えば、構造物Sに取り付けられるとともに、当該構造物Sの屋外と屋内とを繋ぐ開口部Oに嵌合する。すなわち、止水装置1は、開口部Oを遮るように構造物Sに取り付けられる。
【0018】
扉枠2は、二つの縦枠21と、上枠22と、下枠23と、を有する。言い換えると、扉枠2は、二つの縦枠21と、上枠22と、下枠23と、により構成されている。二つの縦枠21は、左右方向(Y方向)において互いに離間して設けられる。各縦枠21は、上下方向(Z方向)に延びて上枠22と、下枠23と、を接続している。
【0019】
上枠22と、下枠23と、は、上下方向(Z方向)において互いに離間して設けられる。上枠22及び下枠23は、左右方向(Y方向)に延びて各縦枠21に接続している。すなわち、上枠22は、扉枠2の上縁であり、下枠23は、扉枠2の下縁である。
【0020】
図2に示すように、扉枠2は、戸当たり面2aと、取付面2bと、対向面2cと、をさらに有する。戸当たり面2aは、扉3が閉じた状態において、止水装置1の屋内側に位置するとともに、前後方向(X方向)において扉3と対向する面である。すなわち、戸当たり面2aは、扉3に沿う方向(YZ平面)に延びている。
【0021】
取付面2bは、戸当たり面2aから屋内側に向かって、当該戸当たり面2aと略直交する方向(XZ平面)に延びる面である。対向面2cは、戸当たり面2aから屋外側に向かって、当該戸当たり面2aと略直交する方向(XZ平面)に延びる面である。
【0022】
扉3は、例えば、金属等で形成され、上下方向(Z方向)に延びた矩形状の板である。扉3は、複数のヒンジ6を介して扉枠2の縦枠21に回転可能に取り付けられている。すなわち、扉3は、止水装置1が設置される構造物Sの開口部Oを開放あるいは閉塞する。
【0023】
本実施形態の扉3は、屋外側に向かって開閉可能な両開き式の扉である。なお、本実施形態では、屋内側から見て左側の扉3を親扉3A、屋内側から見て右側の扉3を子扉3B、と称する。
【0024】
扉3は、骨格31と、表面材32と、複数のビス33と、受部34と、を有する。なお、ビス33は、鋲の一例である。骨格31は、例えば、框や縦桟、横桟等を組み合わせた金属製の部材である。表面材32は、例えば、金属で形成された板金である。表面材32は、骨格31に組付けられている。
【0025】
複数のビス33は、扉3における屋内側を向く面である内面3cにおいて、屋外側に向かって埋め込まれている。言い換えると、扉3の内面3cには、複数のビス33が打ち込まれている。これにより、扉3の剛性が向上する。
【0026】
図1、2に示すように、受部34は、扉3の左右方向(Y方向)における先端である戸先3aから左右方向に突出するとともに、上下方向(Z方向)に延びている。なお、本実施形態では、受部34は、親扉3Aに設けられている。
【0027】
受部34は、扉3の戸先3aにおける屋外側に設けられる。すなわち、受部34は、二つの扉3が閉じた状態において、当該二つの扉3の境界である召し合せ3bを屋外側から覆っている。これにより、受部34は、例えば、召し合せ3bから水が侵入することを抑制する。
【0028】
図3は、
図2とは異なる方向における本実施形態の止水装置1の断面図である。言い換えると、
図3は、止水装置1を幅方向から見た断面図である。
図4は、
図3の一部を拡大した本実施形態の止水装置の断面図である。
【0029】
図3、4に示すように、扉3は、止水テープ35と、補強テープ36と、を有する。なお、止水テープ35は、被覆材の一例である。止水テープ35は、例えば、エチレンプロピレンゴム等の合成樹脂で形成される。
【0030】
図2、3に示すように、止水テープ35は、上下方向(Z方向)に延びるとともに、左右方向(Y方向)において扉3の召し合せ3bを屋内側から覆うように当該扉3に貼り付けられているテープである。言い換えると、止水テープ35は、上下方向(Z方向)に延びるとともに、左右方向(Y方向)において補強材5に貼り付けられているテープである。これにより、召し合せ3bの止水性能がさらに向上する。
【0031】
なお、
図3に示すように、止水テープ35の長さは、扉枠2の上枠22及び下枠23まで延びている。言い換えると、止水テープ35は、上下方向(Z方向)において扉3の高さよりも若干長い。そのため、
図4に示すように、止水テープ35の両端部35aは、扉3からはみ出している。
【0032】
補強テープ36は、例えば、アルミガラス等で形成されたテープである。
図4に示すように、補強テープ36は、屋内側から止水テープ35の扉3からはみ出している部分に貼り付けられる。すなわち、補強テープ36は、止水テープ35の両端部35aに貼り付けられている。
【0033】
止水ゴム4は、例えば、ゴム等の合成樹脂で形成された弾性部材である。
図1に示すように、止水ゴム4は、二つの縦ゴム41と、二つの横ゴム42と、を有する。言い換えると、止水ゴム4は、二つの縦ゴム41と、二つの横ゴム42と、により構成されている。
【0034】
二つの縦ゴム41は、左右方向(Y方向)において互いに離間して設けられる。各縦ゴム41は、上下方向(Z方向)に延びて各横ゴム42と接続している。二つの横ゴム42は、上下方向において互いに離間して設けられる。各横ゴム42は、左右方向に延びて各縦ゴム41に接続している。そのため、
図1に示すように、止水ゴム4は、扉3の内面3cに、全周に亘って当接する。なお、縦ゴム41と横ゴム42とは、例えば、接着剤等で接着されている。
【0035】
図2に示すように、扉枠2には、保持部24が設けられている。保持部24は、戸当たり面2aから屋内側に向かって凹むとともに、扉枠2の全周に亘って設けられる。これにより、保持部24には、収容空間241が形成される。
【0036】
収容空間241は、止水ゴム4を収容可能な空間である。止水ゴム4は、収容空間241に嵌合している。言い換えると、止水ゴム4は、例えば、扉3が閉じた状態において、圧縮されながら収容空間241に収容される。そのため、止水ゴム4は、扉枠2の戸当たり面2a及び保持部24に密着するとともに収容空間241に収容される。すなわち、止水ゴム4のサイズは、収容空間241より若干大きい。
【0037】
補強材5は、例えば、上下方向(Z方向)に延びるとともに金属で形成された中空部材である。なお、補強材5は、扉枠2の上枠22から下枠23に亘って延びている。
【0038】
図2に示すように、補強材5は、取付部51と、本体部52と、を有する。取付部51は、屋外側から屋内側に向かって凹む部材である。本体部52は、例えば、金属等で形成された角柱材である。本体部52は、取付部51に収容されている。
【0039】
取付部51は、屋内側に位置して召し合せ3b及び止水テープ35を覆うとともに、ネジ等によって子扉3Bに取り付けられる。すなわち、補強材5は、屋内側から止水テープ35を押さえるとともに、扉3に取り付けられている。
【0040】
複数のヒンジ6は、扉3を扉枠2の縦枠21に対して回転可能にするものである。
図2に示すように、本実施形態では、ヒンジ6は、扉3の左右方向(Y方向)における端部と縦枠21とを接続している。
【0041】
ヒンジ6における扉3の回転軸は、屋内側よりも屋外側に位置する。言い換えると、ヒンジ6は、扉3の外面3dから屋外側に突出している。これにより、扉3は、屋外側にのみ開放可能になる。
【0042】
図1に示すように、各縦枠21に取り付けられる各ヒンジ6は、互いに上下方向(Z方向)に離間して位置する。なお、本実施形態では、各扉3には、それぞれ三つのヒンジ6が取り付けられている。しかし、ヒンジ6の数はこれに限らない。例えば、各扉3にそれぞれ二つのヒンジ6が取り付けられても良い。
【0043】
トルグクランプ7は、例えば、一方向に対して力を加えることが可能な部品である。
図1、2に示すように、各トルグクランプ7は、ネジ等によって扉3に取り付けられる。なお、三つのトルグクランプ7のうち二つは、扉3の屋外側に取り付けられる。そして、三つのトルグクランプ7のうち一つは、扉3の屋内側に取り付けられる。
【0044】
図2、3に示すように、各トルグクランプ7は、ハンドル71と、押圧部72と、を有する。ハンドル71は、例えば、作業者が把持する部分である。押圧部72は、例えば、ゴム等の合成樹脂で形成される部材である。押圧部72は、作業者がハンドル71を把持して操作することで、扉枠2又は扉3に当接する。
【0045】
本実施形態では、扉3の外面3dに取り付けられているトルグクランプ7は、ハンドル71が左右方向(Y方向)と平行な向きであるとともに、押圧部72が扉3の戸先3aに当接する位置に取り付けられる。なお、扉3の外面3dに取り付けられているトルグクランプ7は、上下方向(Z方向)において互いに離間して位置する。
【0046】
扉3の内面3cに取り付けられているトルグクランプ7は、ハンドル71が上下方向(Z方向)と平行な向きであるとともに、押圧部72が扉枠2の下枠23に当接する位置に取り付けられる。すなわち、押圧部72は、止水ゴム4を扉3に押し付けている。
【0047】
なお、本実施形態では、三つのトルグクランプ7が設けられている。しかし、トルグクランプ7の数は、これに限らない。例えば、上下方向(Z方向)において互いに離間して位置するトルグクランプ7が四つ設けられても良いし、左右方向(Y方向)において互いに離間して位置するトルグクランプ7が二つ設けられても良い。すなわち、トルグクランプ7は、少なくとも一つ設けられていれば良い。また、トルグクランプ7の設置位置は、想定される水害の規模に応じて適宜変更しても良い。
【0048】
以上のように、本実施形態の止水装置1は、扉枠2を構造物Sの開口部Oに嵌め込むことで、当該構造物Sに取り付けられる。例えば、扉3が閉じられた状態において、扉3の内面3cは、扉枠2の収容空間241に収容されている止水ゴム4と密着する。
【0049】
例えば、開口部Oを通じて屋外側から水が侵入しようとする場合、水は扉枠2と扉3との隙間及び扉3の召し合せ3bから屋内に侵入しようとする。この時、扉3の内部は、浸水している。そのため、扉3における屋内側の表面材32よりも屋外側には水が存在しており、屋内側には水が存在していない。このような状況では、扉3における屋内側の表面材32にかかる水圧が大きくなる。従来の止水装置では、水の水圧が高いと扉が歪んでしまい、扉枠と扉との隙間及び扉の召し合せから水が屋内に侵入する虞があった。
【0050】
一方で、本実施形態の止水装置1では、扉3の表面材32には、屋内側から複数のビス33が埋め込まれているため、扉3の剛性が向上している。そのため、例えば、扉3における屋内側の表面材32は、屋外側から侵入しようとする水の水圧によって歪み難くなる。これにより、扉枠2と扉3との隙間及び扉3の召し合せ3bが広がり難い。
【0051】
さらに、構造物Sに取り付けられた止水装置1では、三つのトルグクランプ7は、作業者によって操作され、押圧部72が扉枠2の下枠23及び扉3の受部34と当接する。すなわち、三つのトルグクランプ7は、屋外側から屋内側に圧力を加えている。これにより、扉3の内面3cは、止水ゴム4とより密着する。
【0052】
また、扉3の召し合せ3bには、屋内側から止水テープ35が貼り付けられている。すなわち、召し合せ3bは、止水テープ35によって屋内側から覆われている。さらに、補強材5は、止水テープ35を召し合せ3bに押し付けるように、屋内側から扉3に取り付けられている。これにより、召し合せ3bは、止水テープ35及び補強材5によって密閉される。
【0053】
そのため、例えば、開口部Oを通じて屋外側から水が侵入しようとする場合、水は止水ゴム4と止水テープ35によって止水される。
【0054】
以上のように、本実施形態の止水装置1は、従来の止水装置1と比べて屋外側から侵入する水を止水し易くなる。従って、本実施形態の止水装置1は、従来よりも止水性能が向上する。
【0055】
また、本実施形態の止水装置1は、例えば、既設の止水扉に対して複数のビス33、止水テープ35、補強材5、トルグクランプ7等を後付けすることで構成しても負い。これにより、既設の止水扉を活かしたまま従来よりも高い止水効果が得られる。
【0056】
また、本実施形態の止水装置1のメンテナンスは、主に止水ゴム4を交換するだけである。そのため、従来よりも作業時間が短縮され、作業者の負担を軽減することが可能である。
【0057】
なお、本実施形態の止水装置1において、各部品を取り付けている全てのネジ等には、例えば、合成樹脂で形成されたワッシャーを挟む等の止水処理が施されている。
【0058】
以上のように、本実施形態の止水装置1は、扉枠2と、扉3と、止水ゴム4と、三つのトルグクランプ7と、を備える。扉枠2は、構造物Sの屋外側と屋内側とを連通する開口部Oに嵌合する。さらに、扉枠2には、屋内側に向かって凹む保持部24が設けられている。扉3は、扉枠2に回転可能に取り付けられる。止水ゴム4は、保持部24に収容されるとともに、扉3の内面3cに当接する。三つのトルグクランプ7は、扉3に取り付けられる。さらに、三つのトルグクランプ7は、扉3を止水ゴム4に押し付ける押圧部72を有する。
【0059】
本実施形態の止水装置1は、例えば、屋外と屋内を繋ぐ開口部Oが設けられた構造物Sに取り付けられる。止水装置1では、扉3が閉じられた状態において、扉3の内面3cは止水ゴム4と密着している。例えば、開口部Oを通じて屋外側から水が侵入しようとする場合、水は扉枠2と扉3との隙間から屋内に侵入しようとする。
【0060】
本実施形態では、トルグクランプ7の押圧部72は扉3と当接している。すなわち、押圧部72は、屋外側から屋内側に圧力を加えている。そのため、止水ゴム4は、扉3の内面3cにより密着する。これにより、本実施形態の止水装置1は、従来の止水装置と比べて止水性能の向上が可能である。
【0061】
また、本実施形態では、扉3は、複数のビス33をさらに有する。ビス33は、内面3cに埋め込まれる。例えば、開口部Oを通じて屋外側から水が侵入しようとする場合、扉3の内部は浸水している。この時、扉3の内面3cよりも屋外側には水が存在しており、扉3の内面3cよりも屋内側には水が存在していない。このような状況では、扉3の内面3cにかかる水圧が大きくなる。
【0062】
本実施形態では、複数のビス33が扉3の内面3cに埋め込まれている。そのため、本実施形態の扉3は、従来の扉と比べて剛性が高くなる。これにより、例えば、水圧により扉3が歪んでしまい、扉枠2と扉3との隙間から水が侵入することを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態では、扉3は、止水テープ35をさらに有する。止水テープ35は、扉3の召し合せ3bを屋内側から覆う。例えば、開口部Oを通じて屋外側から水が侵入しようとする場合、水は扉3の召し合せ3bから屋内に侵入しようとする。本実施形態では、召し合せ3bは、当該召し合せ3bを屋内側から覆う止水テープ35により密閉される。これにより、例えば、召し合せ3bから水が侵入することを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の止水装置1は、補強材5をさらに備える。補強材5は、止水テープ35を屋内側から押さえる。これにより、止水テープ35は、扉3により密着し易くなる。従って、補強材5は、扉3の召し合せ3bに止水テープ35をより密閉させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、扉3は、補強テープ36をさらに有する。補強テープ36は、止水テープ35の端部35aに貼り付けられる。止水テープ35の端部35aは、当該止水テープ35を押さえている補強材5から露出している。すなわち、補強テープ36は、止水テープ35の外部に露出している部分を保護している。これにより、補強テープ36は、止水テープ35の損傷を防ぐことができる。
【0066】
<変形例>
図5は、変形例の止水装置1の断面図である。
図5に示すように、変形例の止水装置1は、下記に説明される構成を除き、前記実施形態の止水装置1と同様の構成を備えている。よって、変形例によっても、前記実施形態と同様の構成に基づく効果が得られる。
【0067】
前記実施形態では、三つのトルグクランプ7が設けられていた。しかし、例えば、三つのトルグクランプ7のうち扉3の外面3dに取り付けられた二つの替わりに、二つの圧縮機構8が設けられても良い。
【0068】
圧縮機構8は、例えば、フラットバー等によるボルト締めが可能な機構である。
図4に示すように、圧縮機構8は、フラットバー81と、ボルト82と、ナット83と、押圧部材84と、ネジ85と、を有する。
【0069】
フラットバー81は、例えば、金属等で形成された板状の部材である。フラットバー81は、扉3の召し合せ3bを覆うように左右方向(Y方向)に延びている。ボルト82は、フラットバー81を貫通するとともに押圧部材84を取り付けている。
【0070】
ナット83は、ボルト82に挿入されてフラットバー81と当接している。押圧部材84は、例えば、ゴム等の合成樹脂で形成された弾性部材である。押圧部材84は、ボルト82の先端に取り付けられるとともに扉3の外面3dと当接している。ネジ85は、扉3と押圧部材84とを貫通するとともに、当該押圧部材84を扉3に取り付けている。
【0071】
圧縮機構8では、ナット83が締め付けられることで、フラットバー81が押圧部材84に押し付けられる。これにより、押圧部材84は、屋外側から屋内側に圧力を加えることが可能である。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 止水装置
2 扉枠(枠)
24 保持部
3 扉
3b 召し合せ
3c 内面
33 ビス(鋲)
35 止水テープ(被覆材)
35a 端部
36 補強テープ
4 止水ゴム(弾性体)
5 補強材
7 トルグクランプ(押圧機構)
72 押圧部
O 開口部
S 構造物