IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

特開2025-5161ハーネス製造装置及びハーネス製造方法
<>
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図1
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図2
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図3
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図4
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図5
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図6
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図7
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図8
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図9
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図10
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図11
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図12
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図13
  • 特開-ハーネス製造装置及びハーネス製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005161
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ハーネス製造装置及びハーネス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
H01B13/012 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105219
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真史
(57)【要約】
【課題】分岐形状のワイヤーハーネスを、布線板を用いずに設備費用や製造コストを抑え、BCP対応のリードタイムを短縮して製造することができるハーネス製造装置及びハーネス製造方法を提供する。
【解決手段】ハーネス製造装置1が、電線211の端部を保持する電線端保持部111、及び、電線端保持部111を保持する竿本体部112、を有する電線保持竿11と、ワイヤーハーネスの構成電線が分岐形状に応じて分配されて搭載された複数の電線保持竿11を搬送方向D11に所定の終点位置P11まで搬送する搬送機構12と、この終点位置P11に設けられ、複数の電線保持竿11を、互いに連結されて複数本の構成電線が分岐形状に応じた状態で搭載された合体状態で保持する合体竿保持部16と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐形状を有するワイヤーハーネスを構成する複数本の構成電線のうちの一部の電線が、その端部の保持によって搭載される竿状の部材であって、前記端部を保持する電線端保持部、及び、竿状に形成され、その長さ方向に少なくとも1つの前記電線端保持部を配列して保持する竿本体部、を有する電線保持竿と、
前記複数本の構成電線が前記分岐形状に応じて分配されて搭載された複数の前記電線保持竿を、前記長さ方向と交差する搬送方向に間隔を開けた配列状態で保持し、前記搬送方向に所定の終点位置まで搬送する搬送機構と、
前記終点位置に設けられ、前記搬送機構によって順次に搬送されて前記終点位置に至る複数の前記電線保持竿を、前記長さ方向及び前記搬送方向と交差する合体方向に連結され、前記複数本の構成電線が前記分岐形状に応じた状態で搭載された合体状態で保持する合体竿保持部と、
を備えたことを特徴とするハーネス製造装置。
【請求項2】
前記搬送機構が、少なくとも一部が前記搬送方向に進行する搬送ベルトを、前記搬送方向への進行部分を互いに並走させるように一対有し、一対の前記搬送ベルトにおける前記進行部分の相互間に前記電線保持竿が掛け渡されるように複数取り付けられ、前記進行部分の進行によって複数の前記電線保持竿を搬送するものであることを特徴とする請求項1に記載のハーネス製造装置。
【請求項3】
前記搬送機構による搬送中の前記電線保持竿に搭載された前記電線の進路上の外装位置へと外装材を保持した状態で進入可能に設けられ、前記電線に前記外装位置を通過させつつ当該電線に前記外装材を取り付ける外装機構を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のハーネス製造装置。
【請求項4】
前記外装材が、シート状の部材であり、
前記外装機構は、前記外装材で前記搬送方向を遮るように保持し、前記外装位置を通過する前記電線を前記外装材で受け止めるとともに、当該電線との接触部を折れ線として前記外装材を二つ折りに折り畳むように当該電線に前記外装材を取り付けつつ、取付け後の当該電線を通過させることを特徴とする請求項3に記載のハーネス製造装置。
【請求項5】
前記電線保持竿における前記竿本体部が、前記合体方向について移動可能な状態で前記電線端保持部を保持するものであり、
前記搬送方向について前記終点位置よりも上流側に設けられ、各前記電線保持竿における前記電線端保持部を前記合体方向に移動させて、前記分岐形状に応じた位置に位置付ける電線端移動機構を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のハーネス製造装置。
【請求項6】
前記ワイヤーハーネスが、複数の端部コネクタの相互間に前記複数本の構成電線が掛け渡されるものであり、前記電線保持竿に搭載される前記電線は、前記複数の端部コネクタのうちの一部のコネクタの相互間に掛け渡されて両端部が接続されたものであって、
前記電線保持竿における前記電線端保持部が、前記電線の前記両端部に接続された前記コネクタを保持するものであり、
前記搬送機構は、前記複数の端部コネクタの分配保持によって前記複数本の構成電線が分配されて搭載された複数の前記電線保持竿を保持して搬送する機構であることを特徴とする請求項1に記載のハーネス製造装置。
【請求項7】
請求項1~6のうち何れか一項に記載のハーネス製造装置を用い、前記複数本の構成電線が分配されて搭載された複数の前記電線保持竿を前記搬送機構にセットする電線保持竿セット工程と、
複数の前記電線保持竿を前記終点位置まで搬送する搬送工程と、
複数の前記電線保持竿を、前記合体方向に連結し、前記合体状態で前記合体竿保持部に保持させる合体工程と、
を備えたことを特徴とするハーネス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ワイヤーハーネスを製造するためのハーネス製造装置及びハーネス製造方法に関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、複雑な分岐形状を有することが多い自動車用のワイヤーハーネスを、布線板上で電線の配索を行って製造するハーネス製造装置及びハーネス製造方法が知られている(例えば特許文献1)。上記の布線板には、製造対象のワイヤーハーネスの分岐形状に応じて、複数の電線保持具が配置され、この電線保持具に電線を保持させ、適宜に結束したり外装材を取り付けたりすることでワイヤーハーネスが製造されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-319531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、布線板を用いるハーネス製造装置及びハーネス製造方法では、製造対象のワイヤーハーネスの分岐形状に特化した専用の布線板が用いられる。このため、分岐形状が異なる複数種類のワイヤーハーネスを製造するためには、対象毎に専用の布線板が必要となり、設備費用が嵩みがちとなる。また、布線板上での電線の配索は、多くの場合、作業者の手作業によってなされることから、人件費等の製造コストも嵩みがちとなる。更に、いわゆるBCP(business continuity planning)の観点から代替設備を用意する際に代替用の布線板が必要となることから、この点での費用の増大に加え、BCP対応のリードタイムが長くなりがちとなる。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、分岐形状のワイヤーハーネスを、布線板を用いずに設備費用や製造コストを抑え、BCP対応のリードタイムを短縮して製造することができるハーネス製造装置及びハーネス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、ハーネス製造装置は、分岐形状を有するワイヤーハーネスを構成する複数本の構成電線のうちの一部の電線が、その端部の保持によって搭載される竿状の部材であって、前記端部を保持する電線端保持部、及び、竿状に形成され、その長さ方向に少なくとも1つの前記電線端保持部を配列して保持する竿本体部、を有する電線保持竿と、前記複数本の構成電線が前記分岐形状に応じて分配されて搭載された複数の前記電線保持竿を、前記長さ方向と交差する搬送方向に間隔を開けた配列状態で保持し、前記搬送方向に所定の終点位置まで搬送する搬送機構と、前記終点位置に設けられ、前記搬送機構によって順次に搬送されて前記終点位置に至る複数の前記電線保持竿を、前記長さ方向及び前記搬送方向と交差する合体方向に連結され、前記複数本の構成電線が前記分岐形状に応じた状態で搭載された合体状態で保持する合体竿保持部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のハーネス製造装置及びハーネス製造方法によれば、分岐形状のワイヤーハーネスを、布線板を用いずに設備費用や製造コストを抑え、BCP対応のリードタイムを短縮して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るハーネス製造装置を示す模式図である。
図2図1に示されているハーネス製造装置を、図1中の矢印V11方向から見た模式的な側面図である。
図3図1及び図2に示されているハーネス製造装置を用いて製造されるワイヤーハーネスの一例を示す模式図である。
図4図1及び図2に示されているハーネス製造装置を用いたハーネス製造方法における電線保持竿セット工程を示す図である。
図5図4に示されている電線保持竿セット工程でセットされる3本の電線保持竿を、各電線保持竿に搭載されたサブハーネスとともに示す図である。
図6図1及び図2に示されているハーネス製造装置を用いたハーネス製造方法における搬送工程を示す図である。
図7図6に示されている外装機構によって端末外装材が電線に取り付けられる様子を示す模式図である。
図8図6に示されている電線牽引装置によって電線に対する牽引が行われる様子を示す模式図である。
図9図8に示されている電線牽引装置を、図8中の矢印V12方向から見た上面図である。
図10図9に示されている電線牽引装置を、図9中のV13-V13に沿った中間側面図で示した図である。
図11】搬送工程において電線端移動機構が各電線保持竿における電線の端部の保持位置を移動する電線端移動工程を示す図である。
図12図11の電線端移動工程の実行前の3本の電線保持竿の状態を示す図である。
図13図11の電線端移動工程の実行後の3本の電線保持竿の状態を示す図である。
図14】搬送工程によって終点位置まで搬送された3本の電線保持竿に対して合体工程が行われた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ハーネス製造装置、ハーネス製造方法、電線保持竿、及び電線牽引装置の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るハーネス製造装置を示す模式図であり、図2は、図1に示されているハーネス製造装置を、図1中の矢印V11方向から見た模式的な側面図である。また、図3は、図1及び図2に示されているハーネス製造装置を用いて製造されるワイヤーハーネスの一例を示す模式図である。
【0011】
まず、本実施形態における製造対象のワイヤーハーネス2は、自動車に搭載されて車載装置間を接続する部材であり、複数の端部コネクタ22の相互間に複数本の構成電線21が掛け渡されて分岐形状を有するものとなっている。また、このワイヤーハーネス2には、端末外装材23、中間線外装材24、幹線外装材25、グロメット26、結束材27、及びクランプ材28が取り付けられている。端末外装材23は、枝線側の各端部コネクタ22の近傍箇所で構成電線21に取り付けられる外装材である。また、中間線外装材24は、枝線がまとめられた中間線部分に取り付けられる外装材であり、幹線外装材25は、中間線部分が1本にまとめられた幹線部分に取り付けられる外装材である。グロメット26は、幹線側の端部コネクタ22の近傍箇所に取り付けられるゴム製のチューブであり、幹線側が例えば金属パネルの貫通孔に通されて配索される際に、貫通孔の内周縁から構成電線21を保護する部材である。結束材27は、ワイヤーハーネス2の分岐形状における分岐点を結束するように取り付けられる部材である。そして、クランプ材28は、分岐形状の各所に取り付けられ、ワイヤーハーネス2を所定の配索場所に固定するための部材である。本実施形態では、ハーネス製造装置1における図1及び図2の図示部分において、端末外装材23の取付けが自動で行われる。他方、中間線外装材24、幹線外装材25、グロメット26、結束材27、及びクランプ材28の取付けは、ロボットアームによる自動作業や作業者による手作業が適宜に使い分けられて行われる。
【0012】
このようなワイヤーハーネス2を製造するためのハーネス製造装置1について、図1図3を参照して概要を説明する。このハーネス製造装置1は、3本の電線保持竿11と、搬送機構12と、外装機構13と、電線牽引装置14と、電線端移動機構15と、合体竿保持部16と、を備えている。
【0013】
本実施形態では、ワイヤーハーネス2が、A~Cの3つのサブハーネスが束ねられて分岐形状が形作られるものとなっており、3本の電線保持竿11は、これら3つのサブハーネスを一対一に保持するものとなっている。即ち、本実施形態では、電線保持竿11として、Aサブ用電線保持竿11a、Bサブ用電線保持竿11b、及びCサブ用電線保持竿11c、の3本が設けられている。これら3本の電線保持竿11には、ワイヤーハーネス2を構成する複数本の構成電線21が、分岐形状に応じて分配されて搭載される。Aサブ用電線保持竿11aには、Aサブハーネスを構成する電線211が搭載され、Bサブ用電線保持竿11bには、Bサブハーネスを構成する電線211が搭載され、Cサブ用電線保持竿11cには、Cサブハーネスを構成する電線211が搭載される。
【0014】
搬送機構12は、3本の電線保持竿11を、搬送方向D11に間隔を開けた配列状態で保持し、搬送方向D11に所定の終点位置P11まで搬送する機構である。この搬送機構12は、表面に電線保持竿11の保持凹部121aが複数設けられた環状の搬送ベルト121を一対備えている。これら一対の搬送ベルト121が一対の懸架ローラ122に掛け渡され、一方の懸架ローラ122が回転駆動されることで、一対の搬送ベルト121が互いに並走して循環移動する。電線保持竿11は、一対の搬送ベルト121の保持凹部121aに両端部が嵌め込まれて保持される。そして、搬送ベルト121の循環移動によって搬送方向D11に終点位置P11まで搬送される。
【0015】
外装機構13は、搬送機構12による搬送中の電線保持竿11に搭載された電線211に端末外装材23を取り付ける機構部位である。外装機構13は、端末外装材23を保持した状態で外装移動方向D12に移動することで、電線保持竿11の移動を妨げない下方側の待機位置P12から、搬送中の電線211の進路上の外装位置P13へと進入可能に設けられている。そして、外装位置P13へと位置付けられた外装機構13のもとに電線211が到来すると、外装機構13は、電線211に外装位置P13を通過させつつ当該構成電線21に端末外装材23を取り付ける。
【0016】
電線牽引装置14は、外装機構13と一緒に外装位置P13へと進入可能に設けられている。そして、電線牽引装置14は、外装位置P13を通過中の電線211が真っすぐに延ばされて外装機構13による端末外装材23の取付けを受けるように牽引する装置となっている。
【0017】
電線端移動機構15は、搬送方向D11について終点位置P11よりも上流側、且つ外装位置P13よりも下流側に設けられる。電線端移動機構15は、各電線保持竿11における電線211の端部の保持位置を移動させて、ワイヤーハーネス2の分岐形状に応じた位置に位置付ける機構部位となっている。電線端移動機構15は、このような電線211の端部の保持位置の移動を、電線端部移動方向D13に移動することで行う機構となっている。
【0018】
合体竿保持部16は、搬送機構12による搬送の終点位置P11に設けられている。そして、搬送機構12によって順次に搬送されて終点位置P11に至る3本の電線保持竿11を、後述の合体状態で保持する部位である。この合体竿保持部16は、合体状態の電線保持竿11を保持して、後工程の作業場所へと搬送する合体搬送部161と、3本の電線保持竿11を合体させながら合体搬送部161へと案内する合体案内レール162と、を備えている。終点位置P11に至った電線保持竿11は、合体案内レール162によって合体搬送部161まで合体案内方向D14に案内されつつ積上げられて合体状態となる。この合体状態の電線保持竿11が、後工程の作業場所へと合体搬送方向D15に搬送され、当該作業場所において、中間線外装材24、幹線外装材25、グロメット26、結束材27、及びクランプ材28の取付けを受けてワイヤーハーネス2が完成することとなる。
【0019】
ハーネス製造装置1は、以上に概要を説明した構成を有している。以下、このハーネス製造装置1における各部の詳細について、このハーネス製造装置1を用いてワイヤーハーネス2を製造するハーネス製造方法の処理の流れに沿って説明する。
【0020】
本実施形態では、ハーネス製造装置1を用いたハーネス製造方法の処理に先だって、まず、3本の電線保持竿11に搭載されるA~Cの3つのサブハーネスが形成される。サブハーネスは、電線保持竿11を用い、この電線保持竿11への搭載状態で完成するように形成されてもよく、別途に形成された後に電線保持竿11に搭載されることとしてもよい。このようにサブハーネスが形成されると、本実施形態におけるハーネス製造方法の処理がスタートする。処理がスタートすると、まず、以下に説明する電線保持竿セット工程が行われる。
【0021】
図4は、図1及び図2に示されているハーネス製造装置を用いたハーネス製造方法における電線保持竿セット工程を示す図であり、図5は、図4に示されている電線保持竿セット工程でセットされる3本の電線保持竿を、各電線保持竿に搭載されたサブハーネスとともに示す図である。
【0022】
電線保持竿11が保持するサブハーネス2-1は、ワイヤーハーネス2を構成する複数本の構成電線21のうちの一部の電線211が、複数の端部コネクタ22のうちの一部のコネクタ221の相互間に掛け渡されたものである。A~Cの3つのサブハーネス2-1のうちのAサブハーネス2-1aは、幹線側の1つのコネクタ221と、枝線側の3つのコネクタ221との間に電線211が掛け渡されたものである。Bサブハーネス2-1bは、幹線側の1つのコネクタ221と、枝線側の2つのコネクタ221との間に電線211が掛け渡されたものである。そして、Cサブハーネス2-1cは、幹線側の1つのコネクタ221と、枝線側の1つのコネクタ221との間に電線211が掛け渡されたものである。
【0023】
これらのサブハーネス2-1を保持する電線保持竿11は、電線211が、両端部に接続されたコネクタ221を介して保持されてU字状に搭載される竿状の部材である。電線保持竿11には、その長さ方向D16にコネクタ221を保持する電線端保持部111が配列されて1つ以上設けられている。この電線保持竿11は、1つ以上の電線端保持部111と、竿本体部112と、を備えている。竿本体部112は、竿状に形成され、その長さ方向D16に少なくとも1つの電線端保持部111を配列して保持する部材である。また、この竿本体部112は、長さ方向D16、及び、電線保持竿11の搬送方向D11と長さ方向D16の両方に対する交差方向D17、のそれぞれについて電線端保持部111を移動可能に保持する。この竿本体部112は、交差保持レール112aと、長さ保持レール112bと、合体部112cと、を備えている。
【0024】
交差保持レール112aは、交差方向D17に延在するレール部材であって、電線端保持部111を移動可能に保持する。長さ保持レール112bは、長さ方向D16に延在するレール部材であって、交差保持レール112aを移動可能に保持する。この長さ保持レール112bにおいて、交差保持レール112aは、電線端保持部111を一対一に保持するように設けられている。また、電線端保持部111は、交差保持レール112aから搬送方向D11へと棚状に張り出すように保持されている。
【0025】
本実施形態では、Aサブ用電線保持竿11aは、電線端保持部111及び交差保持レール112aを、各々5つずつ備えており、5つのコネクタ221を介してAサブハーネス2-1aを保持する。また、Bサブ用電線保持竿11bは、電線端保持部111及び交差保持レール112aを、各々3つずつ備えており、3つのコネクタ221を介してBサブハーネス2-1bを保持する。そして、Cサブ用電線保持竿11cは、電線端保持部111及び交差保持レール112aを、各々2つずつ備えており、2つのコネクタ221を介してCサブハーネス2-1cを保持する。
【0026】
竿本体部112における合体部112cは、長さ保持レール112bに設けられ、竿本体部112を、他の電線211を保持する他の竿本体部112に対し交差方向D16に沿った合体方向D18に並んだ合体状態で連結するための部位である。ここで、この合体部112cには、連結受け部112c-1と、連結嵌入部112c-2との2種類がある。
【0027】
連結受け部112c-1は、他の竿本体部112の一部が嵌め込まれることで、この他の竿本体部112に連結する。本実施形態では、この連結受け部112c-1は、Aサブ用電線保持竿11aの竿本体部112の両端部それぞれに設けられ、他のBサブ用電線保持竿11b及びCサブ用電線保持竿11cの各竿本体部112の両端部それぞれを受入れる。また、連結受け部112c-1は、Bサブ用電線保持竿11b及びCサブ用電線保持竿11cの各竿本体部112の端部が、これら2本の他の竿本体部112が合体方向D18に並ぶように嵌め込まれる。具体的には、連結受け部112c-1は、各端部が嵌め込まれる嵌込み凹部112c-1aが合体方向D18に2つ配列されて設けられた構造となっている。
【0028】
連結嵌入部112c-2は、他の竿本体部112の一部に嵌め込まれることで、この他の竿本体部112に連結する。本実施形態では、この連結嵌入部112c-2は、Bサブ用電線保持竿11b及びCサブ用電線保持竿11cの各竿本体部112の両端部それぞれに設けられている。具体的には、連結嵌入部112c-2は、各竿本体部112の各端部が、Aサブ用電線保持竿11aの竿本体部112の連結受け部112c-1における嵌込み凹部112c-1aに嵌入可能な形状で長さ方向D16に延出した部位となっている。
【0029】
図4に示されている電線保持竿セット工程S11では、図3に示されているワイヤーハーネス2を構成する複数本の構成電線21が分配されて搭載された3本の電線保持竿11が搬送機構12にセットされる。本実施形態では、3本の電線保持竿11は、搬送方向D11の上流側から、Aサブ用電線保持竿11a、Bサブ用電線保持竿11b、Cサブ用電線保持竿11cの順番に並ぶように、搬送機構12における一対の搬送ベルト121にセットされる。このとき、各電線保持竿11における交差保持レール112aの保持位置は、ワイヤーハーネス2の分岐形状に応じた分散位置となっている。また、この交差保持レール112aの分散位置は、セット後の3本の電線保持竿11を搬送方向D11の前方側から見たときに重ならないよう長さ方向D16にずらされた位置となっている。他方で、各電線保持竿11における電線端保持部111の保持位置は、交差方向D17について、一律に、交差保持レール112aにおける最上位の端部位置となっている。このような状態での電線保持竿セット工程S11の後、作業者によって所定の搬送開始操作が行われると、以下に説明する搬送工程が行われる。
【0030】
図6は、図1及び図2に示されているハーネス製造装置を用いたハーネス製造方法における搬送工程を示す図である。
【0031】
この搬送工程S12では、Aサブ用電線保持竿11a、Bサブ用電線保持竿11b、及びCサブ用電線保持竿11cの3本の電線保持竿11が、この記載順で、図1及び図2に示されている終点位置P11まで搬送機構12によって搬送される。ここで、本実施形態では、この搬送工程S12での搬送途中において、Aサブハーネス2-1a、Bサブハーネス2-1b、及びCサブハーネス2-1cそれぞれの電線211に対する端末外装工程S121が行われる。端末外装工程S121では、各サブハーネス2-1の電線211における枝線側の各コネクタ221の近傍箇所に上述の外装機構13によって端末外装材23を取り付ける工程である。
【0032】
ここで、外装機構13は、端末外装材23を1つずつ保持して電線211に取り付ける機構となっている。即ち、このハーネス製造装置1では、外装機構13が、製造対象のワイヤーハーネス2における端末外装材23の数だけ複数設けられている。そして、これら複数の外装機構13が、各サブハーネス2-1の電線211の到来前は、下方側の待機位置P12に待機している。端末外装工程S121では、この到来の直前に、外装機構13が上方の外装位置P13へと移動し、電線211にこの外装位置P13を通過させつつ当該電線211に端末外装材23を取り付ける。
【0033】
図7は、図6に示されている外装機構によって端末外装材が電線に取り付けられる様子を示す模式図である。この図7では、1つの外装機構13が、代表例として、交差方向D17の上方側からの模式的な上面図で示されている。
【0034】
この図7に示されているように、本実施形態では、端末外装材23が、シート状の部材となっている。本実施形態では、外装機構13がシート状の端末外装材23を保持した状態で、下方側の待機位置P12から、端末外装材23で搬送方向D11を遮るよう外装位置P13へと移動する。そして、外装機構13は、この外装位置P13において、当該外装位置P13を通過する電線211を端末外装材23で受け止める。
【0035】
このとき、外装機構13は、搬送方向D11と交差する回転軸131a回りに回転可能な一対の可動片131を有しており、電線211の受止め前の段階では、これら一対の可動片131が開いた状態でシート状の端末外装材23を保持している。電線211が到来して端末外装材23で受け止められると、電線211の進行に押されて一対の可動片131が徐々に閉じて行く。その結果、外装機構13は、電線211との接触部を折れ線として端末外装材23を二つ折りに折り畳むように当該電線211に端末外装材23を取り付けつつ、取付け後の電線211に外装位置P13を搬送方向D11に通過させる。取付け後の電線211が通過すると、外装機構13が待機位置P12へと移動する。
【0036】
また、以上に説明した端末外装工程S121では、電線牽引装置14による外装対象の電線211に対する牽引が行われる。
【0037】
図8は、図6に示されている電線牽引装置によって電線に対する牽引が行われる様子を示す模式図である。また、図9は、図8に示されている電線牽引装置を、図8中の矢印V12方向から見た上面図であり、図10は、図9に示されている電線牽引装置を、図9中のV13-V13に沿った中間側面図で示した図である。
【0038】
電線牽引装置14は、上述したように外装位置P13を通過中の電線211が真っすぐに延ばされて外装機構13による端末外装材23の取付けを受けるように牽引する装置である。この電線牽引装置14は、一対の回転体141及び駆動部142を備えている。
【0039】
一対の回転体141は、端部が保持されて線長方向D19と交差する搬送方向D11に搬送される電線211の通過位置である外装位置P13に配置される。各回転体141は、外装位置P13に向かって凸の突曲面141a-1を有し、線長方向D19及び搬送方向D11と交差する回転軸141c回りに各々が回転可能な一対の部材である。一対の回転体141では、外装位置P13に対する電線211の進入側で、当該電線211を摺擦しつつ通過させるように突曲面141a-1どうしが最接近状態で対面する。各回転体141は、突曲面141a-1を有し、回転によって電線211を牽引する牽引部141a及び軸棒部141bを備えている。軸棒部141bは、牽引部141aから回転軸141cに沿って棒状に突出し、駆動部142からの駆動力を受ける部位である。また、一対の回転体141は、次のような配置によって、上述の電線211の進入側での最接近状態が形作られている。即ち、一対の回転体141は、一対の回転軸141cが搬送方向D11に凸のV字を形成するように傾いた姿勢で配置されている。また、各回転体141の牽引部141aにおける突曲面141a-1が、球面又は円錐面の少なくとも一部、本実施形態では球面の一部である球冠となっている。そして、一対の回転体141が、電線211が外装位置P13を通過するタイミングに合わせて外装位置P13に配置されるように、当該外装位置P13と待機位置P12との間を外装機構13とともに移動可能に構成されている。
【0040】
駆動部142は、一対の回転体141を一対の回転軸141c周りに次のような回転方向D22に回転駆動する。回転方向D22は、突曲面141a-1における最接近状態の対面部分141a-2が、電線211の通過中に、保持されている端部とは反対側の牽引方向D21に移動する方向のことである。駆動部142は、一対の回転体141をこのように回転駆動することで、突曲面141a-1における最接近状態の対面部分141a-2で通過中の電線211を摺擦して牽引方向D21に牽引する。
【0041】
図6及び図7に示されている端末外装工程S121では、電線牽引装置14によって外装対象の電線211がこのように牽引されて真っ直ぐに延ばされた状態で端末外装材23の取付けが行われる。そして、この端末外装工程S121においてA~Cの3つのサブハーネス2-1の全てについて端末外装材23が取り付けられると、搬送工程S12では、電線端移動機構15による各電線保持竿11における電線211の端部の保持位置の移動が行われる。
【0042】
図11は、搬送工程において電線端移動機構が各電線保持竿における電線の端部の保持位置を移動する電線端移動工程を示す図である。また、図12は、図11の電線端移動工程の実行前の3本の電線保持竿の状態を示す図であり、図13は、図11の電線端移動工程の実行後の3本の電線保持竿の状態を示す図である。
【0043】
搬送工程S12において上述の端末外装工程S121に続いて行われる電線端移動工程S122では、各電線保持竿11においてコネクタ221を介して電線211の端部を保持する電線端保持部111が電線端移動機構15によって動かされる。上述したように、各電線保持竿11の竿本体部112では、電線端保持部111が交差保持レール112aによって交差方向D17に移動可能に保持され、交差保持レール112aが長さ保持レール112bによって長さ方向D16に移動可能に保持されている。長さ保持レール112bによる交差保持レール112aの保持は、作業者が手作業で交差保持レール112aを移動可能で、且つ、ある程度の力を加えられない限りは不用意に動かない程度の摩擦力を以て行われる。また、交差保持レール112aによる電線端保持部111の保持は、電線端移動工程S122による移動荷重を加えられない限りは、次のような負荷荷重に耐えて保持位置が維持される程度の摩擦力を以て行われる。この負荷荷重は、コネクタ221、電線211、及び電線端保持部111の合計重量を超える荷重に設定されている。尚、長さ保持レール112bにおける交差保持レール112aの保持や、交差保持レール112aにおける電線端保持部111の保持は、上記のような摩擦力によるものに限らず、ネジやその他の締結具又は保持機構によるものであってもよい。
【0044】
電線端移動工程S122の実行前では、Aサブ用電線保持竿11a、Bサブ用電線保持竿11b、及びCサブ用電線保持竿11c、の3本の電線保持竿11が図12に示されている状態となっている。即ち、各電線保持竿11における交差保持レール112aが、搬送方向D11の前方側から見たときに重ならないように長さ方向D16にずらされて保持されている。他方で、電線端保持部111は、交差方向D17については、一律に、交差保持レール112aの最上位の位置で保持されている。電線端移動工程S122では、この電線端保持部111の交差方向D17の位置が、電線端移動機構15によって動かされることで、電線211の端部位置が、ワイヤーハーネス2の分岐形状に応じた位置に調整される。
【0045】
図11に示されているように、電線端移動機構15は、3本の電線保持竿11における複数の電線端保持部111のうち、予め定められた移動対象の電線端保持部111と一対一に対応する複数の移動部材151を有している。各移動部材151は、搬送方向D11について、3本の電線保持竿11が終点位置P11よりも上流側の電線端移動位置P14に達したときに各電線端保持部111の直上に位置するように配置されている。3本の電線保持竿11が電線端移動位置P14に至ると、電線端移動機構15における各移動部材151が降下して直下の電線端保持部111を交差方向D17に押下げる。このとき、各移動部材151の降下量がワイヤーハーネス2の分岐形状に応じた電線211の端部位置に対応する降下量に設定されていることで、各電線端保持部111、つまりは電線211の端部位置の調整が行われることとなる。
【0046】
このような電線端移動工程S122による調整後、各移動部材151は所定の待機位置まで上昇する。他方で、図13に示されているように、Aサブ用電線保持竿11a、Bサブ用電線保持竿11b、及びCサブ用電線保持竿11c、の3本の電線保持竿11では、交差方向D17に押し下げられた電線端保持部111の位置が維持される。つまり、電線端移動工程S122による調整後には、電線211の端部位置が電線端移動工程S122での調整位置に維持される。
【0047】
端末外装工程S121及び電線端移動工程S122を経る搬送工程S12によって、3本の電線保持竿11が終点位置P11に至ると、3本の電線保持竿11に対する合体工程が行われる。
【0048】
図14は、搬送工程によって終点位置まで搬送された3本の電線保持竿に対して合体工程が行われた様子を示す図である。
【0049】
合体工程S13では、3本の電線保持竿11が、交差方向D17に沿った合体方向D18に連結され、合体状態で合体竿保持部16に保持される。本実施形態では、3本の電線保持竿11の合体は、上述したように、合体案内レール162による案内と、Aサブ用電線保持竿11aの連結受け部112c-1と、他のBサブ用電線保持竿11b及びCサブ用電線保持竿11cの連結嵌入部112c-2とで行われる。即ち、3本の電線保持竿11が合体案内レール162で案内されつつ、Aサブ用電線保持竿11aの連結受け部112c-1にBサブ用電線保持竿11b及びCサブ用電線保持竿11cの連結嵌入部112c-2が嵌入することで行われる。このような合体の結果、合体竿保持部16の合体搬送部161には、3本の電線保持竿11が合体方向D18に連結されて積上げられた合体状態で保持されることとなる。そして、この合体状態では、電線保持竿セット工程S11での各電線保持竿11における交差保持レール112aの分散配置と、電線端移動工程S122での電線端保持部111の保持位置の調整により、電線211の端部の保持位置は分岐形状に応じた位置となる。この後、合体状態の電線保持竿11に保持された電線211は、合体搬送部161によって更なる後工程の作業場所へと運ばれ、各種処理を受けることで、図3に示されるワイヤーハーネス2が完成することとなる。図14には、後工程のうち、結束材27による分岐点の結束が行われて分岐形状が固定された様子が示されている。後工程では、この他に、中間線外装材24、幹線外装材25、グロメット26、及びクランプ材28の取付けや通電検査等が行われる。
【0050】
以上に説明した実施形態のハーネス製造装置1、ハーネス製造方法、電線保持竿11、及び電線牽引装置14によれば、次のような効果を奏することができる。まず、本実施形態におけるハーネス製造装置1及びハーネス製造方法に注目した効果について説明する。
【0051】
本実施形態によれば、ワイヤーハーネス2を構成する複数本の構成電線21が、ワイヤーハーネス2の分岐形状に応じて3本の電線保持竿11に分配されて搭載され、搬送機構12によって終点位置P11まで自動搬送される。これら3本の電線保持竿11に分配された状態で電線211が自動搬送されることで、分岐形状の形成に必要な枝線への端末外装材23の取付け等を、分配状態での搬送中に電線211に対して適宜に行うことが可能となる。また、本実施形態によれば、終点位置P11において3本の電線保持竿11が合体状態で保持されて、その合体状態の3本の電線保持竿11に複数本の構成電線21がワイヤーハーネス2の分岐形状に応じた状態で搭載されることとなる。本実施形態では、3本の電線保持竿11に対する構成電線21の分配を変えることで、任意の分岐形状に対応することが可能となるので、専用の布線板を用いる場合に比べて汎用性が高い。つまり、本実施形態によれば、一の装置で様々な分岐形状に対応することができるので設備費用を抑えることができる。また、本実施形態によれば、分岐形状の形成に当たり、布線板に対する手作業での配索作業が不要であることから、この配索作業についての人件費等の製造コストも抑えることができる。更に布線板が不要で様々な分岐形状に対応可能であることから、BCP対応のリードタイムを短縮することもできる。このように、本実施形態によれば、分岐形状のワイヤーハーネス2を、布線板を用いずに設備費用や製造コストを抑え、BCP対応のリードタイムを短縮して製造することができる。
【0052】
ここで、本実施形態では、搬送機構12が、一対の搬送ベルト121における進行部分の相互間に電線保持竿11が掛け渡されるように3本取り付けられて搬送するものとなっている。この構成によれば、一対の搬送ベルト121により、3本の電線保持竿11を効果的に搬送することができる。また、各電線保持竿11に搭載された電線211が一対の搬送ベルト121の相互間に延在した状態で搬送されるので、搬送中の電線211に対するアクセス性が良く、良好な作業性の下で電線211に対する各種処置を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、搬送機構12による搬送中の電線211の進路上の外装位置P13へと外装機構13が端末外装材23を保持して進入し、電線211に外装位置P13を通過させつつ当該電線211に端末外装材23を取り付けることとなっている。この構成によれば、搬送中の電線211に対する端末外装材23の取付けを、人手を介することなく外装機構13によって行うことができるので、製造コストを一層抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態では、外装機構13は、シート状の端末外装材23で搬送方向D11を遮るように保持し、外装位置P13を通過する電線211を端末外装材23で受け止めるものとなっている。そして、外装機構13は、電線211との接触部を折れ線として端末外装材23を二つ折りに折り畳むように当該電線211に端末外装材23を取り付けつつ、取付け後の当該電線211を通過させる。この構成によれば、シート状の端末外装材23を二つ折りに折り畳むように電線211に取り付けることで、取付け手順を抑えて端末外装材23を取り付けることができるので、製造コストを更に抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態では、終点位置P11よりも上流側で、電線端移動機構15が、各電線保持竿11における電線端保持部111を合体方向D18に移動させて、分岐形状に応じた位置に位置付けることとなっている。この構成によれば、電線保持竿11における電線端保持部111の位置が、終点位置P11での他の電線保持竿11との合体状態での保持に先だって、分岐形状に応じた位置に位置付けられるので、後工程での結束等の作業を良好な作業性の下で行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、電線保持竿11における電線端保持部111が、電線211の両端部に接続されたコネクタ221を保持するものとなっている。そして、搬送機構12は、複数の端部コネクタ22の分配保持によって複数本の構成電線21が分配されて搭載された3本の電線保持竿11を保持して搬送する機構となっている。この構成によれば、3本の電線保持竿11には、製造対象のワイヤーハーネス2における複数の端部コネクタ22の分配保持によって複数本の構成電線21が分配されて搭載される。このようなコネクタ221も含めて電線211を電線保持竿11に搭載して搬送することで、ワイヤーハーネス2の分岐形状へと至る各種処置を、コネクタ221の近傍部分も含めて高い精度で行うことができる。
【0057】
次に、本実施形態における電線保持竿11に注目した効果について説明する。
【0058】
本実施形態によれば、電線保持竿11を複数(本実施形態では3本)用意し、ワイヤーハーネス2の複数本の構成電線21を各電線保持竿11に分配して搭載し、所定の処理を経て合体させることで分岐形状のワイヤーハーネス2を製造することができる。本実施形態では、電線保持竿11に対する構成電線21の分配を変えることで、任意の分岐形状に対応することが可能となるので汎用性が高い。また、本実施形態では、電線端保持部111の位置を変えることで、任意の分配に対応することが可能であり、電線保持竿11自体の汎用性も高い。つまり、本実施形態によれば、電線保持竿11を用いることで様々な分岐形状に対応することができるので設備費用を抑えることができる。また、本実施形態によれば、電線保持竿11を用いることで、布線板に対する手作業での配索作業が不要であることから製造コストも抑えることができ、BCP対応のリードタイムを短縮することもできる。このように、本実施形態によれば、電線保持竿11に注目した観点においても、分岐形状のワイヤーハーネス2を、布線板を用いずに設備費用や製造コストを抑え、BCP対応のリードタイムを短縮して製造することができる。
【0059】
ここで、本実施形態では、電線端保持部111が、電線211の端部に接続されたコネクタ221を保持することでその端部を保持するものとなっている。この構成によれば、コネクタ221も含めて電線211を電線保持竿11に搭載することで、ワイヤーハーネス2の分岐形状へと至る各種処置を、コネクタ221の近傍部分も含めて高い精度で行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、竿本体部112は、少なくとも1本の電線211の両端それぞれの端部が保持されるように、電線端保持部111を少なくとも一対保持するものとなっている。この構成によれば、電線211の両端が電線保持竿11に保持されることとなるので、ワイヤーハーネス2の分岐形状へと至る各種処置を、電線保持竿11において電線211が安定して保持されているという良好な作業性の下で行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では、Aサブ用電線保持竿11aの合体部112cが、他の竿本体部112の一部が嵌め込まれることで他の竿本体部112に連結する連結受け部112c-1となっている。この構成によれば、合体部112cとしての連結受け部112c-1を介することで安定した連結状態で他の竿本体部112、即ち、他の電線保持竿11と合体することができる。
【0062】
また、本実施形態では、連結受け部112c-1が、竿本体部112の両端部それぞれに設けられ、他の竿本体部112の両端部それぞれを受入れるものとなっている。この構成によれば、電線保持竿11の両端部で他の電線保持竿11に連結するので、連結状態の安定性を一層向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、連結受け部112c-1は、2本の他の竿本体部112の各一部が、2本の他の竿本体部112が合体方向D18に並ぶように嵌め込まれるものとなっている。この構成によれば、3本の電線保持竿11が平行に整列した状態で合体されるので、合体後の3本の電線保持竿11の占有スペースを抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態では、Bサブ用電線保持竿11b及びCサブ用電線保持竿11cそれぞれの合体部112cが、他の竿本体部112の一部に嵌め込まれることで他の竿本体部112に連結する連結嵌入部112c-2となっている。この構成によれば、合体部112cとしての連結嵌入部112c-2を介することで安定した連結状態で他の竿本体部112、即ち、他の電線保持竿11と合体することができる。
【0065】
また、本実施形態では、連結嵌入部112c-2が、竿本体部112の両端部それぞれに設けられ、他の竿本体部112の両端部それぞれに嵌め込まれるものとなっている。この構成によれば、電線保持竿11の両端部で他の電線保持竿11に連結するので、連結状態の安定性を一層向上させることができる。
【0066】
次に、本実施形態における電線牽引装置14に注目した効果について説明する。
【0067】
本実施形態では、一対の回転体が、突曲面141a-1における電線211の進入側の対面部分141a-2が電線211に対する牽引方向D21に移動するように回転駆動される。そして、この対面部分141a-2の間に搬送中の電線211が進入して通過することで、電線211が対面部分141a-2に摺擦されて牽引方向D21へと牽引されて真っ直ぐな状態に延ばされることとなる。このように、本実施形態によれば、搬送中の電線211を真っ直ぐな状態に牽引して電線211に対する処置に供することができる
【0068】
ここで、本実施形態では、一対の回転体141は、一対の回転軸141cが搬送方向D11に凸のV字を形成するように傾いた姿勢で配置されている。この構成によれば、搬送方向D11に凸のV字を形成するように一対の回転軸141cを傾けることで、一対の回転体141の突曲面141a-1どうしを電線211の進入側において効果的に最接近状態で対面させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、一対の回転体141それぞれが、突曲面141a-1を有する牽引部141aと、駆動部142からの駆動力を受ける軸棒部141bと、を備えたものとなっている。この構成によれば、軸棒部141bを介して効果的に牽引部141aに駆動力を伝えて一対の回転体141を回転駆動することができる。
【0070】
また、本実施形態では、突曲面141a-1が、球面又は円錐面のうちの球面の一部である球冠となっている。この構成によれば、球面の一部となった突曲面141a-1どうしを接近させ、電線211の進入側で対面部分141a-2が牽引方向D21に移動するような最接近状態を効果的に作り出すことができる。
【0071】
また、本実施形態では、一対の回転体141が、電線211が外装位置P13を通過するタイミングに合わせて外装位置P13に配置されるように、当該外装位置P13と所定の待機位置との間を移動可能に構成されている。この構成によれば、外装位置P13の通過タイミングにおいて電線211を一対の回転体141で牽引しつつ、他のタイミングでは、周辺構造等の邪魔にならないように一対の回転体141を待機位置で待機させることができる。
【0072】
尚、以上に説明した実施形態は、ハーネス製造装置、ハーネス製造方法、電線保持竿、及び電線牽引装置の代表的な形態を示したに過ぎない。ハーネス製造装置、ハーネス製造方法、電線保持竿、及び電線牽引装置は、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0073】
例えば、上述した実施形態では、自動車に搭載されて車載装置間を接続するワイヤーハーネス2を対象としたハーネス製造装置1、ハーネス製造方法、電線保持竿11、及び電線牽引装置14が例示されている。しかしながら、対象となるワイヤーハーネスは、これに限るものではなく、その具体的な使用態様については、これを問うものではない。
【0074】
また、上述した実施形態では、対象となるワイヤーハーネスの一例として、A~Cの3つのサブハーネス2-1が束ねられて分岐形状が形作られるワイヤーハーネス2が例示されている。しかしながら、対象となるワイヤーハーネスは、これに限るものではなく、その具体的な分岐形状、分割可能なサブハーネスの具体的な数、及び具体的な外装部品の種類等は、これを問うものではない。
【0075】
また、上述した実施形態では、電線保持竿の一例として、3つのサブハーネスを一対一に保持するAサブ用電線保持竿11a、Bサブ用電線保持竿11b、及びCサブ用電線保持竿11c、の3本の電線保持竿11が例示されている。しかしながら、電線保持竿は、これに限るものではなく、2つのサブハーネスや4つ以上のサブハーネス等といった3つ以外の数のサブハーネスを一対一に保持するものであってもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、電線保持竿の一例として、電線端保持部111がコネクタ221を介して電線211の端部を保持するようにサブハーネス2-1が搭載される電線保持竿11が例示されている。しかしながら、電線保持竿は、これに限るものではなく、例えば電線の端部を直に保持するものであってもよく、あるいは、電線の端部に圧着されたコネクタ端子を保持するもの等であってもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、外装機構の一例として、一対の可動片131でシート状の端末外装材23を保持して電線211に取り付ける外装機構13が例示されている。しかしながら、外装機構は、これに限るものではなく、その具体的な機構構成は、任意の構成を採用し得るものである。
【0078】
また、上述した実施形態では、ハーネス製造装置及びハーネス製造方法の一例として、3本の電線保持竿11を、合体竿保持部16において人手を介さずに合体させて保持するハーネス製造装置1及びハーネス製造方法が例示されている。しかしながら、ハーネス製造装置及びハーネス製造方法は、これに限るものではない。例えば、合体保持部は合体状態の電線保持竿を保持する保持機能のみを有するものであり、終点位置まで搬送された複数の電線保持竿は、作業者による手作業で連結されつつ運ばれて合体状態で合体保持部によって保持されることとしてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、電線牽引装置の一例として、ハーネス製造装置1に搭載され、外装位置P13で端末外装材23の取付けを受けつつ搬送される電線211を、その外装位置P13で牽引する電線牽引装置14が例示されている。しかしながら、電線牽引装置は、これに限るものではなく、搬送中の電線に対して何らかの処置を行う場合であれば、その具体的な処置内容を問うものではない。
【0080】
また、上述した実施形態では、電線牽引装置の一例として、回転体141における突曲面141a-1が球冠となった電線牽引装置14が例示されている。しかしながら、電線牽引装置は、これに限るものではなく、回転体における突曲面は、球面全体であってもよく、円錐面であってもよく、その他の曲面であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 ハーネス製造装置
2 ワイヤーハーネス
2-1 サブハーネス
2-1a Aサブハーネス
2-1b Bサブハーネス
2-1c Cサブハーネス
11 電線保持竿
11a Aサブ用電線保持竿
11b Bサブ用電線保持竿
11c Cサブ用電線保持竿
12 搬送機構
13 外装機構
14 電線牽引装置
15 電線端移動機構
16 合体竿保持部
21 構成電線
22 端部コネクタ
23 端末外装材
24 中間線外装材
25 幹線外装材
26 グロメット
27 結束材
28 クランプ材
111 電線端保持部
112 竿本体部
112a 交差保持レール
112b 長さ保持レール
112c 合体部
112c-1 連結受け部
112c-1a 嵌込み凹部
112c-2 連結嵌入部
121 搬送ベルト
121a 保持凹部
122 懸架ローラ
131 可動片
131a,141c 回転軸
141 回転体
141a 牽引部
141a-1 突曲面
141a-2 対面部分
141b 軸棒部
142 駆動部
151 移動部材
161 合体搬送部
162 合体案内レール
211 電線
221 コネクタ
D11 搬送方向
D12 外装移動方向
D13 電線端部移動方向
D14 合体案内方向
D15 合体搬送方向
D16 長さ方向
D17 交差方向
D18 合体方向
D19 線長方向
D21 牽引方向
D22 回転方向
P11 終点位置
P12 待機位置
P13 外装位置
S11 電線保持竿セット工程
S12 搬送工程
S13 合体工程
S121 端末外装工程
S122 電線端移動工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14