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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025051645
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】混繊不織布
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20250327BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20250327BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20250327BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20250327BHJP
【FI】
G10K11/162
D04H1/435
D04H3/16
D04H3/011
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160656
(22)【出願日】2024-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2023156673
(32)【優先日】2023-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】322012860
【氏名又は名称】東レ・セラニーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】良本 卓也
【テーマコード(参考)】
4L047
5D061
【Fターム(参考)】
4L047AA21
4L047AA28
4L047AB10
4L047CB00
4L047CC14
5D061AA07
5D061AA22
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】低周波数域の吸音効果に優れた不織布を提供する。
【解決手段】2種以上の熱可塑性樹脂の繊維からなる混繊不織布において、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa未満の熱可塑性樹脂繊維A(繊維A)であり、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa以上の熱可塑性樹脂繊維B(繊維B)であり、混繊不織布全体の質量において前記繊維Bの質量と前記繊維Aの質量の比B/Aが1.0~3.0であって、厚みが5mm以上であり且つ目付量が100g/m~500g/mである混繊不織布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の熱可塑性樹脂繊維からなる混繊不織布において、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa未満の熱可塑性樹脂繊維A(繊維A)であり、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa以上の熱可塑性樹脂繊維B(繊維B)であり、混繊不織布全体の質量において、前記繊維Bの質量と前記繊維Aの質量の比B/Aが1.0~3.0であって、厚みが5mm以上であり且つ目付量が100g/m~500g/mである混繊不織布。
【請求項2】
混繊不織布全体の質量において、前記繊維Bの質量と前記繊維Aの質量の比B/Aが1.2~3.0である請求項1記載の混繊不織布。
【請求項3】
前記繊維Aがポリエステルエラストマー繊維である請求項2記載の混繊不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波数域の吸音効果に優れた混繊不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布は吸音材や断熱材、ろ過材、吸着剤などの用途に幅広く利用されている。特に、近年、自動車内や建築物内などの室内における騒音対策として、不織布を用いた吸音材が使用されている。この吸音材の材料としては、上記のような不織布以外にも、ウレタンフォームやフェルトなど、多くの多孔質材料が用いられている。
【0003】
一般的にこれらの多孔質材料からなる吸音材の吸音メカニズムは、音波が多孔質の空隙を通過するときに、空気が振動して摩擦が生じ、音のエネルギーが熱エネルギーに変換されることで、音が吸収されると考えられている。このため、吸音性能を向上させる方法としては、目付を上げることや繊維径を細くし隙間を形成させ空気の通過抵抗を大きくすることなどの方法が採られてきた。しかし、高目付化においては、車両重量の増大やコストアップにつながるため、多孔質材料の吸音性能向上には、主に、細かな空隙を形成させる方策が採られる。特に、多孔質材料の中でも、前記のような不織布は、繊維径を細くすることで、容易に空隙を細かくすることが可能なため、極細繊維を含んだ不織布で構成された吸音材の開発が提案されている。しかしながら、繊維に用いられる材料が柔らかすぎると容易に空隙が潰れ吸音効果が損なわれ、硬い材料を用いると嵩高になるものの重量が増大してしまうという課題があった。これら課題を解決する方法として、極細繊維からなる不織布と比較的細い繊維からなる不織布を積層することや、繊維の材質が異なる2種以上の不織布を積層することで高い吸音効果を示す不織布を得る方法(特許文献1,2,3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3613727号
【特許文献2】特開2022-40591
【特許文献3】特開2010-203033
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし提案されている方法であっても、従来の吸音材同様高周波数域の吸音効果を向上させることはできるものの、1500Hz以下の低周波数域の吸音効果を得ることは困難である。低周波数域の吸音性能を向上するために不織布を厚くする方策があるが、極細繊維ほど容易に空隙が潰れてしまい厚みを増すことが難しく、不織布を積層する等の対策では層間の加工方法に課題が多いことや、重量やコストアップにつながってしまう。そのため、自動車用途において低周波数域の防音要求が高い部材、特にエンジン周辺部品への適用は困難とされていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、低周波数域の吸音効果に優れ、不織布を積層する場合においても従来の吸音材よりも薄肉で低周波数域の吸音効果を発現できる混繊不織布を提供することである。本発明者らが、上記目標を達成するために鋭意検討した結果、2種類以上の引張弾性率が異なる熱可塑性樹脂からなる繊維が絡み合った混繊構造であり、2種類以上の引張弾性率の異なる熱可塑性樹脂からなる繊維の質量比率、混戦不織布の厚みおよび目付量を制御することによって、1500Hz以下の低周波数域の吸音効果が高い混繊不織布を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、発明によれば〔1〕~〔3〕を構成するものである。
〔1〕2種以上の熱可塑性樹脂繊維からなる混繊不織布において、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa未満の熱可塑性樹脂繊維A(繊維A)であり、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa以上の熱可塑性樹脂繊維B(繊維B)であり、混繊不織布全体の質量において、前記繊維Bの質量と前記繊維Aの質量の比B/Aが1.0~3.0であって、厚みが5mm以上であり且つ不織布の目付量が100g/m~500g/mである混繊不織布。
〔2〕混繊不織布全体の質量において、前記繊維Bの質量と前記繊維Aの質量の比B/Aが1.2~3.0である〔1〕記載の混繊不織布。
〔3〕前記繊維Aがポリエステルエラストマー繊維である〔2〕記載の混繊不織布。
【発明の効果】
【0008】
本発明の混繊不織布は、従来の吸音材では実現できなかった1500Hz以下の低周波数域の吸音効果を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について記述する。
【0010】
本発明の混繊不織布は、2種以上の熱可塑性樹脂繊維からなる混繊不織布において、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa未満の熱可塑性樹脂繊維A(繊維A)であり、少なくとも1種以上が引張弾性率500MPa以上の熱可塑性樹脂繊維B(繊維B)であり、混繊不織布全体の質量において、前記繊維Bの質量と前記繊維Aの質量の比B/Aが1.0~3.0であって、厚みが5mm以上であり且つ目付量が100g/m~500g/mである混繊不織布である。
【0011】
本発明に用いられる引張弾性率500MPa未満の熱可塑性樹脂繊維Aは、引張弾性率500MPa未満であれば特に制限はないが、熱可塑性エラストマー繊維が好ましく、耐熱性、耐薬品性の観点よりポリエステルエラストマー繊維が特に好ましい。
【0012】
本発明で用いられるポリエステルエラストマーとしては、ハードセグメントは、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成される芳香族ポリエステル単位を主たる構成単位とすることが好ましい態様である。
【0013】
前記の芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、および3-スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0014】
本発明においては、前記の芳香族ジカルボン酸を主として用いるが、必要によっては、この芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸および4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換することもできる。さらに、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステルおよび酸ハロゲン化物などももちろん同等に用い得る。
【0015】
次に、前記のジオールの具体例としては、分子量400以下のジオール、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、および4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく用いられ、このようなジオールは、エステル形成性誘導体、例えば、アセチル体やアルカリ金属塩などの形でも用い得る。
【0016】
これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用することもできる。
【0017】
このようなハードセグメントの好ましい例は、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位である。また、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸および/またはジメチルイソフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位からなるハードセグメントも好ましく用いられる。
【0018】
本発明で用いられるポリエステルエラストマーのソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位を主たる構成単位とするものである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールなどが挙げられる。
【0019】
また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで、得られるポリエステルエラストマーの弾性特性からは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、およびポリエチレンアジペートなどの使用が好ましく、これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが構成単位であることが好ましい態様である。また、これらのソフトセグメントの数平均分子量は、共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるポリエステルエラストマーの前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントの比率は、20/80~95/5が好ましく、45/55~85/15がより好ましく、55/45~85/15が更に好ましい。
【0021】
本発明のポリエステルエラストマーには、性能を損なわない範囲で、公知のヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等の耐光剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等の増粘剤、染料や顔料等の着色剤、酸化チタン、カーボンブラック等の紫外線遮断剤、ガラス繊維、カーボンファイバー、チタン酸カリウムファイバー等の補強剤、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、ガラスビーズ等の充填剤、液状ポリイソブテン、液状ポリブテン、液状(水添)ポリイソプレン、液状(水添)ポリブタジエン、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、エポキシ可塑剤、リン酸エステル類、フタル酸エステル類、脂肪族2塩基酸エステル類またはグリコールエステル類等の可塑剤、タルク等の核剤、粘着付与剤、難燃剤、蛍光剤、架橋剤、界面活性剤等を任意に含有させてもよく、除いていてもよい。
【0022】
また引張弾性率500MPa以上の熱可塑性樹脂繊維Bは、引張弾性率500MPa以上であれば特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂からなる繊維が挙げられる。
【0023】
本発明の2種以上の繊維から得られる混繊不織布は、少なくとも上述した繊維Aと繊維Bの2種以上で構成された混繊不織布であり、混繊不織布全体の質量において、繊維Bの質量と繊維Aの質量の比B/Aが1.0~3.0であり、1.2~3.0が好ましい。繊維Bの質量と繊維Aの質量の比B/Aが1.0より小さくなる、すなわち、繊維Aの質量が繊維Bの質量を上回ると、不織布の目付量が増え、重量増加により空隙が潰れてしまい、吸音性能が低下する要因となる。また繊維Aの質量が小さくなると繊維径が安定せず不織布の生産性を損なう可能性がある。
【0024】
本発明の混繊不織布は、単層でも積層でも厚みの制限はないが、従来の不織布同様、吸音効果の向上や吸音周波数ピークの調整の観点から、厚みを5mm以上である。厚みの増加による重量増加や部材の設置スペースの観点から、15mm以下が好ましい。
【0025】
また本発明の混繊不織布の目付量は、100g/m~500g/mである。100g/m未満だと不織布の生産安定性が悪く、500g/mを超えると重量増加要因となることや、不織布本来の特性である高周波数域の吸音効果を損なう可能性がある。
【0026】
また本発明の混繊不織布は2種以上の繊維が絡み合っていれば特に制限はないが、繊維Aの平均繊維径と繊維Bの平均繊維径は繊維Aの平均繊維径が細い方が不織布の厚みを制御しやすく低周波数域の吸音効果を得るために適した不織布を得ることができる。繊維Aの平均繊維径は10μm以下が好ましく、5μm以下が更に好ましい。平均繊維径が細すぎると繊維が破断してしまい、繊維同士の絡み合いが少なくなり空隙が潰れてしまい、吸音性能が急激に低下してしまう。
【0027】
本発明の混繊不織布について、一般的なロードノイズ問題の主な周波数領域である、500~1500Hz以下の周波数域における、JIS A1405(2007)に準拠した方法で測定した、垂直入射吸音率(以下、「吸音率」とする。)は、30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、特に好ましくは60%以上である。吸音率は、例えば、日本音響エンジニアリング社製の垂直入射吸音率測定システムWinZacMTXを用いて測定することが出来る。
【0028】
本発明の混繊不織布の製造方法は、2種以上の繊維を吐出できれば特に限定されないが、一般的な製造方法であるスパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法が好ましい。極細繊維を作成するには、メルトブロー法が好ましい。また厚み10mm以上の不織布を作成するには、サーマルボンド法が好ましい。
【0029】
また本発明の混繊不織布は、単独で使用しても良いが、他の吸音不織布やフェルト、アルミダイカストや鉄等の部材と積層して使用しても良い。
【実施例0030】
以下、実施例によって本発明の効果を説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。また、例中に示される物性は次のように測定した。
【0031】
[不織布の厚み]
それぞれの不織布を縦横1m四方に鋏で切り取り、各四辺の中心部の厚みを定圧ノギス(測定力:0.5~1N)で測定し平均値を求め、不織布の平均厚みとした。
【0032】
[不織布の目付量]
それぞれの不織布を縦横50cm四方に鋏で切り取り、島津製作所製精密電子天秤で測定した重量を測定した不織布の面積で割り返し得られた数値を、不織布の目付量とした。
【0033】
[平均繊維径]
日本電子社製の走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察した。無作為に細い繊維と太い繊維それぞれ10本を選択し、それら10本の繊維径の平均値をそれぞれ求め、それぞれの繊維の平均繊維径とした。
【0034】
[引張弾性率]
各熱可塑性樹脂のペレットを用いて射出成形機でJIS K7113 2号ダンベル試験片形状に加工し、JIS K7113(1995年版)に従って引張弾性率を測定した。
【0035】
[吸音率]
取得した混繊不織布を打ち抜き刃でΦ39.5mmの円形状に加工し、日本エンジニアリング社製の垂直入射吸音率測定システムWinZacMTXを用いて、JIS A1405(2007)に準拠した方法で、400Hz~5000Hzの周波数領域における垂直入射吸音率を測定した。得られた結果より、800、1000、1500Hzにおける各吸音率を読み取り、それらを平均化した数値を本発明の混繊不織布の吸音率として算出した。
【0036】
〔実施例に使用した混繊不織布の製造方法1〕
以下に示す製造方法により、実施例1~3および比較例1~3の不織布を作成した。
【0037】
東レ・セラニーズ社製ハイトレル5501(以降はHY 5501)又はハイトレル7247(以降はHY 7247)又はポリエチレンテレフタレート(以降はPET)を繊維A用の134ホールの吐出ノズルを用い、プライムポリマー社製ポリプロピレンS119(以降はPP S119)を繊維B用の67ホールの吐出ノズルを用い、下表に示す繊維B/繊維Aの質量比率になるように吐出量を設定し、得られた繊維Aと繊維Bが絡み合った混繊ウェブを、ノズルの下に配置されたコレクタのライン速度を調整し、下表に示す厚みの混繊不織布になるよう製造した。
【0038】
〔実施例に使用した混繊不織布の製造方法2〕
以下に示す製造方法により、実施例4~6および比較例4の不織布を作成した。
【0039】
東レ・セラニーズ社製HY 7247を溶融し吐出することで製糸化したのち、カッティング工程を経て綿状の短繊維(ステープル繊維)を作成した。また同様の方法で、プライムポリマー社製PP S119を用いてステープル繊維を作成した。作成したステープル繊維Aとステープル繊維Bを下表に示す混合率で混合し、シート状の混繊ウェブを形成した。形成したウェブを積層し、ニードルを往復させ繊維を絡ませ、不織布を製造した。ウェブの積層により下表に示す厚みの混繊不織布になるよう製造した。
【0040】
以下表1に本発明で用いた実施例を、以下表2に本発明で用いた比較例を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
以上の結果より、実施例1~6は何れも平均の吸音率が30%以上であることが確認できた。繊維Aと繊維Bが共に引張弾性率500MPa以上(3000MPaと1400MPa)である比較例1、繊維Bの質量と繊維Aの質量の比B/Aが1.0~3.0の範囲外(0.67)である比較例2、不織布の厚みが5mm以上でなく2.5mmである比較例3、不織布が混繊でなく繊維PP S119のみからなる比較例4は何れも平均の吸音率が25%以下と低いことが確認できた。繊維の剛性が高い比較例1、2、4は低周波数域の音波の減衰効果が低く、結果得られた吸音効果も低い。また音波の減衰には音波が発信されて届くまでの距離が大きく影響することは一般的だが、比較例3は不織布の厚みが薄いため、減衰効果が低く、得られた吸音効果が低いという結果であった。