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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005167
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20250108BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20250108BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105229
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】大杉 雅道
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE04
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC25Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
(57)【要約】
【課題】自動運転制御に関連するログデータを適切に保存すること。
【解決手段】車両に搭載される自動運転システムは、機械学習モデルを利用して車両の自動運転制御の少なくとも一部を行う。自動運転制御の実行中、自動運転システムは、機械学習モデルを利用した自動運転制御に関連するログデータを含む対象データを取得する。自動運転システムは、単位時間あるいは単位距離当たりに対象保存量の対象データを1又は複数の記憶装置に保存する。アップロード位置は、1又は複数の記憶装置に保存された対象データの少なくとも一部が外部装置にアップロードされる位置である。対象保存量は、アップロード位置までの残り距離あるいは残り時間が少なくなるにつれて増加する第1保存量を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される自動運転システムであって、
1又は複数のプロセッサと、
1又は複数の記憶装置と
を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
機械学習モデルを利用して前記車両の自動運転制御の少なくとも一部を行い、
前記自動運転制御の実行中、前記機械学習モデルを利用した前記自動運転制御に関連するログデータを含む対象データを取得し、
単位時間あるいは単位距離当たりに対象保存量の前記対象データを前記1又は複数の記憶装置に保存する
ように構成され、
アップロード位置は、前記1又は複数の記憶装置に保存された前記対象データの少なくとも一部が外部装置にアップロードされる位置であり、
前記対象保存量は、前記アップロード位置までの残り距離あるいは残り時間が少なくなるにつれて増加する第1保存量を含む
自動運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動運転システムであって、
前記対象データは、最低限必要とされる所定のログデータと、前記所定のログデータ以外の追加データとを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、前記第1保存量の前記追加データを前記1又は複数の記憶装置に保存する
自動運転システム。
【請求項3】
請求項2に記載の自動運転システムであって、
前記追加データは、前記機械学習モデルを利用した前記自動運転制御に関連するデータであって、前記機械学習モデルあるいは他の機械学習モデルの学習に用いられる学習データを含む
自動運転システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動運転システムであって、
前記対象保存量は、更に、前記1又は複数の記憶装置の残容量が少なくなるにつれて減少する第2保存量を含む
自動運転システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動運転システムであって、
前記対象保存量は、更に、管理者によって指定される位置において確保される第3保存量を含む
自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習モデルを利用して車両の自動運転制御を行う技術が知られている。特許文献1は、機械学習モデルの学習に使用可能な訓練データを収集する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/116423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の自動運転制御を事後的に検証するための方法として、自動運転制御に関連するログデータを車載記憶装置に保存することが考えられる。但し、車載記憶装置の容量には限界があるため、最低限必要なログデータを保存できないような状況を回避することが望まれる。
【0005】
本開示の1つの目的は、自動運転制御に関連するログデータを適切に保存することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの観点は、車両に搭載される自動運転システムに関する。
自動運転システムは、1又は複数のプロセッサと、1又は複数の記憶装置とを備える。
1又は複数のプロセッサは、機械学習モデルを利用して車両の自動運転制御の少なくとも一部を行う。
自動運転制御の実行中、1又は複数のプロセッサは、機械学習モデルを利用した自動運転制御に関連するログデータを含む対象データを取得する。
1又は複数のプロセッサは、単位時間あるいは単位距離当たりに対象保存量の対象データを1又は複数の記憶装置に保存する。
アップロード位置は、1又は複数の記憶装置に保存された対象データの少なくとも一部が外部装置にアップロードされる位置である。
対象保存量は、アップロード位置までの残り距離あるいは残り時間が少なくなるにつれて増加する第1保存量を含む。
【発明の効果】
【0007】
単位時間あるいは単位距離あたりの対象保存量は、第1保存量を含む。第1保存量は、アップロード位置までの残り距離あるいは残り時間が少なくなるにつれて増加する。残り距離あるいは残り時間が多い段階では、第1保存量は小さめ(控え目)に設定される。これにより、早い段階で記憶装置の空き容量が枯渇するといった事態が抑制される。つまり、必要なログデータが記憶装置に保存されなくなるといった事態が抑制される。
【0008】
一方、アップロード位置までの残り距離あるいは残り時間が少なくなるにつれて、第1保存量は増加し、記憶装置に保存される対象データはよりリッチになる。これにより、有用なデータをより多く保存することが可能となる。すなわち、記憶装置の容量を有効活用することができる。
【0009】
このように、本開示によれば、記憶装置の容量を有効活用しつつ、自動運転制御に関連するログデータを適切に保存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る車両の自動運転制御に関連する構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る自動運転システムの構成例を示す概念図である。
図3】実施の形態に係るアップロード位置を説明するための概念図である。
図4】実施の形態に係るログデータ保存処理の第1の例を説明するための概念図である。
図5】実施の形態に係るログデータ保存処理の第2の例を説明するための概念図である。
図6】実施の形態に係るログデータ保存処理の第3の例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.車両の自動運転
図1は、本実施の形態に係る車両1の自動運転制御に関連する構成例を示すブロック図である。自動運転とは、車両1の操舵、加速、及び減速のうち少なくとも1つをオペレータによる運転操作によらず自動的に行うことである。自動運転制御は、完全自動運転制御だけでなく、リスク回避制御、レーンキープアシスト制御、等も含む概念である。オペレータは、車両1に搭乗するドライバであってもよいし、車両1を遠隔操作する遠隔オペレータであってもよい。
【0012】
車両1は、センサ群10、認識部20、計画部30、制御量算出部40、及び走行装置50を含んでいる。
【0013】
センサ群10は、車両1の周囲の状況を認識するために用いられる認識センサ11を含んでいる。認識センサ11としては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。センサ群10は、更に、車両1の状態を検出する状態センサ12、車両1の位置を検出する位置センサ13、等を含んでいてもよい。状態センサ12としては、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等が例示される。位置センサ13としては、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサが例示される。
【0014】
センサ検出情報SENは、センサ群10によって得られる情報である。例えば、センサ検出情報SENは、カメラによって撮影される画像を含んでいる。他の例として、センサ検出情報SENは、LIDARによって得られる点群情報を含んでいてもよい。センサ検出情報SENは、車両1の状態を示す車両状態情報を含んでいてもよい。センサ検出情報SENは、車両1の位置を示す位置情報を含んでいてもよい。
【0015】
認識部20は、センサ検出情報SENを受け取る。認識部20は、認識センサ11により得られる情報に基づいて、車両1の周囲の状況を認識する。例えば、認識部20は、車両1の周囲の物体を認識する。物体としては、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、白線、道路構造物(例:ガードレール、縁石)、落下物、信号機、交差点、標識、等が例示される。認識結果情報RESは、認識部20による認識結果を示す。例えば、認識結果情報RESは、車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す物体情報を含む。
【0016】
計画部(planner)30は、認識部20から認識結果情報RESを受け取る。また、計画部30は、車両状態情報、位置情報、予め生成された地図情報を受け取ってもよい。地図情報は、高精度3次元地図情報であってもよい。計画部30は、受け取った情報に基づいて、車両1の走行計画を生成する。走行計画は、予め設定された目的地に到達するためのものであってもよいし、リスクを回避するためのものであってもよい。走行計画としては、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、追い越しを行う、右左折を行う、操舵する、加速する、減速する、停止する、等が例示される。更に、計画部30は、車両1が走行計画に従って走行するために必要な目標トラジェクトリTRJを生成する。目標トラジェクトリTRJは、目標位置及び目標速度を含んでいる。
【0017】
制御量算出部40は、計画部30から目標トラジェクトリTRJを受け取る。制御量算出部40は、車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するために必要な制御量CONを算出する。制御量CONは、車両1と目標トラジェクトリTRJとの間の偏差を減少させるために要求される制御量であるということもできる。制御量CONは、操舵制御量、駆動制御量、及び制動制御量のうち少なくとも一つを含む。操舵制御量としては、目標舵角、目標トルク、目標モータ角、目標モータ駆動電流、等が例示される。駆動制御量としては、目標速度、目標加速度、等が例示される。制動制御量としては、目標速度、目標減速度、等が例示される。
【0018】
走行装置50は、操舵装置51、駆動装置52、及び制動装置53を含んでいる。操舵装置51は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置51は、電動パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置52は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置52としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置53は、制動力を発生させる。走行装置50は、制御量算出部40から制御量CONを受け取る。走行装置50は、操舵制御量、駆動制御量、及び制動制御量のそれぞれに従って、操舵装置51、駆動装置52、及び制動装置53を動作させる。これにより、車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するように走行する。
【0019】
認識部20は、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。ルールベースモデルは、予め決められたルール群に基づいて認識処理を行う。機械学習モデルとしては、NN(Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)、回帰モデル、決定木モデル、等が例示される。NNは、CNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。NNにおける各層の種類、層の数、ノード数は任意である。機械学習モデルは、機械学習を通して予め生成される。認識部20は、モデルにセンサ検出情報SENを入力することによって認識処理を行う。認識結果情報RESは、モデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0020】
計画部30も同様に、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。計画部30は、モデルに認識結果情報RESを入力することによって計画処理を行う。目標トラジェクトリTRJは、モデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0021】
制御量算出部40も同様に、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。制御量算出部40は、モデルに目標トラジェクトリTRJを入力することによって制御量算出処理を行う。制御量CONは、モデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0022】
認識部20、計画部30、及び制御量算出部40のうち2以上は、一体的に構成されていてもよい。認識部20、計画部30、及び制御量算出部40の全てが一体的に構成されていてもよい(End-to-End構成)。例えば、認識部20と計画部30は、センサ検出情報SENから目標トラジェクトリTRJを出力するNNにより一体的に構成されていてもよい。一体的構成の場合であっても、認識結果情報RESや目標トラジェクトリTRJといった中間生成物が出力されてもよい。例えば、認識部20と計画部30がNNにより一体的に構成される場合、認識結果情報RESは、NNの中間層の出力であってよい。
【0023】
認識部20、計画部30、及び制御量算出部40は、車両1の自動運転を制御する「自動運転制御部」を構成している。本実施の形態では、自動運転制御部の少なくとも一部に機械学習モデルが利用される。すなわち、認識部20、計画部30、及び制御量算出部40のうち少なくとも1つは機械学習モデルを含んでいる。自動運転制御部は、機械学習モデルを利用して、車両1の自動運転制御の少なくとも一部を行う。
【0024】
図2は、本実施の形態に係る自動運転システム100の構成例を示す概念図である。自動運転システム100は、車両1に搭載されており、車両1の自動運転制御を行う。自動運転システム100は、上述の自動運転制御部の機能を少なくとも有する。自動運転システム100は、更に、センサ群10や走行装置50を含んでいてもよい。
【0025】
自動運転システム100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。プロセッサ110として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、等が例示される。認識部20、計画部30、及び制御量算出部40は、単一のプロセッサ110で実現されてもよいし、別々のプロセッサ110で実現されてもよい。記憶装置120は、各種情報を格納する。記憶装置120としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、等が例示される。
【0026】
プログラム130は、車両1を制御するためのコンピュータプログラムであり、プロセッサ110によって実行される。プログラム130を実行するプロセッサ110と記憶装置120との協働により、自動運転システム100による各種処理が実現されてもよい。プログラム130は、記憶装置120に格納される。プログラム130は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0027】
モデルデータ140は、認識部20、計画部30、及び制御量算出部40に含まれるモデルのデータである。上述の通り、本実施の形態では、認識部20、計画部30、及び制御量算出部40のうち少なくとも1つは「機械学習モデル」を含んでいる。モデルデータ140は、記憶装置120に格納され、自動運転制御に利用される。
【0028】
自動運転制御の最中、プロセッサ110は、機械学習モデルを利用した自動運転制御に関連する「ログデータLOG」を取得する。ログデータLOGは、機械学習モデルを利用した自動運転制御の検証等に利用される。ログデータLOGは、自動運転制御部に入力されるセンサ検出情報SENを含んでいてもよい。ログデータLOGは、自動運転制御部から出力される制御量CONを含んでいてもよい。ログデータLOGは、認識部20から出力される認識結果情報RESを含んでいてもよい。ログデータLOGは、計画部30から出力される目標トラジェクトリTRJを含んでいてもよい。ログデータLOGは、認識部20による認識処理における判断の理由を含んでいてもよい。ログデータLOGは、計画部30による計画処理における判断の理由を含んでいてもよい。ログデータLOGは、自動運転制御に対するオペレータの介入の有無を含んでいてもよい。
【0029】
プロセッサ110は、自動運転制御の最中に取得したログデータLOGを記憶装置120に格納する。プロセッサ110は、一定期間の間だけ、ログデータLOGを記憶装置120に一時的に保存してもよい。
【0030】
管理サーバ200は、車両1の外部に存在する外部装置である。管理サーバ200は、通信ネットワークを介して1又は複数の車両1と通信を行う。自動運転制御の最中、あるいは、自動運転制御の終了後、車両1のプロセッサ110は、ローカルの記憶装置120に保存されたログデータLOGの少なくとも一部を管理サーバ200にアップロードしてもよい。プロセッサ110は、管理サーバ200にアップロードしたログデータLOGをローカルの記憶装置120から消去してもよい。
【0031】
管理サーバ200は、データベース220を有している。管理サーバ200は、1又は複数の車両1からアップロードされるログデータLOGを取得する。そして、管理サーバ200は、取得したログデータLOGをデータベース220に保存(保管)する。管理サーバ200は、少なくとも所定期間、ログデータLOGを保存(保管)する。ログデータLOGは、機械学習モデルを利用した自動運転制御の検証等に利用される。
【0032】
2.効率的なログデータ保存
以下の説明において、アップロード対象データDUPは、車両1から管理サーバ200にアップロードされる対象となるデータを意味する。アップロード対象データDUPは、少なくとも、機械学習モデルを利用した自動運転制御に関連するログデータLOGを含む。アップロード対象データDUPは、自動運転制御に直接関連しないデータを含んでいてもよい。
【0033】
図3は、アップロード位置PUを説明するための概念図である。アップロード位置PUとは、車両1の記憶装置120に保存されたアップロード対象データDUPの少なくとも一部が管理サーバ200にアップロードされる位置である。典型的には、アップロード位置PUは、予め定められている。例えば、アップロード位置PUは、車両1の目的地である。他の例として、アップロード位置PUは、出発地と目的地の間に位置する中間地点であってもよい。アップロード位置PUは、車両1の拠点であってもよい。例えば、車両1がバス等のモビリティサービス車両である場合、アップロード位置PUは、モビリティサービス車両の拠点(例:バスセンター)であってもよい。アップロード位置PUは、予め地図情報に登録される。
【0034】
典型的には、車両1はアップロード位置PUにおいて停止する。アップロード位置PUにおいて、プロセッサ110は、自動運転制御を一時停止してもよい。アップロード位置PUにおいて、プロセッサ110は、管理サーバ200と通信を行い、アップロード対象データDUPの少なくとも一部を管理サーバ200にアップロードする。プロセッサ110は、アップロード対象データDUPの全てを管理サーバ200にアップロードしてもよい。プロセッサ110は、管理サーバ200にアップロードしたログデータLOGをローカルの記憶装置120から消去してもよい。
【0035】
アップロード対象データDUPに含まれるログデータLOGは、機械学習モデルを利用した自動運転制御の検証等に利用される。検証等に最低限必要なログデータLOGについては、車両1のローカルな記憶装置120に保存された後、管理サーバ200にアップロードされることが望まれる。但し、車両1の記憶装置120の容量には限界がある。そのことを考慮して、最低限必要なログデータLOGを保存できないような状況を回避することが望まれる。その一方で、車両1の記憶装置120の容量を有効活用することも望まれる。
【0036】
以上の観点から、本実施の形態は、ログデータLOGを車両1の記憶装置120に適切に保存することができる技術を提案する。
【0037】
2-1.第1の例
図4は、ログデータ保存処理の第1の例を説明するための概念図である。車両1は、出発地PSからアップロード位置PUに移動する。図4の横軸は、出発地PSとアップロード位置PUとの間の位置、あるいは、その位置に対応する時間を表す。
【0038】
単位時間あるいは単位距離あたりに記憶装置120に保存されるアップロード対象データDUPの量を、以下、「対象保存量Q」と呼ぶ。プロセッサ110は、単位時間あるいは単位距離あたりに対象保存量Qのアップロード対象データDUPを記憶装置120に保存する。第1の例では、対象保存量Qは、「基本保存量Q0」と「第1保存量Q1」を含む。
【0039】
基本保存量Q0は、検証等に最低限必要とされる所定のログデータLOGの量である。最低限必要な所定のログデータLOGの種類は、例えば、自動運転システム100あるいは管理サーバ200の管理者によって予め指定される。例えば、最低限必要なログデータLOGは、センサ検出情報SENや制御量CONを含む。尚、基本保存量Q0は、位置、時間、周辺環境、シーン等に応じて変動する可能性がある。
【0040】
一方、第1保存量Q1は、最低限必要な所定のログデータLOG以外の「追加データ」の量である。例えば、追加データは、最低限必要な所定のログデータLOG以外の追加的なログデータLOGを含む。他の例として、追加データは、機械学習モデルの学習に用いられる学習データを含んでいてもよい。学習データは、車両1における機械学習モデルを利用した自動運転制御に関連するデータである。学習データは、機械学習モデルに入力された入力データと機械学習モデルから出力された出力データの組み合わせであってもよい。尚、学習データは、当該車両1の自動運転制御に利用される機械学習モデルの学習(更新)に用いられてもよいし、他の機械学習モデルの学習に用いられてもよい。更に他の例として、追加データは、自動運転制御に直接関連しないデータを含んでいてもよい。
【0041】
単位時間あるいは単位距離あたりに記憶装置120に保存されるアップロード対象データDUPは、「基本保存量Q0の所定のログデータLOG」と「第1保存量Q1の追加データ」を含む。所定のログデータLOGだけでなく追加データも記憶装置120に保存することによって、記憶装置120の容量を有効活用することができる。
【0042】
但し、基本保存量Q0は、位置、時間、周辺環境、シーン等に応じて変動する可能性がある。基本保存量Q0を予測することは必ずしも容易ではない。最初から無計画に記憶装置120の容量を消費してしまうと、後になって記憶装置120の空き容量が枯渇してしまうおそれがある。記憶装置120の空き容量が枯渇すると、最低限必要な所定のログデータLOGも記憶装置120に保存されなくなるおそれがある。
【0043】
そこで、第1保存量Q1は、アップロード位置PUまでの残り距離Drあるいは残り時間Trを考慮して設定される。言い換えれば、第1保存量Q1は、アップロード位置PUまでの残り距離Drあるいは残り時間Trの関数(f1)として表される。残り距離Drは、車両1の現在位置とアップロード位置PUに基づいて算出可能である。車両1の現在位置は、位置センサ13によって得られる。アップロード位置PUは、地図情報に予め登録されている。残り時間Trは、残り距離Drと車両1の速度から推定可能である。車両1の速度は、状態センサ12によって検出される。あるいは、車両1がバス等のモビリティサービス車両である場合、アップロード位置PUまでの残り時間Trは、モビリティサービス車両の運行スケジュールから得られる。
【0044】
より詳細には、図4に例示されるように、第1保存量Q1は、アップロード位置PUまでの残り距離Drあるいは残り時間Trが少なくなるにつれて増加する。この増加は、単調増加であってもよいし、段階的な増加であってもよい。例えば、出発地PSからアップロード位置PUまでの車両1の走行ルートは、第1区間とそれに続く第2区間を含む。この場合、第2区間における第1保存量Q1は、第1区間における第1保存量Q1よりも多くなるように設定される。モビリティサービス車両がある拠点(例:バスセンター)から出発して同じ拠点に戻ってくる場合、第1区間は往路区間であり、第2区間は復路区間であってもよい。第1区間における第1保存量Q1はゼロであってもよい。
【0045】
追加データは、最低限必要な所定のログデータLOG以外の追加的なログデータLOGであってもよい。この場合、例えば、記憶装置120に保存されるログデータLOGの種類が、アップロード位置PUまでの残り距離Drあるいは残り時間Trが少なくなるにつれて増加する。他の例として、ログデータLOGのサンプリングレートが、アップロード位置PUまでの残り距離Drあるいは残り時間Trが少なくなるにつれて増加してもよい。
【0046】
図4に例示されるような第1保存量Q1のプロファイルは、自動運転システム100あるいは管理サーバ200の管理者によって予め設定されてもよい。
【0047】
以上に説明されたように、第1の例によれば、単位時間あるいは単位距離あたりの対象保存量Qは、第1保存量Q1を含む。第1保存量Q1は、アップロード位置PUまでの残り距離Drあるいは残り時間Trが少なくなるにつれて増加する。残り距離Drあるいは残り時間Trが多い段階では、第1保存量Q1は小さめ(控え目)に設定される。これにより、早い段階で記憶装置120の空き容量が枯渇するといった事態が抑制される。つまり、最低限必要な所定のログデータLOGが記憶装置120に保存されなくなるといった事態が抑制される。
【0048】
一方、アップロード位置PUまでの残り距離Drあるいは残り時間Trが少なくなるにつれて、第1保存量Q1は増加し、記憶装置120に保存される追加データはよりリッチになる。これにより、有用なデータをより多く保存することが可能となる。すなわち、記憶装置120の容量を有効活用することができる。
【0049】
このように、第1の例によれば、記憶装置120の容量を有効活用しつつ、自動運転制御に関連するログデータLOGを適切に保存することが可能となる。
【0050】
2-2.第2の例
図5は、ログデータ保存処理の第2の例を説明するための概念図である。第1の例と重複する説明は、適宜省略される。第2の例では、対象保存量Qは、「基本保存量Q0」と「第2保存量Q2」を含む。
【0051】
第1保存量Q1と同様に、第2保存量Q2も、最低限必要な所定のログデータLOG以外の「追加データ」の量である。この第2保存量Q2は、記憶装置120の残容量Crを考慮して設定される。言い換えれば、第2保存量Q2は、記憶装置120の残容量Crの関数(f2)として表される。より詳細には、第2保存量Q2は、記憶装置120の残容量Crが少なくなるにつれて減少する。この減少は、単調減少であってもよいし、段階的な減少であってもよい。図5に示されるように、残容量Crが十分に残っている段階で、第2保存量Q2はゼロになってもよい。例えば、残容量Crが所定の閾値未満になると、第2保存量Q2はゼロに設定される。第2保存量Q2のプロファイルは、管理者によって予め設定されてもよい。
【0052】
記憶装置120の残容量Crが比較的多い段階では、第2保存量Q2は大きめに設定され、記憶装置120に保存される追加データはリッチになる。これにより、有用なデータをより多く保存することが可能となる。すなわち、記憶装置120の容量を有効活用することができる。
【0053】
一方、記憶装置120の残容量Crが比較的少なくなると、第2保存量Q2は小さくなる。これにより、記憶装置120の空き容量が枯渇するといった事態が抑制される。つまり、最低限必要な所定のログデータLOGが記憶装置120に保存されなくなるといった事態が抑制される。
【0054】
このように、第2の例によれば、記憶装置120の容量を有効活用しつつ、自動運転制御に関連するログデータLOGを適切に保存することが可能となる。
【0055】
2-3.第3の例
図6は、ログデータ保存処理の第3の例を説明するための概念図である。第1の例と重複する説明は、適宜省略される。第3の例では、対象保存量Qは、「基本保存量Q0」と「第3保存量Q3」を含む。
【0056】
第1保存量Q1と同様に、第3保存量Q3も、最低限必要な所定のログデータLOG以外の「追加データ」の量である。この第3保存量Q3は、管理者によって指定される位置においてピンポイントに確保される。例えば、管理者は、イベントが発生しやすい位置(例:交差点)を指定する。第3保存量Q3は、所定量であってもよいし、管理者によって指定されてもよい。第3保存量Q3のプロファイルは、管理者によって予め設定されてもよい。
【0057】
第3の例によっても、記憶装置120の容量を有効活用しつつ、自動運転制御に関連するログデータLOGを適切に保存することが可能となる。
【0058】
2-4.第4の例
上述の第1~第3の例のうち2以上の組み合わせも可能である。例えば、第3の例は、第1の例あるいは第2の例と組み合わされてもよい。例えば、第1保存量Q1あるいは第2保存量Q2が希薄な位置においてピンポイントに第3保存量Q3が設定されてもよい。第1の例と第2の例と第3の例の組み合わせも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…車両、10…センサ群、20…認識部、30…計画部、40…制御量算出部、50…走行装置、100…自動運転システム、200…管理サーバ、CON…制御量、LOG…ログデータ、RES…認識結果情報、SEN…センサ検出情報、TRJ…目標トラジェクトリ
図1
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図6