(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005180
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
H05K3/38 B
H05K3/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105255
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 有紅
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA12
5E343BB24
5E343BB35
5E343CC71
5E343DD25
5E343DD43
5E343ER02
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】導体回路の幅が小さくなっても導体回路が樹脂絶縁層から剥がれ難いプリント配線板の提供。
【解決手段】
プリント配線板は、第1樹脂絶縁層と、前記第1樹脂絶縁層の上に形成されている第1導体層と、前記第1樹脂絶縁層と前記第1導体層の上に形成されていて、前記第1導体層に至るビア導体用の開口を有する第2樹脂絶縁層と、前記第2樹脂絶縁層上に形成されている第2導体層と、前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層を接続するビア導体、とを有する。前記第2導体層は、前記第2樹脂絶縁層上のシード層と前記シード層上の電解めっき膜とからなり、前記シード層は前記第2樹脂絶縁層に接している第1膜と前記第1膜上の第2膜で形成され前記第1膜は銅とチタンを含む合金で形成されていて、前記合金は不純物として炭素と酸素、シリコンを含み、前記第2膜は銅で形成されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂絶縁層と、
前記第1樹脂絶縁層の上に形成されている第1導体層と、
前記第1樹脂絶縁層と前記第1導体層の上に形成されていて、前記第1導体層に至るビア導体用の開口を有する第2樹脂絶縁層と、
前記第2樹脂絶縁層上に形成されている第2導体層と、
前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層を接続するビア導体、とを有するプリント配線板であって、
前記第2導体層は、前記第2樹脂絶縁層上のシード層と前記シード層上の電解めっき膜とからなり、前記シード層は前記第2樹脂絶縁層に接している第1膜と前記第1膜上の第2膜で形成され前記第1膜は銅とチタンを含む合金で形成されていて、前記合金は不純物として炭素と酸素、シリコンを含み、前記第2膜は銅で形成されている。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1膜と前記第2膜は、スパッタリングにより形成されている。
【請求項3】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1膜の厚みは10nm以上500nm以下であって前記第2膜の厚みは100nm以上500nm以下である。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板であって、前記合金中の炭素の量は、0.05at%以上25at%以下であって、酸素の量は0.05at%以上25at%以下であって、シリコンの量は0.05at%以上3at%以下であって、銅の量は50at%以上90at%以下であって、チタンの量は1at%以上30at%以下である。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板であって、前記第2樹脂絶縁層は、ガラス粒子を含む。
【請求項6】
請求項5のプリント配線板であって、前記第2樹脂絶縁層は、炭素と酸素、シリコンを含む。
【請求項7】
請求項1のプリント配線板であって、前記第2導体層は複数の導体回路を含み、前記複数の導体回路幅の内、最小の幅を有する導体回路は最小の導体回路であって、前記最小の導体回路の幅は、1.5μm以上5μm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、樹脂基板と樹脂基板上に形成されている樹脂絶縁層と導体回路を有するプリント配線板を開示する。導体回路は、特定の金属を含む合金層を介して樹脂絶縁層上に形成されている。例えば、特許文献1の段落[0008]に特定の金属は示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1の合金層を備えるプリント配線板では、導体回路の幅が小さくなると、導体回路が樹脂絶縁層から剥がれると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント配線板は、第1樹脂絶縁層と、前記第1樹脂絶縁層の上に形成されている第1導体層と、前記第1樹脂絶縁層と前記第1導体層の上に形成されていて、前記第1導体層に至るビア導体用の開口を有する第2樹脂絶縁層と、前記第2樹脂絶縁層上に形成されている第2導体層と、前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層を接続するビア導体、とを有する。前記第2導体層は、前記第2樹脂絶縁層上のシード層と前記シード層上の電解めっき膜とからなり、前記シード層は前記第2樹脂絶縁層に接している第1膜と前記第1膜上の第2膜で形成され前記第1膜は銅とチタンを含む合金で形成されていて、前記合金は不純物として炭素と酸素、シリコンを含み、前記第2膜は銅で形成されている。
【0006】
本発明の実施形態のプリント配線板では、第2樹脂絶縁層に接している第1膜が銅とチタンを含む合金で形成されている。合金は不純物として炭素、酸素、シリコンを含む。そのため、炭素、酸素、シリコンを含む第2樹脂絶縁層との接着力が大きい。第1膜と第2樹脂絶縁層の密着力が高い。そのため、導体回路の幅が小さくても第2樹脂絶縁層から剥がれ難い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態のプリント配線板を模式的に示す断面図。
【
図1B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図1C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図1D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図1E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図2A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図2B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図2C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図2D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図2E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図3A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図3B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図3C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図3D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態のプリント配線板>
図1Aは実施形態のプリント配線板100の断面図である。
図1に示されるように、プリント配線板100は、基板1と基板1の表裏に形成されているビルドアップ層80U,80Lを有する。基板1上には下層導体回路9及び導体層10からなる第1導体層が形成されている。
【0009】
ビルドアップ層80U,80Lは、樹脂絶縁層12U,12Lとシード層14及びシード層14上の電解銅めっき膜15(電解めっき膜)からなる第2導体層と樹脂絶縁層12U,12Lを貫通し隣接する導体層を接続するビア導体15Aで形成されている。樹脂絶縁層12U,12Lは第2樹脂絶縁層である。樹脂絶縁層12U,12Lは、下層導体回路9及び導体層10に至るビア導体用開口13を有する。樹脂絶縁層12U,12Lは、ガラス粒子を含む。樹脂絶縁層12U,12Lは、炭素と酸素、シリコンを含む。
【0010】
シード層14は樹脂絶縁層12U,12Lに接しているCu/Ti合金層(第1膜)14aとCu/Ti合金層14a上のCu層14b(第2膜)で形成される。
【0011】
Cu/Ti合金層14aは銅とチタンを含む合金で形成されている。当該合金は不純物として炭素と酸素、シリコンを含む。合金中の炭素の量は、0.05at%以上25at%以下である。合金中の酸素の量は0.05at%以上25at%以下である。合金中のシリコンの量は0.05at%以上3at%以下である。合金中の銅の量は50at%以上90at%以下である。合金中のチタンの量は1at%以上30at%以下である。Cu/Ti合金層14aの厚みは10nm以上500nm以下である。
【0012】
Cu層14bは銅で形成されている。Cu層14bの厚みは100nm以上500nm以下である。
【0013】
第2導体層は複数の導体回路を含む。複数の導体回路幅の内、最小の幅を有する導体回路(最小の導体回路)の幅は、1.5μm以上5μm以下である。
【0014】
樹脂絶縁層12U,12Lに接しているCu/Ti合金層14aが銅とチタンを含む合金で形成され、合金は不純物として炭素、酸素、シリコンを含む。そのため、炭素、酸素、シリコンを含む樹脂絶縁層12U,12Lとの接着力が大きい。Cu/Ti合金層14aと樹脂絶縁層12U,12Lの密着力が高い。そのため、第2導体層の導体回路の幅が小さくても樹脂絶縁層12U,12Lから剥がれ難い。
【0015】
なお、
図1Aにおいては、後述する多層化の工程を省略し、後述の
図4Cで形成される上層導体回路19等を有する基板1の上に、樹脂絶縁層12U,12Lと第2導体層とビア導体15Aからなるビルドアップ層80U,80Lが形成されている態様にて図示を行っている。実際は、上記多層化の工程により、ビルドアップ層80U,80Lにおいては、最外層の樹脂絶縁層(第2樹脂絶縁層)の内層側に最外層から2層目の樹脂絶縁層(第1樹脂絶縁層)が積層されている。最外層から2層目の樹脂絶縁層上には導体層(第1導体層)が形成されている。最外層の樹脂絶縁層は、最外層から2層目の樹脂絶縁層と第1導体層上に形成されている。最外層の樹脂絶縁層の上に形成されている導体層(第2導体層)と最外層から2層目の樹脂絶縁層上には導体層(第1導体層)の間が、第1導体層に至るビア導体用の開口に形成されるビア導体によって接続されている。
【0016】
プリント配線板100は、ビルドアップ層80A,80B上にソルダーレジストパターン層18U,18Lを有する。ソルダーレジストパターン層18U,18Lは開口21U,21Lを有する。開口21U,21Lにより露出される第2導体層は電子部品を搭載するためのパッドとして機能する。パッド上に電子部品を実装するための半田バンプ23が形成されている。
【0017】
<実施形態のプリント配線板の製造方法>
図1B~
図4Dは実施形態のプリント配線板100の製造方法を示す。
図1B~
図4Dは断面図である。
【0018】
図1Bに示されるように、基板1の両面に銅箔2が貼られている銅貼積層板が出発材料とされる。
図1Cに示されるように、銅貼積層板がドリル削孔されてスルーホール用の貫通孔が形成される。その後、無電解めっきが施され、基板1全面に無電解めっき膜が形成される。さらに、電気銅めっきが施されて電解銅めっき膜が形成される。
図1Dに示されるように、基板1の全表面にスルーホール3aを含む導体層3が形成される。
【0019】
導体層3が形成されている基板1が水洗いされ、乾燥される。その後、該基板1を所定の水溶液からなる酸化浴(黒化浴)、及び、還元浴を用いた酸化還元処理に供され、
図1Eに示されるように、スルーホール3aを含む導体層3の全表面に粗化面4が形成される。
【0020】
図2Aに示されるように、銅粒子を含む金属粒子ペースト5が、スルーホール3a内にスクリーン印刷によって充填され、乾燥、硬化される。その後、導体層3表面に形成される粗化面4及びスルーホール3aからはみ出る金属粒子ペースト5が研磨により除去され、基板1表面が平坦化される。
【0021】
図2Bに示されるように、平坦化されている基板1表面に、無電解めっきが施されることにより無電解銅めっき膜6が形成される。
【0022】
その後、所定条件で電気銅めっきが施されて電気銅めっき膜7が形成され、後述する
図2Dの工程において下層導体回路9となる部分の厚付け、及び、スルーホール3aに充填されている金属粒子ペースト5を覆う導体層10となる部分が形成される。
【0023】
図2Cに示されるように、下層導体回路9及び導体層10となる部分が形成されている基板1の両面に、感光性ドライフィルムを貼り付け、マスクを載置して露光後、現像処理し、エッチングレジスト8が形成される。
【0024】
図2Dに示されるように、エッチングレジスト8を形成していない部分のめっき膜がエッチングにて溶解除去される。その後、エッチングレジスト8が剥離除去されることにより、独立した下層導体回路9及び導体層10が形成される。
【0025】
図2Eに示されるように、下層導体回路9及び導体層10の表面に粗化層11が形成され、さらにこの粗化層11の表面にSn層(図示省略)が形成される。
【0026】
図3Aに示されるように、エポキシ樹脂の組成物が基板1の両面に塗布され、樹脂絶縁層12U,12Lとなる樹脂層120U,120Lが形成される。
【0027】
図3Bに示されるように、樹脂層120U,120Lの形成後に適宜に紫外線で露光及び現像処理が行われ、ビア導体用開口13が形成される。さらに、熱硬化が行われることにより樹脂絶縁層12U,12Lが形成される。
【0028】
図3Cに示されるように、所定のスパッタリングにより、樹脂絶縁層12U,12Lとビア導体用開口13と下層導体回路9と導体層10上に、Cu/Ti合金層14aが形成される。さらに、所定のスパッタリングにより、Cu層14bが形成される。なお、合金層14a及びCu層14bは、薄膜であり、両方をはっきりと図示することは困難であるため、合金層14a及びCu層14bを合わせて14の符号を付し、「シード層14」と総称する。
【0029】
図3Dに示されるように、Cu層14bが形成されている基板1の両面に、感光性ドライフィルムが貼り付けられ、フォトマスクフィルムを載置して露光後、現像処理され、めっきレジスト16のパターンが形成される。
【0030】
図4Aに示されるように、所定条件で電気めっきが施されて電解銅めっき膜15が形成される。なお、この電解銅めっき膜15により、下層導体回路9部分の厚付け及びビアホール部分のめっき充填(後述の
図4B参照)が行われる。ビアホール部分の電解銅めっき膜15によりビア導体15Aが形成される。
【0031】
図4Bに示されるように、めっきレジスト16を剥離除去後、そのめっきレジスト16の下に存在しているシード層14がエッチングで除去される。シード層14及びビア導体15Aを含む電解銅めっき膜15からなる、上層導体回路19が形成される。
【0032】
図4Cに示されるように、上層導体回路19が形成されている基板1に、所定のスパッタリングが行われ、上層導体回路19の表面にNi-Snからなる合金層20が形成される。その後、
図3A ~
図4Cの工程が繰り返されることにより、多層化が行われる。
【0033】
基板1の両面に、適宜のソルダーレジスト組成物を塗布して乾燥処理が行われる。その後、ソルダーレジスト開口部のパターンが描画されているフォトマスクをソルダーレジスト層に密着させて紫外線で露光し、現像処理し、開口が形成される。さらに、所定条件で加熱処理してソルダーレジスト層を硬化させることで、
図4Dに示されるように、開口21U,21Lを有するソルダーレジストパターン層18U,18Lが形成される。
【0034】
ソルダーレジストパターン層18U,18Lが形成されている基板1が、所定の無電解めっき液に浸漬されて、ニッケルめっき層上に金めっき層22が形成される。その後、ソルダーレジストパターン層18U,18Lの開口21U,21Lにはんだペーストが印刷され、リフローされることにより半田バンプ23が形成される。実施形態のプリント配線板100が得られる(
図1A参照)。
【符号の説明】
【0035】
1 :基板
2 :銅箔
3 :導体層
3a :スルーホール
4 :粗化面
5 :金属粒子ペースト
6 :電解銅めっき膜
7 :電気銅めっき膜
8 :エッチングレジスト
9 :下層導体回路
10 :導体層
11 :粗化層
12L :樹脂絶縁層
12U :樹脂絶縁層
13 :ビア導体用開口
14 :シード層
14a :Cu/Ti合金層
14b :Cu層
15 :電解銅めっき膜
15A :ビア導体
16 :めっきレジスト
18L :ソルダーレジストパターン層
18U :ソルダーレジストパターン層
19 :上層導体回路
20 :合金層
21L :開口
21U :開口
22 :金めっき層
23 :半田バンプ
80L :ビルドアップ層
80U :ビルドアップ層
100 :プリント配線板
120L:樹脂層
120U:樹脂層