(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005184
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
A01C11/02 313B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105263
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 一輝
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA05
2B062AB01
2B062BA01
2B062BA06
2B062BA13
2B062BA46
2B062CA22
2B062CA25
2B062CB01
(57)【要約】
【課題】走行速度が高速となった場合でも、不等速回転による植付けを適切に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】例示的な作業車両は、走行体と、前記走行体に支持される作業装置と、前記作業装置の作業部を回転させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記作業部が一回転中における角速度を加減速させる不等速回転を行う際に、前記加減速の位相の遅れを補正する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体に支持される作業装置と、
前記作業装置の作業部を回転させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記作業部が一回転中における角速度を加減速させる不等速回転を行う際に、前記加減速の位相の遅れを補正する、作業車両。
【請求項2】
前記作業部の回転角を検出、又は、予測可能とするセンサを備え、
前記制御装置は、前記センサから得られる前記回転角の情報に基づき前記加減速の位相の遅れを補正する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記走行体の速度に応じて前記作業部の回転速度を変化させ、
前記制御装置は、前記走行体の速度にさらに基づき前記加減速の位相の遅れを補正する、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御装置は、記憶装置に記憶される補正用マップを用いて前記加減速の位相の遅れを補正する、請求項2又は3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記補正用マップのキャリブレーションを実施する、請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記作業部の圃場に対する作業設定を変更可能に設けられ、
前記制御装置は、前記作業設定に基づき前記加減速の位相の遅れを補正する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項7】
前記作業装置は、複数の条に対する植付けを同時に実行可能とする複数の植付部を前記作業部として有する植付装置であり、
前記作業設定は、前記複数の植付部の使用数の設定である、請求項6に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗が前倒れしたり、浮き苗が発生したりすることを防止するために、疎植の際に、移植機構を構成するロータリケースを不等速回転させる技術が知られる(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、ミッションケース内にある株間変速装置に不等速部材を組み込んで、不等速回転を行わせる構成が開示される。当該構成では、株間変速装置から移植機構に至る動力伝達系は、ギアや回転軸等の伝動要素で構成される。不等速部材は、伝動要素の1回転中の角速度を加減速して不等速回転を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不等速回転で移植機構を駆動させる場合、走行速度に連動して不等速回転の速度が変わる。具体的には、走行速度が速くなると、不等速回転の速度が速くなる。そして、不等速回転の速度が一定以上の高速度域に到達すると、伝動要素の振動が顕著となる等の影響により、移植機構が備える植付爪の動作周期がずれて、植付け不良が生じる。このような植付け不良の発生を防止するために、従来においては、不等速回転の速度が高速になることを防止すべく、走行速度に制限を設ける必要があった。
【0005】
本発明は、走行速度が高速となった場合でも、不等速回転による植付けを適切に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な作業車両は、走行体と、前記走行体に支持される作業装置と、前記作業装置の作業部を回転させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記作業部が一回転中における角速度を加減速させる不等速回転を行う際に、前記加減速の位相の遅れを補正する。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、走行速度が高速となった場合でも、不等速回転による植付けを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】田植機が備える動力伝達機構の概略の構成を示す平面図
【
図5】田植機が備える作業装置の詳細構成を示すブロック図
【
図6】植付部の不等速回転による駆動について説明するための模式図
【
図7】制御装置による駆動装置の制御の概要を示すブロック図
【
図9】加減速の位相の遅れを補正する処理の一例を示すフローチャート
【
図10】補正用マップのキャリブレーションの流れを例示するフローチャート
【
図11】駆動装置等の異常判定に関わる制御装置の機能を示すブロック図
【
図12】駆動装置の異常を報知する流れの一例を示すフローチャート
【
図13】異常検出時の制御装置の制御パターンの第1実施例を示す図
【
図14】異常検出時の制御装置の制御パターンの第2実施例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
本明細書では、
図1に示す作業車両100が走行する走行平面Sに対して直交する方向を上下方向とし、走行平面Sに対して作業車両100側が上として上下を定義する。また、作業車両100が直進走行する方向を前後方向とし、運転席20に対して操向ハンドル21が前側として前後を定義する。また、上下方向および前後方向と直交する方向を左右方向とし、後方から前方に向かって右となる側を右、左となる側を左として左右を定義する。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0011】
また、本実施形態では、作業車両100は田植機である。以下、作業車両100のことを田植機100と記載する。ただし、本発明の作業車両は、田植機以外であってもよい。本発明の作業車両は、例えば、種子を圃場に播種しながら走行する播種機、又は、野菜や穀物を圃場に移植する移植機等であってもよい。
【0012】
<1.田植機の概要>
図1は、本発明の実施形態に係る田植機100の概略の構成を示す側面図である。
図1は、詳細には田植機100の左側面図である。なお、
図1においては、本来は後輪12bに隠れる部分の構造を理解し易くするために、後輪12bについては仮想線(二点鎖線)で示している。
図2は、田植機100の概略の構成を示す平面図である。
図2は、詳細には田植機100の上面図である。
図3は、田植機100が備える動力伝達機構の概略の構成を示す平面図である。
【0013】
田植機100は、圃場内を走行しながら、圃場の地面に苗を植え付ける植付作業を行う。
図1及び
図2に示されるように、田植機100は、走行体1と、作業装置2とを備える。田植機100は、走行体1と、少なくとも一種類の作業装置2とを備える。
【0014】
走行体1は、車体フレーム11と、車体フレーム11の左右方向に互いに間隔を隔てて配置される一対の車輪部12とを備える。左右の車輪部12は、前輪12aおよび後輪12bを含む。車体フレーム11の前部の左右方向中央には、ボンネット13に上方から覆われる第1駆動源14が配置される。なお、
図1および
図2では、第1駆動源14は、ボンネット13に覆われて本来は見えないために仮想線(破線)で示されている。また、第1駆動源14の位置は、本実施形態の位置とは異なる位置とされてよい。第1駆動源14は、詳細にはディーゼルエンジンである。ただし、第1駆動源14は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンやモータ等であってもよい。
【0015】
図1および
図3に示すように、第1駆動源14の後方には、トランスミッション15が配置される。なお、トランスミッションは必須の構成ではない。例えば、第1駆動源14がモータである場合等には、トランスミッションは設けられなくてよい。トランスミッション15は、第1駆動源14が発生した駆動力を変速する。トランスミッション15の左右には、フロントアクスル16が配置される。前輪12aは、フロントアクスル16に設けられる前輪軸16aに取り付けられ、トランスミッション15から伝達される駆動力によって駆動される。
【0016】
また、トランスミッション15の後方には、リアアクスル17が配置される。詳細には、リアアクスル17は、前後方向に延びるジョイント材18でトランスミッション15と結合される。ジョイント材18に沿って、後輪駆動軸19が配置される。後輪駆動軸19は、トランスミッション15からリアアクスル17に駆動力を伝達する。後輪12bは、リアアクスル17に設けられる後輪軸17aに取り付けられる。後輪12bは、トランスミッション15から後輪駆動軸19を介して伝達される駆動力によって駆動される。
【0017】
走行体1は、車体フレーム11に支持される運転席20を備える。運転席20は、ジョイント材18の上方に配置される。運転席20の前方には、作業者が田植機100を操舵するためのハンドルである操向ハンドル21が配置される。また、運転席20の周囲には、変速レバー、変速ペダル、および、ブレーキペダル(不図示)等が配置される。
【0018】
走行体1は、ボンネット13の左右方向外方に配置される予備苗台22を備える。予備苗台22には、補充用の苗マットが載置される。予備苗台22は、左右のそれぞれに配置される。左右のそれぞれにおいて、予備苗台22は、上下方向に複数並ぶ。
【0019】
作業装置2は、走行体1に支持される。本実施形態においては、田植機100は、詳細には、複数種類の作業装置2A、2Bを備える。すなわち、作業装置2は、複数種類の作業装置2A、2Bを含む。詳細には、第1作業装置2Aは植付装置であり、第2作業装置2Bは資材供給装置である。なお、複数種類の作業装置の種類および数は、本実施形態の構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0020】
植付装置2Aは、苗マットが載置される苗載台30と、メインフレーム31とを備える。メインフレーム31は、左右方向に延びる棒状部材であり、左右方向の中央にセンターケース32(
図1、3参照)を備える。センターケース32は、ベベルギアを含むギア列(不図示)を備える。センターケース32の入力軸32aには、自在継手41を介して駆動軸42が連結される。駆動軸42の、センターケース32の入力軸32aと連結される側と反対側の端部は、自在継手41を介して駆動装置40の出力軸40aに連結される。なお、出力軸40aは、前後方向に延び、後方に突き出している。センターケース32の出力軸32b(
図3参照)は、メインフレーム31に沿って配置される。すなわち、出力軸32bは左右方向に延びる。
【0021】
メインフレーム31の後方の左右方向の複数箇所(本実施形態では4箇所)には、植付伝動ケース33が概ね等間隔で配置される。植付伝動ケース33は、センターケース32の出力軸32bに接続される。植付伝動ケース33の左右には、一対の植付部(移植機構)34が配置される。一対の植付部34のそれぞれは、ロータケース35と植付爪36とを含む。ロータケース35は、植付伝動ケース33に、左右方向に延びる軸心を中心とした回転を可能に取り付けられる。各ロータケース35には、ロータケース35の回転中心に対して互いに反対側に配置される2つの植付爪36が回転可能に取り付けられる。各植付爪36は、ロータケース35に、左右方向に延びる軸心を中心とした回転を可能に取り付けられる。2つの植付爪36は、ロータケース35の回転に伴い変位する。2つの植付爪36が変位することにより、1条分の苗の植付が行われる。
【0022】
駆動装置40が発生した駆動力は、駆動軸42、センターケース32、および、植付伝動ケース33を介して植付部34に伝達される。植付装置2Aは、苗載台30を左右方向に移動させる横送り駆動部(不図示)を備える。苗載台30が左右に往復するのと並行して各植付部34が苗載台30から苗を取り出して圃場に植え付ける。本実施形態では、植付部34が複数(詳細には8つ)存在するために、複数の条に対する植付けを同時に実行できる。換言すると、植付装置2A(作業装置)は、複数の条に対する植付けを同時に実行可能とする複数の植付部34を作業部として有する。
【0023】
なお、本実施形態では、植付部34は、圃場に対する作業設定を変更可能に設けられる。すなわち、植付装置2A(作業装置)は、圃場に対する作業設定を変更可能に設けられる作業部を有する。植付部34は、使用するか否かを変更可能に設けられる。より詳細には、植付装置2Aを備える田植機100は、最大8条の苗の植付けを同時に行うことができる。作業設定は、複数の植付部34の使用数の設定である。作業設定の変更により、植付部34の使用数を減らして苗の植付条数を減らすことができる。すなわち、植付装置2Aを備える田植機100は、いわゆる条止めを行うことができる。条止めは、例えば、センターケース32から植付伝動ケース33へ動力を伝達する状態と非伝達とする状態とを切り替える条止めクラッチを、各植付伝動ケース33に対して設けることによって行うことができる。植付装置2Aにおいては、8条植え、6条植え、4条植え、或いは、2条植えを設定することができる。
【0024】
以上の説明からわかるように、田植機100は、植付装置2A(作業装置)の植付部34(作業部)を駆動させる駆動装置40を備える。詳細には、田植機100は、植付装置2Aの植付部34を回転させる駆動装置40を備える。本実施形態において、駆動装置40は、バッテリ(不図示)から供給される電力を回転駆動力に変換する電動モータである。ただし、駆動装置40は、電動モータに限らず油圧モータ等であってもよい。また、駆動装置40は、電動モータと、電動モータの出力軸に連結される変速ギアとを含む構成であってもよい。
【0025】
なお、駆動装置40は、リアアクスル17の上方に配置される。詳細には、駆動装置40は、リアアクスル17の上方の左右方向中央よりも右寄りの位置に配置される。植付装置2Aの植付部34を駆動する駆動装置40をこのような位置に設けることにより、圃場での作業時に、駆動装置40が水に浸かったり、泥で汚れたりする可能性を低減することができる。
【0026】
その他、植付装置2Aは、昇降装置37を備える。昇降装置37は、柱状フレーム371と、上リンク部材372と、下リンク部材373と、油圧シリンダ374とを備える。柱状フレーム371は、リアアクスル17から上方に延び、車体フレーム11の後部に接続される。上リンク部材372と下リンク部材373とは、互いに平行に配置される一対のリンク部材を構成する。柱状フレーム371と苗載台30とは、当該一対のリンク部材372、373によって連結される。柱状フレーム371と、苗載台30と、一対のリンク部材372、373との節点は、平行四辺形の4つの頂点を構成する。油圧シリンダ374は、ジョイント材18と下リンク部材373とに連結される。油圧シリンダ374の伸縮により、柱状フレーム371側の節点を支点として、一対のリンク部材372、373が揺動することで苗載台30が昇降する。
【0027】
資材供給装置2Bは、農業資材を圃場へ供給する。本実施形態では、農業資材は肥料である。すなわち、資材供給装置2Bは、圃場に肥料を散布する施肥装置である。ただし、農業資材は、肥料に限らず、農薬や種子等であってもよい。資材供給装置2Bは、運転席20の後方の車体フレーム11上に配置される。資材供給装置2Bは、運転席20と苗載台30との前後方向間に配置される。
【0028】
資材供給装置2Bは、左右方向に延びる直方体状のホッパ51を備える。ホッパ51には、肥料が貯留される。資材供給装置2Bは、ホッパ51から所定の量の粒剤を供給する供給装置(不図示)と、供給装置の下部に連通されるホース(不図示)と、を有する。各ホースの他端は、植付装置2Aの各条の植付位置の側方まで延設される。ホッパ51の左右一側(本実施形態では左側、
図1参照)には、ファン52が設けられ、当該ファン52からの送風がホース内に送られる。ホース内に送られた送風によって供給装置から供給された粒剤は、植付位置の近傍に搬送され、圃場へ排出される。
【0029】
図4は、田植機100の概略の構成を示すブロック図である。なお、
図4においては、実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素が示されており、特に説明の必要がない構成要素の記載は省略されている。
【0030】
図4に示すように、走行体1は、第1駆動源14および第1異常検出装置23を含む。第1駆動源14は、上述のように、前輪12aおよび後輪12b等に駆動力を与えるエンジンである。第1異常検出装置23は、走行体1において発生する異常を検出する装置である。第1異常検出装置23は、特に第1駆動源14において発生する異常を検出する装置であってよい。走行体1において発生する異常の種類は、1つに限らず、複数種類であってもよい。複数種類の異常の検出を行う必要がある場合には、第1異常検出装置23は、複数種類の検出装置を含む構成であってよい。異常の種類としては、例えば、駆動源の回転速度、トルク、或いは、温度等の異常であってよい。走行体1は、第1異常検出装置23とは別に、少なくとも一つのセンサ24を含む。本実施形態では、当該少なくとも一つのセンサ24には、速度センサ(車速センサ)が含まれる。
【0031】
また、
図4に示すように、作業装置2は、第2駆動源40、50および第2異常検出装置43、53を含む。第2駆動源40、50は、作業装置2の作業部に駆動力を与える。第2異常検出装置43、53は、作業装置2において発生する異常を検出する装置である。上述のように、作業装置2は、詳細には、植付装置2Aと資材供給装置2Bとを含む。
図5は、田植機100が備える作業装置2の詳細構成を示すブロック図である。
図5に示すように、植付装置2Aと資材供給装置2Bとは、それぞれ別々に、第2駆動源40、50、および、第2異常検出装置43、53を含む。
【0032】
植付装置2Aに含まれる第2駆動源40は、本実施形態においては、上述のように電動モータで構成される駆動装置40である。植付装置2Aに含まれる第2異常検出装置43は、植付装置2Aにおいて発生する異常を検出する装置である。第2異常検出装置43は、特に駆動装置40において発生する異常を検出する装置であってよい。植付装置2Aにおいて発生する異常の種類は、1つに限らず、複数種類であってもよい。複数種類の異常の検出を行う必要がある場合には、第2異常検出装置43は、複数種類の検出装置を含む構成であってよい。異常の種類としては、例えば、モータの電圧、電流、又は、温度等の異常、或いは、バッテリの状態の異常等であってよい。
【0033】
植付装置2Aは、第2異常検出装置43とは別に、少なくとも一つのセンサ44を含む。本実施形態では、当該センサ44には、上述した条止めクラッチの状態(接続/非接続)を検出する条止めクラッチセンサが含まれる。また、当該センサ44には、詳細は後述する回転角(位相角)センサ441(
図7参照)が含まれる。
【0034】
資材供給装置2Bに含まれる第2駆動源50は、上述した肥料を供給する供給装置に含まれる供給用モータである。資材供給装置2Bに含まれる第2異常検出装置53は、資材供給装置2Bにおいて発生する異常を検出する装置である。第2異常検出装置53は、特に供給用モータ50において発生する異常を検出する装置であってよい。資材供給装置2Bにおいて発生する異常の種類は、1つに限らず、複数種類であってもよい。複数種類の異常の検出を行う必要がある場合には、第2異常検出装置53は、複数種類の検出装置を含む構成であってよい。異常の種類としては、例えば、モータの電圧、電流、又は、温度等の異常、或いは、バッテリの状態の異常等であってよい。なお、資材供給装置2Bは、植付装置2Aと同様に、第2異常検出装置53とは別に、少なくとも一つのセンサを含んでよい。
【0035】
図4に戻って、田植機100は、第1駆動源14および第2駆動源40、50を制御する制御装置3を備える。別の言い方をすると、田植機100は、駆動装置40を制御する制御装置3を備える。制御装置3は、いわゆるコンピュータ装置であり、演算装置、メモリ、および、入出力部を含んで構成される。演算装置は、プロセッサ又はマイクロプロセッサ等である。メモリは、後述の記憶装置5であってもよいが、記憶装置5とは別の装置であってもよい。
【0036】
制御装置3には、第1異常検出装置23、センサ24、第2異常検出装置43、53、センサ44(
図5参照)、操作装置4等から情報が入力される。制御装置3は、入力された情報に基づいて田植機100の動作の制御を広く行う。なお、操作装置4は、作業者が制御装置3に対して指示を出すことを可能とする装置である。操作装置4は、田植機100に設けられる構成であってよいが、田植機100外に設けられる構成であってもよい。また、操作装置4は、田植機100および田植機100外に設けられる構成であってもよい。田植機100外に設けられる操作装置4は、田植機100と無線通信可能な構成であってよい。具体的には、田植機100に設けられる操作装置4は、例えば、ボタン、レバー、又は、タッチパネル等であってよい。また、田植機100外に設けられる操作装置4は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯端末であってよい。
【0037】
記憶装置5は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置である。記憶装置5は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置をさらに含んでもよい。記憶装置5には、各種のプログラム及びデータ等が記憶されている。例えば、記憶装置5には、詳細は後述する補正用マップ5aが記憶される。制御装置3を構成する演算装置は、各種のプログラムを記憶装置5から読み出し、プログラムに従って演算処理を実行する。
【0038】
なお、制御装置3は、1つのハードウェアで構成されてもよいが、互いに通信可能な複数のハードウェアで構成されてもよい。制御装置3の機能は、演算装置にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現されてよいが、他の手法により実現されてもよい。制御装置3の少なくとも一部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて実現されてもよい。すなわち、制御装置3の少なくとも一部の機能は、専用のIC等を用いてハードウェアにより実現されてもよい。また、制御装置3の少なくとも一部の機能は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現されてもよい。
【0039】
<2.駆動装置の制御>
次に、植付装置2Aの植付部34を駆動する駆動装置40の、制御装置3による制御について説明する。
【0040】
制御装置3による駆動装置40の制御の詳細を説明するに先立って、田植機100における植付装置2Aを用いた苗植え作業について説明する。苗植え作業では、植付爪36がロータケース35の軸心回りに公転しつつ自転することによって、苗載台30と圃場面との間で往復動し、苗マットから苗を1株ずつ掻き取って圃場に植え付ける。ロータケース35が1/2回転するごとに、ロータケース35の両端部に設けられた2つの植付爪36によって、苗の掻き取りと植付けとが行われる。なお、駆動軸42が1回転すると、ロータケース35が1/2回転するように設定されている。植付爪36の植付周期は、走行体1の走行速度に連動しており、走行速度が変化しても苗の植付け間隔(株間)は一定に保持される。別の言い方をすると、制御装置3は、走行体1の速度に応じて植付部34(作業部)の回転速度を変化させる。
【0041】
田植機100においては、単位面積(本例では3.3平方m)当たりの株数を変更可能に設けられる。田植機100においては、一例として、単位面積当たりの株数を、85株、70株、60株、50株、43株、又は、37株のいずれかに設定することができる。植付爪36の動作速度は、設定株数に応じて変更される。当該変更により株間が変更されて、単位面積当たりの植付株数が変わる。
【0042】
単位面積当たりの株数の設定が少なくされるほど、植付爪36の動作速度(植付速度)を遅くして株間を長くする必要がある。ただし、植付速度が遅くされた場合に、植付爪36の先端が圃場で引き摺られて、苗が前倒れしたり、浮き苗が発生したりする。このような現象を防ぐために、単位面積当たりの株数の設定を少なくする疎植時においては、制御装置3が駆動装置40を制御して、植付部34を不等速回転で駆動させる。本実施形態では、単位面積当たりの株数が50株より少ない疎植の場合に、植付部34は不等速回転で駆動される。一方、単位面積当たりの株数が50株以上である密植の場合には、上述した苗の前倒れ等が生じないために、植付部34は等速回転で駆動される。
【0043】
図6は、植付部34の不等速回転による駆動について説明するための模式図である。
図6において、符号S1は圃場の地面を示し、符号S2は圃場の水面を示す。符号SEは苗を示す。実線T1は、田植機100が前進している場合における、不等速回転時の植付爪36の先端軌跡を示す。破線T2は、田植機100が前進している場合における、等速回転時の植付爪36の先端軌跡を示す。一点鎖線T3は、田植機100が停止している場合における、不等速回転時の植付爪36の先端軌跡を示す。なお、
図6においては、駆動装置40の駆動により、ロータケース35は反時計回りに回転する。植付爪36は、ロータケース35に対して時計回りに回転する。
【0044】
図6に示すように、駆動装置40がロータケース35を不等速回転させる場合、ロータケース35の一回転中における角速度が変化される。詳細には、駆動装置40がロータケース35を不等速回転させる場合、ロータケース35の一回転中における角速度が加減速される。具体的には、植付爪36による植付けが行われる手前の段階(矢印P1区間)では角速度が小さくされ、植付爪36による植付けが行われた後(矢印P2区間)は角速度が大きくされる。植付後の角速度が大きくされることで、植付爪36が圃場から逃げる速度を速めることができる。これにより、苗の植付爪36による引き摺りを抑制して、直立に近い姿勢で苗を植え付けることができる。なお、角速度の加減速比は、例えば、±数十%等とされる。
【0045】
このような不等速回転で植付部34を駆動させる場合、走行体1の速度が速くなると、植付部34(ロータケース35)が滑らかに回転せず、いわゆるシャクリと呼ばれる現象が生じる。シャクリは、動軌跡の乱れとも言え、その発生メカニズムとしては、次のようなことが考えられる。
【0046】
本実施形態では、植付部34を駆動する駆動装置40は、植付部34を直接的に駆動させるのではなく、上述のように動力伝達系を介して駆動させる。駆動装置40から植付部34へと至る動力伝達系は、ギアおよび回転軸等の伝動要素を含む。シャクリは、当該伝動要素におけるタイムラグと、従動側の慣性力とのバランスの悪化により生じると考えられる。なお、走行体1の速度が速くなると、植付部34の回転速度(角速度)も速くなるために、シャクリが生じ易くなると考えられる。
【0047】
本実施形態では、以上の点に鑑みて、制御装置3は、植付部34(作業部)が一回転中における角速度を加減速させる不等速回転を行う際に、加減速の位相遅れを補正する構成となっている。これにより、田植機100の速度を速くした場合においても、シャクリ現象の発生を抑制することができる。以下、加減速の位相遅れの補正の詳細について説明する。
【0048】
図7は、制御装置3による駆動装置40の制御の概要を示すブロック図である。なお、
図7において、実線枠のブロックは制御装置3の機能を示す。当該機能は、例えば、制御装置3を構成するプロセッサがプログラムに従った演算処理を実行することにより実現される。また、
図7において、一点鎖線枠のブロックは、制御装置3の機能ではなく、ハードウェアを示す。
【0049】
図7に示すように、田植機100は、植付部34(作業部)の回転角を検出、又は、予測可能とするセンサ441を備える。本実施形態では、回転角センサ441は、植付部34の回転角を予測可能とするセンサである。なお、回転角センサ441は、植付部34の回転角を直接的に検出できる構成であってもよい。このような構成では、上述した植付部34(ロータケース35)の位相遅れを直接的に導出することができるために、位相遅れの補正を精度良く行うことができる。ただし、植付部34の回転角を直接的に検出する構成では、回転角センサ441はロータケース35の近傍に設ける必要がある。この場合、例えば、田植機100が備える植付部34の数が複数であるために、回転角センサ441の必要数が多くなる。また、回転角センサ441の取付位置が圃場面に近くなるために、汚れや水害を防止するための構造が必要となる。すなわち、植付部34の回転角を直接的に検出する構成とする場合、製造コストが高くなることが懸念される。本実施形態では、製造コストを抑制することを念頭において、植付部34の回転角を予測可能とする構成の回転角センサ441を採用している。
【0050】
回転角センサ441は、詳細には、下死点検出センサ441aと、出力軸回転ピックアップセンサ441bとで構成される。
【0051】
下死点検出センサ441aは、駆動装置40(モータ)の出力軸40aの回転方向の絶対角度を得るために必要となる基準位置を検出するためのゼロ点センサの一例である。植付爪36の先端が旋回運動の下死点となる位置を基準位置として検出する構成であるために、下死点検出センサ441aと呼んでいる。下死点検出センサ441aは、例えば、駆動装置40の出力軸40aの近傍に設けられる近接センサであってよい。当該近接センサは、駆動装置40の駆動により植付爪36が下死点となる位置で検出値が立ち上がるように調整されればよい。下死点検出センサ441aは、下死点の検出を実植付株間算出部303および出力軸位相算出部305へ出力する。
【0052】
出力軸回転ピックアップセンサ441bは、駆動装置40の出力軸40aに設置され、出力軸40aの回転数を検出する。下死点検出センサ441aと組み合わせて利用されることで、出力軸40aの絶対角度(回転角度、位相)を求めることができる。なお、出力軸回転ピックアップセンサ441bは、駆動装置40が自身の回転数を出力可能な構成である場合には、設けられなくてもよい。出力軸回転ピックアップセンサ441bは、検出した回転数を出力軸位相算出部305へ出力する。
【0053】
図7に示すように、制御装置3は、その機能として、CAN情報インターフェイス部301、目標植付株間算出部302、実植付株間算出部303、回転数補正係数算出部304、出力軸位相算出部305、位相遅れ補正部306、および、指示回転数決定部307を備える。
【0054】
CAN情報インターフェイス部301は、CAN(Controller Area Network)通信を利用して、田植機100が備えるセンサ24、44等を用いて得られる情報の取得を行う。CAN情報インターフェイス部301で取得される情報には、走行体1の速度、および、植付装置2Aにより植え付ける苗の単位面積当たりの設定株数が含まれる。CAN情報インターフェイス部301は、苗の単位面積当たりの設定株数を目標植付株間算出部302へ出力する。CAN情報インターフェイス部301は、走行体1の速度を実植付株間算出部303および位相遅れ補正部306へ出力する。
【0055】
目標植付株間算出部302は、苗の単位面積当たりの設定株数をCAN情報インターフェイス部301から取得し、設定株数に応じた株間を目標植付株間として算出する。目標植付株間算出部302は、算出した目標植付株間を回転数補正係数算出部304および位相遅れ補正部306へ出力する。
【0056】
実植付株間算出部303は、CAN情報インターフェイス部301から取得した走行体1の速度と、下死点検出センサ441aから取得した下死点検出情報とから、実際の苗の植付けにおける株間(実植付株間)を算出する。なお、実植付株間は、単に走行体の速度から、下死点が検出されてから次の下死点が検出されるまでの走行体1の移動距離を算出することにより得てよい。ただし、実植付株間の算出にあたって、走行体1のスリップを考慮したスリップ補正が行われてもよい。また、走行体1の速度から実植付株間を算出するのではなく、GPS(Global Positioning System)センサ等の位置センサを用いて実植付株間が算出されてもよい。実植付株間算出部303は、算出した実植付株間を回転数補正係数算出部304へ出力する。
【0057】
回転数補正係数算出部304は、実植付株間が目標植付株間に近づくように、駆動装置40の回転数を補正する補正係数を算出する。補正係数の算出には、予め準備された補正係数算出式やテーブルが利用されてよい。算出された補正係数は、駆動装置40の回転数の設定の補正に用いられる。すなわち、制御装置3は、植付部34(作業部)の作業設定に対する実作業のずれに応じて駆動装置40の駆動設定の補正を行う。本実施形態では、作業設定は、植付部34(作業部)が植え付ける苗の間隔(株間)の設定である。制御装置3は、作業設定における間隔と、実作業における間隔とのずれに応じて駆動設定の補正を行う。回転数補正係数算出部304は、算出した補正係数を指示回転数決定部307へ出力する。
【0058】
なお、本実施形態では、作業装置が植付装置2Aであるが、これは例示である。作業装置は、植付装置2Aに代えて、例えば播種装置であってもよい。この場合には、上述の作業設定は、播種装置の作業部が播種する種籾の間隔の設定であってよい。
【0059】
出力軸位相算出部305は、下死点検出センサ441aから取得した下死点検出情報と、出力軸回転ピックアップセンサ441bから取得した回転数情報とから、駆動装置40の出力軸40aの絶対角度である回転角(位相)を算出する。出力軸位相算出部305は、算出した出力軸40aの回転角を位相遅れ補正部306へ出力する。
【0060】
位相遅れ補正部306は、不等速回転を行わせるために実行される角速度の加減速における位相の遅れを補正する。位相遅れ補正部306は、出力軸位相算出部305から取得した駆動装置40の出力軸40aの回転角(位相)に基づき加減速の位相の遅れを補正する。すなわち、制御装置3は、回転角センサ441から得られる回転角の情報に基づき加減速の位相の遅れを補正する。本実施形態では、植付部34(ロータケース35)の回転角を直接取得するのではなく、回転角センサ441から得られる出力軸40aの回転角から植付部34の回転角を予測して位相の遅れを補正する構成となっている。回転角センサ441が植付部34の近傍に配置されない構成であるために、上述したように、加減速の位相遅れの補正を安価に実現することができる。
【0061】
位相遅れ補正部306は、CAN情報インターフェイス部301から取得した走行体1の速度にさらに基づき加減速の位相の遅れを補正する。すなわち、制御装置3は、走行体1の速度にさらに基づき加減速の位相の遅れを補正する。加減速の位相の遅れは、走行体1の速度に応じて生じることを考慮するものである。例えば駆動装置40の出力軸40aや植付部34の回転数は、走行体1の速度に応じて変動する。このために、加減速の位相の遅れを補正する際に、走行体1の速度に替えて、例えば、駆動装置40の出力軸40aや植付部34の回転数が用いられてもよい。特に、加減速の位相の遅れが生じる要因は、植付部34のイナーシャが支配的である。このために、加減速の位相の遅れは、走行体1の速度、駆動装置40の出力軸40aの回転数、或いは、植付部34の回転数から、再現性良く予想することができる。
【0062】
位相遅れ補正部306は、目標植付株間算出部302から取得した目標植付株間にさらに基づき加減速の位相の遅れを補正する。目標植付株間に応じて、不等速回転を行わせるために実行される角速度の加減速のパターンが決まることを考慮するものである。
【0063】
位相遅れ補正部306は、具体的には、取得した出力軸40aの回転角(位相)、走行体1の速度(車速)、および、目標植付株間と、補正用マップ5a(
図4参照)とを用いて、加減速の位相の遅れを補正できる出力回転数(出力軸40aの回転数)を求める。なお、補正用マップ5aは、出力軸40aの回転角、走行体1の速度、および、目標植付株間を軸とする3次元のマップであり、予め作成される。補正用マップ5aを用いることにより、例えば加減速の位相の遅れを取得することができる。取得した加減速の位相の遅れに応じて、位相の遅れを補正する補正値が決められる。予め作成された補正用マップ5aは、記憶装置5に記憶されている。すなわち、制御装置3は、記憶装置5に記憶される補正用マップ5aを用いて加減速の位相の遅れを補正する。位相遅れ補正部306は、求めた補正情報を指示回転数決定部307へ出力する。
【0064】
図8は、位相遅れ補正のイメージを示す模式図である。
図8において、横軸は位相(回転角)、縦軸は加減速比である。また、
図8において、破線はデフォルトの加減速パターンを示し、実線は位相遅れ補正部306による補正後の加減速パターンである。
図8に示すように、位相遅れ補正部306による補正により、デフォルトの加減速パターンに比べて位相を早めた加減速パターンにしたがって駆動装置40の出力軸40aが回転されることになる。
【0065】
指示回転数決定部307は、回転数補正係数算出部304から取得した駆動装置40の駆動設定に対する補正係数と、位相遅れ補正部306から取得した加減速の位相遅れを補正する補正情報とから、出力軸40aの回転数の最終指示値を決定する。駆動装置40は、指示回転数決定部307によって決定された最終指示値に従って出力軸40aを回転させる。
【0066】
なお、本実施形態では、制御装置3は、作業設定に基づき加減速の位相の遅れを補正する。このように構成すると、作業設定によって加減速の位相の遅れ方が異なっても、位相遅れを適切に補正することができる。詳細には、制御装置3は、複数の植付部34の使用数の設定(条止め設定)に基づき加減速の位相の遅れを補正する。植付部34の使用数によって加減速の位相の遅れ方が変化することを考慮するものである。加減速の位相の補正は、例えば、植付部34の使用数の設定毎に別々に準備される補正用マップ5aを用いて行われる。
【0067】
図9は、加減速の位相の遅れを補正する処理の一例を示すフローチャートである。
図9の処理は、例えば、単位面積当たりの株数が40株又は37株に設定された状態で植付装置2Aを用いた作業が行われる場合に実行される。
【0068】
ステップS1では、制御装置3は、各種の情報を取得する。具体的には、制御装置3は、外部から入力される情報を適宜処理して、目標植付株間、駆動装置40の出力軸40aの回転角(位相)、走行体1の速度(車速)、および、植付部34の使用数を取得する。なお、植付部34の使用数は、上述した条止めクラッチセンサからの情報を取得することによって得ることができる。各種の情報が取得されると、次のステップS2に処理が進められる。
【0069】
ステップS2では、制御装置3は、植付部34の使用数に応じて、使用する補正用マップ5aを選択する。本例では、記憶装置5に記憶される補正用マップ5aは、植付部34の使用数毎に別々に準備されている。すなわち、記憶装置5には、複数種類の補正用マップ5aが記憶されている。使用する補正用マップ5aが選択されると、次のステップS3に処理が進められる。
【0070】
ステップS3では、制御装置3は、選択した補正用マップ5aと、先に取得した目標植付株間、出力軸40aの位相、および、車速とを用いて、加減速の位相の遅れを補正する補正値を決定する。補正値が決定されると、目標植付株間と実植付株間とのずれから求まる出力軸40aの回転数に対する補正係数についても考慮して、駆動装置40に対する最終的な指示回転数が決定される。なお、
図9に示す処理は、作業装置2の駆動中において繰り返し行われる。
【0071】
また、本実施形態では、制御装置3は、補正用マップ5aのキャリブレーションを実施する。当該キャリブレーションは、例えば、操作装置4を用いた外部からの指令により実施されてよい。別の例として、田植機100のエンジンの始動時等に毎回自動的に実施されてもよい。補正用マップ5aのキャリブレーションが行われることにより、複数の田植機100間における加減速の位相遅れのばらつきの影響をなくして、位相遅れを適切に補正することができる。また、補正用マップ5aのキャリブレーションが行われることにより、作業車両100の経年変化による影響を抑制して、加減速の位相遅れを適切に補正することができる。
【0072】
図10は、補正用マップ5aのキャリブレーションの流れを例示するフローチャートである。
図10に示すキャリブレーションは、例えば、田植機100の工場出荷時や、田植機100を用いた作業の開始前に実施されてよい。なお、
図10に示すキャリブレーション処理は、補正用マップ5aを最初に作成した際の条件(デフォルトの補正用マップの作成条件)に、できる限り合わせて行われる必要がある。このような条件として、例えば、苗載台30に苗が載せられていないこと、駆動装置40に電力を供給するバッテリのSOC(State Of Charge)が一定値以上であること、各種のセンサ44等のデバイスに異常がないこと等が挙げられる。
【0073】
ステップS11では、制御装置3は、キャリブレーションの実施指令の有無を監視する。キャリブレーションの実施指令は、例えば操作装置4を利用して行われる。キャリブレーションの実施指令があった場合には(ステップS11でYes)、次のステップS12へ処理が進められる。キャリブレーションの実施指令がない場合には(ステップS11でNo)、ステップS11の処理が繰り返される。
【0074】
ステップS12では、制御装置3は、所定のキャリブレーションパターンで植付部34(作業部)を駆動させる。所定のキャリブレーションパターンは、例えば、駆動装置40を予め決めておいた任意の加減速パターンで駆動させるパターンである。所定のキャリブレーションパターンで駆動装置40を駆動させると、次のステップS13へ処理が進められる。
【0075】
ステップS13では、制御装置3は、所定のキャリブレーションパターンで駆動装置40を駆動させた際のトルク変動を取得する。トルク変動が取得されると、次のステップS14へ処理が進められる。
【0076】
ステップS14では、制御装置3は、ステップS13で取得したトルク変動と、予め準備しておいた基準トルク変動(代表値)とを比較して、トルク変動の位相差異を算出する。なお、基準トルク変動は、例えば、補正用マップ5aを作成した田植機100に所定のキャリブレーションパターンを実施させた場合に得られたトルク変動である。位相差異が算出されると、次のステップS15へ処理が進められる。
【0077】
ステップS15では、制御装置3は、ステップS14で求めたトルク変動の位相差異の分だけ、補正用マップ5aにおける位相のオフセットを行う。これにより、補正用マップ5aのキャリブレーションが終了する。位相のオフセットが行われたキャリブレーション後の補正用マップ5aを用いて、加減速の位相遅れの補正が行われる。
【0078】
<3.駆動装置等の異常判定>
次に、制御装置3によって実行される駆動装置40等の異常判定について説明する。なお、本実施形態では、駆動装置40等の異常には、経年劣化が含まれる。
図11は、駆動装置40等の異常判定に関わる制御装置3の機能を示すブロック図である。
図11に示すように、制御装置3は、その機能として、異常判定部308および報知処理部309を備える。異常判定部308および報知処理部309は、例えば、制御装置3を構成するプロセッサがプログラムに従った演算処理を実行することにより実現される。
【0079】
異常判定部308は、駆動装置40の駆動設定の補正に基づき駆動装置40の異常を判定する。すなわち、制御装置3は、駆動装置40の駆動設定の補正に基づき駆動装置40の異常を判定する。このような構成では、現在の補正の内容や、過去の補正履歴等を利用して駆動装置の異常を判定することができる。本実施形態においては、駆動装置40の駆動設定の補正は、上述した回転数補正係数算出部304(
図7参照)が求めた補正係数を利用して行われる補正のことを指す。
【0080】
異常判定部308(制御装置3)は、駆動設定を補正する補正値の設定回数に応じて駆動装置40の異常を判定してよい。当該異常は、特に経年劣化であってよい。例えば、補正係数のデフォルト値(初期値)を基準として補正係数が変更(アップデート)された回数が、例えば実験やシミュレーションに基づいて予め決定された所定回数を超えた場合に、駆動装置40の経年劣化が検出されてよい。また、別の例として、実験等に基づいて予め決定された所定量を超える補正が行われた回数が、実験等に基づいて予め決定された所定回数を超えた場合に、駆動装置40の経年劣化が検出されてもよい。
【0081】
また、異常判定部308(制御装置3)は、駆動設定を補正する補正量に応じて駆動装置40の異常を判定してよい。当該異常は、特に経年劣化であってよい。例えば、補正係数のデフォルト値を基準として実験等に基づいて予め決定された所定範囲から外れる補正係数が設定された場合に、駆動装置40の経年劣化が検出されてよい。また、別の例として、補正係数のデフォルト値を基準として実験等に基づいて予め決定された所定範囲から外れる補正係数が設定されることが、実験等に基づいて予め決定された所定期間内に所定回数を超えて生じた場合に、駆動装置40の経年劣化が検出されてもよい。
【0082】
また、異常判定部308(制御装置3)は、植付部34(作業部)の駆動時に得られるトルク情報に基づき駆動装置の異常を判定してもよい。トルク情報による異常判定は、駆動装置40以外のものの異常判定を含んでよい。例えば、取得したトルク変動が、記憶装置5に記憶されているデフォルトのトルク変動と差異があると判定される場合に、異常トルクが生じていることが検出されてよい。そして、この場合に、異常トルクが生じている箇所(位相領域等)から、故障発生箇所や経年劣化が検出されてよい。
【0083】
また、異常トルクは、デフォルトのトルクより大きくなる場合と小さくなる場合とのいずれの場合にも検出されてよい。例えば、デフォルトのトルクよりも実験等に基づいて決定される所定量以上小さなトルクを検出した場合に、経年劣化が検出されてよい。また例えば、デフォルトのトルクよりも実験等に基づいて決定される所定量以上大きなトルクを検出した場合に、苗マットの異常や、ベアリングやギア等の部品の故障等が検出されてよい。
【0084】
報知処理部309(制御装置3)は、異常判定部308により検出された異常を報知させる処理を行う。異常の報知は、例えば、異常を画面表示する表示装置や、異常を音声等の音で知らせる音出力装置等の報知装置を利用して行われる。すなわち、田植機100は、異常を知らせる報知装置を備える。異常を報知する構成とすることで、ユーザ(作業者)に異常の発生を素早く知らせることができる。また、異常を報知する構成とすることで、ユーザに異常の発生要因や発生箇所を知らせることもできる。
【0085】
図12は、駆動装置40の異常を報知する流れの一例を示すフローチャートである。
図12に示す処理は、例えば、植付装置2Aによる植付け作業の開始とともに実行される。
図12は、駆動装置40の駆動設定を補正する補正量に応じて駆動装置40の異常(例えば経年劣化)を判定する場合を想定する。
【0086】
ステップS21では、制御装置3は、変数Nをゼロに設定する。変数Nがゼロに設定されると、次のステップS22へ処理が進められる。
【0087】
ステップS22では、制御装置3は、上述の回転数補正係数算出部304(
図7参照)で算出される補正係数を取得したか否かを判定する。補正係数が取得されている場合(ステップS22でYes)、次のステップS23に処理が進められる。補正係数が取得されていない場合(ステップS22でNo)、ステップS22の処理が繰り返される。すなわち、ステップS22では、制御装置3は、補正係数の取得状態を監視する。
【0088】
ステップS23では、取得した補正係数が、補正係数のデフォルト値を基準として設定された所定範囲から外れているか否かが判定される。一例として、補正係数のデフォルト値が100%で、所定範囲が基準に対して±50%に設定されているとする。この場合、取得した補正係数がデフォルト値の150%よりも大きい値であると、所定範囲外となる。また、取得した補正係数がデフォルト値の50%よりも小さい値であると、所定範囲外となる。取得した補正係数がデフォルト値を基準として設定される所定範囲から外れている場合(ステップ23でYes)、ステップS24へ処理が進められる。取得した補正係数がデフォルト値を基準として設定される所定範囲から外れていない場合(ステップ23でNo)、ステップS22へ処理が戻される。
【0089】
ステップS24では、制御装置3は、変数Nに1を加算する処理を行う。変数Nに1を加算する処理が行われると、次のステップS25へ処理が進められる。
【0090】
ステップS25では、制御装置3は、変数Nが予め設定された所定回数を超えたか否かを判定する。変数Nが所定回数を超えた場合(ステップS25でYes)、次のステップS26へ処理が進められる。変数Nが所定回数を超えていない場合(ステップS25でNo)、ステップS22へ処理が戻される。
【0091】
ステップS26では、制御装置3は、異常を検出して、報知装置を利用した異常の報知を行わせる処理を行う。当該処理に応じて、報知装置が異常を知らせる報知を行う。作業者等のユーザは、例えば報知音やモニタ表示等により、駆動装置40の異常(経年劣化等)を認識する。
【0092】
<4.異常検出時の制御>
次に、走行体1や作業装置2において、駆動源14、40、50の駆動を停止させる必要がある異常が検出された場合に、制御装置3が行う制御処理の詳細について説明する。
【0093】
上述の説明からわかるように、本実施形態においては、各駆動源14、40、50は独立に制御可能である。ただし、作業装置2を用いた作業の実行時には、通常、各駆動源14、40、50は、制御装置3から指令により連動して駆動される。例えば、走行体1の車速が速くなるように第1駆動源14が制御された場合、これに連動して、駆動装置40(第2駆動源の一例)は植付部34の植付動作が速くなるように制御され、且つ、供給用モータ50(第2駆動源の他の例)は農業資材(本例では肥料)の供給速度が速くなるように制御される。駆動源14、40、50の駆動を停止させる必要がある異常が検出された場合に、異常が検出されていない駆動源を異常が生じた駆動源と連動させて即座に駆動停止させると、不具合が生じることがある。制御装置3は、この不具合を解消する制御を行う構成になっている。
【0094】
なお、駆動源14、40、50の駆動を停止させる必要がある異常としては、例えば、以下のような異常が挙げられる。第1駆動源14の駆動を停止させる必要がある異常としては、例えば、出力軸の回転速度異常、トルク異常、又は、温度(油温や水温)異常等が挙げられる。これらの異常は、上述のように、第1異常検出装置23により検出することができる。また、第2駆動源(具体的には駆動装置40および供給用モータ50)の駆動を停止させる必要がある異常としては、例えば、モータの電圧や電流の異常、モータの温度異常、又は、バッテリ状態の異常等が挙げられる。これらの異常は、上述のように、第2異常検出装置43、53により検出することができる。
【0095】
本実施形態では、制御装置3は、作業装置2に異常を検出した場合に第1駆動源14に第1制御を実行する。制御装置3は、走行体1に異常を検出した場合に少なくとも一つの第2駆動源40、50に第1制御と異なる第2制御を実行する。作業装置2に異常を検出した場合の走行体1に対する制御と、走行体1に異常を検出した場合の第2駆動源40、50の少なくとも一つに対する制御とを異ならせることで、異常検出時における走行体1および作業装置2の動作を適切な動作とすることができる。なお、制御装置3は、異常を検出した走行体1および作業装置2に対しては、駆動源14、40、50の駆動を即座に停止させる停止制御を実行する。当該停止制御は、強制停止制御と言ってもよい。
【0096】
詳細には、第1制御は、所定速度まで減速させる減速処理と、減速処理後に駆動停止させる駆動停止処理とを含む。すなわち、第1制御は、複数段階の制御処理を含む。これにより、強制停止とは異なる制御を行うことができ、駆動源の急停止を避けることができる。なお、本例では減速処理は一種類であるが、減速処理が複数種類含まれてもよい。また、本例における駆動源の速度は、回転速度を指している。
【0097】
減速処理は、駆動源の速度設定を、単純に所定速度に設定する処理であってよい。ただし、減速処理は、駆動源の速度を所定の減速度(負の加速度)で減速させながら所定速度とする構成であってもよい。所定速度は、予め設定された固定値であってもよいが、ユーザ等が適宜変更できる設定変更可能な値であってもよい。また、所定の減速度で減速させる例における所定の減速度についても、予め設定された固定値であってもよいが、ユーザ等が適宜変更できる設定変更可能な値であってもよい。
【0098】
第1制御における駆動停止処理は、減速処理によって目標速度となった後、任意の時間の経過後に開始されてよい。任意の時間は、実験等に基づいて決められた固定値であってよい。ただし、任意の時間は、ユーザ等が適宜設定可能であってもよい。駆動停止処理は、単純に駆動源の駆動を即座に停止させる処理であってよい。ただし、駆動停止処理は、例えば、速度を所定の減速度で低下させながら駆動停止させる処理であってもよい。この場合、所定の減速度は、予め設定された固定値であってもよいが、ユーザ等が適宜変更できる設定変更可能な値であってもよい。
【0099】
なお、第1制御は、上述した制御処理以外であってもよく、例えば、設定速度を複数変更することで連続的或いは段階的に速度を低下させながら、駆動停止させる処理であってもよい。
【0100】
また、第2制御は、所定速度まで減速させる減速処理を行うことなく、駆動停止させる処理である。すなわち、第2制御では、第1制御における減速処理を省略して、単に第1制御における駆動停止処理のみが行われる。なお、駆動停止処理が、単純に駆動源の駆動を即座に停止させる処理である場合、第2制御は、上述の、異常が生じた駆動源に対して実行される強制停止制御と同じである。ただし、駆動停止処理が上述した速度を所定の減速度で低下させながら駆動停止させる処理である場合、第2制御は、強制停止制御とは異なる。
【0101】
以下、駆動源14、40、50の駆動を停止させる必要がある異常が検出された場合に、制御装置3が行う制御処理の具体例について、2つの実施例を挙げて説明する。なお、当該異常の検出に応じた制御以外に、制御装置3は、例えば条止め設定等の作業設定に応じた第3制御を実行してよい。第3制御は、駆動源14、40、50に対して駆動停止を伴わない制御処理を行わせる制御である。第3制御は、例えば、駆動源14、40、50の回転速度、トルク、モータ電圧、モータ電流、或いは、油圧等を制限する制御であってよい。例えば、条止めにより植付部34の使用数が減らされた場合に、第3制御としてトルク制限が行われる構成としてよい。このような構成とすることで、省エネ化を図ることができる。
【0102】
[4-1.第1実施例]
まず、第1実施例について説明する。なお、第1実施例では、作業装置2は、互いに別々の第2駆動源40、50を有する植付装置2Aおよび資材供給装置2Bを含む。
図13は、異常検出時の制御装置3の制御パターンの第1実施例を示す図である。
図13は、異常発生部位と、当該異常発生部位に異常が発生した場合における各駆動源の制御内容との関係を示す。
【0103】
なお、
図13における異常とは、駆動源14、40、50の駆動を停止させる必要がある異常である。
図13においては、異常発生部位の駆動源は、制御装置3により強制停止制御が実行される。また、
図13における走行体駆動源は、走行体1が備える第1駆動源14のことである。
図13における植付装置駆動源は、第2駆動源の一例であり、植付装置2Aが備える駆動装置40のことである。
図13における資材供給装置駆動源は、第2駆動源の他の例であり、資材供給装置2Bが備える供給用モータ50のことである。
【0104】
図13に示す第1実施例においては、制御装置3は、走行体1に異常を検出した場合に複数種類の作業装置2A、2Bが含む各第2駆動源40、50に第2制御を実行する。すなわち、走行体1に異常が検出された場合に、全ての作業装置2A、2Bの第2駆動源40、50に対して第2制御が実行されることになる。
【0105】
第2制御は、上述のように、駆動源の駆動を停止させる駆動停止処理である。このために、第1実施例では、走行体1に異常が検出された場合に、走行体1の第1駆動源14の駆動の停止に連動させて、植付装置2Aの駆動装置40、および、資材供給装置2Bの供給用モータ50に対して駆動停止処理が実行される。これによれば、走行体1の走行停止に合わせて駆動装置40および供給用モータ50の駆動が停止されるので、苗および農業資材(本例では肥料)が無駄に消費されることを抑制することができる。
【0106】
なお、本例では、走行体1に異常が検出された場合に、第1駆動源14、駆動装置40、および、供給用モータ50のいずれについても、駆動停止処理が実行されることになるが、駆動停止処理の具体的な処理内容は、駆動源ごとに異なってもよい。各駆動源に対する駆動停止のさせ方は、ユーザ等が適宜設定できる構成であってもよい。例えば、駆動装置40や供給用モータ50は、異常が検出された走行体1の場合と比べて、減速度を小さくして駆動停止させる構成としてもよい。
【0107】
また、
図13に示す第1実施例においては、制御装置3は、複数種類の作業装置2A、2Bのいずれかに異常を検出した場合に、第1駆動源14に第1制御を実行し、異常が生じた作業装置2以外の全ての作業装置2が含む第2駆動源に第2制御を実行する。すなわち、複数種類の作業装置2のいずれかに異常が検出された場合、異常が検出されていない走行体1および作業装置2の間で、異なった駆動源の制御方式が実行される。
【0108】
具体的には、植付装置2Aに異常が検出された場合、制御装置3は、第1駆動源14に対して第1制御を実行する。第1制御は、上述のように、減速処理と駆動停止処理とを含む複数段階(本例では2段階)の制御である。このため、植付装置2Aに異常が検出された場合、走行体1については、強制停止される植付装置2Aとは異なり、ゆっくりと停止させることができる。この結果、田植機100に乗る作業者が田植機100から脱落することを防止できる。すなわち、田植機100の安全性を向上することができる。
【0109】
また、植付装置2Aに異常が検出された場合、制御装置3は、供給用モータ50に対して第2制御(駆動停止処理)を実行する。すなわち、植付装置2Aに異常が検出された場合、資材供給装置2Bによる農業資材の供給は素早く停止される。このために、農業資材(本例では肥料)が無駄に消費されることを回避することができる。
【0110】
また、資材供給装置2Bに異常が検出された場合においても、制御装置3は、第1駆動源14に対して第1制御(減速処理、および、減速処理後の駆動停止処理)を実行する。これにより、田植機100の急停止を避けて、乗員が田植機100から脱落することを防止できる。
【0111】
また、資材供給装置2Bに異常が検出された場合、制御装置3は、駆動装置40に対して第2制御を実行する。すなわち、資材供給装置2Bに異常が検出された場合、植付装置2Aによる苗の供給は素早く停止される。このために、苗が無駄に消費されることを回避することができる。また、農業資材の供給停止に合わせた苗の植付の停止により、農業資材(本例では肥料)が圃場に供給されていない区間を視認可能とすることができる。
【0112】
[4-2.第2実施例]
次に、第2実施例について説明する。なお、第2実施例においても、第1実施例と同様に、作業装置2は、互いに別々の第2駆動源40、50を有する植付装置2Aおよび資材供給装置2Bを含む。
図14は、異常検出時の制御装置3の制御パターンの第2実施例を示す図である。
図14は、異常検出時における各駆動源の制御内容について
図13と相違点を有するが、その他の点に関しては、
図13の場合と同様である。
図14に関わる説明に際して、
図13に関わる説明の内容と重複する内容については、原則として説明を省略する。
【0113】
図14に示す第2実施例においては、制御装置3は、走行体1に異常を検出した場合に、複数種類の作業装置2A、2Bの種類に応じて第1制御又は第2制御を選択し、各第2駆動源40、50に選択した制御を実行する。すなわち、走行体1に異常が検出された場合に、それに応じて作業装置2の駆動源に対して実行すべき制御の内容が、作業装置2の種類に応じて選択される。このために、作業装置2の種類に応じた緻密な制御を行うことができる。
【0114】
詳細には、走行体1に異常が検出された場合、制御装置3は、植付装置2Aが有する駆動装置40に対して第2制御(駆動停止処理)を選択して実行する。これにより、無駄な苗の消費を抑制することができる。また、走行体1に異常が検出された場合、制御装置3は、資材供給装置2Bが有する供給用モータ50に対して第1制御(減速処理、および、それに続く駆動停止処理)を選択して実行する。これにより、供給用モータ50の急激な停止を回避して、機械類へのダメージを低減することができる。なお、場合によっては、走行体1に異常が検出された場合に、駆動装置40に対して第1制御が実行されてよい。そして、走行体1に異常が検出された場合に、供給用モータ50に対して第2制御が実行されてよい。
【0115】
また、
図14に示す第2実施例においては、制御装置3は、複数種類の作業装置2A、2Bのいずれかに異常を検出した場合に、第1駆動源14に第1制御を実行する。また、制御装置3は、異常が生じた作業装置2以外の作業装置2については、作業装置2の種類に応じて第1制御又は第2制御を選択し、各第2駆動源に選択した制御を実行する。
【0116】
具体的には、植付装置2Aに異常が検出された場合、制御装置3は、第1駆動源14に対して第1制御(減速処理、および、それに続く駆動停止処理)を実行する。このため、植付装置2Aに異常が検出された場合、走行体1は、強制停止される植付装置2Aとは異なり、ゆっくりと停止させることができる。この結果、田植機100に乗る作業者が田植機100から脱落することを防止できる。
【0117】
また、植付装置2Aに異常が検出された場合、制御装置3は、供給用モータ50に対して第1制御(減速処理、および、それに続く駆動停止処理)を選択して実行する。これにより、緩やかに農業資材(本例では肥料)の供給量を減少させることができ、走行体1の停止に伴って局所的に農業資材の供給量が多くなる箇所の発生を抑制することができる。この結果、作物の生育にばらつきが生じることを低減することができる。
【0118】
また、資材供給装置2Bに異常が検出された場合においても、制御装置3は、第1駆動源14に対して第1制御(減速処理、および、減速処理後の駆動停止処理)を実行する。これにより、田植機100の急停止を避けて、乗員が田植機100から脱落することを防止できる。
【0119】
また、資材供給装置2Bに異常が検出された場合、制御装置3は、駆動装置40に対して第2制御(駆動停止処理)を選択して実行する。これにより、苗が無駄に消費されることを回避することができる。また、農業資材の供給停止に合わせた苗の植付の停止により、農業資材が圃場に供給されていない区間を視認可能とすることができる。
【0120】
<5.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0121】
<6.付記>
例示的な本発明の作業車両は、走行体と、前記走行体に支持される作業装置と、前記作業装置の作業部を回転させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記作業部が一回転中における角速度を加減速させる不等速回転を行う際に、前記加減速の位相の遅れを補正する構成(第1の構成)であってよい。
【0122】
上記第1の構成の作業車両は、前記作業部の回転角を検出、又は、予測可能とするセンサを備え、前記制御装置は、前記センサから得られる前記回転角の情報に基づき前記加減速の位相の遅れを補正する構成(第2の構成)であってよい。
【0123】
上記第2の構成の作業車両において、前記制御装置は、前記走行体の速度に応じて前記作業部の回転速度を変化させ、前記制御装置は、前記走行体の速度にさらに基づき前記加減速の位相の遅れを補正する構成(第3の構成)であってよい。
【0124】
上記第2又は第3の構成の作業車両において、前記制御装置は、記憶装置に記憶される補正用マップを用いて前記加減速の位相の遅れを補正する構成(第4の構成)であってよい。
【0125】
上記第4の構成の作業車両において、前記制御装置は、前記補正用マップのキャリブレーションを実施する構成(第5の構成)であってよい。
【0126】
上記第1から第5のいずれかの構成の作業車両は、前記作業部の圃場に対する作業設定を変更可能に設けられ、前記制御装置は、前記作業設定に基づき前記加減速の位相の遅れを補正する構成(第6の構成)であってよい。
【0127】
上記第6の構成の作業車両において、前記作業装置は、複数の条に対する植付けを同時に実行可能とする複数の植付部を前記作業部として有する植付装置であり、前記作業設定は、前記複数の植付部の使用数の設定である構成(第7の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0128】
1・・・走行体
2・・・作業装置
2A・・・植付装置
3・・・制御装置
5・・・記憶装置
5a・・・補正用マップ
34・・・植付部(作業部)
40・・・駆動装置
100・・・田植機(作業車両)
441・・・回転角センサ(センサ)