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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005195
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】梁部材の部材種別の決定方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20250108BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
E04B1/24 L
E04B1/58 508S
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105279
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 寛二
(72)【発明者】
【氏名】船積 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】辻 一輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 重仁
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG50
2E125BB01
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF06
2E125CA05
2E125CA06
2E125CA14
(57)【要約】
【課題】高力ボルトによる摩擦接合の継手及びブラケットに付与する耐力と中央材の塑性変形能力との関係を明確にすることで、梁部材の変形性能を評価するための部材種別を決定することができる梁部材の部材種別の決定方法を提供する。
【解決手段】材端部に中央材とブラケットとを接続する高力ボルトによる摩擦接合の継手が設けられる梁部材の部材種別の決定方法である。
そして、中央材の幅厚比種別を設定するステップと、継手及びブラケットの性能を接合部係数に基づいて決定するステップと、幅厚比種別と接合部係数に基づいて梁部材の部材種別を決定するステップとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材端部に中央材とブラケットとを接続する高力ボルトによる摩擦接合の継手が設けられる梁部材の部材種別の決定方法であって、
前記中央材の幅厚比種別を設定するステップと、
前記継手及び前記ブラケットの性能を接合部係数に基づいて決定するステップと、
前記幅厚比種別と前記接合部係数とに基づいて前記梁部材の部材種別を決定するステップとを備えたことを特徴とする梁部材の部材種別の決定方法。
【請求項2】
前記接合部係数は、前記中央材が全塑性に到達した後のひずみ硬化による応力上昇率と、前記継手及び前記ブラケットに使用する鋼材の降伏強さ及びすべり耐力の統計値とによって決定し、
前記梁部材の部材種別ごとにも応力上昇率を設定することを特徴とする請求項1に記載の梁部材の部材種別の決定方法。
【請求項3】
鉄骨柱から張り出されたブラケットと、
鉄骨柱側が拡幅されて中央材側が中央材幅に形成される添板と、
前記添板の前記鉄骨柱側の端部を前記ブラケットに接合させるとともに、前記添板の前記中央材側の端部を前記中央材に接合させる複数の高力ボルトとを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の梁部材の部材種別の決定方法。
【請求項4】
前記中央材側の前記高力ボルトの少なくとも2列目までを並列配置にしたことを特徴とする請求項3に記載の梁部材の部材種別の決定方法。
【請求項5】
鉄骨柱に柱幅より幅の狭い梁部材を接続させる鉄骨柱梁接合構造であって、
前記鉄骨柱から張り出されたブラケットと、
鉄骨柱側が拡幅されて前記梁部材の中央材側が中央材幅に形成される添板と、
前記添板の前記鉄骨柱側の端部を前記ブラケットに接合させるとともに、前記添板の前記中央材側の端部を前記梁部材の中央材に接合させる複数の高力ボルトとを備え、
前記中央材側の前記高力ボルトの少なくとも2列目までを並列配置にしたことを特徴とする鉄骨柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材端部に中央材とブラケットとを接続する高力ボルトによる摩擦接合の継手が設けられる梁部材の部材種別の決定方法及び鉄骨柱梁接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造架構では、特許文献1,2に開示されているように、柱梁接合部の通しダイアフラムを平面的に拡張してブラケットとする工法が知られている。これらの文献に記載された梁部材の材端部の継手部では、柱から最も遠い高力ボルト接合のボルト孔位置(以下、「第1ボルト位置」という。)が塑性化領域の起点となるように設計がされている。すなわち地震荷重時に、梁部材の中央材側のみを塑性化させるようにしている。
【0003】
ところで、特許文献1,2の鉄骨造架構の構造設計の二次設計をルート3(「2020年版 建築物の構造関係技術基準解説書」、建築物の構造関係技術基準解説書編集委員会、2020.10)の耐震設計とする場合、在来の鉄骨梁を使用した鉄骨造架構の構造設計と同様に、必要保有水平耐力を部材群の種別(以下、「部材種別」という。)に応じた構造特性係数Dsによって求めることになる。そして、構造特性係数Dsは、部材の塑性変形能力に応じた部材種別によって、その値が定められている。
【0004】
鉄骨梁部材の部材種別は、昭和55年建設省告示第1792号第3第二号に示されているように、梁部材の幅厚比に応じてFA、FB、FC、FDの種別が与えられていて、構造設計では、設計対象となる梁部材のフランジ及びウェブの幅厚比によって部材種別(以下、「幅厚比種別」という。)を定めることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4770096号公報
【特許文献2】特開2020-94344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2の鉄骨造架構では、地震力等の水平力が作用した際の曲げモーメントが大きくなる材端部に高力ボルト摩擦接合の継手が位置しているため、比較的早期に継手にすべりが生じると、梁部材の中央材(鉄骨梁)の塑性変形能力を充分に発揮させることができないおそれがある。
【0007】
要するに、継手やブラケットに付与する耐力と中央材の塑性変形能力との関係が明らかでなければ、梁部材全体の変形性能を正確に評価することはできないが、特許文献1,2にはそのような開示がされていない。
【0008】
そこで本発明は、高力ボルトによる摩擦接合の継手及びブラケットに付与する耐力と中央材の塑性変形能力との関係を明確にすることで、梁部材の変形性能を評価するための部材種別を決定することができる梁部材の部材種別の決定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の梁部材の部材種別の決定方法は、材端部に中央材とブラケットとを接続する高力ボルトによる摩擦接合の継手が設けられる梁部材の部材種別の決定方法であって、前記中央材の幅厚比種別を設定するステップと、前記継手及び前記ブラケットの性能を接合部係数に基づいて決定するステップと、前記幅厚比種別と前記接合部係数とに基づいて前記梁部材の部材種別を決定するステップとを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記接合部係数は、前記中央材が全塑性に到達した後のひずみ硬化による応力上昇率と、前記継手及び前記ブラケットに使用する鋼材の降伏強さ及びすべり耐力の統計値とによって決定し、前記梁部材の部材種別ごとにも応力上昇率を設定することができる。
【0011】
そして、前記継手部は、鉄骨柱から張り出されたブラケットと、鉄骨柱側が拡幅されて中央材側が中央材幅に形成される添板と、前記添板の前記鉄骨柱側の端部を前記ブラケットに接合させるとともに、前記添板の前記中央材側の端部を前記中央材に接合させる複数の高力ボルトとを備えている構成にすることができる。
【0012】
前記中央材側の前記高力ボルトの少なくとも2列目までを並列配置にすることが好ましい。例えば、継手の中央材側の高力ボルトの配置を千鳥配置とする場合に、第1ボルト位置と第2ボルト位置の高力ボルトの並びは、並列配置とすることが好ましい。
【0013】
また、鉄骨柱梁接合構造の発明は、鉄骨柱に柱幅より幅の狭い梁部材を接続させる鉄骨柱梁接合構造であって、前記鉄骨柱から張り出されたブラケットと、鉄骨柱側が拡幅されて前記梁部材の中央材側が中央材幅に形成される添板と、前記添板の前記鉄骨柱側の端部を前記ブラケットに接合させるとともに、前記添板の前記中央材側の端部を前記梁部材の中央材に接合させる複数の高力ボルトとを備え、前記中央材側の前記高力ボルトの少なくとも2列目までを並列配置にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の梁部材の部材種別の決定方法では、中央材の塑性変形能力を表す幅厚比種別と継手及びブラケットの性能を表す接合部係数とに基づいて、梁部材の部材種別を決定する。
【0015】
このように、高力ボルトによる摩擦接合の継手及びブラケットに付与する耐力と中央材の塑性変形能力との関係を明確にするのであれば、中央材の塑性変形能力を充分に発揮させたいなどといった設計思想に応じて、梁部材の変形性能を評価するための部材種別を決定することができる。
【0016】
また、鉄骨柱梁接合構造の発明においては、例えば中央材と添板の摩擦接合の高力ボルトの配置を千鳥配置とする場合であっても、第1ボルト位置(中央材側の1列目)と第2ボルト位置(中央材側の2列目)の高力ボルトの並びを並列配置とすることで、中央材のフランジの塑性化による第2ボルト位置以降の高力ボルトの張力の過度な低下を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法の概要を示した説明図である。
図2】本実施の形態の鉄骨柱梁接合構造の構成を示した斜視図である。
図3】鉄骨柱に接続される梁の材端部の構成と塑性化領域とを示した説明図である。
図4】鉄骨柱に接続される梁の材端部の構成を示した側面図である。
図5】梁に設定される部材種別を説明する図であって、(a)はFA相当の説明図、(b)はFB相当の説明図である。
図6】梁に設定される部材種別を説明する図であって、(a)はFC相当の説明図、(b)はFD相当の説明図である。
図7】中央材が最大耐力に達したときの梁の各部に作用する曲げモーメントと継手の降伏曲げ耐力及びすべり耐力との関係を模式的に表した説明図である。
図8】各部材種別の梁に要求される塑性率の中央値に対して応力上昇率を設定することの説明図である。
図9】各部材種別ごとの塑性率と応力上昇率との関係を示した説明図である。
図10】各部材種別ごとの接合部係数を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法の概要を示した説明図である。また、図2は、本実施の形態の鉄骨柱梁接合構造1の構成を示した斜視図である。さらに、図3及び図4は、鉄骨柱梁接合構造1の鉄骨柱2に接続される梁の材端部の構成と塑性化領域とを示した説明図と側面図である。
【0019】
本実施の形態の説明で使用する鉄骨柱梁接合構造1は、図2に示すように、柱部材である鉄骨柱2に、柱幅より幅の狭い中央材3を接続させる交差部に設けられる。ここで、梁部材となる梁11は、鉄骨柱2から張り出されたブラケット13と中央材3とを接続する継手12と、継手12から他方の柱などに向けて延伸される中央材3とによって主に構成される。図3,4では、説明を簡単にするために、図2の一方向の梁11と鉄骨柱2のみを抜き出して示している。
【0020】
鉄骨柱2には、平面視略正方形を含む略長方形の角形鋼管、円形鋼管、溶接組立箱形断面などの鉄骨を使用することができる。また、鋼管の内部にコンクリートを充填したコンクリート充填鋼管柱(CFT :Concrete Filled Tube)を、鉄骨柱2とすることもできる。
【0021】
梁11との交差部においては、鉄骨柱2の内部は、鋼板によって形成される通しダイアフラム4によって塞がれる。通しダイアフラム4は、交差部の上部と下部に間隔を置いて配置される。通しダイアフラム4が設けられた鉄骨柱2の交差部は、既製品を用いてもよいし、溶接によって組み立てることもできる。
【0022】
通しダイアフラム4は、鉄骨柱2の内部を貫通する貫通部41と、外部に張り出されるブラケットフランジ42とが、一枚の一体の鋼板によって形成されている。例えば、平面視略八角形の鋼板によって形成された通しダイアフラム4では、内縁が略正方形で外縁が略八角形の鉄骨柱2の側方に張り出された環状部分が、ブラケットフランジ42となる。
【0023】
鉄骨柱2の交差部の上下から張り出された通しダイアフラム4のブラケットフランジ42間は、側面視略長方形の鋼板によって形成されるブラケットウェブ43によって繋がれる(図2,4参照)。
【0024】
ブラケットウェブ43は、鉄骨柱2の側面からの張り出し量がブラケットフランジ42と同じで、鉄骨柱2の各側面に配置される。そして、ブラケットウェブ43は、鉄骨柱2の側面と上部のブラケットフランジ42の下面と下部のブラケットフランジ42の上面とに、隅肉溶接によって接合される。ブラケットフランジ42及びブラケットウェブ43には、高力ボルトや超高力ボルトを通すためのボルト孔が、複数、穿孔される。ボルト孔の数や位置などは、任意に設定することができる。
【0025】
ブラケットフランジ42及びブラケットウェブ43は、接続する梁11の中央材3の各部の位置に合わせて設けられる。中央材3は、例えばH形鋼などの鉄骨によって形成される梁本体(鉄骨梁)で、上フランジ31と、下フランジ32と、それらを繋ぐウェブ33とを備えている。ここで、ブラケットフランジ42の厚さは、中央材3のフランジ(31,32)の厚さと同等以上にし、ブラケットウェブ43の厚さは、中央材3のウェブ33の厚さと同等以上にする。
【0026】
上部の通しダイアフラム4のブラケットフランジ42は、中央材3の上フランジ31と突き合わせる位置に設けられ、下部の通しダイアフラム4のブラケットフランジ42は、中央材3の下フランジ32と突き合わせる位置に設けられる。そして、ブラケットウェブ43は、中央材3のウェブ33と突き合わせる位置に設けられる。
【0027】
すなわち、本実施の形態の通しダイアフラム4は、在来技術における一般的な「通しダイアフラムとしての機能」と、中央材3を接続するための「梁ブラケットとしての機能」とを備えている。そこで、ブラケットフランジ42とブラケットウェブ43とをまとめて、ブラケット13と呼ぶこととする。
【0028】
中央材3の軸方向端部の上フランジ31、下フランジ32及びウェブ33には、高力ボルトや超高力ボルトを通すためのボルト孔が、複数、穿孔される。ボルト孔の数や位置などは、任意に設定することができる。
【0029】
このようにして突き合せられるブラケットフランジ42と中央材3とは、添板5を介して、超高力ボルトを含む高力ボルト6によって摩擦接合される。要するに、添板5の鉄骨柱側の端部は、通しダイアフラム4のブラケットフランジ42に接合され、添板5の中央材側の端部は、中央材3の端部に接合される。
【0030】
また、添板5は、鉄骨柱側が拡幅されて中央材側が中央材幅となるように鋼板によって形成される。すなわち、上部の通しダイアフラム4のブラケットフランジ42と中央材3の上フランジ31との上面間に架け渡される添板5は、鉄骨柱2に隣接する縁部の幅が中央材幅よりも拡幅され、中央材側の縁部が中央材幅にされた平面視略台形状に形成される。下部の通しダイアフラム4のブラケットフランジ42と中央材3の下フランジ32との下面間に架け渡される添板5も、同様の平面視略台形状に形成される。
【0031】
これに対して、添板5と上フランジ31又は下フランジ32を挟んで対向させる対向側添板51(図4参照)は、中央材3のウェブ33の両側にそれぞれ配置できるように、添板5の幅の半分以下の幅に形成される。対向側添板51は、添板5と同じ厚さでなくてもよく、任意の厚さに設定することができる。
【0032】
また、ブラケットウェブ43と中央材3のウェブ33との両方の側面間にそれぞれ架け渡されるウェブ側添板52は、中央材3のウェブ33よりも低い高さの側面視略長方形に、鋼板によって形成される。
【0033】
添板5、対向側添板51及びウェブ側添板52には、高力ボルトや超高力ボルトを通すためのボルト孔が、複数、穿孔される。ボルト孔の数や位置などは、中央材3の上フランジ31、下フランジ32、ウェブ33、ブラケットフランジ42及びブラケットウェブ43のボルト孔の数や位置と一致させる。
【0034】
続いて、鉄骨柱梁接合構造1の梁11の着目断面について、図3,4を参照しながら説明する。
鉄骨柱梁接合構造1の梁11は、中央材3の第1ボルト位置(A断面位置(鉄骨柱2から最も離れた高力ボルト6による高力ボルト接合のボルト孔位置))で降伏するように設計される。そして、第1ボルト位置(中央材側の1列目)に隣接する中央材3の部分に、スパン中央側に向かって塑性化領域が形成される。
【0035】
ここで、上フランジ31及び下フランジ32に配置される高力ボルト6を千鳥配置とする場合は、中央材3のフランジ(31,32)の塑性化による第2ボルト位置(中央材側の2列目)以降の高力ボルト6の張力の過度な低下を抑制することを意図して、第1ボルト位置と第2ボルト位置の高力ボルト6の並びを、図2及び図3に示すように、並列配置とすることが好ましい。また、ブラケットフランジ42と添板5の摩擦接合の高力ボルト6の配置についても、並列配置としてよい。
【0036】
また、中央材3の第1ボルト位置のA断面に対して、中央材3のフランジ(31,32)と添板5とを接合する高力ボルト6のうち、中央材3の端部に最も近いボルト位置の断面を、B断面とする。さらに、ブラケットフランジ42と添板5とを接合する高力ボルト6のうち、中央材3の端部に最も近い継手12のボルト位置の断面をD断面とし、B断面とD断面の中間点の断面をC断面とする。そして、鉄骨柱2に最も近い高力ボルト6のボルト位置の断面を、E断面とする。
【0037】
次に、本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法について説明する。
本実施の形態では、上述した鉄骨柱梁接合構造1の継手12を有する梁11を例にして、梁11の変形性能を評価するための部材種別の決定方法について説明する。
【0038】
背景技術で述べたように、鉄骨造のルート3の耐震設計における構造特性係数Dsは、「昭和55年建設省告示第1792号第3第二号」に定められているFA-FDの部材種別ごとに与えられている。このため、上述した本実施の形態の継手12を有する梁11が設けられる鉄骨柱梁接合構造1をルート3で耐震設計する場合にも、在来の鉄骨梁部材と同様に梁11の部材種別を定めておく必要がある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、梁11の部材種別の区分を、FA相当、FB相当、FC相当、FD相当と定義する。FA相当-FD相当の部材種別に区分される梁11は、「昭和55年建設省告示第1792号第3第二号」におけるFA-FDに区分される在来の鉄骨梁部材と同等の塑性変形能力を発揮できると定義する。
【0040】
図5及び図6は、梁11の部材種別の決定方法を模式的に表現したものである。梁11では、中央材3がA断面位置で全塑性に至った後は、在来工法と同様に中央材3のひずみ硬化による応力上昇によって曲げモーメントが上昇する。そして、その後の挙動は、本願発明者が行った実験結果に基づくと、次の2種類が考えられる。
【0041】
まず中央材3の幅厚比種別がFAの場合を考えると、継手12及びブラケット13の降伏曲げ耐力、並びに継手12のすべり耐力が「FAの中央材3で想定する最大変形時の耐力」を上回る場合は、図5(a)に示すように、梁11はFA相当の塑性変形能力を発揮できる。
【0042】
一方、継手12及びブラケット13の降伏曲げ耐力、並びに継手12のすべり耐力が「FAの中央材3で想定する最大変形時の耐力」を下回る場合は、図5(b)、図6(a)、図6(b)に示すように、梁11全体としての塑性変形能力は、FAの中央材3に対して期待されている値には満たない。すなわち、中央材3の幅厚比種別がFAであっても、継手12の降伏曲げ耐力と、ブラケット13の降伏曲げ耐力と、継手12のすべり耐力とによって、梁11全体としての部材種別が、FB相当、FC相当又はFD相当になる場合もある。
【0043】
詳細には、図5(b)に示すように、FBで想定する塑性変形能力発揮後に継手12が降伏するか、ブラケット13が降伏するか、あるいは継手12がすべる場合は、梁11の部材種別はFB相当になる。一方、図6(a)に示すように、FCで想定する塑性変形能力発揮後に継手12が降伏するか、ブラケット13が降伏するか、あるいは継手12がすべる場合は、梁11の部材種別はFC相当になる。そして、図6(b)に示すように、中央材3が全塑性に至った後に、継手12が降伏するか、ブラケット13が降伏するか、あるいは継手12がすべる場合は、梁11の部材種別はFD相当になる。
【0044】
要するに、梁11の部材種別がFA相当-FD相当であるとは、中央材3がFA-FDに相当する塑性変形能力を発揮するまで、継手12の降伏、高力ボルト6の摩擦接合部のすべり及びブラケット13の降伏が生じないことを意味する。
【0045】
そして、梁11の各部材種別(FA相当-FD相当)における「想定する最大変形時の耐力」は、図5,6に示したように、全塑性モーメントMpに接合部係数αを乗じることで決定する。すなわち、梁11の部材種別は、接合部係数αによって決定されることになる。
【0046】
図1は、上記をまとめた本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法の概要を示した説明図である。この図に示すように、「中央材3の幅厚比種別がFAであっても、継手12の降伏曲げ耐力と、ブラケット13の降伏曲げ耐力と、継手12のすべり耐力とによって、梁11の部材種別がFB相当、FC相当あるいはFD相当となる」場合があることを、模式的に表したものである。
【0047】
要するに、設計者が継手12とブラケット13の設計時に選択する接合部係数αによって、梁11の部材種別が決まると言える。この考え方は、従来にはないもので、特許文献1,2だけでなく、梁継手の設計方法についてまとめられている学会指針類においても見受けられない。
【0048】
続いて、本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法における接合部係数αの設定方法について説明する。
接合部係数αは、「中央材3のひずみ硬化による応力上昇」と、「中央材3、添板(5,51,52)及びブラケット13の降伏強さ、並びに高力ボルト6の摩擦接合部のすべり耐力の公称値と実勢値との差」によって決定づけられる。
【0049】
図7は、中央材3が想定する最大耐力に達したときの梁11の各部に作用する曲げモーメントと、継手12の降伏曲げ耐力及びすべり耐力並びにブラケット13の降伏曲げ耐力との関係を、模式的に表した説明図である。図中のAMpは、中央材3の全塑性モーメントである。中央材3が全塑性モーメントに到達した後のひずみ硬化による応力上昇率をξで表すと、想定する最大変形時に第1ボルト位置(A断面位置)に作用する曲げモーメントは、AMmax=ξ×AMpのように表すことができる。
【0050】
中央材3が第1ボルト位置(A断面位置)で全塑性モーメントAMpに達するときに、継手12及びブラケット13の各断面(B断面、D断面、E断面)に作用している曲げモーメントをBMduDMduEMduとすると、想定する最大変形時に各断面に作用する曲げモーメントは、A断面と同様に、BMmax=ξ×BMduDMmax=ξ×DMduEMmax=ξ×EMduのように表すことができる。
【0051】
継手12及びブラケット13は、中央材3が所定の塑性変形能力を発揮するまでは弾性範囲に留まるため、図7の模式図における「継手12の各断面の降伏曲げ耐力(JBMyJDMy)、ブラケット13の降伏曲げ耐力(JEMy)及び高力ボルト6の摩擦接合継手のすべり耐力(brMslipbcMslip)」と、各断面に作用する曲げモーメント(JBMyJDMyJEMy)との関係を式に書き表すと、次のようになる。
【0052】
<添板(5,51,52)の降伏曲げ耐力JBMfy
JBMfy ≧ ξ×BMdu
JDMfy ≧ ξ×DMdu
<ブラケット13の降伏曲げ耐力JEMfy
JEMfy ≧ ξ×EMdu
【0053】
<継手12のすべり耐力>
bcMslip ≧ ξ×BMdu (中央材側)
brMslip ≧ ξ×EMdu (ブラケット側)
【0054】
上式は、鋼材の降伏強さの実勢値が公称値と等しい場合に、「継手12の降伏曲げ耐力、ブラケット13の降伏曲げ耐力、継手12のすべり耐力」のそれぞれに、「中央材3がA断面位置で全塑性モーメントに到達したときの各断面の曲げモーメントに応力上昇率ξを乗じて求められる曲げモーメント」以上の耐力を確保しようとするものである。しかしながら、継手12の降伏曲げ耐力及びすべり耐力並びにブラケット13の降伏曲げ耐力の設計値と実勢値とには、差が生じるのが一般的である。
【0055】
そこで、「鋼構造接合部設計指針」(日本建築学会、2021.2)(以下、「接合部指針」という。)を参考にする。継手12の添板(5,51,52)とブラケット13に用いる鋼材の降伏強さ、並びに継手12のすべり耐力について、公称値に対する実勢値の変動を考慮した補正係数を、それぞれβ1,β2,β3とおくと、上式を材料強度の公称値に対する実勢値の変動を考慮した形に書き表すことができる。
【0056】
<添板(5,51,52)の降伏曲げ耐力JBMfy
JBMfy ≧ ξ・β1BMdu
JDMfy ≧ ξ・β1DMdu
<ブラケット13の降伏曲げ耐力JEMfy
JEMfy ≧ ξ・β2EMdu
【0057】
<継手12のすべり耐力>
bcMslip ≧ ξ・β3BMdu (中央材側)
brMslip ≧ ξ・β3EMdu (ブラケット側)
【0058】
さらに、接合部係数αs,αbr,αslipを使って整理すると、以下の式のようになる。
<添板(5,51,52)の降伏曲げ耐力JBMfy
JBMfy ≧ αsBMdu (式1)
JDMfy ≧ αsDMdu (式2)
<ブラケット13の降伏曲げ耐力JEMfy
JEMfy ≧ αbrEMdu (式3)
【0059】
<継手12のすべり耐力>
bcMslip ≧ αslipBMdu (中央材側) (式4)
brMslip ≧ αslipEMdu (ブラケット側) (式5)
【0060】
要するに、「中央材3が所定の塑性変形能力を発揮するまで継手12及びブラケット13を弾性範囲に留める」とは、上式のように「各部位の降伏曲げ耐力あるいはすべり耐力が、A断面位置での全塑性時に各断面に作用する曲げモーメントに接合部係数を乗じた値を上回る」ことを確認する行為に相当する。
【0061】
上述したように、接合部係数(αs,αbr,αslip)は、「中央材3のひずみ硬化による応力上昇率ξ」と、「継手12及びブラケット13に用いる鋼材の降伏強さ及びすべり耐力の公称値に対する実勢値の変動を考慮した補正係数(β1,β2,β3)」との積で求められる。
【0062】
ここで、β1は「中央材3と添板(5,51,52)の降伏強さの平均値・標準偏差から決まる補正係数」であり、β2は「中央材3とブラケット13の降伏強さの平均値・標準偏差から決まる補正係数」であり、β3は「中央材3の降伏強さと高力ボルト6の摩擦接合部のすべり耐力の平均値・標準偏差から決まる補正係数」である。
【0063】
そして、継手12に付与する耐力に応じて梁11の部材種別を決定するためには、各部材種別で求められる塑性変形能力が発揮されたときの「中央材3のひずみ硬化による応力上昇率ξ」を知る必要がある。
【0064】
そこで、ひずみ硬化による応力上昇率ξの設定方法について説明する。
ここでも「接合部指針」を参考にすると、梁の塑性変形能力θmaxpと応力上昇率ξとの関係が、次式のように示されている。
【数1】
ここで、τはひずみ硬化係数(「接合部指針」では0.007)、YRは降伏比(「接合部指針」では0.7)、θmaxは想定する最大変形時の部材角である。
【0065】
そこで、上式に各部材種別の鉄骨梁部材に求められる塑性変形能力θmaxpを代入すれば、梁11の各部材種別における中央材3のひずみ硬化による応力上昇率ξを求めることができる。
【0066】
FA相当に関しては、「接合部指針」で個別の検討に拠らない場合の値を準用して、応力上昇率ξは1.20となる。FD相当に関しては、中央材3の塑性変形能力はほとんど期待できないため、「接合部指針」の値を準用して、応力上昇率ξは1.05となる。
【0067】
そして、FB相当とFC相当に関しては、次のような考えで応力上昇率ξを定める。
「2020年版 建築物の構造関係技術基準解説書」(建築物の構造関係技術基準解説書編集委員会、2020.10)によれば、FA,FB,FCの部材種別の梁に要求される塑性変形能力は、塑性変形倍率の下限値にして、4.0,2.0,0.0になる。塑性変形倍率は、塑性率(θmaxp)から1を減じて求められるため、FA,FB,FCの梁に要求される塑性率の下限値は5.0,3.0,1.0となる。したがって、FA,FB,FCの梁に要求される塑性率の範囲は、FAは5.0以上、FBは3.0-5.0、FCは1.0-3.0となる。
【0068】
こうした各部材種別の梁に要求される梁の塑性率の範囲に対して、本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法では、FB相当とFC相当の応力上昇率ξを求めるための塑性率(θmaxp)の値を、それぞれの塑性率の範囲の「中央値」に設定する。図8は、各部材種別の梁に要求される塑性率の中央値に対して応力上昇率を設定することの説明図である。そして、図9は、上述した「接合部指針」の応力上昇率ξの式(数1)に、各部材種別ごとの塑性率(θmaxp)を代入して算定される応力上昇率(ξ)を示している。
【0069】
すなわち、応力上昇率ξを求めるための塑性率は、FB相当はθmaxp = 4.0とし、FC相当はθmaxp= 2.0とする。図8に示すように、各部材種別の梁に要求される塑性率の中央値に対して応力上昇率ξを設定すれば、梁11は、各部材種別の梁に要求される塑性率の下限値の発揮が必ず保証されることになるため、安全側の評価となる。
【0070】
このように本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法であれば、接合部係数(αs、αbr、αslip)を用いて継手12のある梁11全体の部材種別(変形性能)を決定することができる。
【0071】
そして、接合部係数(αs、αbr、αslip)を求める際に使用する補正係数(β1,β2,β3)は、鋼材の降伏強さ及びすべり耐力の統計値から決まる係数であり、上記「接合部指針」及び各統計値から求めることができる。具体的には、β1は、「中央材3の降伏強さにおける公称値に対する実勢値の比率βbc」と「添板(5,51,52)の降伏強さにおける公称値に対する実勢値の比率βs」から決まる材料強度による補正係数である。またβ2は、「中央材3の降伏強さにおける公称値に対する実勢値の比率βbc」と「ブラケット13の降伏強さにおける公称値に対する実勢値の比率βbr」から決まる材料強度による補正係数である。そしてβ3は、「中央材3の降伏強さにおける公称値に対する実勢値の比率βbc」と「すべり耐力における公称値に対する実勢値の比率βslip」から決まる材料強度による補正係数である。
【0072】
図10に、各部材種別ごとの接合部係数(αs、αbr、αslip)を例示した。このように、本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法では、接合部係数(αs、αbr、αslip)を用いて継手12及びブラケット13を設計することで、梁11全体の部材種別を容易に決定することができる。
【0073】
さらに、本願発明者が行った実験結果によれば、梁11の履歴性状もコントロールすることができるようになる。具体的には、梁11においては、中央材3の全塑性耐力が同じであっても、継手12とブラケット13に付与する耐力によって異なる履歴性状が得られる。
【0074】
例えば、中央材3の最大耐力に至るまで継手12及びブラケット13が降伏することなく、かつ継手12のすべりも生じないように設計されていれば、主すべりが生じるまで梁11の荷重変形関係は紡錘形の履歴性状を保つことができる。要するに、中央材3が所定の塑性変形能力を発揮するまで継手12及びブラケット13が弾性範囲に留まっていれば、鉄骨部材に特徴的な紡錘形の履歴性状にすることができる。
【0075】
一方、継手12にすべりが生じると、主すべりの影響で急激な耐力低下が生じて、繰り返しのすべりによって荷重変形関係は鋸歯状の履歴性状となってしまう。このように、継手12及びブラケット13に付与する耐力と中央材3の塑性変形能力との関係を明らかにすることで、継手12及びブラケット13を有する梁11の性能を容易に決定することができるようになる。
【0076】
次に、本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法及び鉄骨柱梁接合構造の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法では、中央材3の塑性変形能力を表す幅厚比種別と継手12及びブラケット13の性能との関係を設定したうえで、継手12及びブラケット13の性能を接合部係数(αs、αbr、αslip)に基づいて決定する。そして、図1及び図10に示すように、中央材3の幅厚比種別と接合部係数(αs、αbr、αslip)とに基づいて梁11の部材種別を決定する。
【0077】
このように、高力ボルト6による摩擦接合の継手12及びブラケット13に付与する耐力と中央材3の塑性変形能力との関係を明確にするのであれば、中央材3の塑性変形能力を充分に発揮させたいなどといった設計思想に応じて、梁11の変形性能を評価するための部材種別を容易に決定することができる。
【0078】
例えば、従来の梁継手の設計のように、梁の材端部が「最大曲げ耐力」に到達したときの継手位置の曲げモーメントに対して継手が破断しないことを確認できればよいとすると、梁が所定の塑性変形能力を発揮するまでに継手の降伏あるいはすべりが生じることがある。しかしながら、中央材が全塑性に至った後にまもなく継手に主すべりが生じると、耐力が急激に低下するという性状を示すことになる。
【0079】
そこで、本実施の形態では、継手12及びブラケット13に付与する耐力と中央材3の塑性変形能力との関係を明確にすることで、以下のような変形性能を梁11に与えることをできるようにする。
【0080】
すなわち、中央材3に期待する塑性変形能力に応じた接合部係数によって継手12及びブラケット13を設計することで、「中央材3が全塑性に至った後、まもなく主すべりによる耐力低下が生じる変形性能」、「中央材3が全塑性に至った後、ある程度塑性変形能力を発揮した後に主すべりによる耐力低下が生じる変形性能」、「載荷終了まで主すべりが生じない変形性能」といったように、梁11の変形性能を決定できるようにする。
【0081】
そのために本実施の形態の梁部材の部材種別の決定方法では、梁11に作用する曲げモーメントに対して、継手12及びブラケット13を、上記した(式1)-(式5)に基づいて設計する。ここで、接合部係数を求めるための応力上昇率ξについては、FB相当とFC相当の場合には、図8に示したように、各部材種別の鉄骨梁部材に求められる塑性率の中央値に対して算定する。梁11の部材種別(FA相当-FD相当)と中央材3の幅厚比種別との関係で示される接合部係数(αs、αbr、αslip)は、図10に示したようになる。
【0082】
このように設計者が要求する梁11の性能に応じて継手12及びブラケット13のディテールを決めることができるのであれば、中央材3の断面を変えずに、接合部係数による設計結果に応じて架構コストの最適化を図ることが可能になる。
【0083】
また、本実施の形態の鉄骨柱梁接合構造1では、中央材3と添板5の摩擦接合の高力ボルト6の配置を千鳥配置とする場合であっても、第1ボルト位置(A断面位置)と第2ボルト位置(第1ボルト位置の隣)の高力ボルト6の並びを並列配置とすることで、中央材3のフランジ(31,32)の塑性化による第2ボルト位置以降の高力ボルト6の張力の過度な低下を抑制することができるようになる。
【0084】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0085】
例えば、前記実施の形態では、鉄骨柱2の四方に張り出されたブラケット13に、継手12を介して中央材3が接続された鉄骨柱梁接合構造1における梁11の部材種別の決定方法について説明したが、これに限定されるものではない。上述した継手12とは別の形態の高力ボルトによる摩擦接合の継手を有する梁部材の変形性能についても、本発明によって容易に評価することができるようになる。
【符号の説明】
【0086】
11 :梁(梁部材)
12 :継手
13 :ブラケット
2 :鉄骨柱(柱)
3 :中央材
5 :添板
6 :高力ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-10-22
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材端部に中央材とブラケットとを接続する高力ボルトによる摩擦接合の継手が設けられる梁部材の部材種別の決定方法であって、
前記中央材の幅厚比種別を設定するステップと、
前記継手及び前記ブラケットの性能を、設定された前記幅厚比種別に該当する接合部係数に基づいて決定するステップと、
前記幅厚比種別及び前記接合部係数に該当する前記梁部材の部材種別を決定するステップとを備え
前記接合部係数は、前記中央材が全塑性に到達した後のひずみ硬化による応力上昇率と、前記継手及び前記ブラケットに使用する鋼材の降伏強さ及びすべり耐力の公称値に対する実勢値の比率から決まる補正係数との積によって決定し、
前記応力上昇率は、前記梁部材の部材種別ごとに設定されていることを特徴とする梁部材の部材種別の決定方法。
【請求項2】
鉄骨柱から張り出されたブラケットと、
鉄骨柱側が拡幅されて中央材側が中央材幅に形成される添板と、
前記添板の前記鉄骨柱側の端部を前記ブラケットに接合させるとともに、前記添板の前記中央材側の端部を前記中央材に接合させる複数の高力ボルトとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の梁部材の部材種別の決定方法。
【請求項3】
前記中央材側の前記高力ボルトの少なくとも2列目までを並列配置にしたことを特徴とする請求項に記載の梁部材の部材種別の決定方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10