(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005213
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】膝サポータ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/06 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
A41D13/06 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105306
(22)【出願日】2023-06-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591115279
【氏名又は名称】株式会社アイリス
(74)【代理人】
【識別番号】100182154
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大隅 洋
(72)【発明者】
【氏名】猪田 哲也
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA05
3B211AB08
3B211AB18
3B211AC17
(57)【要約】
【課題】本発明は、膝サポータに関する。
【解決手段】
本実施形態の膝サポータ1は、膝の周りを覆う筒状の膝サポータ1であって、前記膝サポータの正面側に配置され、膝蓋骨Pの前面を覆う正面部10と、前記膝サポータの背面側に配置され、前記正面部10に取り付けられる背面部20と、前記膝蓋骨Pに対応する前記正面部の一の縦方向に配置され、前記縦方向に伸縮する第一伸縮部11と、前記第一伸縮部11に隣接する前記正面部の他の縦方向に配置され、前記第一伸縮部と異なる引張強さで前記縦方向に伸縮する第二伸縮部12と、前記正面部の前記膝蓋骨Pの周りに対応する位置に配置され、前記膝蓋骨Pの全部又は一部を覆うように前記膝蓋骨Pを支持する支持部30とを備えることを特徴とする。
膝サポータ1は、使用者が使用することで、膝蓋骨Pを支持できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝の周りを覆う筒状の膝サポータ(1)であって、
前記膝サポータの正面側に配置され、膝蓋骨(P)の前面を覆う正面部(10)と、
前記膝サポータの背面側に配置され、前記正面部(10)に取り付けられる背面部(20)と、
前記膝蓋骨(P)に対応する前記正面部の一の縦方向に配置され、前記縦方向に伸縮する第一伸縮部(11)と、
前記第一伸縮部(11)に隣接する前記正面部の他の縦方向に配置され、前記第一伸縮部と異なる引張強さで前記縦方向に伸縮する第二伸縮部(12)と、
前記正面部の前記膝蓋骨(P)の周りに対応する位置に配置され、前記膝蓋骨(P)の全部又は一部を覆うように前記膝蓋骨(P)を支持する支持部(30)と
を備えることを特徴とする膝サポータ。
【請求項2】
請求項1に記載された膝サポータであって、
前記膝の屈曲に対応する前記背面部の一の横方向に配置され、前記横方向に形成された第一屈曲部(21)と、
前記第一屈曲部(21)に隣接する前記背面部の他の横方向に配置され、前記第一屈曲部と異なる肉厚で前記横方向に形成された第二屈曲部(22)と
を備えることを特徴とする膝サポータ。
【請求項3】
請求項2に記載された膝サポータであって、
前記第一伸縮部(11)は、前記第二伸縮部(12)と比較して引張強さが弱い
ことを特徴とする膝サポータ。
【請求項4】
請求項3に記載された膝サポータであって、
前記第一屈曲部(21)は、前記第二屈曲部(22)と比較して肉厚が薄い
ことを特徴とする膝サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝サポータに関する。さらに詳しく説明すると、本発明は、膝蓋骨を支持する膝サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
膝の痛みや不調を訴える患者は、膝の周りの筋肉の衰えから、膝蓋骨がぐらつくことで、軟骨がすれて炎症起こすこと等が、一つの要因であると考えられる。このような患者の痛みを取り去る又は軽減するため、様々な膝サポーターが提案されているが、特許文献を基に従来の技術を説明する。
【0003】
特許文献1の膝用サポーターは、膝を曲げる場合でも、弾性パッドが邪魔にならず、膝を曲げやすい膝用サポーターの技術を提供している。しかし、膝用サポーターは、弾性パッドが装着されたサポーター本体の伸縮性が同じため、曲げられる膝の角度に限界があるという問題点がある。特許文献2の膝関節サポーターは、膝関節の安定性を向上して、着用者の疲労を減少すると共に、膝蓋腱への負荷を減少することができる膝関節サポーターの技術を提供している。しかし、膝関節サポーターは、構造が複雑で、製造が難しく製造コストが高くなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3208786号公報
【特許文献2】特開2012-245117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような社会的、技術的背景に基づいたものであり、次のような目的を達成する。本発明の膝サポータ1は、膝蓋骨を支持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
(1)請求項1の膝サポータは、膝の周りを覆う筒状の膝サポータ(1)であって、前記膝サポータの正面側に配置され、膝蓋骨の前面を覆う正面部(10)と、前記膝サポータの背面側に配置され、前記正面部(10)に取り付けられる背面部(20)と、前記膝蓋骨に対応する前記正面部の一の縦方向に配置され、前記縦方向に伸縮する第一伸縮部(11)と、前記第一伸縮部(11)に隣接する前記正面部の他の縦方向に配置され、前記第一伸縮部と異なる引張強さで前記縦方向に伸縮する第二伸縮部(12)と、前記正面部の前記膝蓋骨の周りに対応する位置に配置され、前記膝蓋骨の全部又は一部を覆うように前記膝蓋骨を支持する支持部(30)とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の膝サポータは、請求項1に記載された膝サポータであって、前記膝の屈曲に対応する前記背面部の一の横方向に配置され、前記横方向に形成された第一屈曲部(21)と、前記第一屈曲部(21)に隣接する前記背面部の他の横方向に配置され、前記第一屈曲部と異なる肉厚で前記横方向に形成された第二屈曲部(22)とを備えることを特徴とする。
(3)請求項3の膝サポータは、請求項2に記載された膝サポータであって、前記第一伸縮部(11)は、前記第二伸縮部(12)と比較して引張強さが弱いことを特徴とする。
(4)請求項4の膝サポータは、請求項3に記載された膝サポータであって、前記第一屈曲部(21)は、前記第二屈曲部(22)と比較して肉厚が薄いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明の膝サポータは、膝蓋骨を支持する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、膝サポータ1を裏返した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、膝サポータ1で使用される生地の編組織を示す模式図である。
【
図5】
図5は、膝サポータ1を着用した着用者Uが膝を伸ばした状態を示す図である。
【
図6】
図6は、膝サポータ1を着用した着用者Uが膝を曲げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態の概要
本実施形態の膝サポータ1は、膝の周りを覆う筒状の膝サポータ1であって、前記膝サポータの正面側に配置され、膝蓋骨Pの前面を覆う正面部10と、前記膝サポータの背面側に配置され、前記正面部10に取り付けられる背面部20と、前記膝蓋骨Pに対応する前記正面部の一の縦方向に配置され、前記縦方向に伸縮する第一伸縮部11と、前記第一伸縮部11に隣接する前記正面部の他の縦方向に配置され、前記第一伸縮部と異なる引張強さで前記縦方向に伸縮する第二伸縮部12と、前記正面部の前記膝蓋骨Pの周りに対応する位置に配置され、前記膝蓋骨Pの全部又は一部を覆うように前記膝蓋骨Pを支持する支持部30とを備えることを特徴とする。膝サポータ1は、使用者が使用することで、膝蓋骨Pを支持することができる。
【0010】
(2)実施形態の詳細
〔第一実施形態〕
第一実施形態の膝サポータ1を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は膝サポータ1の正面を示す図であり、
図1(b)は膝サポータ1の側面等を示す図であり、
図1(c)は膝サポータ1の背面を示す図である。なお、
図1(a)のR1は、第一伸縮部11の一部を模式的に拡大した部分を示し、R2は、第二伸縮部12の一部を模式的に拡大した部分を示す。また、
図1(b)のR3は、膝サポータ1の一部断面を示す。
図1(c)のR4は、第一屈曲部21の一部を模式的に拡大した部分を示し、R5は、第二屈曲部22の一部を模式的に拡大した部分を示す。
図2は、膝サポータ1を裏返した状態を示す図である。
図3は、膝サポータ1で使用される生地の編組織を示す模式図である。
図4は、支持部30を示す外観図である。
【0011】
〔膝サポータ1〕
第一実施形態における膝サポータ1は、伸縮自在な生地が膝の周りを覆う筒状サポータである。膝サポータ1は、膝の周りにぴったりと密着するように、膝周りと同一又は膝周りよりも小さい内径の筒状に形成されている。本例における膝サポータ1は、上端部の上内径UDが大腿部の外形より小さく、下端部の下内径DDがふくらはぎの外形より小さくなるように形成されている。着用者Uは、膝サポータ1を着用することで、膝蓋骨Pを支持できる。
図1に示すように、膝サポータ1は、正面部10、背面部20、支持部30、被覆部40及び縫い合わせ部50とを備えている。
【0012】
図3に示すように、膝サポータ1(正面部10、背面部20)の生地は、経糸v、挿入糸in及び緯糸bにより、帯状の経編組織で形成されている。経糸vは、膝サポータ1の生地の編目を形成する糸である。挿入糸inは、膝サポータ1の生地の経糸vの長手方向に編み込まれる伸縮性を備える糸である。緯糸bは、膝サポータ1の生地の経糸vの幅方向に編み込まれる糸である。
【0013】
経糸vは、非弾性の糸であり、例えば、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル及び天然繊維等のいずれか又はこれらを組み合わせた糸である。挿入糸inは、弾性糸であり、例えば、ポリウレタンを芯にして、レーヨン、ポリエステル、アクリル及び天然繊維等の糸を巻き付け(カバーリング)て形成されている撚り糸である。本例において、挿入糸inは、シングルカバードヤーン(SCY)を使用している。緯糸bは、伸縮性の低い糸であり、例えば、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル及び天然繊維のいずれか又はこれらを組み合わせた糸である。挿入糸inとは、伸長率が200%以上500%未満に設定された状態で、例えば、クロッシェ経編機で編まれている。つまり、膝サポータ1の生地は、挿入糸inに所定のテンションをかけて弾性変形をした状態で編まれている。このため、膝サポータ1の生地は、長手方向への伸度が2.5倍であり、ほつれ難くストレッチ性の高い生地である。
【0014】
本例において、正面部10と背面部20とは、同じ生地を使用しているが、正面部10の経編組織と背面部20の経編組織が直交するように配置されている。つまり、
図1(a)に示すように、正面部10の生地は、第一伸縮部11の経編組織(R1部分参照)が縦方向に配置され、第二伸縮部12の経編組織(R2部分参照)が縦方向に配置されている。一方、
図1(c)に示すように、背面部20の生地は、第一屈曲部21の経編組織(R4部分参照)が横方向に配置され、第二屈曲部22の経編組織(R5部分参照)が横方向に配置されている。
【0015】
〔正面部10〕
正面部10は、膝サポータ1の正面側に配置され、膝蓋骨Pの前面を覆う生地等の部材である。
図1(a)に示すように、正面部10は、縦長であり、上方向側が広く下方向側が狭い略等脚台形形状に形成され、
図1(b)に示すように、背面部20と縫い合わせ部50を介して縫製されることで筒状の膝サポータ1に形成される。正面部10は、膝の周りにぴったりと密着するように、伸縮自在な生地で形成されている。正面部10は、第一伸縮部11、第二伸縮部12、上部ほつれ止め部13及び下部ほつれ止め部14とから構成されている。正面部10は、
図3に示す生地が縦方向に配置され、縦方向に伸縮するが横方向の伸縮が規制されている部材である。正面部10は、第一伸縮部11と第二伸縮部12とが一体の状態で編まれている。
【0016】
〔第一伸縮部11〕
第一伸縮部11は、正面部10の一部を形成する部材であり、膝蓋骨Pに対応する正面部10の一の縦方向に配置され、縦方向に伸縮するが横方向の伸縮が規制されている部材である。本例において、第一伸縮部11は、正面部10の左右略中央部分において、上方向から縦方向にかけて配置される帯形状の部材である。本例において、第一伸縮部11は、幅約60mmの膝蓋骨P全体を覆うことができるように幅約80mmに形成されている。第一伸縮部11の左右に隣接する部分には、それぞれ第二伸縮部12が配置されている。
【0017】
第一伸縮部11は、第二伸縮部12と比較して、挿入糸inの太さを細くすることで、縦方向に伸縮する引張強さが弱くなるように形成されている。第一伸縮部11は、第二伸縮部12と比較して、挿入糸inの太さを細くすることで、生地の肉厚が薄くなるように形成されている。第一伸縮部11は、第二伸縮部12と比較して、緯糸bの太さを太くすることで、第一伸縮部11と第二伸縮部12とで挿入糸inの太さが異なる正面部10全体の生地のバランスを整えゆがみを抑えている。
【0018】
〔第二伸縮部12〕
第二伸縮部12は、正面部10の一部を形成する部材であり、第一伸縮部11に隣接する正面部10の他の縦方向に配置され、縦方向に伸縮するが横方向の伸縮が規制されている部材である。第二伸縮部12は、正面部10における、膝蓋骨Pの左右両端側に対応する位置に配置されている。本例において、第二伸縮部12は、正面部10の左右両端部分において、上方向から縦方向にかけて配置される一対の帯形状の部材である。一対の第二伸縮部12の内側に隣接する部分には、第一伸縮部11が配置されている。
【0019】
第二伸縮部12は、第一伸縮部11と比較して、挿入糸inの太さを太くすることで、縦方向に伸縮する引張強さが強くなるように形成されている。第二伸縮部12は、第一伸縮部11と比較して、挿入糸inの太さを太くすることで、生地の肉厚が厚くなるように形成されている。第二伸縮部12は、第一伸縮部11と比較して、緯糸bの太さを細くすることで、第二伸縮部12と第一伸縮部11とで挿入糸inの太さが異なる正面部10全体の生地のバランスを整えゆがみを抑えている。
【0020】
〔上部ほつれ止め部13、下部ほつれ止め部14〕
上部ほつれ止め部13は、正面部10の生地の上端部がほつれないように、正面部10の上端部を折り返して縫い付けたほつれ止め処理が施された部位である。膝サポータ1は、正面部10に上部にほつれ止め部13を備えて厚みを加えることで、この部分における縦方向の伸縮が制限される。下部ほつれ止め部14は、正面部10の生地の下端部がほつれないように、正面部10の下端部を折り返して縫い付けたほつれ止め処理が施された部位である。膝サポータ1は、正面部10に下部ほつれ止め部14を備えて厚みを加えることで、この部分における縦方向の伸縮が制限される。
【0021】
〔背面部20〕
背面部20は、膝サポータ1の背面側に配置され、膝窩の背面を覆い、正面部10に取り付けられる生地等の部材である。
図1(c)に示すように、背面部20は、縦長であり、上方向側が広く下方向側が狭い略等脚台形形状に形成され、
図1(b)に示すように、正面部10と縫い合わせ部50を介して縫製されることで筒状の膝サポータ1に形成される。背面部20は、膝の周りにぴったりと密着するように、伸縮自在な生地で形成されている。背面部20は、第一屈曲部21と第二屈曲部22とから構成されている。背面部20は、
図3に示す生地が横方向に配置され、横方向に伸縮するが縦方向の伸縮が規制されている部材である。背面部20は、第一屈曲部21と第二屈曲部22とが一体の状態で編まれている。
【0022】
〔第一屈曲部21〕
第一屈曲部21は、背面部20の一部を形成する部材であり、膝窩に対応する背面部20の一の横方向に配置され、横方向に伸縮するが縦方向の伸縮が規制されている部材である。本例において、第一屈曲部21は、背面部20の上下略中央部分において、左方向から右方向にかけて配置される帯形状の部材である。第一屈曲部21の上下に隣接する部分には、それぞれ第二屈曲部22が配置されている。
【0023】
第一屈曲部21は、第二屈曲部22と比較して、挿入糸inの太さを細くすることで、横方向に伸縮する引張強さが弱くなるように形成されている。第一屈曲部21は、第二屈曲部22と比較して、挿入糸inの太さを細くすることで、生地の肉厚が薄くなるように形成されている。第一屈曲部21は、第二屈曲部22と比較して、緯糸bの太さを太くすることで、第一屈曲部21と第二屈曲部22とで挿入糸inの太さが異なる背面部20全体の生地のバランスを整えゆがみを抑えている。
【0024】
〔第二屈曲部22〕
第二屈曲部22は、背面部20の一部を形成する部材であり、第一屈曲部21に隣接する背面部20の他の横方向に配置され、横方向に伸縮するが縦方向の伸縮が規制されている部材である。本例において、第二屈曲部22は、背面部20の上下両端部分において、左方向から右方向にかけて配置される一対の帯形状の部材である。一対の第二屈曲部22の内側に隣接する部分には、第一屈曲部21が配置されている。
【0025】
第二屈曲部22は、第一屈曲部21と比較して、挿入糸inの太さを太くすることで、横方向に伸縮する引張強さが強くなるように形成されている。第二屈曲部22は、第一屈曲部21と比較して、挿入糸inの太さを太くすることで、生地の肉厚が厚くなるように形成されている。第二屈曲部22は、第一屈曲部21と比較して、緯糸bの太さを細くすることで、第二屈曲部22と第一屈曲部21とで挿入糸inの太さが異なる背面部20全体の生地のバランスを整えゆがみを抑えている。
【0026】
〔支持部30〕
支持部30は、正面部10の膝蓋骨Pの周りに対応する位置に配置され、膝蓋骨Pの全部又は一部を覆うように膝蓋骨Pを支持する部材である。
図2に示すように、支持部30は、正面部10の下方向側において、被覆部40に覆われて正面部10の裏面に配置されている。支持部30は、膝蓋骨Pの全部又は一部を覆うことで、膝蓋骨Pが動かないように支持ができる形状に形成されている。本例において、支持部30は、
図2に示すように、左右一対に対向する位置に配置され、両端が丸められた略三日月形状に形成されている。
【0027】
支持部30は、
図1(b)に示すように、膝蓋骨Pを支持できるように所定の厚み(例えば、約5mm)に形成されている。支持部30の内側辺30Rは、
図2に示すように、膝蓋骨Pの外形に沿うように凹む所定の寸法の傾斜、円弧又は放物線を描くように形成されている。本例において、内側辺30Rは、幅約60mmの膝蓋骨Pを支持できるように約半径30mmの円弧に形成されている。支持部30は、軟質で弾性変形可能な合成樹脂で形成されており、本例においては、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA:Ethylen-Vinyl Acetate)で形成されている。
【0028】
〔被覆部40〕
被覆部40は、支持部30を正面部10に留め置く生地等の部材である。被覆部40は、
図1(b)及び
図2に示すように、正面部10の下方向側において、正面部10の裏側に縫製されて取り付けられている。被覆部40は、本体部41と、区画部42とで構成され、伸縮性のない生地で左右対称の形状に形成されている。
図4に示すように、本体部41は、正面部10に縫製される板状の生地であり、潰れた略「U」字形状に形成されている。本体部41には、区画部42が形成されている。区画部42は、支持部30を収納する部分であり、支持部30の外形形状にあわせて、左右一対に対向する位置に配置され、両端が丸められた略三日月形状に形成されている。区画部42は、
図4に示すように、支持部30を介して膝蓋骨Pを支持できるように所定の厚み(例えば、約5mm)に形成されている。
【0029】
区画部42の内側辺42Rは、
図2に示すように、膝蓋骨Pの外形に沿うように凹む所定の寸法の傾斜、円弧又は放物線を描くように形成されている。本例において、内側辺42Rは、幅約60mmの膝蓋骨Pを支持できるように約半径30mmの円弧に形成されている。被覆部40は、支持部30が膝蓋骨Pをしっかり支持できるように滑りにくい繊維で構成されている。被覆部40は、内側縫製部43と外側縫製部44とで縫製されて、正面部10に縫製されて取り付けられる。
【0030】
〔縫い合わせ部50〕
縫い合わせ部50は、正面部10と背面部20の両端を縫い合わせ、2枚の生地を取り付ける部位である。本例において、縫い合わせ部50は、折り伏せ縫いを用いて、正面部10と背面部20とを縫い合わせられているが、他の袋縫いや割伏せ縫いを用いても良い。正面部10と背面部20とは、縫い合わせ部50で縫い合わせられることで、筒状の膝サポータ1に形成されている。
【0031】
〔実施例1〕
上述した実施の形態における膝サポータ1の性能について、各種計測、試験を行い、膝サポータ1の状態や機能について検証した。
【表1】
【表2】
【表3】
【0032】
〔引張試験〕
引張試験においては、膝サポータ1を構成する第一伸縮部11や第一屈曲部21を構成する生地を経糸の方向に200mmに刻んだ試験片を使用した。また、膝サポータ1を構成する第二伸縮部12や第二屈曲部22を構成する生地を経糸の方向に200mmに刻んだ試験片を使用した。引張強度試験は、ミネベアミツミ株式会社のTGE-5kNを使用し、引張速度毎分100mmで200mm引っ張ったときの荷重を5回測定した。
【0033】
表1に示すように、第一伸縮部11の挿入糸inの太さは940デシテックスであり、第二伸縮部12の挿入糸inの太さは1880デシテックスである。このように構成されることで、第一伸縮部11は、第二伸縮部12と比較して、表2に示すように、約1/2の引張強さで引き延ばすことができる。一方で、第二伸縮部12は、第一伸縮部11と比較して、表2に示すように、約2倍の引張強さが必要になる。つまり、正面部10は、第一伸縮部11と第二伸縮部12が一体に形成されていながら、第一伸縮部11は引き延ばしやすく、第二伸縮部12では引き延ばしにくいことがわかる。
【0034】
表1に示すように、第一屈曲部21の挿入糸inの太さは940デシテックスであり、第二屈曲部22の挿入糸inの太さは1880デシテックスである。このように構成されることで、第一屈曲部21は、第二屈曲部22と比較して、表2に示すように、約1/2の引張強さで引き延ばすことができる。一方で、第二屈曲部22は、第一屈曲部21と比較して、表2に示すように、約2倍の引張強さが必要になる。つまり、背面部20は、第一屈曲部21と第二屈曲部22が一体に形成されていながら、第一屈曲部21は引き延ばしやすく、第二屈曲部22では引き延ばしにくいことがわかる。
【0035】
〔通気性試験〕
通気性試験においては、膝サポータ1を使用して、膝サポータ1構成する第一伸縮部11や第一屈曲部21の通気性を測定した。また、膝サポータ1を構成する第二伸縮部12や第二屈曲部22の通気性を測定した。比較対象として、ネオプレン等のクロロプレンゴムのゴム(「比較例1」という。)で製造された膝サポータの通気性を測定した。通気性試験は、大栄科学精器製作所のデジタルフラジール型通気度試験機DAP-360を使用して、通気性を5回測定した。
【0036】
表1に示すように、挿入糸inの太さが940デシテックスで構成される第一伸縮部11や第一屈曲部21の部分は、表3に示すように、比較例1と比較して通気性が良いことが確認できる。表1に示すように、挿入糸inの太さが1880デシテックスで構成される第二伸縮部12や第二屈曲部22の部分は、表3に示すように、比較例1と比較して通気性が良いことが確認できる。表3に示すように、第二伸縮部12や第二屈曲部22の部分は、第一伸縮部11や第一屈曲部21の部分と比較して通気性が良いことが確認できる。
【0037】
〔膝サポータ1の使用方法〕
次に、以上のように構成された膝サポータ1を使用する使用方法について説明する。
図5は、膝サポータ1を着用した着用者Uが膝を伸ばした状態を示す図であり、(a)が正面図、(b)が背面図、(c)が側面図である。
図6は、膝サポータ1を着用した着用者Uが膝を曲げた状態を示す図であり、(a)が正面図、(b)が背面図、(c)が側面図である。着用者Uは、膝サポータ1の上端部の上内径UDから足を入れて、
図5(a)に示すように、膝サポータ1を膝周りに配置する。
【0038】
膝サポータ1は、背面部20が横方向に伸縮するため、膝サポータの上端部の上内径UDや下端部の下内径DDが拡がるので着用しやすい。着用者Uは、支持部30が膝蓋骨Pの下方向側を支持するように、正面部10や支持部30の位置を調整して、膝サポータ1を着用する。支持部30は、所定の厚みに形成され、内側辺が膝蓋骨Pの外形に沿うように凹むように形成されているため、膝蓋骨Pをしっかりと支持する。支持部30は、略三日月形状に形成されているため、膝蓋骨Pの下方向側と左右方向側を支持し、膝蓋骨Pのぐらつきを抑える。膝サポータ1は、上部ほつれ止め部13と下部ほつれ止め部14の部分で縦方向の伸縮が制限されているため、着用した位置がずれにくい。膝サポータ1は、第一屈曲部21を挟んで上下に配置された第二屈曲部22と第二屈曲部22が縦方向の伸縮が規制されているため、着用した位置がずれにくい。
【0039】
着用者Uが脚を曲げた場合、
図6(a)に示すように、正面部10は、縦方向に伸び、背面部20は、縦方向に伸びることなく折れ曲がる。着用者Uは、膝サポータ1を着用した状態で、脚を曲げる場合、膝蓋骨Pが支持部30で支持され、ぐらつくことないため、膝に痛みが生じない。膝サポータ1は、正面部10において、第一伸縮部11が第二伸縮部12と比較して引張強さが弱いため、着用者Uは膝を曲げ伸びしやすい。膝サポータ1は、第一伸縮部11が第二伸縮部12と比較して弱い力で伸長するので、支持部30が膝蓋骨Pを支持した状態を保ちやすく、着用者Uの筋肉や関節にかかる負担が軽減され、膝を曲げ伸びしやすい。膝サポータ1は、正面部10において、第一伸縮部11が第二伸縮部12と比較して生地が薄いため、着用者Uが膝の付近に感じる圧迫感が軽減する。
【0040】
膝サポータ1は、正面部10において、第二伸縮部12が第一伸縮部11と比較して引張強さが強いため、着用者Uが着用した位置がずれにくい。膝サポータ1は、着用者Uが膝を曲げ伸びしても、第二伸縮部12が膝蓋骨Pの左右をしっかりと固定しているため、着用者Uが着用した位置がずれにくい。膝サポータ1は、上部ほつれ止め部13と下部ほつれ止め部14の部分で縦方向の伸縮が制限されているため、着用者Uが着用した位置がずれにくく、めくれにくい。
【0041】
着用者Uは、膝サポータ1を着用した状態で、脚を曲げる場合、第一屈曲部21が第二屈曲部22と比較して肉厚が薄いため、膝窩の部分で感じるよれた生地が挟まる違和感が少なくなる。また、膝サポータ1は、背面部20において、第一屈曲部21を挟んで上下に配置された第二屈曲部22が縦方向の伸縮が規制されているため、着用者Uが膝を曲げ伸びしても、第二屈曲部22が背面部20の上下をしっかりと固定しているため、着用者Uが着用した位置がずれにくい。膝サポータ1は、上部ほつれ止め部13、下部ほつれ止め部14、背面部20及び第二屈曲部22が着用者Uが着用した位置を維持しつつ、第一伸縮部11がしっかり伸縮することで、膝の曲げ伸びにかかわらず支持部30がつねに膝蓋骨Pを支持できる。
【0042】
〔第二実施形態〕
第二実施形態の膝サポータ101を図面に基づいて詳細に説明する。
図7は、膝サポータ101を裏返した状態を示す図である。第二実施形態では、前述した第一実施形態と同一の部位には同一の符号を付与し詳細な説明を省略する。
〔膝サポータ101〕
図7に示すように、膝サポータ101は、正面部10において上下に対向するように被覆部40を2つ取り付けて、計4つの支持部30を備えている。膝サポータ101は、このように構成することで、支持部30が膝蓋骨Pの下方向側だけでなく、上方向側からの支持することができる。膝サポータ101は、膝サポータ1と比較してよりしっかりと膝蓋骨Pを支持することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態の説明を行ったが、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内で変更ができる。本例において、正面部10は、第一伸縮部11と第二伸縮部12の挿入糸in、緯糸bの太さを変えることで、引張強さや肉厚を変えているが、経糸v、挿入糸in、緯糸bの本数や密度や撚り数等を変えることで、引張強さや肉厚を変えても良い。
【0044】
本例において、正面部10は、第一伸縮部11の挿入糸inの太さを940デシテックスにし、第二伸縮部12の挿入糸inの太さを1880デシテックスにすることで、第二伸縮部12の挿入糸inの質量が第一伸縮部11の挿入糸inの質量と比較して約2倍になるように形成されている。しかし、第一伸縮部11の挿入糸inの太さや、第二伸縮部12の挿入糸inの太さを適宜変更することで、第二伸縮部12の挿入糸inの質量が第一伸縮部11の挿入糸inの質量と比較して約1.5倍~3.0倍になるように形成しても良い。
【0045】
本例において、背面部20は、第一屈曲部21と第二屈曲部22の挿入糸in、緯糸bの太さを変えることで、引張強さや肉厚を変えているが、経糸v、挿入糸in、緯糸bの本数や密度や撚り数等を変えることで、引張強さや肉厚を変えても良い。本例において、背面部20は、第一屈曲部21の挿入糸inの太さを940デシテックスにし、第二屈曲部22の挿入糸inの太さを1880デシテックスにすることで、第二屈曲部22の挿入糸inの質量が第一屈曲部21の挿入糸inの質量と比較して約2倍になるように形成されている。しかし、第一屈曲部21の挿入糸inの太さや、第二屈曲部22の挿入糸inの太さを適宜変更することで、第二伸縮部12の挿入糸inの質量が第一伸縮部11の挿入糸inの質量と比較して約1.5倍~3.0倍になるように形成しても良い。
【0046】
本例において、挿入糸inは、芯にポリウレタンを使用しているが、弾性糸であればラテックス、エラストマーおよび天然ゴムのいずれか又はこれらを組み合わせた糸でも良い。本例において、挿入糸inは、シングルカバードヤーン(SCY)を使用しているが、他のコアスパンヤーン(CSY)、プライヤーン(PLY)、フィラメントツイスティッドヤーン(FTY)、ダブルカバードヤーン(DCY)等の他の複合糸であっても良い。支持部30は、第一実施形態において2つ用意され、第二実施形態において4つ用意されているが、膝蓋骨Pを支持するのであれば、いくつ用意されても良く、膝蓋骨Pを中心にどの位置から支持しても良い。
【0047】
本例において、正面部10は太さの異なる挿入糸inが編まれた第一伸縮部11と第二伸縮部12とから形成され、背面部20は太さの異なる挿入糸inが編まれた第一屈曲部21と第二屈曲部22とから形成され、それぞれ2種類の生地が一体に形成されている。しかし、正面部10や背面部20は、さらに太さの異なる挿入糸inが編まれた複数の生地(例えば、第三伸縮部、第四伸縮部、第三屈曲部、第四屈曲部)で形成されても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 :膝サポータ
10 :正面部
20 :背面部
30 :支持部
40 :被覆部
50 :縫い合わせ部