(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005214
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】トラス梁の制振構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/98 20060101AFI20250108BHJP
E04B 1/342 20060101ALI20250108BHJP
E04B 1/32 20060101ALI20250108BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
E04B1/98 L
E04B1/342 A
E04B1/32 102B
E04H9/02 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105307
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田島 暢之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 祥子
(72)【発明者】
【氏名】朝川 智大
(72)【発明者】
【氏名】呉 南崎
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DG01
2E001FA14
2E139AA17
2E139AC19
2E139BA12
(57)【要約】
【課題】トラス梁の下の空間を確保しつつ、トラス梁を制振する。
【解決手段】制振構造100は、一端部117が支持された第一トラス梁110と、第一トラス梁110よりも低く第一トラス梁110の上側他端接合部122の他方側に配置され他端部137が支持された第二トラス梁130と、第一トラス梁110の上側他端接合部122よりも一方側の上側一端接合部144と第二トラス梁130の下側一端接合部142とに接合された第一トラス架構210と、第一トラス梁110の上側他端接合部122と第二トラス梁130の下側一端接合部142よりも一方側の下側他端接合部144とに接合された第二トラス架構230と、第一トラス架構210と第二トラス架構230とに接続され第一トラス架構210と第二トラス架構230との上下方向の相対変位によって制振効果を発揮するオイルダンパー252と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って配置され一端部が支持された第一トラス梁と、
前記第一トラス梁よりも低く配置され、平面視において前記第一トラス梁の他端部の前記所定方向の他方側に前記所定方向に沿って配置され他端部が支持された第二トラス梁と、
前記第一トラス梁の前記他端部よりも前記所定方向の一方側の部位と前記第二トラス梁の一端部とに接合された第一接合部材と、
前記第一トラス梁の前記他端部と、前記第二トラス梁の前記一端部よりも前記所定方向の一方側の部位と、に接合された第二接合部材と、
前記第一接合部材と前記第二接合部材とに接続され、前記第一接合部材と前記第二接合部材との上下方向の相対変位によって制振効果を発揮する制振部材と、
を備えるトラス梁の制振構造。
【請求項2】
前記第一トラス梁及び前記第二トラス梁は、平面視において、それぞれ前記所定方向と直交する直交方向に間隔をあけて並んで配置され、
前記第一接合部材は、前記直交方向に沿って配置され、複数の前記第一トラス梁及び前記第二トラス梁に接合され、前記直交方向の両端部が支持された第一トラス架構であり、
前記第二接合部材は、前記直交方向に沿って配置され、複数の前記第一トラス梁及び前記第二トラス梁に接合された第二トラス架構である、
請求項1に記載のトラス梁の制振構造。
【請求項3】
前記第一トラス梁と前記第二トラス梁とは、固有振動数が異なっている、
請求項1又は請求項2に記載のトラス梁の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラス梁の制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、両端が固定構造物で支持された梁構造体の鉛直振動を低減する制振構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、梁構造体の端部と固定構造物との連結部分に、当該梁構造体に生じる鉛直方向の変形によるエネルギーを吸収するダンパー部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大スパンのトラス梁で大きな変位が生じるのはスパン中央部である。しかし、トラス梁のスパン中央部を制振するダンパー等の制振装置を設けると、制振装置の固定側の支持部材がトラス梁のスパン中央部に必要となり、トラス梁の下の大空間を有効活用できなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事実を鑑み、トラス梁の下の空間を確保しつつ、トラス梁を制振することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、所定方向に沿って配置され一端部が支持された第一トラス梁と、前記第一トラス梁よりも低く配置され、平面視において前記第一トラス梁の前記所定方向他方側に前記所定方向に沿って配置され他端部が支持された第二トラス梁と、前記第一トラス梁の前記他端部よりも前記所定方向一方側の部位と前記第二トラス梁の一端部とに接合された第一接合部材と、前記第一トラス梁の前記他端部と、前記第二トラス梁の前記一端部よりも前記所定方向一方側の部位と、に接合された第二接合部材と、前記第一接合部材と前記第二接合部材とに接続され、前記第一接合部材と前記第二接合部材との上下方向の相対変位によって制振効果を発揮する制振部材と、を備えるトラス梁の制振構造である。
【0007】
第一態様のトラス梁の制振構造では、地震時に第一トラス梁と第二トラス梁とは上下振動する。第一トラス梁と第二トラス梁とが同位相で上下振動していない状態であれば、第一トラス梁の他端部側と第二トラス梁の一端部側との回転角が異なるので、第一接合部材に対して第二接合部材は上下方向に相対変位する。そして、第一接合部材と第二接合部材とに上下方向の相対変位によって制振部材が制振効果を発揮し、第一トラス梁及び第二トラス梁の上下振動が低減する。すなわち、第一トラス梁及び第二トラス梁の下の空間を確保しつつ、第一トラス梁及び第二トラス梁が制振される。
【0008】
第二態様は、前記第一トラス梁及び前記第二トラス梁は、平面視において、それぞれ前記所定方向と直交する直交方向に間隔をあけて並んで配置され、前記第一接合部材は、前記直交方向に沿って配置され、複数の前記第一トラス梁及び複数の前記第二トラス梁に接合され、前記直交方向の両端部が支持された第一トラス架構であり、前記第二接合部材は、前記直交方向に沿って配置され、複数の前記第一トラス梁及び複数の前記第二トラス梁に接合された第二トラス架構である、第一態様に記載のトラス梁の制振構造である。
【0009】
第二態様のトラス梁の制振構造では、第一トラス梁及び第二トラス梁は、平面視において、それぞれ所定方向と直交する直交方向に間隔をあけて並んで配置されているので、第一トラス梁及び第二トラス梁の下に大空間が設けられる。
【0010】
第三態様は、前記第一トラス梁と前記第二トラス梁とは、固有振動数が異なっている、第一態様又は第二態様に記載のトラス梁の制振構造である。
【0011】
第三態様のトラス梁の制振構造では、第一トラス梁と第二トラス梁とは固有振動数が異なっているので、第一トラス梁と第二トラス梁とが確実に同位相で上下振動しない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第一トラス梁及び第二トラス梁の下の空間を確保しつつ、第一トラス梁及び第二トラス梁を制振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】トラス梁の制振構造が適用された建物のY方向の中央部のX方向に沿った構成を模式的に示す構成図である。
【
図2】
図1の建物の要部を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1の建物の要部をX方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本実施形態のトラス梁の制振構造が適用された建物について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向として、矢印Zで示す。
【0015】
なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、各要素の寸法及び比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない場合がある。複数の図面の相互間において各要素の寸法及び比率等は必ずしも一致していない場合がある。明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0016】
[建物]
まず、トラス梁の制振構造が適用された建物の構造について説明する。
【0017】
図1及び
図3に示すように、本実施形態の制振構造100は、複数の第一トラス梁110、複数の第二トラス梁130及び制振架構200を有して構成されている。制振架構200は、第一トラス架構210、第二トラス架構230、連結部材250及びオイルダンパー252等を有して構成されている。本実施形態では、第一トラス梁110、第二トラス梁130、第一トラス架構210及び第二トラス架構230は、いずれも鉄骨造であるが、これに限定されるものではない。なお、
図1、
図2及び
図3における左側をX方向の一方側とし、右側をX方向における他方側とする。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の制振構造100が適用された建物10は、建物内部12に舞台14と客席16とを有する劇場であるが、これに限定されるものではない。なお、舞台14は建物内部12の所定方向であるX方向の一方側に設けられ、客席16は舞台14のX方向の他方側に設けられている。
【0019】
図1に示すように、客席16はX方向の他方側に向かって高くなる階段状になっている。建物10の屋根11は、X方向の一方側が高く他方側が低くなっている。そして、屋根11や図示されていない天井等を大スパンの第一トラス梁110及び大スパンの第二トラス梁130が支持している。
【0020】
本実施形態では、第二トラス梁130の梁長(X方向の全長)は、第一トラス梁110の梁長よりも長い。よって、第一トラス梁110と第二トラス梁130とは、固有振動数が異なっている。
【0021】
図2に示すように、平面視において、第一トラス梁110及び第二トラス梁130は、X方向に沿って配置されると共にY方向に間隔をあけて配置されている。各第二トラス梁130は、各第一トラス梁110のX方向の他方側の同一線上に設置されている。
【0022】
図1及び
図3に示すように、第二トラス梁130は、第一トラス梁110よりも低い位置に配置されている。そして、第一トラス梁110の他端部は、第二トラス梁130の一端部よりも一方側にある。よって、平面視において、第一トラス梁110の他端側と第二トラス梁130の一端側とは一部が重なっている。
【0023】
ここで、第一トラス梁110の他方側における第二トラス梁130の一方側と重なっている部分を第一ラップ部120とし、第二トラス梁130の一方側における第一トラス梁110と重なっている部分を第二ラップ部140とする。そして、第一トラス梁110の第一ラップ部120の他端を上側他端接合部122とし、第一ラップ部120の一端を上側一端接合部124とする。同様に、第二トラス梁130の第二ラップ部140の一端を下側一端接合部142とし、第二ラップ部140の他端を下側他端接合部144とする。
【0024】
第一トラス梁110は、X方向に沿った第一上弦材112及び第一下弦材114と、これら第一上弦材112と第一下弦材114に接合された第一ラチス116とで構成されている。同様に第二トラス梁130は、Xに沿った第二上弦材132及び第二下弦材134と、これら第二上弦材132と第二下弦材134に接合された第二ラチス136とで構成されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、第一トラス梁110の第一上弦材112の他端部が上側他端接合部122である。同様に第二トラス梁130の第二上弦材132の一端部が下側一端接合部142である。
【0026】
図1~
図3に示すように、各第一トラス梁110の一端部117は、それぞれ第一柱118に接合され支持されている。また、各第二トラス梁130の他端部137は、それぞれ第二柱138に接合され支持されている。なお、本実施形態においては、第一トラス梁110の第一上弦材112の一端部が一端部117であり、第二トラス梁130の第二上弦材132の他端部が他端部137である。各第一柱118及び各第二柱138は、それぞれ下端部が図示されていない基礎や下部構造等に接合されている。
【0027】
図1及び
図3に示すように、第一トラス梁110の第一ラップ部120と第二トラス梁130の第二ラップ部140との間には、制振架構200が設けられている。前述したように、制振架構200は、第一トラス架構210、第二トラス架構230、連結部材250及びオイルダンパー252等を有して構成されている。
【0028】
図4に示すように、第一トラス架構210は、上下方向に沿った第一縦材212とY方向に沿った第一横材214と第一ブレース216とを有して構成されている。第一縦材212はY方向に間隔をあけて設置されている。
【0029】
第一横材214は、第一縦材212間に上下方向に間隔をあけて設置され、両端部が第一縦材212に接合されている。第一ブレース216は、第一縦材212と第一横材214との接合部位間(格子の隅部間)に接合されている。
【0030】
同様に第二トラス架構230は、Y方向に間隔をあけて設置された第二縦材232間に上下方向に間隔をあけて設置され両端部が第二縦材232接合された第二横材234と、第二縦材232と第二横材234との接合部位間(格子の隅部間)に接合された第二ブレース236と、を有して構成されている。
【0031】
図1、
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、第一トラス架構210と第二トラス架構230とは、X方向に沿った複数の連結部材250で連結されている。連結部材250は、上下方向に間隔をあけて配置され、第一縦材212及び第二縦材232における第一横材214及び第二横材234との接合部位に両端部が接合されている。そして、第一縦材212の連結部材250との接合部位と、第二縦材232の連結部材250との接合部位との間(格子の隅部間)に、制振装置の一例としてのオイルダンパー252の両端部が接合されている。
【0032】
なお、第一縦材212及び第二縦材232における第一横材214及び第二横材234との接合部位の最下端には、連結部材250が接合されていない。後述するように、第一縦材212の下端部には第二トラス梁130の下側一端接合部142が接合され、第二縦材232の下端部には第二トラス梁130の下側他端接合部144が接合されている(
図3参照)。そして、オイルダンパー252の両端部がこれらの接部位に接合されている(
図3参照)。
【0033】
図1及び
図3に示すように、Y方向に並んだ複数の第一トラス梁110の第一ラップ部120のX方向の両端及び第二トラス梁130の第二ラップ部140のX方向の両端は、第一トラス架構210及び第二トラス架構230が接合されている(
図2も参照)。
【0034】
具体的には、各第一トラス梁110の第一ラップ部120の他端である上側他端接合部122に第二トラス架構230の各第二縦材232の上端部が縦補助材128を介して接合されている(
図2及び
図4も参照)。また、第一ラップ部120の一端である上側一端接合部124に第一トラス架構210の各第一縦材212の上端部が接合されている(
図2及び
図4も参照)。また、第一トラス梁110における第一縦材212が接合されている部位の第一上弦材112と第一下弦材114とには、第一束材126が接合されている。
【0035】
各第二トラス梁130の第二ラップ部140の一端である下側一端接合部142に第一トラス架構210の各第一縦材212の下端部が接合されている(
図2及び
図4も参照)。また、第二ラップ部140の他端である下側他端接合部144に第二トラス架構230の各第二縦材232の下端部が接合されている(
図2及び
図4も参照)。また、第二トラス梁130における第二縦材232が接合されている部位の第二上弦材132と第二下弦材134とには、第二束材146が接合されている。
【0036】
図3に示すように、Y方向両側の第一縦材212と第二トラス梁130の第二ラップ部140の下側一端接合部142との接合部位には、中間柱290が接合されている。中間柱290は下方に延び下端部が図示されていない基礎や下部構造等に接合され固定されている。
【0037】
[作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0038】
図3の想像線T1、T2で示すように、地震時に第一トラス梁110と第二トラス梁130とは上下振動する。第一トラス梁110と第二トラス梁130とが同位相で上下振動していない状態であれば、第一トラス梁110の他端部(上側他端接合部122)側の第一ラップ部120と第二トラス梁130の一端部(下側一端接合部142)側の第二ラップ部140との回転角が異なる。よって、想像線T3で示すように、制振架構200を構成する第一トラス架構210と第二トラス架構230とが、上下方向に相対変位する。そして、これによりオイルダンパー252が伸縮して制振効果を発揮し、第一トラス梁110及び第二トラス梁130の上下振動が低減する。
【0039】
図3の例では、第一トラス梁110が下側凸の状態で第二トラス梁130が上側凸の状態となっている。よって、制振架構200を構成する第一トラス架構210に対して第二トラス架構230が上方向に相対変位する。これにより、オイルダンパー252が伸びて制振効果を発揮する。
【0040】
なお、仮に第一トラス梁110と第二トラス梁130とが同位相で上下振動すると、第一トラス架構210と第二トラス架構230とは上下方向に相対変位しないので、オイルダンパー252も伸縮しない、つまり、オイルダンパー252は制振効果を発揮しない。
【0041】
しかし、本実施形態では、第一トラス梁110と第二トラス梁130とは梁長が異なり固有振動数が異なっているので、第一トラス梁110と第二トラス梁130とが確実に同位相で上下振動しない。つまり、第一トラス梁110と第二トラス梁130とが同位相で上下振動してオイルダンパー252の制振効果が発揮されないことが確実に防止される。
【0042】
ここで、
図3に示すように、建物10では、Y方向に並んだ各第一トラス梁110のX方向の一端部、Y方向に並んだ各第二トラス梁130のX方向の他端部及び制振架構2000のY方向の両端部がそれぞれ第一柱118、第二柱138及び中間柱290で支持されているだけで、各第一トラス梁110、各第二トラス梁130及び制振架構200の下には大空間が設けられている。
【0043】
そして、大スパンの第一トラス梁110及び第二トラス梁130であっても前述したように制振架構200によって制振されている。よって、第一トラス梁110及び第二トラス梁130のスパン中央部を制振するダンパー等の制振装置を支持する支持部材をスパン中央部に設けることによる大空間を有効活用できなくなることがない。
【0044】
このような本実施形態の制振構造100を適用することで、大スパンの第一トラス梁110及び第二トラス梁130の下の大空間(建物内部12)を確保しつつ、第一トラス梁110及び第二トラス梁130を制振することができる。
【0045】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、構造的に第一トラス梁110と第二トラス梁130とは梁長が異なることで固有振動数が異なっていたが、これに限定されるものではない。第一トラス梁110と第二トラス梁130との固有振動数が異なる構造的な違いはどのようなものであってもよい。例えば、第一トラス梁110と第二トラス梁130との荷重条件の違いにより質量が異なることで固有振動数が異なっていてもよい。
【0047】
ここで、仮に第一トラス梁110と第二トラス梁130とが設計的に同一の構造及び部材断面とされ、設計的には固有振動数が同一であったとしても、実際に構築された第一トラス梁110と第二トラス梁130は種々の誤差やバラツキ等によって完全に固有振動数が一致することはない又は極めてまれである。更に、極めてまれであるが、仮に第一トラス梁110と第二トラス梁130との固有振動数が実際に一致していたとしても、地震波の入力自体が位相差もあるため、両者が同位相で振動し続けることはない又は極めてまれである。
【0048】
したがって、第一トラス梁110と第二トラス梁130とが同一の構造及び部材断面であっても制振構造100を適用することで制振することができる。
【0049】
また、例えば、Y方向両側の第二トラス架構230の第二縦材232も第一トラス架構210の中間柱290と同様に、
図2及び
図3で示す想像線の中間柱292で支持されていてもよい。なお、この場合、中間柱292は、上端部を第二下弦材134と第二束材146との接合部位に接合する。また、中間柱292は下方に延び下端部が図示されていない基礎や下部構造等に接合され固定されている。
【0050】
また、上記実施形態では、第一トラス架構210と第二トラス架構230とは連結部材250で連結されていたが、これに限定されるものではなく、両者は連結部材250で連結されていなくもよい。
【0051】
また、トラス構造の以外の接合部材で第一トラス梁110と第二トラス梁130とを接合してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、制振効果を発揮する制振部材はオイルダンパー252であったがこれに限定されるものではない。オイルダンパー252以外の制振部材、例えば、粘性体ダンパー、粘弾性体ダンパー、鋼材履歴系ダンパー、摩擦ダンパー及び回転慣性ダンパー等であってもよい。
【0053】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0054】
10 建物
100 制振構造
110 第一トラス梁
117 一端部
118 第一柱
122 上側他端接合部(他端部の一例)
124 上側一端接合部(他端部よりも一方側の部位の一例)
130 第二トラス梁
137 他端部
138 第二柱
142 下側一端接合部(一端部の一例)
144 下側他端接合部(一端部よりも他方側の部位の一例)
200 制振架構
210 第一トラス架構(第一接合部材の一例)
230 第二トラス架構(第二接合部制の一例)
252 オイルダンパー(制振部材の一例)