IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-操舵制御装置及び操舵制御方法 図1
  • 特開-操舵制御装置及び操舵制御方法 図2
  • 特開-操舵制御装置及び操舵制御方法 図3
  • 特開-操舵制御装置及び操舵制御方法 図4
  • 特開-操舵制御装置及び操舵制御方法 図5
  • 特開-操舵制御装置及び操舵制御方法 図6
  • 特開-操舵制御装置及び操舵制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005216
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】操舵制御装置及び操舵制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20250108BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105309
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池谷 美香
(72)【発明者】
【氏名】安部 健一
(72)【発明者】
【氏名】梶澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一馬
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼台 尭資
(72)【発明者】
【氏名】物部 魁士
(72)【発明者】
【氏名】増田 実栄
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC38
3D232DA03
3D232DA63
3D232DA90
3D232DA99
3D232DC01
3D232DC08
3D232DC09
3D232DC10
3D232DC33
3D232DC35
3D232DD02
3D232DD03
3D232DD15
3D232DE01
3D232DE05
3D232EA01
3D232EB04
3D232EB12
3D232EC23
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB19
3D333CB29
3D333CB46
3D333CC15
3D333CC18
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD09
3D333CD21
3D333CE40
3D333CE53
(57)【要約】
【課題】ステアリング軸が際限なく回転し続ける事態に陥ったとしても、こうした事態への早期対処が可能になる操舵制御装置及び操舵制御方法を提供する。
【解決手段】操舵制御装置は、操舵ユニットと転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有する車両用操舵システムに適用される。操舵ユニットは、ステアリング軸と、反力モータと、ストッパ機構と、操舵側回転角センサとを備えている。操舵制御装置は、反力モータを駆動源とする操舵ユニットを制御対象とする反力制御部を含む。反力制御部は、操舵側回転角センサの検出結果に基づき得られる絶対回転角度に基づいて、異常判定処理を実行するように構成されている。異常判定処理は、絶対回転角度が規制回転量内から外れていることを判断できる場合に、異常条件の成立を判定する処理(ステップ304)を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングホイールによって操舵される操舵ユニットと前記車両の転舵輪を転舵させるべく動作する転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有する車両用操舵システムに適用される操舵制御装置であって、
前記操舵ユニットは、
前記ステアリングホイールに連結されたステアリング軸と、
前記ステアリングホイールに操舵反力を与えるように、前記ステアリング軸にモータトルクを付与する反力モータと、
前記ステアリング軸の左右方向の回転を規制回転量内に規制するストッパ機構と、
前記ステアリング軸の回転角度を検出する角度センサと、を備え、
前記操舵制御装置は、前記反力モータを駆動源とする前記操舵ユニットを制御対象とする反力制御部を含み、
前記反力制御部は、
前記角度センサの検出結果に基づいて、前記ステアリング軸の回転角度の積算値である積算回転角度を取得する積算回転角度取得処理と、
前記積算回転角度に基づいて、前記ストッパ機構の異常を検出する異常条件が成立するか否かを判定する異常判定処理と、を実行するように構成されており、
前記異常判定処理は、前記積算回転角度が前記規制回転量内から外れていることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定する処理を含む操舵制御装置。
【請求項2】
前記積算回転角度取得処理は、
前記ステアリングホイールの中立位置を示す基準値が内部的に設定されている第1の状態の場合に、当該基準値に対する前記積算回転角度である第1の絶対回転角度を取得する処理と、
前記基準値が内部的に設定されていない第2の状態の場合に、当該基準値を基準としない前記積算回転角度である第2の絶対回転角度を取得する処理と、を含み、
前記異常判定処理は、
前記第1の状態のとき、前記第1の絶対回転角度に基づいて、前記異常条件の成立を判定する第1の異常判定処理と、
前記第2の状態のとき、前記第2の絶対回転角度に基づいて、前記異常条件の成立を判定する第2の異常判定処理と、を含む請求項1に記載の操舵制御装置。
【請求項3】
前記第1の異常判定処理は、前記第1の絶対回転角度の大きさが前記規制回転量の半分以上である第1の閾値以上であることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定する処理であり、
前記第2の異常判定処理は、前記第2の絶対回転角度の大きさが前記規制回転量以上である第2の閾値以上であることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定する処理である請求項2に記載の操舵制御装置。
【請求項4】
前記操舵ユニットは、前記ステアリング軸の回転を機械的にロックするロック機構を備え、
前記第2の状態は、前記ロック機構が前記ステアリング軸の回転をロックしている状態から遷移する状態であり、
前記第1の状態は、前記第2の状態を経由して遷移する場合を含み、
前記第2の閾値は、前記第1の閾値と、少なくとも前記ロック機構の構成に関わる調整量とを考慮した値である請求項3に記載の操舵制御装置。
【請求項5】
前記基準値は、前記ステアリング軸を第1の方向又は第2の方向の限界位置までそれぞれ移動させる学習動作によって取得される値であり、
前記反力制御部は、前記第2の状態のとき、前記学習動作させることによって前記基準値を内部的に設定するための学習処理を実行するように構成されており、
前記学習処理は、
前記学習動作させるなかで、各方向の限界位置のときの前記ステアリング軸の位置である限界位置を当該各方向の毎に取得する処理と、
前記各方向の毎に取得した限界位置に基づき前記基準値を設定する処理と、を含む請求項2~請求項4のうちいずれか一項に記載の操舵制御装置。
【請求項6】
車両のステアリングホイールによって操舵される操舵ユニットと前記車両の転舵輪を転舵させるべく動作する転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有する車両用操舵システムに適用される操舵制御方法であって、
前記操舵制御方法は、前記ステアリングホイールに操舵反力を与えるように、当該ステアリングホイールに連結されたステアリング軸にモータトルクを付与する反力モータを駆動源とする前記操舵ユニットを制御するための反力制御処理を含み、
前記反力制御処理は、
前記ステアリング軸の回転角度を検出する角度センサの検出結果に基づいて、前記ステアリング軸の回転角度の積算値である積算回転角度を取得することと、
前記積算回転角度に基づいて、前記ステアリング軸の左右方向の回転を規制回転量内に規制するストッパ機構の異常を検出する異常条件が成立するか否かを判定することと、を含み、
前記異常条件が成立するか否かを判定することは、前記積算回転角度が前記規制回転量内から外れていることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定することを含む操舵制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵制御装置及び操舵制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、操舵ユニットと転舵ユニットとが機械的に分離されている車両用操舵システムが記載されている。こうした車両用操舵システムにおいて、操舵ユニットが備えているステアリング軸の回転範囲は、操舵ユニットと機械的に分離されている転舵ユニットによっては制限されない。そのため、操舵ユニットは、ステアリング軸の回転範囲を機械的に制限するためのストッパ機構を備えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-69844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記操舵システムでは、例えば、ストッパ機構が、ステアリング軸の回転範囲を機械的に制限することができなくなると、当該ステアリング軸が際限なく回転し続ける事態に陥ってしまう。こうした事態に対処するために、ステアリング軸の回転範囲を機械的に制限することができなくなることの早期検出が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し得る操舵制御装置は、車両のステアリングホイールによって操舵される操舵ユニットと前記車両の転舵輪を転舵させるべく動作する転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有する車両用操舵システムに適用される。前記操舵ユニットは、前記ステアリングホイールに連結されたステアリング軸と、前記ステアリングホイールに操舵反力を与えるように、前記ステアリング軸にモータトルクを付与する反力モータと、前記ステアリング軸の左右方向の回転を規制回転量内に規制するストッパ機構と、前記ステアリング軸の回転角度を検出する角度センサと、を備え、前記操舵制御装置は、前記反力モータを駆動源とする前記操舵ユニットを制御対象とする反力制御部を含み、前記反力制御部は、前記角度センサの検出結果に基づいて、前記ステアリング軸の回転角度の積算値である積算回転角度を取得する積算回転角度取得処理と、前記積算回転角度に基づいて、前記ストッパ機構の異常を検出する異常条件が成立するか否かを判定する異常判定処理と、を実行するように構成されており、前記異常判定処理は、前記積算回転角度が前記規制回転量内から外れていることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定する処理を含む。
【0006】
上記構成によれば、反力制御部は、ストッパ機構の異常をソフトウェア的に検出する異常判定処理を含むようにしている。これにより、車両用操舵システムでは、例えば、ストッパ機構が、ステアリング軸の回転範囲を機械的に制限することができなくなったとしても、早期検出が可能になる。したがって、ステアリング軸が際限なく回転し続ける事態に陥ったとしても、こうした事態への早期対処が可能になる。
【0007】
上記操舵制御装置において、前記積算回転角度取得処理は、前記ステアリングホイールの中立位置を示す基準値が内部的に設定されている第1の状態の場合に、当該基準値に対する前記積算回転角度である第1の絶対回転角度を取得する処理と、前記基準値が内部的に設定されていない第2の状態の場合に、当該基準値を基準としない前記積算回転角度である第2の絶対回転角度を取得する処理と、を含み、前記異常判定処理は、前記第1の状態のとき、前記第1の絶対回転角度に基づいて、前記異常条件の成立を判定する第1の異常判定処理と、前記第2の状態のとき、前記第2の絶対回転角度に基づいて、前記異常条件の成立を判定する第2の異常判定処理と、を含むことが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、反力制御部は、第1の状態及び第2の状態のいずれの状態であるかに応じて、異常条件の成立要件が異なる処理を含むようにしている。これにより、第1の状態及び第2の状態を設定可能な車両用操舵システムにおいて、状態に関係なく、積算回転角度が規制回転量内から外れていることを好適に判断することができるようになる。したがって、基準値が内部的に設定されているか否かに関係なく、ストッパ機構の異常を早期検出することができる。
【0009】
上記操舵制御装置において、前記第1の異常判定処理は、前記第1の絶対回転角度の大きさが前記規制回転量の半分以上である第1の閾値以上であることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定する処理であり、前記第2の異常判定処理は、前記第2の絶対回転角度の大きさが前記規制回転量以上である第2の閾値以上であることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定する処理であることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、第1の異常判定処理は、第1の状態において、第1の絶対回転角度の大きさを判断する場合、第1の閾値を用いることによって、ストッパ機構の異常を好適に判断することができる。一方、第2の異常判定処理は、第2の状態において、第2の絶対回転角度の大きさを判断する場合、第1の閾値と互いに異なる第2の閾値を用いることによって、ストッパ機構の異常を好適に判断することができる。これにより、第1の状態及び第2の状態に応じた判断を実施できる。
【0011】
上記操舵制御装置において、前記操舵ユニットは、前記ステアリング軸の回転を機械的にロックするロック機構を備え、前記第2の状態は、前記ロック機構が前記ステアリング軸の回転をロックしている状態から遷移する状態であり、前記第1の状態は、前記第2の状態を経由して遷移する場合を含み、前記第2の閾値は、前記第1の閾値と、少なくとも前記ロック機構の構成に関わる調整量とを考慮した値であることが好ましい。
【0012】
例えば、第2の状態において想定できるステアリングホイールの初期状態は、第1の閾値に対応する状態に至る手前まで回転している状況が考えられる。この状況において、ロック機構がステアリング軸の回転をロックしている場合、さらにロック機構の構成に関わって、ステアリングホイールが第1の閾値を超える状態まで回転していることも想定できる。これに対して、第2の閾値は、ロック機構の構成に関わる調整量を考慮した値である。これにより、ストッパ機構の異常を好適に検出することができる。
【0013】
上記操舵制御装置において、前記基準値は、前記ステアリング軸を第1の方向又は第2の方向の限界位置までそれぞれ移動させる学習動作によって取得される値であり、前記反力制御部は、前記第2の状態のとき、前記学習動作させることによって前記基準値を内部的に設定するための学習処理を実行するように構成されており、前記学習処理は、前記学習動作させるなかで、各方向の限界位置のときの前記ステアリング軸の位置である限界位置を当該各方向の毎に取得する処理と、前記各方向の毎に取得した限界位置に基づき前記基準値を設定する処理と、を含むことが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、学習動作させるなかであっても、ストッパ機構の異常を好適に検出することができる。
上記課題を解決し得る操舵制御方法は、車両のステアリングホイールによって操舵される操舵ユニットと前記車両の転舵輪を転舵させるべく動作する転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有する車両用操舵システムに適用される方法である。前記操舵制御方法は、前記ステアリングホイールに操舵反力を与えるように、当該ステアリングホイールに連結されたステアリング軸にモータトルクを付与する反力モータを駆動源とする前記操舵ユニットを制御するための反力制御処理を含み、前記反力制御処理は、前記ステアリングホイールに連結されたステアリング軸の回転角度を検出する角度センサの検出結果に基づいて、前記ステアリング軸の回転角度の積算値である積算回転角度を取得することと、前記積算回転角度に基づいて、前記ステアリング軸の左右方向の回転を規制回転量内に規制するストッパ機構の異常を検出する異常条件が成立するか否かを判定することと、を含み、前記異常条件が成立するか否かを判定することは、前記積算回転角度が前記規制回転量内から外れていることを判断できる場合に、前記異常条件の成立を判定することを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の操舵制御装置及び操舵制御方法によれば、ステアリング軸が際限なく回転し続ける事態に陥ったとしても、こうした事態への早期対処が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態にかかるステバイワイヤ式の操舵装置の構成を示す図である。
図2図1の操舵制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】エンド出力処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図4】学習処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図5】第1の異常検出処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図6】第2の異常検出処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図7】第1の閾値及び第2の閾値について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態に係る操舵制御装置を説明する。
車両用操舵システム2は、操舵制御装置1を備えている。車両用操舵システム2は、操舵ユニット4と、転舵ユニット6とを備えている。操舵ユニット4は、操舵部材である車両のステアリングホイール3を介して運転者により操舵される。転舵ユニット6は、運転者により操舵ユニット4に入力される操舵に応じて車両の左右の転舵輪5を転舵させる。本実施形態の車両用操舵システム2は、例えば、操舵ユニット4と、転舵ユニット6との間の動力伝達路が機械的に常時分離した構造を有している。後述の操舵アクチュエータ12と、後述の転舵アクチュエータ31との間の動力伝達路は、機械的に常時分離した構造とされている。すなわち、車両用操舵システム2は、ステアバイワイヤ式の操舵装置を備える。
【0018】
操舵ユニット4は、ステアリング軸11と、操舵アクチュエータ12と、スパイラルケーブル機構15と、ロック機構16とを備えている。ステアリング軸11は、ステアリングホイール3に連結されている。ステアリング軸11におけるステアリングホイール3に連結された側と反対側の端部11aは、ストッパ機構11bを有している。ストッパ機構11bは、ステアリング軸11の回転範囲を規定する。これにより、ステアリング軸11と一体回転するステアリングホイール3の回転範囲は、ストッパ機構11bによって規定される。例えば、ステアリングホイール3は、右方の限界位置3aと左方の限界位置3bとの間を回転範囲として規制回転量θ1内で回転可能である。
【0019】
操舵アクチュエータ12は、反力モータ13と、操舵側減速機構14とを有している。反力モータ13は、ステアリング軸11を介してステアリングホイール3に対して操舵に抗する力である操舵反力を付与する操舵側モータである。反力モータ13は、例えば、ウォームアンドホイールからなる操舵側減速機構14を介してステアリング軸11に連結されている。本実施形態の反力モータ13には、例えば、三相のブラシレスモータが採用されている。
【0020】
スパイラルケーブル機構15は、ステアリングホイール3に連結されている。スパイラルケーブル機構15は、第1ハウジング15aと、第2ハウジング15bと、筒状部材15cと、スパイラルケーブル15dとを有している。第1ハウジング15aは、ステアリングホイール3に固定されている。第2ハウジング15bは、車体に固定されている。筒状部材15cは、第2ハウジング15bに固定されるとともに、第1ハウジング15a及び第2ハウジング15bによって区画された空間に収容されている。スパイラルケーブル15dは、筒状部材15cに巻きつけられている。筒状部材15cには、ステアリング軸11が挿通されている。スパイラルケーブル15dは、例えば、ステアリングホイール3に固定されたホーン及びエアバッグ等と、バッテリ47等とを接続する電気配線である。スパイラルケーブル15dの全長Lcaは、ホーン及びエアバッグ等と、バッテリ47との間の距離よりも十分に大きく、その全長Lcaに応じた範囲でステアリングホイール3の回転を許容しつつ、ホーン及びエアバッグ等に電力を供給する。また、スパイラルケーブル15dの全長Lcaは、ストッパ機構11bにおける右方の限界位置3aと左方の限界位置3bとの間の回転範囲、すなわちステアリングホイール3の規制回転量θ1よりも十分に大きい。
【0021】
ロック機構16は、ステアリングホイール3の回転を機械的に規制するための機構である。ロック機構16は、たとえば、モータと、ロックバーとを有している。ロックバーは、モータの回転に連動して、ロック位置とアンロック位置との間を移動する。ロック位置は、ステアリング軸11のギヤ部に嵌合するロックバーの位置である。ロックバーがロック位置にあるとき、ロック機構16は、ステアリングホイール3の回転を規制するロック状態となる。アンロック位置は、ステアリング軸11のギヤ部に対する嵌合が解除されるロックバーの位置である。ロックバーがアンロック位置にあるとき、ロック機構16は、ステアリングホイール3の回転を許容するアンロック状態となる。
【0022】
転舵ユニット6は、ピニオン軸21と、ラック軸22と、ラックハウジング23とを備えている。ピニオン軸21とラック軸22とは、所定の交差角をもって連結されている。ピニオン軸21に形成されたピニオン歯21aとラック軸22に形成されたラック歯22aとを噛み合わせることによりラックアンドピニオン機構24が構成されている。ピニオン軸21は、転舵輪5の転舵位置である転舵角に換算可能な回転軸に相当する。ラックハウジング23は、ラックアンドピニオン機構24を収容している。
【0023】
ピニオン軸21のラック軸22と連結される側と反対側の一端は、ラックハウジング23から突出している。ラック軸22の両端は、ラックハウジング23の軸方向の両端から突出している。ラック軸22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド25を介してタイロッド26が連結されている。タイロッド26の先端は、それぞれ左右の転舵輪5が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。
【0024】
転舵ユニット6は、転舵アクチュエータ31を備えている。転舵アクチュエータ31は、転舵モータ32と、伝達機構33と、変換機構34とを備えている。転舵モータ32は、伝達機構33及び変換機構34を介してラック軸22に対して転舵輪5を転舵させる転舵力を付与する転舵側モータである。転舵モータ32は、例えば、ベルト伝達機構からなる伝達機構33を介して変換機構34に対して回転を伝達する。伝達機構33は、例えば、ボールねじ機構からなる変換機構34を介して転舵モータ32の回転をラック軸22の往復動に変換する。本実施形態の転舵モータ32には、例えば、三相のブラシレスモータが採用されている。
【0025】
車両用操舵システム2では、運転者によるステアリング操舵に応じて転舵アクチュエータ31からラック軸22にモータトルクが転舵力として付与されることで、転舵輪5の転舵角が変更される。このとき、操舵アクチュエータ12からは、運転者の操舵に抗する操舵反力がステアリングホイール3に付与される。これにより、車両用操舵システム2では、操舵アクチュエータ12から付与されるモータトルクである操舵反力により、ステアリングホイール3の操舵に必要な操舵トルクThが変更される。
【0026】
なお、ピニオン軸21を設ける理由は、ピニオン軸21と共にラック軸22をラックハウジング23の内部に支持するためである。車両用操舵システム2に設けられる図示しない支持機構によって、ラック軸22は、その軸方向に沿って移動可能に支持されるとともに、ピニオン軸21へ向けて押圧される。これにより、ラック軸22はラックハウジング23の内部に支持される。ただし、ピニオン軸21を使用せずにラック軸22をラックハウジング23に支持する他の支持機構を設けてもよい。
【0027】
<操舵装置の電気的構成>
図1に示すように、反力モータ13と転舵モータ32とは、操舵制御装置1に接続されている。操舵制御装置1は、各モータ13,32の作動を制御する。
【0028】
操舵制御装置1には、各種のセンサの検出結果が入力される。各種のセンサには、例えば、トルクセンサ41、操舵側回転角センサ42、転舵側回転角センサ43、及び車速センサ44が含まれる。
【0029】
トルクセンサ41は、ステアリング軸11におけるステアリングホイール3と操舵側減速機構14との間の部分に設けられている。トルクセンサ41は、運転者のステアリング操舵によりステアリング軸11に付与されたトルクを示す値である操舵トルクThを検出する。操舵トルクThは、ステアリング軸11の途中であって、ステアリング軸11におけるステアリングホイール3と操舵側減速機構14との間に設けられたトーションバー41aの捩じれに関わって検出される。操舵側回転角センサ42は、反力モータ13に設けられている。操舵側回転角センサ42は、反力モータ13の回転軸の回転角度である回転角θaを360度の範囲内で検出する。転舵側回転角センサ43は、転舵モータ32に設けられている。転舵側回転角センサ43は、転舵モータ32の回転軸の回転角度である回転角θbを360度の範囲内で検出する。車速センサ44は、車両の走行速度である車速Vを検出する。本実施形態において、操舵側回転角センサ42は、角度センサの一例である。
【0030】
操舵制御装置1には、電源システム46が接続されている。電源システム46は、バッテリ47を有している。バッテリ47は、車両に搭載された二次電池であり、反力モータ13及び転舵モータ32が動作するべく供給される電力の電力源になる。また、バッテリ47は、ロック機構16が動作するべく供給される電力の電力源になる。また、バッテリ47は、操舵制御装置1が動作するべく供給される電力の電力源になる。
【0031】
操舵制御装置1とバッテリ47との間には、イグニッションスイッチ等の車両の起動スイッチ48(図1中「SW」)が設けられている。起動スイッチ48は、操舵制御装置1とバッテリ47との間を接続する2つの給電線L1,L2のうちの給電線L1から分岐している給電線L2の途中に設けられている。起動スイッチ48は、エンジン等の車両の走行用駆動源を作動させて車両の動作が可能になるように各種の機能を起動する際に操作される。起動スイッチ48の操作を通じて給電線L2の導通がオンオフされる。本実施形態において、車両用操舵システム2の動作の状態は、車両の動作の状態と関連付けられている。なお、給電線L1については基本的に導通が常時オンとされているが、車両用操舵システム2の動作の状態に応じて給電線L1の導通が車両用操舵システム2の機能として間接的にオンオフされる。車両用操舵システム2の動作の状態は、バッテリ47の電力の供給の状態である給電線L1,L2の導通のオンオフと関連付けられている。車両用操舵システム2の動作の状態は、起動スイッチ48の操作に基づいて、給電線L1,L2の導通がオンされる場合に電源オンとなる。車両用操舵システム2の動作の状態は、起動スイッチ48の操作に基づいて、給電線L1,L2の導通がオフされる場合に電源オフとなる。
【0032】
ロック機構16は、電源オン及び電源オフに応じてロック状態及びアンロック状態を切り替える。例えば、ロック機構16は、電源オフされたとき、ロック状態にする。ロック状態にすることは、車両を停車の状態に遷移させることになる。また、ロック機構16は、電源オンされたとき、アンロック状態にする。アンロック状態にすることは、車両を走行可能な状態に遷移させることになる。
【0033】
<操舵制御装置の機能>
図2に示すように、操舵制御装置1は、反力制御部50と、転舵制御部60とを有している。反力制御部50は、制御対象であるステアリングホイール3を制御する。反力制御部50は、制御対象の制御量である操舵反力を制御すべく、操舵アクチュエータ12、より詳しくは反力モータ13の駆動を制御する。転舵制御部60は、制御対象であるラック軸22を制御する。転舵制御部60は、制御対象の制御量である転舵力を制御すべく、転舵アクチュエータ31、より詳しくは転舵モータ32の駆動を制御する。反力制御部50と転舵制御部60とは、例えば、シリアル通信等のローカルネットワーク49を介して情報の送受信を相互に行う。反力制御部50は、操舵ユニット4と組み合わせて反力システムRSを構成する。転舵制御部60は、転舵ユニット6と組み合わせて転舵システムTSを構成する。本実施形態において、反力制御部50が反力モータ13の駆動を制御するための処理は反力制御処理の一例である。
【0034】
反力制御部50は、中央処理装置(以下「CPU」という。)50aやメモリ50bを備えている。反力制御部50は、メモリ50bに記憶されたプログラムを所定の演算周期毎にCPU50aが実行することにより、各種の処理を実行する。転舵制御部60は、中央処理装置(以下「CPU」という。)60aやメモリ60bを備えている。転舵制御部60は、メモリ60bに記憶されたプログラムを所定の演算周期毎にCPU60aが実行することにより、各種の処理を実行する。CPU50a,60a及びメモリ50b,60bは、処理回路であるマイクロコンピュータを構成する。メモリ50b,60bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)のようなコンピュータ可読媒体を含む。ただし、各種処理がソフトウェアによって実現されることは一例である。反力制御部50及び転舵制御部60が有する処理回路は、少なくとも一部の処理をロジック回路などのハードウェア回路によって実現するように構成されてもよい。
【0035】
反力制御部50におけるCPU50aは、操舵トルクTh、車速V、回転角θa、及び転舵情報Stを入力する。転舵情報Stは、ローカルネットワーク49を介して転舵制御部60から得られる情報である。CPU50aは、操舵トルクTh、車速V、回転角θa、及び転舵情報Stに基づいて、操舵反力を制御するための、反力用インバータ51への制御信号MSsを演算する。反力用インバータ51は、バッテリ47の直流電圧を交流電圧に変換して反力モータ13に印加する駆動回路である。その際、CPU50aは、反力モータ13に流れる電流iu1,iv1,iw1を参照する。電流iu1,iv1,iw1は、反力用インバータ51の各レッグに設けられたシャント抵抗の電圧降下量として定量化されている。これにより、CPU50aは、操舵反力となるモータトルクが発生するように反力モータ13の駆動を制御する。
【0036】
CPU50aは、回転角θaを、メモリ50bに記憶された反力用基準値θnsからの積算値である積算回転角度、すなわち絶対回転角度に換算する。絶対回転角度は、反力用基準値θnsからの反力モータ13の回転回数をカウントすることにより、360°を超える範囲で換算された値である。反力用基準値θnsは、例えば、車両が直進しているときのステアリングホイール3の操舵状態である直進状態を示す値である。本実施形態において、反力用基準値θnsは、ステアリングホイール3の直進状態における回転位置であるステアリング中立位置を示す値であって、御情報の一例である。CPU50aは、換算して得られた絶対回転角度に操舵側減速機構14の回転速度比に基づく換算係数を乗算することで、操舵角θsを演算する。CPU50aは、ステアリング中立位置、すなわち反力用基準値θnsに対する絶対角度として操舵角θsを演算する。こうして得られた操舵角θsは、制御信号MSsを演算する際に使用される。操舵角θs等、CPU50aが使用する操舵情報Ssは、ローカルネットワーク49を介して転舵制御部60に出力される。
【0037】
転舵制御部60におけるCPU60aは、車速V、回転角θb、及び操舵情報Ssが入力される。操舵情報Ssは、ローカルネットワーク49を介して反力制御部50から得られる情報である。CPU60aは、車速V、回転角θb、及び操舵情報Ssに基づいて、転舵力を制御するための転舵用インバータ61への制御信号MStを演算する。転舵用インバータ61は、バッテリ47の直流電圧を交流電圧に変換して転舵モータ32に印加する駆動回路である。その際、CPU60aは、転舵モータ32に流れる電流iu2,iv2,iw2を参照する。電流iu2,iv2,iw2は、転舵用インバータ61の各レッグに設けられたシャント抵抗の電圧降下量として定量化されている。これにより、CPU60aは、転舵力となるモータトルクが発生するように転舵モータ32の駆動を制御する。
【0038】
CPU60aは、回転角θbを、メモリ60bに記憶された転舵用基準値θntからの積算値である積算回転角度、すなわち絶対回転角度に換算する。絶対回転角度は、転舵用基準値θntからの転舵モータ32の回転回数をカウントすることにより、360°を超える範囲で換算された値である。転舵用基準値θntは、例えば、車両が直進しているときのラック軸22の転舵状態である直進状態を示す値である。本実施形態において、転舵用基準値θntは、ラック軸22の直進状態における位置であるラック中立位置を示す値であって、制御情報の一例である。CPU60aは、換算して得られた絶対回転角度に、伝達機構33の回転速度比と、変換機構34のリードと、ラックアンドピニオン機構24の回転速度比に基づく換算係数を乗算することで、ピニオン角θpを演算する。CPU60aは、ラック中立位置、すなわち転舵用基準値θntに対する絶対角度として、ピニオン軸21の実際の回転角であるピニオン角θpを演算する。こうして得られたピニオン角θpは、制御信号MStを演算する際に使用される。ピニオン角θp等、CPU60aが使用する転舵情報Stは、ローカルネットワーク49を介して反力制御部50に出力される。
【0039】
<反力制御部におけるCPUの状態遷移について>
電源オフ中において、CPU50aは、起動スイッチ48がオン状態にされて電源オンされた後、イニシャルチェック処理を実行する。CPU50aは、起動スイッチ48が出力するIG信号Sgの入力の有無によって、電源オン及び電源オフの状態を判断するとともに、ロック状態及びアンロック状態を切り替える。
【0040】
イニシャルチェック処理は、CPU50a及びメモリ50bが正常動作することができるか否か、反力システムRSの動作にかかるチェック処理を含む。イニシャルチェック処理は、ローカルネットワーク49を介して転舵情報Stを入力することができるか否か、転舵システムTSとの通信にかかるチェック処理を含む。イニシャルチェック処理は、メモリ50bから各種情報を読み出す等して、操舵ユニット4を動作させるための処理を実行することができるようにするための処理を含む。イニシャルチェック処理において、CPU50aがメモリ50bから読み出す各種情報は、反力用基準値θnsの内容を含む。
【0041】
イニシャルチェック処理において、CPU50aは、反力用基準値θnsを読み出すことができた場合、通常制御状態に遷移する。イニシャルチェック処理において、CPU50aは、反力用基準値θnsが内部的に設定されている場合に、反力用基準値θnsを読み出すことができる。通常制御状態は、運転者によるステアリング操舵に応じて操舵ユニット4を動作させるためのステアリング制御にかかる通常反力処理を実行する状態である。本実施形態において、通常制御状態は第1の状態の一例である。
【0042】
例えば、通常反力処理は、回転角θaを参照することによって、反力用基準値θnsを基準値として得られる積算値である操舵角θsを演算するための積算回転角度取得処理を含む。通常反力処理は、操舵角θsに基づいて、ステアリングホイール3が規制回転量θ1を超えて回転しないようにするためのエンド反力出力処理を含む。
【0043】
より詳しくは、図3に示すように、エンド反力出力処理において、CPU50aは、操舵角θsの絶対値がエンド閾値θth以上であるか否かを判断する(ステップ102)。ステップ102において、CPU50aは、操舵角θsが右方の限界位置3a及び左方の限界位置3bのいずれかに近づいたか否かを判断する。例えば、エンド閾値θthは、右方の限界位置3a及び左方の限界位置3bよりも若干、ステアリング中立位置側、すなわち反力用基準値θns側に対応する値である。つまり、エンド閾値θthは、右方の限界位置3a及び左方の限界位置3bの絶対値よりも若干、小さい値である。
【0044】
続いて、CPU50aは、操舵角θsの絶対値がエンド閾値θth未満の場合(ステップ102:NO)、当該処理を終了して他の処理に移行する。一方、CPU50aは、操舵角θsの絶対値がエンド閾値θth以上の場合(ステップ102:YES)、エンド反力を演算する(ステップ104)。ステップ104において、CPU50aは、操舵角θsが右方の限界位置3a及び左方の限界位置3bに近づいたことを運転者に伝えるためのエンド反力を演算する。例えば、エンド反力は、運転者の操舵を規制することができるとして実験的に求められる範囲の値である。エンド反力は、操舵反力を急増させるための成分である。こうして演算されたエンド反力は、運転者の操舵に応じた操舵反力に反映されることによって、エンド閾値θthを超えて右方の限界位置3a及び左方の限界位置3bへの更なる運転者の操舵を規制する。その後、CPU50aは、当該処理を終了して他の処理に移行する。
【0045】
一方、イニシャルチェック処理において、CPU50aは、反力用基準値θnsを読み出すことができなかった場合、制御情報設定状態を経由して通常制御状態に遷移する。イニシャルチェック処理において、CPU50aは、反力用基準値θnsが内部的に設定されていない場合に、反力用基準値θnsを読み出すことができない。制御情報設定状態は、ステアリングホイール3、すなわちステアリング軸11を左右方向に回転させる学習動作させることによって、反力用基準値θnsを内部的に設定するための制御情報設定処理を実行する状態である。本実施形態において、制御情報設定状態は第2の状態の一例である。
【0046】
例えば、制御情報設定処理は、回転角θaを参照する処理を含む。CPU50aは、電源オン時の回転角θaの位置を仮の基準値として得られる積算値である仮操舵角θsiを演算するための積算回転角度取得処理を含む。仮操舵角θsiは、積算回転角度、すなわち絶対回転角度である。制御情報設定処理は、電流iu1,iv1,iw1、操舵トルクThを参照する処理を含む。制御情報設定処理は、仮操舵角θsi、電流iu1,iv1,iw1、及び操舵トルクThに基づいて、反力用基準値θnsを内部的に設定するための学習処理を含む。
【0047】
より詳しくは、図4に示すように、学習処理において、CPU50aは、ステアリングホイール3を左右方向の一方、すなわち第1の方向である右方へ回転させる(ステップ202)。ステップ202において、CPU50aは、ステアリングホイール3、すなわちステアリング軸11を右方へ自動的に回転させるための制御信号MSsを演算する。学習処理において、CPU50aは、仮操舵角θsiを操舵目標角θs*に追従させるようにフィードバック制御を実行することにより、制御信号MSsを演算する。操舵目標角θs*は、学習処理の開始時における仮操舵角θsiの値から右方の限界位置3aを超えるように徐々に変化するように更新される値である。
【0048】
続いて、CPU50aは、ステアリングホイール3が右方の限界位置3aに達したか否かを判断する(ステップ204)。ステップ204において、CPU50aは、例えば、電流iu1,iv1,iw1、操舵トルクTh、及び仮操舵角θsiの変化量である角速度ωsを監視する。
【0049】
CPU50aは、電流iu1,iv1,iw1から得られる実電流値Iaの絶対値が、電流閾値Iath以上であるか否かを判断する処理を含む。電流iu1,iv1,iw1の絶対値が、電流閾値Iath以上であるか否かを判断することは、ステアリング軸11が右方の限界位置3aに達することによって、反力モータ13の付加が増大しているか否かを判断することに相当する。例えば、電流閾値Iathは、ステアリング軸11の回転がストッパ機構11bを通じて規制されることによって、反力モータ13の回転が規制されているとして実験的に求められる範囲の値である。
【0050】
CPU50aは、操舵トルクThの絶対値が、トルク閾値Tth以下であるか否かを判断する処理を含む。操舵トルクThの絶対値が、トルク閾値Tth以下であるか否かを判断することは、運転者の操舵介入があるか否かを判断することに相当する。例えば、トルク閾値Tthは、運転者の操舵介入があることを判断できるとして実験的に求められる範囲の値である。
【0051】
CPU50aは、角速度ωsの絶対値が、角速度閾値ωth未満であるか否かを判断する処理を含む。角速度ωsの絶対値が、角速度閾値ωth未満であるか否かを判断することは、ステアリング軸11が右方の限界位置3aに達することによって、ステアリング軸11が停止しているか否かを判断することに相当する。例えば、角速度閾値ωthは、ステアリング軸11が回転していないとして実験的に求められる範囲の値である。
【0052】
CPU50aは、反力モータ13の負荷が増大していることと、運転者の操舵介入がないことと、ステアリング軸11が停止していることとを判断する場合、ステアリングホイール3が右方の限界位置3aに達したことを判断する処理を含む。
【0053】
続いて、CPU50aは、ステアリングホイール3が右方の限界位置3aに達していないことを判断する場合(ステップ204:NO)、ステップ202及びステップ204の処理を繰り返し実行する。一方、CPU50aは、ステアリングホイール3が右方の限界位置3aに達したことを判断する場合(ステップ202:YES)、右限界位置θrlを一時的に記憶する(ステップ206)。ステップ206において、CPU50aは、右方の限界位置3aに達していることの判断時の仮操舵角θsiを右限界位置θrlとして一時的に記憶する。
【0054】
続いて、CPU50aは、ステアリングホイール3を右方の他方、すなわち第2の方向である左方へ回転させる(ステップ208)。ステップ208において、CPU50aは、ステアリングホイール3、すなわちステアリング軸11を左方へ自動的に回転させるための制御信号MSsを演算する。例えば、CPU50aは、ステップ202の処理と同様、仮操舵角θsiを操舵目標角θs*に追従させるようにフィードバック制御を実行することにより、制御信号MSsを演算する。操舵目標角θs*は、右方の限界位置3aに達した場合における仮操舵角θsiの値から左方の限界位置3bを超えるように徐々に変化するように更新される値である。
【0055】
続いて、CPU50aは、ステアリングホイール3が左方の限界位置3bに達したか否かを判断する(ステップ210)。ステップ210において、CPU50aは、ステップ204の処理と同様、例えば、電流iu1,iv1,iw1、操舵トルクTh、及び仮操舵角θsiの変化量である角速度ωsを監視する。
【0056】
続いて、CPU50aは、ステアリングホイール3が左方の限界位置3bに達していないことを判断する場合(ステップ210:NO)、ステップ208及びステップ210の処理を繰り返し実行する。一方、CPU50aは、ステアリングホイール3が左方の限界位置3bに達していることを判断する場合(ステップ210:YES)、左限界位置θllを一時的に記憶する(ステップ212)。ステップ212において、CPU50aは、左方の限界位置3bに達していることの判断時の仮操舵角θsiを左限界位置θllとして一時的に記憶する。
【0057】
続いて、CPU50aは、中点値θcを演算する(ステップ214)。ステップ214において、CPU50aは、ステップ206で一時的に記憶した右限界位置θrl、及び、ステップ212で一時的に記憶した左限界位置θllの和の2分の1に対応する値を中点値θcとして演算する。これは、右限界位置θrlと左限界位置θllとの差の2分の1に対応する値を、左限界位置θllに加算することでもある。中点値θcと右限界位置θrlとの差分の絶対値と、中点値θcと左限界位置θllとの差分の絶対値とは、互いに等しくなる。CPU50aは、ステップ214において得られた中点値θcを反力用基準値θnsに書き込んで設定し、当該処理を終了して他の処理に移行する。
【0058】
<ストッパ機構の異常の検出について>
反力制御部50のCPU50aは、電源オン中の間、車両用操舵システム2におけるストッパ機構11bの異常を検出するための異常検出処理を実行する。異常検出処理は、通常制御状態及び制御情報設定状態に応じた態様の処理を含む。
【0059】
<第1の異常検出処理について>
例えば、図5に示すように、通常制御状態において、CPU50aは、第1の異常検出処理を実行する。より詳しくは、CPU50aは、操舵角θsを参照する(ステップ302)。ステップ302における操舵角θsは、反力用基準値θnsを基準として得られる第1の絶対回転角度である。
【0060】
続いて、CPU50aは、操舵角θsの絶対値が第1の閾値Lth1以上であるか否かを判断する(ステップ304)。ステップ304において、CPU50aは、操舵角θsがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたか否かを判断する。例えば、第1の閾値Lth1は、操舵角θsがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたことを判断できる範囲の値が設定されている。第1の閾値Lth1は、次式(1)で示されるように、下限値及び上限値が定められているなかで、設定されている。
【0061】
θ2≦Lth1≦Lca…(1)
ただし、「θ2」は、右方の限界位置3a又は左方の限界位置3bに対応する角度の絶対値、例えば、右限界位置θrlの絶対値又は左限界位置θllの絶対値である。つまり、「θ2」は、ステアリングホイール3の規制回転量θ1の半分の値(θ1×(1/2))である。「Lca」は、スパイラルケーブル15dの全長である。つまり、第1の閾値Lth1は、少なくともステアリングホイール3の規制回転量θ1の半分の値θ2よりも大きい、かつ、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない範囲の値である。
【0062】
本実施形態において、第1の閾値Lth1は、機械公差θ3と検出マージンθ4とを考慮した値である。機械公差θ3は、操舵ユニット4の公差である。検出マージンθ4は、CPU50aがステップ304を実行する際の誤判断を抑えるためのマージンである。つまり、第1の閾値Lth1は、「θ2」と「θ3」と「θ4」とを加算した値である。
【0063】
CPU50aは、操舵角θsの絶対値が第1の閾値Lth1未満の場合、異常条件が成立しないことを判定する。この場合、CPU50aは、ストッパ機構11bの異常を検出しない。一方、CPU50aは、操舵角θsの絶対値が第1の閾値Lth1以上の場合、異常条件が成立することを判定する。この場合、CPU50aは、ストッパ機構11bの異常を検出する。
【0064】
続いて、CPU50aは、操舵角θsの絶対値が第1の閾値Lth1未満の場合(ステップ304:NO)、ストッパ機構11bの異常を検出しないことを判断し、当該処理を終了して他の処理に移行する。一方、CPU50aは、操舵角θsの絶対値が第1の閾値Lth1以上の場合(ステップ304:YES)、ストッパ機構11bの異常を検出したことを判断し、第1のフェール状態を設定する(ステップ306)。ステップ306において、CPU50aは、操舵角θsを、最も近くのエンド閾値θthに対応する角度に追従させるようにフィードバック制御を実行することにより、制御信号MSsを演算する。最も近くのエンド閾値θthに対応する角度は、例えば、ステアリングホイール3が右方向に回転している場合、右方の限界位置3a側の角度であり、ステアリングホイール3が左方向に回転している場合、左方の限界位置3b側の角度である。
【0065】
なお、第1のフェール状態において、CPU50aは、ストッパ機構11bの異常を検出したことを判断した旨を、車両に搭載された他の制御装置に対して通知する処理を含む。他の制御装置は、例えば、情報を運転者の視覚に訴えて通知する表示装置である警告等の動作を制御する。表示装置は、HUD(Head Up Display)、メーターパネル、ナビゲーションシステムのディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)を含む。ストッパ機構11bの異常を検出したことを判断した旨の通知する場合、CPU50aは、第1のフェール状態を一旦設定すると、電源オフを挟んでも電源オンの間は途切れさせることなく、車両に搭載された他の制御装置に対して通知する。
【0066】
<第2の異常検出処理について>
例えば、図6に示すように、制御情報設定状態において、CPU50aは、第2の異常検出処理を実行する。より詳しくは、CPU50aは、仮操舵角θsiを参照する(ステップ402)。ステップ402における仮操舵角θsiは、反力用基準値θnsを基準として得られない第2の絶対回転角度である。
【0067】
続いて、CPU50aは、仮操舵角θsiの絶対値が第2の閾値Lth2以上であるか否かを判断する(ステップ404)。ステップ404において、CPU50aは、仮操舵角θsiがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたか否かを判断する。例えば、第2の閾値Lth2は、仮操舵角θsiがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたことを判断できる範囲の値が設定されている。第2の閾値Lth2は、次式(2),(3)で示されるように、下限値及び上限値が定められているなかで、設定されている。
【0068】
θ1≦Lth2…(2)
Lth2+(Lth1+θ5)≦Lca…(3)
ただし、「θ1」「Lca」「Lth1」は、上記式(1)と同様である。「θ5」は、ロック機構16の構成に関わる調整量である。調整量θ5は、例えば、ロック機構16がロック状態になることによって、ステアリング軸11のギヤ部に嵌合する際に、ステアリング軸11が左右方向のいずれかにずれる量である。つまり、調整量θ5は、ステアリング軸11のギヤ部の1歯分の値である。
【0069】
上記式(2),(3)から、次式(4)が得られる。
θ1≦Lth2≦Lca-(Lth1+θ5)…(4)
つまり、第2の閾値Lth2は、少なくともステアリングホイール3の規制回転量θ1以上、かつ、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない範囲の値である。
【0070】
本実施形態において、第2の閾値Lth2は、機械公差θ3と検出マージンθ6とを考慮した値である。検出マージンθ6は、CPU50aがステップ404を実行する際の誤判断を抑えるためのマージンである。検出マージンθ6は、例えば、通常制御状態における検出マージンθ4よりも小さい値である。つまり、第2の閾値Lth2は、「θ1」と「θ3」と「θ6」とを加算した値以上である。
【0071】
CPU50aは、仮操舵角θsiの絶対値が第2の閾値Lth2未満の場合、異常条件が成立しないことを判定する。この場合、CPU50aは、ストッパ機構11bの異常を検出しない。一方、CPU50aは、仮操舵角θsiの絶対値が第2の閾値Lth2以上の場合、異常条件が成立することを判定する。この場合、CPU50aは、ストッパ機構11bの異常を検出する。
【0072】
続いて、CPU50aは、仮操舵角θsiの絶対値が第2の閾値Lth2未満の場合(ステップ404:NO)、ストッパ機構11bの異常を検出しないことを判断し、当該処理を終了して他の処理に移行する。一方、CPU50aは、仮操舵角θsiの絶対値が第2の閾値Lth2以上の場合(ステップ404:YES)、ストッパ機構11bの異常を検出したことを判断し、第2のフェール状態を設定する(ステップ406)。ステップ406において、CPU50aは、仮操舵角θsiを、現在の角度を維持させるようにフィードバック制御を実行することにより、制御信号MSsを演算する。
【0073】
なお、第2のフェール状態において、CPU50aは、第1のフェール状態と同様、ストッパ機構11bの異常を検出したことを判断した旨を、車両に搭載された他の制御装置に対して通知する処理を含む。つまり、ストッパ機構11bの異常を検出したことを判断した旨の通知する場合、CPU50aは、第2のフェール状態を一旦設定すると、電源オフを挟んでも電源オンの間は途切れさせることなく、車両に搭載された他の制御装置に対して通知する。
【0074】
<本実施形態の作用>
図5の第1の異常判定処理は、操舵角θsの絶対値が第1の閾値Lth1以上であるか否かを判断する処理(ステップ304)を含む。
【0075】
例えば、図7に示すように、通常制御状態において、ステアリングホイール3は、反力用基準値θnsに対して右方向に回転するなかで、操舵角θsが第1の閾値Lth1以上の場合、右方の限界位置3aを超えて回転している蓋然性が高い。これは、上記式(1)の通り、第1の閾値Lth1が、「θ2」値以上、かつ、「Lca」以下であるからである。
【0076】
第1の閾値Lth1の下限値が「θ2」であることは、通常制御状態において、ステアリングホイール3が右方に規制回転量θ1の半分を超えて回転している状況を想定して設定されている。つまり、第1の閾値Lth1は、通常制御状態において、ステアリングホイール3が右方の限界位置3a又は左方の限界位置3bを超えて回転している状況を想定して設定されている。
【0077】
第1の閾値Lth1の上限値が「Lca」であることは、通常制御状態において、ステアリングホイール3が右方に回転するなかで、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない状況を想定して設定されている。つまり、第1の閾値Lth1は、通常制御状態において、ステアリングホイール3が左右方向に回転するなかで、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない状況を想定して設定されている。
【0078】
これにより、ステップ304の処理を実行することによって、CPU50aは、操舵角θsがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたことを、ソフトウェア的に検出することができる。こうした操舵角θsがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたことを、CPU50aは、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない範囲で、ソフトウェア的に検出することができる。
【0079】
図6の第2の異常判定処理は、仮操舵角θsiの絶対値が第2の閾値Lth2以上であるか否かを判断する処理(ステップ404)を含む。
例えば、図7に示すように、制御情報設定状態において、ステアリングホイール3は、学習動作を通じて右方向に回転するなかで、仮操舵角θsiが第2の閾値Lth2以上の場合、右方の限界位置3aを超えて回転している蓋然性が高い。これは、上記式(4)の通り、第2の閾値Lth2は、「θ1」値以上である、かつ、「Lca」から「Lth1」と「θ5」とを減算した値以下の値であるからである。
【0080】
第2の閾値Lth2の下限値が「θ1」であることは、ステアリングホイール3の初期状態が、左方の限界位置3bまで回転している第1の状況を想定して設定されている。つまり、第2の閾値Lth2は、ステアリングホイール3の初期状態が、ステアリングホイール3が学習動作を通じて回転する方向に対して、当該方向と反対側の限界位置まで回転している第1の状況を想定して設定されている。
【0081】
また、第2の閾値Lth2の上限値が「Lca」から「Lth1」と「θ5」とを減算した値であることは、ステアリングホイール3の初期状態が、第1の閾値Lth1に対応する状態まで回転している第2の状況を想定して設定されている。第2の閾値Lth2の上限値が「Lca」から「Lth1」と「θ5」とを減算した値であることは、第2の状況からステアリングホイール3が右方に回転するなかで、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない状況を想定して設定されている。つまり、第2の閾値Lth2は、ステアリングホイール3の初期状態が、ステアリングホイール3が学習動作を通じて回転する方向に対して、当該方向側の限界位置付近まで回転している第2の状況を想定して設定されている。こうした第1の状況及び第2の状況を想定したとしても、第2の閾値Lth2は、ステアリングホイール3が学習動作を通じて左右方向に回転するなかで、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない状況を想定して設定されている。
【0082】
これにより、ステップ404の処理を実行することによって、CPU50aは、仮操舵角θsiがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたことを、ソフトウェア的に検出することができる。こうした仮操舵角θsiがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れたことを、CPU50aは、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない範囲で、ソフトウェア的に検出することができる。
【0083】
<実施形態の効果>
(1-1)反力制御部50のCPU50aは、ストッパ機構11bの異常を検出する図5の第1の異常判定処理、及び、図6の第2の異常判定処理を含むようにしている。これにより、車両用操舵システム2では、ストッパ機構11bが、ステアリング軸11の回転範囲を機械的に制限することができなくなったとしても、早期検出が可能になる。したがって、ステアリング軸11が際限なく回転し続ける事態に陥ったとしても、こうした事態への早期対処が可能になる。
【0084】
(1-2)CPU50aは、通常制御状態及び制御情報設定状態のいずれの状態であるかに応じて、異常条件の成立要件が異なる処理を含むようにしている。これにより、通常制御状態及び制御情報設定状態を設定可能な車両用操舵システム2において、状態に関係なく、操舵角θs及び仮操舵角θsiがステアリングホイール3の規制回転量θ1内から外れていることを好適に判断することができるようになる。したがって、反力用基準値θnsが内部的に設定されているか否かに関係なく、ストッパ機構11bの異常を早期検出することができる。
【0085】
(1-3)第1の異常判定処理は、通常制御状態において、操舵角θsの大きさを判断する場合、第1の閾値Lth1を用いることによって、ストッパ機構11bの異常を好適に判断する処理を含むようにしている。一方、第2の異常判定処理は、制御情報設定状態において、仮操舵角θsiの大きさを判断する場合、第1の閾値Lth1と互いに異なる第2の閾値Lth2を用いることによって、ストッパ機構11bの異常を好適に判断することができる。これにより、通常制御状態及び制御情報設定状態に応じた判断を実施できる。
【0086】
(1-4)例えば、制御情報設定状態において想定できるステアリングホイール3の初期状態は、第1の閾値Lth1に対応する状態に至る手前まで回転している状況が考えられる。この状況において、ロック機構16がロック状態の場合、さらにロック機構16の構成に関わって、ステアリングホイール3が第1の閾値Lth1を超える状態まで回転している状況が考えられる。これに対して、第2の閾値Lth2の上限値は、調整量θ5を考慮した値である。これにより、ストッパ機構11bの異常を好適に検出することができる。
【0087】
(1-5)図7に示すように、第1の閾値Lth1は、機械公差θ3と、検出マージンθ4とを考慮した値である。同図に示すように、第2の閾値Lth2は、機械公差θ3と、検出マージンθ6とを考慮した値である。これにより、ストッパ機構11bの異常の誤検出を好適に抑制することができる。
【0088】
(1-6)図7に示すように、第1の閾値Lth1は、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない範囲の値である。同図に示すように、第2の閾値Lth2は、スパイラルケーブル15dの全長Lcaを超えない範囲の値である。特に、第2の閾値Lth2は、少なくとも「Lth1」と「θ5」とを加算した値分だけスパイラルケーブル15dの全長Lcaよりも小さい範囲の値である。これにより、ストッパ機構11bが、ステアリング軸11の回転範囲を機械的に制限することができなくなったとしても、スパイラルケーブル15dに過度に大きな力が加わることを抑制することができる。したがって、スパイラルケーブル15dの保護についても合わせて確保することができる。
【0089】
(1-7)CPU50aは、制御情報設定状態において実行する処理として、反力用基準値θnsを内部的に設定するための学習処理を含むようにしている。これにより、学習動作させるなかであっても、ストッパ機構11bの異常を好適に検出することができる。
【0090】
<他の実施形態>
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0091】
・第1の閾値Lth1の下限値は、「θ3」又は「θ4」を考慮した値であってもよい。例えば、第1の閾値Lth1の下限値は、「θ2」と「θ3」と「θ4」とを加算した値であってもよい。また、第1の閾値Lth1の上限値は、「θ5」を考慮した値であってもよい。また、第1の閾値Lth1の上限値は、スパイラルケーブル15dの全長Lcaの大きさによっては当該全長Lcaの半分の値、または、当該半分の値よりも小さい値であってもよい。
【0092】
・第2の閾値Lth2の下限値は、「θ3」又は「θ6」を考慮した値であってもよい。例えば、第2の閾値Lth2の下限値は、「θ1」と「θ3」と「θ6」とを加算した値であってもよい。また、第2の閾値Lth2の上限値は、少なくとも「Lth1」を考慮した値であればよく、「θ5」を考慮しない値であってもよい。
【0093】
・機械公差θ3は、操舵ユニット4の構成に応じて適宜変更可能な値である。
・検出マージンθ4と、検出マージンθ6とは、同一値であってもよい。
・調整量θ5は、ロック機構16の構成に応じて適宜変更可能な値である。
【0094】
・第1のフェール状態において、CPU50aは、操舵角θsを、現在の角度を維持させるようにフィードバック制御を実行することにより、制御信号MSsを演算するようにしてもよい。
【0095】
・第2のフェール状態において、CPU50aは、ロック機構16をロック状態に切り替えるようにしてもよい。
・CPU50aは、第1の異常判定処理及び第2異常判定のいずれか一方の処理のみを含むようにしてもよい。つまり、ストッパ機構11bの異常は、通常制御状態及び制御情報設定状態のいずれか一方のみで検出される構成であってもよい。
【0096】
・第2の異常判定処理は、通常制御状態で実行する処理として適用することもできる。
・制御情報設定状態において想定できるステアリングホイール3の初期状態が、略ステアリング中立位置の場合、第1の異常判定処理は、制御情報設定状態で実行する処理として適用することもできる。
【0097】
・反力用基準値θnsを内部的に設定する方法は、学習動作させることに限らず、例えば、作業者が手動で設定する等、適宜変更可能である。
・学習処理は、先に左方へステアリングホイール3を回転させるとともに、その後に右方へステアリングホイール3を回転させる処理であってもよい。この場合、図4の処理は、ステップ202、204、206の処理よりも先に、ステップ208、210、212の処理を実行する構成であればよい。
【0098】
・学習処理は、各限界位置θrl,θllのいずれかを一時的に記憶する処理を含んでいればよい。つまり、学習動作にかかる処理は、各限界位置θrl,θllのいずれかを一時的に記憶する処理をなくしてもよい。例えば、右限界位置θrlを一時的に記憶する処理を含む場合、CPU50aは、右限界位置θrlから規制回転量θ1の半分の値θ2を減算して得られる値を中点値θcとして演算するようにしてもよい。
【0099】
・学習処理は、中点値θcの妥当性を判断する処理を含んでいてもよい。
・学習処理において、ステップ204及びステップ210の処理は、実電流値Iaの絶対値が、電流閾値Iath以上であるか否かを少なくとも判断する処理であればよい。
【0100】
・学習処理において、ステップ204及びステップ210の処理は、上記実施形態に加えて、他のパラメータを加味してもよい。例えば、他のパラメータは、実電流値Iaの変化量、角速度ωsの変化量、及びステアリングホイール3が回転を開始してからの時間等が考えられる。
【0101】
・CPU50aは、ロック機構16のロック状態及びアンロック状態を切り替える制御を実行するようにしてもよい。
・ステアリングホイール3の変位量としては、回転角θaの積算処理に基づき算出された量に限らない。例えば、ステアリング軸11の回転角を直接的に検出する舵角センサの検出値であってもよい。なお、舵角センサは、例えば、ステアリング軸11におけるステアリングホイール3とトルクセンサ41との間に設けてもよい。ここに記載した他の実施形態において、舵角センサは、角度センサの一例である。
【0102】
・操舵アクチュエータ12は、操舵側減速機構14を備えることは必須ではない。
・反力モータ13は、3相のブラシレスモータに限らない。例えば、ブラシ付きの直流モータであってもよい。ここに記載した他の実施形態は、転舵モータ32に対しても同様に適用することができる。
【0103】
・転舵ユニット6は、転舵モータ32の回転を伝達機構33を介して変換機構34に伝達したが、これに限らず、例えば、転舵モータ32の回転を歯車機構を介して変換機構34に伝達するように転舵ユニット6を構成してもよい。また、転舵モータ32が変換機構34を直接回転させるように転舵ユニット6を構成してもよい。さらに、転舵ユニット6が第2のラックアンドピニオン機構を備える構成とし、転舵モータ32の回転を第2のラックアンドピニオン機構にてラック軸22の往復動に変換するように転舵ユニット6を構成してもよい。
【0104】
・転舵ユニット6としては、右側の転舵輪5と左側の転舵輪5とが連動している構成に限らない。換言すれば、右側の転舵輪5と左側の転舵輪5とを独立に制御できるものであってもよい。
【0105】
・上記実施形態は、車両用操舵システム2を、操舵ユニット4と転舵ユニット6との間が機械的に常時分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、例えば、クラッチにより操舵ユニット4と転舵ユニット6との間が機械的に分離可能な構造としてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…操舵制御装置
2…車両用操舵システム
3…ステアリングホイール
4…操舵ユニット
5…転舵輪
6…転舵ユニット
11…ステアリング軸
11b…ストッパ機構
13…反力モータ
16…ロック機構
42…操舵側回転角センサ(角度センサ)
50(50a)…反力制御部(CPU)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7