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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005219
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20250108BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250108BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B60W50/14
B60R11/02 C
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105317
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 ゆり
【テーマコード(参考)】
3D020
3D023
3D241
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BC03
3D020BC06
3D020BD03
3D020BD05
3D020BE03
3D023BA01
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BD12
3D023BE05
3D241BA57
3D241BA60
3D241BB16
3D241BB17
3D241BB46
3D241DC54Z
(57)【要約】
【課題】内装の意匠性を維持しつつ、鮮明な画像を車室内に表示することができる車両を得る。
【解決手段】車両10は、車室内側に複数の発光体を備えた表示装置(ディスプレイ30)と、厚さ方向に貫通する貫通孔(スリット34)が複数形成され、表示装置(ディスプレイ30)を覆うように表示装置(ディスプレイ30)の車室内側に配置された内装材(ドアトリム32)と、を有する。車両10によれば、車室12の内装の意匠性を維持しつつ、鮮明な画像を車室内に表示することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側に複数の発光体を備えた表示装置と、
厚さ方向に貫通する貫通孔が複数形成され、前記表示装置を覆うように前記表示装置の車室内側に配置された内装材と、
を有する車両。
【請求項2】
前記内装材は、複数のシート状部材が厚さ方向に重ねられた積層体とされている、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記内装材は、車両の側部に配置されたドアに設けられており、前記貫通孔は、車両前後方向を長手方向とするスリットとされている、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記内装材は、車室の前部において車両幅方向に延在するインストルメントパネルに設けられており、前記貫通孔は、車両幅方向を長手方向とするスリットとされている、
請求項1に記載の車両。
【請求項5】
車両の周辺を監視する周辺監視センサをさらに有し、
前記表示装置は、前記周辺監視センサによって車両の周辺に障害物が検知された場合、注意喚起の表示をする、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車室内に向かって発光する発光部材を備えた車両用内装品が開示されている。下記特許文献1に記載の技術では、発光部材の車室内側には、樹脂製の加飾パネルが配置されている。この加飾パネルは、パネル表面に発光領域を有しており、発光部材に照射されることにより、所定の加飾パターンを表示するようになっている。一方、加飾パネルは、発光部材に照射されないときには、発光領域が消灯し、ドアライニングの表面と調和するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/085778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の表示では、加飾パネルを透過した光が車室内に届くようになっているため、鮮明な画像を表示するには改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、内装の意匠性を維持しつつ、鮮明な画像を車室内に表示することができる車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両は、車室内側に複数の発光体を備えた表示装置と、厚さ方向に貫通する貫通孔が複数形成され、前記表示装置を覆うように前記表示装置の車室内側に配置された内装材と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の本発明によれば、内装材によって、表示装置が覆われている。よって、表示装置が車室内に露出している場合と比較して、発光体が発光していないときの内装の意匠性を維持することができる。
【0008】
また、表示装置の発光体から発光された光は、内装材の貫通孔を通り、車室内の空間に届く。よって、表示装置の内側に透過性を有するパネルが配置された場合と比較して、発光体から発光された光が車室内の空間に直接届くため、鮮明な画像を車室内に表示することができる。
【0009】
請求項2に係る車両は、請求項1に記載の発明において、前記内装材は、複数のシート状部材が厚さ方向に重ねられた積層体とされている。
【0010】
請求項2に記載の本発明によれば、1枚1枚のシート状部材は薄く、自在に曲げられる。よって、シート状部材を曲げてから積層させることにより、車室の内装の立体形状に合わせつつ、内装材の強度を確保することができる。
【0011】
請求項3に係る車両は、請求項1に記載の発明において、前記内装材は、車両の側部に配置されたドアに設けられており、前記貫通孔は、車両前後方向を長手方向とするスリットとされている。
【0012】
請求項3に記載の本発明によれば、内装材のスリットは、ドアにおいて車両前後方向に沿って形成されている。よって、車両前後方向に流れるように発光する光を途切れることなく連続的に乗員に視認させることができる。
【0013】
請求項4に係る車両は、請求項1に記載の発明において、前記内装材は、車室の前部において車両幅方向に延在するインストルメントパネルに設けられており、前記貫通孔は、車両幅方向を長手方向とするスリットとされている。
【0014】
請求項4に記載の本発明によれば、内装材のスリットは、インストルメントパネルにおいて、車両幅方向に沿って形成されている。よって、車両幅方向に流れるように発光する光を途切れることなく連続的に乗員に視認させることができる。
【0015】
請求項5に係る車両は、請求項1に記載の発明において、車両の周辺を監視する周辺監視センサをさらに有し、前記表示装置は、前記周辺監視センサによって車両の周辺に障害物が検知された場合、注意喚起の表示をする。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、周辺監視センサによって車両の周辺に障害物が検知された場合、表示装置に注意喚起の表示がされる。乗員は、当該注意喚起の表示を内装材に形成された貫通孔から視認することができる。よって、内装の意匠性を維持しつつ、鮮明な画像で乗員に注意喚起することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両は、内装の意匠性を維持しつつ、鮮明な画像を表示することができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項2に記載の本発明に係る車両は、所望の形状で内装の意匠を実現しつつ、内装材の強度を向上することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項3に記載の本発明に係る車両は、車両前後方向に流れるように発光する光を途切れることなく連続的に乗員に視認させることができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る車両は、車両幅方向に流れるように発光する光を途切れることなく連続的に乗員に視認させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項5に記載の本発明に係る車両は、内装の意匠性を維持しつつ、鮮明な画像で乗員に注意喚起することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る車両におけるフロントドアを車室内から見た図である。
図2図1に示されるフロントドアに画像が表示された場合を示す図である。
図3図2の3-3線断面図である。
図4図3に示される内装材の積層の態様を示す概略図である。
図5図1に示される車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】変形例に係る車両におけるドアトリムの貫通孔のパターンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図5を用いて、本発明の一実施形態に係る車両10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LH及び矢印RHは、それぞれ車両10の前方側、上方側、左右方向(幅方向)左側及び左右方向(幅方向)右側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両左右方向(幅方向)の左右をそれぞれ示すものとする。
【0024】
図1には、本実施形態に係る車両10の車室12内において、助手席側から見た運転席周辺が図示されている。車両10は、一例として、ステアリングホイール14が左側に設けられた左ハンドルの車両とされている。ステアリングホイール14は、車室12の前部において略車両幅方向に延在するインストルメントパネル16の車両後方側かつ運転席の車両前方側に取り付けられている。
【0025】
インストルメントパネル16の上部には、ウインドシールドガラス18が配置されている。ウインドシールドガラス18は、車両前方側へ向かって下り勾配に傾斜しており、車室12の内部と外部とを区画している。
【0026】
ウインドシールドガラス18の左側端部は、略上下方向に延在する車両左側のフロントピラー20の車両幅方向内側に固定されている。同様に、ウインドシールドガラス18の右側端部は、車両右側のフロントピラー(図示省略)に固定されている。
【0027】
フロントピラー20の上端部は、図示しないルーフの車両左側において略車両前後方向に延在するルーフサイドレール(図示省略)の前端部に接合されている。また、フロントピラー20の下端部は、図示しないフロアの車両左側において略車両前後方向に延在するロッカ(図示省略)の前端部に接合されている。
【0028】
フロントピラー20、ルーフサイドレール(図示省略)、センタピラー(図示省略)及びロッカ(図示省略)は、いずれも閉断面構造となっており、車両10の骨格を構成している。車両10の左側部には、フロントピラー20と、ルーフサイドレール(図示省略)と、センタピラー(図示省略)と、ロッカ(図示省略)とで囲まれたフロントドア開口部22が形成されている。フロントドア開口部22は、フロントドア24によって開閉されるようになっている。フロントドア開口部22の開口縁には、オープニングウェザーストリップ(図示省略)が取り付けられている。
【0029】
図2に示されるように、フロントドア24は、車室12の内側に画像を表示可能に構成されている。図3には、図2に示されるフロントドア24について、3-3線で切断した断面を車両後方側から見た断面図が示されている。フロントドア24は、車室外側に配置されたドアアウタパネル26と、車室内側に配置されたドアインナパネル(図示省略)とを備えており、閉断面構造となっている。フロントドア24の周縁部には、ドアウェザーストリップ(図示省略)が取り付けられている。
【0030】
ドアアウタパネル26とドアインナパネル(図示省略)との間には、フロントサイドガラス28が配置されている。フロントサイドガラス28は、パワーウインドウ装置(図示省略)によって上下方向にスライド可能になっている。
【0031】
また、フロントドア24の下部において、ドアインナパネル(図示省略)の車室12内側には、表示装置としての複数のディスプレイ30が略車両上下方向に並んで配置されている。ドアインナパネル(図示省略)には、車室外側へ向かって凹んだ凹部が設けられており、複数のディスプレイ30は、当該凹部に配置されている。ディスプレイ30は、一例として、LED(Light-Emitting Diode)ディスプレイであり、車室12内側に複数の発光体としての発光ダイオード(図示省略)を備えている。なお、ディスプレイは、LEDディスプレイに限らず、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイであってもよい。また、表示装置はディスプレイに限らず、複数配列されたLEDによって構成されてもよい。さらに、ディスプレイの配置は、上記に限定されるものではなく、例えば車両前後方向に並んで配置されていてもよい。ディスプレイは、1枚のみで構成されていてもよい。
【0032】
ディスプレイ30の車室12内側には、車室12内部の意匠面を構成する内装材としてのドアトリム32が設けられている。一例として、ドアトリム32は、竹製とされている。複数のディスプレイ30は、ドアトリム32の形状に沿うように傾いて配置されている。なお、複数のディスプレイ30は、同一平面上に配置されていてもよい。
【0033】
ドアトリム32には、厚さ方向に貫通する複数のスリット34が形成されている。ドアトリム32は、複数のスリット34がディスプレイ30の発光ダイオードの車室内側に位置するように配置されている。複数のスリット34は、それぞれ車両前後方向に沿う直線状に形成されており、枠部36の内側において、車両上下方向に等間隔に形成されている。一例として、各スリット34の車両上下方向の幅と、スリット34とスリット34との間の格子部38の車両上下方向の幅は、同じ寸法であるものとする。
【0034】
なお、スリット34の形状や寸法は、上記に限定されるものではない。例えば、スリットの車両上下方向の寸法は、格子部の車両上下方向の寸法よりも大きくてもよい。この場合、車室12内の乗員は、ディスプレイ30に表示された画像をより一層鮮明に見ることができる。また、スリットの車両上下方向の寸法は、格子部の車両上下方向の寸法よりも小さくてもよい。この場合、車室12内から見たドアトリム32の質感が強調され、ディスプレイ30に画像が映されていないときの意匠性が向上する。さらに、スリットは、直線状に限らず、曲線状に形成されていてもよい。例えば、ドアトリム全体が波状や放射状等の所定の模様をかたどるように、複数の貫通孔が配置されていてもよい。
【0035】
図示は省略するが、ドアトリム32には、アームレスト、インナハンドル及びウインドウスイッチが設けられている。アームレスト(図示省略)は、ドアトリム32の上下方向中央部に配置されており、車両前後方向に延在しかつ車室12内側に突出している。なお、ドアトリム32は、他にも収納ポケットやスピーカを備えていてもよい。車両10の右側前方のフロントドア(図示省略)については、フロントドア24と同様の構成のため説明を省略する。
【0036】
図4に示されるように、ドアトリム32は、シート状部材としての薄い竹製シート32A、32B、32Cが厚さ方向に重ねられた積層体となっている。
【0037】
竹製シート32Aは、自在に変形可能な薄いシートであり、厚さ方向に貫通する複数のスリット34Aが形成されている。複数のスリット34Aは、それぞれ車両前後方向に沿う直線状に形成されており、枠部36Aの内側において、車両上下方向に等間隔に配置されている。
【0038】
竹製シート32Bは、竹製シート32Aと同じ構成とされており、枠部36Bと、複数のスリット34Bと、複数の格子部38Bと、を含んで構成されている。同様に、竹製シート32Cは、竹製シート32A、32Bと同じ構成とされており、枠部36Cと、複数のスリット34Cと、複数の格子部38Cと、を含んで構成されている。
【0039】
竹製シート32A、32B、32Cは、フロントドア24の意匠に合わせて、それぞれ折り曲げられた状態で積層され、互いに貼り付けられている。このとき、各竹製シート32A、32B、32Cは、各スリット34A、34B、34Cの位置がシート厚さ方向(車両幅方向)に一致するように重ね合わせられている。これにより、積層されたドアトリム32に、厚さ方向に貫通するスリット34が形成されるようになっている。なお、本実施形態に係る車両10のドアトリム32は、竹製シート32A、32B、32Cが、それぞれの重なる面全体で接着されているものとするが、これに限らない。例えば、ドアトリムは、各竹製シートの枠部のみにおいて接着されていてもよい。また、ドアトリム32は、3枚の竹製シート32A、32B、32Cが積層されているものとして説明したが、積層されるシート状部材の枚数は、これに限定されるものではない。さらに、図4では、説明の便宜上、竹製シート32A、32B、32Cは、それぞれ矩形シート状に描かれているが、実際には、ドアトリム32の形状に合わせた形状となっている。
【0040】
(車両10のハードウェア構成)
図5に示されるように、車両10は、ECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40は、CPU42、ROM44、RAM46、ストレージ48及び入出力インタフェース(入出力I/F)50を含んで構成されている。各構成は、内部バス52を介して相互に通信可能に接続されている。
【0041】
CPU42は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU42は、ROM44又はストレージ48からプログラムを読み出し、RAM46を作業領域としてプログラムを実行する。また、CPU42は、ROM44又はストレージ48に記録されているプログラムに従って、ディスプレイ30の制御を行う。
【0042】
ROM44は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM46は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ48は、HDD又はSSDにより構成され、各種プログラム及び各種データを格納する非一時的記録媒体である。
【0043】
入出力I/F50には、複数のディスプレイ30と、車両10の周辺を監視する周辺監視センサとしてのセンサ類54とが接続されている。センサ類54には、カメラ、レーダ、ライダ(LiDAR : Light Detection and Ranging)等の各種センサのうちの複数のセンサが含まれる。カメラは、車両10の周辺を撮影する。レーダは、電波により車両10の周辺の物体との距離および方向を検出する。ライダは、レーザ光により車両10の周辺の物体との距離および方向を検出する。なお、周辺監視センサは、これらのセンサのうち少なくとも1種類のセンサを含んでいればよい。
【0044】
CPU42は、ディスプレイ30に種々の表示を出力する。一例として、CPU42は、センサ類54によって車両10に近づいてくる障害物が検知された場合、ディスプレイ30に注意喚起の表示を出力する。
【0045】
一例として、CPU42は、左斜め後方から他車両が車両10に寄ってきた場合や、二輪車が車両10の左側を通って車両10を追い越そうとしている場合に、図2に示されるように注意喚起の表示としての感嘆符を模した画像を車両左側のフロントドア24に表示させる。一方、右斜め後方から他車両が車両10によってきた場合や、二輪車が車両10の右側を通って車両10を追い越そうとしている場合には、車両右側のフロントドアのディスプレイ(図示省略)に注意喚起の表示を出力する。これにより、乗員は左右それぞれの後方から近づいてくる車両を瞬時に認識することができる。なお、図2では、説明の便宜上表示を誇張して描いているが、実際には、スリット34(図3及び図4参照)の間を通る光が鮮明に表示される。また、図2では、一例として、感嘆符を模した画像が表示されているが、注意喚起の表示はこれに限るものではない。
【0046】
さらに、CPUは、例えば、車両10の速度が法定速度を超過している場合又は法定速度を超えそうな場合に、車両前方側から車両後方側へ向かって光が流れるように、車両左側のフロントドア24及び車両右側のフロントドア(図示省略)にそれぞれ画像を表示してもよい。これにより、運転者は、車両10の速度が出すぎていることを車室12内で体感として認識することができる。
【0047】
また、CPU42は、車室12内の空間の雰囲気を演出する画像をディスプレイ30に出力してもよい。例えば、外気温センサ(図示省略)から外気温を取得し、外気温が低いときには暖色系の表示を出力し、外気温が高いときには寒色系の表示をディスプレイ30に出力してもよい。これにより、乗員は視覚効果によって、寒い日には暖色系の表示で温かく感じ、暑い日には寒色系の表示で涼しく感じることができる。なお、CPU42は、外気温センサに限らず、生体センサ(図示省略)から乗員の体温を取得して、体温が低いときに暖色系の表示を出力し、体温が高いときに寒色系の表示をディスプレイ30に出力してもよい。
【0048】
さらに、例えば、CPU42は、生体センサ(図示省略)から取得した情報を基に、乗員が緊張している場合にリラックスする画像をディスプレイ30に出力してもよい。また、例えば、CPU42は、乗員が眠そうな場合に、乗員の注意を惹いて覚醒を促すような画像をディスプレイ30に出力してもよい。さらに、例えば、CPU42は、車室12内のスピーカ(図示省略)から出力される音楽と連動した画像をディスプレイ30に出力してもよい。これらの車室12内の空間の雰囲気を演出する画像は、一例として、車両10のパワーがONのときに常にディスプレイ30に出力されている。なお、画像が出力されるタイミングは、これに限らず、例えばCPU42は、照度センサ(図示省略)から取得した情報を基に、車室12の外部が暗くなったタイミングで画像をディスプレイ30に出力してもよい。
【0049】
(本実施形態の作用)
次に、本実施形態に係る車両10の作用について説明する。
【0050】
本実施形態に係る車両10によれば、ドアトリム32によって、ディスプレイ30が覆われている。よって、ディスプレイ30が車室12内に露出している場合と比較して、発光ダイオード(図示省略)が発光していないときの内装の意匠性を維持することができる。
【0051】
また、ディスプレイ30の発光ダイオードから発光された光は、ドアトリム32のスリット34を通り、車室12内の空間に届く。よって、ディスプレイ30の内側に透過性を有するパネルが配置された場合と比較して、発光ダイオードから発光された光が車室12内の空間に直接届くため、鮮明な画像を表示することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る車両10によれば、竹製シート32A、32B、32Cは、それぞれ薄く、自在に曲げられる。よって、竹製シート32A、32B、32Cを曲げてから積層させることで、車室12の内装の立体形状に合わせつつ、ドアトリム32の強度を確保することができる。
【0053】
さらにまた、本実施形態に係る車両10によれば、ドアトリム32のスリット34は、フロントドア24において車両前後方向に沿って形成されている。よって、車両前後方向に流れるように発光する光を途切れることなく連続的に乗員に視認させることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る車両10によれば、センサ類54によって車両10の周辺に障害物が検知された場合、ディスプレイ30に注意喚起の表示がされる。乗員は、当該注意喚起の表示をドアトリム32に形成されたスリット34から視認することができる。よって、車室12の内装の意匠性を維持しつつ、鮮明な画像で乗員に注意喚起することができる。
【0055】
さらに、本実施形態に係る車両10によれば、竹製シート32Aにスリット34Aが形成され、竹製シート32Bにスリット34Bが形成され、竹製シート32Cにスリット34Cが形成されている。つまり、薄い竹製シート32A、32B、32Cにそれぞれスリット34A、34B、34Cが形成されているため、スリット34A、34B、34Cを形成する際の加工が容易であり、シート状部材を積層してから貫通孔を形成する製造方法と比較して、部材の損傷を抑制することができる。なお、シート状部材を積層してから貫通孔を形成して内装材を構成してもよい。
【0056】
〔上記実施形態の補足説明〕
上記実施形態では、フロントドア24にディスプレイ30が設けられており、ドアトリム32に複数のスリット34が形成されているものとして説明したが、これに限らない。
【0057】
例えば、表示装置がインストルメントパネルの内部に設けられており、当該表示装置を覆うパネルトリムに、車両幅方向を長手方向とするスリットが形成されていてもよい。この場合、車両幅方向に流れるように発光する光を途切れることなく連続的に乗員に視認させることができる。また、この場合、車両が先行車両に近づきすぎているときに、インストルメントパネルの表示装置に注意喚起の表示が出力されてもよい。
【0058】
さらに、例えば、表示装置は、リアドアやバックドア、ルーフ、フロア等、車室内の他の場所に設けられていてもよく、この場合、対応する内装材にスリットが形成されている。例えば、タクシーのリアドアに表示装置が設けられていて、乗客のために当該表示装置にリラックスする画像が表示されてもよい。また、上記の複数の箇所の組み合わせで、車室内に複数の表示装置が設けられていてもよい。さらに、表示装置を覆う内装材だけでなく、車室内の他の部分の内装材にも、貫通孔が形成されていてもよい。これにより、車室内の意匠に統一感が出て、意匠性が向上する。
【0059】
さらにまた、上記実施形態では、ドアトリム32は、竹製シート32A、32B、32Cが重ねられた積層体であるものとして説明したが、これに限らず、積層されていない1つの部材から構成されていてもよい。
【0060】
また、内装材は、竹に限らず、他の材質によって構成されていてもよい。例えば、内装材は、貫通孔を有する木製のシートを複数積層して構成された木材であってもよい。また、例えば、内装材は、籐を編んで編目から光が通るように構成されていてもよい。このように、内装材として自然の材料を用いることで、乗員に対して自然の温かみを感じさせることができる。また、化成品等によって形成された内装材の使用量を減らすことで、環境負荷を低減できるが、樹脂等の人工材料によって内装材が構成されていてもよい。
【0061】
さらにまた、上記実施形態では、ドアトリム32に車両前後方向を長手方向とするスリット34が複数形成されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、ドアトリムに車両上下方向を長手方向とするスリットが複数形成されていてもよい。また、貫通孔の形状は、スリットに限定されるものではない。例えば、図6に示される変形例のように、ドアトリム60を構成するシート状部材60A、60B、60Cに、それぞれ円形状の複数の貫通孔62が形成されていてもよい。また、複数の貫通孔の形状及び大きさは、同じでなくてもよい。さらに、貫通孔は、等間隔で並べられていなくてもよい。例えば、複数の貫通孔の粗密によって濃淡を表現することで、表示装置の消灯時に、内装材に特定の絵や文字を含む模様が現れるようにしてもよい。
【0062】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0063】
(付記1)
車室内側に複数の発光体を備えた表示装置と、
厚さ方向に貫通する貫通孔が複数形成され、前記表示装置を覆うように前記表示装置の車室内側に配置された内装材と、
を有する車両。
(付記2)
前記内装材は、複数のシート状部材が厚さ方向に重ねられた積層体とされている、
付記1に記載の車両。
(付記3)
前記内装材は、車両の側部に配置されたドアに設けられており、前記貫通孔は、車両前後方向を長手方向とするスリットとされている、
付記1又は付記2に記載の車両。
(付記4)
前前記内装材は、車室の前部において車両幅方向に延在するインストルメントパネルに設けられており、前記貫通孔は、車両幅方向を長手方向とするスリットとされている、
付記1又は付記2の何れか一に記載の車両。
(付記5)
車両の周辺を監視する周辺監視センサをさらに有し、
前記表示装置は、前記周辺監視センサによって車両の周辺に障害物が検知された場合、注意喚起の表示をする、
付記1~付記4の何れか一項に記載の車両。
【符号の説明】
【0064】
10 車両
12 車室
24 フロントドア(ドア)
30 ディスプレイ(表示装置)
32、60 ドアトリム(内装材)
32A、32B、32C 竹製シート(シート状部材)
34 スリット(貫通孔)
54 センサ類(周辺監視センサ)
60A、60B、60C シート状部材
62 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6