(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005235
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】滑車装置
(51)【国際特許分類】
B66D 3/04 20060101AFI20250108BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B66D3/04 F
F16B1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105342
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】592193269
【氏名又は名称】株式会社スリーエッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄一郎
(57)【要約】
【課題】固定部材を壁面に取り付けた場合には滑車の作動範囲を広く確保することができるとともに、天井面に取り付けることも可能な滑車装置を提供する。
【解決手段】左右一対の側板の間にシーブを回転自在に支持した滑車本体と、上下一対のシャックルをスイベル軸によって相対回転自在に連結したダブルシャックルと、固定プレートの下面側にスイベル軸を介してシャックルを回転自在に連結した取付ベースとを備え、滑車本体における左右一対の側板の上部と取付ベースにおけるシャックルの間にダブルシャックルを水平に貫通する連結バーによって相対揺動自在に連結可能とした。また、ダブルシャックルにおける下側のシャックルは滑車本体における左右一対の側板の上部を挟み込み、上側のシャックルは取付ベースにおけるシャックルに挟み込まれる間隔とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の側板の間にシーブを回転自在に支持した滑車本体と、上下一対のシャックルをスイベル軸によって相対回転自在に連結したダブルシャックルと、固定プレートの下面側にスイベル軸を介してシャックルを回転自在に連結した取付ベースとを備え、前記滑車本体における前記左右一対の側板の上部と前記取付ベースにおける前記シャックルの間に前記ダブルシャックルを水平に貫通する連結バーによって相対揺動自在に連結可能としたことを特徴とする滑車装置。
【請求項2】
連結バーは抜き差し可能である請求項1記載の滑車装置。
【請求項3】
ダブルシャックルにおける上下一対のシャックルは、それぞれの先端部間隔を滑車本体における左右一対の側板の上部間隔と取付ベースのシャックルの先端部間隔とに対応し、下側のシャックルは前記左右一対の側板の上部を挟み込み、上側のシャックルは前記取付ベースのシャックルに挟み込まれる間隔とした請求項2記載の滑車装置。
【請求項4】
ダブルシャックルの下側のシャックルと取付ベースのシャックルは同一構成である請求項3記載の滑車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁面および天井のいずれにも取り付けることができる滑車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から荷役の運搬用に牽引力を別の方向に置換する器具として滑車が広く利用されており、滑車自体の構造は周知である。そして、滑車は固定滑車のみならず、吊り下げ型の滑車も公知である。さらに、滑車の牽引方向を360度回転することができるスイベル滑車も広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたものは典型的なスイベル滑車の構造であり、一対の支持金具に挟まれた滑車とシャックルをスイベルによって接続し、滑車をシャックルに対して360度回転自在とすることによって、荷役の牽引方向を変換するようにしている。
【0005】
ところで、特許文献1に記載された滑車装置では、滑車はシャックルに対して相対的に回転することができるが、仮にシャックルが自在に取り付けられているのではなく、その動きが何らかの理由によって拘束されているような場合には、滑車の動作も完全な自在回転をすることはできない。また、シャックルがたとえばワイヤなどで吊り下げられるような態様で使用する場合にはシャックル自体が大きく振られることになり、安定性を欠くようになる。
【0006】
本発明はこのような問題に着目して開発されたもので、固定部材を壁面に取り付けた場合には滑車の作動範囲を広く確保することができるとともに、天井面に取り付けることも可能な滑車装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために本発明では、左右一対の側板の間にシーブを回転自在に支持した滑車本体と、上下一対のシャックルをスイベル軸によって相対回転自在に連結したダブルシャックルと、固定プレートの下面側にスイベル軸を介してシャックルを回転自在に連結した取付ベースとを備え、前記滑車本体における前記左右一対の側板の上部と前記取付ベースにおける前記シャックルの間に前記ダブルシャックルを水平に貫通する連結バーによって相対揺動自在に連結可能とするという手段を用いた。
【0008】
当該手段によれば、本発明の滑車装置は、上から順に取付ベース、ダブルシャックル、滑車本体の三部材からなるところ、それぞれがスイベル軸による回転と連結バーによる揺動によって相対的に姿勢を変えることができるため、滑車の作動範囲を広く確保することができ、しかも、取付ベースの固定プレートを天井面に固定する一般的な吊り下げ式だけではなく、前記固定プレートを壁面に固定して使用することができる。
【0009】
なお、連結バーは抜き差し可能であることで、三部材を容易に分解することができ、運搬や保管の便に供する。ここで連結バーは、ピンであってもよいし、ボルトであってもよいが、ボルトの場合は軸全域にネジを切るのではなく、先端だけにネジを切り、連結部分はピンと同様に丸棒状とする。連結部分での揺動を円滑にするためである。
【0010】
このような分解可能な構成において、ダブルシャックルにおける上下一対のシャックルは、それぞれの先端部間隔を滑車本体における左右一対の側板の上部間隔と取付ベースのシャックルの先端部間隔とに対応し、下側のシャックルは前記左右一対の側板の上部を挟み込み、上側のシャックルは前記取付ベースのシャックルに挟み込まれる間隔とすることが好ましい。当該間隔に設定することで、ダブルシャックルを省略した場合でも、取付ベースのシャックルに滑車本体を直結することができるからである。
【0011】
特に、ダブルシャックルの下側のシャックルと取付ベースのシャックルを同一構成とすることで、これらシャックルを全く別の部品とするよりも、製造の際に共通部品として製造コストを下げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では上述した構成の滑車装置としたので、作動範囲が広く、かつ安定して壁面に取り付けることができるとともに、天井面にも固定することができる滑車装置とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る滑車装置の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る滑車装置の分解斜視図であって、1は滑車本体、2~4はシャックル、5は固定プレート、6~7は連結バーである。滑車本体1は左右一対の側板1a・1bの間にシーブ1cを回転自在に支持してなる。側板1a・1bの上部には連結バー6を水平方向に抜き差し自在に貫通する径の横孔1d・1eを形成している。1fは側板1a・1bの間隔を保持するスペーサである。シャックル2~4は金属板を折り曲げ成形したU字状の金具であって、それぞれの先端部には連結バー6~7を水平方向に抜き差し自在に貫通する径の横孔2a・3a・4aを形成している。また、シャックル2~4の水平な基部にはスイベル軸8~9を垂直方向に貫通する径の縦孔2b・3b・4bを形成している。シャックル3は先端部の間隔を滑車本体1における側板1a・1bの間隔と同一としているのに対して、シャックル2・4の先端部はシャックル3と側板1a・1bを挟み込み可能な間隔としており、これらシャックル2・4は同一構成(同一部材)である。固定プレート5は四隅に貫通孔5aが形成され、この貫通孔5aにボルト等の固定部材を挿通することで壁面や天井など、フラット面に固定可能としている。本実施形態では、この固定プレート5の下面側に一方のスイベル軸9を溶接等によって固着している。連結バー6~7は同一構成であり、この実施形態では先端側が折り曲げ可能な構成としている。10はスイベル軸8~9の先端部に螺合して抜け止めを行うナットである。
【0015】
図2は一部を組み立てた状態の分解斜視図であって、シャックル2とシャックル3をスイベル軸8によって360度、相対回転自在に連結してダブルシャックル11を構成すると共に、シャックル4を固定プレート5のスイベル軸9によって360度、回転自在に連結して取付ベース12を構成している。つまり、本発明の滑車装置における重要な部材は、上から順に取付ベース12、ダブルシャックル11、滑車本体1の三部材である。
【0016】
図3・4は当該三部材を連結バー6~7で連結して完成状態とした滑車装置の組図である。つまり、滑車本体1の側板1a・1bをダブルシャックル11の下側シャックル2で挟み込むと共に、取付ベース12のシャックル4でダブルシャックル11の上側シャックル3を挟み込み、それぞれの横孔1d・1e・2a、横孔3a・4aを合致させた状態として、これら横孔に連結バー6・7を挿通することで本装置が完成する。こうした連結バー6・7の挿通によって、滑車本体1はダブルシャックル11に対して揺動自在に連結されると共に、このダブルシャックル11自在も取付ベース12に対して揺動自在に連結される。なお、連結バー6・7の挿通後、それぞれの先端側を折り曲げることで当該連結バー6・7の抜けが防止される。
【0017】
図5は、本装置を垂直面に取り付けて使用する態様を示したもので、取付ベース12の固定プレート5を適宜組数のボルトナットによって壁面Wに固定することで、静止状態では連結バー7で90度、下向きに折れ曲がって、ダブルシャックル11以下が鉛直方向の姿勢となる。そして、使用時にはスイベル軸8・9による旋回と連結バー6・7による揺動の共働作用によって、作動範囲が広がる。
【0018】
当然、本装置は天井に吊り下げて使用することもできる。この場合、取付ベース12の固定プレート5を天井などの水平面に固定するだけで済む。固定後の作動範囲については
図5の場合よりも揺動範囲が拡大する。
【0019】
また、吊り下げ使用の際は、
図6に示したように、ダブルシャックル11を省略する場合でも、取付ベース12のシャックル4に滑車本体1を直結することができる。シャックル4はダブルシャックル11の下側シャックル2と同一構成とし、且つ、ダブルシャックル11の上側シャックル3の先端部間隔は滑車本体1の側板1a・1bの上部間隔と合致させているからである。
【0020】
上述した本実施形態の滑車装置によれば、作動範囲が広く、かつ安定して壁面に取り付けることができるとともに、天井面にも固定することができる。また、連結バー6・7は抜き差し可能であるため、分解・組み立てを容易、且つ、自由に行え、さらに、シャックル4はダブルシャックル11の下側シャックル2と同一構成とし、且つ、ダブルシャックル11の上側シャックル3の先端部間隔は滑車本体1の側板1a・1bの上部間隔と合致させているため、吊り下げ使用ではダブルシャックル11を省略することができる。さらにまた、ダブルシャックル11の下側シャックル2と取付ベース12のシャックル4は同一部品であるため、異なる部品とするよりも製造コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 滑車本体
1a・1b 側板
1c シーブ
2~4 シャックル
5 固定プレート
6~7 連結バー
8~9 スイベル軸
11 ダブルシャックル
12 取付ベース