(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005237
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】波形測定器及び波形測定方法
(51)【国際特許分類】
G01P 3/481 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
G01P3/481 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105345
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】中山 悦郎
(57)【要約】
【課題】回転体の回転速度が変化する場合であっても、回転体の回転角度をより高い精度で記録可能にする。
【解決手段】波形測定器は、回転体が1回転するたびにセンサーから信号を入力する入力部と、前記入力部が第1信号を入力してから、当該第1信号の次の前記信号である第2信号を入力するまでの時間である第1回転周期と、前記入力部が前記第2信号を入力してから、当該第2信号の次の前記信号である第3信号を入力するまでの時間である第2回転周期と、に基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出する演算部と、前記算出された回転初速度及び角加速度に基づき算出された前記回転体の角度を記憶部に記憶させるメモリコントローラと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体が1回転するたびにセンサーから信号を入力する入力部と、
前記入力部が第1信号を入力してから、当該第1信号の次の前記信号である第2信号を入力するまでの時間である第1回転周期と、前記入力部が前記第2信号を入力してから、当該第2信号の次の前記信号である第3信号を入力するまでの時間である第2回転周期と、に基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出する演算部と、
前記算出された回転初速度及び角加速度に基づき算出された前記回転体の角度を記憶部に記憶させるメモリコントローラと、
を備える、波形測定器。
【請求項2】
前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの時間である回転周期を算出する計数部と、
前記計数部により算出された、前記入力部が前記第1信号を入力してから前記第2信号を入力するまでの時間である前記第1回転周期を保存する保存部と、
を更に備え、
前記演算部は、前記計数部により算出された、前記入力部が前記第2信号を入力してから前記第3信号を入力するまでの時間である前記第2回転周期と、前記保存部に保存された前記第1回転周期とに基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出する、
請求項1に記載の、波形測定器。
【請求項3】
予め定められたサンプリング周期でサンプリングタイミング信号を出力するタイミング発生部を更に備え、
前記計数部は、前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの間に、前記タイミング発生部が出力した前記サンプリングタイミング信号の個数により、前記回転周期を算出する、
請求項2に記載の波形測定器。
【請求項4】
前記演算部により算出された前記回転初速度に対して前記角加速度を積算して、前記回転体の回転速度を算出する第1積算部と、
前記第1積算部により算出された前記回転体の前記回転速度を積算して、前記回転体の角度を算出する第2積算部と、
を更に備え、
前記メモリコントローラは、前記第2積算部により算出された前記回転体の角度を前記記憶部に記憶させる、
請求項3に記載の波形測定器。
【請求項5】
前記第1積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、前記演算部により算出された前記回転初速度により、当該第1積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第1積算部の積算値に対して、前記演算部により算出された前記角加速度に前記サンプリング周期を乗じた値を加算し、
前記第2積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、値0により、当該第2積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第2積算部の積算値に対して、前記第1積算部の前記積算値に前記サンプリング周期を乗じた値を加算する、
請求項4に記載の波形測定器。
【請求項6】
前記演算部が算出した前記角加速度の移動平均を算出するローパスフィルタを更に備え、
前記第1積算部は、前記ローパスフィルタにより算出された前記角加速度の移動平均に基づき、前記回転体の回転速度を算出する、
請求項4に記載の波形測定器。
【請求項7】
前記回転体の角度の変化を示すグラフを作成して、表示部に表示させる、波形作成部を更に備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の波形測定器。
【請求項8】
波形測定器の波形測定方法であって、
入力部が、回転体が1回転するたびにセンサーから信号を入力する工程と、
演算部が、前記入力部が第1信号を入力してから、当該第1信号の次の前記信号である第2信号を入力するまでの時間である第1回転周期と、前記入力部が前記第2信号を入力してから、当該第2信号の次の前記信号である第3信号を入力するまでの時間である第2回転周期と、に基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出する工程と、
メモリコントローラが、前記算出された回転初速度及び角加速度に基づき算出された前記回転体の角度を記憶部に記憶させる工程と、
を含む、波形測定方法。
【請求項9】
計数部が、前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの時間である回転周期を算出する工程と、
保存部が、前記計数部により算出された、前記入力部が前記第1信号を入力してから前記第2信号を入力するまでの時間である前記第1回転周期を保存する工程と、
を更に含み、
前記演算部は、前記計数部により算出された、前記入力部が前記第2信号を入力してから前記第3信号を入力するまでの時間である前記第2回転周期と、前記保存部に保存された前記第1回転周期とに基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出する、
請求項8に記載の、波形測定方法。
【請求項10】
タイミング発生部が、予め定められたサンプリング周期でサンプリングタイミング信号を出力する工程を更に含み、
前記計数部は、前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの間に、前記タイミング発生部が出力した前記サンプリングタイミング信号の個数により、前記回転周期を算出する、
請求項9に記載の波形測定方法。
【請求項11】
第1積算部が、前記演算部により算出された前記回転初速度に対して前記角加速度を積算して、前記回転体の回転速度を算出する工程と、
第2積算部が、前記第1積算部により算出された前記回転体の前記回転速度を積算して、前記回転体の角度を算出する工程と、
を更に含み、
前記メモリコントローラは、前記第2積算部により算出された前記回転体の角度を前記記憶部に記憶させる、
請求項10に記載の波形測定方法。
【請求項12】
前記第1積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、前記演算部により算出された前記回転初速度により、当該第1積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第1積算部の積算値に対して、前記演算部により算出された前記角加速度に前記サンプリング周期を乗じた値を加算し、
前記第2積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、値0により、当該第2積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第2積算部の積算値に対して、前記第1積算部の前記積算値に前記サンプリング周期を乗じた値を加算する、
請求項11に記載の波形測定方法。
【請求項13】
ローパスフィルタが、前記演算部が算出した前記角加速度の移動平均を算出する工程を更に含み、
前記第1積算部は、前記ローパスフィルタにより算出された前記角加速度の移動平均に基づき、前記回転体の回転速度を算出する、
請求項11に記載の波形測定方法。
【請求項14】
波形作成部が、前記回転体の角度の変化を示すグラフを作成して、表示部に表示させる工程を更に含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の波形測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波形測定器及び波形測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波形測定器は、被測定信号を測定し、その波形の解析及び表示等を行う装置である。例えば、デジタルオシロスコープは、このような波形測定器に当たる。非特許文献1には、モータ等の回転体に取り付けられた1回転あたり1パルスを出力するセンサーからの信号をもとに、回転体の回転角度を予測し、回転角度をリアルタイムに記録する波形測定器が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】中山悦郎、山本千秋、「スコープコーダDL850 リアルタイム演算機能」、横河技報、横河電機株式会社、2012年、第55巻、第1号、p.9-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成は、回転体の回転速度が変化する場合に、回転角度を高い精度で記録するという点で改善の余地があった。
【0005】
本開示は、回転体の回転速度が変化する場合であっても、回転体の回転角度をより高い精度で記録可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る波形測定器は、
(1)回転体が1回転するたびにセンサーから信号を入力する入力部と、
前記入力部が第1信号を入力してから、当該第1信号の次の前記信号である第2信号を入力するまでの時間である第1回転周期と、前記入力部が前記第2信号を入力してから、当該第2信号の次の前記信号である第3信号を入力するまでの時間である第2回転周期と、に基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出する演算部と、
前記算出された回転初速度及び角加速度に基づき算出された前記回転体の角度を記憶部に記憶させるメモリコントローラと、
を備える。
【0007】
このように、波形測定器は、第2回転周期だけでなく、第1回転周期も利用して回転体の回転初速度及び角加速度を算出し、この回転初速度及び角加速度に基づき算出された回転体の角度を算出する。したがって、波形測定器は、回転体の回転速度が変化する場合であっても、回転体の角加速度を反映して、回転体の回転角度をより高い精度で記録することが可能である。
【0008】
一実施形態において、
(2)(1)の波形測定器において、
前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの時間である回転周期を算出する計数部と、
前記計数部により算出された、前記入力部が前記第1信号を入力してから前記第2信号を入力するまでの時間である前記第1回転周期を保存する保存部と、
を更に備え、
前記演算部は、前記計数部により算出された、前記入力部が前記第2信号を入力してから前記第3信号を入力するまでの時間である前記第2回転周期と、前記保存部に保存された前記第1回転周期とに基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出してもよい。
【0009】
このように、波形測定器は、計数部及び保存部を備え、第1回転周期を保存部に保存して当該第1回転周期に基づき回転体の回転初速度及び角加速度を算出する。したがって、波形測定器は、保存部を参照して、回転体の回転初速度及び角加速度を算出することが可能である。
【0010】
一実施形態において、
(3)(2)の波形測定器において、
予め定められたサンプリング周期でサンプリングタイミング信号を出力するタイミング発生部を更に備え、
前記計数部は、前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの間に、前記タイミング発生部が出力した前記サンプリングタイミング信号の個数により、前記回転周期を算出してもよい。
【0011】
このように、波形測定器は、サンプリングタイミング信号の個数により回転周期を算出するため、簡易な構成により実現することが可能である。
【0012】
一実施形態において、
(4)(3)の波形測定器において、
前記演算部により算出された前記回転初速度に対して前記角加速度を積算して、前記回転体の回転速度を算出する第1積算部と、
前記第1積算部により算出された前記回転体の前記回転速度を積算して、前記回転体の角度を算出する第2積算部と、
を更に備え、
前記メモリコントローラは、前記第2積算部により算出された前記回転体の角度を前記記憶部に記憶させてもよい。
【0013】
このように、波形測定器は、角加速度を積算して回転速度を算出する第1積算部、及び、回転速度を積算して回転体の角度を算出する第2積算部を備えるため、簡易な構成により回転体の角度を高速に計算することが可能である。
【0014】
一実施形態において、
(5)(4)の波形測定器において、
前記第1積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、前記演算部により算出された前記回転初速度により、当該第1積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第1積算部の積算値に対して、前記演算部により算出された前記角加速度に前記サンプリング周期を乗じた値を加算し、
前記第2積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、値0により、当該第2積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第2積算部の積算値に対して、前記第1積算部の前記積算値に前記サンプリング周期を乗じた値を加算してもよい。
【0015】
このように、波形測定器の第1積算部及び第2積算部は、サンプリング周期に応じて数値を積算する処理を行うため、簡易な構成により回転体の角度を高速に計算することが可能である。
【0016】
一実施形態において、
(6)(4)又は(5)の波形測定器において、
前記演算部が算出した前記角加速度の移動平均を算出するローパスフィルタを更に備え、
前記第1積算部は、前記ローパスフィルタにより算出された前記角加速度の移動平均に基づき、前記回転体の回転速度を算出してもよい。
【0017】
このように、波形測定器は、ローパスフィルタを通過した角加速度の移動平均に基づき回転体の回転速度を算出するため、雑音を除外して、回転体の角度を高い精度で記録することが可能である。
【0018】
一実施形態において、
(7)(1)から(6)のいずれかの波形測定器において、
前記回転体の角度の変化を示すグラフを作成して、表示部に表示させる、波形作成部を更に備えてもよい。
【0019】
このような構成によれば、波形測定器のユーザは、波形測定器が記録した回転体の角度の変化を視覚的に確認することが可能である。
【0020】
幾つかの実施形態に係る波形測定方法は、
(8)波形測定器の波形測定方法であって、
入力部が、回転体が1回転するたびにセンサーから信号を入力する工程と、
演算部が、前記入力部が第1信号を入力してから、当該第1信号の次の前記信号である第2信号を入力するまでの時間である第1回転周期と、前記入力部が前記第2信号を入力してから、当該第2信号の次の前記信号である第3信号を入力するまでの時間である第2回転周期と、に基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出する工程と、
メモリコントローラが、前記算出された回転初速度及び角加速度に基づき算出された前記回転体の角度を記憶部に記憶させる工程と、
を含む。
【0021】
このように、波形測定方法は、第2回転周期だけでなく、第1回転周期も利用して回転体の回転初速度及び角加速度を算出し、この回転初速度及び角加速度に基づき算出された回転体の角度を算出する。したがって、波形測定方法によれば、回転体の回転速度が変化する場合であっても、回転体の角加速度を反映して、回転体の回転角度をより高い精度で記録することが可能である。
【0022】
一実施形態において、
(9)(8)の波形測定方法において、
計数部が、前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの時間である回転周期を算出する工程と、
保存部が、前記計数部により算出された、前記入力部が前記第1信号を入力してから前記第2信号を入力するまでの時間である前記第1回転周期を保存する工程と、
を更に含み、
前記演算部は、前記計数部により算出された、前記入力部が前記第2信号を入力してから前記第3信号を入力するまでの時間である前記第2回転周期と、前記保存部に保存された前記第1回転周期とに基づいて、前記回転体の回転初速度及び角加速度を算出してもよい。
【0023】
このように、波形測定方法は、計数部及び保存部を備え、第1回転周期を保存部に保存して当該第1回転周期に基づき回転体の回転初速度及び角加速度を算出する。したがって、波形測定方法によれば、保存部を参照して、回転体の回転初速度及び角加速度を算出することが可能である。
【0024】
一実施形態において、
(10)(9)の波形測定方法において、
タイミング発生部が、予め定められたサンプリング周期でサンプリングタイミング信号を出力する工程を更に含み、
前記計数部は、前記入力部が前記信号を入力してから、当該信号の次の前記信号を入力するまでの間に、前記タイミング発生部が出力した前記サンプリングタイミング信号の個数により、前記回転周期を算出してもよい。
【0025】
このように、波形測定方法は、サンプリングタイミング信号の個数により回転周期を算出するため、簡易な構成により実現することが可能である。
【0026】
一実施形態において、
(11)(10)の波形測定方法において、
第1積算部が、前記演算部により算出された前記回転初速度に対して前記角加速度を積算して、前記回転体の回転速度を算出する工程と、
第2積算部が、前記第1積算部により算出された前記回転体の前記回転速度を積算して、前記回転体の角度を算出する工程と、
を更に含み、
前記メモリコントローラは、前記第2積算部により算出された前記回転体の角度を前記記憶部に記憶させてもよい。
【0027】
このように、波形測定方法は、角加速度を積算して回転速度を算出する第1積算部、及び、回転速度を積算して回転体の角度を算出する第2積算部を備えるため、簡易な構成により回転体の角度を高速に計算することが可能である。
【0028】
一実施形態において、
(12)(11)の波形測定方法において、
前記第1積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、前記演算部により算出された前記回転初速度により、当該第1積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第1積算部の積算値に対して、前記演算部により算出された前記角加速度に前記サンプリング周期を乗じた値を加算し、
前記第2積算部は、
前記入力部が前記信号を入力したことに応じて、値0により、当該第2積算部の積算値を初期化し、
前記タイミング発生部が前記サンプリングタイミング信号を出力したことに応じて、前記第2積算部の積算値に対して、前記第1積算部の前記積算値に前記サンプリング周期を乗じた値を加算してもよい。
【0029】
このように、波形測定方法においては、第1積算部及び第2積算部が、サンプリング周期に応じて数値を積算する処理を行うため、簡易な構成により回転体の角度を高速に計算することが可能である。
【0030】
一実施形態において、
(13)(11)又は(12)の波形測定方法において、
ローパスフィルタが、前記演算部が算出した前記角加速度の移動平均を算出する工程を更に含み、
前記第1積算部は、前記ローパスフィルタにより算出された前記角加速度の移動平均に基づき、前記回転体の回転速度を算出してもよい。
【0031】
このように、波形測定方法は、ローパスフィルタを通過した角加速度の移動平均に基づき回転体の回転速度を算出するため、雑音を除外して、回転体の角度を高い精度で記録することが可能である。
【0032】
一実施形態において、
(14)(8)から(13)のいずれかの波形測定方法において、
波形作成部が、前記回転体の角度の変化を示すグラフを作成して、表示部に表示させる工程を更に含んでもよい。
【0033】
このような構成によれば、ユーザは、波形測定方法により記録した回転体の角度の変化を視覚的に確認することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
本開示の一実施形態によれば、回転体の回転速度が変化する場合であっても、回転体の回転角度をより高い精度で記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】比較例に係る波形測定器の構成を示すブロック図である。
【
図2】比較例に係る波形測定器の動作を説明する図である。
【
図3】比較例に係る波形測定器の動作の問題を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係る波形測定器の構成例を示すブロック図である。
【
図5】等角加速度運動を行う回転体の角速度の変化を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る波形測定器の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図7】一実施形態に係る波形測定器の動作例を示すフローチャートである。
【
図8A】一実施形態に係る波形測定器の演算結果の表示例を示す図である。
【
図8B】一実施形態に係る波形測定器の演算結果の表示例を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る波形測定器の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<比較例>
図1は、比較例に係る波形測定器9の構成を示すブロック図である。波形測定器9は、モータ等の回転体に取り付けられた1回転あたり1パルスを出力するセンサーからのセンサー信号をもとに、回転体の回転角度を予測し、回転角度をリアルタイムに記録する。波形測定器9は、入力アンプ81、A/D(Analog-to-Digital)変換部82、インターフェース部83、タイミング発生部84、メモリコントローラ85、メモリ86、波形作成部87、表示部88、エッジ検出部89、計数部90、演算部91、及び、積算部92を備える。
【0037】
入力アンプ81は、モータ等の回転体に取り付けられたセンサーから回転体が1回転するたびに1パルスのセンサー信号を入力する。入力アンプ81は、入力されたセンサー信号を増幅して正規化し、A/D変換部82へ出力する。
【0038】
A/D変換部82は、入力アンプ81から入力されたセンサー信号をデジタル化する。A/D変換部82は、デジタル化されたセンサー信号をインターフェース部83へ出力する。A/D変換部82は、タイミング発生部84から入力されるサンプリングタイミング信号のタイミングに合わせて動作する。
【0039】
インターフェース部83は、デジタル化されたセンサー信号をメモリコントローラ85及びエッジ検出部89へ出力する。インターフェース部83は、タイミング発生部84から入力されるサンプリングタイミング信号のタイミングに合わせて動作する。
【0040】
タイミング発生部84は、予め定められた一定の時間周期(サンプリング周期)でサンプリングタイミング信号を生成し、A/D変換部82、インターフェース部83、及び、メモリコントローラ85へ出力する。
【0041】
メモリコントローラ85は、インターフェース部83から入力されたデジタル化されたセンサー信号、及び、後述する積算部92から入力された角度推定値をメモリ86に記憶させる。メモリコントローラ85は、タイミング発生部84から入力されるサンプリングタイミング信号のタイミングに合わせて動作する。
【0042】
メモリ86は、インターフェース部83から入力されたセンサー信号、及び、後述する積算部92から入力された角度推定値を記憶する。
【0043】
波形作成部87は、メモリ86からセンサー信号及び角度推定値を読み出して波形を作成する。波形作成部87は、センサー信号及び角度推定値の波形を表示部88へ出力する。
【0044】
表示部88は、センサー信号及び角度推定値の波形を表示する。
【0045】
エッジ検出部89は、センサー信号のエッジ(パルス)を検出する。例えば、エッジ検出部89は、センサー信号のHエッジを検出する。エッジ検出部89は、エッジの検出に応じて、エッジを検出したことを計数部90及び積算部92に通知する。換言すると、エッジ検出部89は、回転体が1回転する毎にエッジ検出を計数部90及び積算部92に通知する。
【0046】
計数部90は、前回のエッジ検出から今回のエッジ検出までの間にタイミング発生部84が出力したサンプリングタイミング信号の個数(以下「サンプリング数」と称する。)を計数する。計数部90は、エッジ区間のサンプリング数を演算部91へ出力する。
【0047】
演算部91は、360deg(度)をサンプリング数で除算して、互いに時間的に隣接するサンプリングタイミング信号の間隔当たりの回転体の回転角度Δθを算出する。演算部91は、算出したサンプリング間隔当たりの回転角度Δθを積算部92へ出力する。
【0048】
積算部92は、演算部91から入力されたサンプリング間隔当たりの回転角度Δθの値の積算値を保持する。積算部92は、エッジ検出部89からエッジが通知されると、積算値を0で初期化する。したがって、積算部92は、回転体に取り付けられたセンサーからセンサー信号を受信してからの回転体の回転角度に相当する角度推定値を積算値として保持する。積算部92は、タイミング発生部84が生成するサンプリングタイミング信号と同期して角度推定値をメモリコントローラ85へ出力する。
【0049】
前述のように、波形測定器9は、モータ等の回転体に取り付けられた1回転あたり1パルスを出力するセンサーからのセンサー信号をもとに、回転体の回転角度を予測し、回転角度をリアルタイムに記録する。ここで、センサーは1回転につき1パルスしか信号を出力しないため、波形測定器9は、1回転あたり1パルスの信号を内挿処理して、角度を推定する。このような、回転体が1回転する毎に1パルスを出力するようなセンサーからのセンサー信号をもとに角度を算出する処理について、
図2を参照して説明する。
【0050】
図2は、比較例に係る波形測定器9の動作を説明する図である。
図2において、「サンプリングタイミング」は、タイミング発生部84が出力するサンプリングタイミング信号を示す。
図2において、サンプリングタイミング信号の周期であるサンプリング周期はΔtである。「センサー信号」は、回転体に取り付けられたセンサー信号(パルス信号)を示す。
図2において、時刻T1,T2,T3,・・・にパルス信号が入力されている。「角度演算結果」は、積算部92が保持する角度推定値(積算値)を示す。
【0051】
モータ等の回転体が一定回転速で回転している場合、波形測定器9は、一定の回転周期Trotで、センサーからセンサー信号を入力する。波形測定器9は、T1-T2間の周期Trotを測定し、回転周期Trot中のサンプリング個数Nrotを計数する。サンプリング周期Δtは、波形測定器9側で予め設定された一定値である。ここで、Nrot=Trot/Δtである。例えば、サンプリング周期Δtが10usecのとき、回転周期Trotが10msecであれば、サンプリング個数Nrotは、1000個となる。前述のように、波形測定器9の演算部91は、1サンプリング周期Δt間に回転体が回転する角度Δθを、Δθ=360deg/Nrotにより計算する。例えば、サンプリング個数Nrot=1000個であれば、Δθ=360/1000=0.360degとなる。波形測定器9は、時刻T2においてセンサーからセンサー信号が入力されたときから、サンプリング周期ΔtごとにΔθを積算部92において積算し、その積算値を角度推定値として表示部88に表示する。このような動作により、波形測定器9は、1周期前のセンサーからの信号の周期(回転周期)を参照値として、サンプリングごとに積算値を角度推定値として表示部88に表示する。
【0052】
上記のように、比較例に係る波形測定器9、1周期前の区間周期(回転周期)をもとに角度を推定しているので、回転速度が一定である場合は、ほぼ正確にサンプリングタイミングごとに角度推定を行うことができる。しかしながら、1周期ごとに回転周期が変化するような場合において、波形測定器9においてはズレが生じ角度誤差が発生する。
図3は、比較例に係る波形測定器9の動作の問題を説明する図である。例えば、
図3のようにモータをある回転数から無負荷状態にして減速するような場合、1周期ごとにモータが1回転する回転周期が長くなっていく。このような場合、
図3のように、一つ前の回転周期を利用することによる角度推定(角度演算)では、回転周期ごとにずれが発生することになる。
【0053】
このように、比較例に係る構成は、回転体の回転速度が変化する場合に、回転角度を高い精度で記録するという点で改善の余地があった。
【0054】
本開示は、回転体の回転速度が変化する場合であっても、回転体の回転角度をより高い精度で記録可能にすることを目的とする。具体的には、本開示の目的は、等角加速度運動中の回転体に取り付けられた1回転あたり1パルスを出力するようなセンサーのセンサー信号に基づき、角度推定をリアルタイムで精度良く行い、推定した角度を記録及び表示することにある。
【0055】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0056】
図4は、一実施形態に係る波形測定器1aの構成例を示すブロック図である。以下、波形測定器1aと、
図9を参照して後述する波形測定器1bと、を併せて「波形測定器1」と称する場合がある。波形測定器1は、1周期前から現在までの回転周期だけでなく、2周期前から1周期前までの回転周期を用いて回転体の角加速度aを算出し、角加速度aに基づき角度推定値を算出する。したがって、波形測定器1によれば、回転体の回転速度が変化する場合であっても、回転体の回転角度をより高い精度で記録することが可能である。
【0057】
波形測定器1aは、入力アンプ11、A/D変換部12、インターフェース部13、タイミング発生部14、メモリコントローラ15、メモリ16、波形作成部17、表示部18、エッジ検出部19、計数部20、保存部21、演算部22、及び、積算部23、24を備える。
【0058】
入力部としての入力アンプ11は、モータ等の回転体に取り付けられたセンサーから回転体が1回転するたびに1パルスのセンサー信号(第1信号、第2信号、第3信号)を入力する。入力アンプ11は、入力されたセンサー信号を増幅して正規化し、A/D変換部12へ出力する。
【0059】
A/D変換部12は、入力アンプ11から入力されたセンサー信号をデジタル化する。A/D変換部12は、デジタル化されたセンサー信号をインターフェース部13へ出力する。A/D変換部12は、タイミング発生部14から入力されるサンプリングタイミング信号のタイミングに合わせて動作する。
【0060】
インターフェース部13は、デジタル化されたセンサー信号をメモリコントローラ15及びエッジ検出部19へ出力する。インターフェース部13は、タイミング発生部14から入力されるサンプリングタイミング信号のタイミングに合わせて動作する。
【0061】
タイミング発生部14は、予め定められた一定の時間周期(サンプリング周期Δt)でサンプリングタイミング信号を生成し、A/D変換部12、インターフェース部13、及び、メモリコントローラ15へ出力する。以下、タイミング発生部14が、サンプリングタイミング信号を出力するタイミングを「サンプリングタイミング」と称する場合がある。
【0062】
メモリコントローラ15は、インターフェース部13から入力されたデジタル化されたセンサー信号、及び、後述する積算部24から入力された角度推定値をメモリ16に記憶させる。メモリコントローラ15は、タイミング発生部14から入力されるサンプリングタイミング信号のタイミングに合わせて動作する。
【0063】
記憶部としてのメモリ16は、インターフェース部13から入力されたセンサー信号、及び、後述する積算部24から入力された角度推定値を記憶する。メモリ16は、例えば、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)、又は、磁気ハードディスク等の任意の記憶装置により構成してもよい。
【0064】
波形作成部17は、メモリ16からセンサー信号及び角度推定値を読み出して波形を作成する。波形作成部17は、センサー信号及び角度推定値の波形を表示部18へ出力する。
【0065】
表示部18は、センサー信号及び角度推定値の波形を表示する。表示部18は、例えば、液晶パネル又は有機EL(Electro-Luminescence)等の任意のディスプレイにより構成してもよい。
【0066】
エッジ検出部19は、センサー信号のエッジ(パルス)を検出する。例えば、エッジ検出部19は、センサー信号のHエッジを検出する。エッジ検出部19は、エッジの検出に応じて、エッジを検出したことを計数部20、保存部21、積算部23、24に通知する。換言すると、エッジ検出部19は、回転体が1回転する毎にエッジ検出を計数部20、保存部21、積算部23、24に通知する。
【0067】
計数部20は、前回のエッジ検出から今回のエッジ検出までの間にタイミング発生部14が出力したサンプリングタイミング信号の個数(以下「サンプリング数」と称する。)を計数する。前述のように、サンプリングタイミング信号の間隔は予め定められているから、計数部20が計数するサンプリング数は、回転体が1回転するのに要する時間に対応する。計数部20は、エッジ区間のサンプリング数を回転体の回転周期として保存部21及び演算部22へ出力する。
【0068】
保存部21は、エッジ検出部19におけるエッジ検出に応じて、回転体の回転の2周期前から1周期前までの回転周期を保持する。保存部21は、例えば、RAM、SSD、又は、磁気ハードディスク等の任意の記憶装置により構成してもよい。
【0069】
演算部22は、エッジ検出部19におけるエッジ検出に応じて、回転体の回転の、2周期前から1周期前までの回転周期、及び、1周期前から現在までの回転周期に基づいて、回転体の現在の角速度f0(回転初速度)及び角加速度aを算出する。演算部22は、算出した角速度f0及び角加速度aを積算部23へ出力する。
【0070】
第1積算部としての積算部23は、エッジ検出部19におけるエッジ検出に応じて、演算部22から入力された角速度f0に対して角加速度aを積算して、回転体の角速度を算出する。積算部23は、算出した角速度を積算部24へ出力する。
【0071】
第2積算部としての積算部24は、エッジ検出部19におけるエッジ検出に応じて、積算部23から入力された速度を積算して、角加速度aを反映した回転体の角度推定値を算出する。積算部24は、タイミング発生部14が生成するサンプリングタイミング信号と同期して角度推定値をメモリコントローラ15へ出力する。
【0072】
計数部20、保存部21、演算部22、及び、積算部23、24による回転体の角度推定の詳細について、
図5を参照して説明する。
図5は、等角加速度運動を行う回転体の角速度の変化を示す図である。
【0073】
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は角速度を示す。
図5は、回転体の角速度の時間変化により、回転体の運動を示している。T0、T1、T2は回転体が1回転するたびにセンサーからセンサー信号(パルス信号)が入力されるタイミング(時刻)である。
図5は、角加速度a(>0)で回転体の角速度が減少している場合、すなわち、角加速度-a(<0)で角速度が減少している場合を示している。T2以降の回転角度を推定するためには、時刻T2時点での角速度f
0、及び、角加速度aがわかれば、以下の手順により求めることができる。時刻T2からのサンプリング周期n回経過時点での角速度f
nは、サンプリング周期をΔtとすると(数1)により算出される。以下、回転体の角速度が一定の角加速度で減少する例を説明するが、角速度が増大する場合の動作も同様である。
【0074】
【0075】
角度推定値angleは、角速度fnを時間積分したものとなるから、(数2)により算出される。
【0076】
【0077】
積算部23は、演算部22において算出された角速度f0及び角加速度aを用いて(数1)により、角速度fnを算出する。積算部24は、積算部23が算出した角速度fnを(数2)に基づき積算して、回転体の角度を算出する。
【0078】
次に、演算部22が、回転体が1回転に要した時間(回転周期)t1(=T1-T0)、t2(=T2-T1)から、f
0、aを求める手法について説明する。ここで、第1回転周期としてのt1は、演算部22が保存部21から取得する、2周期前から1周期前までの回転周期に相当する。第2回転周期としてのt2は、演算部22が計数部20から取得する、1周期前から現在までの回転周期に相当する。回転体の角速度の時間積分値は、回転角度に相当する。したがって、
図5においては、T1-T2期間の角加速度積分値、及び、T0-T1期間の角速度積分値の各々、すなわち、面積S2、及び、面積S1の各々は、1回転の角度(360deg)を表す。換言すると、あるセンサー信号(パルス信号)が入力されてから次のセンサー信号が入力されるまでの期間において、回転体は1回転する。よって、面積S2、及び、面積S1の各々は、1回転角度(360deg)に相当する。
【0079】
1回転角度を正規化して1とすると、台形の面積の公式により、面積S2について、(数3)が成立する。
【0080】
【0081】
したがって、(数4)が成立する。
【0082】
【0083】
同様に、面積S1についても、台形の面積の公式により、(数5)が成立する。
【0084】
【0085】
したがって、(数6)が成立する。
【0086】
【0087】
面積S2についての(数4)をaについて解くと(数7)が成立する。
【0088】
【0089】
面積S1についての(数6)は(数8)のように変形することができる。
【0090】
【0091】
(数7)を(数8)に代入すると(数9)のようになる。
【0092】
【0093】
(数9)をf0について解くと、f0と、t1及びt2との関係式(数10)が得られる。
【0094】
【0095】
したがって、(数10)により、t1及びt2の値から角速度f0を算出することができる。さらに、算出した角速度f0の値、t1、及び、t2を(数7)に代入することにより、角加速度aを算出することができる。前述のように、t2は、計数部20から出力される1周期前(時刻T1)から現在(時刻T2)までの回転周期に相当する。t1は、保存部21に保存される2周期前(時刻T0)から1周期前(時刻T1)までの回転周期に相当する。そこで、演算部22は、計数部20から入力されるt2、及び、保存部21から入力されるt1を用いて、(数10)と、(数7)とに基づき、初角速度f0と角加速度aを算出する。このように、2周期前までの回転周期を測定すれば、f0とaを求めることができる。
【0096】
f
0とaが求まれば、(数1)及び(数2)を用いることにより、サンプリングタイミングごとの角度推定値を求めることができる。
図4の構成において、積算部23は、エッジ検出部19がエッジを検出したことに応じて初期値をf
0とするとともに、サンプリングタイミングごとに-a・Δtを積算していく。換言すると、積算部23は、パルス信号に当たるセンサー信号の受信に応じて、2周期前以降の回転周期(T1,T2)に基づき算出される角速度f
0で積算値を初期化するとともに、タイミング発生部14のサンプリングタイミングごとに積算値からa・Δt(a>0)を減算していく。積算部23は、サンプリングタイミングごとに積算値を積算部24へ出力する。積算部23の出力は、角速度に相当する。
【0097】
積算部24は、エッジ検出部19がエッジを検出したことに応じて初期値を0とするとともに、サンプリングタイミングごとに積算部23から入力される角速度にサンプリング周期Δtを乗じた値を積算する。積算部24における積算値は、回転体の角度推定値に相当する。積算部24は、この積算値を角度推定値として、メモリコントローラ15を介してメモリ16に記録させる。波形作成部17は、メモリ16に記録された角度推定値から波形を作成し、表示部18に表示させる。
【0098】
図6は、一実施形態に係る波形測定器1の動作例を示すタイミングチャートである。
図6は、エッジ検出部19、計数部20、保存部21、演算部22、及び、積算部23、24の動作を示している。
【0099】
図6において、横軸は時間を示す。a1、b1、c1、・・・は、タイミング発生部14がサンプリングタイミング信号を出力するサンプリングタイミング(サンプリング周期Δt)を示す。
図6に示すように、計数部20、保存部21、演算部22、及び、積算部23、24等は、隣接するサンプリングタイミングの間のタイミング(例えば、a2、a3、・・・、b2、b3、・・・、c2、c3、・・・等)に動作し得る。
【0100】
図6は、a1のサンプリングタイミングにおいて、エッジ検出部19が、センサーからのセンサー信号の入力を検知した場合を示している。センサーからのセンサー信号の入力に応じて、a2において、計数部20は、前区間の周期データ(サンプリング数)t2を出力する。同時に、2周期前の周期データt1が、保存部21に保存される。t2及びt1は、演算部22に入力される。演算部22は、a3からa4の期間において、t2及びt1に基づき角速度f
0及び角加速度aを算出している。a4以降、演算部22は、算出した角速度f
0及び角加速度aを積算部23へ出力している。
【0101】
a5において、積算部23及び積算部24の初期化が行われる。なお、このa1からa5までの一連の処理(積算部23、24の初期化を含む。)までの動作が行われるのは、サンプリングタイミングにおいて、エッジ検出部19が、センサー信号からのエッジを検出した場合のみである。a5において、積算部23はf0に初期化され、積算部24は0に初期化されている。
【0102】
次のサンプリングタイミングb1において、積算部24の積算値が、メモリコントローラ15を介してメモリ16に格納される。b1では、積算部24の初期値0がメモリ16に格納される。b2において、積算部24は、それまでに保持している積算値に、積算部23の積算値f
0に対してΔtを乗じたものf
0・Δtを加算する。これにより、b2以降における、積算部24の積算値はangle1=f
0・Δtとなる。angle1は、サンプリング周期Δt後の角度推定値に相当する。
図6に示すように、次のサンプリングタイミングc1において、angle1は、メモリコントローラ15を介して、メモリ16に格納される。
【0103】
b3において、積算部23は、それまでに保持している積算値f0に対して、-a・Δtを加算する。換言すると、積算部23は、それまでの積算値f0からa・Δtを減算する。これにより、b3以降における、積算部23の積算値はf1=f0-a・Δtとなる。
【0104】
以下、波形測定器1は、以下、同様の処理を繰り返す。すなわち、c2では、積算部24の積算値(angle1)に対して積算部23の積算値f1にΔtを乗じたものf1Δtを加算する。この加算結果は、angle2(=angle1+f1Δt)となり、a1のセンサー信号に応じて開始したサンプリングの2Δt後の角度推定値となる。c3では、積算部23の積算値(f1)から、a・Δtを減算される。すなわち、積算部23の積算値はf2=f1-a・Δtとなる。
【0105】
図7は、一実施形態に係る波形測定器1の動作例を示すフローチャートである。
図7の各ステップは
図4に示した各構成要素が実行するが、
図7の各ステップの少なくとも一部を汎用的なプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit))が実行してもよい。
図7を参照して説明する波形測定器1の動作は波形測定器1の波形測定方法の一つに相当してもよい。波形測定器1は、ステップS1~S10の処理を、タイミング発生部14がサンプリングタイミング信号を出力するサンプリングタイミングごとに繰り返し実行する。
【0106】
ステップS1において、メモリコントローラ15は、積算部24の積算値をメモリ16に保存する。具体的には、メモリコントローラ15は、積算部24から出力される積算部24の積算値を取得し、その積算値をメモリ16に保存させる。
【0107】
ステップS2において、エッジ検出部19がセンサー信号のエッジを検出したか否かを判定する。波形測定器1は、エッジを検出した場合(ステップS2でYES)はステップS3へ進み、そうでない場合(ステップS2でNO)はステップS9へ進む。
【0108】
ステップS3において、計数部20は、前回のセンサー信号の入力に応じて算出したセンサー信号間の回転周期t1を保存部21に保存する。保存部21に保存される回転周期t1は、2周期前から1周期前までの回転周期に相当する。前述のように、センサー信号間の回転周期は、サンプリング周期の個数により表されてもよい。
【0109】
ステップS4において、計数部20は、前回のセンサー信号の入力からステップS2でエッジを検出した今回のセンサー信号の入力までに計測したサンプリング周期の個数を、1周期前から現在までの回転周期t2として算出する。計数部20は、次のサンプリング信号の入力まで、回転周期t2を保持する。
【0110】
ステップS5において、演算部22は、保存部21に保存された回転周期t1、及び、計数部20が算出した回転周期t2を用いて、角速度f0及び角加速度aを算出する。演算部22は、(数10)と、(数7)とに基づき、角速度f0と角加速度aを算出してもよい。演算部22は、算出した角速度f0及び角加速度aを積算部23へ出力する。
【0111】
ステップS6において、積算部23は、保持する積算値をf0で初期化する。
【0112】
ステップS7において、積算部24は、保持する積算値を0で初期化する。ステップS7の処理を終えると、波形測定器1は、フローチャートの処理を終了し、次のサンプリングタイミングにおいてステップS1から処理を再開する。
【0113】
ステップS8において、積算部24は、積算部23から積算値を取得し、取得した積算部23の積算値にΔtを乗じた値を積算部24の積算値に加算する。
【0114】
ステップS9において、積算部23は、保持する積算値からaΔtを減算する。ステップS9の処理を終えると、波形測定器1は、フローチャートの処理を終了し、次のサンプリングタイミングにおいてステップS1から処理を再開する。
【0115】
なお、上述の例では、測定対象の回転体の角速度が角加速度a(>0)で減少している例を説明したが、回転体の角速度が角加速度a(>0)で増大する場合も同様である。角速度が角加速度a(>0)で増大する場合、ステップS9において、積算部23は、保持する積算値をaΔtだけ増分する。換言すると、回転体の角速度が増大する場合は角加速度a>0、角速度が減少する場合は角加速度a<0とすれば、角速度の増減にかかわらず、ステップS9において、積算部23は、保持する積算値をaΔtだけ増分する。
【0116】
前述の説明においては、1回転した場合の回転角度を正規化した値1に対応付けた。したがって、積算部24での積算演算結果において、1回転した場合の角度は1となる。回転を360(degree)又は2π(ラジアン)に対応付けて回転角の結果を出力する場合、前述の1回転を値1に対応付けた結果(積算部24の積算値)に対して値360又は2πを係数として乗ずる必要がある。
【0117】
上記構成は、回転体の角速度が一定の場合、すなわち、等角速度の場合でも適用することができる。等角速度の場合は、t1=t2となる。t1=t2の時、t1にt2を代入し計算すると、(数10)により、f0=1/t2となる。この場合、(数7)によりa=0となる。これは、角加速度が0であり、回転体は一定速度で回転していることを意味する。したがって、等角速度の場合でも、本方式で同様に角度推定が行うことが可能である。
【0118】
以上のように、波形測定器1は、2周期前までの回転周期を用いて、初速度f0と角加速度aを求めることにより、サンプリング周期ごとの角速度を算出するので、等角加速度状態の回転体の角度を正確に推定することができる。
【0119】
図8A及び
図8Bは、一実施形態に係る波形測定器1の演算結果の表示例を示す図である。
図8A及び
図8Bはいずれも等角加速度で回転する回転体についての、サンプリング信号、回転速度、並びに、波形測定器9及び波形測定器1による角度推定値の時間変化を示している。
図8A及び
図8Bにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示している。
図8Bは、
図8Aのある期間を時間方向に拡大したグラフを示している。
【0120】
図8A及び
図8Bにおいて、グラフ101は、センサー信号を示している。例えば、グラフ101が0から1へ変化しているタイミングは、回転体が1回転してパルス信号を受信した場合に対応する。グラフ102は、回転体の角速度の変化を示している。
図8Aにおいて、グラフ102は、回転体の角速度が、ある初速度から時間経過とともに一定角加速度で減少し、一定時間経過後に初速度に戻るという変化を繰り返している様子を示している。
図8Bは、回転体の角速度が一定角加速度で減少している期間を時間方向に拡大して表示している。
【0121】
図8A及び
図8Bにおいて、グラフ103は、比較例に係る波形測定器9による回転体の角度推定値の変化を示している。グラフ104は、本実施形態に係る波形測定器1による回転体の角度推定値の変化を示している。
図8Bのグラフ103から明らかなように、比較例に係る波形測定器9は、角速度の変化に対応していないため、回転周期の後半において角度推定値が360degで一定となっており、角度誤差が生じている。ここで、
図8Bにおいて、比較例に係る波形測定器9は、積算部92の積算値が360degを超えた場合、角度推定値は360degとなるようなクリップ処理を行っている。これに対して、グラフ104から明らかなように、本実施形態に係る波形測定器1は、グラフ101の変化に同期して、回転体が1回転する場合の角度が正しく再現することができる。
【0122】
図4に例示した波形測定器1aは一例であり、他の構成要素を追加したり、変形したりするなどしてもよい。一例として、波形測定器1aに他の構成要素を追加した構成例を説明する。
図9は、一実施形態に係る波形測定器1bの構成例を示すブロック図である。波形測定器1bは、
図4に例示した波形測定器1aの構成に加えて、更にローパスフィルタ25を備える。
【0123】
ローパスフィルタ25は、演算部22が算出した角加速度aの値から高周波成分を除去する処理を行う。実際の計測においては、モータの回転ムラ、及び、センサー出力に混入するノイズ等により、センサー信号のエッジの検出のタイミングが揺らぐ可能性がある。センサー出力の揺らぎにより、回転体の角度推定値に誤差が生じ得る。このようなセンサー出力の揺らぎに対して、ローパスフィルタ25を追加することにより、回転体の角度推定値に関する演算結果を安定化させることが可能である。例えば、ローパスフィルタ25は、複数の時点において算出された角加速度の移動平均を算出してもよい。
【0124】
なお、本実施形態において、波形測定器1は、1周期前から現在までの回転周期だけでなく、2周期前から1周期前までの回転周期を用いて回転体の角加速度aを算出したが、更に3周期以前の回転周期を用いてもよい。例えば、波形測定器1は、3周期以前の回転周期を用いて角加速度の移動平均を算出することで、回転体の回転ムラ及びノイズ等に起因する雑音の影響を低減することが可能である。あるいは、波形測定器1は、3周期以前の回転周期を用いて角速度aの時間変化を求め、当該時間変化を反映することで、回転体の角度推定値をより高い精度で記録することが可能である。
【0125】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 波形測定器
11 入力アンプ
12 A/D変換部
13 インターフェース部
14 タイミング発生部
15 メモリコントローラ
16 メモリ
17 波形作成部
18 表示部
19 エッジ検出部
20 計数部
21 保存部
22 演算部
23、24 積算部
25 ローパスフィルタ
9 波形測定器(比較例)
81 入力アンプ
82 A/D変換部
83 インターフェース部
84 タイミング発生部
85 メモリコントローラ
86 メモリ
87 波形作成部
88 表示部
89 エッジ検出部
90 計数部
91 演算部
92 積算部
101~104 グラフ