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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005246
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】水変色体、水変色体セット
(51)【国際特許分類】
   B43L 1/00 20060101AFI20250108BHJP
   A63H 33/22 20060101ALN20250108BHJP
【FI】
B43L1/00 Z
A63H33/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105358
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 歩
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA30
2C150FB03
2C150FB43
(57)【要約】
【課題】 多孔質層に水を付着させて吸水状態にした水変色材をカバー材で覆うことにより、カバー材内で多孔質層の吸水状態と乾燥状態を部分的に制御し、水変色材に所望の像を形成することのできる水変色体、水変色体セットを提供する。
【解決手段】 低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層5を着色層4の上層に備えた水変色材と、前記水変色材の多孔質層が吸収した水の乾燥を遅延させるカバー材とからなり、前記カバー材は基材7内面の一部に吸水性繊維からなる布帛8を設けた水変色体1、前記水変色体と水付着具とからなる水変色体セット。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を着色層の上層に備えた水変色材と、前記水変色材の多孔質層が吸収した水の乾燥を遅延させるカバー材とからなり、前記カバー材は基材内面の一部に吸水性繊維からなる布帛を設けてなることを特徴とする水変色体。
【請求項2】
前記基材は不透明である請求項1記載の水変色体。
【請求項3】
前記カバー材は、基材下面の周縁部が水変色材表面と密接し、周縁部内方は水変色材表面と非接触状態に保持する空隙部を備えてなる請求項1又は2記載の水変色体。
【請求項4】
前記基材は一端又は両端が開口した筒状体である請求項1又は2記載の水変色体。
【請求項5】
前記カバー材の布帛と、水変色材の多孔質層が接触しない請求項4記載の水変色体。
【請求項6】
複数の前記水変色材と、複数の前記カバー材とからなる請求項1又は2記載の水変色体。
【請求項7】
請求項1又は2記載の水変色体と、水付着具とからなる水変色体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水変色体、水変色体セットに関する。更に詳細には水変色材と、前記水変色材に付着した水の乾燥を制御するカバー材とを備えた水変色体、水変色体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を着色層上に配した水変色シートが開示されており、筆記又はスタンプ具や手指等によって水を付着させて水変色像を形成した直後に、前記水変色像をカバー部材で覆うことにより、水変色像の維持時間を延長化させる水変色材セットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記水変色材セットは水変色像の維持時間を延長でき、玩具、教習具への実用性を満足させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-254547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種の多孔質層が吸水状態の水変色材をカバー材で覆うことによって、多孔質層の吸水状態と乾燥状態を制御し、所望の像を形成することのできる意外性に富む水変色体、水変色体セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を着色層の上層に備えた水変色材と、前記水変色材の多孔質層が吸収した水の乾燥を遅延させるカバー材とからなり、前記カバー材は基材内面の一部に吸水性繊維からなる布帛を設けてなることを特徴とする水変色体を要件とする。
更には、前記基材は不透明であること、前記カバー材は、基材下面の周縁部が水変色材表面と密接し、周縁部内方は水変色材表面と非接触状態に保持する空隙部を備えてなること、前記基材は一端又は両端が開口した筒状体であること、前記カバー材の布帛と、水変色材の多孔質層が接触しないこと、複数の前記水変色材と、複数の前記カバー材とからなること等を要件とする。
更には、前記水変色体と、水付着具とからなる水変色体セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、多孔質層に水を付着させて吸水状態にした水変色材をカバー材で覆うことにより、カバー材内で多孔質層の吸水状態と乾燥状態を部分的に制御し、水変色材に所望の像を形成することのできる玩具、教習具としての商品性と実用性を満足させる水変色体、水変色体セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例の水変色材の縦断面説明図である。
図2】本発明の一実施例のカバー材の縦断面説明図である。
図3】本発明の一実施例の水変色材とカバー材とからなる水変色体の縦断面説明図である。
図4】本発明の他の実施例の水変色材の縦断面説明図である。
図5】本発明の他の実施例のカバー材の縦断面説明図である。
図6】本発明の他の実施例の水変色材とカバー材とからなる水変色体の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記水変色材は、着色層の上層に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を設けてなる。
着色層は、支持体自体が着色層を兼ねてもよいが、支持体表面に着色層(任意形状の像を含む)を設けることが好ましい。
前記支持体は、紙、合成紙、織物、編物、組物、不織布等の布帛、天然又は合成皮革、プラスチック、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等が用いられる。また、形状としては平面状のものが好ましいが、凹凸状の形態であってもよい。
前記支持体表面に設けられる着色層は、着色剤を含むバインダー樹脂により形成されてなる。
前記着色剤としては、一般染料、一般顔料、蛍光染料、蛍光顔料、金属光沢顔料等が挙げられる。
前記着色剤はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に含有されたインキや塗料を支持体に塗布した後、揮発分を乾燥させて着色層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記着色層は、プロセス印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、インクジェット印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により支持体上に形成される。
また、予め別の基材上に着色剤とバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に含有されたインキや塗料を塗布して転写層を設け、前記転写層を支持体上に転写して着色層を設けることもできる。
更に、前記支持体が透明性を有する場合は、支持体の裏面(多孔質層を設けていない面)に着色層を設けることもできる。
【0009】
前記着色層上に低屈折率顔料をバインダー樹脂により分散状態に固着した多孔質層を積層して水変色材を得ることができる。
前記多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、乾燥状態と吸液状態で透明性が異なる層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4~1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
なお、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
また、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
前記低屈折率顔料の粒子径は特に限定されるものではないが、0.03~10.0μmのものが好適に用いられる。
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、この点を説明すると、珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別され、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
また、前記多孔質層は、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
なお、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0010】
前記多孔質層中の低屈折率顔料は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1~50g/mであることが好ましく、より好ましくは、5~50g/mである。1g/m未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、また、50g/mを越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、支持体上に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5~2質量部であり、より好ましくは、0.8~1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が損なわれ易くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、二種以上を併用することもできる。また、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
なお、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分質量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤や界面活性剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0011】
前記多孔質層は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により着色層上に形成できる。
【0012】
また、多孔質層中には、着色剤を添加して乾燥状態における多孔質層を着色することもできる。
前記着色剤としては、一般染料、一般顔料、蛍光染料、蛍光顔料、金属光沢顔料、可逆熱変色性組成物、可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、光変色性組成物、光変色性組成物を内包した光変色性マイクロカプセル顔料が挙げられ、蛍光染料、蛍光顔料等の蛍光性着色剤を用いると色変化の明瞭性に優れ、可逆熱変色性組成物、可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料等の熱変色性着色剤、光変色性着色剤、光変色性組成物、光変色性組成物を内包した光変色性マイクロカプセル顔料等の光変色性着色剤を用いると多彩な変化性を付与することができる。
前記可逆熱変色性組成物としては、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物が好適に用いられる。
前記光変色性組成物としては、スピロオキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、ジアリールエテン系化合物等のフォトクロミック化合物が好適に用いられる。
【0013】
前記多孔質層を吸水状態にした水変色材を覆うカバー材について説明する。
前記カバー材を形成する基材は、プラスチックシート材やプラスチック成形体、ガラス等により形成される。
前記カバー材の形状として、基材下面の周縁部が水変色材表面と密接し、周縁部内方は水変色材表面と非接触状態に保持する空隙部を備えたカバー材を挙げることができ、空隙部によって多孔質層の吸水された水の乾燥を抑制することができる。
また、一端又は両端が開口した筒状体であってもよく、開口部から水変色材を挿入し、その状態でカバー材の基材内面側と水変色材の多孔質層の間に空隙部を形成することによって多孔質層の吸水された水の乾燥を抑制することができる。
前記空隙部の高さは0.4mm~12.0mm、好ましくは0.5mm~10.0mmの高さを有することにより、多孔質層と基材の間の空間が水の乾燥を抑制する機能を良好なものとすることができる。
前記高さが0.4mm未満では多孔質層が基材と接触し易くなり、基材に水が付着して繰り返しの実用性を満足させ難くなる。一方、高さが12.0mmを超える場合は水の乾燥を抑制する効果を発現し難くなる。
なお、前記基材は、水変色材に像が形成される過程を視認させないようにして意外性を付与するため、不透明であることが好ましい。
更に、前記基材が可撓性を有することにより、カバー材の被覆と剥離を容易なものとすることができる。
【0014】
前記カバー材を形成する基材内面には吸水性繊維からなる布帛を部分的に設けてなる。
前記吸水性繊維としては、綿、麻、絹、毛等の天然繊維の他、合成繊維であっても吸水性を備えたものであれば用いることができ、天然繊維と合成繊維を組み合わせて用いてもよい。
前記布帛の形状は特に限定されるものではなく、各種文字、記号、図形、模様の他、人、動物、植物、果実、食料品、乗物、建物、天体等が挙げられる。
前記布帛は、水変色材の多孔質層に吸収された水を吸水し、多孔質層を部分的に乾燥(非吸水)させることができ、よって、布帛の形状の乾燥した像を多孔質層に形成することができる。
なお、前記布帛と多孔質層は接触状態であってもよいし、非接触状態であってもよいが、水変色材をカバー材に挿入する構造、例えば、一端又は両端が開口した筒状体からなるカバー材の場合は、布帛と多孔質層が非接触であることが好ましく、明瞭な像を形成することができる。
【0015】
更に、複数の水変色材と、複数のカバー材とからなる水変色体とすることにより、像が消える前に別の水変色材に像を形成することができるため、迅速に所望の像を形成することができる。
また、複数のカバー材の布帛が異なる形状であることにより、水変色材に異なる像を形成することができ、遊戯性を向上させることができる。
【0016】
前記水変色材に水を付着させる手段としては、手や指を水で濡らして接触させる他、水付着具を適用することもできる。
前記水付着具としては、水鉄砲、噴霧機、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記又は塗布具、スタンプ具等が挙げられる。
なお、前記水付着具と、水変色体とを組み合わせて水変色体セットを構成することもでき、利便性に富む教習具セット、描画玩具セットとして用いることができる。
【実施例0017】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
水変色体の作製(図1乃至3参照)
白色合成紙からなる支持体3上に、青色顔料5部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50重量%)50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤2部、レベリング剤1部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合、攪拌したスクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版によるスクリーン印刷を行って、着色層4を形成した。次いで、前記着色層上に、湿式法により製造される微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE-200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタン樹脂〔商品名:ハイドランAP-10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30重量%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、エポキシ系架橋剤2部を均一に混合、攪拌した白色スクリーン印刷用インキを用いて全面ベタ印刷を施して多孔質層5を形成し、150mm×200mmの大きさからなる水変色材2を得た。
次いで、基材7として厚さ1.0mm、140mm×190mmの大きさの下面の周縁部が水変色材表面と密接し、周縁部内方は水変色材表面と非接触状態に保持する高さ5mmの空隙部を有する黒色ABS樹脂成形体内面に、綿繊維からなる星型形状の布帛8を貼り合わせてカバー材6を得た。
前記水変色材2と前記カバー材6とを備えた水変色体1を得た。
【0018】
前記水変色材は常態では白色を呈しているが、水を収容した噴霧器で多孔質層上に水を付着させると青色に変色した。
前記青色に変色した水変色材は、25℃、65%RHの環境下では、5分間像を維持していたが、水分の蒸発にともない徐々に消失し、10分間経過した段階では全面が白色の水変色材に戻った。この様相変化は繰り返し何度も行うことができた。
次いで、前記水変色材の多孔質層に水を収容した噴霧器で水を付着させて青色に変色させた後、カバー材を載置した。
25℃、65%RHの環境下で5分間放置した後、カバー材を取り除くと、布帛を設けていない箇所の多孔質層は吸水状態を維持して青色を呈し、布帛を設けた箇所の多孔質層は、布帛と非接触であっても布帛の吸水性により多孔質層が乾燥して白色を呈するため、青地に白色の星型の像を視認することができた。
再び水変色材の多孔質層に水を付着させて全面を青色にした後、カバー材を載置すると白色の星型の像を形成することができ、繰り返し何度も行うことができた。
【0019】
実施例2
水変色体セットの作製
実施例1の水変色体と、水付着具として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて水変色体セットを得た。
前記水変色体セットは、携帯性に優れると共に、実施例1と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。
【0020】
実施例3
水変色体の作製(図4乃至6参照)
赤色合成紙からなる支持体3上に、湿式法により製造される微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE-200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタン樹脂〔商品名:ハイドランAP-10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30重量%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、エポキシ系架橋剤2部を均一に混合、攪拌した白色スクリーン印刷用インキを用いて全面ベタ印刷を施して多孔質層5を形成し、145mm×195mmの大きさからなる水変色材2を得た。
次いで、基材7として厚さ1.0mm、150mm×200mm×5mmの大きさの両側面と下部が開口した白色PP樹脂成形体内面に、羊毛繊維からなる円形のフェルト(布帛8)を貼り合わせてカバー材6を得た。
前記水変色材2と前記カバー材6とを備えた水変色体1を得た。
【0021】
前記水変色材は常態では白色を呈しているが、水を含浸させた刷毛で多孔質層上に水を付着させると赤色に変色した。
前記赤色の水変色材は、25℃、65%RHの環境下では、5分間像を維持していたが、水分の蒸発にともない徐々に消失し、10分間経過した段階では全面が白色の水変色材に戻った。この様相変化は繰り返し何度も行うことができた。
次いで、前記水変色材の多孔質層に水を含浸させた刷毛で水を付着させて赤色に変色させた後、カバー材にセットした。
25℃、65%RHの環境下で5分間放置した後、カバー材から取り出すと、布帛を設けていない箇所の多孔質層は吸水状態を維持して赤色を呈し、布帛を設けた箇所の多孔質層は、布帛と非接触であっても布帛の吸水性により多孔質層が乾燥して白色を呈するため、赤地に白色の円形の像を視認することができた。
再び水変色材の多孔質層に水を付着させて全面を赤色にした後、カバー材にセットすると白色の円形の像を形成することができ、繰り返し何度も行うことができた。
【0022】
実施例4
水変色体セットの作製
実施例3の水変色体と、水付着具として噴霧機とを組み合わせて水変色体セットを得た。
前記水変色体セットは、携帯性に優れると共に、実施例3と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。
【0023】
実施例5
水変色体の作製(図4乃至6参照)
紫色のプラスチック成形体からなるミニチュアカー(支持体3)表面に、湿式法により製造される微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE-200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタン樹脂〔商品名:ハイドランAP-10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30重量%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、エポキシ系架橋剤2部を均一に混合、攪拌した白色スクリーン印刷用インキを用いて全面ベタ印刷を施して多孔質層5を形成し、145mm×195mmの大きさからなる水変色材2を得た。
次いで、基材7として厚さ1.0mm、100mm×50mm×30mmの大きさの両側面が開口した白色PP樹脂成形体内面に、羊毛繊維からなるハート形のフェルト(布帛8)を貼り合わせてカバー材6を得た。
前記水変色材2と前記カバー材6とを備えた水変色体1を得た。
【0024】
前記水変色材は常態では白色を呈しているが、水を含浸させた刷毛で多孔質層上に水を付着させると紫色に変色した。
前記紫色の水変色材は、25℃、65%RHの環境下では、5分間像を維持していたが、水分の蒸発にともない徐々に消失し、10分間経過した段階では全面が白色の水変色材に戻った。この様相変化は繰り返し何度も行うことができた。
次いで、前記水変色材の多孔質層に水を含浸させた刷毛で水を付着させて紫色に変色させた後、カバー材にセットした。
25℃、65%RHの環境下で5分間放置した後、カバー材から取り出すと、布帛を設けていない箇所の多孔質層は吸水状態を維持して紫色を呈し、布帛を設けた箇所の多孔質層は、布帛と非接触であっても布帛の吸水性により多孔質層が乾燥して白色を呈するため、紫地に白色のハート形の像を視認することができた。
再び水変色材の多孔質層に水を付着させて全面を紫色にした後、カバー材にセットすると白色のハート形の像を形成することができ、繰り返し何度も行うことができた。
【0025】
実施例6
水変色体セットの作製
実施例5の水変色体と、水付着具として刷毛とを組み合わせて水変色体セットを得た。
前記水変色体セットは、携帯性に優れると共に、実施例5と同様に水の適用により何度も繰り返し遊ぶことができた。
【符号の説明】
【0026】
1 水変色体
2 水変色材
3 支持体
4 着色層
5 多孔質層
6 カバー材
7 基材
8 布帛
図1
図2
図3
図4
図5
図6