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特開2025-5263塩基性炭酸銅の製造方法および酸化銅の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005263
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】塩基性炭酸銅の製造方法および酸化銅の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 3/00 20060101AFI20250108BHJP
   C01G 3/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
C01G3/00
C01G3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105393
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】517095825
【氏名又は名称】古河ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】森 毅
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塩素などの銅塩由来の不純物量が低減された塩基性炭酸銅を製造可能である塩基性炭酸銅の製造方法を提供する。
【解決手段】銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、を含み、前記アルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい塩基性炭酸銅の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、
銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、
を含み、
前記アルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項2】
銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、
銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液b1と、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液b2と、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、
を含み、
以下の<手順>により得られるアルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい塩基性炭酸銅の製造方法。
<手順>
前記アルカリ水溶液b1の単位時間あたりの供給量をXb1mL/分、前記アルカリ水溶液b2の単位時間あたりの供給量をXb2mL/分としたとき、Xb1mLの前記アルカリ水溶液b1とXb2mLの前記アルカリ水溶液b2とを混合する。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aの後に前記工程Bをおこなう塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記銅塩が塩化銅を含む、塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムを含む、塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムを含む、塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液AのpHが7.0以上13.0以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液A中の前記アルカリ金属炭酸塩の含有量が0.1mol/L以上10mol/L以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液Aの供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aでの反応槽内の温度が25℃以上95℃以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液BのpHが9.0以上14.0以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液B中の前記アルカリ金属炭酸塩の含有量が0.1mol/L以上10mol/L以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液B中の前記アルカリ金属水酸化物の含有量が0.1mol/L以上10mol/L以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液B中の前記アルカリ金属炭酸塩のmol数に対する前記アルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.10以上である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Bにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液Bの供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項16】
請求項2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Bにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液b1の供給量および/または時間当たりの前記アルカリ水溶液b2の供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項17】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Bでの反応槽内の温度が25℃以上95℃以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項18】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aおよび前記工程Bで用いる前記アルカリ金属炭酸塩の合計mol数に対する、前記工程Aおよび前記工程Bで用いる前記アルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.10以上である塩基性炭酸銅の製造方法。
【請求項19】
請求項1または2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法により塩基性炭酸銅を得る工程と、
得られた塩基性炭酸銅を原料として酸化銅を得る工程Cと、を含む酸化銅の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の酸化銅の製造方法において、
前記工程Cにおける反応槽内のpHが9.0以上である酸化銅の製造方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載の酸化銅の製造方法において、
前記工程Cにおける反応槽内の温度が45℃以上95℃以下である酸化銅の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性炭酸銅の製造方法および酸化銅の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅メッキ技術は、プリント基盤配線をはじめとして印刷ロール、電解箔、線材等の多くのエレクトロニクス材料の製造に利用されている。それに伴い、銅メッキに用いられる酸化銅に関連する技術が求められている。例えば、酸化銅を製造する際に原料となる塩基性炭酸銅の製造技術もその一つである。
【0003】
特許文献1には、銅イオンを含む水溶液と炭酸イオンを含む水溶液を混合してそのpHを7~10の範囲に維持すると共に、前記水溶液を加熱しながら反応物質を反応させ、これにより析出した反応生成物を濾過分離しかつ洗浄することにより塩基性炭酸銅を得ることを特徴とする塩基性炭酸銅の製造方法が開示されている。また、特許文献1には、銅メッキ処理のメッキ材料として酸化銅の代わりに用いることが可能であると共に熱分解により酸化銅を生成する塩基性炭酸銅に着目し、これを製造するときの副生成物の濾過分離が容易で濾過速度が大きい銅メッキ材料の製造方法を提供することを目的とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02-289423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塩素などの銅塩由来の不純物量が低減された塩基性炭酸銅を製造可能である塩基性炭酸銅の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す塩基性炭酸銅の製造方法および酸化銅の製造方法が提供される。
【0007】
1. 銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、
銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、
を含み、
前記アルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい塩基性炭酸銅の製造方法。
2. 銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、
銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液b1と、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液b2と、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、
を含み、
以下の<手順>により得られるアルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい塩基性炭酸銅の製造方法。
<手順>
前記アルカリ水溶液b1の単位時間あたりの供給量をXb1mL/分、前記アルカリ水溶液b2の単位時間あたりの供給量をXb2mL/分としたとき、Xb1mLの前記アルカリ水溶液b1とXb2mLの前記アルカリ水溶液b2とを混合する。
3. 1.または2.に記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aの後に前記工程Bをおこなう塩基性炭酸銅の製造方法。
4. 1.~3.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記銅塩が塩化銅を含む、塩基性炭酸銅の製造方法。
5. 1.~4.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムを含む、塩基性炭酸銅の製造方法。
6. 1.~5.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムを含む、塩基性炭酸銅の製造方法。
7. 1.~6.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液AのpHが7.0以上13.0以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
8. 1.~7.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液A中の前記アルカリ金属炭酸塩の含有量が0.1mol/L以上10mol/L以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
9. 1.~8.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液Aの供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する塩基性炭酸銅の製造方法。
10. 1.~9.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aでの反応槽内の温度が25℃以上95℃以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
11. 1.~10.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液BのpHが9.0以上14.0以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
12. 1.~11.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液B中の前記アルカリ金属炭酸塩の含有量が0.1mol/L以上10mol/L以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
13. 1.~12.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液B中の前記アルカリ金属水酸化物の含有量が0.1mol/L以上10mol/L以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
14. 1.~13.のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記アルカリ水溶液B中の前記アルカリ金属炭酸塩のmol数に対する前記アルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.10以上である塩基性炭酸銅の製造方法。
15. 1.~14のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Bにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液Bの供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する塩基性炭酸銅の製造方法。
16. 2.~14のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Bにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液b1の供給量および/または時間当たりの前記アルカリ水溶液b2の供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する塩基性炭酸銅の製造方法。
17. 1.~16のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Bでの反応槽内の温度が25℃以上95℃以下である塩基性炭酸銅の製造方法。
18. 1.~17のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法において、
前記工程Aおよび前記工程Bで用いる前記アルカリ金属炭酸塩の合計mol数に対する、前記工程Aおよび前記工程Bで用いる前記アルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.10以上である塩基性炭酸銅の製造方法。
19. 1.~18のいずれかに記載の塩基性炭酸銅の製造方法により塩基性炭酸銅を得る工程と、
得られた塩基性炭酸銅を原料として酸化銅を得る工程Cと、を含む酸化銅の製造方法。
20. 19.に記載の酸化銅の製造方法において、
前記工程Cにおける反応槽内のpHが9.0以上である酸化銅の製造方法。
21. 19.または20.に記載の酸化銅の製造方法において、
前記工程Cにおける反応槽内の温度が45℃以上95℃以下である酸化銅の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塩素などの銅塩由来の不純物量が低減された塩基性炭酸銅を製造可能である塩基性炭酸銅の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示すフローチャートである
図2】第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示す概略図である
図3】第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示すフローチャートである
図4】第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示す概略図である
図5】本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示すフローチャートである
図6】本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示す概略図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.塩基性炭酸銅の製造方法
以下、本発明に係る塩基性炭酸銅の製造方法について説明する。
【0011】
第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法は、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、を含み、前記アルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい。
また、第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法は、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液b1と、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液b2と、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、を含み、以下の<手順>により得られるアルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい。
<手順>
前記アルカリ水溶液b1の単位時間あたりの供給量をXb1mL/分、前記アルカリ水溶液b2の単位時間あたりの供給量をXb2mL/分としたとき、Xb1mLの前記アルカリ水溶液b1とXb2mLの前記アルカリ水溶液b2とを混合する。
本明細書において、「第1実施形態」および「第2実施形態」を合わせて「本実施形態」と呼ぶ。
【0012】
塩基性炭酸銅とは、2価の銅イオンCu2+と炭酸イオンCO 2-と水酸化物イオンOHから成る銅塩である。本実施形態に係る塩基性炭酸銅の組成は特に限定されないが、例えば、炭酸二水酸化二銅(II)Cu(OH)(CO)およびビス(炭酸)二水酸化三銅(II)Cu(OH)(COからなる群から選択される一種または二種を含み、好ましくは炭酸二水酸化二銅(II)Cu(OH)COを含む。
【0013】
塩基性炭酸銅は、例えば、銅イオンCu2+を含む溶液に炭酸イオンCO 2-を含むアルカリ水溶液を添加することにより得られる。
【0014】
例えば、銅イオン源として塩化銅、アルカリとして炭酸ナトリウムを使用した場合、塩基性炭酸銅の生成反応は以下の反応式(1)のように進行する。
2NaCO+2CuCl+HO→CuCO・Cu(OH)+4NaCl+CO↑・・・(1)
【0015】
また、銅イオン源として塩化銅を使用し、アルカリとして炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを併用した場合、塩化銅と炭酸ナトリウムの反応により生じた二酸化炭素が水酸化ナトリウムと反応し、再び炭酸ナトリウムが生成する。そのため、炭酸ナトリウムの使用量を抑えることができ、さらに、反応系外への二酸化炭素の排出も抑えることができる。この場合、理論的には以下の反応式(2)のように反応が進行する。
NaCO+2NaOH+2CuCl→CuCO・Cu(OH)+4NaCl・・・(2)
【0016】
反応式(2)による反応には上記の利点があるが、塩素などの銅塩由来の不純物量が増大するという問題がある。
【0017】
そこで、本発明者らは鋭意検討をおこない、pHが相対的に低いアルカリ水溶液による処理工程と、pHが相対的に高いアルカリ水溶液による処理工程と、を組み合わせることにより、銅塩由来の不純物量を低減できることを見出した。
つまり、本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法によると、銅塩由来の不純物量が低減された塩基性炭酸銅を製造可能である。
不純物量が低減されると、塩基性炭酸銅から製造される酸化銅、さらには酸化銅から製造されるめっき液等の製品の品質を向上させることができ、好ましい。
【0018】
また、本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法によると、塩基性炭酸銅の粒径の微細化を抑制することができる。粒径が微細化され過ぎるとハンドリングが困難になってしまうため、粒径の微細化はある程度抑制されたほうが望ましい。
【0019】
本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法において、工程Aと工程Bの順序は特に限定されないが、銅塩由来の不純物量をより一層低減させる観点、粒径の微細化をより一層抑制する観点から、工程Aの後に工程Bをおこなうことが好ましい。
【0020】
(1)第1実施形態
第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法は、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、を含み、前記アルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい。
【0021】
図1は、第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下、図1のフローチャートを用いて第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法を説明する。
まず反応槽に希釈液となるイオン交換水を入れる。
次いで、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する(工程A)。
次いで、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽内に供給する(工程B)。
次いで、得られた塩基性炭酸銅スラリーを洗浄し、脱水し、乾燥し、塩基性炭酸銅粉末を得る。
【0022】
図2は、第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示す概略図である。
図2の概略図に示した製造方法によると、まず反応槽101に希釈液(図示せず)となるイオン交換水を入れる。
次いで、銅塩水溶液貯蔵槽102から銅塩水溶液と、アルカリ水溶液A貯蔵槽103からアルカリ水溶液Aとを、同時に反応槽101内に供給する(工程A)。銅塩水溶液の供給量は供給量制御装置112により制御することができる。アルカリ水溶液Aの供給量は供給量制御装置113により制御することができる。
次いで、銅塩水溶液貯蔵槽102から銅塩水溶液と、アルカリ水溶液B貯蔵槽104からアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽101内に供給する(工程B)。アルカリ水溶液Bの供給量は供給量制御装置114により制御することができる。
次いで、得られた塩基性炭酸銅スラリーを洗浄槽105に供給して洗浄し、遠心分離機106に供給して脱水し、乾燥機107に供給して乾燥し、塩基性炭酸銅粉末を得る。
【0023】
(2)第2実施形態
第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法は、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する工程Aと、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液b1と、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液b2と、を同時に反応槽内に供給する工程Bと、を含み、以下の<手順>により得られるアルカリ水溶液BのpHが前記アルカリ水溶液AのpHよりも大きい。
<手順>
前記アルカリ水溶液b1の単位時間あたりの供給量をXb1mL/分、前記アルカリ水溶液b2の単位時間あたりの供給量をXb2mL/分としたとき、Xb1mLの前記アルカリ水溶液b1とXb2mLの前記アルカリ水溶液b2とを混合する。
【0024】
図3は、第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下、図3のフローチャートを用いて第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法を説明する。
まず反応槽に希釈液となるイオン交換水を入れる。
次いで、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽内に供給する(工程A)。
次いで、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液b1と、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液b2と、を同時に反応槽内に供給する(工程B)。
次いで、得られた塩基性炭酸銅スラリーを洗浄し、脱水し、乾燥し、塩基性炭酸銅粉末を得る。
【0025】
図4は、第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の一例を示す概略図である。
図4の概略図に示した製造方法によると、まず反応槽101に希釈液(図示せず)となるイオン交換水を入れる。
次いで、銅塩水溶液貯蔵槽102から銅塩水溶液と、アルカリ水溶液A貯蔵槽103からアルカリ水溶液Aとを、同時に反応槽101内に供給する(工程A)。銅塩水溶液の供給量は供給量制御装置112により制御することができる。アルカリ水溶液Aの供給量は供給量制御装置113により制御することができる。
次いで、銅塩水溶液貯蔵槽102から銅塩水溶液と、アルカリ水溶液b1貯蔵槽141からアルカリ水溶液b1と、アルカリ水溶液b2貯蔵槽142からアルカリ水溶液b2と、を同時に反応槽101内に供給する(工程B)。アルカリ水溶液b1の供給量は供給量制御装置151により制御することができる。アルカリ水溶液b2の供給量は供給量制御装置152により制御することができる。
次いで、得られた塩基性炭酸銅スラリーを洗浄槽105に供給して洗浄し、遠心分離機106に供給して脱水し、乾燥機107に供給して乾燥し、塩基性炭酸銅粉末を得る。
【0026】
以下、本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法の各工程について説明する。
【0027】
<工程A>
本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法は、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液Aと、を同時に反応槽101内に供給する工程Aを含む。
【0028】
工程Aでは、希釈液(図示せず)が入っている反応槽101内に、銅塩水溶液とアルカリ水溶液Aを供給し、反応槽101内を攪拌羽根108で攪拌することが好ましい。
【0029】
希釈液は、反応槽101内の反応溶液を希釈することによって、反応によるpHや温度の急激な変化を抑えるための緩衝剤としての役目を果たす。希釈液としては、例えば、イオン交換水等の水を用いることができる。
【0030】
希釈液は水溶性溶媒を含んでもよい。水溶性溶媒は、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどアルコール、アセトン、エチルアミン、トリメチルアミン等のアルキルアミン、グリセリン並びにポリエチレングリコールからなる群から選択される一種または二種を含んでもよい。
【0031】
銅塩水溶液とアルカリ水溶液Aは、あらかじめ混合し、一つの供給経路から反応槽内に供給してもよいし、それぞれ別の供給経路から反応槽内に供給してもよい。図2および図4には、銅塩水溶液とアルカリ水溶液Aを別の供給経路から供給する例を示している。
銅塩水溶液とアルカリ水溶液Aの供給量をそれぞれ個別で制御しやすいという観点から、銅塩水溶液とアルカリ水溶液Aは別の供給経路から供給することが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る銅塩水溶液は、銅塩および水を含む。
【0033】
本実施形態に係る銅塩は特に限定されず、銅イオンを含む塩であればよい。本実施形態に係る銅塩は、例えば、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、シアン化銅および水酸化銅からなる群から選択される一種または二種以上を含み、好ましくは塩化銅および硫酸銅からなる群から選択される一種または二種を含み、より好ましくは塩化銅を含む。
【0034】
本実施形態に係る銅塩水溶液は、上記の銅塩を水に溶解して調製した水溶液を用いてもよいし、プリント基板等電子回路基板のエッチング廃液である塩化銅廃液や硫酸銅廃液、硝酸銅廃液などを使用してもよい。
【0035】
本実施形態に係る銅塩水溶液は水溶性溶媒を含んでもよく、例えば、希釈液が含んでもよい水溶性溶媒として列記したものを含む。
【0036】
本実施形態に係る銅塩水溶液は、銅塩の析出を抑制するため、酸を含んでもよく、例えば塩酸を含む。
【0037】
本実施形態に係る銅塩水溶液中の銅イオンの含有量は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは9質量%以上であり、そして、例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0038】
本実施形態に係るアルカリ水溶液Aは、アルカリ金属炭酸塩および水を含む。
【0039】
本実施形態に係るアルカリ金属炭酸塩は特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される一種または二種を含み、好ましくは炭酸ナトリウムを含む。
【0040】
本実施形態に係るアルカリ水溶液Aは水溶性溶媒を含んでもよく、水溶性溶媒としては、銅塩水溶液が含んでもよい水溶性溶媒として列記したものを用いることができる。
【0041】
本実施形態に係るアルカリ水溶液AのpHは、反応槽101内を所望のpHに調整する観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8.0以上、さらに好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.5以上、さらに好ましくは10.0以上、さらに好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11.0以上、さらに好ましくは11.5以上、さらに好ましくは12.0以上であり、そして、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.5以下である。
【0042】
本実施形態に係るアルカリ水溶液A中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、反応槽101内を所望のpHに調整する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは11質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。
【0043】
本実施形態に係るアルカリ水溶液A中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、反応槽101内を所望のpHに調整する観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上、さらに好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.6mol/L以上、さらに好ましくは0.8mol/L以上、さらに好ましくは1.0mol/L以上であり、そして、例えば10mol/L以下、好ましくは8mol/L以下、より好ましくは6mol/L以下、さらに好ましくは4mol/L以下、さらに好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1.5mol/L以下である。
【0044】
工程Aにおいては、時間当たりのアルカリ水溶液Aの供給量を調整することにより反応槽101内のpHを一定範囲に調整することが好ましい。具体的には、反応槽101内のpHが下記の範囲の上限に近づいた場合には、供給量制御装置113によりアルカリ水溶液A貯蔵槽103からの時間当たりのアルカリ水溶液Aの供給量を減らし、反応槽101内のpHが下記の範囲の下限に近づいた場合には、供給量制御装置113によりアルカリ水溶液A貯蔵槽103からの時間当たりのアルカリ水溶液Aの供給量を増やせばよい。
【0045】
工程Aにおける反応槽101内のpHは、反応効率を向上させる観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下である。
【0046】
工程Aにおいては、時間当たりのアルカリ水溶液Aの供給量を調整することにより反応槽101内のpHを、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下に調整する。
【0047】
工程Aにおける反応槽101内の温度は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは45℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして、副反応を抑制する観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは75℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0048】
<工程B>
第1実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法は、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Bと、を同時に反応槽101内に供給する工程Bを含む。
また、第2実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法は、銅塩水溶液と、アルカリ金属炭酸塩を含むアルカリ水溶液b1と、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液b2と、を同時に反応槽101内に供給する工程Bを含む。
【0049】
工程Aの後に工程Bをおこなう場合、工程A終了後の反応溶液が入っている反応槽101内に、銅塩水溶液とアルカリ水溶液Bを供給し、反応槽101内を攪拌羽根108で攪拌することが好ましい。
【0050】
銅塩水溶液とアルカリ水溶液Bは、あらかじめ混合し、一つの供給経路から反応槽内に供給してもよいし、それぞれ別の供給経路から反応槽内に供給してもよい。図2には、銅塩水溶液とアルカリ水溶液Bを別の供給経路から供給する例を示している。
銅塩水溶液とアルカリ水溶液Bの供給量をそれぞれ個別で制御しやすいという観点から、銅塩水溶液とアルカリ水溶液Bは別の供給経路から供給することが好ましい。
【0051】
工程Bで使用する銅塩およびアルカリ金属炭酸塩としては、工程Aで使用する銅塩およびアルカリ金属炭酸塩として列記したものを用いることができる。
【0052】
本実施形態に係るアルカリ水溶液Bは、アルカリ金属水酸化物および水を含む。
【0053】
本実施形態に係るアルカリ金属水酸化物は特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選択される一種または二種以上を含み、好ましくは水酸化ナトリウムを含む。
【0054】
本実施形態に係るアルカリ水溶液Bは水溶性溶媒を含んでもよく、水溶性溶媒としては、銅塩水溶液が含んでもよい水溶性溶媒として列記したものを用いることができる。
【0055】
本実施形態に係るアルカリ水溶液BのpHは、本実施形態に係るアルカリ水溶液AのpHよりも大きい。
【0056】
本実施形態に係るアルカリ水溶液BのpHは、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは9.0以上、より好ましくは9.5以上、さらに好ましくは10.0以上、さらに好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11.0以上、さらに好ましくは11.5以上、さらに好ましくは12.0以上、さらに好ましくは12.5以上、さらに好ましくは13.0以上、さらに好ましくは13.3以上であり、そして、例えば14.0以下、好ましくは13.8以下である。
【0057】
本実施形態に係るアルカリ水溶液B中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下である。
【0058】
本実施形態に係るアルカリ水溶液B中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上、さらに好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.6mol/L以上、さらに好ましくは0.8mol/L以上、さらに好ましくは0.9mol/L以上であり、そして、例えば10mol/L以下、好ましくは8mol/L以下、より好ましくは6mol/L以下、さらに好ましくは4mol/L以下、さらに好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1.5mol/L以下、さらに好ましくは1.2mol/L以下、さらに好ましくは1.0mol/L以下である。
【0059】
本実施形態に係るアルカリ水溶液B中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0060】
本実施形態に係るアルカリ水溶液B中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上、さらに好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.6mol/L以上、さらに好ましくは0.8mol/L以上、さらに好ましくは1.0mol/L以上、さらに好ましくは1.2mol/L以上、さらに好ましくは1.4mol/L以上、さらに好ましくは1.6mol/L以上、さらに好ましくは1.7mol/L以上であり、そして、例えば10mol/L以下、好ましくは8mol/L以下、より好ましくは6mol/L以下、さらに好ましくは4mol/L以下、さらに好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1.8mol/L以下である。
【0061】
本実施形態に係るアルカリ水溶液B中のアルカリ金属炭酸塩のmol数に対するアルカリ金属水酸化物のmol数の比は、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.20以上、さらに好ましくは1.20超過、さらに好ましくは1.30超過、さらに好ましくは1.40超過、さらに好ましくは1.50超過、さらに好ましくは1.60超過、さらに好ましくは1,70超過、さらに好ましくは1.80超過、さらに好ましくは1.90超過である。
これにより、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減できる。
アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減できると、アルカリ金属炭酸塩の反応により発生する二酸化炭素ガスおよび/または炭酸イオンの量を低減させることができ、地球環境保護の観点から好ましい。
また、アルカリ金属炭酸塩は水などに溶解してから反応に用いることが一般的であるため、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減させることができると、溶解作業の頻度を下げることができ、製造効率向上の観点から好ましい。
また、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減させることができると、総アルカリ使用量を低減させながらも、塩基性炭酸銅を得るための反応を適切に進行させることができる。
なお、本明細書において、総アルカリ使用量とは、本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法で使用されるアルカリ金属炭酸塩のアルカリ金属イオンのmol数とアルカリ金属水酸化物のアルカリ金属イオンのmol数の合計量である。つまり、本発明における総アルカリ使用量とは、アルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量のことである。
そして、本実施形態に係るアルカリ水溶液B中のアルカリ金属炭酸塩のmol数に対するアルカリ金属水酸化物のmol数の比は、好ましくは3.00以下、より好ましくは2.50以下、さらに好ましくは2.30以下、さらに好ましくは2.10以下、さらに好ましくは2.00以下、さらに好ましくは1.95以下、さらに好ましくは1.70以下、さらに好ましくは1.60以下、さらに好ましくは1.50以下、さらに好ましくは1.40以下、さらに好ましくは1.35以下である。
これにより、銅塩由来の不純物量をより一層低減させることができる。
【0062】
第1実施形態の工程Bにおいては、時間当たりの前記アルカリ水溶液Bの供給量を調整することにより反応槽101内のpHを一定範囲に調整することが好ましい。具体的には、反応槽101内のpHが下記の範囲の上限に近づいた場合には、供給量制御装置114によりアルカリ水溶液B貯蔵槽104からの時間当たりのアルカリ水溶液Bの供給量を減らし、反応槽101内のpHが下記の範囲の下限に近づいた場合には、供給量制御装置114によりアルカリ水溶液B貯蔵槽104からの時間当たりのアルカリ水溶液Bの供給量を増やせばよい。
【0063】
第1実施形態の工程Bにおける反応槽101内のpHは、反応効率を向上させる観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下である。
【0064】
第1実施形態の工程Bにおいては、時間当たりの前記アルカリ水溶液Bの供給量を調整することにより、反応槽内のpHを、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下に調整する。
【0065】
第2実施形態の工程Bにおいては、時間当たりの前記アルカリ水溶液b1の供給量および/または時間当たりの前記アルカリ水溶液b2の供給量を調整することにより反応槽101内のpHを一定範囲に調整することが好ましい。具体的には、反応槽101内のpHが下記の範囲の上限に近づいた場合には、供給量制御装置151および/または152によりアルカリ水溶液b1貯蔵槽141および/またはアルカリ水溶液b2貯蔵槽142からの時間当たりのアルカリ水溶液b1および/またはb2の供給量を減らし、反応槽101内のpHが下記の範囲の下限に近づいた場合には、供給量制御装置151および/または152によりアルカリ水溶液b1貯蔵槽141および/またはアルカリ水溶液b2貯蔵槽142からの時間当たりのアルカリ水溶液b1および/またはb2の供給量を増やせばよい。
【0066】
第2実施形態の工程Bにおける反応槽101内のpHは、反応効率を向上させる観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下である。
【0067】
第2実施形態の工程Bにおいては、時間当たりの前記アルカリ水溶液b1の供給量および/または時間当たりの前記アルカリ水溶液b2の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下に調整する。
【0068】
工程Bにおける反応槽101内の温度は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは45℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして、副反応を抑制する観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは75℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0069】
工程Aおよび工程Bで用いるアルカリ金属炭酸塩の合計mol数に対する、工程Aおよび工程Bで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比は、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.20以上、さらに好ましくは1.20超過、さらに好ましくは1.3超過、さらに好ましくは1.35超過である。
これにより、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減できる。
アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減できると、アルカリ金属炭酸塩の反応により発生する二酸化炭素ガスおよび/または炭酸イオンの量を低減させることができ、地球環境保護の観点から好ましい。
また、アルカリ金属炭酸塩は水などに溶解してから反応に用いることが一般的であるため、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減させることができると、溶解作業の頻度を下げることができ、製造効率向上の観点から好ましい。
また、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減できると、総アルカリ使用量を低減させながらも、塩基性炭酸銅を得るための反応を適切に進行させることができる。
そして、本実施形態に係るアルカリ水溶液B中のアルカリ金属炭酸塩のmol数に対するアルカリ金属水酸化物のmol数の比は、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.60以下、さらに好ましくは1.50以下、さらに好ましくは1.45以下、さらに好ましくは1.40以下である。
これにより、銅塩由来の不純物量をより一層低減させることができる。
【0070】
工程Aおよび工程Bを経て得られた塩基性炭酸銅スラリーは、スラリーの状態のまま酸化銅等の合成の原料として用いてもよいし、洗浄し、脱水し、さらに乾燥し、粉末の状態としてもよい。これら単位操作は、一般的に使用される方法、設備を使用し行うことができる。
【0071】
洗浄工程においては、例えば、塩基性炭酸銅スラリーを洗浄槽105に供給し、塩基性炭酸銅を沈殿させた後、上澄み液を除去し、イオン交換水を供給し、攪拌羽根108で攪拌することにより洗浄をおこなうことができる。
【0072】
また、塩基性炭酸銅スラリーを遠心分離した後、固形分を洗浄槽105に供給し、イオン交換水を供給し、攪拌羽根108で攪拌することにより洗浄をおこなってもよい。
【0073】
洗浄槽内の温度は好ましくは20℃以上90℃以下、より好ましくは40℃以上70℃以下である。これにより不純物がより容易に除去できる。
【0074】
洗浄工程の回数は特に限定されず、塩基性炭酸銅が所望の純度になるまでおこなえばよい。
【0075】
脱水工程における脱水手段は特に限定されず、例えば、洗浄後の塩基性炭酸銅スラリーを遠心分離機106で脱水してもよいし、吸引濾過により脱水してもよい。
【0076】
乾燥工程においては、例えば、脱水工程で得られた塩基性炭酸銅ケークを、箱型乾燥機、連続式乾燥機等の乾燥機107により乾燥させる。乾燥温度は特に限定されないが、塩基性炭酸銅の変質を抑制しつつ水分を除去するという観点から60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく80℃以上がさらに好ましく、そして、塩基性炭酸銅の変性を防ぐという観点から150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0077】
本実施形態に係る塩基性炭酸銅の用途は特に限定されないが、例えば、酸化銅の原料として用いることができる。また、本実施形態に係る塩基性炭酸銅は、塗料、セラミック材料、農薬およびめっき液等の原料として用いてもよい。
【0078】
2.酸化銅の製造方法
以下、本実施形態に係る酸化銅の製造方法について説明する。
【0079】
本実施形態に係る酸化銅の製造方法は、上記の塩基性炭酸銅の製造方法により塩基性炭酸銅を得る工程と、得られた塩基性炭酸銅を原料として酸化銅を得る工程Cと、を含む。
【0080】
図5は、本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下、図5のフローチャートを用いて本実施形態に係る酸化銅の製造方法を説明する。
【0081】
まず、上記の塩基性炭酸銅の製造方法により得られた塩基性炭酸銅スラリーを洗浄する。
次いで、洗浄した塩基性炭酸銅スラリーと、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Cと、を反応槽内に供給し、その後一定時間熟成し、酸化銅スラリーを得る(工程C)。
次いで、得られた酸化銅スラリーを洗浄し、脱水し、乾燥し、酸化銅粉末を得る。
なお、上記では塩基性炭酸銅スラリーを原料とした酸化銅の製造方法を説明したが、本実施形態に係る酸化銅の製造方法の原料として用いる塩基性炭酸銅の性状は特に限定されず、塩基性炭酸銅スラリーを用いてもよいし、塩基性炭酸銅粉末を用いてもよい。
【0082】
図6は、本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示す概略図である。
【0083】
まず、反応槽101から塩基性炭酸銅スラリーを洗浄槽105に供給し、洗浄槽105内で塩基性炭酸銅スラリーを洗浄する。
次いで、洗浄槽105から塩基性炭酸銅スラリーと、アルカリ水溶液C貯蔵槽122からアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液Cと、を反応槽121内に供給し、その後一定時間熟成し、酸化銅スラリーを得る(工程C)。アルカリ水溶液Cの供給量は供給量制御装置132により制御することができる。
次いで、得られた酸化銅スラリーを洗浄槽105に供給して洗浄し、遠心分離機106に供給して脱水し、乾燥機107に供給して乾燥し、酸化銅粉末を得る。
【0084】
<工程C>
工程Cにおける反応槽121内のpHは、反応効率を向上させる観点から、好ましくは9.0以上、より好ましくは9.5以上、さらに好ましくは10.0以上、さらに好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11.0以上であり、そして、例えば14.0以下、好ましくは13.5以下である。
【0085】
工程Cでの反応槽121内の温度は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上であり、そして、例えば95℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
【0086】
工程Cにおける反応槽121での熟成時間は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、さらに好ましくは90分以上である。
【0087】
工程Cを経て得られた酸化銅スラリーは、洗浄し、脱水し、さらに乾燥し、粉末の状態としてもよい。これら単位操作は、一般的に使用される方法、設備を使用し行うことができる。具体的には、塩基性炭酸銅の洗浄工程、脱水工程および乾燥工程として記載した内容を採用することができる。
【0088】
本実施形態に係る酸化銅の用途は特に限定されないが、例えば、農薬およびめっき液等の原料として用いることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用できる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0090】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例は、特記しない限り、23℃、相対湿度50%で試験した。
【0091】
[実施例1]
(1)塩基性炭酸銅の合成
<工程A>
まず、反応槽内にイオン交換水2.1Lを入れて攪拌し、65℃まで加温した。
【0092】
次いで、反応槽内を攪拌しながら、表1に記載された条件で銅塩水溶液1とアルカリ水溶液Aとを同時に供給し、工程Aを開始させた。
【0093】
工程Aでは、アルカリ水溶液Aの供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0094】
銅塩水溶液1は、イオン交換水に塩化銅(II)二水和物(生駒薬化学工業株式会社製)を溶解し、さらに、塩酸由来の塩素イオンの含有量が1.0質量%になるように塩酸を加えることにより調製した。
また、アルカリ水溶液Aは、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))を溶解することにより調製した。
【0095】
【表1】
【0096】
<工程B>
工程Aの供給開始から135分経過後、アルカリ水溶液Aの供給を停止し、銅塩水溶液1の単位時間あたりの供給量を表2に記載された条件の通りに変更し、さらに表2に記載された条件の通りにアルカリ水溶液Bの供給を開始することにより、工程Aを終了し、工程Bを開始した。
【0097】
工程Bでは、アルカリ水溶液Bの供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0098】
アルカリ水溶液Bは、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))および液体苛性ソーダ(株式会社カネカ製)を溶解することにより調製した。
【0099】
工程Bの開始から345分経過後、銅塩水溶液1とアルカリ水溶液Bの供給を停止し、工程Bを終了させた。
【0100】
【表2】
【0101】
実施例1において塩基性炭酸銅の合成に用いたアルカリ成分の量については表3に記載の通りである。
【0102】
【表3】
【0103】
工程B終了後、反応槽内に生成した塩基性炭酸銅スラリーをイオン交換水で洗浄し、吸引濾過により脱水し、さらに80℃の乾燥機で乾燥し、粉末状の塩基性炭酸銅を得た。
【0104】
(2)酸化銅の合成
上記の方法により得られた塩基性炭酸銅スラリーを反応槽に供給し、反応槽内を80℃とし、反応槽内にさらに水酸化ナトリウム水溶液を供給して反応槽内のpHを11.0とし、2時間熟成させ、酸化銅スラリーを得た。
次いで、反応槽内に生成した酸化銅スラリーをイオン交換水で洗浄し、吸引濾過により脱水し、さらに乾燥機で乾燥し、粉末状の酸化銅を得た。
【0105】
[比較例1]
(1)塩基性炭酸銅の合成
アルカリ水溶液Aとアルカリ水溶液Bという2種類のアルカリ水溶液を用いた実施例1とは異なり、比較例1では、アルカリ水溶液xという1種類のアルカリ水溶液により塩基性炭酸銅を合成した。
なお、比較例1では、アルカリ水溶液xの供給量を途中で変化させた。変化前の工程を工程x、変化後の工程を工程yと呼ぶ。
【0106】
<工程x>
まず、反応槽内にイオン交換水2.1Lを入れて攪拌し、65℃まで加温した。
【0107】
次いで、反応槽内を攪拌しながら、表4に記載された条件で銅塩水溶液1とアルカリ水溶液xとを同時に供給し、工程xを開始させた。
【0108】
工程xでは、アルカリ水溶液xの供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0109】
アルカリ水溶液xは、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))および液体苛性ソーダ(株式会社カネカ製)を溶解することにより調製した。
【0110】
【表4】
【0111】
<工程y>
工程xの開始から135分経過後、銅塩水溶液1およびアルカリ水溶液xの単位時間あたりの供給量を表5に記載された条件の通りに変更し、工程yを開始した。
【0112】
工程yでは、アルカリ水溶液xの供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0113】
工程yの開始から345分経過後、銅塩水溶液1とアルカリ水溶液xの供給を停止し、工程yを終了させた。
【0114】
【表5】
【0115】
比較例1において塩基性炭酸銅の合成に用いたアルカリ成分の量については表6に記載の通りである。
【0116】
【表6】
【0117】
工程y終了後、反応槽内に生成した塩基性炭酸銅スラリーをイオン交換水で洗浄し、吸引濾過により脱水し、さらに80℃の乾燥機で乾燥し、粉末状の塩基性炭酸銅を得た。
【0118】
(2)酸化銅の合成
上記の方法により得られた塩基性炭酸銅スラリーを原料として、実施例1と同じ製造方法により粉末状の酸化銅を得た。
【0119】
実施例1および比較例1において塩基性炭酸銅の合成に用いたアルカリ成分の量について表7にまとめた。
【0120】
また、上記の方法により得られた塩基性炭酸銅および酸化銅を吸光光度法により分析した。分析により得られた塩基性炭酸銅中の塩素含有量および酸化銅中の塩素含有量の値を表7に示す。
【0121】
また、上記の方法により得られた塩基性炭酸銅および酸化銅の体積平均のメジアン径D50を粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製MT3300EXII)により測定した。結果を表7に示す。
【0122】
【表7】
【0123】
実施例1により得られた塩基性炭酸銅は、比較例1により得られた塩基性炭酸銅と比べ、塩素含有量が低減されていた。このことから、本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法によると、塩素などの銅塩由来の不純物量を低減できることがわかる。
【0124】
また、実施例1により得られた塩基性炭酸銅は、比較例1により得られた塩基性炭酸銅と比べ、粒径の微細化が抑制されていた。このことから、本実施形態に係る塩基性炭酸銅の製造方法によると、塩基性炭酸銅の粒径の微細化を抑制できることがわかる。
【0125】
実施例1により得られた酸化銅は、比較例1により得られた酸化銅と比べ、塩素含有量が低減されていた。このことから、本実施形態に係る酸化銅の製造方法によると、塩素などの銅塩由来の不純物量を低減できることがわかる。
【0126】
また、実施例1の製造方法により得られた酸化銅は、比較例1により得られた酸化銅と比べ、粒径の微細化が抑制されていた。このことから、本実施形態に係る酸化銅の製造方法によると、酸化銅の粒径の微細化を抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0127】
101 反応槽
102 銅塩水溶液貯蔵槽
103 アルカリ水溶液A貯蔵槽
104 アルカリ水溶液B貯蔵槽
105 洗浄槽
106 遠心分離機
107 乾燥機
108 攪拌羽根
112 供給量制御装置
113 供給量制御装置
114 供給量制御装置
141 アルカリ水溶液b1貯蔵槽
142 アルカリ水溶液b2貯蔵槽
151 供給量制御装置
152 供給量制御装置
121 反応槽
122 アルカリ水溶液C貯蔵槽
132 供給量制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6