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  • 特開-酸化銅の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005264
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】酸化銅の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 3/02 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
C01G3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105394
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】517095825
【氏名又は名称】古河ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】森 毅
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減でき、さらにアルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量を低減できる酸化銅の製造方法を提供する。
【解決手段】銅塩水溶液をアルカリ処理して塩基性炭酸銅スラリーを得る工程Aと、得られた塩基性炭酸銅スラリーから酸化銅スラリーを得る工程Bと、を含む酸化銅の製造方法であって、前記工程Aで用いるアルカリ金属炭酸塩のmol数に対する前記工程Aで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.20超過である酸化銅の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅塩水溶液をアルカリ処理して塩基性炭酸銅スラリーを得る工程Aと、
得られた塩基性炭酸銅スラリーから酸化銅スラリーを得る工程Bと、
を含む酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aで用いるアルカリ金属炭酸塩のmol数に対する前記工程Aで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.20超過である酸化銅の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の酸化銅の製造方法において、
前記銅塩水溶液が塩化銅を含む、酸化銅の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸化銅の製造方法において、
前記アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムを含む、酸化銅の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の酸化銅の製造方法において、
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムを含む、酸化銅の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aでの反応槽内のpHが6.0以上10.0以下である酸化銅の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aでの反応槽内の温度が25℃以上95℃以下である酸化銅の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aにおいて、前記銅塩水溶液と、アルカリ水溶液と、を同時に反応槽内に供給する酸化銅の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液の供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する酸化銅の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Bにおける反応槽内のpHが9.0以上である酸化銅の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Bにおける反応槽内の温度が45℃以上95℃以下である酸化銅の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化銅の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅メッキ技術は、プリント基盤配線をはじめとして印刷ロール、電解箔、線材等多くのエレクトロニクス関連に利用されている。それに伴い、銅メッキ液に用いられる酸化銅の製造に関する技術が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、平均粒子径が15μm以上45μm以下、安息角が50°以下であって、CuO含有量が97.0重量%以上である、易溶解性の酸化第二銅粉末が開示されている。また、特許文献1には、上記の酸化第二銅粉末の製造方法であって、原料として塩基性炭酸銅を用い、該塩基性炭酸銅をアルカリ処理して前記酸化第二銅を得る、酸化第二銅粉末の製造方法が開示されている。また、特許文献1は、銅メッキに好適に用いられる酸化第二銅を提供することを目的とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-143737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原料として塩化銅を用いて酸化銅を製造する場合、例えば、まず塩化銅をアルカリ処理することにより塩基性炭酸銅スラリーを得て、得られた塩基性炭酸銅スラリーをスラリーの状態のまま更に処理することにより、酸化銅を得ることができる。
このようにして塩化銅を原料として酸化銅を製造する場合、塩化銅から塩基性炭酸銅を得る反応を適切に進行させながらも、アルカリ成分の使用量を低減することが望まれる。
【0006】
本発明は、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減でき、さらにアルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量を低減できる酸化銅の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す酸化銅の製造方法が提供される。
【0008】
1. 銅塩水溶液をアルカリ処理して塩基性炭酸銅スラリーを得る工程Aと、
得られた塩基性炭酸銅スラリーから酸化銅スラリーを得る工程Bと、
を含む酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aで用いるアルカリ金属炭酸塩のmol数に対する前記工程Aで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.20超過である酸化銅の製造方法。
2. 1.に記載の酸化銅の製造方法において、
前記銅塩水溶液が塩化銅を含む、酸化銅の製造方法。
3. 1.または2.に記載の酸化銅の製造方法において、
前記アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムを含む、酸化銅の製造方法。
4. 1.~3.のいずれかに記載の酸化銅の製造方法において、
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムを含む、酸化銅の製造方法。
5. 1.~4.のいずれかに記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aでの反応槽内のpHが6.0以上10.0以下である酸化銅の製造方法。
6. 1.~5.のいずれかに記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aでの反応槽内の温度が25℃以上95℃以下である酸化銅の製造方法。
7. 1.~6.のいずれかに記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aにおいて、前記銅塩水溶液と、アルカリ水溶液と、を同時に反応槽内に供給する酸化銅の製造方法。
8. 7.に記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Aにおいて、時間当たりの前記アルカリ水溶液の供給量を調整することにより反応槽内のpHを6.0以上10.0以下に調整する酸化銅の製造方法。
9. 1.~8.のいずれかに記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Bにおける反応槽内のpHが9.0以上である酸化銅の製造方法。
10. 1.~9.のいずれかに記載の酸化銅の製造方法であって、
前記工程Bにおける反応槽内の温度が45℃以上95℃以下である酸化銅の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減でき、さらにアルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量を低減できる酸化銅の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示すフローチャートである
図2】本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示す概略図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る酸化銅の製造方法の実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態に係る酸化銅の製造方法は、銅塩水溶液をアルカリ処理して塩基性炭酸銅スラリーを得る工程Aと、得られた塩基性炭酸銅スラリーから酸化銅スラリーを得る工程Bと、を含む酸化銅の製造方法であって、前記工程Aで用いるアルカリ金属炭酸塩のmol数に対する前記工程Aで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比が1.20超過である。
【0013】
塩基性炭酸銅とは、2価の銅イオンCu2+と炭酸イオンCO 2-と水酸化物イオンOHから成る銅塩である。本実施形態に係る塩基性炭酸銅の組成は特に限定されないが、例えば、炭酸二水酸化二銅(II)Cu(OH)(CO)およびビス(炭酸)二水酸化三銅(II)Cu(OH)(COからなる群から選択される一種または二種を含み、好ましくは炭酸二水酸化二銅(II)Cu(OH)COを含む。
【0014】
塩基性炭酸銅は、例えば、銅イオンCu2+を含む溶液に炭酸イオンCO 2-を含むアルカリ水溶液を添加することにより得られる。
【0015】
例えば、銅イオン源として塩化銅、アルカリとして炭酸ナトリウムを使用した場合、塩基性炭酸銅の生成反応は以下の反応式(1)のように進行する。
2NaCO+2CuCl+HO→CuCO・Cu(OH)+4NaCl+CO↑・・・(1)
【0016】
また、銅イオン源として塩化銅を使用し、アルカリとして炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを併用した場合、塩基性炭酸銅の生成反応は以下の反応式(2)のように進行する。塩基性炭酸銅の生成反応が反応式(2)のように進行する場合、塩化銅と炭酸ナトリウムの反応により生じた二酸化炭素が水酸化ナトリウムと反応し、再び炭酸ナトリウムが生成する。そのため、炭酸ナトリウムの使用量を抑えることができる。
NaCO+2NaOH+2CuCl→CuCO・Cu(OH)+4NaCl・・・(2)
【0017】
本発明者らは、アルカリ金属炭酸塩のmol数に対するアルカリ金属水酸化物のmol数の比を一定以上とすることにより、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減させ、さらに総アルカリ使用量を低減させながらも、塩基性炭酸銅を得るための反応を適切に進行させられることを見出した。
ここで、本発明における総アルカリ使用量とは、本実施形態に係る酸化銅の製造方法で使用されるアルカリ金属炭酸塩のアルカリ金属イオンのmol数とアルカリ金属水酸化物のアルカリ金属イオンのmol数の合計量のことである。つまり、本発明における総アルカリ使用量とは、アルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量のことである。
アルカリ金属炭酸塩のmol数に対するアルカリ金属水酸化物のmol数の比を一定以上とすると、反応式(2)のように反応が進行し、アルカリ金属炭酸塩の使用量、ひいてはアルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量を低減させながら、塩基性炭酸銅を得るための反応を適切に進行させられるようになると考えられる。
【0018】
工程Aで用いるアルカリ金属炭酸塩のmol数に対する工程Aで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比は、好ましくは1.25超過、より好ましくは1.30超過、さらに好ましくは1.35超過、さらに好ましくは1.40超過、さらに好ましくは1.45超過、さらに好ましくは1.50超過、さらに好ましくは1.55超過、さらに好ましくは1.60超過、さらに好ましくは1.70超過、さらに好ましくは1.80超過、さらに好ましくは1.90超過である。
これにより、アルカリ金属炭酸塩の使用量をより一層低減できる。
アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減できると、アルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量をより一層低減させることができる。
また、アルカリ金属炭酸塩の使用量をより一層低減させることができると、アルカリ金属炭酸塩の反応により発生する二酸化炭素ガスおよび/または炭酸イオンの量を低減させることができ、地球環境保護の観点から好ましい。
また、アルカリ金属炭酸塩は水などに溶解してから反応に用いることが一般的であるため、アルカリ金属炭酸塩の使用量をより一層低減させることができると、溶解作業の頻度を下げることができ、製造効率向上の観点から好ましい。
【0019】
工程Aで用いるアルカリ金属炭酸塩のmol数に対する工程Aで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比は、好ましくは3.00未満、より好ましくは2.50未満、さらに好ましくは2.20未満、さらに好ましくは2.00未満、さらに好ましくは1.90未満、さらに好ましくは1.80未満、さらに好ましくは1.70未満、さらに好ましくは1.60未満、さらに好ましくは1.55未満、さらに好ましくは1.50未満、さらに好ましくは1.45未満、さらに好ましくは1.40未満である。
これにより酸化銅に含まれる塩素などの不純物の量を低減できる。
また、これにより酸化銅の粒径の微細化を抑制できる。ハンドリング性向上の観点から、酸化銅の粒径は必要以上に微細化しないほうが好ましい。
【0020】
工程Aで用いるアルカリ金属炭酸塩のmol数に対する工程Aで用いるアルカリ金属水酸化物のmol数の比は、好ましくは1.20超過1.45未満または1.50超過3.00未満であり、より好ましくは1.25超過1.45未満または1.60超過2.50未満であり、さらに好ましくは1.30超過1.45未満または1.70超過2.20未満であり、さらに好ましくは1.30超過1.40未満または1.80超過2.00未満である。これによりアルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量をより一層低減させることができ、酸化銅に含まれる塩素などの不純物の量を低減でき、さらに酸化銅の粒径の微細化を抑制できる。
【0021】
図1は、本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下、図1のフローチャートを用いて本実施形態に係る酸化銅の製造方法を説明する。
まず、銅塩水溶液と、アルカリ水溶液と、を反応槽内に供給し、反応槽内で銅塩水溶液をアルカリ処理して塩基性炭酸銅スラリーを得る。
次いで、得られた塩基性炭酸銅スラリーを洗浄する。
次いで、洗浄した塩基性炭酸銅スラリーと、アルカリ水溶液と、を反応槽内に供給し、その後一定時間熟成し、酸化銅スラリーを得る。
次いで、得られた酸化銅スラリーを洗浄し、脱水し、乾燥し、酸化銅粉末を得る。
【0022】
図2は、本実施形態に係る酸化銅の製造方法の一例を示す概略図である。
【0023】
図2の概略図に示した製造方法によると、まず反応槽101に希釈液(図示せず)となるイオン交換水を入れる。
次いで、銅塩水溶液貯蔵槽102から銅塩水溶液と、アルカリ水溶液貯蔵槽103からアルカリ水溶液と、を反応槽101内に供給し、反応槽101内で銅塩水溶液をアルカリ処理して塩基性炭酸銅スラリーを得る。銅塩水溶液の供給量は供給量制御装置112により制御することができる。アルカリ水溶液の供給量は供給量制御装置113により制御することができる。
次いで、得られた塩基性炭酸銅スラリーを洗浄槽104に供給して洗浄する。
次いで、洗浄槽104から洗浄した塩基性炭酸銅スラリーと、アルカリ水溶液貯蔵槽105からアルカリ水溶液と、を反応槽106内に供給し、その後一定時間熟成し、酸化銅スラリーを得る。アルカリ水溶液の供給量は供給量制御装置115により制御することができる。
次いで、得られた酸化銅スラリーを洗浄槽107に供給して洗浄し、遠心分離機108に供給して脱水し、乾燥機109に供給して乾燥し、酸化銅粉末を得る。
【0024】
以下、本実施形態に係る酸化銅の製造方法の各工程について説明する。
【0025】
<工程A>
本実施形態に係る酸化銅の製造方法は、銅塩水溶液をアルカリ処理して塩基性炭酸銅スラリーを得る工程Aを含む。
【0026】
工程Aでのアルカリ処理の方法は特に限定されず、固体状のアルカリ成分を用いて処理してもよいし、アルカリ成分を含有する水溶液(アルカリ水溶液)を用いて処理してもよいが、アルカリ処理のハンドリング性向上の観点から、アルカリ水溶液により処理することが好ましい。
【0027】
工程Aでは、希釈液(図示せず)が入っている反応槽101内に、銅塩水溶液とアルカリ水溶液を供給し、反応槽101内を攪拌羽根111で攪拌することが好ましい。
【0028】
希釈液は、反応槽101内の反応溶液を希釈することによって、反応によるpHや温度の急激な変化を抑えるための緩衝剤としての役目を果たす。希釈液としては、例えば、イオン交換水等の水を用いることができる。
【0029】
希釈液は水溶性溶媒を含んでもよい。水溶性溶媒は、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどアルコール、アセトン、エチルアミン、トリメチルアミン等のアルキルアミン、グリセリン並びにポリエチレングリコールからなる群から選択される一種または二種を含んでもよい。
【0030】
本実施形態に係る銅塩水溶液は、銅塩および水を含む。
【0031】
本実施形態に係る銅塩は特に限定されず、銅イオンを含む塩であればよい。本実施形態に係る銅塩は、例えば、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、シアン化銅および水酸化銅からなる群から選択される一種または二種以上を含み、好ましくは塩化銅および硫酸銅からなる群から選択される一種または二種を含み、より好ましくは塩化銅を含む。
【0032】
本実施形態に係る銅塩水溶液は、上記の銅塩を水に溶解して調製した水溶液を用いてもよいし、プリント基板等電子回路基板のエッチング廃液である塩化銅廃液や硫酸銅廃液、硝酸銅廃液などを使用してもよい。
【0033】
本実施形態に係る銅塩水溶液は水溶性溶媒を含んでもよく、例えば、希釈液が含んでもよい水溶性溶媒として列記したものを含む。
【0034】
本実施形態に係る銅塩水溶液は、銅塩の析出を抑制するため、酸を含んでもよく、例えば塩酸を含む。
【0035】
本実施形態に係る銅塩水溶液中の銅イオンの含有量は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは9質量%以上であり、そして、例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0036】
工程Aで用いるアルカリ水溶液は、アルカリ成分および水を含む。
アルカリ成分としては、アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物を用いることができる。
【0037】
本実施形態に係るアルカリ金属炭酸塩は特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される一種または二種を含み、好ましくは炭酸ナトリウムを含む。
【0038】
本実施形態に係るアルカリ金属水酸化物は特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選択される一種または二種以上を含み、好ましくは水酸化ナトリウムを含む。
【0039】
工程Aで用いるアルカリ水溶液は水溶性溶媒を含んでもよく、水溶性溶媒としては、銅塩水溶液が含んでもよい水溶性溶媒として列記したものを用いることができる。
【0040】
工程Aでは、複数種類のアルカリ水溶液を複数段階に分けて供給してもよい。例えば、アルカリ水溶液A1を供給した後にアルカリ水溶液A1よりpHが大きいアルカリ水溶液A2を供給してもよい。
【0041】
工程Aで用いるアルカリ水溶液のpHは、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8.0以上、さらに好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.5以上、さらに好ましくは10.0以上、さらに好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11.0以上、さらに好ましくは11.5以上、さらに好ましくは12.0以上、さらに好ましくは12.5以上、さらに好ましくは13.0以上、さらに好ましくは13.3以上であり、そして、例えば14.0以下、好ましくは13.8以下である。
【0042】
工程Aで用いるアルカリ水溶液中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは16質量%以下、さらに好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0043】
工程Aで用いるアルカリ水溶液中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.3mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上、さらに好ましくは0.7mol/L以上、さらに好ましくは0.9mol/L以上であり、そして、例えば10mol/L以下、好ましくは8mol/L以下、より好ましくは6mol/L以下、さらに好ましくは4mol/L以下、さらに好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1.5mol/L以下である。
【0044】
工程Aで用いるアルカリ水溶液中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0045】
工程Aで用いるアルカリ水溶液中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、反応槽101内のpHを所望の範囲に調整する観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上、さらに好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.6mol/L以上、さらに好ましくは0.8mol/L以上、さらに好ましくは1.0mol/L以上、さらに好ましくは1.2mol/L以上、さらに好ましくは1.4mol/L以上、さらに好ましくは1.6mol/L以上、さらに好ましくは1.7mol/L以上であり、そして、例えば10mol/L以下、好ましくは8mol/L以下、より好ましくは6mol/L以下、さらに好ましくは4mol/L以下、さらに好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1.8mol/L以下である。
【0046】
工程Aにおいては、銅塩水溶液とアルカリ水溶液とを同時に反応槽内に供給することが好ましい。
【0047】
銅塩水溶液とアルカリ水溶液とを同時に反応槽内に供給する場合、銅塩水溶液とアルカリ水溶液は、あらかじめ混合し、一つの供給経路から反応槽内に供給してもよいし、それぞれ別の供給経路から反応槽内に供給してもよい。図2には、銅塩水溶液とアルカリ水溶液を別の供給経路から供給する例を示している。
銅塩水溶液とアルカリ水溶液の供給量をそれぞれ個別で制御しやすいという観点から、銅塩水溶液とアルカリ水溶液は別の供給経路から供給することが好ましい。
【0048】
工程Aにおいては、時間当たりのアルカリ水溶液の供給量を調整することにより反応槽101内のpHを一定範囲に調整することが好ましい。具体的には、反応槽101内のpHが下記の範囲の上限に近づいた場合には、供給量制御装置113によりアルカリ水溶液貯蔵槽103からの時間当たりのアルカリ水溶液の供給量を減らし、反応槽101内のpHが下記の範囲の下限に近づいた場合には、供給量制御装置113によりアルカリ水溶液貯蔵槽103からの時間当たりのアルカリ水溶液の供給量を増やせばよい。
【0049】
工程Aにおける反応槽101内のpHは、反応効率を向上させる観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下である。
【0050】
工程Aにおいては、時間当たりのアルカリ水溶液の供給量を調整することにより、反応槽101内のpHを、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.8以下に調整する。
【0051】
工程Aにおける反応槽101内の温度は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは45℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして、副反応を抑制する観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは75℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0052】
工程Aを経て得られた塩基性炭酸銅スラリーは、未洗浄の状態で酸化銅の合成に用いてもよいし、洗浄工程を経てから酸化銅の合成に用いてもよい。
【0053】
洗浄工程においては、例えば、塩基性炭酸銅スラリーを洗浄槽104に供給し、塩基性炭酸銅を沈殿させた後、上澄み液を除去し、イオン交換水を供給し、攪拌羽根111で攪拌することにより洗浄をおこなうことができる。
【0054】
また、塩基性炭酸銅スラリーを遠心分離した後、固形分を洗浄槽104に供給し、イオン交換水を供給し、攪拌羽根111で攪拌することにより洗浄をおこなってもよい。
【0055】
洗浄槽内の温度は好ましくは20℃以上90℃以下、より好ましくは40℃以上70℃以下である。これにより不純物がより容易に除去できる。
【0056】
洗浄工程の回数は特に限定されず、塩基性炭酸銅が所望の純度になるまでおこなえばよい。
【0057】
<工程B>
本実施形態に係る酸化銅の製造方法は、得られた塩基性炭酸銅スラリーから酸化銅スラリーを得る工程Bを含む。
【0058】
工程Bにおける反応槽106内のpHは、反応効率を向上させる観点から、好ましくは9.0以上、より好ましくは9.5以上、さらに好ましくは10.0以上、さらに好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11.0以上であり、そして、例えば14.0以下、好ましくは13.5以下である。
【0059】
工程Bにおける反応槽106内のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば反応槽106内にアルカリ成分を供給することにより反応槽106内のpHを調整することができる。
アルカリ成分としては、固体状のアルカリ成分を用いて処理してもよいし、アルカリ成分を含有する水溶液(アルカリ水溶液)を用いて処理してもよいが、pH調製のハンドリング性向上の観点から、アルカリ水溶液により処理することが好ましい。
アルカリ水溶液としては、工程Aで用いたアルカリ水溶液と同様のものを用いることができる。
【0060】
工程Bでの反応槽106内の温度は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上であり、そして、例えば95℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
【0061】
工程Bにおける反応槽106での熟成時間は、反応効率を向上させる観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、さらに好ましくは90分以上である。
【0062】
工程Bを経て得られた酸化銅スラリーは、洗浄し、脱水し、さらに乾燥し、粉末の状態としてもよい。これら単位操作は、一般的に使用される方法、設備を使用し行うことができる。
【0063】
酸化銅の洗浄には、塩基性炭酸銅の洗浄工程に記載した内容を採用することができる。
【0064】
脱水工程における脱水手段は特に限定されず、例えば、洗浄後の酸化銅スラリーを遠心分離機108で脱水してもよいし、吸引濾過により脱水してもよい。
【0065】
乾燥工程においては、例えば、脱水工程で得られた酸化銅ケークを、箱型乾燥機、連続式乾燥機等の乾燥機109により乾燥させる。乾燥温度は特に限定されないが、酸化銅の変質を抑制しつつ水分を除去するという観点から60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく80℃以上がさらに好ましく、そして、酸化銅の変性を防ぐという観点から150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0066】
本実施形態に係る酸化銅の用途は特に限定されないが、例えば、農薬およびめっき液等の原料として用いることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用できる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0068】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例は、特記しない限り、23℃、相対湿度50%で試験した。
【0069】
[実施例1]
<工程A>
実施例1の工程Aでは、前半と後半で異なるアルカリ水溶液を用いた。以下、前半で用いたアルカリ水溶液をアルカリ水溶液A1、後半で用いたアルカリ水溶液をアルカリ水溶液A2と呼ぶ。
【0070】
(1)工程Aの前半
まず、反応槽内にイオン交換水2.1Lを入れて攪拌し、65℃まで加温した。
【0071】
次いで、反応槽内を攪拌しながら、表1に記載された条件で銅塩水溶液1とアルカリ水溶液A1とを同時に供給し、工程Aの前半を開始させた。
【0072】
工程Aの前半では、アルカリ水溶液A1の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0073】
銅塩水溶液1は、イオン交換水に塩化銅(II)二水和物(生駒薬化学工業株式会社製)を溶解し、さらに、塩酸由来の塩素イオンの含有量が1.0質量%になるように塩酸を加えることにより調製した。
また、アルカリ水溶液A1は、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))を溶解することにより調製した。
【0074】
【表1】
【0075】
(2)工程Aの後半
工程Aの前半の開始から135分経過後、アルカリ水溶液A1の供給を停止し、銅塩水溶液1の単位時間あたりの供給量を表2に記載された条件の通りに変更し、さらに表2に記載された条件の通りにアルカリ水溶液A2を供給し始め、工程Aの後半を開始した。
【0076】
工程Aの後半では、アルカリ水溶液A2の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0077】
アルカリ水溶液A2は、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))および液体苛性ソーダ(株式会社カネカ製)を溶解することにより調製した。
【0078】
工程Aの後半の開始から345分経過後、銅塩水溶液1とアルカリ水溶液A2の供給を停止し、工程Aを終了させた。
【0079】
【表2】
【0080】
実施例1の工程Aで用いたアルカリ成分の量については表3に記載の通りである。
【表3】
【0081】
<工程B>
上記の方法により得られた塩基性炭酸銅スラリーを反応槽に供給し、反応槽内を80℃とし、反応槽内にさらに水酸化ナトリウム水溶液を供給して反応槽内のpHを11.0とし、2時間熟成させ、酸化銅スラリーを得た。
次いで、反応槽内に生成した酸化銅スラリーをイオン交換水で洗浄し、吸引濾過により脱水し、さらに乾燥機で乾燥し、粉末状の酸化銅を得た。
【0082】
[実施例2]
<工程A>
実施例2の工程Aでは、前半と後半で一貫して同じアルカリ水溶液を用いた。以下、実施例2の工程Aで用いたアルカリ水溶液をアルカリ水溶液A3と呼ぶ。
【0083】
(1)工程Aの前半
まず、反応槽内にイオン交換水2.1Lを入れて攪拌し、65℃まで加温した。
【0084】
次いで、反応槽内を攪拌しながら、表4に記載された条件で銅塩水溶液1とアルカリ水溶液A3とを同時に供給し、工程Aの前半を開始させた。
【0085】
工程Aの前半では、アルカリ水溶液A3の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0086】
アルカリ水溶液A3は、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))および液体苛性ソーダ(株式会社カネカ製)を溶解することにより調製した。
【0087】
【表4】
【0088】
(2)工程Aの後半
工程Aの前半の開始から135分経過後、銅塩水溶液1およびアルカリ水溶液A3の単位時間あたりの供給量を表5に記載された条件の通りに変更し、工程Aの後半を開始した。
【0089】
工程Aの後半では、アルカリ水溶液A3の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0090】
工程Aの後半の開始から345分経過後、銅塩水溶液1とアルカリ水溶液A3の供給を停止し、工程Aを終了させた。
【0091】
【表5】
【0092】
実施例2の工程Aで用いたアルカリ成分の量については表6に記載の通りである。
【0093】
【表6】
【0094】
<工程B>
上記の方法により得られた塩基性炭酸銅スラリーを用いて、実施例1と同じ方法で粉末状の酸化銅を得た。
【0095】
[比較例1]
<工程A>
比較例1の工程Aでは、前半と後半で一貫して同じアルカリ水溶液を用いた。以下、比較例1の工程Aで用いたアルカリ水溶液をアルカリ水溶液A4と呼ぶ。
【0096】
(1)工程Aの前半
まず、反応槽内にイオン交換水2.1Lを入れて攪拌し、65℃まで加温した。
【0097】
次いで、反応槽内を攪拌しながら、表7に記載された条件で銅塩水溶液1とアルカリ水溶液A4とを同時に供給し、工程Aの前半を開始させた。
【0098】
工程Aの前半では、アルカリ水溶液A4の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0099】
アルカリ水溶液A4は、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))を溶解することにより調製した。
【0100】
【表7】
【0101】
(2)工程Aの後半
工程Aの前半の開始から135分経過後、銅塩水溶液1およびアルカリ水溶液A4の単位時間あたりの供給量を表8に記載された条件の通りに変更し、工程Aの後半を開始した。
【0102】
工程Aの後半では、アルカリ水溶液A4の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0103】
工程Aの後半の開始から345分経過後、銅塩水溶液1とアルカリ水溶液A4の供給を停止し、工程Aを終了させた。
【0104】
【表8】
【0105】
比較例1の工程Aで用いたアルカリ成分の量については表9に記載の通りである。
【0106】
【表9】
【0107】
<工程B>
上記の方法により得られた塩基性炭酸銅スラリーを用いて、実施例1と同じ方法で粉末状の酸化銅を得た。
【0108】
[比較例2]
<工程A>
比較例2の工程Aでは、前半と後半で一貫して同じアルカリ水溶液を用いた。以下、比較例2の工程Aで用いたアルカリ水溶液をアルカリ水溶液A5と呼ぶ。
【0109】
(1)工程Aの前半
まず、反応槽内にイオン交換水2.1Lを入れて攪拌し、65℃まで加温した。
【0110】
次いで、反応槽内を攪拌しながら、表10に記載された条件で銅塩水溶液12とアルカリ水溶液A5とを同時に供給し、工程Aの前半を開始させた。
【0111】
工程Aの前半では、アルカリ水溶液A5の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0112】
アルカリ水溶液A5は、イオン交換水に炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ製、ライト灰(工業用))および液体苛性ソーダ(株式会社カネカ製)を溶解することにより調製した。
【0113】
【表10】
【0114】
(2)工程Aの後半
工程Aの前半の開始から135分経過後、銅塩水溶液2およびアルカリ水溶液A5の単位時間あたりの供給量を表11に記載された条件の通りに変更し、工程Aの後半を開始した。
【0115】
工程Aの後半では、アルカリ水溶液A5の供給量を調整することにより、反応槽内のpHを7.5、温度を65℃に保った。
【0116】
工程Aの後半の開始から345分経過後、銅塩水溶液1とアルカリ水溶液A5の供給を停止し、工程Aを終了させた。
【0117】
【表11】
【0118】
比較例2の工程Aで用いたアルカリ成分の量については表12に記載の通りである。
【0119】
【表12】
【0120】
<工程B>
上記の方法により得られた塩基性炭酸銅スラリーを用いて、実施例1と同じ方法で粉末状の酸化銅を得た。
【0121】
実施例1~2および比較例1~2の工程Aで用いたアルカリ成分の合計量について表13にまとめた。
【0122】
また、上記の方法により得られた酸化銅を吸光光度法により分析した。分析により得られた酸化銅中の塩素含有量の値を表13に示す。
【0123】
また、上記の方法により得られた酸化銅の体積平均のメジアン径D50を粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製MT3300EXII)により測定した。結果を表13に示す。
【0124】
【表13】
【0125】
実施例1~2の製造方法では、比較例1~2と比べ、アルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量を低減できた。このことから、本実施形態に係る酸化銅の製造方法によると、アルカリ金属イオン量換算での総アルカリ使用量を低減しながら酸化銅を製造できることがわかる。
【0126】
また、実施例1と実施例2を比較すると、実施例1のほうが酸化銅中の塩素含有量が低減され、粒径の微細化が抑制されていた。このことから、アルカリ金属炭酸塩のmol数に対するアルカリ金属水酸化物のmol数の比を小さくすることにより、塩素含有量が低減され、粒径の微細化が抑制される傾向があることがわかる。
【符号の説明】
【0127】
101 反応槽
102 銅塩水溶液貯蔵槽
103 アルカリ水溶液貯蔵槽
104 洗浄槽
105 アルカリ水溶液貯蔵槽
106 反応槽
107 洗浄槽
108 遠心分離機
109 乾燥機
111 攪拌羽根
112 供給量制御装置
113 供給量制御装置
115 供給量制御装置
図1
図2