(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025052748
(43)【公開日】2025-04-07
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20250328BHJP
G01S 5/04 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
G01S5/14
G01S5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023161620
(22)【出願日】2023-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大石 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
(72)【発明者】
【氏名】古池 竜也
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062CC11
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】装置間の位置関係の推定精度をより向上させることが可能な仕組みを提供する。
【解決手段】他の通信装置との間で無線通信を行う複数の無線通信部の各々により送受信された無線信号に基づいて、前記他の通信装置の位置を示す座標及び前記座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の前記無線通信部の各々について繰り返し実行し、高信頼の前記座標が得られた複数の前記無線通信部において、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の存在エリアを推定する制御部、を備える制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信装置との間で無線通信を行う複数の無線通信部の各々により送受信された無線信号に基づいて、前記他の通信装置の位置を示す座標及び前記座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の前記無線通信部の各々について繰り返し実行し、
高信頼の前記座標が得られた複数の前記無線通信部において、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の存在エリアを推定する制御部、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、高信頼の前記座標が得られた数が複数の前記無線通信部において拮抗しない場合、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の前記存在エリアを推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数の高信頼の前記座標の中央値に基づいて、前記他の通信装置の前記存在エリアを推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の高信頼の前記座標における中央値付近の2つ以上の高信頼の前記座標のうち、最も信頼性が高い1つの前記座標に基づいて、前記他の通信装置の前記存在エリアを推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、複数の高信頼の前記座標のうち中央値付近の2つ以上の高信頼の前記座標の各々に基づいて、前記他の通信装置の2つ以上の前記存在エリアを推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、複数の高信頼の前記座標の各々に対応する複数のエリアから多数決をとることで、前記他の通信装置の前記存在エリアを推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、ある閾値以上の数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標に基づいて、前記他の通信装置の前記存在エリアを推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記座標に基づいて推定された前記他の通信装置の前記存在エリアと、前記座標以外のパラメータに基づいて推定された前記他の通信装置の前記存在エリアとの一致度に基づいて、前記信頼性パラメータを計算する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記無線通信部により受信された前記無線信号の到来角に基づいて前記座標を計算し、
前記座標以外のパラメータは、前記無線信号のToF(Time of Flight)に基づいて計算された測距値又は前記無線信号の受信信号強度である、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
コンピュータにより実行される制御方法であって、
他の通信装置との間で無線通信を行う複数の無線通信部の各々により送受信された無線信号に基づいて、前記他の通信装置の位置を示す座標及び前記座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の前記無線通信部の各々について繰り返し実行することと、
高信頼の前記座標が得られた複数の前記無線通信部において、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の存在エリアを推定することと、
を含む、制御方法。
【請求項11】
コンピュータを、
他の通信装置との間で無線通信を行う複数の無線通信部の各々により送受信された無線信号に基づいて、前記他の通信装置の位置を示す座標及び前記座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の前記無線通信部の各々について繰り返し実行し、
高信頼の前記座標が得られた複数の前記無線通信部において、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の存在エリアを推定する制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で無線信号を送受信した結果に従って、装置間の位置関係を推定する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、UWB(Ultra-Wide Band)を使用した信号の到来角を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、送受信間に遮蔽物が存在する等の環境下では到来角の推定精度が低下する可能性があるにも関わらず、何ら対処がなされていないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、装置間の位置関係の推定精度をより向上させることが可能な仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、他の通信装置との間で無線通信を行う複数の無線通信部の各々により送受信された無線信号に基づいて、前記他の通信装置の位置を示す座標及び前記座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の前記無線通信部の各々について繰り返し実行し、高信頼の前記座標が得られた複数の前記無線通信部において、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の存在エリアを推定する制御部、を備える制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータにより実行される制御方法であって、他の通信装置との間で無線通信を行う複数の無線通信部の各々により送受信された無線信号に基づいて、前記他の通信装置の位置を示す座標及び前記座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の前記無線通信部の各々について繰り返し実行することと、高信頼の前記座標が得られた複数の前記無線通信部において、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の存在エリアを推定することと、を含む、制御方法が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、他の通信装置との間で無線通信を行う複数の無線通信部の各々により送受信された無線信号に基づいて、前記他の通信装置の位置を示す座標及び前記座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の前記無線通信部の各々について繰り返し実行し、高信頼の前記座標が得られた複数の前記無線通信部において、より多くの数の高信頼の前記座標が得られた前記無線通信部により得られた前記座標を優先的に参照して、前記他の通信装置の存在エリアを推定する制御部、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、装置間の位置関係の推定精度をより向上させることが可能な仕組みが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るアンテナの配置の一例を説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係る無線通信部の処理ブロックの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るCIRの一例を示すグラフである。
【
図5】本実施形態に係るシステムにおいて実行される位置パラメータの推定に係る処理の流れ一例を説明するためのシーケンス図である。
【
図6】本実施形態に係る携帯機の存在エリアの推定処理の一例を説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る制御装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素を、必要に応じて車載器200A及び200Bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、車載器200A及び200Bを特に区別する必要が無い場合には、単に車載器200と称する。
【0013】
<1.構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100と、複数の車載器200(200A及び200B)と、制御装置300と、被制御装置400と、を備える。
【0014】
本実施形態に係る車載器200、制御装置300及び被制御装置400は、車両20に搭載される。車両20は、移動体の一例であり、例えば、ユーザが乗車を許諾された車両(例えば、ユーザが所有する車両、又はユーザに一時的に貸与された車両)である。なお、本実施形態に係る移動体は、車両20だけでなく、航空機又は船舶等も含まれる。
【0015】
(携帯機100)
携帯機100は、他の通信装置の一例であり、車両20を利用するユーザにより携帯される装置である。携帯機100は、電子キー、スマートフォン、タブレット端末又はウェアラブル端末等であってもよい。
図1に示すように、携帯機100は、制御部110と、無線通信部120と、を備える。
【0016】
制御部110は、携帯機100の動作全般を制御する。制御部110は、例えば、車載器200との間で無線信号を送受信するよう、無線通信部120を制御する。制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0017】
無線通信部120は、車載器200との間で無線通信を行う。かかる無線通信は、例えば、UWBを使用した信号(以下、UWB信号とも称する)を用いて行われ得る。UWB信号による無線通信において、インパルス方式を利用すれば、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の伝搬遅延時間を高精度に測定することができ、伝搬遅延時間に基づく測距を高精度に行うことができる。無線通信部120は、例えば、UWB信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0018】
また、無線通信部120は、少なくとも1つのアンテナ121を有する。そして、無線通信部120は、少なくとも1つのアンテナ121を介して無線信号を送受信する。
【0019】
(車載器200)
車載器200は、通信装置の一例であり、車両20に搭載される装置である。なお、車両20に搭載される車載器200の数は2つに限定されず、3つ以上であってよい。
図1に示すように、車載器200は、制御部210と、無線通信部220と、を備える。
【0020】
制御部210は、車載器200の動作全般を制御する。制御部210は、例えば、携帯機100との間で無線信号を送受信するよう、無線通信部220を制御する。制御部210は、例えばECU(Electronic Processing Unit)又はマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0021】
無線通信部220は、携帯機100との間で無線通信を行う。かかる無線通信は、例えば、UWB信号を用いて行われ得る。無線通信部220は、例えば、UWB信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0022】
また、無線通信部220は、少なくとも3以上のアンテナ221を有する。そして、無線通信部220は、3以上のアンテナ221を介して無線信号を送受信する。
【0023】
以下では、無線通信部220は、4つのアンテナ221を有するものとする。4つのアンテナ221の配置例を、
図2を参照しながら説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係るアンテナ221の配置の一例を説明するための図である。
図2に示すように、4つのアンテナ221(221A~221D)は、無線通信部220上の正方形を形成する位置に配置されてもよい。アンテナ221A及び221C、並びにアンテナ221B及び221Dは、X軸に並行して並んで配置されている。X軸は、例えば車両20の前後方向に伸びる軸であってよい。他方、アンテナ221A及び221B、並びに221C及び221Dは、Y軸に並行して並んで配置されている。Y軸は、例えば車両20の左右方向に伸びる軸であってよい。X軸及びY軸に直交する軸を、Z軸とする。Z軸は、車両の上下方向に伸びる軸であってよい。
【0025】
なお、無線通信部220及びアンテナ221の配置及びスケールは、
図2に示した例に限定されない。例えば、X軸方向又はY軸方向に隣接するアンテナ221間の間隔は、無線信号の1/2波長程度であってよい。また、4本のアンテナの配置形状は、正方形、平行四辺形、台形、矩形、又はその他の任意の形状を取り得る。ただし、複数のアンテナ221は、同一直線上ではなく、平面上に配置されることが望ましい。
【0026】
(制御装置300)
制御装置300は、車両20に搭載された他の装置を制御する機能を有する。制御装置300は、CAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークを介して、車載器200及び被制御装置400と通信し、これらを制御する。
図1に示すように、制御装置300は、制御部310を備える。
【0027】
制御部310は、制御装置300の動作全般を制御する。一例として、制御部310は、携帯機100との間で無線通信を実行するよう車載器200を制御する。他の一例として、制御部310は、携帯機100による無線通信の結果に基づいて、携帯機100の位置を推定する。他の一例として、制御部310は、推定した携帯機100の位置に基づいて、被制御装置400の動作を制御する。制御部310は、例えばECU又はマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0028】
(被制御装置400)
被制御装置400は、制御装置300による制御に従い、動作する装置である。被制御装置400は、車両20のドア錠であってもよいし、車両20のエンジンであってもよい。例えば、制御装置300は、車両20のドア錠を施錠又は解錠したり、車両20のエンジンの始動を許可又は制限したりし得る。
【0029】
以上、本実施形態に係るシステム1の構成例を説明した。
【0030】
<2.技術的特徴>
<2.1.位置パラメータの推定>
(CIR)
携帯機100(より詳しくは、制御部110)及び車載器200(より詳しくは、制御部210)の各々はCIR(Channel Impulse Response)を算出し得る。
【0031】
CIRとは、インパルスをシステムに入力したときの応答である。CIRは、携帯機100と車載器200との間の無線通信路の特性を示す。
【0032】
CIRは、送信側が送信した無線信号(以下、送信信号とも称する)と受信側が受信した無線信号(以下、受信信号とも称する)とのスライディング相関をとることで、算出され得る。より詳細には、受信側は、受信信号とある遅延時間分遅延させた送信信号との相関をとった値を、当該遅延時間における特性(以下、CIR値とも称する)として算出する。そして、受信側は、遅延時間ごとのCIR値を算出することで、CIRを算出する。つまり、CIRは、CIR値の時系列推移である。ここで、CIR値は、I成分及びQ成分を有する複素数である。CIR値のI成分及びQ成分の二乗和は、CIRの電力値とも称される場合がある。なお、UWBを用いた測距技術においては、CIR値は遅延プロファイルとも称される。また、UWBを用いた測距技術においては、CIR値のI成分及びQ成分の二乗和は、電力遅延プロファイルとも称される。
【0033】
以下、送信側が携帯機100であり、受信側が車載器200である場合のCIR算出処理を、
図3及び
図4を参照しながら詳しく説明する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る無線通信部220の処理ブロックの一例を示す図である。
図3に示すように、無線通信部220は、アンテナ221、発振器222、乗算器223、90度移相器224、乗算器225、LPF(Low Pass Filter)226、LPF227、相関器228、及び積算器229を含む。
【0035】
発振器222は、送信信号を搬送する搬送波の周波数と同一の周波数の信号を生成して、生成した信号を乗算器223及び90度移相器224に出力する。
【0036】
乗算器223は、アンテナ221により受信された受信信号と発振器222から出力された信号とを乗算し、乗算した結果をLPF226に出力する。LPF226は、入力された信号のうち、送信信号を搬送する搬送波の周波数以下の周波数の信号を、相関器228に出力する。相関器228に入力される信号は、受信信号の包絡線に対応する成分のうちI成分(即ち、実部)である。
【0037】
90度移相器224は、入力された信号の位相を90度遅延させて、遅延させた信号を乗算器225に出力する。乗算器225は、アンテナ221により受信された受信信号と90度移相器224から出力された信号とを乗算し、乗算した結果をLPF227に出力する。LPF227は、入力された信号のうち、送信信号を搬送する搬送波の周波数以下の周波数の信号を、相関器228に出力する。相関器228に入力される信号は、受信信号の包絡線に対応する成分のうちQ成分(即ち、虚部)である。
【0038】
相関器228は、LPF226及びLPF227から出力された、I成分及びQ成分から成る受信信号と、参照信号とのスライディング相関をとることで、CIRを算出する。なお、ここでの参照信号とは、搬送波が乗算される前の送信信号と同一の信号である。
【0039】
積算器229は、相関器228から出力されたCIRを積算して、出力する。
【0040】
ここで、送信側は、ひとつ以上のプリアンブルシンボルを複数含むプリアンブルを含む信号を、送信信号として送信し得る。プリアンブルとは、送受信間で既知な系列である。プリアンブルは、典型的には送信信号の先頭に配置される。プリアンブルシンボルとは、ひとつ以上のパルスを含むパルス配列である。パルス配列とは、時間方向に分離した複数のパルスの集合である。プリアンブルシンボルは、積算器229による積算の対象である。即ち、相関器228は、受信信号に含まれる複数のプリアンブルシンボルに対応する部分の各々と、送信信号に含まれるプリアンブルシンボルと、のスライディング相関をとることで、プリアンブルシンボルごとのCIRを算出する。そして、積算器229は、プリアンブルシンボルごとのCIRを、プリアンブルに含まれるひとつ以上のプリアンブルシンボルについて積算し、積算後のCIRを出力する。以下では、CIRとは、特に言及しない限り積算後のCIRを指すものとする。
【0041】
なお、無線通信部220は、上記処理を、複数のアンテナ221により受信された受信信号の各々に対して行う。
【0042】
(第1到来波の検出)
図4は、積算器229から出力されるCIRの一例を示すグラフである。グラフの横軸は遅延時間であり、縦軸は遅延プロファイルである。CIRにおける、ある遅延時間のCIR値のように、時系列に沿って変化する情報を構成するひとつの情報は、サンプリングポイントとも称される。CIRにおいて、典型的には、ゼロクロス点とゼロクロス点との間のサンプリングポイントの集合が、ひとつのパルスに対応する。ゼロクロス点とは、値がゼロになるサンプリングポイントである。ただし、ノイズがある環境ではその限りではない。例えば、ゼロ以外の基準となる水準とCIR値の推移との交点間のサンプリングポイントの集合が、ひとつのパルスに対応すると捉えられてもよい。
図4に示したCIRには、あるパルスに対応するサンプリングポイントの集合21、及び他のパルスに対応するサンプリングポイントの集合22が、含まれている。
【0043】
集合21は、例えば、ファストパスの信号(以下、第1到来波とも称する)に対応する。ファストパスとは、送受信間の最も短い経路を指し、遮蔽物がない環境では送受信間の直線距離を指す。第1到来波とは、ファストパスを通って受信側に到達した信号である。集合22は、例えば、ファストパス以外の経路を通って受信側に到達した信号に対応する。
【0044】
受信側は、受信した無線信号のうち最初に所定の基準を満たす信号を、第1到来波として検出する。所定の検出基準の一例は、CIR値(例えば、振幅又は電力)が最初に所定の閾値を超えることである。即ち、受信側は、CIRのうちCIR値が最初に所定の閾値を超えた部分に対応する信号を、第1到来波として検出してもよい。
【0045】
第1到来波は、直接波、遅延波、又は合成波のいずれかであり得る。直接波とは、送受信間の最短経路を経て、直接的に(即ち、反射等されずに)受信側に受信される信号である。遅延波とは、送受信間の最短でない経路を経て、即ち、反射等されて間接的に受信側に受信される信号である。遅延波は、直接波よりも遅延して受信側に受信される。合成波とは、複数の異なる経路を経た複数の信号が合成された状態で受信側に受信される信号である。
【0046】
ここで注意すべきは、第1到来波として検出された信号が、必ずしも直接波であるとは限らない点である。例えば、直接波が遅延波と打ち消し合った状態で受信されると、直接波のCIR値が所定の閾値を下回り、直接波が第1到来波として検出されない場合がある。その場合、直接波よりも遅延して到来する遅延波又は合成波が、第1到来波として検出されてしまう。
【0047】
典型的には、LOS(Line of Sight)状態においては、受信側が直接波を第1到来波として検出することに成功する可能性が高い。LOS状態とは、送受信間に遮蔽物が無い等、送受信間の見通しが可能な状態を指す。
【0048】
他方、NLOS(Non Line of Sight)状態においては、受信側が直接波を第1到来波として検出することに失敗する可能性がある。NLOS状態とは、送受信間に遮蔽物がある等、送受信間の見通しが不可能な状態を指す。
【0049】
以下では、特に言及しない限り、信号とは第1到来波を指すものとする。
【0050】
(位置パラメータの推定)
本実施形態に係る制御装置300(より詳しくは、制御部310)は、携帯機100と車載器200との間で行われた無線通信の結果(とりわけ、第1到来波)に基づいて、携帯機100が存在する位置を示す位置パラメータを推定する。位置パラメータは、車載器200を基準とする携帯機100の相対的な位置を示す情報である。
【0051】
位置パラメータの一例は、携帯機100と車載器200との間の距離である。携帯機100と車載器200との間の距離は、例えば、伝搬遅延時間(即ち、ToF(Time of Flight))に基づいて推定され得る。推定された距離は測距値とも称される。
【0052】
位置パラメータの一例は、車載器200が携帯機100から受信した無線信号の到来角である。無線信号の到来角は、例えば、2つのアンテナ221により構成されるアンテナアレーにおける、受信した無線信号の位相差に基づいて推定され得る。
【0053】
位置パラメータの一例は、携帯機100の座標である。携帯機100の座標は、例えば、携帯機100と車載器200との間の距離の推定結果と、車載器200が携帯機100から受信した無線信号の到来角の推定結果と、を組み合わせることにより、推定され得る。
【0054】
以下、
図5を参照しながら、位置パラメータの推定に係る処理の流れの一例を説明する。
【0055】
図5は、本実施形態に係るシステム1において実行される位置パラメータの推定に係る処理の流れ一例を説明するためのシーケンス図である。
【0056】
まず、携帯機100が有するアンテナ121は、Poll(Polling)信号を送信する(ステップS101)。
【0057】
次に、車載器200が有するアンテナ221Aは、Poll信号を受信すると、受信したPoll信号に対する応答として、Resp(Response)信号を送信する(ステップS103)。
【0058】
そして、携帯機100が有するアンテナ121は、Resp信号を受信すると、受信したResp信号に対する応答として、Final信号を送信する(ステップS105a~S105d)。Final信号は、車載器200が有するアンテナ221A~221Dにより受信される。
【0059】
ここで、携帯機100が、Poll信号を送信してからResp信号を受信するまでの時間長を時間長T1とし、Resp信号を受信してからFinal信号を送信するまでの時間長を時間長T2とする。そして、車載器200が、Poll信号を受信してからResp信号を送信するまでの時間長を時間長T3とし、Resp信号を送信してからFinal信号を受信するまでの時間長を時間長T4とする。
【0060】
制御装置300は、時間長T1~T4を用いて、信号の伝搬遅延時間τを算出する。例えば、制御装置300は、次式により伝搬遅延時間τを算出する。そして、制御装置300は、算出した信号の伝搬遅延時間τに既知である信号の速度を乗算することで、携帯機100と車載器200との間の距離を推定してもよい。
【0061】
【0062】
さらに、制御装置300は、アンテナ221A~221Dにより受信された信号の位相に基づいて、車載器200が携帯機100から受信した信号の到来角を推定する。例えば、制御装置300は、次式によりFinal信号の到来角を推定する。
【0063】
【0064】
【0065】
なお、Pdとは、付随するインデックスにより示される、隣接するアンテナが受信した信号の位相差である。例えば、PdACは、アンテナ221A及びアンテナ221Cが受信した信号の位相差である。
【0066】
λは電波の波長である。dは、アンテナ221間の距離である。αは、X軸を基準とする信号の到来角である。βとは、Y軸を基準とする信号の到来角である。
【0067】
さらに、制御装置300は、推定した距離及び到来角に基づいて、携帯機100の座標を推定してもよい。例えば、制御装置300は、次式により携帯機100のX軸上の座標x、Y軸上の座標y、及びZ軸上の座標zを推定する。
【0068】
【0069】
なお、Rとは、携帯機100と車載器200との間の距離の推定値(即ち、測距値)である。
【0070】
<2.2.信頼性パラメータの計算>
本実施形態に係る制御装置300は、車載器200により受信された信号(即ち、第1到来波)の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する。信号の信頼性とは、位置パラメータの推定に使用する適切さを示す指標である。信号の信頼性は、当該信号が直接波である可能性の高さを示す指標、即ち、当該信号がLOS状態において検出された可能性の高さを示す指標として、捉えられてもよい。信号の信頼性が高いほど、当該信号に基づいて計算した位置パラメータの推定精度は高い。他方、信号の信頼性が低いほど、当該信号に基づいて計算した位置パラメータの推定精度は低い。
【0071】
信頼性パラメータとしては種々の例が挙げられる。一例として、信頼性パラメータは、信号のSNR(signal noise ratio)であってよい。他の一例として、信頼性パラメータは、信号の受信信号強度(例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)であってよい。他の一例として、信頼性パラメータは、アンテナ221間でのFinal信号の受信時刻(即ち、第1到来波の検出時刻)のばらつきであってよい。
【0072】
<2.3.信頼性パラメータに基づく存在エリアの推定>
制御装置300は、複数の車載器200の各々に無線通信を複数回実行させて、携帯機100の座標の推定結果(以下、第1の座標とも称する)を複数取得する。次いで、制御装置300は、複数の第1の座標に基づいて、携帯機100の座標の最終的な値(以下、第2の座標とも称する)を推定する。そして、制御装置300は、第2の座標に対応するエリアを、携帯機100が存在するエリア(以下、存在エリアとも称する)として推定する。携帯機100が存在し得るエリアとしては、車室外エリア、車室内エリア、車両前方エリア、車両後方エリア、運転席周辺エリア、又は助手席周辺エリア等、車両20を基準とする空間が挙げられる。
【0073】
以下、携帯機100の存在エリアを推定する処理について詳しく説明する。
【0074】
まず、制御装置300は、携帯機100との間で無線通信を行う複数の車載器200の各々により送受信された無線信号に基づいて、携帯機100の位置を示す第1の座標及び第1の座標の信頼性を示す信頼性パラメータを計算する処理を、複数の車載器200の各々について繰り返し実行する。第1の座標の信頼性パラメータは、第1の座標の推定に使用した信号について計算した信頼性パラメータと同義である。第1の座標の推定に使用した信号の信頼性が高いことは、推定した第1の座標の信頼性が高いこと、即ち、推定した第1の座標の推定精度が高いことを指す。かかる処理により、制御装置300は、第1の座標と、当該第1の座標の信頼性パラメータと、の複数の組み合わせを取得する。
【0075】
そして、制御装置300は、取得した第1の座標と信頼性パラメータとの複数の組み合わせに基づいて、携帯機100の存在エリアを推定する。詳しくは、制御装置300は、信頼性パラメータにより示される信頼性が高い第1の座標(以下、高信頼の第1の座標とも称する)に基づいて第2の座標を推定し、第2の座標に対応するエリアを携帯機100の存在エリアとして推定する。ここでの高信頼の第1の座標は、信頼性パラメータにより示される信頼性がある閾値以上である第1の座標であってよい。
【0076】
制御装置300は、高信頼の第1の座標が得られた複数の車載器200において、より多くの数の高信頼の第1の座標が得られた車載器200により得られた第1の座標を優先的に参照して、携帯機100の存在エリアを推定する。かかる構成によれば、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。
【0077】
とりわけ、制御装置300は、高信頼の第1の座標が得られた数が複数の車載器200において拮抗しない場合、より多くの数の高信頼の第1の座標が得られた車載器200により得られた第1の座標を優先的に参照して、携帯機100の存在エリアを推定する。複数の車載器200において、携帯機100との間の位置関係によっては、LOS状態にあり第1の座標の推定精度が高い車載器200と、NLOS状態にあり第1の座標の推定精度が低い車載器200とが混在し得る。そのため、すべての車載器200により得られた第1の座標を同等に扱って第2の座標を推定すると、第2の座標の推定精度が低下し、その結果、携帯機100の存在エリアの推定精度が低下し得る。この点、かかる構成によれば、LOS状態である可能性が高い車載器200により得られたデータを優先的に参照することができるので、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。
【0078】
制御装置300は、高信頼の第1の座標が得られた数が複数の車載器200において拮抗する場合、これら複数の車載器200の各々により得られた第1の座標を均等に参照して、携帯機100の存在エリアを推定してもよい。その場合であっても、LOS状態である可能性が高い車載器200により得られたデータを参照することができるので、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。
【0079】
以下では、
図6を参照しながら、携帯機100の存在エリアを推定する処理の一例を説明する。
図6は、本実施形態に係る携帯機100の存在エリアの推定処理の一例を説明するための図である。
図6に示すように、車両20の車室内前方に車載器200Aが配置され、車両20の車室内後方に車載器200Bが配置されているものとする。
【0080】
下記の表1に示すように、制御装置300は、車載器200Aにより取得されたa個の第1の座標と、車載器200Bにより取得されたb個の第1の座標とを取得する。制御装置300は、これらの第1の座標の信頼性パラメータを計算する。
【0081】
【0082】
次いで、下記の表2に示すように、制御装置300は、車載器200Aにより得られたa個の第1の座標のうち、信頼性パラメータにより示される信頼性が高い第1の座標をA個抽出する。また、制御装置300は、車載器200Bにより得られたb個の第1の座標のうち、信頼性パラメータにより示される信頼性が高い第1の座標をB個抽出する。
【0083】
【0084】
そして、制御装置300は、抽出されたA+B個の高信頼の第1の座標の中央値に基づいて、携帯機100の存在エリアを推定する。詳しくは、
図6に示すように、制御装置300は、表2に示したA+B個の高信頼の第1の座標の中央値(Xm,Ym)を第2の座標として推定する。この場合、制御装置300は、推定した第2の座標(Xm,Ym)に対応する運転席周辺エリア30を、携帯機100の存在エリアとして推定する。
【0085】
AとBとが同一でない場合、即ち高信頼の第1の座標が得られた数が車載器200Aと車載器200Bとで拮抗しない場合、中央値をとることで、より多くの数の高信頼の第1の座標が得られた車載器200により得られた第1の座標を優先的に参照することとなる。より多くの数の高信頼の第1の座標が得られた車載器200とは、LOS状態である可能性が高い車載器200を指す。即ち、かかる構成によれば、LOS状態である可能性が高い車載器200により得られたデータを優先的に参照することができるので、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。
【0086】
なお、複数の第1の座標の中央値は、X座標とY座標それぞれに関して中央値を計算することで、得られるものとする。A+Bが偶数である場合、中央値とは、順位中央2個の第1の座標の算術平均であってよい。
【0087】
以下、
図7を参照しながら、以上説明した処理の流れの一例を説明する。
【0088】
図7は、本実施形態に係る制御装置300により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0089】
図7に示すように、まず、制御装置300は、車載器200ごとに複数回の無線通信を実行させる(ステップS202)。これにより、制御装置300は、複数の第1の座標を取得する。
【0090】
次いで、制御装置300は、高信頼のデータを抽出する(ステップS204)。例えば、制御装置300は、ステップS202において取得した複数の第1の座標の各々の信頼性パラメータを計算し、信頼性パラメータにより示される信頼性がある閾値以上である第1の座標を抽出する。
【0091】
次に、制御装置300は、抽出した高信頼のデータに基づいて、携帯機100の存在エリアを推定する(ステップS206)。例えば、制御装置300は、抽出した複数の高信頼の第1の座標の中央値を第2の座標として推定し、推定した第2の座標に対応するエリアを携帯機100の存在エリアとして推定する。
【0092】
そして、制御装置300は、推定した携帯機100の存在エリアに基づいて、被制御装置400の動作を制御する(ステップS208)。例えば、制御装置300は、携帯機100が運転席周辺エリアにあると推定した場合にドア錠を解錠したり、携帯機100が車室内にあると推定した場合にエンジンの始動を許可したりする。
【0093】
<3.変形例>
<3.1.第2の座標の計算方法に係る変形例>
上記実施形態では、抽出された複数の高信頼の第1の座標の中央値を第2の座標として推定する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。他の例を以下に説明する。
【0094】
(第1の例)
制御装置300は、抽出された複数の高信頼の第1の座標における中央値付近の2つ以上の高信頼の第1の座標のうち、最も高信頼が高い1つの第1の座標を第2の座標として推定し、推定した第2の座標に基づいて携帯機100の存在エリアを推定してもよい。ここでの中央値付近の2以上の高信頼の第1の座標は、例えば、順位中央2個又は3個の第1の座標であってよい。かかる構成によれば、LOS状態で検出された可能性が最も高い信号に基づいて携帯機100の存在エリアを推定することができるので、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。
【0095】
(第2の例)
制御装置300は、抽出された複数の高信頼の第1の座標のうち中央値付近の2つ以上の高信頼の第1の座標の各々に基づいて、携帯機100の2つ以上の存在エリアを推定してもよい。例えば、抽出された複数の高信頼の第1の座標のうち中央値付近の2つ以上の高信頼の第1の座標として、(Xm1,Ym1)及び(Xm2,Ym2)が得られたものとする。(Xm1,Ym1)に対応するエリアが運転席周辺エリアであり、(Xm2,Ym2)に対応するエリアが助手席周辺エリアである場合、制御装置300は、運転席周辺エリア及び助手席周辺エリアを、携帯機100の存在エリアとして推定してもよい。
【0096】
かかる推定結果は、携帯機100の存在エリアを1つに絞り切れていないものの、用途によっては十分な推定結果である可能性がある。そのような用途の一例として、携帯機100の存在エリアが運転席周辺エリア又は助手席周辺エリアである場合にドア錠を解錠する制御を実施する場合が挙げられる。
【0097】
(第3の例)
制御装置300は、抽出された複数の高信頼の第1の座標の各々に対応する複数のエリアから多数決をとることで、携帯機100の存在エリアを推定してもよい。例えば、下記の表3に示す高信頼の第1の座標と当該高信頼の第1の座標に対応するエリアとの組み合わせが得られたものとする。この場合、Dエリア(運転席周辺エリア)の数がPエリア(助手席周辺エリア)の数よりも多いため、制御装置300は、携帯機100の存在エリアはDエリアであると推定する。
【0098】
【0099】
かかる構成によっても、車載器200Aと車載器200Bとで得られた高信頼の第1の座標の数が拮抗しない場合、LOS状態である可能性が高い車載器200により得られたデータを優先的に参照することができる。その結果、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。
【0100】
(第4の例)
制御装置300は、ある閾値以上の数の高信頼の第1の座標が得られた車載器200により得られた第1の座標に基づいて、携帯機100の存在エリアを推定してもよい。換言すると、制御装置300は、得られた高信頼の第1の座標の数がある閾値に満たない車載器200により得られた第1の座標を、捨ててもよい。かかる構成によれば、LOS状態である可能性が高い車載器200により得られたデータのみを参照することができるので、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。
【0101】
<3.2.高信頼の第1の座標の抽出方法の変形例>
上記実施系形態では、信頼性パラメータにより示される信頼性がある閾値以上である第1の座標が、高信頼の第1の座標として抽出される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。他の例を以下に説明する。
【0102】
一例として、制御装置300は、直近の所定期間に取得された第1の座標、又は取得時刻が新しい上位所定個の第1の座標を、高信頼の第1の座標として抽出してもよい。携帯機100と車載器200との位置関係が時々刻々と変化し得ることを考慮すれば、かかる構成により、携帯機100の存在エリアの推定精度を向上させることが可能となる。取得時刻の新しさが、信頼性パラメータとして捉えられてもよい。
【0103】
他の一例として、制御装置300は、直近の所定期間に取得された第1の座標のうち、信頼性パラメータにより示される信頼性がある閾値以上である第1の座標を、高信頼の第1の座標として抽出してもよい。
【0104】
他の一例として、制御装置300は、直近の所定期間に取得された第1の座標のうち、信頼性パラメータにより示される信頼性がある閾値以上であって、信頼性パラメータにより示される信頼性が高い上位所定個の第1の座標を、高信頼の第1の座標として抽出してもよい。
【0105】
他の一例として、制御装置300は、直近の所定期間に取得された第1の座標のうち、信頼性パラメータにより示される信頼性がある閾値以上であって、取得時刻が新しい上位所定個の第1の座標を、高信頼の第1の座標として抽出してもよい。
【0106】
なお、所定個の第1の座標を抽出することは、車載器200A及び車載器200Bの各々から所定個ずつ第1の座標を抽出することを指していてもよい。他に、所定個の第1の座標を抽出することは、車載器200A及び車載器200Bから合計で所定個の第1の座標を抽出することを指していてもよい。
【0107】
<3.3.信頼性パラメータの変形例>
制御装置300は、第1の座標に基づいて推定された携帯機100の存在エリアと、第1の座標以外のパラメータに基づいて推定された携帯機100の存在エリアと、の一致度に基づいて、信頼性パラメータを計算してもよい。ここで、一致度が高いほど信頼性が高く、一致度が低いほど信頼性が低い。
【0108】
第1の座標は、上記実施形態において説明したように、車載器200により受信された無線信号の到来角に基づいて計算される。無線信号の到来角の計算に使用される位相には誤差が乗りやすいため、到来角に基づいて推定される第1の座標には誤差が含まれる可能性がある。
【0109】
第1の座標以外のパラメータの一例は、無線信号のToFに基づいて計算された測距値である。車載器200Aの座標と車載器200Aにより得られた測距値との組み合わせ、及び車載器200Bの座標と車載器200Bにより得られた測距値との組み合わせにより、携帯機100の座標及び携帯機100の存在エリアをおおまかに推定することができる。従って、第1の座標に基づいて推定された携帯機100の存在エリアと、無線信号のToFに基づいて計算された測距値に基づいておおまかに推定された存在エリアと、の一致度に基づいて、第1の座標の信頼性を評価することが可能となる。
【0110】
第1の座標以外のパラメータの他の一例は、無線信号の受信信号強度(例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator))である。車載器200が車室内に配置される場合、RSSIがある閾値より大きいか否かによって携帯機100の存在エリアが車室内又は車室外であるかをおおまかに推定することができる。従って、第1の座標に基づいて推定された携帯機100の存在エリアと、無線信号のRSSIに基づいておおまかに推定された存在エリアと、の一致度に基づいて、第1の座標の信頼性を評価することが可能となる。
【0111】
<4.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0112】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(詳しくは、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、本明細書において説明した各装置を制御するコンピュータによる実行時にRAM(Random Access Memory)に読み込まれ、CPU(Central Processing Unit)などの処理回路により実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。また、上記のコンピュータは、ASIC(application specific integrated circuit)のような特定用途向け集積回路、ソフトウエアプログラムを読み込むことで機能を実行する汎用プロセッサ、又はクラウドコンピューティングに使用されるサーバ上のコンピュータ等であってよい。また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、単数のコンピュータにより集中して処理されてもよく、複数のコンピュータにより分散して処理されてもよい。さらに、上記各実施の形態において、一の装置に存在する2以上の通信手段は、物理的に一の媒体で実現されてもよい。
【0113】
また、本明細書においてフローチャート又はシーケンス図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1:システム、100:携帯機、110:制御部、120:無線通信部、121:アンテナ、20:車両、200:車載器、210:制御部、220:無線通信部、221:アンテナ、300:制御装置、310:制御部、400:被制御装置