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  • 特開-垂直離着陸ガスタービンエンジン 図1
  • 特開-垂直離着陸ガスタービンエンジン 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005277
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】垂直離着陸ガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20250108BHJP
   B64D 27/12 20060101ALI20250108BHJP
   F01D 15/02 20060101ALI20250108BHJP
   F02C 6/10 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F02C7/00 F
B64D27/12
F01D15/02
F02C6/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105421
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】303001106
【氏名又は名称】高田 武幸
(72)【発明者】
【氏名】高田武幸
(57)【要約】
【課題】垂直離着陸可能な航空機において、燃費の良い水平飛行を可能にするには、ターボプロップエンジンを用いて、水平飛行するのが良い。さらに、垂直離着陸時には、大きな推力を発生させる事ができる、ターボファンエンジンを用いて、垂直離着陸するのが良い。従って、一つのガスタービンエンジンで、ターボプロップと、ターボファンの両方の役割を果たさせるのが課題である。
【解決手段】本発明の、垂直離着陸ガスタービンエンジンは、二つのバルブを、互いに閉じたり、開いたりする事で、垂直離着陸時は、大きな推力を発生させる事が可能なターボファンエンジンの形態と成り、水平飛行時は、燃費の良いターボプロップエンジンの形態と成る事ができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサー駆動用タービンと、フリータービンの間に、分岐管を設け、その分岐管にバルブを付け、そのバルブを通過した排気ガスの噴出で、揚力を発生させる事を特徴とする、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
上記請求項1の、ガスタービンエンジンにおいて、フリータービンを通過したガスの排気管にバルブを付ける事を特徴とする、ガスタービンエンジン。
【請求項3】
上記請求項1の、ガスタービンエンジンにおいて、分岐管とフリータービンとの間に、バルブを付ける事を特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項4】
上記請求項1の、ガスタービンエンジンにおいて、エンジン本体は主翼の下に配置し、エンジンの吸気口は、主翼の上に配置する事を特徴とする、ガスタービンエンジン。
【請求項5】
上記請求項1の、ガスタービンエンジンにおいて、分岐管に回転管接手を用い、排気ガスが噴出する方向を変える事を可能にしたガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直離着陸ガスタービンエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
垂直離着陸可能な航空機のガスタービンエンジンである。その実用例としては、アメリカ軍の戦闘機、ハリアーや、F-35B、などが有る。
【0003】
垂直離着陸可能な航空機に共通して言える事は、水平飛行時において燃費が悪い事である。例えばヘリコプターは垂直離着陸可能な航空機の代表であるが、水平飛行時の燃費は悪い。燃費の良い水平飛行を可能にするには、ターボプロップエンジンを用いるのが一番良い。従って、ターボプロップエンジンに、垂直離着陸機能を付加するのが最も有効な解決策である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-321794号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
垂直離着陸可能な航空機に共通して言える事は、水平飛行時において燃費が悪い事である。例えばヘリコプターは垂直離着陸可能な航空機の代表であるが、水平飛行時の燃費は悪い。燃費の良い水平飛行を可能にするには、ターボプロップエンジンを用いるのが一番良い。従って、ターボプロップエンジンに、垂直離着陸機能を付加するのが最も有効な解決策である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、垂直離陸時はターボファンエンジンと成り、水平飛行時はターボプロップエンジンと成る事を、最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の、垂直離着陸ガスタービンエンジンは、垂直離着陸時は、大きな推力を発生させるターボファンエンジンと成り、水平飛行時は、燃費の良いターボプロップエンジンと成る事を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の(実施例1)の垂直離着陸ガスタービンエンジンの断面図であり、プロペラ1による推進力により、水平飛行している時の図である。つまり、この時、本発明の垂直離着陸ガスタービンエンジンは、ターボプロップエンジンとして機能している。この時、中央バタフライバルブ12は閉じられ、前方バタフライバルブ14は開かれている。そして、中央排気口10は、後方に向けられている。
図2図2は、本発明の(実施例1)の垂直離着陸ガスタービンエンジンの断面図であり、垂直離着陸している時の図である。つまり、この時、本発明の垂直離着陸ガスタービンエンジンは、ターボファンエンジンとして機能している。この時、中央バタフライバルブ12は開けられ、前方バタフライバルブ14は閉じられている。そして、中央排気口10は、下方に向けられている。従って、排気ガスは下方に向かって噴出している。
図3図3は、本発明の(実施例2)の垂直離着陸ガスタービンエンジンの断面図である。プロペラ1による推進力により、水平飛行している時の図である。つまり、この時、本発明の垂直離着陸ガスタービンエンジンは、ターボプロップエンジンとして機能している。この時、中央バタフライバルブ12は閉じられ、プロペラ1を駆動するフリータービン3の前に有る、フリータービン前バタフライバルブ16は開かれている。そして、中央排気口10は、後方に向けられている。プロペラ1を駆動するフリータービン3を回転させた後の排気ガスは、前方排気口13より排気される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、垂直/短距離離着陸機に用いられる、ガスタービンエンジンに関するものである。本発明を簡単に説明すれば、ターボプロップエンジンを有する、垂直離着陸機である。つまり、本発明は、ターボプロップエンジンに、垂直離着陸機能を付加したものである。ターボプロップエンジンだけでなく、ダクテッドファンエンジンや、ターボファンエンジンにも、本発明は応用可能である。
【0010】
垂直離着陸機の多くは、垂直離着陸(VTOL)だけでなく短距離離着陸(STOL)にも対応しているが、本発明の垂直/短距離離着陸機も、その例外ではない。このような機体は垂直/短距離離着陸機と称される。
【0011】
既に、実施された、垂直/短距離離着陸機の事例は、米軍の戦闘機F-35Bが有名である。ジェットエンジンの推力は、排気ジェット速度とその空気流量の積に比例する。一方でジェットエンジンの燃料流量は、排気ジェット速度の2乗とその空気流量の積に比例して増す。ここで、推力が同じターボジェットエンジンとターボファンエンジンがあるとした場合、極端な想定ではあるが、ターボファンの排気噴流速度がターボジェットのそれの1/2だとすると、ターボファンの燃料流量はターボジェットに比べて1/4になる。
【0012】
ジェットエンジンのノズルの先端が狭くなる機構をコンバージェンス、逆に広がる機構をダイバージェンスと言う。ジェットエンジンのノズルの可変断面積機構を有するノズルをコンバージェンス・ダイバージェンス・ノズルと言い、略してコン・ダイ・ノズルと言う。殆ど全てのジェット戦闘機がコン・ダイ・ノズルを有している。
【0013】
通常のジェットエンジンは、エアインテークから流入した空気をまずコンプレッサー(compressor)で圧力を高め(副次的に温度も)、燃焼室(combustion chanber)で空気流を燃焼させ、急速に高温・高速となった空気流はタービン(turbine)を通過することによってコンプレッサーを駆動する軸出力を与え、最後にノズル(Nozzle)から排出し、その反作用によって推力を得る。
【0014】
このときに得られる推力は、空気流の圧力と流速の2条に比例する。すなわち、ノズルから出る気流の速度が速い方が、推力も大きくなる。コン・ダイ・ノズルの役割は、ノズルの断面積を変化させて、推力を変化させる事にある。先端が狭くなる機構をコンバージェンス(絞り)、逆に広がる機構をダイバージェンス(開口)と言う。
【0015】
しかし、旅客機のジェットエンジンは、コン・ダイ・ノズルではない。旅客機は最大推力を発揮するのは離陸時のみであり、飛行の大部分を占める巡航時は殆ど一定の推力を保っている。つまり、旅客機の場合は巡航時にあわせて固定のコンバージェンス(絞り)さえ持っていれば、基本的に事足りる。離陸時は多少、推力低下に成るが、無駄な可変機構を減らすことができれば、生産工数もメンテナンスに当てる時間も費用も少なくて済む。
【0016】
戦闘機が有するアフターバーナーとは、ノズルの直前において空気流を再燃焼(リヒート)させる装置であり、非常に高温で体積の膨張した空気流が生成する。アフターバーナーの高温の空気流は、燃焼室からタービンを経由してアフターバーナーにまで達する空気流を逆に押し戻してしまうので、アフターバーナー使用中は、ノズルの断面積は大きくして、アフターバーナーの空気流を速やかに排出した方が良い。そうする事で大きな推力を得る事ができる。
【0017】
推力偏向方式の垂直離着陸機である、米軍の戦闘機F-35Bは、コン・ダイ・ノズルを有し、アフターバーナーも有している。
【0018】
本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機においても、アフターバーナーを使用して、大きな推力を得る事は可能である。
【0019】
米軍の戦闘機F-35Bや、同じく米軍の垂直離着陸機ハリアーもそうであるが、垂直離着陸機には、推力偏向式が多い。推力偏向式は、離陸着陸の際には推力で直接機体を持ち上げ、水平飛行時には推力を進行方向へとスイッチする機体である。
【0020】
この種の機体の推力方向の切り替えはティルトローターやハリアーのようにプロペラやローターあるいはジェット噴射の向きを90°程度回転させて行うというものが多い。米軍の戦闘機F-35Bも、排気ダクトを約90°まで屈曲させることができる。
【0021】
F-35Bは、短距離離陸、垂直着陸 (STOVL)であり、前方に垂直上昇用のリフトファンを備えている。そのリフトファンを駆動するには、F-35Bの本体のターボファンエンジンからの延長軸と、延長軸に付いたクラッチを介して駆動する。
【0022】
本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機においても、プロペラ1に、駆動力を伝えたり、伝えなかったりできるが、それはクラッチによるものではなく、従って、クラッチを必要としない。
【0023】
垂直着陸時には、エンジンの全てのエネルギーを垂直方向の力を発生させる為に使い。離陸した後、水平飛行に移れば、前進用プロペラ1を回転させて飛行した方が、推進効率が良い。
【0024】
何故なら、推力が同じターボジェットエンジンとターボファンエンジンがあるとした場合、極端な想定ではあるが、ターボファンの排気噴流速度がターボジェットのそれの1/2だとすると、ターボファンの燃料流量はターボジェットに比べて1/4になるからである。
【0025】
つまり、プロペラ1のような大直径の推進器を利用した方が、燃料消費量は少なくて済む。何故なら、同じ推力なら、プロペラ1のような大直径の推進器の方が、排気流速度を遅くできるからである。
【0026】
本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機用エンジンは、多くのターボプロップエンジンが、そうであるように、圧縮機駆動用タービン軸と、プロペラ駆動用タービン軸を共有しない、別な2軸構成となっている。
【0027】
従って、圧縮機駆動用タービン6の回転速度に影響されることなくプロペラ1を回転させることが可能となっている。それぞれのタービン軸が最適な回転数で回転できることにより、前方排気口13のジェット噴射ガスに残っているエネルギーは、プロペラ推力を含めた総出力の10%以下にまで減少できる。
【0028】
図では、プロペラ駆動用のフリータービン3を回転させた後の排気ガスは、下方に廃棄されているが、多くのターボプロップエンジンのように、エンジンの両サイドから、後方に向けて廃棄しても良い。
【0029】
本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機は、垂直離着陸時に機体を安定させる必要が有るが、それは主翼に4基以上の上昇用プロペラを装備して行う。これはドローンが行っている機体の安定方法と同じである。
【実施例0030】
図1は、本発明の垂直離着陸ガスタービンエンジンの実施例であって、水平飛行時の形態である。吸気口7より流入した空気は、コンプレッサー8により圧縮され、燃焼室9で高温のガスと成り、コンプレッサー駆動タービン6を回転させる。
【0031】
その後、排気ガスは、アフターバーナー4に入るが、分岐管17に付いた、中央バタフライバルブ12は閉じていて、前方排気口13に付いた、前方バタフライバルブ14は開いているので、排気ガスは、プロペラ1を駆動するフリータービン3を回転させ、前方排気口13から出て行く。
【0032】
フリータービン3によって駆動された回転軸15は、減速機2を介してプロペラ1を回転させる。つまり、この時、この垂直離着陸ガスタービンエンジンは、ターボプロップエンジンとして機能している。そして燃費の良い水平飛行を可能にしている。
【0033】
図2は、図1と同じ実施例であるが、垂直離着陸時の形態である。垂直離着陸する為に、中央排気口10は下を向いている。中央排気口10は、回転管接手11の回転によって、排気口を後方に向けたり、下方に向けたりできる。
【0034】
この時、中央排気口10から排気ガスを噴出させる為に、中央バタフライバルブ12は開かれ、逆に、前方バタフライバルブ14は閉じられている。前方バタフライバルブ14が閉じられるので、排気ガスはフリータービン3を駆動せず、従ってプロペラ1も回転しない。この時、大推力を発生させる為、アフターバーナー4に燃料を吹き込み、推力を増大させる事ができる。
【実施例0035】
図3は、本発明の垂直離着陸ガスタービンエンジンの、別な実施例であって、水平飛行時の形態である。フリータービン前バタフライバルブ16が、フリータービン3のすぐ近くに有り、このフリータービン前バタフライバルブ16を閉じる事で、フリータービン3に行く排気ガスを止める事ができる。
【0036】
もちろん、図のような水平飛行時には、フリータービン前バタフライバルブ16は開かれており、中央バタフライバルブ12は閉じられている。従って、フリータービン3を駆動した排気ガスは、前方排気口13から排気される。
【0037】
この前方排気口13は、図のように、下方に向けるのではなく、現在、多くのターボプロップエンジンが、そうしているように、エンジンの両サイドに付けて、後方に向けて排気する事も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機の利用分野は、今まで、ドローンや、ヘリコプターが行っていた分野で利用可能である。
【0039】
本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機は、ヘリコプターよりも、高速で、かつ、燃費が良く、長距離を移動できる。さらに、ヘリコプターよりも構造が簡単なので、故障も少ない。
【0040】
本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機は、大きな推力を発生させるアフターバーナー4を使用して、垂直/短距離離着陸する事も可能であるが、アフターバーナー4を使用すると、高温の噴射排気ガスを滑走路面に吹き付けてしまうので、滑走路を傷める事に成り、通常の滑走路では、アフターバーナー4を使用しての、垂直/短距離離着陸はできない。
【0041】
そこで、本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機は、水陸両用機にする事が望ましい。何故なら、水面、あるいは海面への垂直/短距離離着水なら、滑走路を傷める心配が無く、アフターバーナー4を使えるからである。
【0042】
しかし、湖面、あるいは、海面でなければ、垂直/短距離離着水できないと言うのは不便である。そこで、全国の各地に、直径50m,深さ1.5m程度のプールを造り、そこで、アフターバーナー4を用いて、垂直離着水させれば良い。
【0043】
なお、水上機が、プロペラで水面を叩くのは、故障の原因と成るので、避けるべきであるが、本発明においては、垂直/短距離離着水時には、プロペラ1は停止しているので、その心配は無い。
【0044】
更に、海面に着水時、エンジンの中に海水が入る心配も無い。何故なら、吸気口は主翼の上の高い位置に有るし、排気口はバルブを閉じて、海水が入らないようにできるからである。
【0045】
以上のようなわけで、本発明の、ターボプロップエンジンに垂直離着陸機能を付加した、垂直/短距離離着陸機は、水陸両用機にする事が望ましい。水陸両用機であれば、万一の場合、海面に不時着水する事も可能だし、さらに、本機は垂直離着水可能であるから、荒天時の波高が高い場合でも、安全に着水可能だからである。
【符号の説明】
【0046】
1.プロペラ
2.減速機
3.プロペラ駆動用フリータービン
4.アフターバーナー
5.主翼
6.コンプレッサー駆動用タービン
7.吸気口
8.コンプレッサー
9.燃焼室
10.中央排気口
11.回転管接手
12.中央バタフライバルブ
13.前方排気口
14.前方バタフライバルブ
15.回転軸
16.フリータービン前バタフライバルブ
17.分岐管
図1
図2
図3