(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005320
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】冷凍容器及びそれを備えた冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25D 9/00 20060101AFI20250108BHJP
F25D 17/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F25D9/00 B
F25D17/02 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105516
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】520228119
【氏名又は名称】株式会社ステータスプラン
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】奥野 浩
(72)【発明者】
【氏名】津久井 真奈美
【テーマコード(参考)】
3L044
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA05
3L044CA04
3L044DB02
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】既存の冷凍庫を用いて不凍液により冷凍することが可能となる冷凍容器及びそれを備えた冷凍装置の提供。
【解決手段】冷凍庫内に設置可能であり、不凍液を溜めることが可能な冷凍容器であって、
不凍液を溜める貯留部と、
前記貯留部の外側に設けられて冷凍庫の内面に向けて突出する突出部と、
を備える冷凍容器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍庫内に設置可能であり、不凍液を溜めることが可能な冷凍容器であって、
不凍液を溜める貯留部と、
前記貯留部の外側に設けられて冷凍庫の内面に向けて突出する突出部と、
を備える冷凍容器。
【請求項2】
前記突出部は、冷凍庫の内側の底面に対向する位置に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項3】
前記貯留部における上側の端部に設けられるフランジ部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項4】
前記突出部は、上下方向に沿って形成される突条に形成される、
ことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項5】
前記突出部は、磁石である、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項6】
前記突出部は、第1の突出長さの第1突出部と、前記第1の突出長さとは異なる第2の突出長さの第2突出部とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項7】
前記貯留部は、第1深さに形成された第1貯留部と、前記第1深さとは異なる第2深さに形成された第2貯留部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項8】
内側に冷凍対象物を収容する収容部と、
前記収容部に設けられ前記収容部内を冷却する冷却部と、
前記収容部内に設置され、不凍液を溜めることが可能な貯留部を備えた容器と、
前記容器の外側に設けられて前記収容部の内面に向けて突出する突出部と、
を備える冷凍装置。
【請求項9】
前記容器の壁面に対し回動自在に設けられた持ち手部を備え、
前記持ち手部は、前記壁面から下垂した状態における前記壁面からの突出長さが、前記持ち手部が設けられた前記壁面と、前記壁面に対向する前記収容部の壁面の隙間の幅よりも長くなるように形成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の冷凍装置。
【請求項10】
前記持ち手部を倒立させた状態における突出長さが、前記持ち手部が設けられた壁面と、前記壁面に対向する前記収容部の壁面の隙間の幅よりも短くなるように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の冷凍装置。
【請求項11】
前記貯留部は、複数の板状部材を用いた箱状に構成され、
前記冷却部に対向する板状部材の板厚は、他の板状部材と比較して厚い、
ことを特徴とする請求項8または9に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を冷媒とする急速凍結に用いられる冷凍容器とそれを備えた冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を氷点下まで冷却した液体(不凍液)により急速に凍結させ、冷凍によるダメージを防ぐことを目的とする、いわゆるブライン式の急速凍結機が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
しかし、これらのものは、装置自体が大型で複雑化するうえ、高コストとなり、設備の導入は容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-121178号公報
【特許文献2】特許第6854556公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、既存の冷凍庫を利用し、不凍液により冷凍することが可能となる冷凍容器及びそれを備えた冷凍装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、冷凍庫内に設置可能であり、不凍液を溜めることが可能な冷凍容器であって、不凍液を溜める貯留部と、前記貯留部の外側に設けられて冷凍庫の内面に向けて突出する突出部とを備える冷凍容器である。
【0007】
また、本発明は、前記突出部が、冷凍庫の内側の底面に対向する位置に設けられることを特徴とする冷凍容器である。
【0008】
また、本発明は、前記貯留部における上側の端部にフランジ部を備えることを特徴とする冷凍容器である。
【0009】
また、本発明は、前記突出部が、上下方向に沿って形成される突条に形成されることを特徴とすることを特徴とする冷凍容器である。
【0010】
また、本発明は、前記突出部が磁石であることを特徴とする冷凍容器である。
【0011】
また、本発明は、前記突出部が前記冷凍容器の外面において複数設けられ、前記突出部の突出長さが異なることを特徴とする冷凍容器である。
【0012】
また、本発明は、前記貯留部が第1深さに形成された第1貯留部と、第1深さとは異なる第2深さに形成された第2貯留部とを有することを特徴とする冷凍容器である。
【0013】
また、本発明は、内側に冷凍対象物を収容する収容部と、前記収容部に設けられ前記収容部内を冷却する冷却部と、前記収容部内に設置され、不凍液を溜めることが可能な貯留部を備えた容器と、前記容器の外側に設けられて前記収容部の内面に向けて突出する突出部とを備える冷凍装置である。
【0014】
また、本発明は、前記容器の壁面に対し回動自在に設けられた持ち手部を備え、前記持ち手部は、前記壁面から下垂した状態における前記壁面からの突出長さが、前記持ち手部が設けられた前記壁面と、前記壁面に対向する前記収容部の壁面の隙間の幅よりも長くなるように形成されていることを特徴とする冷凍装置である。
【0015】
また、本発明は、前記持ち手部を倒立させた状態における突出長さが、前記持ち手部が設けられた壁面と、前記壁面に対向する前記収容部の壁面の隙間の幅よりも短くなるように形成されていることを特徴とする冷凍装置である。
【0016】
さらに、本発明は、前記貯留部は、複数の板状部材を用いた箱状に構成され、前記収容部に設けられる冷却部に対向する板状部材の板厚は、他の板状部材と比較して厚いことを特徴とする冷凍装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る冷凍容器及び冷凍装置は、既存の冷凍庫を利用して不凍液による冷凍が可能となるため、既存の冷凍庫の設置スペースさえ確保すればよく、また、大幅に導入コストを抑えることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る冷凍装置の冷凍庫部分のみ断面図で表した図である。
【
図2】本発明に係る冷凍装置を構成する冷凍庫の断面図である。
【
図3】本発明に係る冷凍容器の第一実施形態の斜視図である。
【
図4】(A)本発明に係る冷凍容器の第一実施形態(但し、突出部は省略する)の正面図、(B)本発明に係る冷凍容器の第一実施形態(突出部は省略)の側面図である。
【
図5】(A)本発明に係る冷凍容器の第二実施形態(突出部は省略)の正面図、(B)本発明に係る冷凍容器の第二実施形態(突出部は省略)の側面図である。
【
図6】本発明に係る冷凍容器と冷凍庫の内面の隙間における冷気の流れを表した部分拡大断面図である。
【
図7】(A)本発明に係る冷凍容器の第三実施形態(突出部は省略)の正面図、(B)本発明に係る冷凍容器の第三実施形態(突出部は省略)の側面図である。
【
図8】第三実施形態(突出部は省略)の冷凍容器の一部拡大側面図である。
【
図9】(A)第三実施形態(突出部は省略)の冷凍容器を冷凍庫の収容部内に設置する途中の状態を表した図、(B)第三実施形態(突出部は省略)の冷凍容器を冷凍庫の収容部内に設置した状態を表した図である。
【
図10】本発明に係る冷凍容器の変形例の斜視図である。
【
図11】本発明に係る冷凍容器の第四実施形態の断面図である。
【
図12】本発明に係る冷凍装置に用いられるバスケットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の冷凍容器及びそれを利用する冷凍装置の実施形態を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施形態に何ら制約されるものではない。
【0020】
<冷凍装置1>
図1は、本発明に係る冷凍装置1の冷凍庫10部分のみ断面図で表した図であり、
図2は、冷凍庫10の断面図である。
図1に示すように、本発明に係る冷凍装置1は、内側に冷凍対象物を収容する収容部111を有する冷凍庫10と、収容部111内に設置され、不凍液を溜めることが可能な貯留部31を有する冷凍容器30を備える。そして、冷凍容器30の外側には、冷凍庫10の内面に向けて突出する突出部40が設けられている。冷凍装置1を構成する各部の詳細は以下の通りである。
【0021】
<冷凍庫10>
図2に示すように、第一実施形態の冷凍庫10は、内部に冷凍容器30を設置可能な収容部111を備え、かかる収容部111の上部開口118を封止するために上開き可能な扉12が設けられている。なお、本発明の冷凍容器30を収容する冷凍庫10はこのタイプに限定されず、扉12がスライド開閉可能なタイプのものであってもよい。さらに、冷凍庫10の開口および扉12は上部に限らず、冷凍庫10の正面であってもよい。
【0022】
本実施形態の冷凍庫10は、コンプレッサー20を収容するスペースを確保するために、収容部111内の底面に段差が設けられ、より深く形成された第一収容部111aと、より浅く形成された第二収容部111bとを形成している。なお、冷凍庫10はこのタイプに限定されず、収容部111内に段差を有さないものであってもよい。
【0023】
また、本実施形態の冷凍庫10は、上部開口118の縁部に沿って、開口を封止するための内蓋13を落とし込んでその端部を載置可能な内蓋受け部117が形成されている。さらに、収容部111の底面116には外部に連通する排水口15が設けられている。
【0024】
さらに、壁面114部分には、収容部111内の温度を測定するための温度センサーが設けられている(図示せず)。なお、温度センサーを設ける場所は壁面114に限らず、その他の壁面等に設けてもよい。
【0025】
本発明の冷凍容器30を設置するための冷凍庫10は、より冷却能力が高く、収容部111内を内壁面から直接冷却する直冷式の冷凍庫を利用することが好ましい。直冷式の冷凍庫を使用する場合、ファン式の冷凍庫とは異なり、庫内の温度差を利用した自然対流で冷却するため、かかる冷気の対流を確保することがより重要となる。
【0026】
<冷凍容器30>
図3は、第一実施形態の冷凍容器30の斜視図、
図4(A)は第一実施形態の冷凍容器30の正面図、
図4(B)は同冷凍容器30の側面図である。なお、
図4では、後述する突出部40を省略している。図に示すように、第一実施形態の冷凍容器30は、板状部材からなる壁面321、壁面322、壁面323、壁面324、壁面325及び底面331、底面332により、内部に不凍液(ブライン液)を貯留可能な貯留部31を有する有底箱型に形成されている。本実施形態では、壁面321~壁面325及び底面331、底面332はいずれも同じ厚みの板厚に形成されている。
【0027】
本発明に係る冷凍容器30は、適用する冷凍庫10の内部形状にほぼ沿った形状に形成されており、第一実施形態の冷凍容器30は、
図1、2の収容部111の内部形状に沿って形成されている。また、冷凍容器30は、貯留部31において深さの異なる領域を備えてもよく、本実施形態では、第一深さに形成された第一貯留部31aと、第二深さに形成された第二貯留部31bとを備える。このように、貯留部31内において深さの異なる領域を備えることにより、長さの異なる対象物を同時に冷凍することができる。また、対象物のサイズが比較的大きいものは深い方の第一貯留部31aに収容し、サイズが比較的小さいものは浅い方の第二貯留部31bに収容することで、小さい対象物であっても貯留部31から取り出すことが容易となる。
【0028】
冷凍容器30は、その壁面321~壁面325、底面331、底面332と、冷凍庫10の収容部111の内面との間に、隙間G(
図1参照)を形成することが可能な外寸に形成されている。なお、ここで「収容部111の内面」には、
図2に示された内壁面112、内壁面113、内壁面114、底面115、底面116のほか、底面115、116の周縁部から立設された壁面であって、
図1では記載が省略されたその他の壁面も含まれる。
【0029】
本実施形態の冷凍容器30の壁面321、壁面322、壁面324及び壁面325は、それら壁面の上端が、収容部111の内壁面112や内壁面113の上端とほぼ揃うように形成されている。そして、それらの壁面321、壁面322、壁面324、壁面325の上端からは、冷凍容器30の上部開口からみて外側へ略水平方向に突出するフランジ34が形成されている。なお、ここで冷凍容器30の壁面の上端と、収容部111の内壁面の上端が「ほぼ揃う」とは、それらの高さが厳密に一致する場合に加え、冷凍容器30の壁面の上端が収容部111の内壁面の上端よりもやや高く形成される場合も含まれる。例えば、冷凍容器30の壁面の上端の方を、フランジ34の板厚分、高く形成してもよい。
【0030】
図1に示すように、フランジ34は、冷凍容器30を冷凍庫10内に設置した際に、冷凍庫10の開口縁部に設けられた内蓋受け部117上に載置される。これにより、冷凍容器30と冷凍庫10の隙間Gが上部において塞がれ、仮に貯留部31内の不凍液が外部に漏れ出た場合も、収容部111と冷凍容器30の隙間Gに不凍液が入り込むことを防ぐことができる。また、冷凍庫10の扉12(内蓋13を備えている場合は内蓋13)を開いた際に、収容部111と冷凍容器30の隙間Gに貯留する冷気が冷凍庫10外に逃げることを防ぐことができる。なお、本実施形態では、フランジ34は略水平に突出して形成されているが、略水平に限らず、外側が高く、内側が低くなるように傾斜していてもよい。フランジ34の外側を高く形成することにより、フランジ34上にこぼれ出た不凍液が自然に冷凍容器30内に流れ込み、外部への漏れを防ぐことができる。
【0031】
本実施形態では、冷凍容器30の壁面321、壁面322、壁面324、壁面325の上端と、収容部111の内壁面112、内壁面113の上端が、ほぼ揃うように形成されているが、かならずしもこれを揃えなくてもよく、壁面321、壁面322、壁面324、壁面325の上端を内壁面112、内壁面113の上端よりも下位になるように設けてもよい。その場合、各壁面にはフランジ34を設けなくてもよい。
【0032】
また、冷凍容器30の壁面321~壁面325、底面331、底面332は、すべて同じ厚さの板状部材で形成してもよいが、それらの一部を異なる厚さのものとしてもよい。例えば、収容部111の各壁面のうち、冷却パイプがその裏側に設けられている部分はその他の冷却パイプを設けていない部分に比べてより壁面から冷却が強くなるため、冷却パイプを設けた壁面と対向する冷凍容器30の壁面の板厚を他の壁面よりも厚くしてもよい。このように、冷凍容器30の一部の壁面の板厚を厚くすることで、この壁面からの冷却効率も下がる。その結果、冷却パイプが設けられていない壁面や底面に対向する冷凍容器30の壁面との冷却のムラを解消することができる。
【0033】
また、冷凍容器30の壁面で、収容部111内に設けられた温度センサー(図示せず)が設けられた壁面と対向する壁面には、かかる温度センサーと対応する領域において壁面の外側から貯留部31側へ向かって凹陥する凹部を形成してもよい。このように、温度センサーの前の壁面を内側へ凹陥させ、冷凍容器30の壁面と温度センサーとの間に一定の空間を設けることにより、温度センサーによるより正確な測定が可能となる。
【0034】
また、冷凍容器30のいずれかの壁面には、冷凍容器30の運搬時に保持することができるように保持部35を設けてもよい。本実施形態では、壁面321、壁面324の一部を冷凍容器30の外側方向に向けて凹陥させ、貯留部31側から指をかけて保持可能な保持部351が形成されている。さらに、冷凍容器30の各壁面の内側には、内部に収容する不凍液の適切な量を表示するロードライン36が設けられている。なお、保持部351の位置は、ロードライン36よりも上に設けることが好ましい。このように、保持部351をロードライン36よりも上に設けることにより、保持部351を手で保持する際に不用意に不凍液に触れることを防ぐことができる。
【0035】
<突出部40>
本発明の冷凍容器30の外側には、冷凍庫10の内面に向けて突出する突出部40が設けられている。かかる突出部40がスペーサーの役割を果たし、冷凍容器30と冷凍庫10との間に隙間Gを形成することができる。なお、ここで「冷凍庫10の内面」とは、
図2に示された内壁面112、内壁面113、内壁面114、底面115、底面116のほか、
図1で記載が省略されたその他の壁面部も含むものとする。
【0036】
このように、冷凍容器30の外側に、冷凍庫10の内面に向けて突出する突出部40を設けることにより、冷凍庫10の内面との間に隙間Gが確保され、かかる隙間Gにおいて、収容部111内における冷気の自然対流が確保される(
図6参照)。また、冷凍容器30の底面37と収容部111の底面116との間に隙間Gが確保されることにより、排水口15が塞がれることを防ぐことができる。さらに、冷凍容器30の外側に、冷凍庫10の内面に向けて突出する突出部40を設けることにより、センサーとの間に隙間Gが設けられ、温度センサーによるより正確な測定が可能となる。
【0037】
冷凍容器30の外側と冷凍庫10の内面との間の隙間Gは、冷凍容器30のすべての壁面及び底面と、冷凍庫10のすべての内壁面及び底面との間に設けることが好ましい。さらに、隙間Gは、隙間Gが形成される壁面や底面における面の一部ではなく、それらの全面にかけて設けることが好ましい。
【0038】
第一実施形態の突出部40は、冷凍容器30に対して着脱可能な磁石により形成されている。かかる突出部40の取り付け位置や、取り付け数は任意だが、少なくとも取り付ける壁面もしくは底面の四隅に取り付けることが好ましい。また、必要に応じて、壁面や底面の中央やその他の部分に取り付けてもよい。また、本実施形態では、突出部40は磁石より着脱可能に設けられているが、磁石以外の材質のもので突出部40を形成し、冷凍容器30の壁面や底面に溶接、接着、その他の固定方法により固定し、あるいは一体に設けてもよい。
【0039】
なお、突出部40は、磁石などにより着脱可能な構成とする場合、磁石を取り付ける位置を示す表示を壁面321から壁面325、底面331、底面332の外面に設けてもよい。
【0040】
本実施形態の突出部40は円板状に形成されているが、形状はこれに限定されず、四角板状やその他の多角板状、または突出面が曲面に形成されたドーム状のものであってもよい。さらに、突出部40の寸法は任意に設定することができるが、その突出長さにより冷凍容器30と冷凍庫10の内面との隙間が規定されるため、特に重要となる。すなわち、突出部40の突出長さを長く形成することで、冷凍庫10の内面との隙間Gがより広くなり、逆に、突出部40の突出長さを短く形成することにより、隙間がより狭くなる。
【0041】
突出部40の大きさ(面積)は特に限定されないが、底面331、底面332に設けられた突出部40には荷重が集中することが考えられる。そこで、かかる荷重を適切に分散するためにも、底面331、底面332に設ける突出部40は、壁面321~壁面325に設ける突出部40よりも面積が大きくなるように形成し、荷重を分散させることが好ましい。
【0042】
また、突出部40は、壁面321~壁面325、底面331、底面332の一部を貯留部31側から外側に向けて凸となるように変形させることで一体に形成してよい。
【0043】
かかる突出部40の突出長さは、すべての突出部40において同一としても良いが、突出部40を設ける場所に応じて変えてもよい。例えば、冷凍庫の冷却パイプが設けられている面と設けられていない面において突出長さを変えてもよく、具体的には、冷凍容器30の壁面321~壁面325に設けた突出部40の第一突出長さに対し、底面331、底面332に設けた突出部40の第二突出長さをより長く形成してもよい。このように、突出部40の突出長さを部位ごとに調整することで、より広い隙間Gとなった面では庫内の冷気の対流がより促進され、一方、より狭い隙間となった面では冷気の対流が滞る。その結果、冷凍庫の冷却パイプが設けられていない底面において、冷却パイプが設けられている壁面よりも冷気の対流が促進され、冷凍容器30の壁面側と底面側においてムラなく冷却することができる。
【0044】
突出部40は必ずしも冷凍容器30のすべての面に設ける必要はない。例えば、第一実施形態のように、壁面321、壁面324より外側へ突出する保持部35を設け、かかる保持部35がスペーサーとなって必要な隙間が形成される場合は、この壁面には突出部40を設けなくてもよい。
【0045】
図5は、本発明に係る冷凍容器30の第二実施形態で突出部40を省略したものを示す。第二実施形態の冷凍容器30は、貯留部31がすべての領域において同じ深さに形成されている。第二実施形態の冷凍容器30は、第一実施形態のものと比べて深さが浅く形成されているため、深さが浅い冷凍庫に好適に使用することができ、例えば、家庭用の冷蔵庫に備わっている冷凍庫内に収容して使用することができる。
【0046】
図7は、本発明に係る冷凍容器30の第三実施形態で突出部40を省略したものを示す。第三実施形態の冷凍容器30は、壁面321、壁面324の外側に、それぞれ持ち手部352が設けられている。持ち手部352は、左右一対の第一持ち手部352aと、第一持ち手部352aの先端から延伸し、左右の持ち手部352aを繋げる持ち手部352bとから構成される。
【0047】
持ち手部352は、壁面321、壁面324に対して下垂させたときに、第一持ち手部352aが壁面321、壁面324に対して略平行に配置されるのに対し、第二持ち手部352bは第一持ち手部352aの先端から壁面321、壁面324に対し離間する方向へ屈曲し、そのまま延伸するように形成されている。
【0048】
本実施形態の持ち手部352は、第一持ち手部352aの基端側が取り付け金具352cを介して壁面321、壁面324に軸支されている。これにより、持ち手部352は、壁面321、壁面324に対して上下方向に回動自在となっている。
【0049】
本実施形態の持ち手部352の形状や寸法は任意に決定することができるが、持ち手部352を壁面321、壁面324に対して下垂させた状態で、持ち手部352の壁面321、壁面324からの突出長さH1(
図8参照)が、収容部111の内面と壁面321、壁面324との隙間の幅Gよりも長くなるように形成し、且つ、持ち手部352を跳ね上げて倒立させた状態で、持ち手部352の突出長さH2(
図8参照)が、収容部111の内面と壁面321、壁面324との隙間の幅Gよりも短くなるように形成してもよい。
【0050】
本実施形態の持ち手部352は、冷凍容器30を収容部111の内部に設置する際や、あるいは、収容部111から取り外す際には、第二持ち手部352b側が上方へくるように跳ね上げた状態で保持されるが、
図9(A)のように、持ち手部352を壁面から下垂した状態で収容部111内に冷凍容器30を挿入しようとした場合でも、持ち手部352bの先端部が壁面の上端部に当接し、そのまま挿入を進めても持ち手部352が上方へ回動して倒立し(
図9(B)の矢印方向)、最終的には収容部111内に収容される。これにより、持ち手部352が下垂した状態でうっかり収容部111内に設置してしまい、取り出す際に隙間に入り込んだ持ち手部352に手が届かなくなることを防ぐことができる。
【0051】
本実施形態では、持ち手部352は冷凍容器30の壁面の外側に設けられているが、これを壁面の内側に設けてもよい。また、壁面の外側もしくは内側のいずれに設けるかに関わらず、持ち手部352の位置はロードライン36よりも上方であることが好ましい。このようにロードライン36よりも持ち手部352が上方にあることで、持ち手部352に冷気が直接伝わることを防ぐことができ、万が一、不凍液が完全に冷えた状態で持ち手部352に触った場合でも、冷凍火傷などを防ぐことができる。
【0052】
本発明の冷凍容器30は、内部に不凍液を貯留でき、熱伝導率が高い金属性であればその材質について限定されることはないが、腐食に強いステンレスが好ましく、特に、磁性を有するステンレスが好ましい。
【0053】
<変形例>
図10は、本発明に係る冷凍容器30の変形例を表す斜視図である。この実施形態のものは、突出部402が、各壁面の上下方向に沿って突条に延伸するように形成されている。かかる突出部402は、壁面321~壁面325に対して略直角に切立つように設けられた長尺板状の部材であり、冷凍庫10の内面に向けて突条に突出する。突出部402は、壁面321~壁面325において、予め定められた間隔を有して、複数列に設けられている。さらに、突出部402は、底面331、底面332に設けても良い。この場合、突出部402は、底面331、底面332に対して略直角に切立つように設けられた長尺板状の部材であり、冷凍庫10の庫内の底面115、底面116に向けて突条に突出する。
【0054】
このように、壁面に対して縦方向の突条に突出部402を形成することにより、上下方向に移動する冷気の対流を妨げることなく、さらに、壁面の表面積も増え、冷却効率が向上する。また、かかる突出部402はリブとしての機能も果たすことにより、容器としての強度も高まる。
【0055】
図11は、本発明に係る冷凍容器30の第四実施形態を表す断面図である。この実施形態のものは、1つの冷凍庫10内に2つの冷凍容器30a、冷凍容器30bが収容可能に形成されている。冷凍容器30a、冷凍容器30bはそれぞれ突出部40を有し、冷凍庫10の内面との間に隙間Gを形成するように設けられ、さらに、冷凍容器30a、冷凍容器30b同士にも隙間Gが形成されるように、それらの間に突出部40が設けられている。
【0056】
なお、冷凍容器30a、冷凍容器30bの各壁面の上端にはフランジ34を設けてもよい。このように、冷凍容器30a、冷凍容器30bにフランジ34を設けることで、冷凍庫10の内面との隙間Gだけでなく、冷凍容器30aと冷凍容器30bとの間の隙間Gの上部も塞がれ、冷凍容器30aと冷凍容器30bの隙間Gに不凍液が入り込むことを防ぐことができる。また、冷凍庫10の扉12(内蓋13を備えている場合は内蓋13)を開いた際に、冷凍庫10の内面との隙間Gや冷凍容器30aと冷凍容器30bの隙間Gに貯留する冷気が冷凍庫10外に逃げることを防ぐことができる。
【0057】
<バスケット90>
冷凍容器30を収容部111内に設置した後、収容部111内にはバスケット90を設けてもよい。
図12に示すように、バスケット90は、ワイヤー状の部材を籠状に形成したものであり、その左右両端部には上方へ突出し、その上端で外側へ突出するように設けられた係止部91を備えている。なお、バスケット90の内部の底面部には、収容した冷凍パックなどを立てるための引っ掛かり部を突設してもよい。
【0058】
バスケット90は、係止部91を冷凍容器30のフランジ34、もしくは、収容部111の内蓋受け部117に係止することで設置することができる。そして、バスケット90は、
図1の状態で左右方向に取り付け位置を調整することができる。かかるバスケット90には、不凍液から取り出した冷凍対象物を一時的に載置し、冷凍対象物に付着した不凍液の滴が落ち切ってから冷凍庫10の外部へ取り出すことができる。
【0059】
<不凍液>
本発明の冷凍容器30に使用可能な不凍液(ブライン液)は、エチルアルコール(エタノール)、エチレングリコール等のアルコール水溶液を好適に使用することができるが、アルコールに限定されるものではなく、塩化ナトリウム水溶液(食塩水)、塩化カルシウム水溶液等であってもよい。不凍液としてエタノールを使用する場合、濃度80%の溶液であることが好ましい。このように、濃度80%のエタノール溶液を用いることで、-60℃まで冷却することが可能となる。
【0060】
<動作の説明>
以下、本発明に係る冷凍装置1及び冷凍容器30の動作について説明する。
まず、冷凍庫10に冷凍容器30を設置する。次に、冷凍容器30に不凍液を満たす。その後、冷凍庫10の冷凍をONする。不凍液が十分に冷却(-60℃)された後、不凍液に食品などの冷凍対象物を沈める。対象物は液体により急速に凍結される。なお、対象物のサイズに応じて、深さの異なる第一貯留部31a、第二貯留部31bを使い分ける。
【0061】
対象物の凍結後、不凍液から取り出してバスケット90に一時的に載置し、いわゆる水切りを行う。なお、不凍液がロードライン36を下回った場合、不凍液を継ぎ足せばよい。使用後は、冷凍庫のスイッチをOFFにする。そして、不凍液の温度が上がったことを確認し、サイフォンなどで不凍液を排出する。その後、冷凍庫10から冷凍容器30を取り出す。
【0062】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…冷凍装置
10…冷凍庫
30…冷凍容器
31…貯留部
40…突出部
90…バスケット
111…収容部
351…保持部
352…持ち手部
402…突出部