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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005328
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】靴紐
(51)【国際特許分類】
   A43C 1/00 20060101AFI20250108BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A43C1/00
D02G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105529
(22)【出願日】2023-06-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】522031320
【氏名又は名称】糸伍株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】松田 智行
【テーマコード(参考)】
4F050
4L036
【Fターム(参考)】
4F050HA21
4F050MA01
4L036MA05
4L036MA06
4L036MA33
4L036MA39
4L036PA05
4L036PA46
4L036UA06
(57)【要約】
【課題】ほどけにくく、耐久性および軽量性に優れる靴紐を提供する。
【解決手段】靴紐1は、2本以上の糸からなる合糸糸20、30を複数本用い、これらを交差するように組んで形成する組紐状の靴紐であって、複数本の合糸糸20、30のうち少なくとも1本が、熱可塑性マルチフィラメントで構成される嵩高加工糸を少なくとも1本有し、合糸糸20、30は、嵩高加工糸と、該嵩高加工糸よりも伸縮性(JIS L 1013:2010準拠)が小さい非伸縮性糸とを有し、非伸縮性糸を嵩高加工糸よりも多く有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本以上の糸からなる合糸糸を複数本用い、これらを交差するように組んで形成する組紐状の靴紐であって、
複数本の前記合糸糸のうち少なくとも1本が、熱可塑性マルチフィラメントで構成される嵩高加工糸を少なくとも1本有することを特徴とする靴紐。
【請求項2】
前記合糸糸は、嵩高加工糸と、該嵩高加工糸よりも伸縮性(JIS L 1013:2010準拠)が小さい非伸縮性糸とを有することを特徴とする請求項1記載の靴紐。
【請求項3】
前記合糸糸は、前記非伸縮性糸を前記嵩高加工糸よりも多く有していることを特徴とする請求項2記載の靴紐。
【請求項4】
本体と、該本体の短手方向両端部に設けられた耳部とを有し、
前記耳部は、前記靴紐の短手方向外側に突出した凸部と、短手方向内側に凹んだ凹部とを長手方向に沿って交互に有していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の靴紐。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴紐に関し、特にマラソンなど長距離競技用の靴紐に関する。
【背景技術】
【0002】
靴紐は、靴を着用者の足にフィットさせるため、多くの靴に使用されている。従来の靴紐には、ナイロンやポリエステルなど合成繊維や、綿などの天然素材が用いられ、さらに、平紐や、丸紐、平丸紐などの形状がある。
【0003】
靴紐に求められる重要な役割として、ほどけにくさが挙げられる。ほどけにくい靴紐としては、例えば、以下の靴紐が開示されている。
【0004】
特許文献1には、間隔をあけて繰返し配置され、自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体を備えたひもが記載されている。そして、このような構成とすることにより、断裂しにくくかつ結ばなくとも緩みや弛みが生じにくい経済的および効率的に優れたひもを提供できる旨が記載されている。
【0005】
特許文献2には、靴紐(シューレース)の結び目をほどけにくくするためのシリコンラバープリントによる滑り止め加工が施された靴紐が記載されている。そして、シリコンラバープリントにより摩擦力があがることで、結び目が保持され、ほどけにくい状態を作る効果がある旨が記載されている。
【0006】
特許文献3には、非伸縮性織糸を用いて織成された靴ひもであって、履用時に結び目を形成する部分の表面に、滑り止め機能を有する織糸が点在する配置で露呈した状態に織り込まれていることを特徴とする靴ひもが、歩行中にほどけたり、緩んだりした状態にならない旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-12909号公報
【特許文献2】特開2021-69889号公報
【特許文献3】特開2005-52614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
靴紐がほどけるメカニズムとして以下が考えられる。例えば、紐靴の着用者が歩行や走行している際、足の地面への着地の瞬間、靴紐の結び目には最大の張力が作用する。その後、結び目に掛かる張力は低下し、足を振り出す際に張力が増大し、足の再度の着地時に再び最大の張力に達するということが繰り返されると考えられる。そのため、靴紐をほどけにくくするためには、結び目への張力の増大と減少が繰り返し起こっても靴紐の結び目において接触する紐間の相対的位置関係が変わりにくいことが必要である。
【0009】
マラソンや競歩のような長距離競技では、競技者が長時間にわたって走り続けることによって靴紐には所定の張力が繰り返し掛かるところ、競技中に靴紐が破断しないように耐久性(強度)が要求される。また、そのような競技に用いられる靴紐には、軽量性も要求される。耐久性を重視してより多くの材料を使用すると重量が増加してしまうため、耐久性と軽量性とを両立することは容易ではない。
【0010】
上述した特許文献1~3には、ほどけにくい靴紐が記載されているが、特許文献1記載の伸縮性素材および特許文献3記載の滑り止め機能を有する織糸は、ゴム素材を含んでおり、それらの靴紐は使用用途によっては強度が足りない可能性がある。また、特許文献2の靴紐の場合、靴紐の表面にプリントされるシリコンラバーは、比較的低強度であるため、長期間の使用により摩耗したり、下地から剥離したりして消失するおそれがある。さらに、ゴム素材や、シリコンラバーの使用は、重量増加につながるおそれもある。
【0011】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、ほどけにくく、耐久性および軽量性に優れる靴紐を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の靴紐は、2本以上の糸からなる合糸糸を複数本用い、これらを交差するように組んで形成する組紐状の靴紐であって、複数本の上記合糸糸のうち少なくとも1本が、熱可塑性マルチフィラメントで構成される嵩高加工糸を少なくとも1本有することを特徴とする。
【0013】
上記合糸糸は、嵩高加工糸と、該嵩高加工糸よりも伸縮性(JIS L 1013:2010準拠)が小さい非伸縮性糸とを有することを特徴とする。
【0014】
上記合糸糸は、上記非伸縮性糸を上記嵩高加工糸よりも多く有していることを特徴とする。
【0015】
上記靴紐は、本体と、該本体の短手方向両端部に設けられた耳部とを有し、上記耳部は、上記靴紐の短手方向外側に突出した凸部と、短手方向内側に凹んだ凹部とを長手方向に沿って交互に有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の靴紐は、2本以上の糸からなる合糸糸を複数本用い、これらを交差するように組んで形成する組紐状の靴紐であって、複数本の合糸糸のうち少なくとも1本が、熱可塑性マルチフィラメントで構成される嵩高加工糸を少なくとも1本有するので、嵩高加工糸特有の優れた伸縮性、強度、嵩高さに起因して、ほどけにくく、耐久性および軽量性に優れる。
【0017】
合糸糸は、嵩高加工糸と、該嵩高加工糸よりも伸縮性(JIS L 1013:2010準拠)が小さい非伸縮性糸とを有するので、靴紐全体として適度な伸縮性と強度を有するとともに、軽量化が図られ、使用感に優れる。
【0018】
合糸糸は、非伸縮性糸を嵩高加工糸よりも多く有しているので、靴紐を長時間使用しても最初に結んだときの状態が維持されやすく、ほどけにくい。
【0019】
靴紐は、本体と、該本体の短手方向両端部に設けられた耳部とを有し、耳部は、靴紐の短手方向外側に突出した凸部と、短手方向内側に凹んだ凹部とを長手方向に沿って交互に有しているので、結び目において接触する耳部同士の引っ掛かりによって靴紐同士が滑りにくいとともに、強度に優れる。これにより、ほどけにくさと耐久性により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の靴紐の一例を示す画像である。
図2図1に示した靴紐の模式図である。
図3図2に示した模式図の拡大図である。
図4図1に示した靴紐の断面模式図の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の靴紐は、組紐である。組紐は、合糸糸を交差するように組んで構成された紐であり、糸を縦横に織って得られる織物の紐とは異なる。織物の紐を靴紐に使用する場合において、適度な伸縮性を維持しながら、スポーツのように大きな負荷の掛かる際にも切れないような十分な機械的強度を併せて維持することは容易ではない。これに対して、本発明では、靴紐を所定構造の組紐とし、合糸糸に熱可塑性樹脂製のマルチフィラメントで構成される嵩高加工糸を含めることで、適度な伸縮性と軽量性を維持しながら機械的強度を十分に確保でき、さらに、そのほどけにくさを向上している。
【0022】
本発明の靴紐の一例について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明の靴紐の一例を平面視した画像であり、図2は、図1に示した靴紐1の模式図である。図2に示すように、靴紐1は、複数本の合糸糸20、30を交差するように組んで組紐状に形成される。靴紐1は、2本以上の糸(以下、「元糸」ともいう)からなる合糸糸20、30を用いて平紐状に形成される。
【0023】
図2において、靴紐1は、本体2と、本体2の短手方向両端部に設けられた耳部3、3とを有している。本体2は、例えば、3本の元糸から構成される本体の合糸糸20を6~12本使用して組むことにより形成される。本体の合糸糸20は、3本に限らず、例えば、2本~8本の元糸から構成することができる。
【0024】
耳部3は、太さが異なる複数の合糸糸30により形成されている。片側の耳部3は、1本の耳部第1合糸糸30aと、耳部第1合糸糸30aよりも細い3本の耳部第2合糸糸30bにより形成されている。本体2の短手方向両端部それぞれにおいて、耳部第1合糸糸30aと耳部第2合糸糸30bとが、本体2の長手方向に沿って螺旋状に交互に巻き付けられるように組み上げられている。本体2、耳部3のそれぞれを構成する合糸糸20、30は、同時に組み上げられることにより靴紐1が形成される。
【0025】
耳部第1合糸糸30aは、例えば、11本の元糸から構成され、耳部第2合糸糸30bは、例えば、3本の元糸から構成される。靴紐1は、例えば、合計50~90本の元糸により形成される。合糸糸の本数は、いわゆる「組玉」の数に相当する。
【0026】
なお、靴紐1は、本体2の短手方向の片方の端部にのみ耳部3を有していてもよいし、耳部3を有していなくてもよい。靴紐1が耳部3を有する場合、耳部3は、本体を形成する合糸糸20よりも太い、少なくとも1本の合糸糸30により形成されていることが好ましい。
【0027】
耳部3は、耳部第1合糸糸30aおよび耳部第2合糸糸30bにより形成されていることが好ましい。この場合、耳部第1合糸糸30aは、例えば、6本~16本の元糸から構成される。耳部第1合糸糸30aは、8本~14本の元糸から構成されることが好ましく、10本~12本の元糸から構成されることがより好ましい。また、耳部第2合糸糸30bは、耳部第1合糸糸30aを構成する元糸の本数よりも少ない元糸から構成されることが好ましく、2本~5本の元糸から構成されることがより好ましく、2本~4本の元糸から構成されることがさらに好ましい。
【0028】
耳部3が耳部第1合糸糸30aおよび耳部第2合糸糸30bにより形成されている場合、耳部第1合糸糸30aと、耳部第2合糸糸30bとの本数の比率は、自由に設定できる。耳部第1合糸糸30aと、耳部第2合糸糸30bとの本数の比率は、例えば、5:1~1:5であり、ほどけにくさの観点から、1:1~1:5が好ましく、1:2~1:4がより好ましく、1:3がさらに好ましい。
【0029】
耳部第1合糸糸30aと、耳部第2合糸糸30bとの本数の比率が上記範囲にあることで、細い合糸糸または太い合糸糸のいずれかが過度に多くなりすぎないので、靴紐1の短手方向の両端部に凹凸が形成されやすく、接触する靴紐1同士が噛み合いやすい。耳部第1合糸糸30aと、耳部第2合糸糸30bとの本数の比率が1:3で、1本の耳部第1合糸糸30aと、3本の耳部第2合糸糸30bとが靴紐の長手方向に沿って交互に並んで配置される場合、本体2の短手方向両端部を完全に覆いつつ、靴紐1の最大幅と、狭幅部の幅との差を大きくしやすいため、耐久性とほどけにくさに特に優れる。
【0030】
靴紐1が、本体2と、耳部3とを有する場合、耳部3は、靴紐1の短手方向両端部に、短手方向外側に突出した凸部Pと、短手方向内側に凹んだ凹部Rとを長手方向に沿って交互に有している。その結果、結び目において接触する耳部同士が引っ掛かりやすく、ほどけにくさに優れる。また、図2に示すように、本体2の短手方向両端部が耳部3、3によって覆われていることにより、使用時に引張り応力が集中しやすいとともに靴紐1が切れる際の起点となりやすい短手方向両端部を保護することができる。これにより、靴紐1の耐久性にも優れる。図2において、凸部Pは耳部第1合糸糸30aによって形成され、凹部Rは耳部第2合糸糸30bによって形成されている。例えば、耳部3を形成する合糸糸30が1本で、本体2の短手方向両端部の一部が露出している場合などは、凸部Pは耳部3の合糸糸30によって形成され、凹部Rは本体の合糸糸20によって形成されてもよい。
【0031】
本発明の靴紐は、本体や、耳部を構成する複数本の合糸糸のうち少なくとも1本の合糸糸が、元糸として嵩高加工された糸(以下、嵩高加工糸ともいう)を少なくとも1本有する。ここで、本明細書において、嵩高加工は、一旦仮に撚りを掛けた合成樹脂製の繊維に熱を加えた後に撚りを戻す仮撚加工や、エアーによりフィラメント同士を交絡させるエアー加工(インターレース加工やタスラン加工)を意味する。上記構成であることにより、本発明の靴紐は、嵩高加工糸特有の優れた伸縮性、強度、嵩高さに起因して、ほどけにくく、耐久性および軽量性に優れる。嵩高加工糸としては、特に、仮撚加工糸が好ましい。仮撚加工を施すことで、糸に嵩高性を付与できるとともに、糸の内部の高分子鎖結晶の向きや間隔が均一になることで強度をより高めることができる。なお、嵩高加工は、ウーリー加工とも呼ばれ、嵩高加工糸は、ウーリー加工糸と呼ばれる場合もある。
【0032】
本発明の靴紐を構成する複数の合糸糸はそれぞれ、元糸として、嵩高加工糸と、該嵩高加工糸よりも伸縮性が小さい非伸縮性糸とを合糸した糸であることが好ましい。ここで、本明細書における伸縮性は、JIS L 1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」8.11 C法(簡便法)に準拠して測定した結果得られる値を意味する。この場合、全ての合糸糸が嵩高加工糸を有するので、靴紐全体として適度な伸縮性と強度を有するとともに、軽量化が図られ、使用感に優れる。
【0033】
合糸糸が、嵩高加工糸と非伸縮性糸とを含む場合、嵩高加工糸の伸縮性は、例えば、非伸縮性糸の伸縮性に対して1.1~5.0倍とすることができる。嵩高加工糸の伸縮性は、靴紐のほどけにくさの観点から、非伸縮性糸の伸縮性に対して1.5~4.0倍であることが好ましく、2.0~4.0倍であることがより好ましい。嵩高加工糸の伸縮性が上記範囲内である場合、靴紐に適度な柔軟性が付与され、使用感に特に優れる。
【0034】
嵩高加工糸としては、例えば、ナイロン製やポリエステル製のエアー加工糸や仮撚加工糸を用いることができる。嵩高加工糸としては、例えば、イノウエネンシ株式会社製の高伸縮性ウーリーナイロン先染糸irohaを用いることができる。なお、本発明の元糸は、数本~数十本のモノフィラメントを撚り合わせたようなマルチフィラメントであってもよいし、単一モノフィラメントであってもよい。
【0035】
非伸縮性糸は、例えば、綿糸、絹糸などの天然繊維、レーヨン、アクリル、ナイロン、アラミド、ポリエステル、炭素繊維などの化学繊維(再生繊維含む)のいずれでもよい。非伸縮性糸は、無撚糸、撚糸のいずれでもよい。非伸縮性糸としては、例えば、化学繊維の撚糸を用いることができ、強度の観点からは、アラミド繊維またはポリエステル繊維の撚糸が好ましい。非伸縮性糸としては、例えば、20番手~80番手の太さのミシン糸を選択でき、結びやすさの観点から、その太さは30番手~70番手が好ましく、40番手~60番手がより好ましく、40番手~50番手がさらに好ましい。非伸縮性糸としては、例えば、テイジン株式会社製のポリエステル製繊維であるテトロン(登録商標)を用いることができる。
【0036】
合糸糸は、嵩高加工糸と、非伸縮性糸とともに、嵩高加工糸よりも伸縮性が大きい高伸縮性糸が合糸された糸であってもよい。また、一本の元糸は、1種の繊維を紡績して製造された糸でもよいし、2種以上の異なる繊維を混紡して製造された混紡糸や混繊糸であってもよい。
【0037】
合糸糸は、最初に靴紐を結んだときの状態(紐の長さ)を維持する観点からは、非伸縮性糸を嵩高加工糸よりも多く有していることがより好ましい。非伸縮性糸は嵩高加工糸に比べて剛性が高いため、靴紐が比較的柔らかい嵩高加工糸よりも非伸縮性糸を多く有する場合、長時間使用後でも最初の状態が維持されやすく、安定した使用感(ホールド感)を得られる。
【0038】
合糸糸が嵩高加工糸を含む場合、ほどけにくさと耐久性両立の観点から、非伸縮性糸の本数が、嵩高加工糸の本数の1~4倍であることが好ましく、1~3倍であることがより好ましい。例えば、本体の合糸糸1本が3本の元糸から構成される場合、嵩高加工糸1本、非伸縮性糸2本の組み合わせであることが好ましい。また、耳部第1合糸糸1本が11本の元糸から構成される場合、元糸の組み合わせは、嵩高加工糸4本、非伸縮性糸7本であることが好ましい。耳部第2合糸糸1本が3本の元糸から構成される場合、嵩高加工糸1本、非伸縮性糸2本の組み合わせであることが好ましい。
【0039】
靴紐を構成する合糸糸の合計本数は、例えば、7本~50本である。靴紐の合糸糸の本数は、耐久性と軽量性両立の観点から、10本~30本が好ましく、12本~25本がより好ましく、15本~23本がさらに好ましい。靴紐を構成する合糸糸の合計本数を15本~23本とした場合、ほどけにくさ、耐久性、軽量性のバランスに特に優れる。
【0040】
本発明の靴紐の平面視における特徴について、図3を用いて説明する。図3は、図2に示した模式図(平面図)を拡大した図である。図3に示すように本体2と耳部3から構成される靴紐1の場合、靴紐1の最大幅(短手方向両端部の凸部P、P間の距離)W1は、例えば、約4~10mmである。靴紐1における狭幅部の幅(短手方向両端部の凹部R、R間の距離)W2に対するW1の比率W1/W2は、例えば、1.1~2.0とできる。W1/W2は、靴紐のほどけにくさの観点から、1.2~1.8であることが好ましく、1.3~1.6であることがより好ましい。
【0041】
本発明の靴紐の断面視における特徴について、図4を用いて説明する。図4は、図1に示した靴紐の長手方向に直交する面での断面模式図について耳部周辺を拡大した図である。図4に示すように本体2と耳部3から構成される靴紐1の場合、靴紐1の最大厚み(耳部3における最大厚み)T1は、例えば、約1~4mmである。靴紐1における本体2の最大厚みT2に対するT1の比率T1/T2は、例えば、1.5~8.0とできる。T1/T2は、靴紐のほどけにくさの観点から、2.0~6.0であることが好ましく、2.5~4.0であることがより好ましい。
【0042】
本発明の靴紐の重量は、長距離競技用途の場合、軽量性の観点から、長さ約110~130cmで2.5~3.5gの範囲内であることが好ましい。さらに、本発明の靴紐は、耐久性と軽量性の観点から、約110~130cmで2.5~3.5gの範囲内であることに加えて、引張強度が400~1000Nであることが好ましく、450~700Nであることがより好ましい。この場合、本発明の靴紐は軽量でありつつ強度に優れるので、長時間着用した場合の足への低負担や紐の切れにくさが要求されるマラソンなどの長距離競技に好適に使用できる。
【0043】
ここで、引張強度は、JISL1013に準拠した糸強伸度測定の結果得られる値であり、試験装置を用いて紐を反対方向に引張って、破断した際の最大強度(破断強度)を引張強度として採用する。引張強度測定に用いることができる試験装置および試験条件を以下に示す。
【0044】
測定装置:テンシロン引張試験機
測定方式:巻き付け自緊型チャック
つかみ間隔:10cm
引っ張り速度:20cm/min
【0045】
本発明の靴紐の製造方法の一例について以下に説明する。本発明の靴紐の製造方法は、嵩高加工糸と、該嵩高加工糸よりも伸縮性(JIS L 1013:2010準拠)が小さい非伸縮性糸とを合糸する合糸工程と、合糸工程により得られた複数の合糸糸を交差するように組んで組紐状の靴紐とする製紐工程と、を含み、この製紐工程において、靴紐は、平紐状の本体と、該本体の短手方向両端部に設けられる耳部とが同時に組み上げられることによって形成され、耳部が、靴紐の短手方向外側に突出した凸部と、短手方向内側に凹んだ凹部とを、長手方向に沿って交互に有する。
【0046】
上記方法で組紐状の靴紐を製造することにより、嵩高加工糸特有の優れた伸縮性、強度、嵩高さなどとともに、耳部の凹凸形状に起因して、ほどけにくく、耐久性および軽量性に優れた靴紐を得られる。
【0047】
以上、本発明の靴紐について、各図を用いて説明したが上述の構成に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の靴紐は、ほどけにくく、耐久性および軽量性に優れるので、普段使いからマラソン、競歩などの長距離競技用まで、幅広い種類の靴の靴紐として広く利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 靴紐
2 本体
20 合糸糸
3 耳部
30 合糸糸
30a 耳部第1合糸糸
30b 耳部第2合糸糸
P 凸部
R 凹部
図1
図2
図3
図4