(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005346
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】収穫機の前処理装置
(51)【国際特許分類】
A01D 45/02 20060101AFI20250108BHJP
A01D 57/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A01D45/02
A01D57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105580
(22)【出願日】2023-06-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、農業機械技術クラスター事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 優史
【テーマコード(参考)】
2B075
2B081
【Fターム(参考)】
2B075AA03
2B075AC03
2B075AC05
2B075AC10
2B075AC15
2B081AA11
2B081CC60
2B081DA11
2B081FB02
2B081FB05
2B081FB11
(57)【要約】
【課題】トウモロコシなどの作物を切断するカッタのミッションが故障した場合であっても、容易に修理・交換できるようにした前処理装置を提供する。
【解決手段】掻き込みローラ4で下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉を細断するカッタ3と、セパレータ5で分離されたイアコーンを、後方に向けて搬送する搬送チェーン6と、を備えてなるトウモロコシの前処理装置1において、前記カッタ3を駆動するミッションを内蔵するカッタ駆動用ギアボックス9と、搬送チェーン6および掻き込みローラ4を駆動するミッションを内蔵するメイン駆動用ギアボックス8とを分離して設ける。そして、カッタ駆動用ギアボックス9を、隣接するメイン駆動用ギアボックス8とメイン駆動用ギアボックス8との間に設け、カッタ駆動用ギアボックス9と隣接するメイン駆動用ギアボックス8の入出力軸83、92を連結させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前方に向けて設けられた複数のデバイダと、
前記デバイダの間に取り込まれた作物の茎葉を下方に掻き込むための掻き込みローラと、
前記掻き込みローラによって下方に掻き込まれた作物の茎葉を細断するカッタと、
当該掻き込みローラによって下方に掻き込まれた作物の茎葉から収穫対象物を分離するセパレータと、
当該セパレータによって分離された収穫対象物を、機体後方に向けて搬送する搬送チェーンと、
を備えてなる収穫機の前処理装置において、
前記カッタを駆動するミッションを内蔵するカッタ駆動用ギアボックスと、
前記搬送チェーンまたは/および掻き込みローラを駆動するミッションを内蔵するメイン駆動用ギアボックスと、を備え、
前記カッタ駆動用ギアボックスを、隣接するメイン駆動用ギアボックスとメイン駆動用ギアボックスとの間に設け、当該カッタ駆動用ギアボックスと隣接するメイン駆動用ギアボックスの入出力軸を連結させるようにしたことを特徴とする収穫機の前処理装置。
【請求項2】
前記カッタ駆動用ギアボックスが、前記隣接する左右のメイン駆動用ギアボックスの間において、前方に延出するように設けられるものであり、
当該カッタ駆動用ギアボックスの先端の左右両側にカッタを設けるようにした請求項1に記載の収穫機の前処理装置。
【請求項3】
前記カッタ駆動用ギアボックスが、前記隣接する左右のメイン駆動用ギアボックスの間において、前方に延出するように設けられるものであり、
当該カッタ駆動用ギアボックスの先端の左右両側に、刃の回転位相がそれぞれ異なるカッタを設けるようにした請求項1に記載の収穫機の前処理装置。
【請求項4】
前記カッタ駆動用ギアボックスが、前記隣接する左右のメイン駆動用ギアボックスの間において、前方に延出するように設けられるものであり、
当該カッタ駆動用ギアボックスの先端の左右両側を、左右の掻き込みローラを覆うカバーの側板に取り付けるようにした請求項1に記載の収穫機の前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウモロコシなどの作物を収穫する収穫機の前処理装置に関するものであり、より詳しくは、作物を切断するカッタ駆動用ミッションが故障した場合に、そのミッションを容易に修理・交換できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
圃場で育成されたトウモロコシは、収穫機の前処理装置によって刈り取られ、トウモロコシのイアコーンが採取される。
【0003】
このような前処理装置の一般的構造(特許文献1)を、
図6および
図7を用いて説明する。
【0004】
図6、
図7において、符号101は、デバイダであって、条に沿ってトウモロコシを取り込めるようにしたものである。また、符号102は、デバイダ101で集められたトウモロコシの茎葉を下方に掻き込むための掻き込みローラであって、隣接する掻き込みローラの羽根の間にトウモロコシの茎葉を挟み込み、そのトウモロコシの茎葉を下方に掻き込めるようにしたものである。また、符号103は、カッタであって、トウモロコシの茎葉を株元から切断するとともに、掻き込みローラ102によって下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉を細断して圃場に還元できるようにしたものである。また、符号104は、セパレータであって、掻き込みローラ102で下方に掻き込まれたトウモロコシからイアコーンを分離させるものであり、符号105は、このセパレータ104で分離されたイアコーンを、機体後方に向けて搬送させる搬送チェーンである。また、符号106は、ギアボックスであり、機体の側方から伝達される駆動力によって、内部のミッションを介して掻き込みローラ102や、カッタ103、搬送チェーン105などを駆動させるものである。また、符号107は、収集オーガであって、搬送チェーン105で搬送されたイアコーンを収集して走行機体側に移送できるようにしたものである。
【0005】
そして、このような前処理装置を用いてトウモロコシからイアコーンを取り出す場合、機体を走行させながら、圃場のトウモロコシをデバイダ101の間に取り込むとともに、掻き込みローラ102やカッタ103によってトウモロコシの茎葉を下方に掻き込みながら細断していく。このとき、トウモロコシのイアコーンは、左右のセパレータ104によって茎葉から分離され、搬送チェーン105によって機体後方に搬送される。そして、収集オーガ107によってイアコーンを収集できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような前処理装置を用いてトウモロコシの収穫作業をしている途中に、圃場の石などがカッタに当たると、カッタ駆動用のミッションに故障を生じてしまう場合がある。
【0008】
このような場合、そのカッタ駆動用のミッションを修理する必要があるが、従来では、修理を行う際、搬送チェーン105や掻き込みローラ102を取り外してギアボックス106を取り出すとともに、そのギアボックス106を開けて、カッタ駆動用のミッションを修理しなければならなかった。このため、搬送チェーン105や掻き込みローラ102の取り外しなどに多大な時間を要していた。また、カッタ駆動用のミッションが修理できない場合は、ギアボックス106を全体的に交換しなければならず、費用が高くなるといった問題があった。
【0009】
また、従来では、
図6に示すように、ギアボックス106からカッタ103を斜め前方に延出させるようにし、このギアボックス106を左右に連結させるようにしていたが、このような構成では、一番端(
図7において一番左端)のギアボックス106から延出するカッタ103がデバイダ101の外側に位置してしまうことになるので、カバーで覆わなければならず、全幅が大きくなってしまうといった問題や、外側のカッタによって飛散物が外側に飛ぶ可能性があるといった問題もあった。
【0010】
そこで、本発明は、トウモロコシなどの作物を切断するカッタのミッションが故障した場合であっても、容易に修理・交換できるようにした収穫機の前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、機体の前方に向けて設けられた複数のデバイダと、前記デバイダの間に取り込まれた作物の茎葉を下方に掻き込むための掻き込みローラと、前記掻き込みローラによって下方に掻き込まれた作物の茎葉を細断するカッタと、当該掻き込みローラによって下方に掻き込まれた作物の茎葉から収穫対象物を分離するセパレータと、当該セパレータによって分離された収穫対象物を、機体後方に向けて搬送する搬送チェーンと、を備えてなる収穫機の前処理装置において、前記カッタを駆動するミッションを内蔵するカッタ駆動用ギアボックスと、前記搬送チェーンまたは/および掻き込みローラを駆動するミッションを内蔵するメイン駆動用ギアボックスと、を備え、前記カッタ駆動用ギアボックスを、隣接するメイン駆動用ギアボックスとメイン駆動用ギアボックスとの間に設け、当該カッタ駆動用ギアボックスと隣接するメイン駆動用ギアボックスの入出力軸を連結させるようにしたものである。
【0012】
このように構成すれば、カッタ駆動用のミッションに故障を生じた場合であっても、カッタ駆動用ギアボックスのみを取り外して修理・交換することができるため、容易に修理・交換を行うことができるようになる。
【0013】
また、このような発明において、前記カッタ駆動用ギアボックスを、前記隣接する左右のメイン駆動用ギアボックスの間から前方に延出するように設け、当該カッタ駆動用ギアボックスの先端の左右両側にカッタを設けるようにする。
【0014】
このように構成すれば、一つのカッタ駆動用ギアボックスのミッションを用いて左右のカッタを駆動させることができるため、部品点数を減らしてコストを低減させることができるようになる。
【0015】
さらに、前記カッタ駆動用ギアボックスを、前記隣接する左右のメイン駆動用ギアボックスの間から前方に延出するように設け、当該カッタ駆動用ギアボックスの先端の左右両側に、刃の回転位相がそれぞれ異なるカッタを設けるようにする。
【0016】
このように構成すれば、回転時に同時に左右の刃が作物に当たることがなくなるため、ミッションに大きな負荷が掛からないようにすることができる。
【0017】
また、前記カッタ駆動用ギアボックスを、前記隣接する左右のメイン駆動用ギアボックスの間から前方に延出するように設け、さらに、当該カッタ駆動用ギアボックスの先端の左右両側を、左右の掻き込みローラを覆うカバーの側板に取り付けるようにする。
【0018】
このように構成すれば、掻き込みローラを覆うカバーの振動を抑えることができ、別途カバーの振動防止用の補強材などを取り付ける必要がなくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機体の前方に向けて設けられた複数のデバイダと、前記デバイダの間に取り込まれた作物の茎葉を下方に掻き込むための掻き込みローラと、前記掻き込みローラによって下方に掻き込まれた作物の茎葉を細断するカッタと、当該掻き込みローラによって下方に掻き込まれた作物の茎葉から収穫対象物を分離するセパレータと、当該セパレータによって分離された収穫対象物を、機体後方に向けて搬送する搬送チェーンと、を備えてなる収穫機の前処理装置において、前記カッタを駆動するミッションを内蔵するカッタ駆動用ギアボックスと、前記搬送チェーンまたは/および掻き込みローラを駆動するミッションを内蔵するメイン駆動用ギアボックスと、を備え、前記カッタ駆動用ギアボックスを、隣接するメイン駆動用ギアボックスとメイン駆動用ギアボックスとの間に設け、当該カッタ駆動用ギアボックスと隣接するメイン駆動用ギアボックスの入出力軸を連結させるようにしたので、カッタ駆動用のミッションに故障を生じた場合であっても、カッタ駆動用ギアボックスのみを取り外して修理、あるいは、交換することができるため、容易に修理・交換作業をすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態における前処理装置の平面から見た概略図
【
図2】同形態における前処理装置の底面から見た概略図
【
図3】同形態における掻き込みローラとカッタ、搬送チェーンを正面から見た概略図
【
図4】同形態におけるメイン駆動用ギアボックスとカッタ駆動用ギアボックスの内部構造を示す図
【
図5】同形態におけるメイン駆動用ギアボックスとカッタ駆動用ギアボックスの前面から見た概略図
【
図7】従来例における前処理装置の構造を示す前後方向から見た図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
この実施の形態における収穫機における前処理装置1は、図示しない走行機体の前方に設けられるものであって、収穫対象物がトウモロコシである場合、圃場のトウモロコシを条ごとに分離・収集するデバイダ2(
図1参照)と、このデバイダ2によって分離・収集されたトウモロコシの茎葉の株元を切断するカッタ3(
図2参照)と、このトウモロコシの茎葉を下方に掻き込んで前記カッタ3で細断させるための掻き込みローラ4(
図2参照)と、この掻き込みローラ4によって下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉からイアコーンを分離させるためのセパレータ5(
図3参照)と、このセパレータ5によって分離されたトウモロコシのイアコーンを機体10の後方に向けて搬送させる搬送チェーン6(
図1参照)などを備え、この搬送チェーン6によって機体10の後方に集められたイアコーンを収集オーガ7で集められるようにしたものである。そして、特徴的に、これらの掻き込みローラ4を駆動させるための第一ミッション44や搬送チェーン6を駆動させるための第二ミッション62を備えたメイン駆動用ギアボックス8と、カッタ3を駆動させるための第三ミッション33を備えたカッタ駆動用ギアボックス9とを分離して設け、左右のメイン駆動用ギアボックス8の間に前記カッタ駆動用ギアボックス9を配置して入出力軸83、92を連結部89を介して連結させるようにしたものである。そして、このように構成することにより、カッタ駆動用の第三ミッション33が故障した場合であっても、メイン駆動用ギアボックス8を開けることなく、カッタ駆動用ギアボックス9のみを取り外して、第三ミッション33を修理・交換できるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
なお、説明において、収穫される作物としてトウモロコシを例に挙げて説明し、そのトウモロコシは、茎と葉の部分である「茎葉」と、雌穂の部分である「イアコーン」から構成されているものとする。また、装置の説明において、機体10の走行方向をX軸方向、上下方向をZ軸方向として説明する。
【0024】
まず、機体10の前方に設けられるデバイダ2は、前方側を尖状に構成したものであって、機体10を走行させることにより、圃場のトウモロコシを左右に分離して収集できるように構成される。
このデバイダ2によって分離・収集されたトウモロコシを収穫する収穫部11は、トウモロコシを細断するカッタ3と、トウモロコシをカッタ3側に掻き込むための掻き込みローラ4と、掻き込みローラ4で下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉からイアコーンを分離させるためのセパレータ5と、このセパレータ5で分離されたイアコーンを機体10の後方に向けて搬送させる搬送チェーン6などを備えて構成される。
【0025】
このうち、カッタ3は、機体10の底面側に設けられるもので(
図2参照)、このデバイダ2によって分離・収集されたトウモロコシを株元部分で切断するとともに、後述する掻き込みローラ4で下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉を細断できるように構成される。このカッタ3は、Z軸を中心として回転する回転プレート31の外周部分に複数の刃32を取り付けて構成され、これらの刃32を高速回転させることにより、トウモロコシの茎葉を細断し、その細断片を圃場に還元できるようにしている。
【0026】
このカッタ3の上方に設けられる掻き込みローラ4は、デバイダ2で収集されたトウモロコシの茎葉を下方に引き込めるようにしたもので、X軸方向を中心に回転させることによって、
図2や
図3に示すように、外周面に設けられた複数枚の羽根41によって、トウモロコシの茎葉を屈曲させながら下方に掻き込めるように構成される。また、この掻き込みローラ4の前方には、トウモロコシを機体10の後方に向けて取り込めるようにしたスクリュー部42(
図2参照)が設けられており、このスクリュー部42によってもトウモロコシの茎葉を機体10の後方に搬送できるようにしている。
【0027】
また、この掻き込みローラ4の上方には、トウモロコシの茎葉からイアコーンを分離させるためのセパレータ5(
図1、
図3参照)が設けられている。このセパレータ5は、互いに所定の隙間を空けて設けられるものであって、左右の隙間をトウモロコシのイアコーンの幅よりも狭くすることによって、下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉からトウモロコシのイアコーンのみを分離させるようになっている。
【0028】
搬送チェーン6は、このセパレータ5によって分離されたトウモロコシのイアコーンを、機体10の後方に向けて搬送できるようにしたものであって、
図1に示すように、セパレータ5上で前後方向に周回する爪61を設け、その爪61にトウモロコシのイアコーンを当てて、イアコーンを後方の収集オーガ7に搬送できるように構成されている。
【0029】
収集オーガ7は、この搬送チェーン6によって機体10の後方に搬送されたイアコーンを中央側に収集して走行機体側に集められるようにしたものであって、左右方向に沿った回転軸の外周面に螺旋状の羽根を設けて構成される。
【0030】
このように構成されたカッタ3や掻き込みローラ4や搬送チェーン6などは、機体の側方のスプロケット11(
図1参照)などを介して駆動され、それぞれの第一ミッション44、第二ミッション62、第三ミッション33を介して駆動方向が変換される。なお、これらのミッションは、ギアやベベルギアなどを用いて構成される。
【0031】
これらのミッション44、62、33のうち、掻き込みローラ4を駆動する第一ミッション44と搬送チェーン6を駆動する第二ミッション62は、メイン駆動用ギアボックス8内に収容される。このメイン駆動用ギアボックス8の前面側には、
図5に示すように、左右の掻き込みローラ4を回転させるための二箇所の出力軸81が設けられ、また、上面側には、左右の搬送チェーン6を駆動させるための二箇所の出力軸82が設けられている。一方、左右側面には、隣接して設けられたカッタ駆動用ギアボックス9などに駆動力を伝達させるための入出力軸83が設けられている。
【0032】
一方、カッタ駆動用の第三ミッション33は、専用のカッタ駆動用ギアボックス9に収容される。このカッタ駆動用ギアボックス9の左右側面には、左右のメイン駆動用ギアボックス8の入出力軸83に連結されるための入出力軸92が設けられており、また、前面側には、
図2に示すように、前方側のカッタ3を駆動させるためのギアを有する延出部93が設けられる。さらに、この延出部93の先端側には、左右に設けられたカッタ3を回転させるための分岐部94が設けられており、この分岐部94に設けられた回転軸にカッタ3を取り付けて、それぞれのカッタ3を回転させるようにしている。なお、このように一つのミッションを介して二つのカッタ3を回転させる場合、左右のカッタ3の刃32が同時にトウモロコシの茎葉に当たると、ミッションに大きな負荷が掛かってしまい、故障の原因になる。そのため、ここでは、左右のカッタ3の刃32の回転位相をそれぞれ変えて配置(ここでは、それぞれ90度位相を変えて配置)し、これによって、左右のカッタ3の刃32がトウモロコシに当たるタイミングをずらして、大きな負荷をミッションに与えないようにしている。また、この左右の分岐部94の先端側は、左右に設けられた掻き込みローラ4を覆うカバー43(
図3参照)の側面に取り付けられており、これによって、薄い金属板で構成されたカバー43を補強してカバー43の振動などを防止できるようにしている。
【0033】
このカッタ駆動用ギアボックス9は、
図2や
図4、
図5などに示すように、左右のメイン駆動用ギアボックス8の間に配置され、それぞれの入出力軸83、92を連結部89を介して分離可能に連結させる。この連結部89で連結させる場合、種々の方法を用いて連結させることができるが、ここでは、チェーンカップリングによって連結させるようにしている。なお、これ以外に、入出力軸83、92の連結部分にフランジを設けておき、このフランジをボルトなどで連結させるようにしてもよい。
【0034】
次に、このように構成されたカッタ3や、掻き込みローラ4、搬送チェーン6などの取り付け方法について説明する。
【0035】
まず、前処理装置1を構成する場合、カッタ駆動用ギアボックス9の両側にメイン駆動用ギアボックス8を配置し、それぞれの入出力軸83、92をチェーンカップリングによって連結させるとともに、これらをメインフレームに取り付ける。
【0036】
そして、その状態でメイン駆動用ギアボックス8の前面側の出力軸81に、掻き込みローラ4を取り付け、さらに、それぞれの掻き込みローラ4を覆うようにカバー43を取り付ける。
【0037】
そして、そのカバー43の上面に、セパレータ5を取り付ける。このとき、それぞれのセパレータ5の隙間が、イアコーンの幅よりも小さくなるようにしておく。
【0038】
次に、このようにセパレータ5を取り付けた後、セパレータ5の上面に、メイン駆動用ギアボックス8の上面の出力軸82に搬送チェーン6を取り付け、複数のギアを介して周回させられるようにする。
【0039】
また、これと同様に、隣接するメイン駆動用ギアボックス8についても、掻き込みローラ4やカバー43、セパレータ5、搬送チェーン6などを取り付けていく。
【0040】
次に、左右のメイン駆動用ギアボックス8の間に取り付けられたカッタ駆動用ギアボックス9の分岐部94を、左右の掻き込みローラ4のカバー43の側面に取り付け、カバー43を固定する(
図3の状態)。
【0041】
そして、このようにカッタ駆動用ギアボックス9を取り付けた後、分岐部94の下端部分に、カッタ3を取り付ける。このとき、左右のカッタ3の刃32を、互いに位相角度が異なるにように取り付ける。
【0042】
その後、このように構成されたユニットに機体10の側方のスプロケット11(
図1参照)からの回転軸を連結させ、さらに、デバイダ2や上部カバー(図示せず)などを取り付けて前処理装置1を構成する。
【0043】
次に、このように構成された前処理装置1を用いて、トウモロコシのイアコーンを収穫する場合の作用について説明する。
【0044】
まず、機体10を走行させて、前方に設けられたデバイダ2によって、トウモロコシを分離・収集させる。
【0045】
すると、デバイダ2で分離・収集されたトウモロコシは、前方から収集されるトウモロコシに押されて取り込まれるとともに、掻き込みローラ4のスクリュー部42によっても後方に取り込まれる。
【0046】
このとき、掻き込みローラ4の間に取り込まれたトウモロコシの茎葉は、カッタ3によって株元部分が刈り取られ、さらに、その掻き込みローラ4によって下方に掻き込まれながら細断されていく。
【0047】
このとき、この掻き込みローラ4によって下方に掻き込まれたトウモロコシのうち、イアコーンは、左右のセパレータ5の間に挟まり、茎葉から分離される。
【0048】
このようにセパレータ5で分離されたイアコーンは、セパレータ5の上を周回する搬送チェーン6の爪61によって後方に搬送され、収集オーガ7によって機体10の中央から走行機体側に移送されて、走行機体側でロールベールなどが生成される。
【0049】
このような状況のもと、カッタ3に石などが当たってカッタ駆動用の第三ミッション33が故障した場合、その第三ミッション33の修理・交換を行う。このような修理・交換を行う場合、まず、デバイダ2の後方の上部カバーを取り外すとともに、カッタ3を取り外し、また、カッタ駆動用ギアボックス9とメイン駆動用ギアボックス8の入出力軸83、92の連結部89や、カバー43の側面との接合部分、メインフレームとの接合部分などを取り外す。そして、カッタ駆動用ギアボックス9を取り出し、筐体を開けて第三ミッション33を修理・交換する。このとき、搬送チェーン6や掻き込みローラ4などは取り外す必要がない。
【0050】
そして、第三ミッション33の修理・交換が終わった後、逆の手順で、カッタ駆動用ギアボックス9を元の状態に取り付ける。すなわち、カッタ駆動用ギアボックス9をメインフレームに取り付けるとともに、入出力軸92をメイン駆動用ギアボックス8の入出力軸83にチェーンカップリングで連結する。そして、カッタ駆動用ギアボックス9の分岐部94を掻き込みローラ4のカバー43の側面に取り付け、また、カッタ3や上部カバーなどを取り付けて、元の状態に戻す。
【0051】
このように上記実施の形態によれば、機体10の前方に向けて設けられた複数のデバイダ2と、前記デバイダ2の間に取り込まれたトウモロコシの茎葉を下方に掻き込むための掻き込みローラ4と、前記掻き込みローラ4によって下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉を細断するカッタ3と、当該掻き込みローラ4によって下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉からイアコーンを分離するセパレータ5と、当該セパレータ5によって分離されたイアコーンを、機体10の後方に向けて搬送する搬送チェーン6と、を備えてなるトウモロコシの前処理装置1において、前記カッタ3を駆動する第三ミッション33を内蔵するカッタ駆動用ギアボックス9と、前記掻き込みローラ4を駆動する第一ミッション44および搬送チェーン6を駆動する第二ミッション62を内蔵するメイン駆動用ギアボックス8と、を備え、前記カッタ駆動用ギアボックス9を、隣接するメイン駆動用ギアボックス8とメイン駆動用ギアボックス8との間に設け、当該カッタ駆動用ギアボックス9と隣接するメイン駆動用ギアボックス8の入出力軸83をチェーンカップリングで連結させるようにしたので、カッタ駆動用の第三ミッション33に故障を生じた場合であっても、カッタ駆動用ギアボックス9のみを取り外して容易に修理・交換することができるようになる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0053】
例えば、上記実施の形態では、左右のメイン駆動用ギアボックス8の間に一つのカッタ駆動用ギアボックス9を設け、そこから延出部93や分岐部94を介して左右のカッタ3を取り付けるようにしたが、カッタ駆動用ギアボックス9に一つのカッタ3を取り付け、このカッタ駆動用ギアボックス9を左右に連結させて、左右の条のトウモロコシを細断させるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、左右のメイン駆動用ギアボックス8と、その間に設けられたカッタ駆動用ギアボックス9で二条分のトウモロコシを収穫できるようにしたが、これらを一つのユニットとして、四条や六条などのような偶数条のトウモロコシを収穫できるようにしてもよい。また、奇数条のトウモロコシを収穫する場合は、このユニットに隣接して、従来の一つの筐体にカッタ駆動用のミッションや搬送チェーン駆動用ミッション、掻き込みローラ用ミッションを有するギアボックスを取り付けるようにしてもよい。
【0055】
さらに、上記実施の形態では、メイン駆動用ギアボックス8の中に、掻き込みローラ4を駆動させる第一ミッション44や搬送チェーン6を駆動させる第二ミッション62を収容させるようにしたが、これらを別のギアボックスに収容して連結させるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、トウモロコシを収穫する場合について説明したが、これ以外に、例えば、ヒマワリなどの他の作物を収穫する収穫機についても適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・前処理装置
10・・・機体
11・・・収穫部
2・・・デバイダ
3・・・カッタ
33・・・第三ミッション
4・・・掻き込みローラ
44・・・第一ミッション
5・・・セパレータ
6・・・搬送チェーン
62・・・第二ミッション
8・・・メイン駆動用ギアボックス
83・・・入出力軸
89・・・連結部
9・・・カッタ駆動用ギアボックス
92・・・入出力軸
93・・・延出部
94・・・分岐部