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  • 特開-クラッチ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005350
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/52 20060101AFI20250108BHJP
   F16D 43/21 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F16D13/52 C
F16D43/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023115522
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】521368544
【氏名又は名称】茅根 諭
(72)【発明者】
【氏名】茅根 諭
【テーマコード(参考)】
3J056
3J068
【Fターム(参考)】
3J056AA38
3J056AA60
3J056BA06
3J056CC03
3J056CC33
3J056DA04
3J056DA25
3J056GA02
3J056GA13
3J068AA02
3J068AA07
3J068BA02
3J068BB06
3J068EE12
3J068GA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メインアクスル側からトルクが伝達された際にメインアクスルからエンジン側へのトルクをより円滑に伝達させて、操作者が操作し易いクラッチ装置を提供する。
【解決手段】メインアクスル11側からトルクが伝達されると、コイルスプリングシャフト部10とクラッチボス6とコイルスプリング9とオペレーションプレート5のコイルスプリング凹部5cとに対してプレッシャープレート7が円周方向に回転するとともに、カム機構8によりクラッチボス6がプレッシャープレート7から離間する方向に移動してプレッシャープレート7とオペレーションプレート5とを離間させてフリクションプレート3及びクラッチプレート4に対するオペレーションプレート5の押圧力を減少させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に取付けられエンジン側からの出力により一方向に回転するハウジングと、
前記ハウジングの円周方向内側に着脱可能に取付けられ前記ハウジングの回転軸方向にスライド可能なフリクションプレートと、
軸方向に延びるコイルスプリング凹部を有し、前記ハウジング及び前記フリクションプレートの車体外側に配置され前記ハウジングの回転軸方向にスライド移動して前記フリクションプレートと接触及び離間するオペレーションプレートと、
前記オペレーションプレートの車体内側且つ前記フリクションプレートの円周方向内側で軸方向に沿って配置され軸方向にスライド移動して前記オペレーションプレートと接触及び離間する円筒部と、前記円筒部の円周方向内側に設けられ軸方向に貫通する貫通孔部が形成された円板部とを有するクラッチボスと、
前記クラッチボスの円筒部に着脱可能に取付けられ前記円筒部に沿って軸方向にスライド移動してフリクションプレートと接触及び離間するクラッチプレートと、
前記クラッチボスの車体内側でメインアクスルに接続され、前記オペレーションプレートとの間で前記フリクションプレート及び前記クラッチプレートを挟みこむように配置されるプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートと前記クラッチボスとを一方向に一体的に回転させるとともに、前記メインアクスル側からトルクが伝達された際に前記クラッチボスに対して前記プレッシャープレートを相対的に回転させて前記プレッシャープレートに対して前記クラッチボスを離間させるカム機構と、
前記オペレーションプレートのコイルスプリング凹部に軸方向に沿って配置され車体内側の一端が前記オペレーションプレートと接するコイルスプリングと、
前記プレッシャープレートに対して円周方向に回転可能に取付けられる取付部と、前記取付部から車体外側に延びて前記クラッチボスの貫通孔部と前記オペレーションプレートのコイルスプリング凹部と前記コイルスプリングとに挿通され前記コイルスプリングを車体外側の他端側から押圧する押圧部とを有するコイルスプリングシャフト部とを備え、
メインアクスル側からトルクが伝達されると、前記コイルスプリングシャフト部と前記クラッチボスと前記コイルスプリングと前記オペレーションプレートのコイルスプリング凹部とに対して前記プレッシャープレートが円周方向に回転するとともに、前記カム機構により前記クラッチボスが前記プレッシャープレートから離間する方向に移動して前記プレッシャープレートと前記オペレーションプレートとを離間させて前記フリクションプレート及び前記クラッチプレートに対する前記オペレーションプレートの押圧力を減少させることを特徴とするクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力をメインアクスルに伝達するとともにメインアクスル側からエンジン側へ過大なトルクが伝達されるのを防ぐクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなクラッチ装置としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示されたクラッチ装置は、オペレーションプレートとプレッシャープレートとの間にフリクションプレートとクラッチプレートとクラッチボスとが配置され、プレッシャープレートに螺合されたコイルスプリングシャフトがクラッチボスの貫通孔とオペレーションプレートの円形凹部の貫通孔とを貫通し、このコイルスプリングシャフトによって支持された複数のスプリングの付勢力によってオペレーションプレートがプレッシャープレート側に押圧されている。
【0003】
クラッチボス及びプレッシャープレートにはそれぞれ第一リング及び第二リングが取付けられており、エンジン側からトルクが伝達されると第一リングの正トルク伝達用係合面と第二リングの正トルク伝達用係合面とが当接して第一リングと第二リングとが密着したままフリクションプレート、クラッチプレート、クラッチボス及びプレッシャープレートを介してメインアクスル側にトルクが伝達される。
【0004】
メインアクスル側からトルクが伝達されると第一リングの逆トルク伝達用係合面と第二リングの逆トルク伝達用係合面とが圧接して第一リングと第二リングにスラスト力が発生し、これによりスプリングの付勢力に抗してクラッチボスがオペレーションプレート側に押出され、オペレーションプレートがプレッシャープレートから離間する方向に移動してフリクションプレートとクラッチプレートに対するオペレーションプレートの押圧力が小さくなりメインアクスルからエンジン側へのトルクの伝達が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-21719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたクラッチ装置は、プレッシャープレートにコイルスプリングシャフトが螺合され、このコイルスプリングシャフトに保持されたスプリングの付勢力によってオペレーションプレートがプレッシャープレート側に押圧されているため、メインアクスル側からトルクが伝達されて第一リングと第二リングにスラスト力が発生すると、クラッチボスがプレッシャープレート及びオペレーションプレートに対して円周方向に回転しながらオペレーションプレート側に移動しオペレーションプレートとクラッチボスとが当接し、当接したままクラッチボスがオペレーションプレートに対してさらに回転移動することでオペレーションプレートがプレッシャープレートから離れる側に押出される。
このとき、オペレーションプレートはスプリングの付勢力によりプレッシャープレート側に押圧されているため、クラッチボスがオペレーションプレートと当接した状態で回転移動する際にクラッチボスとオペレーションプレートとの間で摩擦抵抗が生じてスティックスリップ現象が発生してしまう。このため、オペレーションプレートとプレッシャープレートとがスムーズに離間されず、メインアクスルからエンジン側へのトルクの伝達が不安定となり駆動輪と路面との間でスリップやホッピングが発生して操作者が意図しない車両の挙動が生じてしまう恐れがある。
【0007】
また、クラッチボスとオペレーションプレートとの間に生じる摩擦抵抗によりクラッチボスやオペレーションプレートが摩耗して部品が破損する恐れがある。
【0008】
なお、特許文献1に記載のクラッチ装置の他に、プレッシャープレートにコイルスプリングシャフトが螺合され、クラッチボスとオペレーションプレートとが円周方向に沿ってそれぞれ設けられた凹凸の溝部で互いに噛み合うように設けられたクラッチ装置が知られている。
【0009】
このクラッチ装置では、プレッシャープレートに対してクラッチボスが円周方向に回転しながら離間する際にクラッチボスとオペレーションプレートとが一体的に回転するためクラッチボスとオペレーションプレートとの間で回転のずれは生じないが、コイルスプリングシャフトによって支持されたスプリングとオペレーションプレートと間で円周方向の相対的な回転のずれが生じてしまう。
【0010】
スプリングにはオペレーションプレートをプレッシャープレート側に押圧する付勢力が働いているため、スプリングとオペレーションプレートとがずれる際にスプリングとオペレーションプレートとの間で摩擦抵抗が生じてスティックスリップ現象が発生してしまいオペレーションプレートとプレッシャープレートとがスムーズに離間されず、メインアクスルからエンジン側へのトルクの伝達が不安定となり駆動輪と路面との間でスリップやホッピングが発生してしまう恐れがある。
【0011】
また、スプリングとオペレーションプレートとの間に生じる摩擦抵抗により、オペレーションプレートの円形凹部やスプリングが摩耗して部品が破損する恐れがある。
【0012】
本発明の課題は、メインアクスル側からトルクが伝達された際にメインアクスルからエンジン側へのトルクをより円滑に伝達させて、操作者が操作し易いクラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係るクラッチ装置は、車体側に取付けられエンジン側からの出力により一方向に回転するハウジングと、ハウジングの円周方向内側に着脱可能に取付けられハウジングの回転軸方向にスライド可能なフリクションプレートと、軸方向に延びるコイルスプリング凹部を有し、ハウジング及びフリクションプレートの車体外側に配置されハウジングの回転軸方向にスライド移動してフリクションプレートと接触及び離間するオペレーションプレートと、オペレーションプレートの車体内側且つフリクションプレートの円周方向内側で軸方向に沿って配置され軸方向にスライド移動してオペレーションプレートと接触及び離間する円筒部と、円筒部の円周方向内側に設けられ軸方向に貫通する貫通孔部が形成された円板部とを有するクラッチボスと、クラッチボスの円筒部に着脱可能に取付けられ円筒部に沿って軸方向にスライド移動してフリクションプレートと接触及び離間するクラッチプレートと、クラッチボスの車体内側でメインアクスルに接続され、オペレーションプレートとの間でフリクションプレート及びクラッチプレートを挟みこむように配置されるプレッシャープレートと、プレッシャープレートとクラッチボスとを一方向に一体的に回転させるとともに、メインアクスル側からトルクが伝達された際にクラッチボスに対してプレッシャープレートを相対的に回転させてプレッシャープレートに対してクラッチボスを離間させるカム機構と、オペレーションプレートのコイルスプリング凹部に軸方向に沿って配置され車体内側の一端がオペレーションプレートと接するコイルスプリングと、プレッシャープレートに対して円周方向に回転可能に取付けられる取付部と、取付部から車体外側に延びてクラッチボスの貫通孔部とオペレーションプレートのコイルスプリング凹部とコイルスプリングとに挿通されコイルスプリングを車体外側の他端側から押圧する押圧部とを有するコイルスプリングシャフト部とを備え、メインアクスル側からトルクが伝達されると、コイルスプリングシャフト部とクラッチボスとコイルスプリングとオペレーションプレートのコイルスプリング凹部とに対してプレッシャープレートが円周方向に回転するとともに、カム機構によりクラッチボスがプレッシャープレートから離間する方向に移動してプレッシャープレートとオペレーションプレートとを離間させてフリクションプレート及びクラッチプレートに対するオペレーションプレートの押圧力を減少させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクラッチ装置では、プレッシャープレートに対してコイルスプリングシャフト部が円周方向にスライド可能に取付けられているため、メインアクスル側からトルクが伝達された際に、コイルスプリングシャフト部とクラッチボスとコイルスプリングとオペレーションプレートとに対してプレッシャープレートのみが円周方向に相対的に回転する。このため、クラッチボスがプレッシャープレートから離間する方向に移動してオペレーションプレートを車体外側に押出しフリクションプレート及びクラッチプレートに対するオペレーションプレートの押圧力を減少させる際に、クラッチボスとオペレーションプレートとの間及びコイルスプリングとオペレーションプレートとの間で円周方向の回転のずれが発生しない。これにより、オペレーションプレートとプレッシャープレートとをより円滑に離間させてメインアクスルからエンジン側へのトルクをより円滑に伝達させることができ、駆動輪と路面との間で生じるスリップやホッピングを抑止して操作者が意図する車体制動を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の実施形態であるクラッチ装置の断面図である。
図2図2はカム機構及び回転プレートを示す斜視図である。
図3図3はクラッチが接続された状態を説明する概略説明図である。
図4図4はメインアクスル側からトルク伝達された時のクラッチ装置を説明する概略説明図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るクラッチ装置の実施形態について、図1図4をもとに説明する。
【0017】
図1は本実施形態におけるクラッチ装置を示す断面図である。図2はカム機構及び回転プレートを示す斜視図である。図3はクラッチが接続された状態を説明する概略説明図である。図4はメインアクスル側からトルク伝達された時のクラッチ装置を説明する概略説明図である
【実施例0018】
図1に示すようにクラッチ装置1は、ハウジング2とフリクションプレート3とクラッチプレート4とオペレーションプレート5とクラッチボス6とプレッシャプレート7とカム機構8とコイルスプリング9とコイルスプリングシャフト部10とを備えている。
【0019】
ハウジング2は、円板状の円板部2aと、円板部2aの外周から車体方向外側(図面上、OUTで示す)に延びる複数のハウジング凸部2bとが形成され車体側のエンジン(図示せず)に接続されている。円板部2aの中心部にはメインアクスル11が挿通されるメインアクスル挿通孔2cが形成されている。複数のハウジング凸部2bは円板部2aの外周に沿って等間隔に配置されており各ハウジング凸部2b間にはハウジング溝部2dが形成されている。ハウジング2には図示していないギアを介してエンジンからのトルクが入力される。
【0020】
フリクションプレート3は、環状の円板部材で形成され外周方向に凸状に延びる複数のフリクションプレート凸部3aが設けられている。フリクションプレート3はハウジング凸部2bの内側でハウジング2の車体内側(図面上、INで示す)から外側に沿って複数配置されている。各フリクションプレート3は、フリクションプレート凸部3aがハウジング溝部2bに組み付けられてハウジング2とともに回転する。
【0021】
クラッチプレート4は、環状の円板部材で形成され内周方向に凸状に延びる複数のクラッチプレート凸部4aが設けられている。クラッチプレート4はフリクションプレート3の間にそれぞれ配置されている。
【0022】
オペレーションプレート5は、円盤状の部材でありハウジング2の車体外側に配置されている。オペレーションプレート5には、円周方向外端に設けられたオペレーションプレートフランジ部5aが形成され、このオペレーションプレートフランジ部5aの円周方向内側には車体方向外側に向かって凹状に形成された環状溝部5bが設けられている。この環状溝部5bの車体内側には車体方向内側に向かって凹状に形成された複数のコイルスプリング凹部5cが設けられ、コイルスプリング凹部5cの円周方向内側且つオペレーションプレート5の中心部にはレリーズ機構5dが取付けられている。また、各コイルスプリング凹部5cにはそれぞれ貫通孔5eが設けられている。
【0023】
クラッチボス6は、円板状のクラッチボス円板部6aと、このクラッチボス円板部6aの外周端に設けられた円筒状のクラッチボス円筒部6bから形成され、オペレーションプレート5の車体内側に設置されている。クラッチボス円板部6aの中心孔にはメインアクスル11が貫通しておりメインアクスル11の車体外端にはリーフスプリング12を介してセンターナット13が取り付けられている。また、クラッチボス円板部6aには軸方向に貫通する複数の貫通孔部6fと、この貫通孔部6f間に配置され車体内側に延びる台形状のクラッチボス凸部6cが複数形成されている。クラッチボス円筒部6bの外周面は凹凸状となっておりこのクラッチボス円筒部6bの外周面とクラッチプレート凸部4aとが噛み合うように複数のクラッチプレート4が取付けられている。さらに、クラッチボス円筒部6bの車体外端はオペレーションプレート5の環状溝部5bと対向しており、クラッチボス円筒部6bの車体外端とオペレーションプレート5とが接触及び離間可能に配置されている。クラッチボス凸部6cは、クラッチボス円板部6aの回転方向の一端面6dがクラッチボス円板部6aに対して垂直に形成され、他端面6eがクラッチボス円板部6aに対して一定の角度となる斜面で形成されている。
【0024】
プレッシャープレート7は、メインアクスル11に接続されるアクスル接続部7aと、このアクセル接続部7aから円周方向外側に延びる円板状のプレッシャープレート円板部7bと、このプレッシャープレート円板部7bの円周方向外側に延びるプレッシャープレートフランジ部7cとが形成されている。プレッシャープレート7は、クラッチボス6の車体内側且つハウジング2の車体外側に配置され、プレッシャープレートフランジ部7cとオペレーションプレートフランジ部5aとの間でフリクションプレート3及びクラッチプレート4を挟み込むように設置されている。プレッシャープレート円板部7bには、軸方向に貫通する楕円形状のプレッシャープレート貫通孔7dが複数形成されており、各プレッシャープレート貫通孔7d間には車体外側から内側に凹む複数のプレッシャープレート凹部7eが設けられている。このプレッシャープレート凹部7eは、プレッシャープレート円板部7bの回転方向の一端面7fがプレッシャープレート円板部7bに対して垂直に形成され、他端面7gがプレッシャープレート円板部7bに対して一定の角度となる斜面で形成されている。プレッシャープレート7及びクラッチボス6は、プレッシャープレート凹部7eの一端面7fとクラッチボス凸部6cの一端面6dとが接し、プレッシャープレート凹部7eの他端面7gとクラッチボス凸部6cの他端面6eが接するように配置されている。なお、メインアクスル11の車体外端側に取付けられたリーフスプリング12の付勢力によりクラッチボス6がプレッシャープレート7側に押圧されている。
【0025】
図2図4に示すようにカム機構8は、クラッチボス凸部6cとプレッシャープレート凹部7eとが噛み合ってクラッチボス6とプレッシャープレート7とが接続している接続状態と、クラッチボス凸部6cに対してプレッシャープレート凹部7eがスライドすることによりクラッチボス6とプレッシャープレート7が離間する離間状態とする機構である。
【0026】
図3に示すようにリーフスプリング12の付勢力によりクラッチボス6がプレッシャープレート7側に押圧された状態では、クラッチボス凸部6cとプレッシャープレート凹部7eとが噛み合っている状態となりクラッチボス6とプレッシャープレート7とが接している接触状態となる。図4の矢印A1に示すようにプレッシャープレート7がクラッチボス6に対して相対的に回転するとクラッチボス凸部6cの他端面6eに対してプレッシャープレート凹部7eの他端面7gがスライドしてリーフスプリング12の付勢力に抗してクラッチボス6がオペレーションプレート5側に移動しクラッチボス6とプレッシャープレート7とが離間する離間状態となる。
【0027】
コイルスプリング9は、コイルスプリング凹部5cに配置され車体内側の一端がオペレーションプレート5と接している。
【0028】
コイルスプリングシャフト部10は、プレッシャープレート7の車体内側に配置される環状の回転プレート10aと、回転プレート10aから車体外側に延びるように複数設けられた円筒状のコイルスプリングシャフト10bとから形成されている。回転プレート10aは、中心孔にアクスル接続部7aが貫通しCリング14を介してアクスル接続部7aに保持されるように取付られている。また、プレッシャープレート7との間にはスラストベアリング15が設けれて円周方向に回転可能となっている。コイルスプリングシャフト10bはプレッシャプレート貫通孔7dを貫通しており回転プレート10aとともにプレッシャープレート7に対して円周方向に回転移動が可能となっている。さらにコイルスプリングシャフト10bは、クラッチボス6の貫通孔部6fとコイルスプリング凹部5cの貫通孔5eとコイルスプリング9とを貫通しており、コイルスプリングシャフト10bの車体外端にはスプリングボルト10c及びリテーナ10dが取付けられコイルスプリング9を保持している。この保持されたコイルスプリング9の付勢力によりオペレーションプレート5がプレッシャープレート7側に向かって押圧されている。
【0029】
これら回転プレート10a、コイルスプリングシャフト10b、プレッシャープレート7、クラッチボス6、オペレーションプレート5及びコイルスプリング9は、カム機構8によりプレッシャプレート7とクラッチボス6とが互いに離れる方向に移動すると、プレッシャープレート7が回転プレート10aとコイルスプリングシャフト10bとクラッチボス6とコイルスプリング9とオペレーションプレート5とに対して円周方向に相対的に回転するように設けられている。言い換えれば、回転プレート10a、コイルスプリングシャフト10b、プレッシャープレート7、クラッチボス6、オペレーションプレート5及びコイルスプリング9は、カム機構8によりプレッシャプレート7とクラッチボス6とが互いに離れる方向に移動すると、プレッシャープレート7に対して回転プレート10aとコイルスプリングシャフト10bとクラッチボス6とコイルスプリング9とオペレーションプレート5とが円周方向に一体的に回転するように設けられている。
【0030】
次に本実施形態におけるクラッチ装置1の動作について図1図3及び図4をもとに説明する。
【0031】
クラッチ装置1は操作者によりクラッチが接続された状態では、オペレーションプレート5とコイルスプリング9の付勢力によってオペレーションプレート5が車体内側に押圧されており、フリクションプレート3及びクラッチプレート4がオペレーションプレート5とプレッシャープレート7との間で挟みこまれる形で接している。また、クラッチボス6とプレッシャープレート7とはクラッチボス凸部6cとプレッシャープレート凹部7eと噛み合った接続状態となっており、クラッチボス円筒部6bの車体外端とオペレーションプレート5の環状溝部5bとの間は離間した状態となっている。この状態においては、ハウジング2を介して伝わる車体側からの動力がフリクションプレート3、クラッチプレート4、クラッチボス6及びプレッシャープレート7を介してメインアクスル11に出力される。
【0032】
図4の矢印Tで示すようにメインアクスル11側からトルクが伝達されると、矢印A1に示すように、回転プレート10aとコイルスプリングシャフト10bとクラッチボス6とコイルスプリング9とオペレーションプレート5とに対してプレッシャープレート7が円周方向に相対的に回転し、プレッシャープレート7とクラッチボス6とがカム機構8によりリーフスプリング12の付勢力に抗して離間状態となり、クラッチボス円筒部6bの車体外端がオペレーションプレート5の環状溝部5bに当接し、さらに矢印A2に示すようにオペレーションプレート5がコイルスプリング9の付勢力に抗して車体外側に向かって移動することでオペレーションプレート5とプレッシャープレート7とが離間する。これにより、フリクションプレート3及びクラッチプレート4に対するオペレーションプレート5の押圧力が弱まりフリクションプレート3とクラッチプレート4との間で伝達されるトルク、すなわちメインアクスル11からエンジン側へのトルクが一定の力に規制される。
【0033】
この実施形態によるクラッチ装置1では、プレッシャープレート7に対して回転プレート10a及びコイルスプリングシャフト10bが円周方向にスライド可能に取付けられているため、メインアクスル11側からトルクが伝達された際に、回転プレート10aとコイルスプリングシャフト10bとクラッチボス6とコイルスプリング9とオペレーションプレート5とに対してプレッシャープレート7のみが円周方向に相対的に回転する。このため、クラッチボス6がプレッシャープレート7から離間する方向に移動してオペレーションプレート5を車体外側に押出しフリクションプレート3及びクラッチプレート4に対するオペレーションプレート5の押圧力を減少させる際に、クラッチボス6とオペレーションプレート5との間及びコイルスプリング9とオペレーションプレート5との間で円周方向の回転のずれが発生しない。すなわち、オペレーションプレート5とプレッシャープレート7とが離間する際のクラッチボス6及びオペレーションプレート5の間、コイルスプリング9及びオペレーションプレート5の間の回転のずれによる摩擦抵抗を無くして、オペレーションプレート5とプレッシャープレート7とを円滑に離間させることができる。
【0034】
これにより、メインアクスル11からエンジン側へのトルクをより円滑に伝達させることができ、駆動輪と路面との間で生じるスリップやホッピングを抑止して車体の操作性をより向上させることができる。
【0035】
なお、クラッチボス円板部6aとクラッチボス円筒部6bとが一体的なものとして説明をしたが別体的なものとしてもよい。また、回転プレート10aとコイルスプリングシャフト10bとが一体的なものとして説明をしたが別体的なものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
【符号の説明】
【0037】
1 クラッチ装置
2 ハウジング
2a 円板部
2b ハウジング凸部
2c メインアクスル挿通孔
2d ハウジング溝部
3 フリクションプレート
3a フリクションプレート凸部
4 クラッチプレート
4a クラッチプレート凸部
5 オペレーションプレート
5a オペレーションプレートフランジ部
5b 環状溝部
5c コイルスプリング凹部
5d レリーズ機構
5e 貫通孔
6 クラッチボス
6a クラッチボス円板部(円板部)
6b クラッチボス円筒部(円筒部)
6c クラッチボス凸部(カム機構)
6d 一端面
6e 他端面
6f 貫通孔部(貫通孔部)
7 プレッシャプレート
7a アクスル接続部
7b プレッシャープレート円板部
7c プレッシャープレートフランジ部
7d プレッシャープレート貫通孔
7e プレッシャープレート凹部(カム機構)
7f 一端面
7g 他端面
8 カム機構
9 コイルスプリング
10 コイルスプリングシャフト部
10a 回転プレート(取付部)
10b コイルスプリングシャフト(押圧部)
10c スプリングボルト(押圧部)
10d リテーナ(押圧部)
11 メインアクスル
12 リーフスプリング
13 センターナット
14 Cリング
15 スラストベアリング
図1
図2
図3
図4