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特開2025-5371消臭機能・抗菌防臭機能を有する合繊不織布の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005371
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】消臭機能・抗菌防臭機能を有する合繊不織布の製法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20250108BHJP
   D06M 11/42 20060101ALI20250108BHJP
   D06M 11/44 20060101ALI20250108BHJP
   D04H 1/4291 20120101ALI20250108BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20250108BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20250108BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20250108BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20250108BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A61F13/511 300
D06M11/42
D06M11/44
D04H1/4291
A61F13/15 310
A61F13/15 141
A61F13/15 142
A61L15/26 200
A61L15/18 200
A61L15/20 200
A61L15/46 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2024024099
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023115523
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】514055912
【氏名又は名称】株式会社機能素材大阪
(72)【発明者】
【氏名】下村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】東 直之
(72)【発明者】
【氏名】嶌崎 佐太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
4L031
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BB03
3B200BB22
3B200BB24
3B200CA02
3B200CA11
3B200DC01
3B200DC02
3B200EA07
4L031AA02
4L031AA13
4L031AA18
4L031AA20
4L031AB34
4L031BA13
4L031DA12
4L031DA13
4L047AA14
4L047AA29
4L047AB02
4L047CB07
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生理用品等の表材となる合繊系不織布に親水性を与え、害も及ぼさず、尿や糞便などから発生する主な悪臭の消臭機能と汚れた状況でも抗菌防臭機能を持つ表材とし利用できる合繊系不織布の製造方法、及び該不織布を少なくとも表材の一部とすると、濡れ感を抑えた生理用品に使用できる合繊系不織布を提供する。
【解決手段】純度の高い銅、或いは亜鉛を真空蒸着したフィルムを得て、それを断裁して希クエン酸溶媒で錯体化した銅又は亜鉛陰イオンを、或いは酸化亜鉛粉末をクエン酸で溶解して得られた錯体亜鉛陰イオンをほぼ全て含む、亜鉛陰イオン水を得て、pHは強酸域に調整し、合繊系不織布をノニオン系界面活性剤で親水化し、何れかの液剤を噴霧、或いは浸漬し、乾燥すると当該製品表材として少なくとも一部として使用できる当該製品の濡れ感を抑えた消臭機能と抗菌防臭機能を備えた合繊系不織布を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み9~15μのポリエステルに代表される合成樹脂フィルムを基材とし、該基材に何らの前処理もせず、少なくとも該基材フィルムの片側に高純度の銅で厚み800Å~900Å真空蒸着で得た銅蒸着層を露出し、1辺2~3cmの略四角形に断裁し、当該断裁フィルムを水とクエン酸(クエン酸1水和物濃度は5重量%以上)溶媒の温度35~40℃にて、例えば、撹拌機シャフトにテフロン加工し、スクリュウはポリカーボネイト製で、別金属のイオン化を避けるためポリエチレン製タンクを使用し、例として容量200Lタンクに当該溶媒130Lで当該断裁フィルム40~45万枚程度投入し攪拌すると、イオン濃度900~1,000ppm前後、ほぼ全て錯体銅陰イオンを持つ銅イオン水(以下、銅陰イオン水という。)を120L強得る方法。クエン酸一水和物濃度を最大10%としたのは消臭試験有効値を得るためには水で約20倍希釈までを前提すべきで、その希釈倍率なら抗菌防臭機能も有効となる。但し、攪拌タンク容量、溶媒量、蒸着フィルム断片量と陰イオン濃度は相関関係にある。
【請求項2】
請求項1に記載の方法にて、蒸着金属を高純度亜鉛として攪拌すると、イオン濃度が1,000ppm前後で、ほぼ全て錯体化した亜鉛陰イオンを持つ亜鉛イオン水(以下、亜鉛陰イオン水▲1▼という。)を得る方法。但し、請求項1に記載の相関関係の存在は同様である。
【請求項3】
請求項1、2に記載の抗菌性金属蒸着フィルム断片の代替として、酸化亜鉛粉末140~150gを、水とクエン酸1水和物濃度5重量%以上のクエン酸溶媒に、例えばポリエチレン製タンクに110L投入し、請求項1に記載のプラスチック製タンクで、溶媒温度50℃程度に設定し、回転数350回/分前後で攪拌すると、酸化亜鉛のモル比からイオン濃度1,000ppm前後、約1時間程度でほぼ全てが錯体化した亜鉛陰イオンを持つ亜鉛イオン水(以下、亜鉛陰イオン水▲2▼という。)を少なくとも110L弱程度を得る方法。上記請求項1,2と同様に、撹拌タンク容量、溶媒量と酸化亜鉛粉末量の相関関係の存在は同様である。
【請求項4】
合成繊維からなる不織布に、請求項1、2或いは3に記載の、銅陰イオン水、又は亜鉛陰イオン水をイオン濃度50~100ppmに希釈調整して、微量のノニオン系界面活性剤を添加して、或いは前以て当該不織布に該界面活性剤を塗工・乾燥した後に何れかの陰イオン水を噴霧或いは浸漬後に乾燥させると、該不織布は親水化し、前記2種の陰イオン水何れかを20%程保持できる。前記2種イオンに4座配位結合したカルボキシ基、水素イオン解離後も一部はカルボキシラートイオンとして当該不織布乾燥後も陰イオンとして残留し、当該不織布は尿・糞便・経血による塩素系陰イオンや有機物陰イオンとは無反応で尿・糞便・経血が付着した汚れた状況でも抗菌防臭機能を果たし、且つ配位結合したカルボキシ基、或いはカルボキシラートイオンが尿や糞便の主たる臭気のアンモニアやインドール分子と反応・結合し消臭機能も可能な、使い捨てオムツや生理用ナプキンの人の肌及びペット動物の皮膚に接触する表材の少なくとも一部として使用できる当該不織布を得る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、オムツ着用中、或は廃棄を行う時に、人やペット動物の尿に含まれる尿素は元来臭気を持たないにも拘らず、排泄後にはバクテリアの作用もあり、化学変化もして、アンモニアとなり悪臭を発し、更に糞便もアンモニア、インドール、メチルメルカプタン、硫化水素などの悪臭を発して使い捨てオムツを使用する人、廃棄する人を不快にさせる。
その悪臭をマスキングという臭いを隠す方法、或いは香料にて臭いを誤魔化す方法ではなく、希クエン酸溶媒にて得られた錯体銅酸陰イオンを有する銅陰イオン水、或いは錯体亜鉛酸陰イオンを有する亜鉛陰イオン水▲1▼或いは▲2▼を合繊系不織布に塗工し、該不織布上に残留した当該陰イオンに配位結合したカルボキシ基やカルボキシラートイオンにより悪臭の分子構造を変えるメカニズムにより、希釈後も少なくともアンモニア・インドールといった尿や糞便の主な悪臭を軽減し、また抑制できる合繊系不織布を得る方法と、当該方法により得られた合繊系不織布を表材の一部として使用し、使い捨てされる不織布製オムツや、生理用ナプキンなど生理用品の悪臭消臭技術に関する。
又、人の肌にも安全で弱酸であるクエン酸溶媒により、希釈後も錯体陰イオンがほぼ全てを占める銅陰イオン水、或いは2通りの亜鉛陰イオン水は、陰イオンが高濃度でも水で濃度調整を行うとpHは2.0から3.5迄に収められる。当該3通りの陰イオン水が持つ2種の陰イオンは尿や糞便に含まれる塩素系陰イオンや有機物陰イオンとは反応をせず、不織布製オムツや生理ナプキンといった生理用品の少なくとも表材の少なくとも一部として使用する事で、使い捨てオムツや生理用品の表材である不織布、当該不織布からなる該製品が汚れた状態でも抗菌防臭機能を実現させることができる技術に関する。
【背景技術】
【0001】
近年、吸水性のあるセルロース繊維などの天然繊維のみではなく、主にポロプロピレンといった合成繊維から成る不織布が使い捨て可能なオムツや生理用ナプキンの濡れ感を軽減できる表材として使用され、パルプ系短繊維といったセルロース系綿状繊維と当該綿状繊維内に散りばめられた合成樹脂系吸水剤により吸水性・保水性を持たせ、防水用合成樹脂フィルムを該製品裏面(肌に触らない面)の少なくとも一部に貼付するなど水分の逆流や漏れを防ぐ中材として使用されている。それらの素材により使い捨てオムツや生理用品が当該製品製造業界で周知の方法により製造されている。
【0002】
人やペット動物は当然体温を持っていて、通常その体温は35.0~39.0℃程度であり、汗、皮膚片、尿や糞便等の排泄物や経血の付着といった、微生物の増殖には適した環境にある。例えば尿素のように汗や尿に含まれていて元来臭気を持たない物質がバクテリアも作用し化学変化を起こして二酸化炭素を生成し、アンモニアに変化して悪臭を発する。使い捨てオムツや生理用品には人の肌やペット動物の皮膚に安全性を担保できて、銀系、或は亜鉛系、銅系といった抗菌性金属イオンを塗工して該製品の表材となる合繊系不織布が表材として使用する事が検討されている。当該製品の中材にはセルロース系綿状繊維に合成樹脂系の吸水剤が散りばめられて、吸水性・保水性が担保されているが、悪臭を消臭できる消臭機能と汚れた状況でも抗菌防臭機能を持ち、濡れ感も無く、人の肌やペット動物に何らの害も与えない当該製品に期待が寄せられている。
尚、抗菌性金属が銅や亜鉛の場合、錯体銅陰イオン或いは錯体亜鉛陰イオンにはカルボキシ基或いはカルボキシラートイオンが4座配位して安定しているし、尿素がアンモニアに変化する場合に発せられる二酸化炭素と尿の水分や空気中の酸素も関与する緑青の形成は、オムツや生理用品は1~2日で廃棄されることを考えればほぼ無いものと言える。
【0003】
しかし、使い捨てされるオムツや生理用ナプキンには安価で強度のある、主にポリプロピレン製の薄い不織布は上記液剤塗工後の乾燥最終工程で金属或いはゴムロール等のガイドロールに触れて剥離し陽電荷を帯びている故か、若しくは抗菌性金属陽イオンを含む液剤と界面活性剤を前以て塗工しても抗菌性金属陽イオンのみを含む液剤を噴霧、又は浸漬後に乾燥すると該不織布上に該陽イオンは残留出来ない可能性がある。残留できたとしても抗菌性金属陽イオンは塩素イオン、有機物イオンと反応して塩を形成し抗菌防臭機能や消臭機能を果たせない。これが単なる抗菌性金属陽イオン及びそれを含む溶液が使い捨てオムツや生理用品に使用されない理由である。当該製品の中材に関しても抗菌性金属が陽イオンでも陰イオンでも水に溶解しているので、当該中材を構成する綿状繊維は嵩高であり乾燥後に吸水力・保水力にも悪影響が残ることもあるので、コストの関係からも何れかの液剤(銅陰イオン水・亜鉛陰イオン水▲1▼・▲2▼)に浸漬し、或いは噴霧して乾燥させるこの工程は採用されることはないものと言える。
【0004】
既に存在し得る使い捨てオムツや生理用品には、主には有機化学剤によって抗菌機能や消臭機能が付与されているものが考えられるが、環境や健康に悪影響を及ぼす可能性のある有機化学剤による該機能の実現は現在重要視されているSDGsコンセプトに反し消費者に忌避され易いので、代替になり安全かつ簡便な方法による表材の消臭機能や抗菌防臭機能を有し、廉価で濡れ感が少ない合繊系不織布を表材とし、吸水性、保水性や防水性もあり、中材としてセルロース系綿状繊維や合成樹脂系吸水剤からなり、上記2種の機能を有する使い捨てオムツや生理用品に期待が寄せられている。
【0005】
勿論、生用ナプキンの表材として当該合繊系不織布ではなく、綿などセルロース系不織布が使用される場合も銅や亜鉛が錯体化し陰イオンになっているクエン酸溶媒による銅陰イオン水、或いは亜鉛陰イオン水▲1▼・▲2▼に含有されるイオンは錯体陰イオン化しているので抗菌性金属陽イオンより低濃度、故に低コストにて、尿・経血などで汚れた状況の当該製品を抗菌防臭化できるし、尿の主な臭気であるアンモニア、糞便の主な臭気であるインドールを消臭出来る。
【0006】
亜鉛は両性金属なので先ず苛性ソーダ次いでアンモニア水により錯体化した液状の抗菌剤が塗工され使用されているオムツや生理用品に使用されているようだが、生成されたテトラアンミン亜鉛(II)錯体は電荷を持たないし(テトラアンミン亜鉛(II)は陽電荷2を持ち、苛性ソーダ由来の水酸基の陰電荷2と打ち消しあう。)、この溶液を塗工した不織布は中心金属の亜鉛が濡れてイオン化し抗菌機能を果たすことも考えられるが、アンモニアが4座配位結合した無電価の錯体亜鉛では消臭機能は果たせない。両機能を果たせる合繊系不織布を製造するためには合成繊繊を製造する際にゲル状の合成樹脂溶液に抗菌剤、防臭剤を練り込み繊維化するか、出来上がった合繊系不織布に例えばウレタンなどのバインダーに混合して抗菌剤や消臭剤を塗工しなければならない。この場合、尿や経血といった液体が当該合繊系不織布を透過できず、セルロース系綿材からなる中材に水分や液体が吸収・保水されないという致命的な欠点が露呈するし、そもそも水分量が非常に多い銅陰イオン水や亜鉛陰イオン水は接着剤の主成分である合成樹脂に馴染まない。
【0007】
上記のテトラヒドロキシド亜鉛(II)錯体粘性溶液ではなく酸化亜鉛に過剰なほどのアンモニア水を注ぐと2価の錯体陽イオンの透明液剤になるが、抗菌性金属の錯体であっても陽電荷を持つと尿や糞便の持つ塩素イオンや有機物イオンと反応して、尿や糞便により汚れた状況で各種細菌類が多い状況では抗菌防臭や消臭機能は果たせない。それよりも希クエン酸で酸化亜鉛を溶解してカルボキシ基が4座配位結合したテトラカルボキシ亜鉛酸イオンのカルボキシ基とカルボキラーとイオンが悪臭と反応・結合し消臭機能を果たすし、中心金属の銅(亜鉛)が錯体化して陰イオン化しているので抗菌防臭機能を果たせる。但し、クエン酸溶媒による酸化亜鉛の溶解率は溶媒温度を50℃でも90%程度乃至は少し上になるとの学説もあり、クエン酸溶媒に溶解しない酸化亜鉛の酸素と亜鉛のモル比を考慮すれば出来上がる錯体亜鉛酸陰イオンのイオン濃度には注意を要する。
【0008】
人やペット動物は生命維持のため水分や食物を摂取するので、必ず尿や糞便を排泄する。人間やペット動物が摂取した水分や食物の水分や栄養素は口腔内で咀嚼され胃で分解・消化され水分は吸収されて、十二指腸、小腸といった消化器官によって栄養分は体内に吸収されて人やペット動物には有益であるが、消化器官が正常に機能していても、いなくても食物残渣は無数の活性不活性を問わない多種多量の細菌と共に大腸を通して糞便として排泄され、各種の細菌死骸、存命細菌類や摂取された食物残渣は胆汁などと混ざり悪臭を発するので、オムツを着用中、或は廃棄の際には悪臭に悩まされる事が非常に多い。
特に尿や糞便が発する悪臭は、前者はアンモニア、後者はインドールが主である。
【0009】
近年では、上記のように使い捨てのオムツや生理用品は合成繊維による不織布或いはセルロース系不織布や、上記綿状繊維や合成樹脂からなる吸水剤により製造されていて、使い捨てられることが日常である。本発明により主たる悪臭を軽減できて、抗菌防臭機能もあり、且つ安全性もある該不織布とそれからなるオムツや生理用品などの製品への期待と需要が高まっている。
【0010】
また、人の肌に触れるオムツや生理用品の表材となる合成繊維系不織布はポリプロピレンに代表されるように疎水性なので、銅陰イオン水や亜鉛陰イオン水は、直接塗工されると該不織布の疎水性による撥水性により該不織布に残留・透過出来ず、当然中材の綿状セルロース系繊維に吸収されず弾かれてしまう。人の肌やペット動物の皮膚に害のないノニオン系の界面活性剤を前以て該不織布に周知の方法で塗工するなり、銅陰イオン水や亜鉛陰イオン水▲1▼或いは▲2▼に微量添加後の混合液剤に当該不織布を噴霧或いは浸漬し乾燥して親水性を持たせて当該製品の少なくとも表材の一部とすることで、下記に示すように散りばめられた合成樹脂系吸水剤や少なくとも部分的に貼付されたプラスチックフィルムにより尿や経血など水分や液体の吸水性や保水性及び逆流防止は当該製品の中材となるセルロース系綿状繊維と貼付された該フィルムが果たす。
【0011】
又、尿や経血を吸収し保持できるパルプなどのセルロース系綿状繊維に吸水性、防水性を確保し、合成樹脂から成る吸水剤を綿状繊維に散りばめる事で下着など外部への漏れを防ぐ保水性が確保され、又適当な部位にプラスチックフィルムを貼付して防水性を担保する事が尿や経血などの漏れや逆流を防ぐために当該製品構成材として重要であり、着用者が尿や経血の濡れ感を防ぐには該加工済み該不織布の表材が適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5988476号
【0013】
【非特許文献】
【非特許文献】[無機マテリアル学会誌]著者:現 高麗寛紀徳島大学名誉教授 無機抗菌剤の開発の現状と将来Vo.6 1999年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
使い捨てされるオムツには廉価で薄く、軽く且つ強度のある主にポリプロピレン製の薄い不織布が主たる表材として使用されているが、製造時或いは本発明実施時の液剤への塗工後に乾燥され金属製或いはゴム製のロールと触れて剥離し、乾燥工程の出口では既に水分が蒸発してしまい該不織布は陽電荷を帯びている故か、或いは当該製品の表材の経時変色を避けるためか、例えば銅(亜鉛)陽イオン水に微量のノニオン系界面活性剤を添加した液剤を噴霧・乾燥し、更に銅(亜鉛)陽イオン水に浸漬後に乾燥すると該不織布上に銅陽イオンは残留出来ない可能性があるし、残留できたとしても尿や糞便に含まれる有機物イオンと反応し不溶性の塩となり、抗菌防臭機能を果たせない。又、陽イオン特有の経時変色により製品ロスが起こる事もある。前記機能不活性化はセルロース系不織布や吸水・保水性を持つ内部構成材のセルロース系綿状繊維に銅(亜鉛)陽イオンを担持させても同様である。尚、この現象は銀でも同様に起こる。
尚、本明細書の請求項1,2の製造方法はほぼ同様なので、全て「銅(亜鉛)」と記述したし、今後も記述する。
【0015】
既に存在し得る使い捨てオムツや生理用品には有機化学剤によって消臭機能や抗菌防臭機能が付与されるもの考えられるが、環境や健康に悪影響を及ぼす特に有機化学剤による当該機能の実現は消費者に忌避される事もあり得るし、SDGsに沿った再生再利用も難しいので、代替になる安全かつ簡便な方法で得られる素材による消臭機能や抗菌防臭機能を有し、且つ廉価で強度のある合繊系不織布を少なくとも一部を表材とし、吸水性や保水性も防水性もあり、中材としてセルロース系綿状繊維や合成樹脂系吸水剤からなる使い捨て可能なオムツや生理用品に期待や需要が寄せられている。
【0016】
銅陽イオンに限らず、亜鉛や銀といった抗菌性金属陽イオンは悪臭分子の一部と配位結合、或いは水素結合をして臭気を消す事もできるが、抗菌性金属陽イオンは疎水性のポリプロピレン不織布にノニオン系親水性界面活性剤を塗工や浸漬しても当該不織布上には電荷の関係で残留できない可能性がある。或いは抗菌性金属はイオン化しないと抗菌機能を発揮できない。テトラアンミン亜鉛(II)イオンのように水酸化イオンとの電荷の打ち消し合いで電荷を持たない該物質は尿や経血の水分によりイオン化出来たとしても、尿の水分との反応により塩化亜鉛を形成し塩化亜鉛は電離できるので反応して抗菌機能は活きる可能性は有るが、塩化亜鉛は肌には有害だし、テトラアンミン亜鉛(II)イオンという錯体イオンは陽イオンであるし、当該不織布や製品には不安定性もあり使用が難しいし、尿や糞便に含まれる有機物イオンと反応し塩を形成して少なくとも消臭機能は果たせない。
【0017】
アンモニアやインドールといった尿や糞便による主要臭気分子とは錯体化した抗菌性金属陰イオンは反応、結合し抗菌防臭性を発揮出来て、乃至は不織布上に残留した該イオンとクエン酸によるカルボキシ基やカルボキシラートイオンによる反応、結合により悪臭の分子構造が変えられた消臭機能のみではなく、該抗菌性金属陰イオンを希クエン酸溶媒で得ると、該抗菌性金属陰イオンを含む水はイオン濃度が高くpHを2.0~3.5程度までに濃度調整できるので、少なくとも錯体化した該金属陰イオンがほぼ全てである。不織布上に残留しているカルボキシ基及びカルボキシラートイオンにより該不織布に残留する銅(亜鉛)イオンは乾燥後も錯体陰イオン状態を維持できるので、塩素系陰イオンや有機物陰イオンとも反応せず抗菌防臭機能のみならず尿や糞便の主たる悪臭であるアンモニアやインドールの消臭機能が活きる。
【0018】
前記のように疎水性の合繊系不織布上には親水性界面活性剤を添加しても、前以て塗工しても抗菌性金属陽イオンは前期のように意味がない、或いは残留できたと仮定すると陽イオンの状態を残留し維持できればアンモニアやインドールの窒素の非共有電子対が該陽イオンに配位結合して消臭が可能でも抗菌防臭機能は果たせない。例えばポリプロピレン製不織布は界面活性剤・抗菌性金属陽イオン塗工後も前記のように陽電荷を持つ可能性もあるので当該イオン残留は難しい可能性もあるが、界面活性剤と当該2通りの陰イオン水は噴霧或いは浸漬され乾燥工程を経て水分の蒸発後も抗菌性金属錯体陰イオンは逆に合繊系不織布に残留できる。仮定として抗菌性金属イオンが陽イオン状態で当該不織布に残留できたとすれば、錯体化した抗菌性陰イオンよりも酸性臭、硫黄系臭など多種類の悪臭消臭が出来る可能性もあるが、抗菌性金属の陽イオンは尿や糞便が原因の塩素や有機物イオンと反応し抗菌防臭機能は果たせない。
【0019】
ただ、当該抗菌性金属を銅や亜鉛とすると、当該金属の陽イオン水は無機酸である硝酸、或は希硝酸で得る方が生産効率もよくコスト合理性があるが、無機酸による銅イオンや亜鉛イオンは劇物指定され請求項4に記載の本発明による合繊系不織布やそれからなる当該製品には業界規制もあり使用できない。又、希硝酸で銅や亜鉛を溶解して後に苛性ソーダでpH調整すると所謂硝石である硝酸ナトリウムを生成して、使用・利用は不可能である。
【0020】
希クエン酸溶媒で得られた抗菌防臭機能のある当該銅(亜鉛)陰イオンは水で希釈後もpH調整出来てpHが2.0~3.5程度なら該陰イオンがほぼ全て当該不織布上に残存できる。尚、クエン酸は弱酸であり銅(亜鉛)陰イオン水を塗工後に乾燥すれば低いpH値は乾燥後にはペット動物や人の肌への影響は無くなる。亜鉛陰イオン水▲1▼・▲2▼も同様である。
【0021】
銅陽イオンや亜鉛陽イオンの場合、抗菌防臭機能を実現させるためには、非特許文献に記載のように銀陰イオンよりかなり高い濃度が要求されるが、銅陰イオン水や亜鉛陰イオン水もクエン酸1水和物で製造する方がより高い濃度(撹拌タンク容量、原料の断裁フィルム量と希クエン酸溶媒量の相関関係はある。)が得られるので錯体化した銅(亜鉛)陰イオンを有する銅(亜鉛)陰イオン水が本発明実施には好ましいが、抗菌性金属として銀を排除するものではない。
【0022】
但し、真空蒸着業界では亜鉛を対象にポリエステルといったプラスチックフィルムに真空蒸着する事は非日常的である。真空釜にも付着した金属亜鉛の回収に係る費用とコストパフォーマンスが合わない、また真空釜にも蒸着された亜鉛層が直ぐに酸化してしまう事が原因である。亜鉛が酸化しても保護膜を生成し内部の亜鉛は保護されるが真空釜から剥がされた亜鉛は改めて保護しないと酸化亜鉛化する。トタンがその例である。仮に純度の高い金属亜鉛を真空蒸着する場合は大量の需要があり専用の真空蒸着装置を以て行う必要がある。それでも前記の課題は残る。
【0023】
亜鉛陰イオン水を得るには、安価な酸化亜鉛の白い粉末がポリエステルフィルムに蒸着された亜鉛蒸着フィルムの代替になり得て、溶解時の希クエン酸溶媒は50℃といった高めの溶媒温度を要するものの攪拌時間は長くは無いし、非特許文献に記載のように抗菌防臭機能実現には銅陰イオンより高い濃度を必要とするが本発明の実現には使用が可能である。但しクエン酸溶媒に投入された酸化亜鉛の白い粉末が50℃程度の当該溶媒中で攪拌継続してもすべてが溶解するとは限らず、酸化亜鉛粉末状態で残留するとモル比から亜鉛陰イオンが80%程度になるので、亜鉛陰イオン濃度が上がりにくいという難点がある。
ラボ実験と濃度試験は実施例にて述べる。
【0024】
只、銀陰イオン水を得るため希クエン酸で蒸着銀を溶解する方法は先行技術文献である特許文献1にも示されているが、請求項4に示すポリプロピレン不織布に消臭性や抗菌防臭性を実現するに足りる銀陰イオン濃度を該不織布上に残留させる必要がある。塗工後不織布の生産性の高めコストを抑えるためには塗工や浸漬の加工速度を早くする必要があり、当該不織布を銀陰イオン水タンクに通し浸漬を試みると20%程度しか当該不織布上に残留できないので銀陰イオン濃度を高くしなければならない。希クエン酸溶媒による銀陰イオン高濃度の銀陰イオン水を得るには、例えば希クエン酸溶媒に表面加工無しでPETフィルム基材の蒸着銀フィルムを2~3cmに断裁した原料を適量投入して1回目の攪拌後に該原料を取り出し、溶媒は残して更なる蒸着銀原料同量を投入して同時間・同温で攪拌してみても、一回目は陰イオン濃度25ppm前後の銀陰イオン水が出来るが、2回目には倍近い銀陰イオン濃度の銀陰イオン水は出来ず数ppmしか増えないという難しい課題が残る。勿論、本出願以外の塗工法が開発されれば錯体銀酸陰イオンは使用が可能になると考えられる。
【0025】
単純に最初の銀蒸着原料フィルムを取り出し、溶媒を残し或いは取り出した原料フィルムに追随して減ってしまった銀陰イオンを持たない当該溶媒を補充して、次の原料フィルムを同量投入しても陰イオン濃度はほぼ倍にはならない。後述する実施例に示すが、銅(亜鉛)イオン水の銅(亜鉛)陰イオン濃度は一度の生産で1,000ppm前後の濃度が得られるので本発明の請求項に記述した2つの機能を実現するために必要な銅(亜鉛)陰イオンは50~150ppm程度であり、浸漬タンクには250~750ppmの銅(亜鉛)陰イオン水注入があれば十分であり、銅(亜鉛)陰イオン水の生産性は前記のようにかなり高いものとなる。銅よりもイオン化傾向の低い亜鉛化合物は銀や銅と比べた金属の貴卑イメージは別として本発明の実現には相応しい候補であることは否めない。因みに、本発明による銅陰イオン水、亜鉛陰イオン水に、それぞれの陰イオン濃度1,000ppm前後を得るために必要な時間は長くても2~6時間程度であり、製造前後の作業を考えても一日の操業で最低でも2~3回・100~120L程度/製造1回、合計300~360L/1日の高い生産性を実現できる。
【0026】
当該不織布を表材の一部として使用する場合の現実加工スピードは、使い捨てオムツや生理用品の消費市場価格を考えるとかなり早いものにならざるを得ない。1分間に100mを超えるスピードで界面活性剤を塗工した、或いは微量の界面活性剤と銅陰イオン水、又は亜鉛陰イオン水の混合液剤が入ったタンクに早い速度で通過し不織布が当該液剤に浸漬されて該不織布に残留する銅陰イオン水、或いは亜鉛陰イオン水はタンク中の当該陰イオン水の20%程度しかない。詰まり、請求項に記載の銅陰イオン濃度100ppm程度を実現するには、タンクに注入される銅陰イオン濃度は少なくともその5倍、500ppm程度が望まれる。
【0027】
亜鉛イオンと銅イオンよる抗菌性を表すMICやMBCは抗菌対象菌によるがほぼ同等、或いは亜鉛イオンの方が高い濃度を要するが、何れもが錯体陰イオン化していると何れも抗菌防臭機能を果たせるし、何れもカルボキシ基とカルボキシラートイオンが合計4座配位しているし消臭機能は前記2種類が果たしているので、汚れた状況下の抗菌防臭機能はより低濃度の銅陰イオンの方が濃度としては優位である。亜鉛陰イオン水を製造する上でのデメリットとしては酸化亜鉛の粉末が全て希クエン酸溶媒で溶解し錯体亜鉛酸陰イオン化できるかどうかである。溶媒温度と溶解時間に注意を要するし、前記のように亜鉛のプラスチックフィルムへの真空蒸着は非日常的である。コストメリット、中心金属の貴卑感及、原料調達難度を考慮して選択すれば良い。
【0028】
例えば、銅(亜鉛)インゴットを周知の方法で電気分解すれば銅(亜鉛)陽イオンを有する銅陽イオンを有する溶解水を得る事ができるが、電解質の溶媒への添加が必要だし、その電解質によっては不要な成分が残留する事も考えられる。更に必要な製造設備や生産性の観点からコスト面に難点があるし、錯体銅(亜鉛)酸陰イオンはこの方法では形成されない。このような方法で得られた銅(亜鉛)陽イオンを持つ銅(亜鉛)イオン水を陰イオン水化するには改めてクエン酸1水和物を添加し40℃前後の温度で少なくとも数時間攪拌しクエン酸が持つカルボキシ基の銅(亜鉛)陽イオンへの配位結合を待たなければならないし、消費者により当該不織布製のオムツや生理用品は使い捨てられるという使用方法を考えればコスト面でも大いに難点がある。
【0029】
銅(亜鉛)陽イオンのみを持つ銅(亜鉛)イオン水が工業的な利用を前提に次の生産準備用に在庫として保存すると、紫外線等の影響を受け銅陽イオンは酸化されて銅(亜鉛)原子微粒子化を経て酸化銅(酸化亜鉛)に変化してブラウン運動が出来ず沈殿を起こす。酸化銅や酸化亜鉛は水には不溶である。只、両陰イオン水を冷蔵すると経時後には配位結合をしなかった余分なクエン酸一水和物は凝集して半透明沈殿を起こすので両イオン水の冷蔵は不要である。
【0030】
錯体化した銅陰イオンをほぼ全て有する銅陰イオン水、錯体化した亜鉛陰イオンをほぼ全て有する亜鉛陰イオン水を製造できるクエン酸溶媒による錯体銅酸陰イオンや錯体亜鉛酸陰イオンは安定であり前記のような変化は起こらないので、在庫保管時の品質変化に注意する必要性がなくなる。ただ、亜鉛陰イオン水は攪拌中の溶媒温度が低いと亜鉛陰イオン化できずに溶媒中に酸化亜鉛が粉体として残留する事もあるので注意を要する。
因みに、電気分解された銅イオン水や硫酸銅溶液はサファイヤブルーのような濃い青色を呈するが、銅陰イオン水は薄い緑色を呈する。銅陰イオン水を当該不織布に前記のようなスプレー方法で塗工しても浸漬タンクに浸漬する希釈による塗工と同様なので当該不織布は20%程度しか残留しない事からほぼ透明になるので当該製品に着色しても気にならないし、返って極薄い緑色でも加工してあると消費者に見えて市場性を得る可能性もある。亜鉛陰イオン水は希釈前でも希釈後も、前記した塗工後も無色透明である。
【0031】
人の肌や動物の皮膚に直接触れる不織布製オムツや生理用品には、使用原材料の簡単な表示義務もあり、例えば強酸である硝酸や硫酸から得られる銅陽イオン、或は硫酸銅溶液のような硫酸銅由来の銅陽イオンが使用されていると、消費者は有害であることを知らずとも薄い青色に着色されるので購入を控える可能性が高くなる。亜鉛陽イオンも無色であっても金属の貴卑もあり同様である。勿論、何度も述べるがそもそもこれら抗菌性金属陽イオンはポリプロピレン不織布上には残留出来ない可能性が高いし、残留できても尿、経血や糞便で汚れた状況での抗菌防臭機能は難しいし、消臭機能も塩形成により難しい。
【0032】
硝酸や簡単に水溶する硝酸銅は毒物劇物取締法による劇物であり、環境汚染物質として衛生材料などへの使用は当該業界では許容されない。塩化亜鉛も潮解性があり毒物劇物取締法に収載があり、オムツや生理用品への利用は許容されない。
【0033】
そこで本発明の課題は、以下に記述するようにどのように人な肌やペット動物の皮膚に安全性を担保された錯体銅陰イオンをほぼ全て含む銅陰イオン水を得るのか、錯体亜鉛陰イオンをほぼ全て含む亜鉛陰イオン水▲1▼・▲2▼を得るのか、銅陰イオン水、及び亜鉛陰イオン水を疎水性合成繊維から成るポリプロピレン不織布の疎水性を破壊し水分と該不織布の相溶性を持たせる事が出来るかを課題としながら、消臭機能と抗菌防臭機能、及び親水性をも併せ持つ少なくとも一部を構成する表材として使い捨てられる不織布をどのように製造するのかを示すことにある。尚、当該加工済み不織布を少なくとも構成材料の一部とした使い捨てオムツや生理用品の製造方法は業界周知の製造方法でよい。
【0034】
銅(亜鉛)陽イオンのみを持つ銅(亜鉛)イオン水は、現在特にほぼ全てに使用されている表材であるポリプロピレン製不織布には上記した塗工方法を経た後の乾燥をすると当該不織布の持つ電荷との関係で銀陽イオンは当該不織布上には残留出来ない可能性が高い。
又、銅陽イオンを有する銅イオン水は毒物劇物取締法に劇物と指定されているが、本発明による錯体銅陰イオンは同法では劇物としては除外されている。錯体化し亜鉛陰イオンを持つ亜鉛陰イオン水も毒物劇物取締法による劇物指定からは除外されている。
【0035】
仮にノニオン系界面活性剤の使用により銅陽イオンが当該不織布上に残留できるとすると、アンモニアやアミン類のような塩基性臭のみではなく、酸性臭分子との反応により酢酸の消臭も可能になるし、同じく硫黄系臭気である硫化水素との反応により臭気分子構造を変えて消臭も出来る可能性もある。前記のように塩基性臭の特徴である窒素の非共有電子対による配位結合、或いは水素とチッソが結合しているアミノ結合による分子構造の変化やルイス酸とルイス塩基との反応で酸性臭消臭も可能ではあるが、当該銅陽イオンはポリプロピレン製不織布には前記のように当該不織布には塗工・乾燥後に残留は出来ない可能性が高いし、本来の最終目的の一つである尿、経血や糞便による汚い状況での抗菌防臭性は有機物陰イオンとの反応で塩を形成して果たせない。過剰なほどのアンモニア水により錯体化している亜鉛陽イオンも同様である。抗菌性金属が陽イオン化しているため有機物イオンとの塩形成で抗菌防臭機能は不活性、勿論錯体の中心金属である抗菌性金属がイオン化していないと抗菌防臭機能は無いし、テトラアンミン亜鉛(II)イオンのように配位結合しているアンモニアに消臭機能は無い。
【課題を解決するための手段】
【0036】
特許文献1には、前処理無しのポリエステルフィルムに純銀塊(純度99.99%)を真空蒸着し、該蒸着層を保護せず露出して、当該フィルムを断裁し、希クエン酸溶媒にて撹拌して蒸着された純銀が当該溶媒により銀イオン化出来る旨の記載がある。希クエン酸溶媒により溶解した銀イオンは錯体化し陰イオン化しているのは錯体化学に知見を持つ者には容易に理解し得る化学的真理である。因みに、銅陰イオン水は硫酸銅や無機酸銅塩溶解による濃い青色の銅陽イオン水とは違って薄い緑色を呈するが、当該不織布に塗工される銅陰イオン量はコストを下げるため高速で塗工されるので、銅陰イオン水の20%程度で、銅イオン水のイオン濃度100ppm程度で課題を解決できる。尚、銅イオン水は薄緑色を呈するが、50~100pmmなら使用者などへの着色の違和感は無く、且つ人やペット動物の皮膚や髪への害は無い。亜鉛陰イオン水は無色透明で当該不織布に着色はしない。
銅陰イオン水による2つの機能実現性は実施例にて示す。
【0037】
必須ミネラルの一種である銅、銅イオンは必須ミネラルにも拘わらず消費者には抗菌防臭機能は知られているものの、カルボキシ基及びカルボキシラートイオンによる錯体陰イオンは消臭機能も可能という認識が低く、1984年の現厚労省の安全性宣言にも拘わらず銅、銅イオン、緑青は有害であるという認識が浸透している。上記のように一部にでも当該製品の表材に使用される合繊系不織布の高速加工に耐える銅(亜鉛)陰イオン濃度を得るために高い生産性を示すクエン酸溶媒と真空蒸着銅(亜鉛)による銅(亜鉛)陰イオン水は抗菌防臭機能や主な悪臭の消臭機能実現に相応しい。高速で銅(亜鉛)陰イオン水を注入したタンクを通過し銅(亜鉛)陰イオン水を該不織布が保持できるのは銅(亜鉛)陰イオン水の20%程度である。勿論、酸化亜鉛を原料とする亜鉛陰イオン水でも同様である。亜鉛も金属の貴卑は別にして必須ミネラルの一種である。請求項3に記載の酸化亜鉛は水に不溶であり毒性はなく絵具や化粧品にも使用可能で一般消費者でも簡単に入手できる。
【0038】
以下、希クエン酸溶媒で得た銅陰イオン水に保持されている銅イオンは錯体銅陰イオンである事の検証に付いて説明を行う。
上記のように硫酸銅溶液は銅陽イオン水でありサファイヤブルーのような濃い青色を呈する。希クエン酸溶媒に代表的なプラスチックフィルムであるポリエステルフィルムに高純度の銅を真空蒸着し、当該蒸着フィルムを細かく断裁して投入し攪拌すると、最初は銅が当該基材フィルムから剥離して当該溶媒の表面が剥離した銅の断片で覆われ赤銅色になり、その後銅が溶解してあずき色から濃い青色に変化し(この時点では銅陽イオンである)、更に攪拌を20分程度継続すると驚くほど一瞬に緑色に変化する。クエン酸のカルボキシ基とカルボキシラートイオンが銅陽イオンに配位結合をして錯体化した銅陰イオン水になった証左である。
【0039】
錯体化している銅陰イオンは、紫外線にも影響を受けず安定しているが、当該銅(亜鉛)陰イオンはpHが7.0を超すと徐々に錯体が壊れ金属銅(亜鉛)が析出しだすので、実際の使用時にはpHは2.0以上3.5以下の範囲に希クエン酸溶媒で得た銅(亜鉛)陰イオン水のpHを水で調整する事が肝要であり、この範囲のpHは水による希釈で十分足りてアルカリ剤の添加によるPh調整は不要である。上記pH下では銅(亜鉛)陰イオンはほぼ全て陰イオン状態として存在することが出来る。当該不織布の乾燥後は低いpHが人の肌、動物の皮膚に何ら影響は無い。錯体化した亜鉛陰イオンも同様であるが、亜鉛陰イオン水は無色透明である。
【0040】
このようにして無機酸であり強酸である硝酸や希硝酸で得られる銅(亜鉛)陽イオン水ではなく、また銅(亜鉛)を電極にした電気分解して得られた銅(亜鉛)陽イオン水でもなく、食品添加物として使用されているクエン酸による銅(亜鉛)陰イオン水は製造毎にイオン濃度が多少上下するので、濃度計測後にイオン交換水或いは精製水等で希釈して銅(亜鉛)陰イオン濃度500~750ppm程度に調整する。この調整後のpH値は2,5前後となる。
【0041】
但し、pH値が2.0程度であるクエン酸溶媒から得られる錯体銅(亜鉛)酸陰イオンがほぼ全てである銅(亜鉛)陰イオン水中の銅(亜鉛)陰イオンが、希釈によってpHが上がり一部でも陽イオンに戻ったと仮定しても、消臭目的の対象になる塩基性ガスであるアンモニアは勿論、インドールやポリメチルアミンは濃度によっては残った銅陽イオンへの前記ガスの構成元素の一つである窒素の非共有電子対の配位結合で消臭機能は足りるが、この仮定が成立したとして、銅陽イオンがポリプロピレン製不織布に残留すれば上記のように酸性臭の消臭も可能になる、或いは硫黄系臭気も消臭できる可能性があるが、少なくとも銅(亜鉛)が陽イオン化した銅(亜鉛)イオン水は尿や糞便の有機物イオンと反応し塩を形成し抗菌防臭機能は果たせない可能性が高いのは前記の通りである。亜鉛陰イオン水が有する亜鉛陰イオンの挙動も同様である。
【0042】
そもそも本発明は、尿、糞便や経血で当該製品が汚れた状況下でも、抗菌防臭機能を発揮し、尿や糞便の主たる臭気であるアンモニア・インドールを消臭出来る消臭機能を果たせる事を示す加工方法を課題としているので、抗菌性金属の陽イオンとその溶液を請求項から排除している。疎水性のある合繊系不織布が陽電荷を帯びて上記溶液が乾燥した時には抗菌性金属の陽イオンが当該不織布に残留出来ないという論理の正誤は関係なく、疎水性のある合繊系不織布に水分が98%以上である陽イオン水、陰イオン水を問わずに水分に触れると静電気は消滅してくれるので、あくまでも当該不織布への塗工後に乾燥した後の静電気による陽電荷帯電を想定しているのみであり、銅(亜鉛)陽イオンは汚れた状況での抗菌防臭機能も無ければ消臭機能も無い。
【0043】
次に、本発明に必要なポリプロピレンといった疎水性繊維の表材からなり、又パルプなどセルロース系繊維からなる綿状繊維に散りばめられた合成樹脂系吸水剤に吸水・保水により防水された当該製品の中材をなす綿状繊維を覆う当該不織布とイオン交換水、精製水或は蒸留水といった希クエン酸溶媒の大部分をしめる水分との相溶性を図るため、先ずはオムツや生理用品の表材になり人の肌と直接触れる該不織布面の親水性確保のための方法を以下に述べる。
【0044】
そもそも界面活性剤はほぼ全て、疎水性・撥水性を解除・破壊するための剤である。例えばガラスコップに溢れるかもしれない程水を注ぐと、水の表面張力により水が盛り上がったようになる。界面活性剤溶液を例えば1~2滴垂らすだけで、数個~数十個の水分子集団が水素結合による相互引力を引き起こして表面張力が起こっていても、該界面活性剤は水の水素結合を切って相互引力を破壊して盛り上がった水は零れ出す。このように当該界面活性剤の前以ての塗工、或いは両イオン水と混合した液剤への噴霧、又は浸漬により当該疎水性不織布の親水性確保には界面活性剤が欠かせない。
尚、本発明に使用する界面活性剤は、電気的影響力を削ぐためにノニオン系が最も好ましく、アニオン系、カチオン系は使用を避けるべきである。
【発明の効果】
【0045】
近年、合繊系不織布に親水性を持たせ、吸水・保水や一部に貼付されたプラスチックフィルムにより防水性を持たせた綿状繊維に合成樹脂からなる吸水剤を散りばめた使い捨てオムツや生理用品は、その簡便さと廉価である事から多くの消費者の支持を得ている。コスト面から有機化学系の消臭剤や抗菌剤の使用も考えられるが、数ある全ての悪臭を消臭できる安全で万能な有機系消臭剤も無機系消臭剤も存在しないので、本発明により尿や糞便の主たる臭気であるアンモニアとインドール消臭を可能にする課題を解決出来る。
【0046】
本発明は人の肌やペット動物の皮膚に安全な希クエン酸溶媒による銅陰イオン水、或いは亜鉛陰イオン水を利用し使用して、当該陰イオン濃度が100ppm以上存在し、クエン酸由来のカルボキシ基とカルボキシラートイオンが合計2,500~5,000ppm程度であれば、オムツや生理ナプキンなどに生成された少なくとも尿や糞便の主たる臭気であるアンモニアや、インドールといった臭気分子と銅(亜鉛)イオンに配位結合したカルボキシ基、カルボキシラートイオンと反応・結合するので分子構造を変えて、人やペット動物のオムツや生理用品に優れた消臭機能を付与できる。
【0047】
又、該不織布表面に残留している当該2種の陰イオン何れも、尿に含まれる塩素系陰イオンとも反応せず尿や糞便に含まれる有機物陰イオンとも反応しない。尿や糞便に含まれる塩素イオンや有機物イオンで汚れた状況でも抗菌防臭機能が活きて、表材の少なくとも一部をなす本発明により加工された合繊系不織布コストは、経済的合理性をも実現できる当該製品類を製造できて消費者に提供できる。因みに、通常の抗菌試験においては銅陰イオンを保持した検体での抗菌機能有効性は銅陰イオンであれば濃度1~20ppmもあれば十分であり、亜鉛陰イオンであれば2~20ppmで十分である。
【課題を解決するための手段】
【0048】
特許文献1には、プラスチックフィルムに何らの前処理をせずに、純銀(純度99.99%)を真空蒸着し、該蒸着層を保護せず露出した状態で、当該フィルムを断裁して、希クエン酸溶媒にて撹拌すると蒸着された純銀が当該溶媒により銀イオン化出来る旨の記載がある。
希クエン酸溶媒により溶解した銀イオンは錯体化し陰イオン化しているのは錯体化学に知見を持つ多くの人々には容易に理解し得る化学的真理である。
【0049】
銅陰イオン水は銅陽イオン水が呈する深い青色とは違って薄い緑色を呈するが、消費者には実は濃度によっては無害な銅、銅イオンや緑青は有害という風評を未だに浸透しているし、亜鉛は必須ミネラルにも拘わらず消費者には抗菌防臭機能は知られているもののクエン酸溶媒にて錯体陰イオン化すると消臭機能も可能という認識が低く、なお金属の貴卑感から安価金属という印象が高い。銀は貴金属の一種であり銀系抗菌剤も周知され消費者の支持も高い。本発明には消費者感覚からは貴なる金属の銀陰イオン水は濃度が低くても2つの機能の実現は可能で相応しいが、銀陰イオンを希クエン酸で溶解するには前述のように高速加工に耐えられる為には高い濃度が必要で大きな課題が残る。また時間も要するので銀陰イオン水の生産性は非常に低く、最終製品の使い捨てオムツや生理用ナプキンなどにはコストパフォーマンスのみならずタイムパフォーマンスも悪く高コストなるという大きな課題が残る。
【0050】
錯体銅(亜鉛)酸陰イオンをほぼ全て有する銅(亜鉛)陰イオン水は、製造直後から6年程度日光に暴露しても紫外線にも影響を受けず何らの沈殿も起こさず、薄い緑色(或いは亜鉛陰イオン水は無色透明)を呈して安定しているが、pHが7.0を超すにつれ錯体が壊わされ陽イオンに戻り、その後金属銅(亜鉛)となり、透明ガラス容器に入れておくと壁面に当該金属膜が形成される。
【0051】
勿論当該溶媒のクエン酸濃度は5~10重量%程度なので希釈した溶媒中でも先ずは銅(亜鉛)陽イオンになり銅(亜鉛)陽イオンは次いでカルボキシ基と水素イオンが解離したカルボキシラートイオンの配位結合により直ぐに銅(亜鉛)酸陰イオンになるが、例えばポリプロプレン不織布を前記のような塗工後に乾燥すると該溶媒の水分は蒸発しても、錯体銅(亜鉛)酸陰イオンはその状態を維持できる。
【0052】
銅陰イオン水や亜鉛陰イオン水はpHが7.0を超すと徐々に金属銅や金属亜鉛が析出しだすのは前述の通りであるから、実際の使用時にpH値は2.0以上、3.5以下の範囲に希クエン酸溶媒で得た銅陰イオン水や亜鉛陰イオン水のpHを水で調整する事が重要であり、pH調整や濃度調整はイオン交換水や精製水などの水で足りて、これで銅陰イオンや亜鉛陰イオンはほぼ全てが溶媒中に存在することが出来る。但し、使用期限は当該両イオン水製造後2年以内とする方が品質変化を避けられ、溶媒中に残ったクエン酸一水和物が凝集してほぼ透明なジェル状沈殿を起こすので冷蔵は無用である。
【0053】
このようにして無機酸であり強酸である硝酸や希硝酸で得られる銅や亜鉛の陽イオンを持つイオン水ではなく、銅又は亜鉛インゴットを電気分解して得られた銅や亜鉛陽イオンを持つイオン水でもなく、硝酸銅や硝酸亜鉛を溶解して得た水の持つ銅や亜鉛の陽イオン水でもない、飲用水・食品にも酸味料として使用されるクエン酸溶媒による銅陰イオン水、亜鉛陰イオン水は製造毎に微妙にイオン濃度が多少は上下する。イオン交換水、精製水或いは蒸留水で希釈して当該不織布上に加工工程で塗工されるは前記のように20%程度なので浸漬タンクに注入される或いは噴霧される銅陰イオン水、亜鉛陰イオン水の濃度は残留すべきイオン濃度の5倍程度が好ましい。
【0054】
但し、pHが2.0前後程度の有機酸であるクエン酸溶媒から得られる錯体陰イオンがほぼ全てである銅陰イオン水や亜鉛陰イオン水中の両陰イオンが、希釈によってpH値が上がり、一部陽イオンに戻ったと仮定しても、当該不織布上に残留さえしていれば消臭目的の対象になる悪臭ガスの種類(特に酢酸臭)は残った陽イオン濃度で足りる事もあり得るが、当該2種の陰イオン水製造時の希クエン酸溶媒のクエン酸1水和物の混合率は5~10%程度という%オーダーであり希釈してもまだ%オーダーなので、陽イオンや電荷を持たない当該金属原子に戻り銅や亜鉛陽イオンが存在していても、一定時間は必要と考えられるが改めてカルボキシ基・カルボニキシラートイオンと配位結合して陰イオン化できて、錯体化した銅や亜鉛陰イオンは常に陰イオン状態ではなく、電荷を持たない金属原子状態であったり、配位結合が壊れ陽イオン化したり、又カルボキシ基・カルボキシラートイオンが配位結合した陰イオンであったりと目まぐるしく変化しているが、クエン酸1水和物の混合率を高めるとその変化を超越出来る。
【0055】
次に、本発明に必要なポリプロピレンといった疎水性合成繊維からなる不織布、更にはパルプなどセルロース系繊維からなり吸水、保水された当該綿状繊維とイオン交換水、精製水或は蒸留水といったクエン酸溶媒の大部分をしめる水分との該不織布の疎水性を破壊し当該両陰イオン水との相溶性を図るために、先ずはオムツや生理用品の表材になり人の肌と直接触れる該不織布面の親水性確保のための方法を以下に述べる。
【0056】
前記のように、そもそも界面活性剤は繊維製品等の洗剤にも使用されるが、原理は疎水性を解除・破壊するためでもあり親水性や親油性を確保する剤である。例えばガラスコップに溢れるかもしれない程水を注ぐと、水の表面張力により水が盛り上がったように見えるが、界面活性剤の溶液を1~2滴垂らすだけで、数個~数十個の繋がりを持つ水分子集団の水素結合を切り相互引力を消して盛り上がった水は零れ出す。
尚、本発明に使用する界面活性剤は、出来ればノニオン系が最も好ましく、アニオン系、カチオン系は使用を避けるべきである。勿論当該界面活性剤は人やペット動物の肌に安全なものでなければならない。ノニオン系界面活性剤の該溶液中濃度は1%前後で足りる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
先ず、2通りの先行技術文献の記述内容を元に錯体化し陰イオンを持つクエン酸溶媒による銅陰イオン水、亜鉛陰イオン水▲1▼を得る具体的方法を以下に述べる。
【0058】
9~15ミクロン厚のポリエステルフィルム片面に真空蒸着法により800~900Å厚程度の純度の高い銅(或いは亜鉛)の蒸着層を表面が無加工な該フィルムに形成する。真空蒸着法は蒸着釜をほぼ真空状態にして内部に設置した電気坩堝に純度の高い銅塊(或いは亜鉛魂)を入れ熱して低温でも当該金属を蒸気化すると、当該銅原子(或いは亜鉛原子)は個々に当該フィルム表面に積層され、蒸着面に何らの保護をせずに当該フィルムを2~3cm角に断裁して撹拌に備える。この時、当該銅原子(或いは亜鉛原子)が個々に、例えればパウダースノーのように積り重なっていて金属結合が弱く、銅蒸着層の場合は軽く摩擦すると摩擦布に赤銅色の銅の超微粒子集団、或いは亜鉛層の場合は灰色の亜鉛超微粒子集団が移行してくるほど、銅原子、或いは亜鉛原子が個々にほぼ独立して超微細な銅原子個々が銅の層をなし、或いは亜鉛原子個々が層をなしている。
【0059】
無機酸であり強酸である硝酸や希硝酸なら銅、或いは亜鉛原子集団に金属結合が戻っていても、また被蒸着フィルム上に銅塩や亜鉛塩残っていても、また該フィルムから剥離した当該塩の断片すら溶解してすべてが陽イオンである銅、或いは亜鉛イオン水が当該フィルムを撹拌することにより溶解して得られるが、上記のように金属結合が非常に弱い、或は金属結合が戻っていない銅或いは亜鉛原子集団は有機酸であり弱酸である重量濃度5~10%の希クエン酸溶媒にも撹拌により溶解し(当該溶解液はクエン酸濃度2%程度でも得られるが実使用時の希釈を前提に濃度を高く設定している。)、クエン酸を構成しているカルボキシ基、或いは水素イオンが解離したカルボキシラートイオン何れも陰電荷1つ持つので、銅イオンにも亜鉛イオンにも4座配位結合(平面4角形の配位)して、溶解した銅や亜鉛イオンは錯体化し2荷の陰イオン化する。このようにして希クエン酸溶媒によるほぼ全てが錯体銅酸陰イオン、或いは錯体亜鉛陰酸陰イオンである銅陰イオン水或いは亜鉛陰イオン水▲1▼が得られる。製造直後の両陰イオン水のpHは2.0程度の強酸域にある。
【0060】
酸化亜鉛の白い粉体を希クエン酸溶媒で、溶媒温度50℃前後に設定して攪拌すると、亜鉛は両性金属なので酸化亜鉛に水溶性はないものの、クエン酸溶媒には溶解し、カルボキシ基とカルボキシラートイオンの配位結合により亜鉛陰イオン水▲2▼を得ることができる。
注意すべきは溶媒温度を出来るだけ50℃程度に設定する事で、温度設定を間違えると酸化亜鉛の粉体が溶解せずに残ってしまう事もあり得るし、溶解時間を長くしても全ての酸化亜鉛は溶解せず溶媒中に残留する事もあるので、イオン濃度には注意しなければならない。この場合もクエン酸一水和物の濃度は後の実用を考えた希釈を考慮し高めに設定(5%以上)にすべきである。
【0061】
前記のような方法で得られる製造直後の銅陰イオン水、亜鉛陰イオン水に含まれる錯体陰イオンの濃度は900~1,000ppm程度の濃度を実現できる。例えば使い捨てされる不織布製オムツに一度に排泄される尿は150~250ml程度であり中材に吸水・保水され、幼児なら2回程度の排泄に耐えられ交換されない事もあるが、消臭機能や抗菌防臭機能に要する銅陰イオンや亜鉛陰イオン量は、銅なら50~100ppm程度、亜鉛なら70~130ppmで足りる。
【0062】
クエン酸溶媒で製造直後の両陰イオン水のpHは2.0程度であり、何れの錯体陰イオン水も900~1,000ppm前後なので、ほぼ製造直後の原液を希釈し当該不織布に保持させるために浸漬タンクに注入する。両陰イオン水に浸漬される場合は20%程度が当該不織布に保持されるので後述する実施例にあるような濃度での塗工を施す、また噴霧される場合は乾燥時に液垂れを起こさない程度で良く、噴霧の場合は浸漬加工とは違うので両陰イオン水のイオン濃度はやや高くすればよい。
【0063】
この様にして得られた、ほぼ全て銅陰イオンを有する銅陰イオン水、或いはほぼ全て亜鉛陰イオンを有する亜鉛陰イオン水と微量の界面活性剤の濃度調整を行った後に、前以て微量のノニオン系界面活性剤処理を行う、或いは該界面活性剤を銅或いは亜鉛陰イオン水と微量の当該界面活性剤を調合混合液化し、グラビアコーティング法なり噴霧方式といった周知の方法で塗工して、或は当該銅或いは亜鉛陰イオン水に微量のノニオン系界面活性剤を添加して得られたいずれかの陰イオン水に浸漬する等の塗工法により、一度或いは2度の工程で不織布の疎水性を壊し乾燥させると水分は蒸発するが、乾燥される時に該不織布は水蒸気に気化熱を奪われるので、塗工された不織布自体の温度がほぼ上がらない事から、当該2通りの陰イオンは当該不織布の親水性も担保されてイオン状態を保ちながら不織布上に残留できる。尚、乾燥後は強酸域にあるpHは被塗工材である当該不織布は人やペット動物の髪、毛や肌への悪影響は無い。
因みに、当該不織布が当該2通りの陰イオン水に浸漬され、乾燥環境温度が200℃前後になれば、当該2種の陰イオンは、二酸化炭素を生成しながら銅或いは亜鉛陽イオンになってしまうが、水分の蒸発による気化熱によりそのような現象は起こらない。
【実施例0064】
純度99.9%の銅インゴットを電気るつぼに入れ、蒸着釜の気圧をほぼゼロに近づけて銅を蒸気化して厚み12ミクロン、幅78cm、900Å厚の銅蒸着層を得て、約160m分の銅蒸着フィルムを約2x2cmの略4角形に断裁して、40万枚の銅蒸着断片を、クエン酸1水和物5重量%を水で溶解した希クエン酸溶媒に投入し、溶媒温度35℃に設定し、350~400回転/分で攪拌した。希クエン酸溶媒に別種金属がイオン化しないように、この時のタンクはポリエチレン製、撹拌機シャフトは鉄製にテフロンコートを施し、スクリューはポリカーボネイト製とした。
【実験例1】
【0065】
攪拌開始後約20分で、基材のポリエステルフォルムから銅箔状の剥離片が見られ、溶媒表面は赤銅色になり、約2時間後には赤銅色が消え小豆色になり、約1時間後にはサファイヤブルーに溶媒が変色し、攪拌を続けていると約20分後一瞬に薄い緑色に変色した。
この変色はサファイヤブルーを呈していた銅陽イオン水が、緑色の銅陰イオン水に変化した証左である。因みにICP-MSにより銅イオン量を計測すると、1,080ppmであった。
残ったポリエステルフィルム上には銅の残留は無かった。
【実施例0066】
上記実施例で得た銅陰イオン水を、オムツ製造実機での加工法に合わせてイオン交換水で約5倍の銅陰イオン濃度200ppmと約10倍希釈の銅陰イオン濃度100ppmの2通りの希釈水を加えて、レーヨン20%・ポリエステル80%混、目付20g/mの不織布をA4サイズに裁断し、前記2通りの希釈水を軽く満遍な噴霧後に吊り下げ乾燥したもので液垂れはなかった。
それらを検体にJIS-L-1902に準じて抗菌試験を行った。通常の抗菌試験は細菌培養に使用する寒天培地を作る時の栄養分(コンソメスープなど)は20倍希釈するが、本試験は汚れた状況を模すために希釈を5倍として試験菌:黄色ブドウ球菌により高い栄養分を与えた。尿や糞便で汚れた状態を模したものある。尚、本実施例は本番でPP不織布にノニオン系界面活性剤と銅陰イオン水を塗工すると銅陰イオン水が20%程度加工済みPP不織布に保持される事を模したもので、レーヨン20%/ポリエステル80%で目付は20g/mのものであり、ポリエステルは水分を吸着できずレーヨンは重量の1.5~1,6倍の吸水・保水力があるが、本検体からは軽く噴霧したので吊り下げ乾燥をしても液だれが一切無かったことから、得られたデータは前期の親水性付与の加工済みポロプロピレン不織布での実施例の近似値であったと考えられる。
【実験例2】
【0067】
上記実施例の抗菌試験結果は以下の通りであった。抗菌活性値の後には(有効)或いは(無効)と記す。
銅陰イオン濃度200ppm 抗菌活性値=6.7(有効)
銅陰イオン濃度100ppm 抗菌活性値=6.7(有効)
【実施例0068】
本発明の請求項には直接関係しないが、2重量%のクエン酸一水和物を添加した溶媒に500Åの蒸着層を得るため厚み12μのPETフィルムに純銀蒸着を施し、蒸着面を保護せず2x2cmの略四角形に断裁した切断片30万枚を、上記溶媒130Lに投入し、1週間程度断続的に攪拌し、溶解後に当該蒸着フィルムの断片を取り除き仕上げた後には25ppmの錯体銀陰イオン水を得る事ができた。紫外線吸光度計で同濃度・同pHの硝酸銀溶液とピーク波長を比べてみたが、硝酸銀溶液では300nm付近でピークを示したが錯体銀酸イオン水では190~890nmのどこにもピークを示さなかった。
【0069】
上記のように得た銀陰イオン水にはほぼ全て銀陰イオンが占めるので、それを20ppmと10ppmの2通りまで希釈して銀陰イオン水を得た。ポリプロプレン不織布(目付18g/m)にノニオン系界面活性剤を塗工し、乾燥後に上記銀陰イオン水を貯めた小さなタンクに前記加工後の当該PP不織布を浸漬して乾燥したサンプルで、以下のような抗菌防臭試験と消臭試験を行った。
【実験例3】
【0070】
抗菌試験は、当該加工済みPP不織布は尿や糞便で汚れた状況で使用されるので、試験対象細菌の栄養分を増やす目的で通常の試験では培地濃度を20倍希釈するが、上記のように5倍に希釈して細菌への栄養分を増やして、JIS-L-1902の試験を行った。
抗菌試験対象菌は黄色ブドウ球菌として、得られた試験結果は以下の通りであった。
銀陰イオン濃度20ppm:抗菌活性値=6.7(有効)
銀陰イオン濃度10ppm:抗菌活性値=6.7(有効)
以上のように何れの濃度でも生存する残存菌がほぼ残っていないという抗菌活性値が確認された。
【実験例4】
【0071】
続いて、上記のような加工済みのPP不織布を検体に、アンモニアとインドールと言う尿や糞便の主な2大悪臭を対象に消臭試験を行った。対アンモニアの消臭率を得た結果、対インドールの消臭試験は銀イオン濃度15ppmと20ppmの当該不織布検体で行った。
対アンモニア 銀陰イオン濃度10ppm 消臭率82%(有効)
銀陰イオン濃度20ppm 消臭率98%(有効)
対インドール 銀陰イオン濃度15ppm 消臭率82%(有効)
銀陰イオン濃度20ppm 消臭率82%(有効)
以上のように、何れも消臭機能有効のデータであった。
【0072】
銀陰イオンは希クエン酸溶媒での攪拌により、銀陽イオンにカルボキシ基、或いはカルボキラートイオンが2座配位結合して形成されている。通常の抗菌試験では培地濃度も実験例3よりも試験対象菌への栄養分は低いし、銀陽イオン濃度も5~10ppbあれば足りる。
銀が錯体陰イオン化しているとグラム陽性菌でもグラム陰性菌でも細胞膜を透過しやすいので、より低い銀陰イオン濃度で足りるので実験例3の結果は当然である。
ただ、錯体銀イオンのみを有する銀陰イオン水は本発明の実施には塗工スピードとの関係でイオン濃度が足りないという課題が残るので本発明の請求項には記載しなかった。
【0073】
実験例4の結果をみると、銀陰イオンには希クエン酸のカルボキシ基とカルボキシラートイオンが合計2座配位結合していて、カルボキシル基がアンモニアと反応し、カルボキシラートイオンがインドールと結合して、当該臭気の分子構造を変えるメカニズムで少なくとも上記悪臭2種の消臭機能が活きている。本発明の請求項にある銅(亜鉛)陰イオン水のほぼ全てを占める銅(亜鉛)陰イオンにはカルボキシ基とカルボキシラートイオンが合計4座配位結合しているし、銀陰イオン濃度より高い濃度での銅(亜鉛)陰イオンによる消臭試験では基準に適う結果となるのは当然と推測される。カルボキシ基或いはカルボキシラートイオンと合計2座配位結合された銀陰イオン水の実験例よりも、銅(亜鉛)陰イオン水による実施例は何れも4座配位しているので次の消臭試験実施例5を行った。
抗菌防臭機能は抗菌性金属の錯体陰イオン(抗菌性のある中心金属の銅又は亜鉛の錯体陰イオン)が果たすが、消臭機能は希クエン酸溶媒のカルボキシ基から一部は水素が離脱したカルボキシラートイオンが中心抗菌金属に配位結合しているので、錯体抗菌金属陰イオンの中心金属が銀、銅、或いは亜鉛であるという事は消臭機能には関係しない。
【0074】
因みに、カルボキシ基、乃至はカルボキシラートイオンがアンモニア・インドールといった悪臭を消臭出来るメカニズムは以下の通りである。
先ずアンモニアとカルボキシ基が反応をして分子構造の変化で臭気を消臭する。インドールは水素が離脱したカルボキシラートイオンに結合し吸着されるので、これも分子構造が変化して臭気がなくなった。尿や糞便が発する臭気は上記2種の悪臭が主たるものなので請求項4に記載の不織布が得られ、該加工済み不織布を少なくとも表材の一部として使用すれば、抗菌防臭機能と消臭機能の両機能を有する使い捨て不織布オムツが周知の方法で製造できる。
【実施例0075】
目付18g/mのポロプレピレン100%の不織布を30x30cm/6枚に裁断して、先ずノニオン系界面活性剤に浸漬し乾燥した後に、3枚を銅陰イオン200ppmの銅イオン水に、更に3枚を100ppmの銅イオン水に軽く漬込み乾燥させて、念のため銅陰イオン50ppmの銅陰イオン水で同様の加工をした同様の検体で対黄色ブドウ球菌の抗菌防臭試験を行った。使用した銅陰イオン水の溶媒中クエン酸1水和物濃度は2重量%であった。
【実験例5】
【0076】
上記の抗菌防臭試験の結果は以下の通りであった。
対黄色ブドウ球菌 200ppm 抗菌活性値=6.6(有効)
対黄色ブドウ球菌 100ppm 抗菌活性値=6.6(有効)
対黄色ブドウ球菌 50ppm 抗菌活性値=6,7(有効)
一番銅陰イオン濃度が低い50ppmでのデータはより濃度の高い2通りのデータの誤差と考えるのが妥当である。
【実施例0077】
上記と同じ検体を準備して、繊維業界団体が定めた消臭試験を実施した。検体へ塗工した銅陰イオン濃度は上記と同様であった。
【実験例6】
【0078】
上記の試験結果は以下の通りであった。
対アンモニア 200ppm 消臭率 54%
対アンモニア 100ppm 消臭率 22%
対アンモニア 50ppm 消臭率 17%
対インドール 200ppm 消臭率 91%
対インドール 100ppm 消臭率 92%
対インドール 50ppm 消臭率 92%
【0079】
抗菌防臭機能は抗菌性金属の錯体陰イオンの中心金属が果たすので有効値は得られたが、消臭機能は配位結合したカルボキシ基、或いはカルボキシラートイオンが果たすので前記のように配位結合は弱い結合であるから、希釈によって銅陰イオン濃度は計算通りであったが、希釈によりクエン酸濃度が下がりカルボキシ基も試験基準である濃度100ppmのアンモニア消臭に不足したと考えるのが相当であり、試験基準である約33ppmのインドール消臭には十分カルボキシラートイオンが残っていたと考えるのが相当である。新たに製造した銅陰イオン水での再実験で検体を製作し前記2種類臭気の消臭試験を行う。
但し、尿から排泄された尿素がアンモニアに化学変化するには先ずは常在菌がもつウルナーゼが作用して体温と空気が更に作用するので、使い捨てオムツ等に実使用される場合は優れた抗菌防臭機能がある銅(亜鉛)陰イオン水はアンモニアの生成を抑制できるものと考えられる。
【0080】
尚、抗菌性金属の真空蒸着フィルムを利用し本発明実施を行う場合、断片化した蒸着フィルムは水酸化を経て酸化する事を防ぐため、断裁後は出来るだけ速やかに密封する、或いは密封時にアルゴンガスなど貴ガスの注入を心掛ける方がより良い。又、断片化した抗菌金属蒸着フィルムの保管は保管室内湿度0%の家庭用冷蔵庫で行う事が水酸化を経て酸化銅化することを遅らせる事ができるのでより良い。
【実施例0081】
新たに製造した銅陰イオン水は、当該溶媒量より投入した銅蒸着フィルム量が請求項1に記載したより少なく、溶媒中のクエン酸一水和物の濃度は2重量%であったが、得られた銅陰イオン水の陰イオン濃度は118ppmであった。これをイオン交換水で希釈して銅陰イオン濃度100ppmと50ppmの2通りを上記と同様のサイズでPP不織布を親水化して塗工した検体を準備した。今回得た銅陰イオン水の銅陰イオン濃度は118ppmだったので希釈倍率は低いものなり、銅イオンに配位結合したカルボキシ基、水素が解離して残ったカルボキシラートイオンの量は消臭率が基準に適うものと予見した。
【実験例7】
【0082】
上記の検体でn=3の消臭試験を実施した消臭率の結果は以下の通りであった。
対アンモニア 100ppm 99%(合格)
対アンモニア 50ppm 74%(不合格)
対インドール 100ppm 83%(合格)
対インドール 50ppm 85%(合格)
【0083】
前記118ppmの銅陰イオン水を希釈して、上記の濃度での試験結果であったが、溶媒のクエン酸1水和物の濃度は2重量%であったので、カルボキシ基よりカルボキシラートの配位数が多かったようで、以後の銅陰イオン水製造時の濃度は5%以上にするべきことが分かった。
【実施例0084】
請求項3に示したように、酸化亜鉛の粉末1.4gを、クエン酸一水和物5重量%でイオン交換水1,000mlに溶解した溶媒で、溶媒温度50度で、攪拌スクリュウ回転は350回/分で攪拌した。クエン酸1水和物の完全溶解を確認した実験開始時の溶媒温度は24度程度であったが、10分後には50度に達したので酸化亜鉛粉末を投入した。凡そ1時間10分後には白濁がほぼ無くなったので検体水を採取して濃度をICP-ASで検査した。但し、未溶解の酸化亜鉛粉末は微量残っていた。
【実験例8】
【0085】
クエン酸1水和物のカルボキシ基、水素がカルボキシ基とカルボキシラートイオンが合計4座配位結合して、陰電荷2になっている亜鉛陰イオン水の錯体亜鉛陰イオン濃度はICP-ASの測定で1,080ppmであった。実際の量産では上記実験のスケールアップをすれば良いことになる。今回の実施例によれば銅陰イオン水より亜鉛陰イオン水の方が生産性は高く、コスト安と言える。尚、銅蒸着フィルムを断裁して銅陰イオン水を得られた後には銅蒸着層が消え去ったフィルムの回収が製造最終段階で必要になるが、酸化亜鉛粉末を亜鉛陰イオン水▲2▼の原料とするとの回収作業は必要なく、タンクの洗浄と洗浄水の処理のみで済むというメリットがあり、何れの金属が良いかは使用金属の貴卑感が大事な判断要素になる可能性がある。
【0086】
クエン酸1水和物の溶媒中濃度を5%としたのは、後の亜鉛陰イオン濃度が希釈によって120ppm以上あれば汚れた状況でも優れた抗菌防臭機能を果たせられるからであり、消臭機能は対アンモニアではカルボキシ基が果たし、対インドールではカルボキシラートイオンが果たすので、最大10倍希釈してもクエン酸1水和物の濃度は5,000ppm以上となり十分と考えられるからである。消臭試験に供されるアンモニア濃度は100ppm、インドールは約33ppmなので実験例7の結果からも前記クエン酸1水和物濃度は5%以上にすべきと分かった。
【0087】
但し、カルボキシ基とカルボキシラートイオンが配位結合した亜鉛陰イオンは安定していて陰電荷2を持つので、尿に含まれる塩素イオンとは反応せず、人の肌(特に粘膜)や動物の毛や肌に障害を起こす可能性のある塩化亜鉛は形成されることはない。
【0088】
銅陰イオン水での抗菌防臭試験と消臭試験の結果から、亜鉛陰イオン水▲1▼及び▲2▼の2通りとノニオン界面活性剤を使用したPP不織布検体の抗菌防臭試験及び消臭試験は実施しなかった。両亜鉛陰イオン水の抗菌防臭機能試験は亜鉛陰イオン濃度が120~150ppmあれば汚れた状況でも有効値を得られる事は明らかであるし、カルボキシ基及びカルボキシラートイオンの合計濃度が5,000ppm以上あればアンモニア、インドールの消臭機能が有効である事も明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
クエン酸溶媒による銅(亜鉛)陰イオン水の製造直後、pHは2.0程度であり溶解した銅は銅陰イオン化し溶解銅のほぼ全てを占めている。クエン酸は食品添加物に収載されている。少なくとも本発明に使用される銅(亜鉛)陰イオン水中の陰イオン濃度50~120ppm程度の濃度やpHでは乾燥した後にはペット動物や人の肌への安全性になんら問題はないし、健康上の安全性に問題も無い。酸化亜鉛をクエン酸溶媒で溶解して得られた錯体化し陰イオン化している亜鉛陰イオンをほぼ全て有する錯体亜鉛陰イオン濃度が120ppm以上あれば、汚れた状況でも使い捨てオムツや生理用品の抗菌防臭機能が果たせて、溶媒のクエン酸1水和物濃度が5,000ppm以上あればアンモニアやインドールの消臭機能が果たせる。
【0090】
又、使用する溶媒は食品添加物であるクエン酸と水のみからなるので、pHが強酸域になっても乾燥すれば人の肌やペットに何らの問題も無く、人やペット動物には無害で且つ消臭機能も抗菌防臭機能もある、使い捨て可能なオムツや生理用ナプキンといった生理用品の表材の少なくとも一部となり、界面活性剤の使用で元来疎水性の合繊系不織布に両陰イオン水で保持させることが出来て提供できる。この安全性は銅陰イオン水、或いは亜鉛陰イオン水でも同様である。
【0091】
上記のように人の肌やペット動物の皮膚に何らの害もない安全で二つの機能を有する合繊系不織布の少なくとも一部を表材として使用すると、両機能を有する使い捨てオムツや生理用ナプキンといった生理用品を消費者に提供できる。尚、当該製品の製造方法は業界周知の方法で良い。